JP2015192598A - 紅藻シアニジウム目のための脂質生産用培地組成物および脂質生産方法 - Google Patents
紅藻シアニジウム目のための脂質生産用培地組成物および脂質生産方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】窒素栄養源となる硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩を十分に含み、さらにリン酸等の無機酸の含量を調節した強酸性の培地組成物であって、塩化ナトリウム等のナトリウム塩を含む培地組成物および該培地組成物を用いた脂質の生産方法。
【選択図】なし
Description
原始的な紅藻のシアニジウム属は、高温強酸性の温泉という極限環境(30〜60℃の高温、pH 0.5〜5.0の酸性条件)に棲息する単細胞性紅藻であり、バイオマス由来燃料への利用に適した生物である。紅藻のシアニジウム属には、シアニディオシゾン・メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、ガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)が含まれる。なお、シアニディオシゾン・メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)を、以降、シゾンと言う。
[1]
紅藻シアニジウム目に脂質を生産させるための培地組成物であって、以下:
(a)硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群より選択される1以上のアンモニウム塩;および
(b)リン酸、その金属塩、またはこれらの組み合わせを含む1以上の無機酸;および
(c)塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸水素ナトリウムからなる群より選択される1以上のナトリウム塩
の組み合わせを含むよう改変された基礎培養体を含み、ここで培地組成物を培地として使用する際において、培地中の無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.5μM〜1mMであり、培地のpHが1〜3である、培地組成物。
[2]
1以上の無機酸が、塩酸、硝酸、ホウ酸、これらの金属塩、または1以上のこれらの組み合わせをさらに含む、[1]に記載の培地組成物。
[3]
アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであり、無機酸がリン酸二水素カリウムであり、ナトリウム塩が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムである、[1]に記載の培地組成物。
[4]
培地組成物を培地として使用する際において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として20mM〜50mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1mM〜300mMである、[1]〜[3]のいずれかに記載の培地組成物。
[5]
培地組成物を培地として使用する際において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として25mM〜40mMであり、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.8μM〜0.8mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1.5mM〜150mMである、[4]に記載の培地組成物。
[6]
クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酢酸、およびこれらの塩からなる群より選択される1以上の有機酸をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の培地組成物。
[7]
液体の形状である、[1]〜[6]のいずれかに記載の培地組成物。
[8]
粉末の形状である、[1]〜[6]のいずれかに記載の培地組成物。
[9]
40℃以上の温度において紅藻シアニジウム目の培養を行うための、[1]〜[8]のいずれかに記載の培地組成物。
[10]
(1)以下:
(a)硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群より選択される1以上のアンモニウム塩;
(b)リン酸、その金属塩、またはこれらの組み合わせを含む1以上の無機酸;および
(c)塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸水素ナトリウムからなる群より選択される1以上のナトリウム塩
の組み合わせを含むよう改変された基礎培養体を含み、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.5μM〜1mMであり、pHが1〜3である培地中で、紅藻シアニジウム目を培養する工程;および
(2)培養した紅藻シアニジウム目由来の脂質を回収する工程
を含む、脂質の生産方法。
[11]
1以上の無機酸が、塩酸、硝酸、ホウ酸、これらの金属塩、または1以上のこれらの組み合わせをさらに含む、[10]に記載の方法。
[12]
工程(1)の培地において、アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであり、無機酸がリン酸二水素カリウムであり、ナトリウム塩が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムである、[10]に記載の方法。
[13]
工程(1)の培地において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として20mM〜50mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1mM〜300mMである、[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
