JP2015128376A - グリセロールを原料としたメタン発酵を迅速に立ち上げる方法 - Google Patents

グリセロールを原料としたメタン発酵を迅速に立ち上げる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反復バッチのメタン発酵の馴養段階における基質の種類の変化(醸造廃水からグリセロールへの変化)と関連した、経時的な真正細菌叢と古細菌叢のシフトを解明し、グリセロールを原料としたメタン発酵槽を迅速に立ち上げる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始させるまでの時間を短縮させる方法であって、特定のプライマーセットによって検出される塩基配列を含む16S rRNA又は16S rDNAを有する、グリセロールを原料としてメタン生成を行う微生物を有機性廃棄物のメタン発酵系に供給することを含む方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリセロールを原料としたメタン発酵を迅速に立ち上げる方法に関する。より具体的には、グリセロールを原料としたメタン発酵において、メタン発酵に関与する微生物をメタン発酵槽に供給することを含む、メタン発酵を早期に開始させるための方法に関する。
将来の石油燃料の枯渇に対処するために、新しいエネルギー供給源として、バイオガス、バイオエタノール、及びバイオディーゼルが研究されている(非特許文献1)。バイオディーゼルは、石油系燃料に代わる魅力的な代替燃料であるため、バイオディーゼルの生産は、日本を含む多くの国において関心が高い。しかしながら、バイオディーゼル燃料の製造時には、副生成廃棄物として大量のグリセロールが生じるため、廃グリセロールの適切な処分が急務とされる。
これまでも、バイオディーゼル製造時に生じるグリセロール又はグリセロールを含む廃水を用いてメタン発酵を試みた報告例はある(非特許文献2〜5)。非特許文献2では、グリセロールを含む廃水を酸で前処理することによって、廃水の生分解性及びメタン収率をそれぞれ100%及び0.306m3 CH4/kgグリセロールにできることを報告している。非特許文献3では、グリセロールとブタ糞尿を混合することで基質のC/Nバランスが調整され、嫌気性消化過程における遊離アンモニアの生成量を減らすことができるため、高い有機物負荷量での運転が可能であることを明らかにした。さらに、該文献ではグリセロールを基質としたメタン発酵における微生物叢が調べられている。非特許文献4では、グリセロールを含有する合成廃棄物を55℃にて固定床嫌気性発酵槽を用いて処理し、メタノバクテリウム属種(Methanobacterium sp.)及びメタノサルシナ属種(Methanosarcina sp.)が支配的な古細菌であり、クロストリジウム属種(Clostridium sp.)、デスルホトマクル属種(Desulfotomaculum sp.)及びルミノコッカス(Ruminococcus sp.)が支配的な細菌であることを明らかにしている。非特許文献5は、バイオディーゼル製造時に副生する廃グリセロールを含む廃水の嫌気的な水素生成プロセスとメタン生成プロセスにおける真正細菌叢と古細菌叢を調べ、これらの真正細菌及び古細菌の中には、発酵条件下で安定に維持されるものがあることを示した。しかしながら、グリセロールのメタン発酵の馴養段階において、微生物叢の動的変化を調べた報告例はない。
安定な嫌気性消化を達成させるには長期の馴養時間を必要とし、発酵槽中の異なる微生物群の活性のバランスは、この経過時間中に確立される(非特許文献6〜8)。したがって、安定に稼働しているメタン発酵槽から得た種汚泥の供給は、基質の種類がそれまでのメタン発酵槽と新規のメタン発酵槽との間で相違するとしても、新規発酵槽の立ち上げにしばしば行われている。種類が異なる基質を処理している発酵槽に種汚泥を導入する場合、微生物叢が、それまでの基質から新しい基質への馴養段階の進行に伴って変化することがある。初期の種汚泥中の微生物叢と馴養後の微生物叢を比較した報告例もある(非特許文献9〜11)。非特許文献9は、乳加工廃水の嫌気性消化槽に、都市廃水を処理する嫌気性消化槽から得た汚泥を種汚泥として導入後、全真正細菌と全古細菌の菌体濃度の変化を明らかにした。非特許文献10では、都市下水由来の種汚泥を導入することによって、いくつかの異なる種類の廃水を処理する嫌気性消化槽におけるメタン生成細菌叢の分析を行っている。上記2つの研究では、メタン発酵がバッチ操作によって行われたため、消化槽の基質濃度が発酵の進行とともに変化しており、微生物叢の違いが基質の種類の違いによって引き起こされたものか、基質の濃度が変化したためなのかはっきりしない。また、非特許文献11は、異なる種類の基質を処理するメタン発酵槽にグラニュール汚泥を導入することによって、微生物叢の変化を調べている。ここでは、ジャム及びゼリー製造時の廃水を処理する上向流嫌気性汚泥床法(UASB)に由来する汚泥(グラニュールS)を、高濃度のスターチ及び脂質廃水を処理する第二の嫌気性リアクター用の種汚泥として用い、この第二の嫌気性リアクターで得られた汚泥(グラニュールN)を引き続いてチーズ製造会社からの廃水を処理するための種汚泥として用いており、最終的に得られた汚泥をグラニュールBとしている。結果として、特定の原料に対応する固有の微生物叢が観察された。グラニュールSにおいては、プロテオバクテリア(Proteobacteria)及びフィルミクテス(Firicutes)に属する真正細菌が最も優勢であり(85%)、一方、未分類の細菌は全体の6%にすぎなかった。グラニュールNでは、プロテオバクテリア、フィルミクテス及び未分類の細菌が、それぞれ全体の3分の1を占めた。なお、グラニュールBにおける主な真正細菌は、未分類のクロロフレクサス(47%)又は未分類の細菌(28%)のいずれかに分類された。
これまで、従来の研究者らの報告においては、新しい基質を用いたメタン発酵の初期及び最終の基質馴養段階で回収した試料中の微生物叢を比較しているが、この新しい基質に対する馴養段階における微生物叢の経時的な変化は調べられていない。また、馴養段階において消長する真正細菌と古細菌のメンバーに言及している研究は非常に限定的である。
Ito, T., et al., J. Biosci. Bioeng., 100, 260-265 (1995) Lopez, J.A.S., et al., Bioresour. Technol., 100, 5609-5615 (2009) Astals, S., et al., Bioresour. Technol., 110, 63-70 (2012) Yang, Y., et al., Process Biochem., 43,362-367 (2008) Luo, G., et al., Bioresour. Technol., 102, 8700-8706 (2011) Show, K.Y., et al., Water Res., 38, 2293-2304 (2004) Kobayashi, T., et al., Bioresour. Technol., 100, 4981-4988 (2009) Lins, P., et al., et al., Bioresour. Technol., 110, 167-173 (2012) Lee, C., et al., FEMS Microbiol. Ecol., 65, 544-554 (2008) Lee, C., et al., Water Res., 43, 157-165 (2009) Nelson, M.C., et al., Bioresour. Technol., 107, 135-143 (2012)
本発明は、反復バッチのメタン発酵の馴養段階における基質の種類の変化(醸造廃水からグリセロールへの変化)と関連した、経時的な真正細菌叢と古細菌叢のシフトを解明し、グリセロールを原料としたメタン発酵槽を迅速に立ち上げる方法、及び該方法において使用する微生物を含む組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、汚泥中に増殖し、グリセロールを分解してメタン生成に寄与する菌を特定することに成功し、さらに、このようなメタン生成に寄与する菌を用いることによって、グリセロールを原料としたメタン発酵の迅速な立ち上げを行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始させるまでの時間を短縮させる方法であって、下記のプライマーセット:
(1)プライマーセット1
