JP2015055005A - オーステナイト系ステンレス鋼及びそれを用いた放射性廃液処理設備機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:9.0〜13.0%、Cr:18.0〜20.0%、N:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、Cr当量/Ni当量比が1.45以上1.80以下であり、オーステナイト相が単結晶組織であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
【選択図】図3
Description
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、炭素含有量が高い場合に700℃前後の温度領域に加熱・保持されると鋭敏化を起こす可能性があり、その後、ある特定の条件の下で粒界腐食や粒界型応力腐食割れ(Intergranular Stress Corrosion Cracking;IGSCC)を生じ易くなる性質がある。また、長期に亘って放射線照射を受ける環境では、累積照射量の増大にしたがって、照射誘起応力腐食割れ(Irradiation Assisted Stress Corrosion Cracking;IASCC)が誘起されることが知られている。すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼は、中性子照射下において、この照射誘起応力腐食割れが誘起され、粒界割れに対する感受性がより増大するという特性を有している。
そこで、原子炉内等の中性子照射下で用い得る鋼材として、腐食の根本要因となる粒界の存在をなくし、粒界腐食や粒界割れ発生のポテンシャルを減じた単結晶の開発が進められている。
他方、特許文献2に開示されるステンレス鋼は、オーステナイト相を安定化させるNiを高い比率で含有すると共に、その多くは、Moを含有するSUS316系のステンレス鋼である(表1のNo.S2〜S8参照)。また、特許文献3に開示されるオーステナイト系ステンレス鋼は、Mo又はNbを含有している(第1表のNo.3〜No.13参照)。しかしながら、Niの含有率が高い場合には、ピット状の全面腐食が発生し易くなったり、MoやNbの含有率が高い場合には、粒界腐食が促進されたりするおそれがある。
そこで、これら元素の含有率が低減された組成でありながら、高濃度の酸化性酸の存在が想定され粒界侵食が支配的となるような環境においても優れた耐食性を示す単結晶組織のステンレス鋼が求められている。
したがって、本発明の課題は、酸化性酸の存在下において優れた耐食性を有するオーステナイト系ステンレス鋼及びそれを用いた放射性廃液処理設備機器を提供することにある。
一般に、オーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性、加工性、溶接性等に優れた特性を有する鋼種として知られ、各種プラント設備から産業機器に至る種々の用途に用いられている。本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、これらの特性に加え、特に、酸化性酸に曝露されることにより発生する腐食に対しても耐食性を有し、腐食減肉やトンネル腐食の発生が低減された特殊鋼である。
以下、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の元素組成について説明する。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Crの含有率は、18.0質量%以上20.0質量%以下の範囲、好ましくは18.0質量%以上19.5質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Niの含有率は、9.0質量%以上13.0質量%以下の範囲、好ましくは9.0質量%以上11.0質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Mnの含有比率は、2.0質量%以下の範囲、好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Cの含有率は、0.02質量%以下の範囲とする。但し、Cは、低含有率の範囲では、強度の向上に寄与するため、Cの含有率は、0.002質量%以上0.02質量%以下の範囲としてもよい。なお、炭化物の形成は、Ti、Nb又はTa等の炭化物を安定形成し得る元素を添加することにより低減することができる。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Siの含有率は、1.0質量%以下の範囲、好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Nの含有率は、0.1質量%以下の範囲、好ましくは0.05質量%以下の範囲とする。このように、Nの含有率を0.1質量%以下の範囲とすることによって、溶接性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼とすることができ、放射性廃液処理設備機器における適用範囲が拡大する。特に、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、単結晶として形成する大きさに限りがあるため、放射性廃液処理設備機器における小型部材としての利用が想定される。このような部材間の溶接が高頻度で要求される用途においても、溶接性が良好であるため、放射性廃液処理設備機器の局所の耐食性を向上させることができる。但し、Nは、低含有率の範囲では、孔食に対する耐性の向上に寄与するため、積極的な添加が妨げられるものではなく、0.001質量%以上0.1質量%以下の範囲としてもよい。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Moの含有率は、好ましくは0.2質量%以下の範囲、より好ましくは0.1質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Nbの含有率は、好ましくは0.1質量%以下の範囲、より好ましくは0.05質量%以下の範囲とする。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Pの含有率は、好ましくは0.015質量%以下の範囲とする。但し、Pは、溶接時の湯流れを改善する効果を有するため、積極的な添加が妨げられるものではない。
よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼においては、Sの含有率は、好ましくは0.015質量%以下の範囲とする。但し、Sは、溶接時における溶込み深さを増大させる効果を有するため、積極的な添加が妨げられるものではない。
一般に、オーステナイト系ステンレス鋼では、その元素組成によっては、オーステナイト相を母相としてフェライト相が析出することがある。しかしながら、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼では、オーステナイト相が単結晶組織として安定形成される元素組成とされているため、フェライト相は、析出したとしても、母相のオーステナイト相中に分散して点在する島状の分布となる。そのため、オーステナイト相とフェライト相との相境界は、短線分且つ不連続的な形状となって、相境界を起点とする腐食や割れは、連続的には進展し難くなり、腐食溶出が抑制される。
このように析出するフェライト相の断面面積率を10%以下とすることによって、腐食溶出が生じ易いフェライト相の影響を抑制することができる。
なお、フェライト相の断面面積率は、点算法を用いて計測される、ステンレス鋼の全断面積に対する面積比率であり、JIS G 0555 附属書1の方法に準じて求められる値である。
Cr当量/Ni当量比が1.80を超えると、オーステナイト形成元素が充分な比率で確保されないことになるため、単結晶組織からなるオーステナイト相を形成することが困難となる。また、Cr当量/Ni当量比が1.45未満であると、一般的な濃度範囲にあるNiに対するCrの比率が過度に小さくなるため、不動態皮膜の形成が損なわれ、耐食性が劣化するおそれがある。したがって、Cr当量/Ni当量比が1.45以上1.80以下の範囲とすることによって、オーステナイト相が単結晶組織からなり、且つ不動態皮膜の作用による耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼とすることができる。
他の方法としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼における合金組織の状態を化学組成に基づいて予測するシェフラ(Schaeffler)の組織図、窒素の組成が考慮されたディロン(DeLong)の組織図等を用いる方法がある。シェフラの組織図では、Cr以外のフェライト形成元素と、Ni以外のオーステナイト形成元素のそれぞれが考慮されて、Cr当量(%)及びNi当量(%)は、
Cr当量=%Cr+%Mo+1.5%Si+0.5×%Nb・・・(数式1)
Ni当量=%Ni+30×%C+30×%N+0.5×%Mn・・・(数式2)、
の各式にしたがって与えられる。よって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼のCr当量/Ni当量比をこのような方法で算出される値に変換することができ、例えば、シェフラの組織図における数値に換算すると、好ましいCr当量/Ni当量比の範囲は、約1.41〜約1.75程度となる。
単結晶製造装置10は、溶湯を垂直下方向に引き下げることにより、ステンレス鋼の凝固を垂直方向に方向制御してステンレス鋼単結晶を鋳造する装置であり、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼の製造に好適である。
この単結晶製造装置10は、図1に示すように、主に、鋳型3、セレクタ5及びスタータ6を備える本体4と、水冷チル9と、鋳型加熱炉8と、から構成されている。
水冷チル9は、本体4を載置する天板部を有し、天板部と熱交換する水が循環する冷媒流路を内部に有しており、昇降自在とされている。
また、本体4は、水冷チル9の天板部に固定されると共に、その外周が鋳型加熱炉8に覆われており、本体4は、鋳型加熱炉8に対して垂直方向に相対運動可能とされている。
このような固溶化処理を行うことによって、析出したフェライト相が母相のオーステナイト相に再固溶するため、より単相に近いオーステナイト相の単結晶組織を得ることができ、フェライト相の断面面積率を3%以下程度にできる。
したがって、本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、原子燃料再処理施設に設置される放射性廃液処理設備機器、原子炉炉内に設置される設備機器、化学プラントに設置される設備機器等の部品又は部材を構成するための高耐食性ステンレス鋼材としての応用が可能であり、その優れた耐食性等の特性に基づいて、設備機器の信頼性を向上させ、設備機器寿命を長期化させることができる。
設備機器としては、容器、配管、弁、ポンプ、計装品等が挙げられる。また、各種支持板、支持具、締結具等の部品又は部材や、大型構造材の一部又は小型構造材としても応用し得る。本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、特に、硝酸等の酸化性酸の接触がある環境下において使用される部品又は部材の材料として好適に用いられ、このような部品又は部材としては、例えば、放射性廃液を内包する容器等に設置される温度計に付帯する温度計保護管キャップ、温度計保護管支持具等がある。
原子燃料再処理施設における再処理の過程では、溶媒抽出工程から発生する放射性廃液は、図2(a)に示すような放射性廃液を内包し濃縮・減容する装置(廃液濃縮・減容装置20)を用いて蒸発濃縮され、廃棄液の容積が縮小される。
温度計保護管キャップ31や温度計保護管支持具40は、高濃度の酸化性酸を含む放射性廃液に接する部材である。このような温度計保護管キャップ31や温度計保護管支持具40を本実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼単結晶で製造することによって、腐食の進行を抑制することが可能となり、設備機器の信頼性を向上させることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼は、元素組成がそれぞれ異なる計6種(No.1〜No.6)を、前記の製造装置10を用いた方向制御鋳造法によって製造した。
