JP2016002368A - 経皮薬物送達システム - Google Patents

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祐子 河尻
Yuko Kawashiri
祐子 河尻
松浦 徹
Toru Matsuura
松浦  徹
淳一 小舘
Junichi Kodate
淳一 小舘
龍介 川野
Ryusuke Kawano
龍介 川野
石原 隆子
Takako Ishihara
隆子 石原
一善 小野
Kazuyoshi Ono
一善 小野
和彦 高河原
Kazuhiko Takagahara
和彦 高河原
弘二 住友
Koji Sumitomo
弘二 住友
奈保子 河西
Nahoko Kasai
奈保子 河西
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Shingo Tsukada
信吾 塚田
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Abstract

【課題】皮膚のインピーダンスを安定的に抑制し、かつ導電性と通気性に優れた経皮吸収型DDSを提供する。
【解決手段】薬物のリザーバーと、電極と、前記電極に電力を供給するための電源と、導電性を有する繊維層とを備えた経皮薬物送達システムである。前記リザーバーが前記電極と接続されており、前記導電性を有する繊維層が皮膚と接触するように用いられ、前記薬物が前記導電性を有する繊維層を通じて供給可能に構成されており、さらに前記導電性を有する繊維層が導電性高分子を用いた導電性繊維から形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、経皮薬物送達システムに関し、典型的には生体電極を備えた経皮薬物送達システムに関する。
薬物送達システム(DDS:Drug Delivery System)は、薬物を必要な時に、必要な部位へ、必要な量だけ送達する技術として、非常に注目を集めている。DDSには、経口、経皮、経肺、ナノテクノロジー(ナノレベルの大きさで作られた分子で薬物や遺伝子を内包して輸送する)など、様々な手法が提案されており、いずれも薬の投与回数や量、副作用を軽減する効果を患者にもたらすものとして期待されている。
このうち、経皮吸収型DDSは、患者の皮膚を通して薬物を血液中や筋肉、関節に直接吸収させて非侵襲的に送達する方法であり、次のような利点を有する。
(1)難溶性の薬物や消化管粘膜からの吸収性に乏しい薬物、肝臓の初回通過効果を受け易い薬物を投与することができる。
(2)薬物の血中濃度の急激な上昇による副作用を回避することができる。
(3)全身循環系への移行が少なく、他組織や臓器への影響が小さい。
(4)薬物を長時間にわたり放出制御することが可能であり、患者に不快感を与えずに連続投与することができる。
(5)薬物の投与開始や中断が容易である。
その一方で、皮膚は外部からの細菌やウィルス、化学物質の侵入などから体内の環境を保護する作用があり、特に皮膚の一番外側にある角質層は高いバリア機能を有している。このため、生体にとって異物である薬物は角質層に阻まれやすく、次のような問題が存在する。
(6)薬物の吸収速度は皮膚のインピーダンスに依存しており、これは皮膚の乾燥状態や角質層の厚さの違いなど様々な条件により大きく変動するため、個人差や部位差が生じる。
(7)角質層は死んだ細胞なので能動輸送の寄与はなく、薬物は受動的に拡散するため、有効血中濃度に達するまでに時間がかかる。
(8)適切な皮膚透過性を有する薬物の種類が限られている。
そこで、角質層の薬物透過性を高めるための透過促進手段が必要となる。今までに、経皮的な薬物透過促進手法として、化学的手法と物理的手法がそれぞれ検討されてきた。
化学的手法には、a)経皮吸収促進剤の利用(角質層中のバリア機能を担う脂質分子に作用する化合物を添加したり、角質透過性のよい微粒子キャリアに薬物を封入したりして、薬物の透過性を高める)や、b)プロドラッグ化(薬物の化学構造を吸収されやすい形に変換して浸透させ、生体に取り込まれた後の代謝により活性化して薬効を発現させる)などがある。
化学的手法を用いる場合、薬物を受動的に皮膚に浸透させるので、良好な角質透過性を得るためには、次のような条件を満たす必要がある(非特許文献1)。
i)薬物の脂溶性が適度に高い。
角質層は脂溶性が高い物質の方が浸透しやすいが、その下の表皮や真皮は水分量が多い組織であるため、水溶性の物質の方が移行しやすい。このため、化学的手法を用いる場合は、脂溶性と水溶性のバランスを適切に設定することが重要となる。目安として、オクタノール/水分配係数が1〜4の範囲であることが望ましい。