(a)配列番号1に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)配列番号2に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
(2)プライマーセット2
(c)配列番号3に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(d)配列番号4に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び/又は
(3)プライマーセット3
(e)配列番号5に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(f)配列番号6に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出される塩基配列を含む16S rRNA又は16S rDNAを有する、グリセロールを原料としてメタン生成を行う微生物を有機性廃棄物のメタン発酵系に供給することを含む方法。
[2]前記プライマーセット1によって検出させる微生物が真正細菌であって、配列番号7、8、又は9に示される塩基配列を含む、上記[1]に記載の方法。
[3]前記真正細菌がトリココッカス属種(Trichococcus sp.)である、上記[2]に記載の方法。
[4]前記プライマーセット2によって検出させる微生物が古細菌であって、配列番号10に示される塩基配列を含む、上記[1]に記載の方法。
[5]前記古細菌がメタノバクテリウム属種(Methanobacterium sp.)である、上記[4]に記載の方法。
[6]前記プライマーセット3によって検出させる微生物が古細菌であって、配列番号11に示される塩基配列を含む、上記[1]に記載の方法。
[7]前記古細菌がメタノスピリルム属種(Methanospirillum sp.)である、上記[6]に記載の方法。
[8]有機性廃棄物が、食品廃棄物、糞尿、動植物残さ、古紙、及び汚泥からなる群から選択される、上記[1]〜[7]に記載の方法。
[9]前記馴養期間が0〜20日である、上記[1]〜[8]に記載の方法。
[10]有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始するまでの時間を短縮させるために使用される組成物であって、下記のプライマーセット:
(1)プライマーセット1
(a)配列番号1に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)配列番号2に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
(2)プライマーセット2
(c)配列番号3に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(d)配列番号4に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び/又は
(3)プライマーセット3
(e)配列番号5に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(f)配列番号6に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出される塩基配列を有する微生物を含む組成物。
本発明によれば、グリセロールを原料としたメタン発酵に関与する微生物を用いた微生物を供給することで、グリセロールを原料としたメタン発酵の早期開始が可能となる。
バンドB7、B8、及びB10に対応する真正細菌を含む系統樹。 バンドA8、A9、及びA13に対応する古細菌を含む系統樹。 グリセロールに対する馴養中及び馴養後のメタン生成速度(mol/日)の経時的変化を示す。 グリセロールに対する馴養中及び馴養後に生成された有機酸の濃度(g/L)の経時的変化を示す。図4Aは、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、及び酪酸の濃度変化を示す。図4Bは、乳酸、及び全低級脂肪酸の濃度変化を示す。 グリセロールに対する馴養中及び馴養後のメタン発酵の進行に伴う真正細菌叢の変化を示す。図5Aは、真正細菌のPCRに基づくDGGEフィンガープリントの結果である。図5Bは、リアルタイムPCRによって決定された、いくつかの特徴的な真正細菌の補正された菌体濃度の変化を示す結果である。 グリセロールに対する馴養中及び馴養後のメタン発酵の進行に伴う古細菌叢の変化を示す。図6Aは、古細菌のPCRに基づくDGGEフィンガープリントの結果である。図6Bは、リアルタイムPCRによって決定された、いくつかの特徴的な古細菌の補正された菌体濃度の変化を示す結果である。 本発明の微生物を含む種汚泥によるメタン発酵の短縮された立ち上げ経過を示す。運転Aは、グリセロールへの馴養後のメタン発酵槽に由来する汚泥と醸造廃水処理メタン発酵槽から得た汚泥を1:2で含む混合物(種汚泥)を添加したものである。運転Bは、醸造廃水処理メタン発酵槽から得た汚泥(種汚泥)を添加したものである。 メタン発酵開始後に生成された有機酸(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、及び乳酸)の経時的な濃度変化を示す。上段が運転Aであり、下段が運転Bに対応する(上記図7参照)。 運転A及びBにおける発酵槽中のバンドB7、B8、及びB10に対応する微生物濃度の経時的変化を示す。微生物濃度は、補正された菌体濃度として評価した。
以下、本発明の説明のために、好ましい実施形態に関して詳述する。
前述の通り、本発明は、有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始するまでの時間を短縮させる方法であって、下記のプライマーセット:
(1)プライマーセット1
(a)配列番号1に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)配列番号2に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
(2)プライマーセット2
(c)配列番号3に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(d)配列番号4に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び/又は
(3)プライマーセット3
(e)配列番号5に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(f)配列番号6に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出される塩基配列を有する、グリセロールを原料としてメタン生成を行う微生物を有機性廃棄物のメタン発酵系に添加することを含む方法に関する。
1.グリセロールを原料としたメタン生成に関与する微生物の特定
(1)グリセロールへの馴養
一般に、メタン発酵の開始時、すなわち、メタン発酵槽の新規立ち上げ時には、原料(基質)となる有機性廃棄物の供給量(有機物負荷)を段階的に増加させて供給することによって、メタン生成菌を原料に馴染ませる馴養の方法が行われている。これは、いきなり高濃度の新しい基質を供給するとメタン発酵の微生物がその基質を利用することができないためである。段階的に基質を増加させる方法は優れた方法ではあるが、高濃度の基質を供給しても、微生物が高い活性を維持し、メタン発酵が完全に行われるまでには長い期間(馴養期間)を要し、メタン発酵槽の新規立ち上げ時に時間的制約を受けることが問題となっている。本発明者らは、有機性廃棄物であるグリセロールを原料として供給した場合に、グリセロールによる馴養期間の前後において、発酵槽内における微生物叢の変化から、グリセロールを原料としてメタンを生成する活性の高い微生物を特定することに成功し、該微生物をメタン発酵槽の新規立ち上げ時に添加することによって、上記馴養期間を顕著に短縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、グリセロールを炭素源としてメタン生成を行う微生物の特定において、上記の通り、発酵槽におけるグリセロール濃度を段階的に高めたが、この段階的なグリセロール濃度の増加は、例えば、0〜60日の間、0mol/Lから開始して0.089mol/Lに達するように適宜調整することができる(実施例1参照)。なお、この馴養期間中は、炭素源濃度を一定にするために、グリセロール以外の炭素源としてグルコース、酢酸、乳酸等を添加し、グリセロール濃度の段階的な増加に伴って、他の炭素源の濃度を段階的に減少させている。
