JP2015160185A - メンブレンバイオリアクター - Google Patents

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修 古嶋
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直 長迫
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Takayuki Iwasaki
隆行 岩▲さき▼
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修 山口
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Abstract

【課題】粒子阻止率を保ちつつ、より高い透過性を有する微多孔膜を使ったメンブレンバイオリアクターを提供する。【解決手段】本願のメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜は、非対称膜である微多孔膜であって、微孔が形成された表面層と;前記表面層を支える、前記微孔よりも大きい空孔が形成された支持層とを備える。前記微多孔膜の素材は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂である。前記表面層は、複数の球状体1を有し、それぞれの球状体1から複数の線状の結合材2が3次元方向に伸びており、隣接する球状体1は、線状の結合材2により互いに接続され、球状体1を交点とした3次元網目構造を形成する。本願のメンブレンバイオリアクターは、この構造を持つ微多孔膜を使うことにより、活性汚泥に対する微多孔膜の目詰まりが大幅に抑えられており、ランニングコストを下げ、膜の洗浄や交換頻度を少なくすることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、メンブレンバイオリアクターに関する。
メンブレンバイオリアクターは、膜分離活性汚泥法とも呼ばれる廃水処理技術に用いられる装置である。従来の沈殿槽式活性汚泥法では沈殿槽を使って汚泥と処理水を分離するところ、メンブレンバイオリアクターでは膜濾過で汚泥と処理水とを分離する。メンブレンバイオリアクターは、沈殿槽式活性汚泥法と比べ、沈殿槽等が不要なため設備を小型化でき、処理水質も高い点で優れている。しかし一方で、目詰まりした微多孔膜の再生や交換が大変であり、あるいは膜濾過に使うポンプや膜表面を洗浄するための曝気にエネルギーが必要でランニングコストが高くなる、などの問題があった。
これを解消するための方法として、特許文献1には、活性汚泥中にポリビニルアルコールゲルなどからなる微小粒子を入れ、液流により膜表面と接触することで固形物を剥離し、運転エネルギーを低減する方法が提案されている。しかしながら、この方法では微粒子が接触した箇所にしか効果が無く、目詰まりを防ぐ十分な効果を得るためには相当量の微小粒子を添加する必要がある。また、膜に付着した異物の種類によっては、微小粒子の接触程度では十分な剥離が期待できない。
別の方法として、特許文献2には、隔膜式電解装置で製造されるアルカリ性水と酸性水を利用してインラインで膜洗浄を行う方法が提案されている。しかしながら、このような薬液を使った洗浄は薬液のコストがかかり、使用する薬液によっては活性汚泥中の生物相に影響を与える可能性がある。
別の方法として、特許文献3には、抗菌性金属イオンを担持させたゼオライトを濾過膜の表面に塗布することで、粘着物質の発生・成長を抑制する方法が提案されている。しかしながら、この方法は菌由来ではない粘着物質に対しては効果が期待できず、あるいはゼオライトの剥離や抗菌性金属イオンの水中溶解により効果の経時低下が懸念される。
特開昭63−214177号公報 特開平10−005784号公報 特開2002−224541号公報
本発明は、メンブレンバイオリアクターに使われている微多孔膜の目詰まりを防止することで、膜交換頻度や運転エネルギーを低減することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、メンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜の構成、特に表面幾何学構造を、最適化することにより、活性汚泥に対する微多孔膜の目詰まりを大幅に抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、微多孔膜を分離膜としている。この分離膜は表面層を持ち、この表面層は複数の球状体1を有し、それぞれの球状体1から複数の線状の結合材2が3次元方向に伸びており、隣接する球状体1は、線状の結合材2により互いに接続され、球状体1を交点とした3次元網目構造を形成している。図1に本願の3次元網目構造の一例を示す。図1は、表面層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
本発明の第2の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記微多孔膜の球状体の粒径が、平均粒径の±10%の幅の範囲に45%以上となる度数分布を有する。
本発明の第3の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記微多孔膜の結合材の長さが、平均長の±30%の幅の範囲に35%以上となる度数分布を有する。
本発明の第4の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様〜第3の態様のいずれか1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記微多孔膜の球状体は、0.05〜0.5μmの平均粒径を有する。
