JP2015202065A - 発酵処理物並びにノビレチン及びタンゲレチン高含有率物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明の目的は、従来技術と比較して、安全かつ簡便な方法で得られる、ノビレチン及びタンゲレチン高含有物、及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られる発酵処理物を抽出処理やアルカリ処理に供することにより得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物やノビレチン及びタンゲレチン含有物及びこれらの製造方法により解決される。
【選択図】なし
本発明の目的は、従来技術と比較して、安全かつ簡便な方法で得られる、ノビレチン及びタンゲレチン高含有物、及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られる発酵処理物を抽出処理やアルカリ処理に供することにより得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物やノビレチン及びタンゲレチン含有物及びこれらの製造方法により解決される。
【選択図】なし
Description
本発明は、柑橘類由来のノビレチン及びタンゲレチンを含有する発酵処理物及びノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法に関する。
ノビレチン及びタンゲレチンは、柑橘類に含まれるポリメトキシフラボノイドの一種である。ノビレチンは下記式(I)で表わされる構造を有する。また、タンゲレチンは、下記式(II)で表わされる構造を有する。ノビレチン及びタンゲレチンは、発癌抑制作用、血糖値の低下作用、アルツハイマー型認知症の予防効果等の種々の薬理作用を有するといわれている。
シークヮーサーやポンカンなどのミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類は、ジュースやジャムなどの加工用の原料として用いられることが多い。柑橘類がこのような加工に供される場合、主として果肉が利用され、搾汁後の果皮やじょうのう膜などは、搾汁残渣として廃棄されている。しかし、ノビレチン及びタンゲレチンは、果肉よりもこうした搾汁残渣に多く含まれている。柑橘類の搾汁残渣の一部は、精油の抽出や家畜などの飼料として再利用されているが、ノビレチン及びタンゲレチンを含む飲食品素材の原料としては期待されていない。
ノビレチンやタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドを製造する方法としては、例えば、特許文献1には、ポンカンの摘果果実を、還流下に30%エタノールで1時間抽出し、得られた残渣を90℃以上の熱水で1時間抽出後濃縮し、デカントして上清を得、これを多孔性吸着樹脂に通した後、70%エタノールで溶出して、ノビレチンを得る方法が記載されている。
また、特許文献2には、オレンジの果皮油を減圧蒸留してリモネンを除いた釜残油とし、この釜残油を薄膜蒸留した後に、約25倍容の70%エタノールを加えて加熱還流し、ノビレチン及びタンゲレチンを含有するポリメトキシフラボノイドを製造する方法が開示されている。
ところで、非特許文献1には、ノビレチンやタンゲレチンを含有する製品としては、株式会社アークレイが販売している製品が記載されている。
特許文献3には、ミカン区の1種である温州ミカン(Citus unshiu)の果皮を、アワモリ菌(Aspergillus awamori)などの微生物で発酵処理することにより、フラボノイド配糖体であるエリオシトリン、ヘスペリジン及びナリンジンの含有量が減少し、それらのアグリコンであるエリオジクチオール、ヘスペレチン及びナリンゲニンの含有量が増加した発酵処理物が記載されている。
特許文献4には、ポンカンの果皮を、アワモリ菌などの麹菌で発酵させて発酵物を得ることを特徴とする、4’−デメチルノビレチンの製造方法が記載されている。
非特許文献2のTable II−8には、ミカン区に属する柑橘類の果皮におけるノビレチン及びタンゲレチンの含有量が記載されている。
機能性食品材料−アークレイ>>シイクワーシャーエキス「ビレチンの製品使用URL:http://ebn.arkray.co.jp/products/shiikuwasha−extract/detail−02/
野方洋一、近畿中国農業研究センター研究報告、5号、pp.19〜84、2005年12月
柑橘類に含まれている、ノビレチン、タンゲレチンその他のポリメトキシフラボノイドは、上述したような幾つもの薬理作用を有することから、需要が増加しつつある。そこで、ノビレチン及びタンゲレチンを含有する天然由来物(以下、ノビレチン及びタンゲレチン含有物という)を効率的に製造する方法があれば、ノビレチン及びタンゲレチン含有物を飲食品素材として利用することが一層期待される。
しかし、特許文献1に記載の方法は、還流下に1時間の抽出を行い、その後、さらに90℃以上の熱水で抽出を行う工程を含み、及びカラムを使用する工程を含むことから、作業者にとって危険が強いられ、かつ、複雑な方法であるという問題がある。
特許文献2に記載の方法は、減圧蒸留による釜残油の製造及び薄膜蒸留という工程を含み、さらに大量の高濃度エタノールを必要とすることから、危険かつ複雑な方法であるという問題がある。
非特許文献1に記載の製品は、ノビレチン及びタンゲレチンの含有率が10%(w/w)前後であることから、ノビレチン及びタンゲレチンの含有率の非常に小さい製品であり、飲食品素材の原料としてはなり得ないという問題がある。
特許文献3で使用されている温州ミカンは、サツマ(Satsuma)とも呼ばれており、非特許文献2のTable II−8に記載があるとおり、ノビレチン及びタンゲレチンの含有量が非常に小さいものである。また、特許文献3には、ノビレチンやタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドについては全く記載がなく、温州ミカンの果皮をアワモリ菌などの微生物で発酵処理することにより、ノビレチンやタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドが生成したことを示す記載はない。
特許文献4に記載の方法では、確かに、ポンカンを出発原料として、ノビレチンの脱メチル体が得られている。しかし、特許文献4に記載の実施例1では、ポンカンの果皮において、発酵前に存在したノビレチンとタンゲレチンが完全に消失したことが記載されている。
そこで、本発明の目的は、従来技術と比較して、安全かつ簡便な方法で得られる、ノビレチン及びタンゲレチン高含有物、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ミカン区の中でも、果皮中のノビレチン及びタンゲレチンの含有量が大きいシークヮーサーなどの柑橘類の搾汁残渣を、アワモリ菌などの微生物を用いて発酵処理することにより発酵処理物を得ることに成功した。また、本発明者らは、このようにして得られた発酵処理物から、熱水洗浄処理、乾燥処理、煩雑なカラム処理などに供さなくても、可溶性溶媒を用いた抽出処理を実施することによって、発酵処理していない搾汁残渣と比べて、ノビレチン及びタンゲレチンを高含有率で含有する組成物が得られるという驚くべき知見を得た。さらに驚くべきことに、この発酵処理物からノビレチン及びタンゲレチンを抽出した抽出物を希アルカリなどのアルカリで処理することにより、ノビレチン及びタンゲレチンの含有量が高く、かつ、ノビレチンの含有率が高いノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることに成功した。本発明はこのような成功例や知見に基づいて完成された発明である。
したがって、本発明の第1の側面によれば、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られる、発酵処理物が提供される。
本発明の第2の側面によれば、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区である柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理し、次いでノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することにより、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程を含む、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法が提供される。