(2)グリセロールを炭素源とする真正細菌及び古細菌の特定
本発明者らは、グリセロールによる馴養期間の前後における微生物叢の変化、すなわち、馴養期間中からその期間後において発酵槽中で増加するグリセロールを炭素源としてメタン生成を行う真正細菌(3種)及び古細菌(3種)を特定することができた。本発明によれば、馴養期間を短縮させるために使用可能な真正細菌は、トリココッカス属種(Trichococcus sp.)であり、種名が特定されていない菌種の真正細菌であって、固有の16S rRNA(又は16S rDNA)を有する。本明細書においては、上記3種の真正細菌は、16S rRNAの部分塩基配列のバンドに因んで、それぞれ「バンドB7」、「バンドB8」、及び「バンドB10」として命名された。バンドB7及びB8は、近縁のトリココッカス属種(Trichococcus sp.)(GenBank Accession No.FJ374769)の16S rRNA(又は16S rDNA)の部分塩基配列(配列番号12)の情報を利用することにより特定された(実施例1参照)。また、バンドB10は、近縁のトリココッカス・コリンシ(Trichococcus collinsii)(GenBank Accession No.EU434536)の部分塩基配列(配列番号13)の情報を利用することにより特定された(実施例1参照)。
一方、本発明によれば、馴養期間を短縮させるために使用可能な古細菌は、メタノバクテリウム属種(Methanobacterium sp.)に含まれる種名が特定されていない菌種の古細菌、及びメタノスピリリウム・フンガテイ(Methanospirillum hungatei)に類縁の古細菌であり、固有の16S rRNA(又は16S rDNA)を有する。本明細書においては、上記3種の古細菌は、後述するように、16S rRNAの部分塩基配列のバンドに因んで、それぞれ「バンドA8」、「バンドA9」、及び「バンドA13」として命名された。バンドA8及びA9は、近縁のメタノバクテリウム・カナギエンセ(Methanobacterium kanagiense)(GenBank Accession No.AB368917)の16S rRNA(又は16S rDNA)の部分塩基配列(配列番号14)の情報を利用することにより特定された(実施例1参照)。また、バンドA13は、近縁のメタノスピリリウム・フンガテイ(Methanospirillum hungatei)(GenBank Accession No.JQ346747)の部分塩基配列(配列番号15)の情報を利用することにより特定された(実施例1参照)。
本発明において使用されるバンドB7、B8、及びB10の真正細菌、並びにA8、A9、及びA13の古細菌の特定は、例えば、以下のようにして行うことができる。簡単には、真正細菌及び古細菌から核酸を抽出後、PCRで増幅して、変性剤の濃度勾配を有するアクリルアミドゲルにより核酸断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って核酸を単離することができる。メタン発酵に関与する真正細菌及び古細菌は複数種含まれるため、最初に特定の真正細菌及び古細菌における固有の16S rRNA遺伝子を特定することが必要である。まず、上記馴養にて使用されたメタン発酵槽に含まれる微生物叢の16S rRNAをPCR−DGGE法によって分離及び検出する。具体的には、メタン発酵槽内の溶液をサンプリングし、微生物を遠心分離によって回収した後、溶菌し、微生物に含まれるタンパク質及び脂質をクロロホルムの添加によって抽出・除去する。続いて、エタノールの添加により核酸のみを回収する。
その後、真正細菌由来のDNAを検出するために汎用されている以下のプライマーセット(以下、「プライマーセットA」と称する場合がある。):
357f(フォワード):5’−CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCCTACGGGAGGCAGCAG−3’(配列番号17 (下線部はGCクランプの配列である)(ヌクレオチド41−57は、配列番号16(大腸菌の16S rRNA)のヌクレオチド341−357に対応する)、及び
518r(リバース):5’−ATTACCGCGGCTGCTGG−3’(配列番号18)(配列番号16(大腸菌の16S rRNA)のヌクレオチド534−518に対応する)
を用いて、該核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅する。なお、上記プライマーセットAは、真正細菌の16S rRNA遺伝子に結合するとされるユニバーサルプライマーであって、従前の文献(Ueno,Y.,et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,57,65−73(2001))に基づいて作製した。
一方、古細菌由来のDNAを検出するために汎用されている以下のプライマーセット(以下、「プライマーセットB」、「プライマーセットC」と称する場合がある。):
プライマーセットB:
PRA46f(フォワード):5’−(C/T)TAAGCCATGC(G/A)AGT−3’(配列番号19)(大腸菌の16S rRNAのヌクレオチド46−60に対応)からなる)、及び
PREA1100r(リバース):5’−(T/C)GGGTCTCGCTCGTT(G/A)CC−3’(配列番号20)(大腸菌の16S rRNAのヌクレオチド1117−1100に対応);並びに
プライマーセットC:
PARCH340f(フォワード):5’−CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCCCTACGGGG(C/T)GCA(G/C)CAG−3’ (配列番号21)(下線部はGCクランプの配列である)(ヌクレオチド41−58は大腸菌の16S rRNAのヌクレオチド340−357に対応)、及び
PARCH519r(リバース):5’−TTACCGCGGC(G/T)GCTG−3’ (配列番号22)(大腸菌の16S rRNAのヌクレオチド533−510に対応)
を用いて、該核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅する。なお、上記プライマーセットBとCは、外側のプライマーと内側のプライマーを使って2段階のPCRを行うネスティッドPCRのために使用した。上記プライマーセットBとCは、古細菌の16S rRNA遺伝子に結合するとされるユニバーサルプライマーであって、従前の文献(Ovreas,L.,et al.,Appl.Environ.Microbiol.,63,3367−3373(1997))に記載されている。
核酸を増幅するための方法としては、PCR法(Saiki R.K.ら,Science,230,1350−1354(1985))に限定されず、当業者であれば、ライゲース連鎖反応(LCR)(Wu D.Y.ら,Genomics,4,560−569(1989))、及び転写に基づく増幅(Kwoh D.Y.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,1173−1177(1989))等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反応(SDA)(Walker G.T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992); Walker G.T.ら,Nuc.Acids Res.,20,1691−1696(1992))等を用いることができることは容易に理解される。なお、本発明の方法においては、簡便であるという利点を考えて、PCR法を利用することが好ましい。
次に、上記で核酸を増幅させたPCR増幅産物をポリアクリルアミドゲルで電気泳動することによって分離する。電気泳動によるPCR増幅産物の分離は常法に従って容易に行うことができる。電気泳動で使用するゲルは、核酸を変性させるための変性剤を含み、核酸の分離に適した所定の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルであることが好ましい。また、電気泳動に使用される泳動溶液及び電圧等の泳動条件は適宜調整することができる。上記のPCR−DGGE法を使用することにより、各真正細菌及び各古細菌に該当する核酸のバンドの濃淡から、可視的に真正細菌及び古細菌の経時的な増減をモニタリングすることができる。ここで、ゲル上のバンドの検出は、限定されないが、エチジウムブロマイド含有溶液を用いてゲルを染色することにより行う。なお、ゲル上の1つのバンドは、1つの真正細菌又は古細菌の16S rRNAに対応する。