工程(1)の培地において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として25mM〜40mMであり、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.8μM〜0.8mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1.5mM〜150mMである、[13]に記載の方法。
[15]
工程(1)の培地が、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酢酸、およびこれらの塩からなる群より選択される1以上の有機酸をさらに含む、[10]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
紅藻シアニジウム目が、シアニディオシゾン・メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、およびガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)からなる群より選択される一以上の種である、[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
紅藻シアニジウム目が、独立行政法人 国立環境研究所 微生物系統保存施設に株番号NIES-3377として寄託されたシアニディオシゾン・メローラエ、または独立行政法人 国立環境研究所 微生物系統保存施設に株番号NIES-551もしくはNIES-2137として寄託されたシアニジウム・カルダリウムである、[16]に記載の方法。
紅藻は紅色植物門に属する藻類をいう。本明細書においては、藻類のうち、原始紅藻のシアニジウム目に分類することのできるものを紅藻シアニジウム目と呼ぶ。紅藻シアニジウム目は、自然界においては常温、中性といった通常条件から、高温や強酸性の極限環境にまで広く棲息する単細胞の微細藻類である。
<紅藻シアニジウム目に脂質を生産させるための培地組成物>
本発明の一態様は、紅藻シアニジウム目に脂質を生産させるための培地組成物に関する。
本発明の培地組成物は、液体の形状としたものにそのまま紅藻シアニジウム目を添加して液体培地として用いることができる。また、本発明の培地組成物は、真空濃縮等の方法によって濃縮した液体の形状としてもよく、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の方法によって固体、または粉末の形状としてもよい。濃縮または乾燥した培地組成物は、適切な溶媒で希釈するか、適切な溶媒に溶解したものに紅藻シアニジウム目を添加して液体培地として用いることができる。さらに、本発明の培地組成物、もしくはその希釈物または溶解物は、さらに担体と混合して、プレート培地等の固形培地または半固形培地として用いてもよい。固形培地または半固形培地のために本発明の培地組成物に混合することのできる担体としては、ゲランガム、アガロース、寒天等の多糖類を例示することができるが、40℃以上の高温で培養を行う場合は、ゲランガムを用いることが好ましい。
<脂質の生産方法>
本発明の別の態様は、上記培地組成物を用いた脂質の生産方法に関する。具体的には
(1)アンモニウム塩、および無機酸の組み合わせを含むよう改変された基礎培養体を含む培地であって、培地中の無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.5μM〜1mMであり、培地のpHが1〜3である培地中で紅藻シアニジウム目を培養する工程;および
(2)培養した紅藻シアニジウム目由来の脂質を回収する工程
を含む、脂質の生産方法に関する。
本発明の方法によれば、紅藻シアニジウム目の良好な増殖を保つことができるため、培地中に含まれる紅藻シアニジウム目の細胞濃度に制限はない。
<紅藻シアニジウム目の細胞増殖および脂質生産の定量>
本発明は、紅藻シアニジウム目の良好な増殖を維持しつつ、脂質を大量に生産させることのできる培地組成物および脂質の生産方法に関する。
紅藻シアニジウム目としては、シアニディオシゾン・メローラエ(以後、単にシゾンという)、シアニジウム・カルダリウム、およびガルデリア・スルフラリアを用いた。シゾンは、独立行政法人 国立環境研究所 微生物系統保存施設に株番号NIES-3377として寄託された株と同じものを用いた。
シアニディオシゾン・メローラエ(シゾン)の培養実験
シゾン細胞をOD750=0.5になるようLDQ1培地、LDQ2培地で希釈した後、24穴プレートに2 mlずつ分注し、アネロパウチケンキ(三菱ガス化学株式会社製 二酸化炭素発生剤、酸素吸収剤)とともに密封して40℃、連続明条件下で培養した。対照として、アンモニウムイオンを窒素源とするMA2培地と窒素源を含まない窒素飢餓培地のN−培地を用いた(非特許文献7、8)。16日後に増殖の指標として各培養のOD750を測定した(図2)。また、BODIPY染色後、細胞あたりの油滴の数を計数し、平均値を算出した(n≧10)。さらに、顕微定量法により油滴中の油の生産量を比較した。
このように、窒素源としてアンモニウムイオンを添加した培地でも、リン酸濃度を減らし、塩を添加することにより、細胞増殖を維持したまま油滴を大量に生産させることが可能であることがわかった。特に、リン酸と塩の濃度が重要であり、アンモニウムイオンが40 mM含まれるとき、リン酸を0.8 mM以上含むと細胞増殖は良いが油滴は生産せず、0.8 μM以下しか含まないと細胞増殖が阻害されることを実験により確認した。
シアニジウム・カルダリウムおよびガルデリア・スルフラリアの培養実験
また、シゾン以外の紅藻シアニジウム目として、シアニジウム・カルダリウムおよびガルデリア・スルフラリアについても、シゾンと同様に培養実験を行った。その結果を図8に示す。LDQ1培地またはLDQ2培地を用いてこれらの紅藻シアニジウム目を培養した場合、細胞の増殖を維持しつつ、MA2培地またはN−培地でシゾンを培養した場合と比べて、油滴の生産を顕著に増加させることができることが示された。
Claims (17)
- 紅藻シアニジウム目に脂質を生産させるための培地組成物であって、以下:
(a)硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群より選択される1以上のアンモニウム塩;