本発明の第5の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様〜第4の態様のいずれか1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、支持層を有する微多孔膜を分離膜としている。なお、支持層とは、表面層と同じ素材から成り、表面層を変形から補強する層である。支持層は、一般にはマクロボイドを含む層である。「マクロボイド」とは、最小で数μm、最大で支持層の厚さとほぼ同じ大きさとなる巨大な空洞を言う。この表面層の厚みは、0.5〜10μmであり、前記支持層の厚みは、20〜500μmである。
本発明の第6の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様〜第5の態様のいずれか1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記微多孔膜が支持層を支える基材層を備える。この基材層の素材は、支持層とは異なる材質から成る。
本発明の第7の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第1の態様〜第6の態様のいずれか1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記微多孔膜の素材がポリフッ化ビニリデン系樹脂である。
本発明の第8の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第7の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、図6に示すように、前記微多孔膜を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した溶液の、横軸をせん断速度、縦軸を溶液粘度の逆数としたグラフが、上側に凸を有する弧を含む曲線である。すなわち、グラフの一部に上側に凸を有する弧を含んでいればよい。
本発明の第9の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第7の態様〜第8の態様のいずれか1の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、図6に示すように、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂10重量部、ポリエチレングリコール10重量部、およびジメチルアセトアミド80重量部の溶液の、横軸をせん断速度として、縦軸を溶液粘度の逆数としたグラフの、せん断速度40毎秒以下の領域を2次関数で近似でき、前記2次関数の2次係数は、10−8より小さい。
本発明の第10の態様に係るメンブレンバイオリアクターは、上記本発明の第7の態様または第9の態様に係るメンブレンバイオリアクターにおいて、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60万〜120万である。
本発明のメンブレンバイオリアクターは、表面層が複数の球状体を有し、前記球状体と、前記球状体を互いに接続する線状の結合材とで、前記球状体を交点とする3次元網目構造を形成した微多孔膜を使用しているため、活性汚泥等に対して目詰まりがしにくい。そのため、一般的な微多孔膜を使用した従来のメンブレンバイオリアクターと比べて、ランニングコストを抑えることができ、さらには膜の洗浄や交換を少なくすることができる。
第1の実施の形態に係る微多孔膜が有する表面層の表面写真である。 従来のPVDF製濾過膜の写真である。 実施例1の微多孔膜が有する表面層の表面写真であり、球状体の粒径と線状の結合材の長さの測定に用いた写真である。 第2の実施の形態に係る微多孔膜の製造方法を示すフロー図である。 (a)は、実施例1の微多孔膜の断面写真である。(b)は、表面層の断面部分の拡大写真である。 実施例1の原料液の溶液粘度の逆数とせん断速度の関係示すグラフである。 非対称膜の断面図(左)と対称膜の断面図(右)を示す模式図である。(出典:特許庁ホームページ/平成17年度 標準技術集 水処理技術/1−6−2−1 対称膜と非対称膜) メンブレンバイオリアクターの構成例を示す模式図である。 実施例1と比較例1の耐ファウリング性を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターについて説明する。図1は、第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜の表面(表面層側)を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真の一部である。図1に示すように、表面層は複数の球状体1を有し、それぞれの球状体1から複数の線状の結合材2が3次元方向に伸びており、互いに隣接する球状体1は、線状の結合材2により接続され、球状体1を交点とした3次元網目構造を形成しており、生じた空隙が孔となっている。そのため、表面層に孔ができやすく、その孔が変形しにくい。
従来のメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜の表面は、本発明でいう「球状体」または「結合材」を有していたとしてもどちらか一方しか有していない。例えば、本発明でいう「結合材」に相当する部分しか持たない微多孔膜は、例え均一に結合していたとしても、濾過膜として使えるだけの強度を維持することが難しくなる。それを防ぐために、「結合材」に相当する部分を太くすると、線状ではなくむしろ面状となり、孔を微細にすることが難しい。図2は、一例として、そのような構造を持つ、従来の微多孔膜(ポリフッ化ビニリデン製)の走査型電子顕微鏡写真である。第1の実施の形態に係る微多孔膜は、表面層が有する球状体1とそれらを互いに接続する線状の結合材2により、同程度の平均流孔径を有する従来の微多孔膜よりも高い透過性を有している。ここで「平均流孔径」とは、ASTM F316−86で求められる値であり、微多孔膜を濾過膜として使う場合、その阻止粒径に大きく影響する。これとは逆に、「球状体」に相当する部分しか持たない微多孔膜は、球と球とが接した構造の濾過膜となる。このような濾過膜が持つ孔は、球と球との隙間のみであり、通水性が極めて悪くなる。球と球とが部分的に線状の物質で繋がった構造の膜がいくつか報告されているが、このような膜は孔の大きさや形状が不均一となるため、濾過膜には適さない。つまり、本発明の3次元網目構造は、球状体と結合材の両方が存在して初めて発現するものである。このため、従来のメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜では、本発明の効果が得られない