オーステナイト系ステンレス鋼の製造には、図1に示す単結晶製造装置10を用い、各元素組成のオーステナイト系ステンレス鋼それぞれにつき、鋳型加熱炉8による鋳型温度を1560℃として、鋳込み温度1560℃で、鋳込みを行った。鋳込んだ溶湯1は、1560℃で5分間保持した後、鋳型3が鋳型加熱炉8の外部に引き下げられるまで、水冷チル9を本体4と共に50cm/hの速度で降下させて、溶湯1を一方向凝固させた。なお、このとき鋳型加熱炉8による鋳型温度は、凝固が完了するまで1560℃に維持した。
したがって、オーステナイト相を単結晶化し、主相が単結晶組織であるオーステナイト系ステンレス鋼を得るためには、オーステナイト形成元素の組成比率が一定程度以上あることを要し、Cr元素濃度/Ni元素濃度比で1.80以下を達成している必要があることが確認された。
供試材は、製造されたオーステナイト系ステンレス鋼(No.1〜No.6)及びR−SUS304ULC(No.7)を、アルゴンガス雰囲気の下で固溶化処理することによって製造した。なお、固溶化処理の温度は1050℃、処理の時間は2時間とした。そして、これらの各供試材から12mm×8mm×2mmの試験片を3個ずつ切り出し、そのそれぞれについて表面を順に#600まで研磨した。なお、試験片寸法は、鋳造方向の直行面の断面積が12mm×8mmであり、鋳造方向厚さが2mmである。No.7については、圧延方向に垂直に試験片が採取されている。
また、腐食性試験液としては、8mol/Lの硝酸溶液に、Cr6+濃度が1g/Lとなるように無水クロム酸を溶解して調製した溶液を用いた。
図3における縦軸は、腐食度[g/m2・h](単位面積・時間当たりの腐食重量減量)である。浸漬試験では、供試材によっては、サイクルを経るにしたがって腐食度の増大が認められたため、腐食度が略一定に落ち着いた4サイクル目について、3個の試験片の平均腐食度を算出し、図3に示した。
これに対して、主相のオーステナイト相が単結晶組織からなる実施例のNo.1〜No.4では、腐食度が低く抑えられており、単結晶化による耐食性の向上が明確に認められた。外観観察の結果、No.1〜No.4の表面は、比較的平滑であることが確認された。
その一方で、主相のオーステナイト相が単結晶組織からなるがCr元素濃度/Ni元素濃度比が小さい比較例のNo.5では、No.6程ではないが、比較的高い腐食度が認められた。外観観察の結果、No.5の表面では、ピット状の全面腐食が高数密度で発生していることが確認された。この形態の腐食の要因は、No.5が、高いNi元素濃度である点にあると考えられた。よって、全面腐食を含む腐食に対する耐食性を保持させる上では、Cr元素濃度/Ni元素濃度比としては、1.45以上の数値が確保されていることが必要であることが確認された。
したがって、以上の結果から、実施例に係るオーステナイト系ステンレス鋼(No.1〜No.4)は、所定の元素組成を備えることによって、単結晶組織からなる主相を適切に形成する性質を有していることが確認された。また、特に、粒界侵食を伴う酸化性酸による腐食に対する耐食性に優れた特性を有しており、腐食減肉やトンネル腐食の発生を低減した耐食性構造材として有効であることが確認された。
被加工鋼材としては、元素組成を表1のNo.3と同等とし、前記の製造装置10を用いた方向制御鋳造法によって製造した、外径40mm、長さ200mmの円柱形状のオーステナイト系ステンレス鋼単結晶を用いた。
キャップは、この被加工鋼材に機械加工を実施し、外径34mmの有底円筒形状に削り出すことによって製造した。また、このとき被加工鋼材の残材から引張試験片を計2本採取し、23±5℃において引張試験に供した。
すなわち、以上の機械的性質は、JIS G 4303に規定されるステンレス鋼棒のSUS304Lの規格、耐力は、175N/mm2以上、引張強さは、480N/mm2以上、伸びは、40%以上の条件、及び、JIS G 5121に規定されるステンレス鋼鋳鋼品のSCS19の規格、0.2%耐力は、185N/mm2以上、引張強さは、390N/mm2以上、伸びは、33%以上の条件をいずれも満足するものであった。
保護管管体としては、R−SUS304ULC製の管材を使用し、溶接性の評価は、浸透探傷試験によった。
その結果、溶接部において割れの発生は認められなかった。
したがって、高濃度の酸化性酸との接触が起こり得る放射性廃液処理設備機器の部品又は部材としての応用に適した鋼材であり、耐食性の向上が求められる部品又は部材への適用範囲の拡大に寄与し得る鋼材であることが確認された。
2 溶解炉
3 鋳型
4 本体
5 セレクタ
6 スタータ
7 鋳込口
8 鋳型加熱炉
9 水冷チル
10 単結晶製造装置
20 廃液濃縮・減容装置
21 加熱ジャケット
30 温度計保護管
31 温度計保護管キャップ
32 保護管管体
33 温度計
40 温度計保護管支持具
210 廃液供給口
211 廃液排出口
301 溶接部
Claims (6)
- 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:9.0〜13.0%、Cr:18.0〜20.0%、N:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
Cr当量/Ni当量比が1.45以上1.80以下であり、
オーステナイト相が単結晶組織である
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。 - 質量%で、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Mo:0.2%以下、Nb:0.1%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 質量%で、Ni:9.0〜11.0%、Cr:18.0〜19.5%である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 質量%で、Mo:0.1%以下、Nb:0.05%以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 前記オーステナイト相において、フェライト相が島状に分布し、
前記フェライト相の断面面積率が10%以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼を用いた
ことを特徴とする放射性廃液処理設備機器。
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