本発明の第1及び第2の側面において、好ましくは、前記柑橘類が、シークヮーサー(Citrus depressa)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見からなる群から選ばれる少なくとも1種の柑橘類である。
本発明の第3の側面によれば、以下(1)〜(3)の工程を含むノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法が提供される。
(1)柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより、発酵処理物を得る工程
(2)前記発酵処理物を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程
(3)前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程
(1)柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより、発酵処理物を得る工程
(2)前記発酵処理物を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程
(3)前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程
本発明の第3の側面において、好ましくは、前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物が、濃縮処理に供されたものである。
本発明の第3の側面において、好ましくは、前記ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒が、エタノール、メタノール及びアセトンからなる群から選ばれ、かつ、濃度が5〜100%(v/v)、より好ましくは20〜50%(v/v)である溶媒である。
本発明の第3の側面において、好ましくは、前記工程(3)が、前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を1〜80%(w/v)のアルカリ水溶液で、0〜80℃にて処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程である。
本発明の第3の側面において、前記柑橘類は、シークヮーサー(Citrus depressa)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.reticulata)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見からなる群から選ばれる少なくとも1種の柑橘類である。
本発明の第1〜第3の側面において、好ましくは、前記酸耐性微生物が、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物、より好ましくはアスペルギルス・カワチ(A.kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)、アスペルギルス・サイトイ(A.saitoi)及びアスペルギルス・ウサミ(A.usamii)からなる群から選ばれる微生物である。
本発明の第1〜第3の側面において、好ましくは、前記柑橘類が、柑橘類の搾汁残渣である。
本発明の第4の側面によれば、本発明の製造方法で製造された、ノビレチン及びタンゲレチン含有物が提供される。
本発明の発酵処理物及びその製造方法によれば、従来技術に比して、熱水洗浄や乾燥する工程に供することなく得られた柑橘類から、温度を低く設定することができ、かつ、工程設計が簡便であるという安全かつ簡便な方法に基づいて、ノビレチン及びタンゲレチンの含有率が大きいノビレチン及びタンゲレチン含有物を得るために使用される発酵処理物が得られる。また、本発明のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法によれば、ノビレチン及びタンゲレチンの含有量が高く、かつ、ノビレチンの含有率が高いノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることができる。
さらに、本発明の発酵処理物や本発明のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法によって得られるノビレチン及びタンゲレチン含有物を利用すれば、ノビレチン及びタンゲレチンを高濃度で含有する飲食品素材、例えば、飲食品用原料や飲食品用組成物を得ることが期待できる。また、ノビレチン及びタンゲレチンの生理活性を利用して、医薬品、医薬部外品及び化粧品の用途に供することもできる。その際、上記ノビレチン及びタンゲレチン含有物及びこれらの加工処理物は、単独又は他の添加物と共に、経口又は非経口で適用可能な飲食品用、化粧品用、医薬品用又は医薬部外品用の粉沫剤、顆粒剤、錠剤、液剤、ペースト剤、カプセル剤、ゲル剤、クリーム剤などの種々の形態で提供され得る。
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
[1.本発明の発酵処理物]
本発明の発酵処理物は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られるものである。
[1.本発明の発酵処理物]
本発明の発酵処理物は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られるものである。
本発明における柑橘類はミカン区の柑橘類である。ミカン区の柑橘類とは、田中長三郎氏に提唱された(Tanaka,T.1969.Bull.Univ.Osaka Pref.Ser.B,21:139.144.)分類によるものであり、正確にはミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区に分類される柑橘類植物である。
本発明においては、これらミカン区に分類されるもののうち、果皮100gあたりのノビレチン及びタンゲレチンの含有量が大きい柑橘類が選ばれる。果皮100gあたりのノビレチン及びタンゲレチンの含有量は、非特許文献2のII、2、2)及び3、2)に記載の方法によって測定される。
概略すると、果実を収穫後、直ちにフラベド、アルベド、じょうのう膜、果肉に分けて−20℃で保存する。次いで、フラベド及びアルベドからなる果皮(peel)の重量を測定し、この100gを凍結乾燥し、0.5mmのスクリーンを用いて遠心ミル(UltraCentrifugal Mill、三田村理研工業)により破砕後、再び−20℃で保存する。製粉サンプル 100mgを蓋付き試験管に取り、5mlの抽出溶媒[メタノール:DMSO、(1:1)]を加え、往復振盪させながら室温で12時間抽出する。次いで3,000xgで10分間遠心し、上清を回収する。沈殿に1mlの上記抽出溶媒を加え、上記条件で遠心分離し、上清を回収する操作を2回繰り返す。合わせた抽出液を水で10倍に希釈し、5mlのメタノール及び5mlの10%(v/v)メタノールでプレコンディションしたSepPak C18カートリッジに添加する。次いで、カートリッジを10mlの10%(v/v)メタノールで洗浄後、4.5mlの溶出液[メタノール:DMSO、(1:1)]を通し、フラボノイド画分を得る。溶出液は5.0mlに定容し、HPLCの分析サンプルとする。
HPLCの分析は、L−6210及びL−6010ポンプ、AS−2000オートサンプラー、L−3000フォトダイオードアレー検出器、D−6100インターフェース、カラムオーブン、デガッサーで構成される日立製システムを用いる。分離カラムは、メルク製のLiChrospher 100RP−18(250mm×4.0mm)及びガードカラムを用いる。検出器は200〜360nmの吸収スペクトルを記録する。カラムオーブンの温度は40℃とし、流速は0.6ml/分とする。また、サンプルの注入量は10μlとする。運転中のカラム圧は、1,000〜1,550p.s.i.程度である。分離は3つのステップからなる2液のグラジェント法を用いる。すなわち、A液を0.01Mリン酸、B液をメタノールとし、(1)0−55分:70−55%A、(2)55−95分:55−0%A、(3)95−100分:0%Aとする。ノビレチン及びタンゲレチンは、保持時間と200〜360nmのUV吸収波長をノビレチン及びタンゲレチンの各標準品と比較することにより同定する。ノビレチン及びタンゲレチンの定量は、各標準品のピーク面積値との比により算出する。