ii)分子量が小さい。
分子量が大きいと、経皮吸収性が低下する。経皮吸収される分子量の目安は500以下であり、現在製品化されている経皮吸収型製剤の分子量は概ね200〜400である。
これらの条件を満たす薬物の種類は限られており、より多くの種類の薬物を経皮送達に適用するには、能動的に薬物を吸収、拡散させる物理的手法が不可欠となる。
物理的手法には、c)イオントフォレーシス(イオン導入法;皮膚に微弱な電流を流し、薬物の吸収を促進する)、d)エレクトロポレーション(電気穿孔法;高電圧の負荷により脂質構造やたんぱく質構造を一時的に乱し、小孔を形成することで角質の透過性を高める)、e)フォノフォレーシス(超音波導入法;皮膚に超音波を負荷し、薬物の吸収を促進する)、f)マイクロニードル(角質層の厚みを通過し、かつ神経などの付属器官が存在する真皮まで到達しない長さの微小な針で角質層に穴を開け、バリア機能を低下させる)などがある。
物理的手法を用いる場合、受動的な手法では角質層を透過させるのが困難であった難溶性の薬物や、分子量が数百から数千の薬物を送達することができる。また、電流、電圧、超音波などの印加や穿刺により、薬物を速やかに浸透させることができる。さらに、上記の物理的な刺激の印加量を制御し、あるいは間欠的に刺激を与えることによって、薬物を長期間にわたり有効な濃度に保つことが可能である。
このうち、c)イオントフォレーシスは、皮膚の離れた2点に陽極と陰極を設置して、電極間に電圧を印加して電位勾配を与えることにより、イオン性の薬物を電気泳動により皮膚の内側へ移行させる手法である。具体的には、イオン化された薬物を、薬物の電荷と同じ符号を持つ電極側のリザーバーに配置することで、電気的な斥力により皮下への移行を促進させることができる。また、イオントフォレーシスでは、電荷を持たない非イオン性の薬物についても、皮膚に電位勾配を与えることで起こる水の流れ(電気浸透流)を利用して皮膚を透過させることが可能である。通常、皮膚はマイナスに帯電しており、プラスに帯電したイオンをより選択的に透過させる。このため、皮膚に電流を流すと、角質層下の水分の多い組織内で、陽極から陰極に向かって電気浸透流が生じる。薬物が電荷を帯びていなくても、水に溶解していれば、この電気浸透流により経皮吸収を促進させることができる(非特許文献2)。
イオントフォレーシスは、基本的に薬物を含ませたリザーバーと、リザーバーに接続された陽陰の電極と、電源と、制御器とを患者の皮膚に装着するだけの簡易な構成で実現することができる。d)エレクトロポレーションやe)フォノフォレーシスに用いる装置と比較して小型で可搬性に優れたシステムであり、薬物投与における場所や時間の制約が少ない。また、f)マイクロニードルのように体内に異物(針)を残すリスクもない。このような観点から、近年、イオントフォレーシスを用いた経皮吸収型DDSの開発が積極的に進められている。また、本願に関連して、特許文献1〜3に示されているような先行技術がある。
特開2007−205756号公報 特開2011−183098号公報 国際公開第2013/073673A1号
"The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs", Exp. Dermatol., 9. 165-169 (2000). "Electroporation of mammalian skin: a mechanism to enhance transdermal drug delivery", Proc Natl Acad Sci USA, 99, 10504-10508, 1993. 「皮膚の複素インピーダンス解析に関する基礎的検討」,電子情報通信学会技術研究報告, MBE, MEとバイオサイバネティックス 101(478), 63-70, 2001. "Spinning and Characterization of Conducting Microfibers", Macromol.Rapid Commun.(2003)24,pp261-264 "Flexible multielectrode array using conductive polymer and collagen multi channels; Designed for less invasive neural recording from Spinal Cord and Brain Cortex", 40th annual meeting of the Society for Neuroscience, Neuroscience 2010, San Diego, USA, 2010.11.13-17.
