JP2015134331A - 車両部品の補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】損傷部分に対するパテの密着性への信頼性を向上させることができる車両部品の補修方法を提供する。
【解決手段】車両部品の補修方法は、作業者は第1工程として樹脂製部品WKにおける損傷部分DPについて元の形状に近い形状に修正する粗修正を行う。次に、作業者は第2工程として損傷部分DPに対してプラズマ処理を行う。具体的には、作業者は、プラズマトーチ101内の一対の電極104に対して電圧を印加するとともにプラズマトーチ101内に窒素ガスを導入して照射口103からプラズマFを出射させる。そして、作業者は、プラズマトーチ101の照射口103から出射させたプラズマFを樹脂製部品WKにおける損傷部分DPに照射する。これにより、損傷部分DPの表層に窒素を含んだ窒化層NLを形成する。そして、作業者は、その後、窒化層NL上に塗装を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両における樹脂製部品に生じた擦り傷、亀裂または陥没からなる損傷部分を補修する車両部品の補修方法に関する。
従来から、車両における樹脂製部品、例えば、ドアミラーのカバー部分、バンパー、または二輪車のカウルなどに擦り傷、亀裂または陥没などの損傷が生じた場合、損傷部分の補修が行なわれている。例えば、下記特許文献1には、損傷部分に配置したポリプロピレン樹脂製ネットの表面にプライマーを塗布した後、パテを塗布して塗装を行うポリプロピレン樹脂部の補修方法が記載されている。この場合、プライマーは、ポリプロピレン樹脂とパテとの密着性を高めるための下地剤である。
特開2006−103242号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された補修方法においては、プライマー自身も塗料であり損傷部分の表面に塗布されるものであるため、パテが塗布された後の密着性の維持について信頼性が低いという問題がある。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、損傷部分に対するパテの密着性への信頼性を向上させることができる車両部品の補修方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、車両における樹脂製部品または樹脂層を有する樹脂層部品に生じた擦り傷、亀裂または陥没からなる損傷部分を補修する車両部品の補修方法であって、損傷部分の表面に窒素官能基を含む窒化層を生成する窒化層生成工程と、窒化層の表面にパテを塗布するパテ塗布工程とを含むことにある。この場合、樹脂層部品とは、樹脂材以外の材料、例えば、金属材料の表面に樹脂材(例えば、塗料)を塗布した部品である。
このように構成した本発明の特徴によれば、車両部品の補修方法は、樹脂製部品または樹脂層部品における損傷部分の表面にプライマー層を形成するのではなく、損傷部分の表層に窒化層を形成するため、損傷部分に対するパテの密着性への信頼性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記車両部品の補修方法において、窒化層生成工程は、樹脂製部品の表層に炭素原子に対して0.7%以上かつ2.2%以下の窒素原子を含ませることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、車両部品の補修方法は、樹脂製部品の表層に炭素原子に対して少なくとも0.7%以上、好適には0.7%以上かつ2.2%以下の窒素原子を含ませることによって密着性を向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記車両部品の補修方法において、窒化層生成工程は、損傷部分に対して窒素をプラズマガスとする大気圧プラズマ処理を行うことにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、車両部品の補修方法は、損傷部分に対して大気圧プラズマ処理を行うため、補修作業の作業性および補修品質を向上させることができる。すなわち、従来の補修方法においては、塗布作業が極めて煩雑であるとともに施工品質にバラツキが生じ易いため、補修作業の作業性および補修品質が低下するという問題もあった。より具体的には、プライマーは一般に、損傷部分に対してスプレー缶による噴霧によって塗布されるため、損傷部分を含むその周辺に均一に塗布することが困難、予め塗布部分の周辺にマスキングが必要、およびスプレー缶内のプライマー残量が少なくなると噴霧される液滴径にバラツキが生じて所謂ゆず肌が生じ易いという問題があった。しかし、本発明に係る車両部品の補修方法である大気圧プラズマ処理は、プラズマを損傷部分に数秒間照射するのでみであるため、簡単かつ高精度に補修作業を行うことができる。
また、本発明の他の特徴は、前記車両部品の補修方法において、窒化層生成工程は、プラズマガスに1%以下の炭酸ガスを含むことにある。この場合、プラズマガスには、炭酸ガスのほかに、一酸化炭素ガスや一酸化窒素ガス、すなわち、酸素原子を含み室温で気体のガスを広く用いることができる。