(b)リン酸、その金属塩、またはこれらの組み合わせを含む1以上の無機酸;および
(c)塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸水素ナトリウムからなる群より選択される1以上のナトリウム塩
の組み合わせを含むよう改変された基礎培養体を含み、ここで培地組成物を培地として使用する際において、培地中の無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.5μM〜1mMであり、培地のpHが1〜3である、培地組成物。 - 1以上の無機酸が、塩酸、硝酸、ホウ酸、これらの金属塩、または1以上のこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の培地組成物。
- アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであり、無機酸がリン酸二水素カリウムであり、ナトリウム塩が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の培地組成物。
- 培地組成物を培地として使用する際において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として20mM〜50mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1mM〜300mMである、請求項1〜3のいずれかに記載の培地組成物。
- 培地組成物を培地として使用する際において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として25mM〜40mMであり、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.8μM〜0.8mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1.5mM〜150mMである、請求項4に記載の培地組成物。
- クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酢酸、およびこれらの塩からなる群より選択される1以上の有機酸をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の培地組成物。
- 液体の形状である、請求項1〜6のいずれかに記載の培地組成物。
- 粉末の形状である、請求項1〜6のいずれかに記載の培地組成物。
- 40℃以上の温度において紅藻シアニジウム目の培養を行うための、請求項1〜8のいずれかに記載の培地組成物。
- (1)以下:
(a)硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および炭酸アンモニウムからなる群より選択される1以上のアンモニウム塩;
(b)リン酸、その金属塩、またはこれらの組み合わせを含む1以上の無機酸;および
(c)塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸水素ナトリウムからなる群より選択される1以上のナトリウム塩
の組み合わせを含むよう改変された基礎培養体を含む培地であって、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.5μM〜1mMであり、pHが1〜3である培地中で、紅藻シアニジウム目を培養する工程;および
(2)培養した紅藻シアニジウム目由来の脂質を回収する工程
を含む、脂質の生産方法。 - 1以上の無機酸が、塩酸、硝酸、ホウ酸、これらの金属塩、または1以上のこれらの組み合わせをさらに含む、請求項10に記載の方法。
- 工程(1)の培地において、アンモニウム塩が硫酸アンモニウムであり、無機酸がリン酸二水素カリウムであり、ナトリウム塩が塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、または塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムである、請求項10に記載の方法。
- 工程(1)の培地において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として20mM〜50mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1mM〜300mMである、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
- 工程(1)の培地において、アンモニウム塩の濃度がアンモニウムイオン濃度として25mM〜40mMであり、無機酸の濃度が無機酸イオン濃度として0.8μM〜0.8mMであり、ナトリウム塩の濃度がナトリウムイオン濃度として1.5mM〜150mMである、請求項13に記載の方法。
- 工程(1)の培地が、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、酢酸、およびこれらの塩からなる群より選択される1以上の有機酸をさらに含む、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
- 紅藻シアニジウム目が、シアニディオシゾン・メローラエ(Cyanidioschyzon merolae)、シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)、およびガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)からなる群より選択される一以上の種である、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
- 紅藻シアニジウム目が、独立行政法人 国立環境研究所 微生物系統保存施設に株番号NIES-3377として寄託されたシアニディオシゾン・メローラエ、または独立行政法人 国立環境研究所 微生物系統保存施設に株番号NIES-551もしくはNIES-2137として寄託されたシアニジウム・カルダリウムである、請求項16に記載の方法。
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