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜と、従来のメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜の違いは、それだけに留まらない。微多孔膜が、本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜のような構造を取ると、球状体が膜表面にほぼ同一平面上に並ぶため、膜表面に大きな凹凸が生じることがない。さらに球状体1は、図1に示すように、その大きさがほぼ揃っており、均一に分散している。そのため、球状体1と球状体1の間に生ずる空隙の形状と大きさが揃った表面層を構成する。球状体1間の空隙は、隣接する球状体1を架橋する線状の結合材2により区切られ、その結果として形成された孔は、外周曲線に凹みがない卵型またはほぼ卵型となる。このように、孔の形状が均質の微多孔膜となる。そのため、メンブレンバイオリアクターの活性汚泥に含まれる、粒子や粘性を持つ物体が膜内部に入り込みにくく、その結果この微多孔膜は目詰まりしにくい。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターに使用する微多孔膜の表面層が有する球状体の平均粒径は、0.05〜0.5μmである。好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.2〜0.3μmである。球状体の粒径は、微多孔膜の表面層側表面を球状体が明確に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて写真を撮り、少なくとも50個以上の任意の球状体の粒径を測定し、数平均することにより求めることができる。具体的には、実施例に記載したとおりである。なお「粒径」とは、球状体の外周をその周囲の孔を含まないような最大直径の真円で囲んだ場合の当該真円の直径である。表面層が有する孔の形状をより均一にするために、個々の球状体の形状は完全な球体に近いことが好ましい。好ましい球状体の大きさは、透過を阻止することが必要な微粒子の大きさによって最適値が異なる。メンブレンバイオリアクターの場合は、球状体が上記の範囲を取ることで、高い処理水質と透過性の双方を達成することができる。
球状体の大きさはばらつきが少ないことが好ましい。このため、球状体の粒径は、度数分布において、平均粒径の±10%幅の範囲に45%以上、さらには50%以上の度数分布を有していることが好ましい。より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。平均粒径の±10%の幅の範囲に45%以上の度数が分布していると、表面層の球状体はより均一の形状・大きさを有し、球状体と球状体の間に孔径が均一の(揃った)空隙を形成することができる。
球状体は、表面層の表面に均質に分散しているのが好ましい。このために、球状体とその最も近くにある球状体との距離(球状体間の中心間距離)は、度数分布において、平均距離の±30%幅の範囲に50%以上の度数分布を有していることが好ましい。より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。平均距離の±30%幅の範囲に50%以上の度数分布を有していると、表面層の表面に球状体がより均質に分散するため、この場合も球状体と球状体の間に孔径が均一の(揃った)空隙を形成することができる。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜の表面層が有する線状の結合材の平均長は、0.05〜0.5μmである。好ましくは0.1〜0.4μm、より好ましくは0.2〜0.3μmである。線状の結合材の長さは、その多くが平均長に近い値をとり、均一な長さとなる。また、平均長は製造された微多孔膜により異なり、上記のとおり値には幅がある。そのため、表面層に形成される孔の大きさが異なり、平均流孔径の異なる種々の微多孔膜を得ることができる。
線状の結合材の平均長は、微多孔膜の表面層側表面を線状の結合材が明確に確認できる倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて写真を撮り、少なくとも100本以上の任意の線状の結合材の長さを測定し、数平均することにより求めることができる。具体的には、実施例に記載したとおりである。「線状の結合材の長さ」とは、球状体の外周をその周囲の孔を含まないような最大直径の真円で囲んだ場合の当該真円間の距離である。
線状の結合材の長さは、度数分布において、平均長の±30%幅の範囲に30%以上、さらには50%以上の度数分布を有していることが好ましい。より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは、60%以上である。平均長±30%の幅の範囲に30%以上の度数が分布していると、表面層の球状体はより均質に分散され、球状体と球状体の間に孔径が均一の(揃った)空隙を形成することができる。