本発明においては、柑橘類は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン区の柑橘類であり、好ましくは、上記のように測定した場合に果皮100gあたりのノビレチン及びタンゲレチンの含有量がそれぞれ6mg以上である、ミカン区の柑橘類である。このような柑橘類としては、例えば、シークヮーサー(Citrus depressa)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における柑橘類は1種又は2種以上であればよく、上記具体例として挙げた柑橘類の交配種であってもよい。本発明における柑橘類のより好ましい態様は、シークヮーサーである。
また、非特許文献2のTable II−8には果皮(peel)100gあたりの各種フラボノイドの含有量が記載されており、これを表1として引用する。表1において、「NOB」はノビレチンを表わし、「TNG」がタンゲレチンを表わす。
上記しているとおり、本発明における柑橘類の1つに、シークヮーサーが含まれる。シークヮーサーは、カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区コミカン亜区に属する柑橘類であり、鹿児島県南西諸島から台湾の山地にかけて広く分布する。古くから沖縄県本島北部に自生していたが、健康志向や沖縄ブームを背景に大宜味村、名護市勝山、伊豆味などで商業的に栽培されている。現在では沖縄県の名産物として広く知られており、生産量は全国の約99%を占め、年間約3000t、平成23年には1,707tが収穫されている。
シークヮーサーは、その一部は酸味料や生食用として利用されているが、大部分は果汁飲料として加工されている。また、果実が小さく果皮が薄いという特性や、対病害虫性に優れ農薬散布が少ないことから、果実を丸ごと搾汁する全果搾汁方式により加工されている。しかし、搾汁効率は50%程度であり、加工副産物である搾汁残渣が大量に排出され、現在その処理が問題となっている。
シークヮーサーに含まれるフラボノイドの含有量は品種によって異なるが、その組成比は生育期間を通して大きく変化せず、含有量は生育と共に減少する傾向にある。フラボノイドのうち、ポリメトキシフラボノイドの多くはフラベド(外果皮)やアルベド(内果皮)に存在する。
本発明における柑橘類の部位は、ノビレチン及びタンゲレチンを含有する部位であれば特に限定されないが、例えば、果実そのものに加えて、フラベド、アルベド、じょうのう、じょうのう膜、さのう、果しん、維管束といった果実の一部(構成成分)、これらの搾汁残渣(搾り粕)などが挙げられる。これら果実やその構成成分は、収穫後に冷蔵保存又は冷凍保存されたものであってもよい。果実の構成成分は、果実から剥離、分離、単離などすることにより得ることができる。搾汁残渣は、果実から搾汁した後の残渣であり、果皮(アルベド及びフラベド)及びじょうのう膜に加えて、さのうの一部や搾汁しきれなかった極少量の果汁などが含まれる。
上記したとおり、シークヮーサーなどは、フラベドやアルベドといった果皮にノビレチン及びタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドが多く含まれている。そこで、本発明における柑橘類の部位として、果実、果皮及び搾汁残渣を使用することが、ノビレチンやタンゲレチンの単位重量あたりの含有量が多いことから好ましく、さらに製造に要する手間を省くとともに経済性や環境負荷を加味すれば、産業廃棄物として扱われている搾汁残渣がより好ましく、シークヮーサーの搾汁残渣がさらに好ましい。
柑橘類の搾汁残渣を得る方法は特に限定されないが、例えば、柑橘類の果実を圧搾機で処理することにより搾汁残渣を得ることができる。圧搾機は特に限定されないが、ロールプレス機やろ布プレス機、遠心ろ過式分離装置等を使用することが、搾汁した果皮を効率よく得られるために好ましい。
本発明の発酵処理物は、上記した柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られる。一般の微生物は酸性条件下では生育することが難しいので、酸耐性微生物は酸性条件下でもよく生育し、これにより他の微生物の繁殖を抑えられることから、腐敗防止などにつながり得る。酸耐性微生物は柑橘類によって生じる酸性条件下でも生育が可能な微生物であれば特に限定されず、酸耐性原核微生物及び酸耐性真核微生物のいずれか、又はその両方とすることができるが、好ましくは酸耐性真核微生物であり、より好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)属微生物であり、さらに好ましくはアスペルギルス・カワチ(A.kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)、アスペルギルス・サイトイ(A.saitoi)及びアスペルギルス・ウサミ(A.usamii)である。以下では、酸耐性微生物がアスペルギルス属微生物である場合の態様について説明する。
発酵処理は、柑橘類とアスペルギルス属微生物とを接触させた後、所定の発酵条件下で、アスペルギルス属微生物の作用によって柑橘類中にノビレチン及びタンゲレチンを高含有させる処理である。本発明の技術的範囲はいかなる理論や推測に拘泥されるわけではないが、シークヮーサーなどの柑橘類の搾汁残渣から抽出したポリメトキシフラボノイドの析出は水溶性成分が多い場合に促進されないことから、アスペルギルス属微生物による発酵処理により、柑橘類中の水溶性成分が減少する(おそらく、ポリメトキシフラボノイドが柑橘類中に濃縮されることによる)ことから、効率的に高濃度ポリメトキシフラボノイドの析出が促進されると想定され得る。
柑橘類とアスペルギルス属微生物との接触の手段は特に限定されず、例えば、予め液体培地を用いてアスペルギルス属微生物を該微生物の生育に適した条件下で培養する予備培養処理して得た培養液と柑橘類とを接触させることや、アスペルギルス属微生物又はその胞子と柑橘類とを、場合によっては水、液体培地、培地成分などと共に接触させることにより達成できる。これらを接触させる順序は特に限定されず、例えば、培養液を柑橘類に振りかけても、柑橘類を培養液に浸漬させてもどちらでもよい。
予備培養処理は、発酵処理に用いられるアスペルギルス属微生物を予め十分に増殖及び/又は活性化させることによって、発酵処理を迅速かつ円滑に進行させるように行われることが好ましい。予備培養処理は、例えば、20〜40℃の好気的条件下で3日以上、好ましくは5日以上、より好ましくは7日以上振盪や撹拌などをすることにより行われる。好ましくはアスペルギルス属微生物の菌糸体が培地表面を1/3程度覆う状態となるまで予備培養処理を行う。
アスペルギルス属微生物の生育に適した培地は特に限定されず、例えば、ポテトデキストロース含有培地やツァペック培地などの糸状菌用培地;オカラなどの有機物を含有する種々の液体培地などが挙げられる。予備培養処理では、アスペルギルス属微生物の生育を良好にするために、培養開始時点における培地のpHを3〜7に調整するのが好ましい。また、振盪速度としては、例えば、50rpm/分以上、好ましくは50〜200rpm/分である。振盪速度が50rpm/分未満の場合には、培養液中の溶存酸素濃度が不足し、菌糸の増殖が十分にできない可能性がある。また、振盪速度が200rpm/分を越える場合には、培地の揺れが激しく、アスペルギルス属微生物の菌体形成が抑制される可能性がある。
発酵処理の条件は、柑橘類とアスペルギルス属微生物とが接触した状態で実施すれば特に限定されず、例えば、柑橘類と予備培養処理して得た培養液とを接触させ、十分に撹拌又は混合したものを、アスペルギルス属微生物の生育に好適な温度、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃で静置する条件を挙げることができる。この際、アスペルギルス属微生物の生育に好適な条件として、暗所で発酵処理を行うことが好ましい。柑橘類に接触させるアスペルギルス属微生物の菌数は特に限定されず、通常の発酵処理を参照して、当業者により適宜設定可能である。
発酵処理の期間は、得られる発酵処理物のノビレチン又はタンゲレチンの含有率が出発原料の柑橘類のノビレチン又はタンゲレチンの含有率よりも高くなる期間であれば特に限定されず、例えば、2〜14日、好ましくは2〜10日、より好ましくは3〜8日である。この期間が2日未満の場合には、アスペルギルス属微生物による発酵処理がほとんど進行せずに、発酵処理物のノビレチン又はタンゲレチンの濃度が出発原料の柑橘類のノビレチン又はタンゲレチンの含有率よりも高くならない可能性がある。逆に14日を越える場合には、発酵処理物のノビレチン又はタンゲレチンの分解が進む可能性があり好ましくない。