ところが、従来のイオントフォレーシス用の経皮吸収型DDSには、以下のような問題があった。
[1]電極面積が大きい。
[2]電極を導電性のペーストまたはゲルを介して皮膚に装着する必要があり、これらによる皮膚のかぶれ、かゆみ、炎症、アレルギー反応等が発生する場合がある。
[3]電極(ペーストまたはゲルを含む)装着部の通気性が悪く、蒸れにより皮膚がかぶれる場合がある。
先述したように、薬物の吸収速度は皮膚のインピーダンスに依存しており、これは皮膚の乾燥状態や角質層の厚さの違いなど様々な条件により変動するため、個人差や部位差が大きい。皮膚のインピーダンスの変動が大きいと、薬物の経皮送達を安定した濃度で行うことができなくなることから、これを長期間にわたって抑制し安定させることが重要となる。皮膚のインピーダンスは、電極の面積に反比例するため、まずは皮膚と電極の接触面積を大きくすることが必要となる(非特許文献3)。
また、皮膚のインピーダンスは乾燥した状態だと高く(数kΩ)、湿った状態だと低い(数百Ω程度)ことが知られている。このため、皮膚のインピーダンスを抑制する手法として、皮膚と電極の間に導電性ペーストまたはゲルなどを塗布する手法もある。しかしながら、ペーストまたはゲルを用いる場合、これらによる皮膚のかぶれ、かゆみ、炎症、アレルギー反応等が発生する場合がある。ペーストまたはゲルを要因とする反応が起きなくても、これらが肌に密着して通気性を大幅に低下させるため、汗などが溜まって皮膚を刺激し、かぶれを起こす場合もある。電極面積が大きい場合、これらの影響はより大きくなり、患者にとっての装用感は快適とは言い難くなる。
なお、不織布や網目状の薄いシートを構成する繊維は通常絶縁体であるため、イオントフォレーシスに用いると、電極と皮膚の間の導通が悪くなり、薬物送達に必要な電位勾配を与えることが難しい。このため、導電性と通気性を両立する経皮吸収型DDSを提供することが困難であった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、皮膚のインピーダンスを安定的に抑制し、かつ導電性と通気性に優れた経皮吸収型DDSを提供することを目的とする。
本発明の課題を解決するための手段の一例を挙げると、次のとおりである。
(1)薬物のリザーバーと、電極と、前記電極に電力を供給するための電源と、導電性を有する繊維層とを備え、前記リザーバーが前記電極と接続されており、前記導電性を有する繊維層が皮膚と接触するように用いられ、前記薬物が前記導電性を有する繊維層を通じて供給可能に構成されており、さらに前記導電性を有する繊維層が導電性高分子を用いた導電性繊維から形成されていることを特徴とする、経皮薬物送達システム。
(2)前記リザーバーが導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されており、さらに前記リザーバーが前記導電性を有する繊維層と接続あるいは一体形成されていることを特徴とする、(1)に記載の経皮薬物送達システム。
(3)前記リザーバーと前記電極が導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されており、前記リザーバーと前記電極が互いに接続あるいは一体形成されており、さらに前記リザーバーと前記電極が前記導電性を有する繊維層と接続あるいは一体形成されていることを特徴とする、(1)に記載の経皮薬物送達システム。
(4)前記薬物が、イオン液体を溶媒としてリザーバーから供給されることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
(5)前記電極が陽極と陰極から形成されており、前記陽極と前記陰極の間に絶縁層が設けられており、前記陽極と前記陰極と前記絶縁層とが同一の支持体に形成されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
(6)前記導電性繊維が、マイクロファイバーから形成されていることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
(7)前記導電性繊維が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたPEDOT/PSSをコーティングしたものであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
(8)前記導電性を有する繊維層の皮膚と接触するように用いられる表面が、全体として平坦ではない立体構造を有する表面として構成されていることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
本発明によれば、経皮吸収型DDSにおける導電性と通気性とを両立でき、薬物送達の効率を損なうことなく装着感を改善できる。また、本発明によれば、電極とリザーバーを導電性高分子を用いた導電性繊維を用いて構成することができる。これらと、皮膚との通気性を確保するための導電性を有する繊維層とを、接続あるいは一体形成することにより、コンパクトで取扱い容易なモジュールを提供できる。