球状体の平均粒径と線状の結合材の平均長の比率は、3:1〜1:3の間にあることが好ましい。球状体の平均粒径が線状の結合材の平均長の3倍より小さいと、微多孔膜の表面層表面の開口部が大きくなり、高い透過量がより顕著に得られるようになる。また、球状体の平均粒径が結合材の平均長の3分の1より大きいと、1つの球状体に接続できる結合材の数が多くなるので、濾材の脱落が少なく、耐圧性が高いという特徴がより顕著に得られるようになる。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜の平均流孔径は、0.05〜8μmであり、好ましくは0.05〜0.5μmであり、より好ましくは0.07〜0.25μm、さらには0.1〜0.25μmである。すなわち、微多孔膜を濾過膜として用いた場合、平均流孔径の大きさに応じて径が約0.05〜8μm以上の物質が分離可能となる。平均流孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86)に基づく値である。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜は、純水透過流束が1.5×10−9/m/Pa/s以上であり、好ましくは30×10−9/m/Pa/s以上、より好ましくは60×10−9/m/Pa/s以上である。純水透過流束が1.5×10−9/m/Pa/s以上であると、十分に膜の通水性が得られ、通水性が十分に得られない場合により高い濾過圧力等が必要になり運転コストが上がるといった問題を回避することができる。なお、純水透過流束は、実施例1に示すとおり、微多孔膜にある濾過圧力で通水させ、単位時間あたりの流量を測定し、その流量を有効濾過面積と濾過圧力で割ることで求めることができる。
本発明の第1の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜の素材となる高分子は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(それを主成分(50重量%以上含有)とするものも含まれる)が好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂を挙げることができる。物性(粘度、分子量等)の異なる複数種類のフッ化ビニリデンホモポリマーを含有してもよい。または、複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有してもよい。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーならば特に限定されず、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマーとの共重合体であり、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上のフッ素系モノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。特に好ましくは、フッ化ビニリデンホモポリマー(ポリフッ化ビニリデン)である。なお、必ずしも純粋なポリフッ化ビニリデン系樹脂である必要は無く、他の特性(例えば抗菌性)を付与させるために、本発明の効果を妨げない範囲で、その他のポリマーを混合してもよい。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂はフッ素樹脂であるため、機械的、熱的、化学的に安定している。その他の代表的なフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、あるいはテトラフルオロエチレンを主とする共重合樹脂(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体など)などのいわゆる四フッ化系樹脂があるが、四フッ化系樹脂は分子間の絡みが弱いため、機械的強度が低く微多孔膜とした場合に濾過圧力で孔が変形しやすい。また、高温で使用した場合にはさらに孔が変形しやすくなるという欠点がある。これらの点でポリフッ化ビニリデン系樹脂の方が優れている。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、他のフッ素樹脂(例えばPTFE)に比べて加工し易く、加工後の2次加工(例えば切断や他素材との接着)もし易いという利点を有する。
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂のうち特に好ましくは、以下の特徴を有する樹脂である。すなわち、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した溶液において、溶液粘度(単位cP)の逆数を縦軸、せん断速度(単位1/s)を横軸とするグラフの一部が、2次関数で近似でき、図6に示すように、せん断速度の低領域(40/s以下)において、2次関数が上側に凸を有する弧を含む曲線であるポリフッ化ビニリデン系樹脂であることが好ましい。これは、せん断速度の低領域において、溶液の粘度が急激に上がる地点があることを示すものである。
例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂10重量部、ポリエチレングリコール10重量部、ジメチルアセトアミド80重量部の溶液では、溶液粘度の逆数とせん断速度のグラフの一部が示す2次関数の2次係数が、10−8より小さくなるようなポリフッ化ビニリデン系樹脂であることが好ましい。
本発明のメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜の表面層は、原料液が非溶媒と接触し、原料液中の溶媒が非溶媒と置換することにより誘起される。上記のような特徴を有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いると、置換が進むにつれて原料液の粘度が急速に変化するため、球状体と線状の結合材からなる3次元網目構造が発現すると考えられる。実際に、2次係数が10−8より小さくなるポリフッ化ビニリデン系樹脂の原料液から、本願の3次元網目構造が発現することが実施例により確認されている。
さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、60万〜120万であり、60万〜100万であることが好ましく、より好ましくは70万〜95万、さらに好ましくは79万〜90万である。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量が高いほど、球状体と線状の結合材が生成しやすくなり、3次元網目構造を有する表面層を備えた微多孔膜を容易に得ることができるようになるので、後述する良溶媒や貧溶媒などの選定幅が広がり、微多孔膜の透過性や膜強度をより上げることが容易になる。また、重量平均分子量を高すぎないようにすることで、原料液の粘度を抑えることができ、均一に塗布しやすくなり、支持層と基材層の混在部分がよりできやすくなるため好ましい。
なお、本発明の効果を妨げない範囲で、他素材との接着性や膜強度を上げるために、この範囲を外れる重量平均分子量のポリフッ化ビニリデンを混合してもよい。
ここで「良溶媒」とは、原料液を塗布する温度条件で、必要量のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させることが可能な液と定義する。また「非溶媒」とは、塗膜中の良溶媒を非溶媒に置換する温度条件で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解も膨潤もさせない溶媒と定義する。また「貧溶媒」とは、必要量のポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解させることはできないが、それ未満の量を溶解させることができるか、あるいは膨潤させる溶媒と定義する。
良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等を挙げることができる。これらの良溶媒は混合して用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で貧溶媒、非溶媒が含まれていてもよい。製膜を常温で行う場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体等が挙げられる。非溶媒は、良溶媒に溶解する必要があり、良溶媒と自由比率で混合するものが好ましい。非溶媒に意図的に良溶媒や貧溶媒を加えてもよい。
良溶媒と非溶媒の置換速度は、本発明の3次元網目構造の発現に影響するため、その組合せも重要である。組合せとしては、3次元網目構造の発現のし易さから、NMP/水、DMAc/水、DMF/水などが好ましく、DMAc/水の組合せが特に好ましい。
製膜用の原料液には、素材となるポリフッ化ビニリデン系樹脂とその良溶媒の他に、多孔化を促す多孔化剤を添加することが好ましい。多孔化剤としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒への溶解を阻害せず、非溶媒に溶解し、微多孔膜の多孔化を促す性質を有するものならば、なんら限定されるものではない。その例としては有機物の高分子物質または低分子物質などがあり、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性ポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル(モノ、トリエステル体等)等の多価アルコールのエステル体、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド低モル付加物、ノニルフェノールのエチレンオキサイド低モル付加物、プルロニック型エチレンオキサイド低モル付加物等のエチレンオキサイド低モル付加物、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアミン塩、ポリアクリル酸ソーダ等の界面活性剤、グリセリンなどの多価アルコール類、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類を挙げることができる。これらは1種類で用いても2種類以上の混合物で用いてもよい。
これらの多孔化剤は、重量平均分子量50,000以下のものが好ましく、より好ましくは30,000以下であり、さらに好ましくは10,000以下である。重量平均分子量が50,000以下である場合は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液へ均一に溶解させることができる。この多孔化剤は、非溶媒中で良溶媒が抽出され構造凝集が起こる時に良溶媒に比べて比較的長時間多孔質樹脂中に残留する。そのため、膜構造に大きく影響する。非溶媒に水を用いる場合の多孔化剤としては、これらの機能を発揮しやすく、球状体と線状の結合材からなる3次元網目構造を発現しやすいことから、適度な粘性を持つ水溶性の液が好ましい。より好ましくはポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンであり、特にポリエチレングリコールが好ましい。その重量平均分子量が200〜1000であるものがさらに好ましい。重量平均分子量を200〜1000とすることで、特に構造が発現しやすくなる。また、重量平均分子量を1000以下とすることで、構造発現後に多孔化剤を除去することが容易となる。
多孔化剤を用いると、良溶媒抽出に伴う構造凝集が緩やかになってから、多孔化剤が抽出されるので、得られた多孔質樹脂は空孔性が高いものになる。得られる構造は、多孔化剤の種類、分子量、添加量等に依存する。多孔化剤の添加量が少ないとこのような効果は得にくくなるが、添加量が多いと支持層に生じるマクロボイドが大きくなり膜強度が低下する場合もある。したがって、多孔化剤は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂重量に対して0.1倍〜2倍量を添加することが好ましく、0.5倍〜1.5倍量とすればさらに好ましい。