本発明の方法で使用される真正細菌及び古細菌は、グリセロールによる馴養期間中又はその期間後に出現する細菌である。したがって、上記の電気泳動上の経時的なバンドの濃淡の変化において、馴養期間中又はその期間後に出現したバンド(固有の16S rRNA遺伝子に対応するDNA断片)を切り出し、塩基配列を解析することにより、グリセロールを炭素源としてメタン生成を行う真正細菌及び古細菌を特定することができる。なお、ゲルから切り出されたDNA断片には、目的以外のDNA断片が混在している可能性があるため、所望のDNA断片を得るためにさらに分離及び精製することが好ましい。一般に、PCR産物をクローニングするために、ベクター(例えば、pCR4、pMW、pBluescript、pBR322、pUC、pDEL系などのプラスミドベクター、M13mpなどのファージベクター、Charomid9系などのコスミドベクター)に、PCR産物をライゲーションさせ、コンピテントセルに形質転換させる。形質転換したコンピテントセルを培養してコロニーを形成させ、塩基配列の解読のためのサンプルとする。その後、所望のDNA断片の塩基配列を決定するが、塩基配列の解読は、従来法を用いればよく、例えば、Sanger法、サイクルシークエンス法による自動シークエンサーを利用することができる。自動シークエンサーのシークエンス反応には、プライマーを蛍光標識したDye primer法、ddNTPを蛍光標識したDye terminator法、さらに基質のdNTPに標識したInternal−label法があるが、いずれの方法でもよい。
バンドB7、B8、B10、A8、A9、及びA13のクローニングにおいては、所望のDNA断片を得るために、PCRによるDNA合成の際に付加されるデオキシアデノシン(dA)を利用したTAクローニング法を用いることができる。TAクローニング法は、3’→5’エキソヌクレア−ゼ活性を有するDNAポリメラーゼを利用したクローニング法であり、まず、このDNAポリメラーゼを用いて得られたPCR産物の平滑末端をTaqDNAポリメラーゼ等のpolI型酵素によって処理することによって、3’末端にアデニン又はチミンを付加させる。一方、ベクターにdTTP又はtaqDNAポリメラーゼを反応させることによってTAベクターを作製する。次に、上記のように処理した核酸断片とベクターをライゲーションさせて宿主細胞に形質転換し、所望のDNAをクローニングする方法である。より具体的には、真正細菌については、上記でゲルから切り出されたDNA断片をまず上記のプライマーセットAを使用し、PCRにより増幅する。次に、得られたPCR産物をTAクローニング用のプラスミドに組込み、このプラスミドを大腸菌に形質転換する。次に、PCR産物が組み込まれたプラスミドによって大腸菌に形質転換されたことを確認するために、アンピシリン等の抗生物質とカラーセレクションによる選択を行う。その後、プラスミドDNAを抽出し、プライマーセットAを用いて所望のPCR産物を増幅させ、さらに、上記と同様にDGGEを行い、バンド位置を確認した後、各バンドの部分塩基配列を決定することができる。古細菌については、プライマーセットCを用いてPCR増幅させる。真正細菌の場合と同様に、PCR産物をクローニングし、大腸菌への形質転換を確認後、プライマーセットCを用いて所望のPCR産物を増幅させ、DGGEでバント位置を確認し、各バンドの部分塩基配列を決定することできる。
本明細書においては、プライマーセットAを用いて増幅し、ゲル上で分離されたバンドB7、B8、及びB10の部分塩基配列から、DDBJのデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html)を用いた相同性検索を行い、最も近縁な微生物として、バンドB7及びバンドB8についてはトリココッカス属種の株(FJ374769)、バンドB10についてはトリココッカス・コリンシ株(EU434536)を特定した(実施例1参照)。得られたバンドB7の部分塩基配列と上記トリココッカス属種の株の部分塩基配列とを比較すると、両者は一致していた。バンドB8の部分塩基配列については99%一致していた。また、得られたバンドB10の部分塩基配列とトリココッカス・コリンシ株の部分塩基配列とを比較すると、両者は99%一致していた。バンドB7、B8、及びB10の部分塩基配列は、それぞれ配列番号7、8、及び9に示される通りであった。
本明細書においては、プライマーセットB、引き続いてプライマーセットCを用いて増幅し、ゲル上で分離されたバンドA8、A9、及びA13の部分塩基配列から、DDBJのデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome−j.html)を用いた相同性検索を行い、最も近縁な微生物として、バンドA8及びバンドA9についてはメタノバクテリウム・カナギエンセ株(AB368917)、バンドA13についてはメタノスピリリウム・フンガテイ株(JQ346747)と特定した(実施例1参照)。得られたバンドA8の部分塩基配列とメタノバクテリウム・カナギエンセ株の部分塩基配列とを比較すると、両者は一致していた。バンドA9の部分塩基配列についても同様であった。また、得られたバンドA13の部分塩基配列とメタノスピリリウム・フンガテイ株の部分塩基配列とを比較すると、両者は一致していた。なお、プライマーセットB及びCは、文献(Ovreas,L.,et al.,Appl.Environ.Microbiol.,63,3367−3373(1997))に記載されている。バンドA8及びA9の部分塩基配列は配列番号10、並びにA13の部分塩基配列は配列番号11に示される通りであった。
2.メタン発酵の迅速立ち上げ
本発明によれば、グリセロールを原料としたメタン発酵において、メタン生成が開始するまでの時間を短縮させるための方法が提供され、具体的には、後述するプライマーセット1、2及び/又は3によって検出される塩基配列を有する微生物をメタン発酵槽に添加することを含む方法が提供される。
本明細書で使用するとき、用語「有機性廃棄物」とは、一般に、生物学的分解によって環境中に直接還元することができる廃棄物を指し、限定されないが、生ごみなどの食品廃棄物、糞尿、動植物性残さ、古紙、及び汚泥などが挙げられる。食品廃棄物には、一般廃棄物(事業系及び家庭系を問わない)及び産業廃棄物が含まれる。具体的には、食品廃棄物の例は、限定されないが、生ごみ、シロップ廃液、おから、排乳、ホエイ、コーヒーかす、茶かすなどが挙げられる。
有機性廃棄物に含まれるグリセロールを炭素源としたメタン発酵系においては、まず真正細菌がグリセロールを分解して得られる中間体の有機酸を生成し、続いて、古細菌が該有機酸を分解してメタンを生成するものと考えられる。本発明によれば、グリセロールを原料としたメタン発酵系に真正細菌及び/又は古細菌を添加することによって、メタン生成を迅速に開始することができる。このようなメタン生成を迅速に開始させるために使用される真正細菌及び/又は古細菌は、本発明の上記使用目的を達成するものであれば限定されないが、例えば、以下のプライマーセットによって検出及び/又は定量することができる塩基配列を有する微生物が挙げられる。
具体的には、
(1)プライマーセット1:
(a)Tri357f(フォワード):5’−CTACGGGAGGCAGCAG−3’(配列番号1)に示される塩基配列(配列番号23のヌクレオチド331−346に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)Tri459r(リバース):5’−CGACTTGTTCTTCTCTGACA−3’(配列番号2)に示される塩基配列(配列番号23のヌクレオチド448−429に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出及び/又は定量される微生物、より具体的には、バンドB7、B8、及び/又はB10に対応する真正細菌である。
(2)プライマーセット2:
(a)Meb390f(フォワード):5’−AAACCTCCGCAATGCGAGCA−3’(配列番号3)に示される塩基配列(配列番号24のヌクレオチド252−271に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)Meb495r(リバース):5’−GCCCAGCCCTTATTCCTGAAGCT−3’(配列番号4)に示される塩基配列(配列番号24のヌクレオチド354−332に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出及び/又は定量される微生物、より具体的には、バンドA8及びA9に対応する古細菌である。