さらに、マイクロファイバーから形成された導電性繊維に導電性高分子をコーティングすると、上記の特徴に加えて、皮膚のインピーダンスを低下させて長期的に安定した濃度で薬物を透過させ、かつ毛細管現象により薬物を効率的に供給する経皮吸収型DDSを実現できる。
また、導電性高分子としてPEDOT/PSSを用いることにより、柔軟性や親水性に優れた、生体適合性の高い経皮吸収型DDSを提供できる。
これらの経皮吸収型DDSにおいて、薬物を送達するための流動体としてイオン液体を用いることにより、従来は皮膚透過が困難であった難溶性の薬物の経皮的な送達が可能である。
本発明の経皮薬物送達システム(経皮吸収型DDS)の一例を示す概念図である。 本発明の経皮吸収型DDSの別の例を示す概念図である。 本発明の経皮吸収型DDSの更に別の例を示す概念図である。 本発明の経皮吸収型DDSの更に別の例を示す概念図である。 本発明の経皮吸収型DDSの更に別の例を示す概念図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
[実施の形態1]
図1に経皮薬物送達システム10の一例を示す。経皮薬物送達システム10は、少なくとも一方に薬物(図示省略)を貯留する2つのリザーバー15と、陽極12と陰極13(単に電極12、13ともいう)と、電極12、13に電力を供給するための電源21と、導電性繊維を有する繊維層11を備えている。各リザーバー15は、電極12、13と皮膚18の間に配置されており、リザーバー15と皮膚18の間には、繊維層11が配置されている。図1の経皮薬物送達システム10においては、電極12、13、リザーバー15、導電性を有する繊維層11がこの順に配置されている。図1は、2つのリザーバー15と、繊維層11と、電極12、13とを、支持体17を用いて皮膚18に装着した経皮吸収型DDSの例である。
<導電性を有する繊維層>
導電性を有する繊維層は、導電性高分子を用いた導電性繊維から形成され、皮膚と接触するように用いられる。典型的には、導電性を有する繊維層は、皮膚に直接接するように用いられる。導電性繊維としては、後述の導電性高分子を支持し得る繊維であれば特に制限されず、従来公知の衣服等に使用されている繊維を適用可能であり、好適には不織布を含む布地を適用可能である。導電性繊維は、典型的には、導電性高分子及びバインダー樹脂を含有する混合物を、繊維にコーティングすることにより形成することができる。あるいは、導電性繊維は、前記混合物を紡糸により繊維化することにより形成することができる。なお、導電性繊維または繊維は、織物から形成された布地とするのが好ましいが、編物とする構成も含む。上記繊維に対して、導電性高分子と、接着性材料であるバインダー樹脂と、必要に応じて添加する溶剤とを混合した混合物を、塗布、印刷、浸漬、噴霧、滴下等することにより付着させ、更に、熱硬化、光照射、重合促進剤の添加、乾燥、加温、空気との接触等により固化又は重合させて導電性を有する繊維層を作製することができる。
ただし、通気性を両立する観点から、導電性を有する繊維層は網目構造や不織布など目が粗いものが好ましく、また薬物を分散または溶解させた流動体を保持する観点から、ある程度の厚みのある布地(不織布を含む)であることが好ましい。
前記混合物が「繊維にコーティングされている」とは、当該繊維の少なくとも一部分が当該混合物により被覆されている状態、又は当該繊維から形成された布地の少なくとも一領域に当該混合物が付着されている状態をいう。当該布地にコーティングされた混合物は、当該布地の表面(おもて面)又は裏面に付着していてもよいし、当該布地を構成する繊維(糸)同士の間で、繊維同士を結着するように付着していてもよい。また、前記混合物の一部は繊維の内部に浸透していてもよい。
導電性を有する繊維層の作製方法は、上記に限定されず、導電性繊維を織ることにより同様の形状にしてもよい。
導電性を有する繊維層が例えば網目構造や不織布のように内部に空隙を多く含む構造を有する場合、電極12、13と皮膚18の間の導電性を確保し、かつ皮膚18との接触面には毛穴が開く程度の通気性を保ちながら、層の内部に薬物を溶解あるいは分散させた導電性の溶媒を貯蔵することが可能である。
例えば、直径が1デニール以下の極細の合成繊維であるマイクロファイバーやピーチスキン(KBセーレン社の登録商標)のような極細の繊維に導電性高分子をコーティングすると、細かいスパイク状(なだらかな突起形状も含む)の表面形状を有する導電性を有する繊維層を作製することができる。これを皮膚18に圧着させると、皮膚18の凹凸が広げられて薄くなり、インピーダンスが低下して、個人差や角質層の厚さの違いなどによる部位差を低減することができる。これにより、電極12、13の面積を大型化しなくても、皮膚18のインピーダンスを長期間にわたって安定させ、薬物の経皮送達を安定した濃度で行うことが可能となる。
また、微細構造を有するマイクロファイバーを用いて導電性繊維を実現する場合、金属やプラスチックを用いたマイクロニードルとは異なり、突起が皮膚18の内側に刺さることはない。このため、異物を体内に残すリスクは発生しない。また、マイクロファイバーが皮膚18とリザーバー15の間に空隙を設けて通気性を保つことができる。同時に、スパイク部では毛細管現象により薬物を含む流体が効率よく送達される。これにより、装用感に優れ、かつ安定した経皮吸収型DDSを実現することができる。繊維直径は特に限定するものではないが、0.1〜50ミクロン程度である。