本発明の第2の実施の形態に係るメンブレンバイオリアクターで使われる微多孔膜の製造方法は、以下のとおりである。なお、図4は、製造方法の大まかな流れを示している。
(1)原料液の調製工程(S01):
まず、微多孔膜の素材となる高分子を高分子に対して良溶媒となる溶媒に溶解して原料液を作る。具体的には、例えば、5〜20重量部の素材としてのポリフッ化ビニリデンと、素材重量に対して0.1倍〜2倍量の多孔化剤としてのポリエチレングリコールを、70〜90重量部のジメチルアセトアミド(DMAc)に常温〜100℃で溶解した後、常温に戻して原料液を作る。
(2)多孔化工程(S02):
次に、ガラス板やステンレス板などの平滑な塗布台の上に基材層としての不織布を置き、その上に原料液を塗布する。なお、不織布等を置かず、ガラス板等を支持体としてそれらの上に直接塗布してもよく、その場合は基材層が無い微多孔膜となる。また、塗布は、製膜後の厚さが10〜500μmとなるように行うことが好ましい。塗布後、直ちにまたは一定時間放置した後、素材の高分子に対しての非溶媒に3分〜12時間浸ける。塗布後の放置時間を設ける場合は、5〜60秒程度が好ましい。放置時間を長く取ると平均流孔径が大きくなるが、長く取りすぎるとピンホールが生じて本発明の効果が十分に得られないことがある。良溶媒と非溶媒とが混合し、非溶媒の混入により良溶媒中の高分子の溶解性が低下し、高分子が析出し多孔化が生ずる(非溶媒誘起相分離法(NIPS))。
具体的には、例えばガラス板上にポリエステル不織布を置き、原料液を塗布する。塗布には、ベーカーアプリケータ、バーコーター、Tダイなどを用いることができる。非溶媒に浸けた後、塗布台としてのガラス板を除去し、微多孔膜を得る。
(3)洗浄・乾燥工程(S03):
最後に、得られた微多孔膜を、水を数回入れ替えて洗浄する。一般にDMAcは水よりも蒸発しにくいため、洗浄が不完全だと溶媒(DMAc)が濃縮し、作られた孔構造が再び溶解することがあるため、複数回の洗浄が好ましい。排水量を減らし、洗浄速度を早めるために、洗浄に温水を用いてもよいし、超音波式洗浄機を用いてもよい。洗浄した後、微多孔膜を乾燥してもよい。乾燥は、自然乾燥でもよいし、乾燥速度を速めるために、熱風式乾燥機や遠赤外乾燥機を用いてもよいし、乾燥時の微多孔膜の収縮やうねりを防ぐため、ピンテンター式乾燥機としてもよい。
多孔化工程(S02)のとおり、製膜時には基材層を備えてもよい。基材層を備えると、浸漬時にポリマーの収縮が抑制されるため、基材層を備えない場合と比較して十分な空隙を有する表面層を得ることができる。または、原料液の塗布の際に原料液が不用意に流れ出すのを防ぐこともできる。これは、特に粘性の低い原料液の場合に有効である。さらに、基材層は濾過の際の補強材として機能し、膜がより濾過圧に耐えられるようになる。基材層としては、抄紙、カード法、スパンボンド法やメルトブロー法などで得られた不織布、織布、多孔質板などを用いることができ、その素材にはポリエステル、ポリオレフィン、セラミック、セルロースなどを用いることができる。中でも、柔軟性、軽量性、強度、耐熱性などのバランスに優れることから、ポリエステル製不織布が好ましい。なお、不織布を用いる場合、その目付は15〜150g/mの範囲が好ましく、30〜70g/mの範囲がさらに好ましい。目付が15g/mを上回ると、基材層を設けた効果が十分に得られる。また、目付が150g/mを下回ると、折り曲げや熱接着などの後加工がし易くなる。
以上のとおり、本発明のメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜は、表面層が均質の球状体と線状の結合材による3次元網目構造を有するため、表面層の孔の大きさや孔径が揃っており、高い透過性(例えば高通水性、高通液性)を実現することができる。すなわち、孔の大きさや形がより均一であるため、孔径分布のより狭い膜となり、粒子阻止率を保ちつつ従来にない透過性を得ることができる。さらに、膜材料としてポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いているため、優れた耐薬品性、高い耐熱温度(〜120℃)を有することができる。なお、本発明の微多孔膜は、平膜であっても、中空糸膜であってもよい。本発明のメンブレンバイオリアクターに使われる微多孔膜を平膜とした場合には、一般の平膜と比べて、膜の目詰まりを表面洗浄しやすいという利点がある。また、本発明の微多孔膜を中空糸膜とした場合には、一般の中空糸膜と比べて逆洗の効果が出やすいという利点がある。
以上のようにして作られた微多孔膜を活性汚泥槽と吸引ポンプを繋ぐ配管の途中に液密に組み込み、吸引ポンプから清澄な濾過水が得られるようにすることで、メンブレンバイオリアクターとする。この組み込み方に特に制限は無いが、着脱が容易なカートリッジにするのが、保守性を上げるなどのために好ましい。例えば平膜状の微多孔膜を使う場合、カートリッジの形状は、平板の内部に空洞部を設け、平板の側面の1箇所と空洞部とを繋ぐ穴を設け、平板両面の表面と空洞部との間を繋ぐ穴を数箇所設け、その平板両面の表面に微多孔膜を液密に貼り付けたものなどが使用できる。メンブレンバイオリアクターの構成例を図8に示す。活性汚泥槽3に、活性汚泥4を入れておく。メンブレンバイオリアクターカートリッジ数枚を接続してメンブレンバイオリアクターユニット5とし、活性汚泥槽3に入れる。この例では、メンブレンバイオリアクターユニット5を2台入れている。それぞれのメンブレンバイオリアクターユニット5に、吸引ポンプ6、流量計7を接続する。メンブレンバイオリアクターユニット5と吸引ポンプ6の間に圧力計8を接続して、膜の差圧を読み取る。そして、汚水供給ポンプ9を使って活性汚泥槽3に汚水を投入する。