(3)プライマーセット3:
(a)Mes372f(フォワード):5’−TTTACCATGCGGGCAACCGTGAT−3’(配列番号5)に示される塩基配列(配列番号25のヌクレオチド345−367に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
(b)Mes469r(リバース):5’−TTACACTGGTGGACAGCCAG−3’(配列番号6)に示される塩基配列(配列番号25のヌクレオチド413−394に対応)又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
によって検出及び/又は定量される微生物、より具体的には、バンドA13に対応する古細菌である。ここで、本明細書で使用するとき、語句「実質的に同一な塩基配列」とは、対応する上記プライマーの塩基配列と90%以上、95%以上、98%以上、若しくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列、又は上記プライマーの塩基配列の塩基の複数個、好ましくは5個、より好ましくは4個、さらに好ましくは3個、さらにより好ましくは2個、最も好ましくは1個が欠失、付加及び/又は置換されている塩基配列をいう。
プライマーの設計は以下の通りである。上述した通り、プライマーセットAを用いて決定されたバンドB7、B8、及びB10の部分塩基配列から、これらは、トリココッカス・パタゴニエンシス(Trichococcus patagoniensis)株PMagG1(NR 041841)に近縁していた(図1参照)。一方、プライマーセットB、続くプライマーセットCを用いて決定されたバンドA8、A9、及びA13の部分塩基配列から、バンドA8及びバンドA9はメタノバクテリウム・アアルセンセ(Methanobacterium aarhusense)株H2−LR(NR_042895)、バンドA13はメタノスピリリウム・フンガテイ株(NR 074177)に近縁していた(図2参照)。そこで、バンドB7、B8、及びB10については、トリココッカス・パタゴニエンシスPMagG1(NR 041841)の塩基配列情報(配列番号23)に基づいて、BioEdit v7.0.9 General Informationを用いて、トリココッカス・パタゴニエンシスPMagG1(NR 041841)とその他の微生物群における塩基配列の相同性を確認し、塩基配列中で保存性の低い領域を検索して、特異性の高いプライマーをFastPCR(URL:http://www.primerdigital.com/fastpcr.html)の推奨結果を参考に設計した(プライマーセット1、上述)。同様に、バンドA8及びA9については、メタノバクテリウム・アアルセンセ株H2−LR(NR_042895)の塩基配列情報(配列番号24)、並びにバンドA13についてはメタノスピリリウム・フンガテイ(NR 074177)の塩基配列情報(配列番号25)に基づいてプライマーを設計した(それぞれプライマーセット2及び3、上述)。なお、プライマーの設計は、一般的にいわれている以下の条件を満たすように留意した。増幅サイズは80〜150塩基(増幅効率を100%にするため)、プライマー長さは17〜25塩基(長過ぎるとアニーリング効率が低下する)GC含量は40〜60%(45〜55%が望ましい)とし、偏りがないように、部分的にGC、ATリッチができないように注意する、T/C、A/Gが連続しないように注意する、プライマー内部での3塩基以上の相補的配列を避ける、プライマー間での3塩基以上の相補的配列を避ける、プライマー3’末端が2塩基相補する配列を避ける。プライマーの標的塩基配列への特異性を確認するため、所定のPCR反応条件下で定量的PCR法(例えば、SYBRグリーンを利用したリアルタイムPCR法、蛍光プローブ法、競合PCR法)を行い、増幅曲線分析及び融解曲線分析を行って、(i)バンドB7+B8+B10に相当する微生物群、(ii)バンドA8+A9に相当する微生物群、及び(iii)バンドA13に相当する微生物の濃度を定量することができる。
プライマーセット1によって特定される微生物は、グリセロールを分解して揮発性脂肪酸を生成する真正細菌であり、プライマーセット2又は3によって特定される微生物は、生成された揮発性脂肪酸を分解してメタンを生成する古細菌であると考えられる。本発明によれば、グリセロールを炭素源としたメタン発酵槽を新規に立ち上げる場合において、上記の微生物を発酵槽に添加することによって、グリセロールから中間体である揮発性脂肪酸を経てメタン生成を開始するまでの時間を短縮することができる。そこで、メタン発酵槽に添加させる微生物は、プライマーセット1〜3のいずれかによって特定される微生物であってもよく、又は特定された微生物のいずれの組み合わせであってもよい。添加に適した微生物は、典型的には、バンドB7に相当する真正細菌、バンドB8に相当する真正細菌、バンドB10に相当する真正細菌、バンドA8に相当する古細菌、バンドA9に相当する古細菌、及び/又はバンドA13に相当する古細菌である。また、好ましい微生物の組み合わせとしては、限定されないが、(i)バンドB7+B8+B10に相当する微生物群、(ii)バンドA8+A9に相当する微生物群、(iii)バンドA13に相当する微生物、又は(iv)バンドB7+B8+B10+A8+A9+A13に相当する微生物群、などが挙げられる。
使用されるメタン発酵槽は、特に限定されないが、例えば、上向流嫌気性汚泥床法(UASB)を用いたメタン発酵槽であってもよい。このような発酵槽に本発明の上記微生物を添加する場合、微生物を直接添加してもよく、又は微生物を含むグラニュールや微生物を適正な担体に固定した固定化微生物として添加してもよい。なお、微生物を固定化する方法は、当業者に周知であり、例えば、大即信明、中崎清彦編著「工業材料」朝倉書店(2013年)等に記載されている。また、発酵槽に微生物を添加する量(又は比率)は、メタン生成効率を確認しながら適宜調整することができる。例えば、発酵槽に微生物を含むグラニュールを添加する場合、グリセロールに対して馴養されていない、醸造廃液処理のUASBリアクターから得られた汚泥中のグラニュール(多種の微生物を含む)と本発明の微生物を含むグラニュールとの比率は、限定されないが、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4が好ましい。
後述する実施例2に記載されるように、(A)醸造廃液処理のUASBリアクターから得られた多種の微生物を含むグラニュールと本発明の微生物を含むグラニュールを添加した系、及び(B)醸造廃液処理のUASBリアクターから得られたグラニュールのみを添加した系のそれぞれにおいてメタン生成の立ち上げ時間を測定すると、(A)の系では、添加の2日後から顕著なメタン生成が確認され、一方、(B)の系では、(A)の系とほぼ同様なメタン生成がおこるのは添加の13日後からであることが判明した。このように、メタン発酵の新規立ち上げにおいて、本発明の微生物の添加が非常に有効であることが示唆された。上記(A)の系の場合、馴養期間は2日前後である。したがって、本発明の微生物を用いた場合、馴養期間は0〜3日、好ましくは1〜2日である。
3.本発明の微生物を含む組成物
本発明によれば、発酵槽の新規立ち上げにおいて、本発明の微生物を含む組成物を発酵槽に添加することによって、メタン生成が開始するまでの時間を短縮することができる。使用される組成物としての形態は、特に限定されないが、液体、ペースト状、グラニュール状、固定化微生物状(包括固定化物、吸着固定化物、カプセルなど)であってもよく、好ましくはグラニュール状態である。なお、組成物には、本発明の微生物の他、微生物の生育に適した栄養素、培地等を添加してもよい。組成物中に含まれる微生物の量は、適宜変更可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1:グリセロールに対する馴養期間中のメタン生成と微生物の特定
(1)グリセロールに対する馴養
2種の基質溶液として、グルコース、酢酸ナトリウム、及び乳酸を混合した溶液とグリセロール溶液を調製し、グリセロール量を0%から100%に段階的に増加させるようにして、上記2種の比率を変えながら発酵槽に流入させた。最初の2日を除いて、発酵全体でCOD負荷率を一定にした(2.5g COD/L/日)。発酵槽に添加する溶液の成分及び量、並びにグリセロールの段階的な添加量及び期間は以下の表1の通りである。