発酵処理により得られる発酵処理物は、発酵により繊維質の分解が進み、非常にもろくて崩れやすい状態となる。発酵処理物中には分解せずに残った繊維質などの発酵残渣や発酵中に形成されたアスペルギルス属微生物の菌糸体などの固形分が混在しており、その固形分は発酵処理前の柑橘類と比較して体積が大幅に減少する傾向にある。一方、発酵処理により柑橘類中の水溶性の物質が減少することにより、発酵処理物をノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することにより得られる、又はさらに濾別及び濃縮する処理をして得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物中のノビレチン及びタンゲレチンの含有率が高くなり、発酵処理を経ていないものを同様の操作に供する場合に比べて、ノビレチン及びタンゲレチンは結晶又は結晶状の物質(これらを合わせて「結晶状物」とよぶ。)として析出され易くなる。したがって、本発明の発酵処理物を用いれば、その後の操作によって、高含有率のノビレチン及びタンゲレチンの結晶状物が得られる。
本発明の発酵処理物から得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物におけるノビレチン又はタンゲレチンの含有率は、発酵処理に供していない抽出物よりも高ければ特に限定されないが、例えば、発酵処理物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルなどの後述するノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で抽出し、次いで得られた抽出物を濾別及び濃縮する処理をして得られるノビレチン及びタンゲレチン溶解物のノビレチン又はタンゲレチンの含有率が、発酵処理に供していない柑橘類を同様に処理して得られる溶解物のこれらの含有率に対して、1.1倍、好ましくは1.2倍、より好ましくは1.5倍である。ノビレチン又はタンゲレチンの含有率は、例えば、後述する実施例に記載の方法や上記した非特許文献2に記載の方法を参照して測定したノビレチン又はタンゲレチンの量(g)をノビレチン及びタンゲレチン抽出物の量(g)で除することにより算出できる。
ノビレチンは、抗癌及び抗腫瘍効果があることが知られている。これは、ノビレチンがO2 −及び一酸化窒素の両方の生成を阻害し、NO合成酵素とPGE2の放出を抑制し、さらに皮膚腫瘍形成を誘導するdimethylbenz[a]anthracene/TPAを阻害することによるとされている。また、ノビレチンは、TPA誘発浮腫形成においてインドメタシンより高い抗炎症活性を示す。さらに、ノビレチンは、抗転移薬として胃癌の予防;結腸発癌の治療及び予防;インスリン抵抗性の高血糖・肥満糖尿病の改善;認知症及びアルツハイマー病の改善及び予防;炎症性自己免疫疾患である関節リウマチの予防などの効果を奏し得る。そこで、本発明の発酵処理物から得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物は、ノビレチンの生理的効果に基づいて、胃癌や結腸発癌などに対する抗癌及び抗腫瘍効果;抗炎症効果;インスリン抵抗性の高血糖・肥満糖尿病の改善及び予防効果;認知症及びアルツハイマー病の改善及び予防効果;関節リウマチなどの炎症性自己免疫疾患の改善及び予防効果を有し得る。また、これらの効果を期待して、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの素材に添加することによって、これらの製品に利用することができる。
本発明の発酵処理物から得られるノビレチン及びタンゲレチン抽出物は、ミキサー処理やホモジナイズ処理などの加工処理に供した後に、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの素材に添加してこれらの製品として使用してもよい。また、発酵処理物中に生成されたノビレチン及びタンゲレチンを溶解、濃縮、乾燥、抽出、分離、単離などの処理に供した後に、上記素材に添加及び製品化するように使用してもよい。
[2.本発明のノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法]
本発明のノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区である柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理し、次いでノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することにより、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程を少なくとも含む。
本発明のノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法は、ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区である柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理し、次いでノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することにより、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程を少なくとも含む。
本発明のノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法における、柑橘類、発酵処理、発酵処理物などは、上記した[1.本発明の発酵処理物]の該当する項目を適宜参照できる。
本発明の発酵処理物からノビレチン及びタンゲレチンの抽出は、発酵処理物をノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で溶解する溶解処理と、必要に応じて得られた溶解物から固形分を分離した溶解液を濃縮する濃縮処理などに供することにより達成できる。
ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒は、ノビレチン及びタンゲレチンを溶解することができる溶媒であれば特に限定されず、例えば、ノビレチン及びタンゲレチンに易溶性の溶媒、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルなどの1種又は2種以上の有機溶媒やこれらの有機溶媒と水との混合溶媒などが挙げられる。ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒として、有機溶媒と水との混合溶媒を用いる場合、有機溶媒の濃度は、例えば、5〜100%(v/v)とすることができる。ただし、メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶媒の濃度が20%(v/v)未満では抽出効率が悪い可能性があり、かつ、これらの濃度が50%(v/v)を越えても抽出効率が大きく向上しないことから、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒としては、20〜50%(v/v)のメタノール、エタノール、アセトンなどの含水有機溶媒が好ましく、30%(v/v)のメタノール、エタノール又はアセトンが抽出効率、安全性及び工業化の観点からより好ましい。また、アスペルギルス属微生物などの酸耐性微生物を死滅させるためには、メタノール、エタノールやアセトン及びこれらの高濃度含水溶媒が好ましい。
発酵処理物の溶解処理の条件は、発酵処理物中のノビレチン及びタンゲレチンが溶媒に溶解するのに適した条件であれば特に限定されず、適宜サンプリングして溶液中のノビレチン及びタンゲレチンの濃度を確認することにより決定すればよいが、例えば、0〜40℃で1〜10日間の条件で実施でき、常温下で4〜6日間程度とすることが溶解効率の点から好ましい。
発酵処理物の溶解処理によって得られる溶解物は、一定量の固形分を含む傾向にある。そこで、最終的にノビレチン及びタンゲレチンの精製品を得たい場合は、該溶解物を、保留粒子径10μm以下のフィルター、好ましくは3μm以下のフィルターを用いたろ過などの当業者に通常知られる固液分離手段に供して、液体成分として溶解液を取得することが好ましい。