このように構成した本発明の特徴によれば、車両の補修方法は、窒化層生成工程においてプラズマガスに1%以下の炭酸ガスを含んでいるため、プラズマガスを活性化し易くできより作業性が良好となる。
また、本発明の他の特徴は、前記車両部品の補修方法によれば、窒化層は、20nm以下であることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、車両部品の補修方法は、窒化層が20nm以下であるため作業工程を簡単かつ短時間に行えるとともに損傷部分を構成する母材の組成変化を最小限に抑えることができる。
また、本発明は、車両部品の補修方法の発明として実施できるばかりでなく、車両部品の補修装置の発明としても実施できるものである。
具体的には、車両部品の補修装置は、車両における樹脂製部品または樹脂層を有する樹脂層部品に生じた亀裂や陥没からなる損傷部分を補修する車両部品の補修装置であって、プラズマを発生させるための一対の電極、および前記一対の電極間に窒素ガスからなるプラズマガスを供給するためのガス噴射ノズルを有して大気中にプラズマを出射するプラズマトーチと、前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段とを備えるとよい。
この場合、プラズマトーチは、プラズマガスとして1%以下の炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給口を有しているとよい。この場合、炭酸ガス供給口は、前記ガス噴射ノズルと共用であってもよい。また、プラズマトーチは、手で保持できる大きさに形成されているとよい。これらによれば、上記車両部品の補修方法と同様の作用効果が期待できる。
本発明に係る車両部品の補修方法に用いる補修装置の構成の概略を示した模式図である。 本発明に係る車両部品の補修方法によって樹脂製部品の表層に形成される窒化層の様子を模式的に示す断面図である。 本発明に係る車両部品の補修方法の作業工程を示す流れ図である。 本発明者が行なった実証実験における各試料名に対する処理条件または処理内容を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとのクロスカット試験の試験結果を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとの耐水性試験の試験結果を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとの水濡れ性測定の測定結果を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとの表面粗さ測定の測定結果を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとの原子組成分析の分析結果を示した表である。 本発明者が行なった実証実験における各試料ごとの窒素(N)に関する原子組成分析の分析結果を示した表である。
以下、本発明に係る車両部品の補修方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る車両部品の補修方法に用いる補修装置100の構成の概略を示した模式図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この補修装置100は、車両における樹脂製部品WK、例えば、ドアミラーのカバー、バンパーまたは二輪車両におけるカウルなどに生じた擦り傷、亀裂または陥没などの損傷部分DPを補修する際に用いられるものである。
(補修装置100の構成)
補修装置100は、プラズマトーチ101を備えている。プラズマトーチ101は、樹脂製部品WKの損傷部分DPに対してプラズマFを照射するための機具であり、主として、ハウジング102、一対の電極104およびガス噴射ノズル106によって構成されている。ハウジング102は、プラズマトーチ101の外表面を構成する部品であり、樹脂材を人で把持可能な箱状に形成して構成されている。このハウジング102には、6つの側面のうちの一つの側面(図示下方に対向する側面)が開放されて照射口103が形成されているとともに、内部に一対の電極104およびガス噴射ノズル106を備えている。
照射口103は、プラズマFを出射する開口部である。本実施形態においては、図示左右方向に延びる長方形状に形成されている。この照射口103の奥側には、一対の電極104が設けられている。一対の電極104は、グロー放電によってプラズマを発生させるための電極であり、互いに対向配置された一対の金属線によって構成されている。この場合、一対の電極104は、照射口103から30mmの幅の帯状のプラズマFを出射可能な間隔で対向配置されている。この一対の電極104は、電気ケーブル105を介して電源装置110に電気的に接続されている。また、一対の電極104の奥側には、ガス噴射ノズル106が設けられている。
ガス噴射ノズル106は、前記一対の電極104間にプラズマ化させるプラズマガスを連続的に供給するためのノズルであり、樹脂材を筒状に形成して構成されている。このガス噴射ノズル106は、ハウジング101を貫通して外部に露出しており、その先端部が可撓性を有するホース107を介してガスボンベ120に接続されている。