以下に、実施例等を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの記載により本発明の範囲が限定されることはない。
〔使用した部材等〕
ポリエチレングリコール600(重量平均分子量600)には和光純薬工業(株)製の試薬1級を、ジメチルアセトアミドには和光純薬工業(株)製の試薬特級をそのまま用いた。
ポリフッ化ビニリデンにはアルケマ製ポリフッ化ビニリデン「カイナーHSV900」(重量平均分子量80万、数平均分子量54万)を用いた。
基材層としてのポリエステル不織布には、日本バイリーン製H1007(目付70g/m)を用いた。
ガラス板は、大きさ50cm×120cmのものを用いた。
水は、ミリポア製「DirectQ UV」(商品名)で製造した比抵抗値18MΩ・cm以上の超純水を用いた。
〔評価方法〕
実施例および比較例で得られた微多孔膜の物性値は下記の方法にて測定した。
1)ポリマーの平均分子量
数平均分子量、重量平均分子量は、ポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、カラムとしてShodex Asahipak KF−805Lを用いて、DMFを展開剤としてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。
2)表面層の厚み、支持層の厚み
図7に示すとおり、得られた微多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影し、この写真を画像解析して、表面からマクロボイドが発生するまでの長さを「表面層の厚み」、微多孔膜全体の厚みから表面層の厚みを引いた値を「支持層の厚み」とした。
3)平均流孔径
平均流孔径は、PMI社製「Capillary Flow Porometer CFP−1200AEX」を用い、ASTM F316−86に準じて求めた。
4)純水透過流束
得られた微多孔膜を直径25mmに切り取り、有効濾過面積3.5cmのフィルターシートホルダーにセットし、濾過圧力50kPaで加圧して超純水を5mL通水させ、通水に要する時間を測定した。流束を下記式(1)により求めた。
流束(10−9/m/Pa/sec)=通水量(m)÷有効濾過面積(m)÷濾過圧力(Pa)÷時間(sec) ・・・(1)
5)球状体の数、平均粒径、度数分布
微多孔膜の表面層表面を、走査型電子顕微鏡で、倍率2万倍で写真撮影した。そして、図3に示すとおり、写真中央の縦4μm×横6μmの領域に中心部を有する球状体について、球状体の外周を、その周囲の孔が含まれないような最大直径の真円や楕円で囲み、その真円や楕円の直径(楕円の場合は長径と短径の平均)を球状体の粒径とした。ただし、接続する線状の結合材の数が3以下のものは、線状の結合材との区別が難しいため、球状体とはみなさなかった。そして、該領域に含まれる全球状体の直径の平均値を、平均粒径とした。また、全球状体の中から、平均粒径の±10%の幅の範囲に含まれる粒子を数え、その数を、球状体の全粒子数で割って、度数分布を求めた。
6)球状体間の中心間距離、度数分布
5)で描いた円に対し、その円に最も近い位置にある別の円との中心間距離をそれぞれ求めた。その中心間距離の平均値を、平均距離とした。また、それぞれの中心間距離の中から、平均距離の±30%の幅の範囲に含まれるものを数え、その数を、球状体の全粒子数で割って、度数分布を求めた。
7)結合材の数、平均長、度数分布
図7に示すとおり、該領域に含まれる球状体の間にある全ての結合材(ただし2つの球状体が複数の結合材で結ばれている場合にはその内の1本のみ)の数と長さを測定し、全結合材の数と平均長を求めた。また、その中から、その平均長の±30%の幅の範囲に含まれる結合材の数を数え、その数を全結合材の数で割って、度数分布を求めた。
8)2次係数
Brookfield社製B型回転粘度計DV−II+Proを用いて、せん断速度を変えながら25℃における溶液粘度を測定し、溶液粘度(単位cP)の逆数に対するせん断速度(単位1/s)を2次関数(Y=aX+bX+c)で相関させた際の2次係数(a、単位(1/s)−2)を求めた。
9)表面層、支持層の厚み
微多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡で、倍率1000倍で写真撮影した。その画像を解析し、表面層、支持層それぞれの厚みを求めた。
10)メンブレンバイオリアクターの耐ファウリング性
メンブレンバイオリアクターの吸引ポンプを、流束が0.9m/m/日となるように運転し、メンブレンバイオリアクターの圧力計を読み取って膜の差圧を記録した。
[実施例1]
〔原料液の調製工程〕
ジメチルアセトアミド80重量部に対し、ポリフッ化ビニリデン「カイナーHSV900(重量平均分子量80万)」を10重量部、ポリエチレングリコール10重量部を混合し、90℃で溶解した。それを常温に戻して原料液とした。
〔多孔化工程〕
ガラス板上に、基材層としてのユニチカ製スパンボンド不織布を置き、その上に原料液を、バーコーターを使って厚さ200μmで塗布した。塗布後、直ちに超純水に入れ、膜を多孔化した。超純水を数回入れ替えて洗浄し、その膜を水から出し、乾燥して微多孔膜とした。
〔カートリッジ形状への加工〕
幅50センチメートル、長さ100センチメートル、厚さ5ミリメートルで、内部に空洞を設けたABS樹脂製の板に、平板両面の表面と空洞部との間を繋ぐ穴を数箇所設け、その平板両面の表面に、両面の合計有効濾過面積が0.8平方メートルとなるよう、微多孔膜を液密に貼り付けた。そして、平板の側面1箇所と空洞部とを繋ぐ穴を設け、その側面1箇所にチューブを接続してカートリッジを作製した。そのカートリッジ10枚が縦に10枚入るメンブレンバイオリアクターユニットを作製し、カートリッジのチューブ10本をまとめて吸引ポンプに接続できるようにした。
[比較例1]