発酵には、3L容量のPyrex(登録商標)ガラス製(高さ250mm、径120mm)リアクターを使用した。実験の開始時に、醸造廃水を処理するフルスケールUASBリアクターから得られた300mLのグラニュール汚泥を上記リアクターに添加し、表1中の溶液I(2700mL)を添加した。毎日の反復バッチ操作において、グラニュール汚泥は2時間沈殿させ、上清750mLを回収後、表1に記載の流入溶液を新たに750mL添加した。回収した750mLの上清を物理化学的分析及び生物学的分析に供した。リアクターの内容物は、機械的に100rpmで撹拌し、リアクターを水浴中で39℃に維持した。生成されたバイオガスをTedlarバッグに回収した。バイオガスの容積を測定し、ガスクロマトグラフィー−質量分析計(GS−MS)(CP-Polar Bond Q溶融シリカカラム(25m×0.25mm径、フィルム厚3μm、Varian Instruments, CA, US)を備えたShimazu QP-5050A)を用いて、バイオガスの組成を分析した。また、揮発性脂肪酸(VFA)濃度を測定するための液体試料を0.45μmのメンブレンフィルター(DISMIC-25 JP, Advantec, Osaka, Japan)で濾過し、液体試料中のVFA濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(YMC-UltraHT Pro C18カラム(AS12S02-1003WT, YMC Corporation, Kyoto, Japan)を備えたLC-2000 plus HPLC system, Jasco, Tokyo, Japan)によって測定した。
馴養期間(104日間)中のメタン生成速度(mol/日)及び有機酸濃度の測定結果を図3及び4に示す。メタン生成速度はリアクターからの排出ガス及びメタン濃度から計算した。図3に示すように、メタン生成速度は、発酵開始から10日までに急速に増加し、発酵開始から61日後には一定になった。また、61日〜104日間におけるグリセロールからのメタンの平均濃度は約55.3%であった。一方、脂肪酸濃度は、図4A及びBに示されるように、発酵開始時に、グリセロールよりも容易に分解される成分として、例えば、グルコース、酢酸ナトリウム、及び乳酸が、流入溶液に含まれていたため、リアクター中の全脂肪酸濃度が顕著に増加していた。しかしながら、発酵が進行し、流入溶液におけるグリセロールの比率が徐々に増加するにつれて、脂肪酸濃度は減少した。操作期間の61日目から、リアクターは炭素源として100%のグリセロールが供給された。全脂肪酸濃度は、0.2g/L未満(酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びイソ酪酸の総量によって計算された)であり、この濃度は実験終了まで安定していた。脂肪酸は、嫌気性消化中の真正細菌(酸生成菌)によって生成される中間体であって、さらに、古細菌(メタン生成菌)によってメタンに変換される。酸生成菌とメタン生成菌の増殖の不均衡によって、中間体(脂肪酸)の蓄積と嫌気性消化の失敗を引き起こすことが知られている。対照的に、発酵が積極的に進行している場合、脂肪酸が利用され、脂肪酸生成後直ちにメタンに変換されるため、リアクター中の脂肪酸濃度は低い値で安定する。図4A及びBの結果からも明らかなように、酸生成菌とメタン生成菌の均衡が良好に保たれていることが分かる。
(2)グリセロールを炭素源としてメタン生成に関与する微生物の特定
グリセロールを炭素源としてメタン生成に関与する微生物の特定を試みた。実験開始の0日、17日、19日、28日、37日、45日、49日、55日、61日、67日、77日、及び84日目にリアクターから回収したグラニュールを含む汚泥について生物学的分析を行った。汚泥試料(30mL)を44,280×gにて10分間の遠心分離によって、液体試料に含まれる汚泥を分別し、その0.3g(湿重量)をDNA抽出に供した。汚泥由来のDNAは、製造業者の使用説明書に従って、Beads Beating Kit用のISOIL(NO. 319-06201、Nippon Gene Co., Ltd., Toyama, Japan)を用いて抽出された。抽出したDNAをPCRの鋳型として用いた。PCR増幅としては、真正細菌及び古細菌の16S rRNA遺伝子領域をPCR−DGGE分析に使用した。真正細菌用のプライマーには、GCクランプを5’側に付加した357f(フォワード):5’−CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCCTACGGGAGGCAGCAG−3’(配列番号17)、及び518r(リバース):5’−ATTACCGCGGCTGCTGG−3’(配列番号18)を用いた。一方、古細菌用のプライマーとしては、PRA46f(フォワード):5’−(C/T)GGGTCTCGCTCGTT(G/A)CC−3’(配列番号19)、及びPREA1100r(リバース):5’−(T/C)GGGTCTCGCTCGTT(G/A)CC−3’(配列番号20);続いて、PARCH340f(フォワード):5’−CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCCCTACGGGG(C/T)GCA(G/C)CAG−3’(配列番号21)、及びPARCH519r(リバース):5’−TTACCGCGGC(G/T)GCTG−3’(配列番号22)を用いた。PCR増幅は、TaKaRaEx Taq(商標)HS(RR006A, Takara Bio Inc., Otsu, Japan)を用いて行った。増幅は、最終体積として50μLで行い、2μLの鋳型DNA、5μLの10×Ex Taqバッファー、4μLのdNTP Mix(各2.5mM)、0.5μLの各プライマー、0.25μLのTaKaRaEx Taq(商標)HS(5ユニット/μL)、及び37.75μLの滅菌水を含んでいた。PCRは、以下のステップ:真正細菌については、初期変性(94℃にて7分間);7サイクル(94℃にて1分間、65℃にて1分間、及び72℃にて2分間);7サイクル(94℃にて1分間、60℃にて1分間、及び72℃にて2分間);21サイクル(94℃にて1分間、55℃にて1分間、及び72℃にて2分間);並びに最終伸長(72℃で10分間)、古細菌については、初期変性(95℃にて5分間);35サイクル(95℃にて1分間、53.5℃にて1分間、及び72℃にて1分間);最終伸長(72℃にて6分間)を用いて行われた。
PCR産物の2μLを1.0×Tris−ホウ酸塩−EDTA(TBE)アガロースゲルにおける電気泳動によって分析した。Dcode Universal Mutation Detection System(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)をDGGE(変性勾配ゲル電気泳動)に使用した。30%から60%(100%は7M尿素と40%wt/volホルムアミドに対応する)の変性勾配を有するポリアクリルアミドゲル(8%wt/vol、37.5:1のアクリルアミド−ビスアクリルアミド)を用いた。電気泳動は、60℃の定温にて、1×Tris−酢酸塩−EDTA(TAE)中で、3.5時間200Vで行われた。電気泳動後、20μLのエチジウムブロミド溶液を含む1×TAE(200mL)中でゲルを染色し、引き続きEpi−Light UV FA500(Taitec Co., Ltd., Koshigaya, Japan)を用いて可視化し、画像をデジタル処理で捕捉した。
DGGEゲルバンドを切り出し、滅菌水に入れ、−20℃にて30分間凍結させた。その後室温で融解し、ゲルからDNAを抽出した。抽出したDNAを含む水は、上記と同じプライマーを用いて同条件でPCRを行った。PCR増幅産物は、TAクローニングキット(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA, USA)を用いて、製造業者の使用説明に従ってクローニングされ、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)(9031, Takara Bio Inc., Shiga, Japan)を用い、アンピシリンを含むLB培地によりスクリーニングを行った。挿入物を含むコロニー(白色コロニー)を無作為に選択し、5μLの滅菌水に懸濁させた。懸濁させた溶液を用いてPCRをおこない、キットを用いて精製後、シーケンス反応と引き続く精製を行った後、DNAシーケンサーを用いて配列を決定した。
プラスミドへのDNA断片の挿入は、以下のプライマーセット:
M13 F(5’−GTAAAACGACGGCCAG−3’)(配列番号26)
M13 R(5’−CAGGAAACAGCTATGAC−3’)(配列番号27)