得られた溶解液は、濃縮処理に供することにより、ノビレチン及びタンゲレチンを含有する濃縮物とすることが好ましい。溶解液の濃縮方法は特に限定されないが、例えば、溶解液中の溶媒を低温下で所定の時間をかけて揮散させて、減容化した液体状、半固体状又は固体状の濃縮物とする方法が挙げられる。例えば、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒として20〜100%(v/v)エタノールを用いる場合、含有成分の変性防止を考慮して、常圧又は減圧下で、50℃以下の温度で、数十分から数時間、好ましくは10分〜2時間かけて濃縮する。ノビレチン及びタンゲレチン抽出物は、液体状の溶解液に加えて、該溶解液を濃縮処理に供して得られる固体状又は半固体状の濃縮物を包含する。
後述するとおりに、発酵処理物を溶解、濃縮などの処理に供して得られる抽出物を、希アルカリなどのアルカリで処理することにより、非常に簡便に、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン高含有物を得ることができる。
[3.本発明のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法]
本発明のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法は、以下(1)〜(3)の工程を少なくとも含む。
(1)柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより、発酵処理物を得る工程
(2)前記発酵処理物を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程
(3)前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程
本発明のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法は、以下(1)〜(3)の工程を少なくとも含む。
(1)柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより、発酵処理物を得る工程
(2)前記発酵処理物を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程
(3)前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程
上記工程(1)において、柑橘類はノビレチン及びタンゲレチンを含有する柑橘類植物であれば特に限定されない。このような柑橘類としては、例えば、キノット、ジャッファ・オレンジ、ジョッパ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、福原オレンジ、ブラッドオレンジ、ベルガモットなどのオレンジ類;オランジェロ、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類;カボス、清岡橙、コブミカン、三宝柑、シークヮーサー、シトロン、スダチ、ダイダイ、新姫、ブッシュカン、ゆうこう、柚柑、ユズ、ライム、レモンなどの香酸柑橘類;カクテルフルーツ、カワノナツダイダイ、黄蜜柑、ジャバラ、湘南ゴールド、スウィーティー、夏ミカン、八朔(ハッサク)、はるか、媛小春、日向夏などの雑柑類;安芸の輝き(デコポン)、伊予柑、愛媛果試第28号、清見、佐賀果試34号(デコポン)、師恩の恵、シラヌヒ(デコポン)、せとか、せとみ、大将季(デコポン)、タンカン、はるみ、肥の豊(デコポン)、マーコット、麗紅などのタンゴール類;アグリフルーツ、サマーフレッシュ、スイートスプリング、セミノール、タンジェロ、ミネオラなどのタンジェロ類;安政柑、河内晩柑、晩白柚、ブンタン(ザボン)などのブンタン類;温州ミカン、大津四号、カラマンシー、甘平、紀州ミカン、コウジ(柑橘類)、桜島ミカン、タチバナ、藤中みかん、ポンカン、マンダリンオレンジなどのミカン類;カラタチなどのカラタチ属;長葉金柑、長実金柑、寧波金柑、福州金柑、香港金柑、丸実金柑などのキンカン属が挙げられるが、好ましくはミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類及びミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキツ亜族ダイダイ区の柑橘類であり、より好ましくはシークヮーサー(Citrus depressa)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.reticulata)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見などである。また、これらの柑橘類は1種又は2種以上であればよく、上記具体例として挙げた柑橘類の交配種であってもよい。
使用される柑橘類の部位は、ノビレチン及びタンゲレチンを含有する部位であれば特に限定されないが、例えば、果実、果実の一部、これらの搾汁残渣などが挙げられ、好ましくは果実、果皮及び搾汁残渣であり、より好ましくは搾汁残渣である。
工程(1)における発酵処理や工程(2)の発酵処理物のノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒での処理は、上記した該当する項目を適宜参照できる。また、工程(2)のノビレチン及びタンゲレチン抽出物は、発酵処理物をノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理して得られる溶解液を濃縮処理に供したものであることが好ましい。
工程(3)では、ノビレチン及びタンゲレチンの溶解液やその濃縮物(これらをまとめて、「ノビレチン及びタンゲレチン抽出物」とよぶ。)を希アルカリなどのアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る。ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリ処理することにより、溶液中の脂肪酸などの夾雑物成分を除去し、ノビレチン及びタンゲレチンを高濃度で含有するノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることができる。アルカリは、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物中の夾雑物を分解し、かつ、ノビレチン及びタンゲレチンを分解しないものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液からなる群から選ばれるアルカリ水溶液、好ましくは希アルカリ水溶液が挙げられる。アルカリのアルカリ濃度は特に限定されないが、例えば、アルカリが水酸化ナトリウム水溶液である場合、1〜80%(w/v)とすることができ、好ましくは0.5〜10%(w/v)の希アルカリである。
工程(3)のノビレチン及びタンゲレチン抽出物のアルカリ処理は、例えば、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物と1〜80%(w/v)のアルカリ水溶液とを接触させて、0〜80℃下で1〜6日間撹拌することにより実施することができる。工程(3)の具体的態様としては、特に限定されるものではないが、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物と1〜10%(w/v)程度の水酸化ナトリウム水溶液との混合物を、常温にて、1〜3日間撹拌することにより実施され得る。
工程(3)を実施することによって、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物が得られる。ノビレチン及びタンゲレチン含有物を採取するためには、遠心分離やろ過などの通常知られている固液分離手段を用いることができる。また、ノビレチン及びタンゲレチン含有物は、例えば、飲食品用の素材として使用する場合には、水で洗浄するなどして中和することが好ましい。さらに、ノビレチン及びタンゲレチン含有物は、精製工程に供することができる。例えば、採取及び水洗浄したノビレチン及びタンゲレチン含有物とノビレチン及びタンゲレチン可溶性の溶媒とを混合したものを固液分離することによって、液体成分として不純物が低減されたノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることができる。
本発明の方法によって得られるノビレチン及びタンゲレチン含有物は、従来技術と比較してノビレチン及びタンゲレチンを高濃度で含有する柑橘類由来組成物であるが、例えば、ノビレチン及びタンゲレチンの総含有率が60%(w/w)以上、好ましくは70%(w/w)以上、より好ましくは80%(w/w)以上であるノビレチン及びタンゲレチン含有物である。