電源装置110は、一対の電極104に対して電圧を印加するための電気機器である。本実施形態においては、電源装置110は、一般家庭用電源(100V)から電力供給を受けて一対の電極104に対して10KVから20KVの範囲で所望の電圧を印加することができる。
ガスボンベ120は、ガス噴射ノズル106に供給するプラズマガスとしての窒素ガスを貯留するための容器である。このガスボンベ120に貯留された窒素ガスをガス噴射ノズル106に導くホース107上には流量調整弁121が設けられている。流量調整弁1121は、ホース107内を流れる窒素ガスの流量を所望の流量に調整することができる弁である。
(補修装置100の作動)
次に、上記のように構成した補修装置100を用いた車両部品の補修方法について説明する。本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂の複合材で構成された車両用バンパーを樹脂製部品WKとして、この樹脂製部品WKの外表面に生じた陥没からなる損傷部分DPの補修工程について説明する。
まず、作業者は、第1工程として、損傷部分DPの粗修正を行う。この損傷部分DPの粗修正は、損傷部分DPを可能な範囲で元の形状に近い形状にするとともに、損傷部分DPの表面を滑らかにする工程である。具体的には、作業者は、損傷がキズの場合には損傷部分DPをサンドペーパなどを用いてサンディングしてバリや損傷部分DPの塗膜を除去することにより平滑にする。また、損傷が陥没などの凹みの場合には、作業者は損傷部分DPを熱して半溶融状態として損傷部分DPを可能な範囲で元の形状に近い形状にした後、前記サンディングを行って損傷部分DPを平滑にする。また、損傷が亀裂や割れの場合には、作業者は損傷部分DPを熱して半溶融状態として損傷部分DPを可能な範囲で元の形状に近い形状にした後、前記サンディングを行って損傷部分DPを平滑にする。
次に、作業者は、第2工程として、損傷部分DPにプラズマ処理を行う。具体的には、作業者は、補修装置100を用意した後、プラズマトーチ101を把持した状態で電源装置110の電源をONにするとともに流量調整弁121を開く。これにより、補修装置100は、プラズマトーチ101における照射口103から窒素ガスに基づくプラズマFが出射する。作業者は、電源装置110における操作子および流量調整弁121を操作して電源装置110からの出力電圧およびガスボンベ120からの窒素ガスの流量をそれぞれ調整することによって照射口103から出射されるプラズマFの出射長を40mm程度、出射幅を30mm程度にそれぞれ調節する。
次いで、作業者は、樹脂製部品WKの損傷部分DPにプラズマFの照射を行う。具体的には、作業者は、プラズマトーチ101を把持してプラズマFを樹脂製部品WKにおける損傷部分DPに照射する。この場合、作業者は、損傷部分DPに対してプラズマFを1秒ないし5秒の範囲内で照射する。この場合、作業者は、プラズマFが幅広に形成されているため、損傷部分DPに対して効率的にプラズマFを照射することができる。これにより、プラズマFが照射された損傷部分DPの表層には、図2に示すように、窒化層NLが形成される。
ここで、窒化層NLは、樹脂製部品WKの損傷部分DPの表層において窒素を含む層、より具体的には、主としてC−NH(アミノ基)およびN−C(O)(アミド)の窒素官能基を含む層である。そして、この窒化層NLは、樹脂製部品WKの損傷部分DPの表面から概ね5nm以上かつ20nm以下の範囲で形成される。そして、樹脂製部品WKの損傷部分DPの表層に窒化層NLを生成した作業者は、電源装置110の電源をOFFするとともに流量調整弁121を閉じる。これにより、補修装置100は、プラズマトーチ101の照射口103からプラズマFの出射が停止する。この第2工程におけるプラズマ処理工程が、本発明に係る窒化層処理工程に相当する。
次に、作業者は、第3工程として、樹脂製部品WKの損傷部分DPにパテを塗る。具体的には、作業者は、樹脂製部品WKの損傷部分DPにプラズマ処理を行った直後から直ちにパテを塗る作業を行うことができる。この場合、パテは、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂材で半固形状に構成されている。このパテを塗る作業は従来の作業と同じであるため、詳しい説明を省略する。この第3工程におけるパテを塗る工程が、本発明に係るパテ塗布工程に相当する。
次に、作業者は、第4工程として、樹脂製部品WKの損傷部分DP上に塗布したパテ上にサーフェイサーを塗布する。この場合、作業者は、損傷部分DP上に塗布したパテが十分に乾燥した後に損傷部分DPの周囲をマスキングしてサーフェイサーの塗布を行う。サーフェイサーは、パテ上の細かなキズを埋めたり、塗料の密着性および均一性を高めたりするために塗布する下地剤である。このサーフェイサーを塗布する作業は、従来の作業と同じであるため、詳しい説明を省略する。