微多孔膜に、クボタ製液中膜510型に使われている膜を用いた他は、全て実施例1と同じ方法でメンブレンバイオリアクターユニットを作製した。
〔メンブレンバイオリアクター〕
幅2m、奥行き1m、深さ2mのステンレス製容器に、3立方メートルの活性汚泥を入れて活性汚泥槽とし、その活性汚泥槽に実施例1および比較例1のメンブレンバイオリアクターユニットを1台ずつ入れ、それぞれのユニットに吸引ポンプに接続し、それぞれのユニット下部から曝気して、メンブレンバイオリアクターとした。

Figure 2015160185
図6に、実施例1の原料液について、溶液粘度(単位cP)の逆数とせん断速度(単位1/s)を2次関数で相関させた際のグラフを示す。本願の3次元網目構造が発現した実施例1の原料液は、せん断速度の低領域において、上側に凸を有する明確な弧を含む曲線を描いた。すなわち、せん断速度40/s以下の領域において、急激に粘度が上がるといった特徴を示した。具体的には、2次係数aが10−8よりも小さい値である原料液から作られた膜に本願の3次元網目構造が発現した。
表1の「○」は、球状体を有する3次元網目構造が発現したことを示す。「×」は、球状体を有する3次元網目構造を有しないことを示す。
表2に実施例1の球状体の粒径の特徴を示す。実施例1の微多孔膜が有する表面層は、球状体の平均粒径が0.190μmである。さらに、球状体の62%にあたる112個の球状体は、その粒径が平均粒径の±10%の範囲内に入るものである。
Figure 2015160185

表3に球状体の粒径の度数分布表を示す。粒径は、幅0.05μm(0.15〜0.20μm)内に集中しており、球状体が均一の粒径を有していることがわかる。
Figure 2015160185
表4に実施例1の線状の結合材の特徴を示す。実施例1の微多孔膜が有する表面層は、線状の結合材の平均長が0.219μmである。さらに、結合材の61%にあたる259本の結合材は、その長さが平均長の±30%の範囲内に入っている。

Figure 2015160185

表5に線状の結合材の長さの度数分布表を示す。度数分布は、0.20〜0.25μmの範囲がピークとなるように増加減少しており、結合材の長さが特定の範囲に集中しているのがわかる。
Figure 2015160185

表6に実施例1について、球状体の平均粒径、球状体間の中心間距離の平均距離、結合材の平均長を示す。
Figure 2015160185
図9は、実施例1と比較例1の耐ファウリング性を比較したものである。図9の横軸は経過時間、縦軸は膜の差圧であり、膜の差圧の経時変化が小さいほど耐ファウリング性が高いことを意味する。50日経過後の差圧は、実施例1が−3キロパスカル、比較例1は−12キロパスカルであり、実施例の方が耐ファウリング性が高いことを示している。
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組み合わせも本発明に包含される。
1 球状体
2 線状の結合材

Claims (10)

  1. 微多孔膜を分離膜としたメンブレンバイオリアクターであって、
    該微多孔膜は、
    微孔が形成された表面層を備え;
    前記表面層は、複数の球状体を有し、それぞれの前記球状体から複数の線状の結合材が3次元方向に伸びており、
    隣接する前記球状体は、前記線状の結合材により互いに接続され、前記球状体を交点とした3次元網目構造を形成した、
    メンブレンバイオリアクター。
  2. 前記球状体の粒径は、平均粒径の±10%の幅の範囲に45%以上の度数分布を有する、請求項1に記載のメンブレンバイオリアクター。
  3. 前記結合材の長さは、平均長の±30%の幅の範囲に35%以上の度数分布を有する、請求項1または請求項2に記載のメンブレンバイオリアクター。
  4. 前記球状体は、0.05〜0.5μmの平均粒径を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメンブレンバイオリアクター。
  5. 前記微多孔膜が、表面層と、前記表面層の微孔よりも大きい空孔が形成された支持層とを備えており、
    前記支持層は前記表面層と同じ素材から成り、
    前記表面層の厚みは、0.5〜10μmであり、
    前記支持層の厚みは、20〜500μmである、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のメンブレンバイオリアクター。
  6. 前記微多孔膜が、前記支持層を支える基材層を備え、該基材層は前記支持層とは異なる材質から成る、請求項1〜5に記載のメンブレンバイオリアクター。
  7. 前記微多孔膜の素材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のメンブレンバイオリアクター。
  8. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を良溶媒に溶解した溶液は、横軸をせん断速度、縦軸を溶液粘度の逆数としたグラフが、上側に凸を有する弧を含む曲線である、
    請求項7に記載のメンブレンバイオリアクター。
  9. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂10重量部、ポリエチレングリコール10重量部、およびジメチルアセトアミド80重量部の溶液は、横軸をせん断速度として、縦軸を溶液粘度の逆数としたグラフの、せん断速度40毎秒以下の領域を2次関数で近似でき、
    前記2次関数の2次係数は、10−8より小さい、
    請求項7または8に記載のメンブレンバイオリアクター。
  10. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60万〜120万である、請求項7〜9に記載のメンブレンバイオリアクター。
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