また、本発明者らは、ノビレチン及びタンゲレチン含有物は、人体にとって悪影響を及ぼす可能性があるシネフリンの含有率が非常に小さいことを見出した。そこで、本発明の方法の好ましい態様は、シネフリンの含有率が0.5%(w/w)未満、好ましくはシネフリンの含有率が検出下限値未満であるノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法である。ノビレチン、タンゲレチン及びシネフリンの含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
本発明の方法は、本発明の目的を達成し得る限り、上記した工程以外にも種々の工程を工程の前段、途中、後段などに加入することができる。例えば、工程(3)の後段に、ノビレチン及びタンゲレチン含有物とノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒とを混合した混合物を、濃縮乾固することにより濃縮乾固物を得る工程を含むことができる。
また、単にノビレチン及びタンゲレチンの結晶状物が得たい場合は、(2)’柑橘類を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することにより、又はさらに得られた溶解液を濃縮処理に供することにより、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程、及び(3)’該ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を希アルカリなどのアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程を含む方法により、ノビレチン及びタンゲレチン含有物を製造することができる。
以下に、本発明の具体的態様として、シークヮーサーを圧搾した搾汁残渣を原料として、ノビレチン及びタンゲレチン含有物を製造する方法を説明するが、本発明は以下のものに限定されない。
<予備培養処理>
pH 3〜7に調整した滅菌済みポテトデキストロース含有培地に、適当量のアワモリ菌(Aspergillus awamori)を接種し、20〜40℃の好気的条件下で5日以上、50〜200rpm/分で振盪培養して培養液を得る。
pH 3〜7に調整した滅菌済みポテトデキストロース含有培地に、適当量のアワモリ菌(Aspergillus awamori)を接種し、20〜40℃の好気的条件下で5日以上、50〜200rpm/分で振盪培養して培養液を得る。
<搾汁残渣の製造>
シークヮーサーを水で洗浄し、その後、シークヮーサーの果実をそのまま圧搾できる各種の圧搾機で圧搾処理を行う。こうした圧搾機としては、例えば、2つの圧縮ロールの間に10〜20メッシュのエンドレスのネットを挟んで回転させ、連続的に供給されるシークヮーサーの果実をこれら2つの圧縮ロールで圧搾するロールプレス搾汁機、シークヮーサーの果実をろ布に包んで圧縮し搾汁するろ布プレス機、遠心ろ過式分離装置などを挙げることができる。果汁を圧搾した搾汁残渣を所定の量、例えば、約300〜約500g(湿重量)秤量する。
シークヮーサーを水で洗浄し、その後、シークヮーサーの果実をそのまま圧搾できる各種の圧搾機で圧搾処理を行う。こうした圧搾機としては、例えば、2つの圧縮ロールの間に10〜20メッシュのエンドレスのネットを挟んで回転させ、連続的に供給されるシークヮーサーの果実をこれら2つの圧縮ロールで圧搾するロールプレス搾汁機、シークヮーサーの果実をろ布に包んで圧縮し搾汁するろ布プレス機、遠心ろ過式分離装置などを挙げることができる。果汁を圧搾した搾汁残渣を所定の量、例えば、約300〜約500g(湿重量)秤量する。
<発酵処理>
搾汁残渣の重量(乾燥重量)を秤量した後、搾汁残渣を適当な容器に入れ、ここにアワモリ菌培養液を接種及び攪拌した後、10〜40℃で静置して2〜10日間発酵を行い、発酵処理物を得る。
搾汁残渣の重量(乾燥重量)を秤量した後、搾汁残渣を適当な容器に入れ、ここにアワモリ菌培養液を接種及び攪拌した後、10〜40℃で静置して2〜10日間発酵を行い、発酵処理物を得る。
<抽出処理(1)>
この発酵処理物に、発酵処理物の2〜8倍容のメタノールを加え、得られたアワモリ菌処理シークヮーサー残渣に、メタノール 150mlを加え、常温下で4〜6日間抽出する。抽出液から固形分を除き、減圧下で湯浴温度を30℃〜35℃に設定して減圧濃縮し、メタノール抽出物を得る。
この発酵処理物に、発酵処理物の2〜8倍容のメタノールを加え、得られたアワモリ菌処理シークヮーサー残渣に、メタノール 150mlを加え、常温下で4〜6日間抽出する。抽出液から固形分を除き、減圧下で湯浴温度を30℃〜35℃に設定して減圧濃縮し、メタノール抽出物を得る。
<アルカリ処理>
得られたメタノール抽出物に、この抽出物の3〜6倍容の1〜50%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液を加えて、0〜80℃にてよく混合する。常温にて1〜3日間、この混合液を撹拌し続ける。その後、例えば、保留粒子径5μm以下の濾材を用いて濾過し、可溶性成分と不溶性成分とを分離する。
得られたメタノール抽出物に、この抽出物の3〜6倍容の1〜50%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液を加えて、0〜80℃にてよく混合する。常温にて1〜3日間、この混合液を撹拌し続ける。その後、例えば、保留粒子径5μm以下の濾材を用いて濾過し、可溶性成分と不溶性成分とを分離する。
<抽出処理(2)>
得られた不溶性成分を、1〜2倍容の水で洗浄する。残った不溶性成分を5〜10倍容のメタノールに再溶解し、次いで溶解液を常温にて約15〜約60分間濃縮する。濃縮後の液量は濃縮前の重量の約1/15〜1/20となり、結晶状のノビレチン及びタンゲレチンを高含有率で含有するノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることができる。
得られた不溶性成分を、1〜2倍容の水で洗浄する。残った不溶性成分を5〜10倍容のメタノールに再溶解し、次いで溶解液を常温にて約15〜約60分間濃縮する。濃縮後の液量は濃縮前の重量の約1/15〜1/20となり、結晶状のノビレチン及びタンゲレチンを高含有率で含有するノビレチン及びタンゲレチン含有物を得ることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
[1.実施例1.アワモリ菌処理シークヮーサー残渣由来の結晶状物]
(1)アワモリ菌(Aspergillus awamori)の培養とシークヮーサー残渣の発酵処理
100mlの蒸留水に対して3gのDifcoTM Potato Dextrose Brothを加え、HClでpH 5.0に調整したものを、121℃、15分間オートクレーブ(株式会社平山製作所製:HICLAVETM HVE−25)で滅菌して、培地を作製した。作製した培地に、アワモリ菌 0.2gを接種し、TAITEC BIO−SHAKER BR−4OLFを用いて、30℃、100rpm/分で1週間振盪培養した。
(1)アワモリ菌(Aspergillus awamori)の培養とシークヮーサー残渣の発酵処理
100mlの蒸留水に対して3gのDifcoTM Potato Dextrose Brothを加え、HClでpH 5.0に調整したものを、121℃、15分間オートクレーブ(株式会社平山製作所製:HICLAVETM HVE−25)で滅菌して、培地を作製した。作製した培地に、アワモリ菌 0.2gを接種し、TAITEC BIO−SHAKER BR−4OLFを用いて、30℃、100rpm/分で1週間振盪培養した。
遠心分離搾汁機を用いた全果搾汁方式により得たシークヮーサー残渣 50.0gに、上記の通りに培養したアワモリ菌培養液 5mlを接種及び攪拌した後、常温で静置して1週間発酵を行い、アワモリ菌処理シークヮーサー残渣を得た。
(2)抽出
得られたアワモリ菌処理シークヮーサー残渣に、メタノール 150mlを加え、常温で5日間抽出した。抽出液を吸引濾過し、次いでダイアフラム真空ポンプによる減圧下(50〜100mmHg)でロータリーエバポレーターを用いて、湯浴温度を30℃〜35℃に設定して減圧濃縮し、メタノール抽出物 530mgを得た。このメタノール抽出物に、メタノール抽出物1.0gに対して4.0mlの割合で、5%(w/v)NaOH水溶液を加え、スターラーで2日間撹拌することによって、アルカリ不溶性成分を析出させた。析出したアルカリ不溶性成分を濾別し、十分に水で洗浄した。濾紙に残ったアルカリ不溶性成分をメタノールに再溶解し、次いで濃縮乾固することによって、結晶状物 5.5mgを得た。