なお、作業者は、このサーフェイサーを塗布する作業を省略して後述する塗料を塗布するようにしてもよい。また、作業者は、このサーフェイサーを塗布する作業に代えて前記第2工程におけるプラズマ処理を行ってもよい。この場合、作業者は、損傷部分DPの周囲のマスキングは不要である。このプラズマ処理によってパテ上に窒化層NLを形成することにより塗料の密着性を高めることができる。
次に、作業者は、第5工程として、樹脂製部品WKの損傷部分DPに塗装を行う。具体的には、作業者は、サーフェイサーの乾燥を待って損傷部分DPの周囲を含む損傷部分DP上に塗料を塗布する。この塗料を塗布する作業は、従来の作業と同じであるため、詳しい説明を省略する。
ここで、本発明者が行なった樹脂製部品WKに対するプラズマ処理の実証実験の結果について説明する。本発明者は、図4に示すように、樹脂製部品WKに対してプラズマ処理を行なわずにパテを塗布した場合、樹脂製部品WKに対して4つの処理条件でプラズマ処理を行った後にパテを塗布した場合、樹脂製部品WKに対してイトロ処理を行った後にパテを塗布した場合において、それぞれクロスカット試験、耐水性試験、水濡れ性測定、表面粗さ測定および表層原子組成分析を行った。この場合、実証実験における試料数は、未処理品、プラズマ処理品およびイトロ処理品においてそれぞれ10個ずつである。
ここで、プラズマ処理における4つの条件とは、プラズマガスとして窒素ガスのみを用いて照射時間を1秒および3秒としたものを「N−1処理品」および「N−3処理品」とし、プラズマガスとして窒素ガスに0.1%濃度の炭酸ガス加えた混合ガスを用いて照射時間を1秒および3秒としたものを「NCO−1処理品」および「NCO−3処理品」とする。
この場合、プラズマガスとして窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスを用いる場合には、図1において二点鎖線で示すように、炭酸ガスを貯留するガスボンベ122、ガスボンベ122に貯留された炭酸ガスをガス噴射ノズル106に導くホース108、およびホース108内の炭酸ガスの流量を調節する流量調整弁123を設けるとよい。なお、プラズマガスとしての炭酸ガスは、窒素ガスと別個のガスボンベを用意して供給してもよいが、1つのガスボンベ、すなわち、ガスボンベ120に窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスを充てんして供給するように構成してもよいことは当然である。
また、イトロ処理とは、ブタンの火炎中に少量のシラン化合物を吹き込んで樹脂製部品WKの表層にSiO(酸化ケイ素)層を形成する表面改質処理の一つであり、車両用バンパー補修にしばしば用いられるものである。
まず、クロスカット試験の試験結果について図5を参照しながら説明する。クロスカット試験は、旧JISK5400塗料一般試験(碁盤目試験)方法によって行ったものである。このクロスカット試験によれば、4つの処理条件でプラズマ処理を行ったいずれの試料においても極めて良好な密着性を確認した。
次に、耐水性試験の試験結果について図6を参照しながら説明する。耐水性試験は、各試料を80℃の温水中に10時間放置した場合において、樹脂製部品WKとパテとの境界面にどのような変化が生じるかを確認するものである。この耐水性試験によれば、4つの処理条件でプラズマ処理を行ったいずれの試料においても他の試料に比べて良好な密着性を確認した。
次に、水濡れ性測定の測定結果について図7を参照しながら説明する。水濡れ性測定は、各試料の表面に付着させた水滴の接触角を測定するものである。この水濡れ性測定の測定結果によれば、4つの処理条件でプラズマ処理を行ったいずれの試料においても親水性が向上することが確認された。この場合、「N−3処理品」、「NCO−1処理品」および「NCO−3処理品」については、「イトロ処理品」よりも親水性が向上することが確認された。すなわち、樹脂製部品WKに対してプラズマ処理を行うことによってパテへの密着性が向上することが考えられる。
次に、表面粗さ測定の測定結果について図8を参照しながら説明する。表面粗さ測定は、各試料の表面粗さを二乗平均粗さで測定したものである。この表面粗さ測定の測定結果によれば、樹脂製部品WKに対してプラズマ処理を行っても表面粗さは殆ど変化しないことが確認された。一方、イトロ処理品においては、イトロ処理によって表面粗さが粗くなることが確認され、この粗さによって塗料などの密着性を向上させるものと考えられる。
次に、表層原子組成分析の分析結果について図9および図10をそれぞれ参照しながら説明する。表層原子組成分析は、各試料の表面から6.3nmまでの層(1分子分に相当する深さ)および同表面から13nmまでの層(2分子分に相当する深さ)の2つの層での原子組成を分析したものである。この表層原子組成分析の分析結果によれば、樹脂製部品WKの表層において炭素の若干の低下が確認できるが、樹脂製部品WKの表層に炭素原子に対して0.7%以上かつ2.2%以下の窒素原子を含むように構成すれば密着性を向上させることが確認できる。この場合、図10に示すように、窒素は、「CN−H」および「N−C(O)」の窒素官能基で存在している。