を用いたPCR増幅によって確認した。さらに、挿入された断片は、真正細菌についてはプライマーセットAを用い、古細菌についてはプライマーセットCを用いてPCRにより増幅した。PCR産物をDGGEによって試験し、同じ位置に同一のバンドを確認した。PCR産物は、Wizard SVゲル及びPCR Clean−UPシステム(A9281, Promega, Madison, WI, USA)を用いて精製し、配列決定は、BigDyeキット(PerkinElmer Japan, Applied Biosystems Division)を用いて行われた。配列を遺伝子データベース(DDBJ、GenBank)において利用可能な16S rRNA遺伝子と比較した。ヌクレオチド配列の類似性に基づいて、MEGA3.1を用いて系統樹を構築した(図1及び2)。
汚泥試料中の特定の真正細菌及び古細菌のDNAを定量するためにリアルタイムPCRを用いた。上記で抽出されたDNA溶液を鋳型として使用した。リアルタイムPCR分析のためのプライマーセットは、以下の通りである。
リアルタイムPCRは、SmartCycler IIシステム(Cepheid, California, USA)及びSYBRpremix EX Taq(商標)(Takara Bio Inc., Otsu, Japan)を用いて行われた。反応混合物(25μl)には、SYBRpremix EX Taq(商標)、フォワードとリバースプライマー(各0.2mM)、抽出されたDNA(2μL)、及び滅菌水が含まれる。リアルタイムPCRプログラムは、初期変性及びポリメラーゼ活性化ステップ(95℃にて10秒間、続く95℃にて5秒間の変性、60℃にて20秒間のアニーリングと伸長ステップの40サイクル)であった。また、検量線を作製するために、抽出されたDNAを連続的に希釈し、特定の古真正細菌と古細菌の各々の種に対する各プライマーセットを用いてリアルタイムPCRに供した。メタン発酵の馴養中及び馴養後の試料について特定の古真正細菌と古細菌の各々の種に対するCt値を測定後、相対的なDNA濃度、すなわち相対的な菌体濃度を検量線から計算した。
(a)真正細菌の特定
図5Aは、メタン発酵中の真正細菌叢の動的変化をPCR−DGGEパターンの変化として示したものであり、図5Bは、DGGE上に出現した特徴的なバンドに対応するいくつかの真正細菌濃度の時間的な変化を表している。DGGE上のバンドの光強度は、各汚泥試料中のバンドに対応する真正細菌の相対的な濃度に対応している。全真正細菌の濃度がメタン発酵全体で同じであれば、特定のバンドの光強度の変化からその真正細菌の濃度の動的変化を見積もることができる。しかしながら、本研究の条件では全真正細菌の濃度が一定であるという確証がないので、本実験では、真正細菌の濃度変化は、リアルタイムPCRによって直接的に決定した。リアルタイムPCRは、汚泥試料から単離後、その微生物を用いた検量線を作製することによって、多種の微生物が共存したとしても、汚泥中のDNAコピー数/gを単位として個々の微生物の菌体濃度を定量することができる。
しかしながら、注目している特徴的な真正細菌は、単離することはできなかった。したがって、注目している特徴的な真正細菌についてはその相対的な菌体濃度を計算した。汚泥試料に含まれる異なる種類の真正細菌の濃度を定量的に比較するために、各真正細菌の補正された相対濃度をリアルタイムPCRで得られるCt値を用いて計算した。特定の真正細菌と参照となる真正細菌の間におけるCt値の差は、その真正細菌が参照となる真正細菌と同一のDNAの閾値濃度に到達するまでに必要とするPCRの複製回数の差に相当する。よって、各真正細菌の補正された相対濃度は、以下の式を用いて計算された。
RCi(t)は、ある時間(t)におけるある特定の真正細菌iの補正された相対濃度を示す。Ci(t)及びCimaxは、それぞれ、ある時間tにおける検量線から計算されたある特定の真正細菌iの菌体濃度、及び発酵期間中の最大菌体濃度を表す。この計算において、参照の真正細菌は、バンドB7、B8及びB10に対応する真正細菌(これらの細菌はすべてトリココッカス属に属し、プライマーセット1によって検出された)とした。補正された真正細菌の相対濃度を計算する基準となる参照時間Tは、DGGEゲルに多数のバンドが出現した発酵48日目とした。いくつかの真正細菌の補正された相対濃度(相対的濃度をログスケールで表す)を図5Bに示す。
図5Aの結果から、醸造廃水からグルコース、酢酸ナトリウム、及び乳酸の混合物(G0溶液)に基質溶液を変化させた直後から真正細菌のDGGEパターンが変化し、約13個の特徴的なバンドが観察された。これらのうち、バンドB14、B30、B31、B32、B33、B34、B35、及びB36はバンドの輝度が次第に減少する傾向にあり、グリセロールへの馴養段階において支配的でなくなった。これらのバンドに対応する真正細菌は、グリセロールを分解することができなかった可能性がある。リアルタイムPCR分析は、これらの真正細菌のうちの代表例であるB33は、僅かに減少したが、他の共存する真正細菌であるバンドB7、B8、B10、及びB14は増加していたことを示す(図5A)。バンドB7、B8、及びB10は、発酵の後期段階において支配的となった。リアルタイムPCRで測定したところ、これらの真正細菌濃度は、初期段階(0〜17日)において急速に増加し、その後も高い濃度が維持されていた。バンドB7、B8、及びB10の光強度は、17日目から発酵の後期段階まで強くなり、これは、リアルタイムPCRの結果と一致していた。バンドB7、B8、及びB10に対応する真正細菌は、グルコース、酢酸ナトリウム、及び乳酸の混合物の基質、並びにグリセロールの両方の基質を利用することができることを示唆する。バンドB14は、18日から48日にかけての発酵中盤において高い光強度を示し、その期間において、バンドB14の相対的濃度は高かった。この結果は、バンドB14の補正された相対濃度が、この期間中のいずれの他の真正細菌よりも高いという観察を裏付けるものである。結果として、DGGEパターンにおける真正細菌の濃度変化は、リアルタイムPCRによるDNA濃度の定量的測定と本質的に対応することがわかった。よって、バンドB9は選択的プライマーセットを設計することができなかったのでリアルタイムPCRは適用されなかったが、PCR-DGGEパターンから、バンドB9に対応する真正細菌が、グリセロールへの馴養とともに増加する、と考えることができる。
表3は、DGGEバンドに関連した真正細菌のヌクレオチド配列を示す。バンドB7、B8、及びB10から得られたヌクレオチド配列は、ヌクレオチドBLASTサーチ検索から登録されているトリココッカス属のヌクレオチド配列ときわめて相同性が高いことが分かった。
(b)古細菌の特定
図6Aは、メタン発酵中の古細菌叢の動的変化をPCR−DGGEパターンの変化として示したものであり、図6Bは、DGGE上に出現した特徴的なバンドに対応するいくつかの古細菌濃度の時間的な変化を表している。いくつかの古細菌の補正された相対濃度は、真正細菌と同様の方法を用いて決定した。この計算においては、バンドA8及びA9に対応する古細菌(これらの古細菌はメタノバクテリウム・カナギエンセに関連し、プライマーセット2によって検出された)を参照の古細菌として用いた。参照時間Tは、真正細菌の場合と同様に発酵の48日目とした。バンドA8及びバンドA9に対応する古細菌は、1桁分の増加を示し、最大濃度に達した(図6B)。バンドA10及びA11に対応する古細菌は僅かに増加し、一方、バンドA12に対応する古細菌は発酵の進行とともに減少した。バンドA13に対応する古細菌の増加は、バンドA8及びA9に対応する古細菌の濃度よりも低かったが、最も顕著に現れた。補正された相対濃度におけるこれらの変化は、DGGEプロファイルにおける各バンドの光強度の変化と一致していた。バンドA12は緩やかに変化し、これは、メタン発酵中のグリセロール分解の中間化合物がバンドA12に対応する古細菌の増殖に利用されていないことを示唆している。対照的に、バンドA8、A9、A10、A11、及びA13の強度は、馴養中に大幅に増加することから、グリセロール分解の中間化合物が、バンドA8、A9、A10、A11、及びA13に対応する古細菌にとって、好ましい基質であることが示唆される。