得られたアワモリ菌処理シークヮーサー残渣に、メタノール 150mlを加え、常温で5日間抽出した。抽出液を吸引濾過し、次いでダイアフラム真空ポンプによる減圧下(50〜100mmHg)でロータリーエバポレーターを用いて、湯浴温度を30℃〜35℃に設定して減圧濃縮し、メタノール抽出物 530mgを得た。このメタノール抽出物に、メタノール抽出物1.0gに対して4.0mlの割合で、5%(w/v)NaOH水溶液を加え、スターラーで2日間撹拌することによって、アルカリ不溶性成分を析出させた。析出したアルカリ不溶性成分を濾別し、十分に水で洗浄した。濾紙に残ったアルカリ不溶性成分をメタノールに再溶解し、次いで濃縮乾固することによって、結晶状物 5.5mgを得た。
[2.参考例1.アワモリ菌未処理シークヮーサー残渣由来の結晶状物]
全果搾汁方式により得たシークヮーサー残渣 50.0gをメタノール 150mlで常温で5日間抽出した。得られた抽出液を吸引濾過及び減圧濃縮し、メタノール抽出物 1,967mgを得た。このメタノール抽出物に、メタノール抽出物 1.0gに対して4.0mlの割合で、5%(w/v)NaOH水溶液を加え、スターラーで2日間撹拌することによって、アルカリ不溶性成分を析出させた。析出したアルカリ不溶性成分を濾別し、十分に水で洗浄した。濾紙に残ったアルカリ不溶性成分をメタノールで再溶解し、次いで濃縮乾固することによって、結晶状物 1.4mgを得た。
全果搾汁方式により得たシークヮーサー残渣 50.0gをメタノール 150mlで常温で5日間抽出した。得られた抽出液を吸引濾過及び減圧濃縮し、メタノール抽出物 1,967mgを得た。このメタノール抽出物に、メタノール抽出物 1.0gに対して4.0mlの割合で、5%(w/v)NaOH水溶液を加え、スターラーで2日間撹拌することによって、アルカリ不溶性成分を析出させた。析出したアルカリ不溶性成分を濾別し、十分に水で洗浄した。濾紙に残ったアルカリ不溶性成分をメタノールで再溶解し、次いで濃縮乾固することによって、結晶状物 1.4mgを得た。
[3.実施例1及び参考例1の抽出物におけるフラボノイドの分析]
(1)分析条件
日本分光株式会社製のソフトChrom NAV、PU−980型送液ポンプ、MD−915型UV検出器、LG−980−02型グラジェントユニット、DG−980−50型デガッサ、及びLC−NetII/ADCを用いた。カラムはnacalai tesque社製のODS COSMOSIL 5C18−MS−II(Φ4.6×250mm)を用いた。
(1)分析条件
日本分光株式会社製のソフトChrom NAV、PU−980型送液ポンプ、MD−915型UV検出器、LG−980−02型グラジェントユニット、DG−980−50型デガッサ、及びLC−NetII/ADCを用いた。カラムはnacalai tesque社製のODS COSMOSIL 5C18−MS−II(Φ4.6×250mm)を用いた。
溶媒はメタノール−水混合液を用い、20%(v/v)MeOH→100%MeOHのグラジェントで、流速1ml/分でUV215nmを検出した。グラジェントの条件として、0〜1分の間はメタノール/水(20/80)、1〜15分の間に一定の速さでメタノール/水(20/80)からメタノール/水(80/20)へと濃度を調整するように設定し、15〜20分の間はメタノール/水(80/20)、20〜25分の間に同じく一定の速さでメタノール/水(80/20)から100%メタノールへと濃度を上げ、以降30分まで100%メタノールで溶出した。図1に、グラジェント分析の溶出溶媒プロファイルを示す。ノビレチン及びタンゲレチンの保持時間は、それぞれ約20.0分及び約21.4分として測定した。ノビレチン及びタンゲレチンの含有量は、標品を用いて検量線を作成することによる検量線法により算出した。このような条件で、実施例1及び参考例1のメタノール抽出物及び結晶状物のノビレチン及びタンゲレチンの含有量を測定した。
(2)分析結果
実施例1及び参考例1の抽出物の分析結果を表2に示す。
実施例1及び参考例1の抽出物の分析結果を表2に示す。
表2に示すとおり、アワモリ菌処理した実施例1は、メタノール抽出物の量が、アワモリ菌未処理の参考例1に対して約3割程度に減少した。しかし、メタノール抽出物に含まれるノビレチン及びタンゲレチンの含有量は、参考例1に対して6割程度であり、メタノール抽出物の減少量よりも高い割合であった。さらにノビレチン及びタンゲレチンの含有率はそれぞれ2.0倍及び2.8倍であり、ノビレチン+タンゲレチンの量としては2.3倍であった。このことは、実施例1におけるメタノール抽出物は、ノビレチンやタンゲレチンなどのポリメトキシフラボノイドが、参考例1におけるメタノール抽出物に対して、高含有量かつ高濃度に抽出されたことを示している。
また、析出した結晶状物の量は、参考例1に対して、実施例1では3.9倍に増加し、結晶状物中のノビレチン、タンゲレチン及びノビレチン+タンゲレチンの含有量はそれぞれ13倍、4倍及び9.2倍であった。さらに、結晶状物中のノビレチン含有率は3.2倍であり、ノビレチン+タンゲレチンの含有率は2.3倍であった。さらに、メタノール抽出物からの結晶状物中のノビレチン、タンゲレチン及びノビレチン+タンゲレチンの回収率は、参考例1に対して、実施例1ではそれぞれ23倍、5.4倍及び15.5倍に増加した。
以上の結果より、アワモリ菌処理による実施例1の結晶状物によって、高含有量のノビレチン及びタンゲレチンが得られた。また、アワモリ菌処理による実施例1の結晶状物は、参考例1に対して、高含有率のノビレチンを有するものであった。これらの結果は、アワモリ菌処理により、水溶性の化合物が分解され、ノビレチン及びタンゲレチンが発酵処理物中に濃縮されることにより、結果としてメタノール抽出物中のノビレチン及びタンゲレチンの含有率が上昇したと想定される。また、水溶性の物質が減少することによりノビレチン及びタンゲレチンは結晶状物として析出され易くなることから、最終的にはノビレチン及びタンゲレチン高含有の結晶状物の生成に至ることが示唆される。
さらに、これらの結果より、シークヮーサー残渣を熱水洗浄や乾燥する工程を経ることなく、さらに非経済的かつ複雑なカラム精製を用いることなく、高効率でノビレチン及びタンゲレチン高含有の結晶状物を生成することに成功した。
なお、シネフリンの含有量(mg)を、カラムとしてDevelosil ODS UG−5カラム(4.6mm×250mm);移動相としてCH3CN:H2O=2:98(0.1%(v/v)TFA入り)を用いて、流速1ml/分、測定波長223nmに設定して、約7.5分の保持時間を有するピークとして検量線法により測定したところ、実施例1の結晶状物にはシネフリンが含まれていないことが確認された。
[4.実施例1及び参考例1の分配による分離画分の分析]
実施例1及び参考例1について、液−液分配により分離した各画分の重量の比較を行った。なお、再現性を確認するために、各3点ずつ用意し、重量はその平均値(±標準偏差)を示す。分配による各画分への分離方法は次のとおりである。すなわち、アワモリ菌処理シークヮーサー残渣又はアワモリ菌未処理シークヮーサー残渣 50.0gを、メタノール 150mlで抽出し、吸引濾過及び減圧濃縮した。水と酢酸エチルで分配した後、さらに水層を水とn−ブタノール、酢酸エチル層を90%(v/v)メタノールとヘキサンで分配し、4画分に分離した。当該分配による分離のスキームを図2に示す。また、その結果を表3に示す。
実施例1及び参考例1について、液−液分配により分離した各画分の重量の比較を行った。なお、再現性を確認するために、各3点ずつ用意し、重量はその平均値(±標準偏差)を示す。分配による各画分への分離方法は次のとおりである。すなわち、アワモリ菌処理シークヮーサー残渣又はアワモリ菌未処理シークヮーサー残渣 50.0gを、メタノール 150mlで抽出し、吸引濾過及び減圧濃縮した。水と酢酸エチルで分配した後、さらに水層を水とn−ブタノール、酢酸エチル層を90%(v/v)メタノールとヘキサンで分配し、4画分に分離した。当該分配による分離のスキームを図2に示す。また、その結果を表3に示す。
表3が示すとおり、分配1操作後の各画分の重量変化から、アワモリ菌処理で抽出物中の水溶性成分の量が大きく減少したことが分かる。抽出物が1438mg減少したうちの1317mgは水溶性成分の減少と想定される。また、分配1操作後の各画分の割合の変化から、アワモリ菌処理で抽出物中の脂溶性成分の割合が大きく増加したことが分かる。分配2操作後の各画分の割合の変化から、アワモリ菌処理でノビレチン及びタンゲレチンが濃縮される90%メタノール画分の割合が大きく増加したことが分かる。