一方、イトロ処理品においては、表層の炭素の略半分が酸化されており、樹脂製部品WKの母材の組成を維持しているとは言えない。すなわち、プラズマ処理によれば、樹脂製部品WKの母材の組成変化を抑えながら密着性を向上させることができる一方で、イトロ処理では樹脂製部品WKの母材の組成の変化が著しく耐久性の点において劣ることが窺える。なお、図10において、「NCO−3処理品」における「〜6.3nm」のNの化学状態は、測定値が不安定であったため範囲を持って示している。
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、車両部品の補修方法は、樹脂製部品WKにおける損傷部分DPの表面にプライマー層を形成するのではなく、損傷部分DPの表層に窒化層NLを形成するため、損傷部分DPに対するパテの密着性への信頼性を向上させることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、プラズマガスとして窒素ガスのみを用いた。しかし、プラズマガスは、上記実証実験でも示されるように、窒素ガスに1%以下の炭酸ガスを含ませた混合ガスを用いることもできる。これによれば、窒化層生成工程においてプラズマガスを活性化し易くできより作業性が良好となる。なお、本発明におけるプラズマガスは、窒素ガスを用いているが、必ずしも窒素ガスのみを用いることを意味するものではなく、樹脂製部品WKの表層に窒素官能基を含有させることができる程度に窒素ガスを含んでいればよく、好適には主成分として窒素ガスを含んでいればよい。
また、上記実施形態においては、窒化層NLを樹脂製部品WKの表面から5nm以上かつ20nm以下の範囲で形成した。しかし、窒化層NLの形成深さは、上記実施形態に限定されるものではなく、20nm以上形成することも可能である。ただ、本発明者の実証実験によれば、窒化層NLは、20nm以下の深さで十分に密着性を確保することができることを確認した。
また、上記実施形態においては、樹脂製部品WKに対してプラズマトーチ101の照射口103から出射させたプラズマFを照射するように構成した。すなわち、上記実施形態における補修装置100は、所謂リモート型のプラズマ照射装置である。しかし、本発明における車両部品の補修方法は、一対の電極104間に樹脂製部品WKを配置してプラズマを照射する所謂ダイレクト型のプラズマ照射装置で構成することもできる。
したがって、補修装置100は、樹脂製部品WKに対して窒素ガスをプラズマガスとしてプラズマ処理することができるように構成されていればよく、例えば、一対の電極104に代えて誘導コイルを用いるとともに、電源装置110についても誘導コイルに高周波電流を印加するように構成することもできる。
また、上記実施形態においては、ポリプロピレン樹脂製の車両用バンパーを樹脂製部品WKとして補修する工程について説明した。しかし、樹脂製部品WKは、車両を構成する樹脂製の部品、例えば、ドアミラーのカバーや二輪車におけるカウルなどに広く適用できるものである。また、樹脂製部品WKを構成する材質もポリプロピレン樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂など各種樹脂材料に広く適用できる。また、本発明は、樹脂製部品以外の部品、具体的には、樹脂材以外の材料の表面に樹脂材の層が形成された樹脂層部品、例えば、金属製のボディーの表面に樹脂製の塗料が塗布されたボディー部品や燃料タンクなどにも適用することができる。
WK…樹脂製部品、DP…損傷部分、F…プラズマ、NL…窒化層、
100…補修装置、
101…プラズマトーチ、102…ハウジング、103…照射口、104…一対の電極、105…電気ケーブル、106…ガス噴射ノズル、107…ホース、108…ホース、
110…電源装置、
120…ガスボンベ、121…流量調整弁、122…ガスボンベ、123…流量調整弁。

Claims (5)

  1. 車両における樹脂製部品または樹脂層を有する樹脂層部品に生じた擦り傷、亀裂または陥没からなる損傷部分を補修する車両部品の補修方法であって、
    前記損傷部分の表面に窒素官能基を含む窒化層を生成する窒化層生成工程と、
    前記窒化層の表面にパテを塗布するパテ塗布工程とを含むことを特徴とする車両部品の補修方法。
  2. 請求項1に記載した車両部品の補修方法において、
    前記窒化層生成工程は、
    前記樹脂製部品の表層に炭素原子に対して0.7%以上かつ2.2%以下の窒素原子を含ませること特徴とする車両部品の補修方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載した車両部品の補修方法において、
    前記窒化層生成工程は、
    前記損傷部分に対して窒素をプラズマガスとする大気圧プラズマ処理を行うことを特徴とする車両部品の補修方法。
  4. 請求項3に記載した車両部品の補修方法において、
    前記窒化層生成工程は、
    プラズマガスに1%以下の炭酸ガスを含むことを特徴とする車両部品の補修方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した車両部品の補修方法において、
    前記窒化層は、20nm以下であることを特徴とする車両部品の補修方法。
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