表4は、DGGEバンドに関連した古細菌のヌクレオチド配列を示す。バンドA8及びA9は、メタノバクテリウム・カナギエンセに密接に関連していた。この古細菌は、唯一のエネルギー源及び炭素源として水素と二酸化炭素を用いて増殖し、増殖に最適な条件は、pH=7.7〜8.5、40℃であることが知られており、これは本メタン発酵の条件と一致している。好ましい温度及びpHは実験全体で維持されたが、バンドA8及びA9は、メタン発酵期間の中期から後期の段階においてのみ支配的であった。したがって、これらの古細菌の増殖をさらに促すためにグリセロールの分解中間体として供給される炭素源は重要な因子であることが想定される。バンドA10及びA11のヌクレオチド配列は、未分類のこれまで培養できていない古細菌の遺伝子に密接に関連していた。バンドA12は、未分類の古細菌の嫌気性メタン生成古細菌に密接に関連していた。バンドA13は、メタノスピリリウム・フンガテイに密接に関連していた。このメタン生成菌は、最適な増殖温度が30〜37℃であり、pH=6.6〜7.4である湾曲桿菌として報告されている。メタノスピリリウム・フンガテイは、メタン生成において、ギ酸塩、H2及びCO2を基質として利用する偏性嫌気性菌である。メタノスピリリウム・フンガテイは、グリセロール、1,3−プロパジオール及びフコースの分解においてデスルホビブリオ(Desulfovibrio)と同時に現れることが知られている。メタノスピリリウム属は、長鎖脂肪酸の分解において、シントロホモナダセア(Syntrophomonadaceae)科と同時に現れることが知られている。本研究では、シントロホモナダセア科とメタノスピリウム属が同時に検出されており、これらがメタン生成のために共生関係を構築したことを示す。DGGEゲル上に出現した高い光強度を有するバンドで同定できなかったものは、それらの古細菌に対応するDNA断片をクローニングすることができなかったためである。
実施例2:グリセロールで馴養された微生物を用いた新規メタン発酵槽の立ち上げ
(1)メタン発酵用の運転試料の調製
実施例1においてグリセロールへの馴養後のメタン発酵槽からグラニュール汚泥を採取した。このグラニュール汚泥には、グリセロールを炭素源とする支配的な少なくとも上記バンドB7、B7、B10、A8、A9、及びA13に対応する微生物が含まれる。一方、対照として、醸造廃水を処理しているメタン発酵装置から得たグラニュール汚泥をそのまま用いた。
(2)メタン発酵の運転
発酵には、3L容量のPyrex(登録商標)ガラス製(高さ250mm、径120mm)リアクターを2つ使用した。実験の開始時に、リアクターの1つには、上記(1)で調製した特定の微生物を含むグラニュール汚泥100mLと醸造廃水処理のメタン発酵装置から得たグラニュール汚泥200mLを混合した300mLを添加し(運転A)、もう1つには、醸造廃水処理のメタン発酵装置から得た汚泥300mLを添加し(運転B)、実施例1の方法に準じてグリセロールに対する馴養を行ったが、リアクターに添加する溶液の成分及び量、並びにグリセロールの段階的な添加量及び時間は以下の表5の通りである。
実施例1と同様に、生成されたバイオガスの容積を測定し、ガスクロマトグラフィー−質量分析計(GS−MS)を用いて、バイオガスの組成を分析した。また、揮発性脂肪酸濃度を測定した。結果は、運転Aにおいては、添加の2日後から速やかに顕著なメタン生成が確認され、一方、運転Bでは、添加の13日後を経過して活発にメタン生成が行われることが判明した(図7)。このように、メタン発酵の新規立ち上げにおいて、本発明の微生物の添加が非常に有効であることが示唆された。また、運転A及びBにおいて、生成された脂肪酸の濃度を比較すると、運転Aの脂肪酸濃度は、運転Bの脂肪酸濃度よりも低い値を維持し続けた。これは、運転Aでは、脂肪酸が蓄積されることなくメタン生成が高いレベルで継続的に行われていることを示す。一方、運転Bでは、運転初期において脂肪酸濃度が高く、これはメタン生成ステップの低活性が脂肪酸を高濃度に蓄積させていると説明できる(図8)。
さらに、上記運転A及びBにおける発酵槽に含まれる、グリセロールを炭素源としてメタン生成する真正細菌のうちバンドB7、B8、及びB10に対応するトリココッカス濃度を経時的に測定した。バンドB7、B8、及びB10の濃度は、実施例1と同様に、リアルタイムPCR法で相対濃度として求めた。図9に示すように、運転Aでは、汚泥の添加直後から真正細菌の濃度は安定して高レベルで維持された。一方、運転Bでは、バンドB7、B8、及びB10の濃度が徐々に増加し、これは、メタン生成量の経時的な変化と連動していた。
以上のように、グリセロールを炭素源とする微生物を用いることによって、メタン発酵槽の新規立ち上げのための時間を顕著に短縮することができた。

Claims (10)

  1. 有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始させるまでの時間を短縮させる方法であって、下記のプライマーセット:
    (1)プライマーセット1
    (a)配列番号1に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (b)配列番号2に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
    (2)プライマーセット2
    (c)配列番号3に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (d)配列番号4に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び/又は
    (3)プライマーセット3
    (e)配列番号5に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (f)配列番号6に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    によって検出される塩基配列を含む16S rRNA又は16S rDNAを有する、グリセロールを原料としてメタン生成を行う微生物を有機性廃棄物のメタン発酵系に供給することを含む方法。
  2. 前記プライマーセット1によって検出させる微生物が真正細菌であって、配列番号7、8、又は9に示される塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記真正細菌がトリココッカス属種(Trichococcus sp.)である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記プライマーセット2によって検出させる微生物が古細菌であって、配列番号8に示される塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記古細菌がメタノバクテリウム属種(Methanobacterium sp.)である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記プライマーセット3によって検出させる微生物が古細菌であって、配列番号9に示される塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記古細菌がメタノスピリルム属種(Methanospirillum sp.)である、請求項5に記載の方法。
  8. 有機性廃棄物が、食品廃棄物、糞尿、動植物残さ、古紙、及び汚泥からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記馴養期間が0〜20日である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 有機性廃棄物のメタン発酵系においてメタン生成を開始するまでの時間を短縮させるために使用される組成物であって、下記のプライマーセット:
    (1)プライマーセット1
    (a)配列番号1に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (b)配列番号2に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
    (2)プライマーセット2
    (c)配列番号3に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (d)配列番号4に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び/又は
    (3)プライマーセット3
    (e)配列番号5に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び
    (f)配列番号6に示される塩基配列又はこれと実質的に同一の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド
    によって検出される塩基配列を有する微生物を含む組成物。
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