本発明の発酵処理物や本発明の製造方法によって製造されるノビレチン及びタンゲレチン抽出物やノビレチン及びタンゲレチン含有物及びこれらの加工処理物は、飲食品、医薬品及び化粧品の分野で有用であり、特に経口剤、外用剤、注射剤、化粧水などとして、及びこれらに配合できる点で有用である。
Claims (16)
- ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより得られる、発酵処理物。
- 前記柑橘類が、シークヮーサー(Citrus depressa)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見からなる群から選ばれる少なくとも1種の柑橘類である、請求項1に記載の発酵処理物。
- 前記酸耐性微生物が、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物である、請求項1又は2に記載の発酵処理物。
- 前記アスペルギルス属微生物が、アスペルギルス・カワチ(A.kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)、アスペルギルス・サイトイ(A.saitoi)及びアスペルギルス・ウサミ(A.usamii)からなる群から選ばれる微生物である、請求項3に記載の発酵処理物。
- 前記柑橘類が、柑橘類の搾汁残渣である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵処理物。
- ウンシュウミカン(C.unshiu)及びポンカン(C.reticulata)を除くミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区である柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理し、次いでノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程を含む、ノビレチン及びタンゲレチン抽出物の製造方法。
- 以下(1)〜(3)の工程を含む、ノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
(1)柑橘類を、酸耐性微生物を用いて発酵処理することにより、発酵処理物を得る工程
(2)前記発酵処理物を、ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒で処理することによりノビレチン及びタンゲレチン抽出物を得る工程
(3)前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物をアルカリで処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程 - 前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物が、濃縮処理に供したものである、請求項7に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒が、エタノール、メタノール及びアセトンからなる群から選ばれ、かつ、濃度が5〜100%(v/v)である溶媒である、請求項7又は8に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記ノビレチン及びタンゲレチン可溶性である溶媒が、エタノール、メタノール及びアセトンからなる群から選ばれ、かつ、濃度が20〜50%(v/v)である溶媒である、請求項7又は8に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記工程(3)が、前記ノビレチン及びタンゲレチン抽出物を1〜80%(w/v)のアルカリ水溶液で、0〜80℃にて処理することにより、不溶性成分としてノビレチン及びタンゲレチン含有物を得る工程である、請求項7〜10のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記柑橘類は、ミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ミカン区の柑橘類又はミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキツ亜族ダイダイ区の柑橘類である、請求項7〜11のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記柑橘類は、シークヮーサー(Citrus depressa)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチュウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.reticulata)、ダンシータンジェリン(C.tangerine)、ハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)、ヤツシロ(C.yatsusiro)、ケラジ(C.keraji)、オト(C.oto)、クレメンティン(C.clementina)、シカイカン(C.suhuiensis)、シラヌヒ及び清見からなる群から選ばれる少なくとも1種の柑橘類である、請求項7〜11のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記酸耐性微生物が、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物である、請求項7〜13のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記酸耐性微生物が、アスペルギルス・カワチ(A.kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリゼー(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)、アスペルギルス・サイトイ(A.saitoi)及びアスペルギルス・ウサミ(A.usamii)からなる群から選ばれる微生物である、請求項7〜13のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
- 前記柑橘類が、柑橘類の搾汁残渣である、請求項7〜15のいずれか1項に記載のノビレチン及びタンゲレチン含有物の製造方法。
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Cited By (7)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2019009438A1 (ja) * | 2018-09-21 | 2019-01-10 | 株式会社日本自然発酵 | 免疫チェックポイント抑制剤 |
| WO2019009437A1 (ja) * | 2018-09-19 | 2019-01-10 | 株式会社日本自然発酵 | 自然発がん予防剤 |
| JP2021123534A (ja) * | 2020-01-31 | 2021-08-30 | 株式会社ナリス化粧品 | ケラチノサイトのpar−2発現抑制剤およびメラノサイトのデンドライト形成抑制剤 |
| WO2022003749A1 (ja) * | 2020-06-29 | 2022-01-06 | 株式会社日本自然発酵 | Qol改善剤 |
| CN114027327A (zh) * | 2021-11-24 | 2022-02-11 | 四川省自然资源科学研究院 | 一种防治葡萄穗轴褐枯病的生物制剂制备方法 |
| JP2023088799A (ja) * | 2021-12-15 | 2023-06-27 | 国立大学法人茨城大学 | 資化物及び資化物の製造方法 |
| CN118077353A (zh) * | 2024-03-05 | 2024-05-28 | 中国科学院遗传与发育生物学研究所农业资源研究中心 | 一种利用柑桔橙柚类废弃物改良苏打盐碱土的方法 |
-
2014
- 2014-04-11 JP JP2014082230A patent/JP2015202065A/ja active Pending
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| JP7399730B2 (ja) | 2020-01-31 | 2023-12-18 | 株式会社ナリス化粧品 | ケラチノサイトのpar-2発現抑制剤およびメラノサイトのデンドライト形成抑制剤 |
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