<導電性高分子>
導電性高分子の種類は特に制限されず、従来公知の導電性高分子が適用可能である。導電性高分子としては、例えばポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系などが挙げられる。なお、導電性高分子には、上記ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系以外にも様々な種類が存在する。しかしながら、経皮吸収型DDSで重要な要素となる高い親水性を有する材料としては、親水性の高いチオフェン系の導電性高分子であるPEDOT/PSSが好適である。親水性に優れる導電性高分子を用いることにより、リザーバーに分散あるいは溶解させた薬物を、通気性を改善しながら効率よく皮膚へ送達することができる。PEDOT/PSSは他にも導電性が高く、また環境安定性が高いといった利点を有する。このPEDOT/PSSの水溶液を、アセトンの凝固浴槽へノズルから押し出すことによって糸状に成形した導電性繊維の開発が進められており、その実用化が検討されている(非特許文献4)。
しかしながら、PEDOT/PSSは湿潤な環境ではもろく、耐水性と加工性に問題があった。これに対し、PEDOT/PSS自体を繊維化するのではなく、これを他の基材からなる繊維に含浸及び/または付着させ、続いて電極間を走行させて通電することにより電気化学的に重合固定してコーティングする手法が提案され、柔軟性や導電性、生体適合性を損なうことなく、十分な機械強度を与えることに成功している(非特許文献5)。
この手法を用いれば、例えば単線糸状の繊維の他、複数の基材繊維を撚り合わせて所望の太さの撚り糸にしたものや、マイクロファイバーのように非常に細い繊維が高密度に配列されたもの、レーヨンやテンセルのようにフィブリル性(一本の繊維が枝分かれに分繊すること)の高い、ピーチスキン(KBセーレン社の登録商標)様に毛羽立たせた繊維にもコーティングすることが可能である。
なお、PEDOT/PSSが基材に固定するメカニズムは化学固定が支配的であり、高分子であるPEDOT/PSSが基材上にランダムに固定されるため、基材への含浸及び/または付着の仕方によってはPEDOT/PSSの一部が島状に分断され、導電性が低下する恐れがあった。このため、PEDOT/PSSに微量(0〜5%)のEDOTを添加して通電することにより電気化学的に重合固定し、PEDOT/PSSを連続的に基材上に固定させることができる。これにより、安定した良好な電気特性を得ることが可能となる。
<薬物>
薬物の種類は特に限定されないが、生体反応を抑制する又は促進する薬理作用を有する薬物であることが好ましい。薬物としては、例えば生体組織の障害を低減させる薬物、生体組織の修復を促す薬物、生体組織を成長させる薬物等が挙げられる。具体的には、例えば抗生物質及び抗ウィルス剤等の抗感染薬、フェンタニール、スフェンタニル、ブプレノルフィン及び無痛剤の組み合わせを含む鎮痛薬、麻酔薬、拒食症薬、抗関節炎薬、テルブタリン等の抗喘息剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、止痢薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、片頭痛製剤、抗乗り物酔い薬、スコポラミン及びオンダンセトロン等の製剤、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、ドブタミン等の心刺激薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱剤、胃腸及び膀胱に作用する鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経様作用薬、キサンチン誘導体、ニフェジピン等のカルシウムチャンネル遮断薬を含む心血管薬、β遮断薬、サルブタモール及びリトドリン等のβ−アゴニスト、抗不整脈薬、アテノロール等の降圧剤、ACE阻害薬、利尿薬、冠動脈,末梢,あるいは脳に作用する血管拡張薬、中枢刺激剤、感冒薬、充血緩和剤、診断薬、副甲状腺ホルモン,成長ホルモン,及びインシュリン等のホルモン、催眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経用作用薬、酸化防止剤、ニコチン、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、並びにトランキライザを含む全ての主要な治療領域の治療剤を使用することができる。本発明は、美容あるいは健康を目的とした経皮薬物送達にも適用可能である。例えば、カロテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)及びビタミンE等の皮膚で働く酸化防止剤、並びに他のビタミン製剤、そして他の酸化防止剤、レチノール(ビタミンAアルコール)を含むレチノイド等の小じわ防止剤、α−ヒドロキシ酸、サリチル酸としてよく知られているβ−ヒドロキシ酸、ヒドロキシ酸とポリヒドロキシ酸の組み合わせ、そして加水分解及び可溶性コラーゲン、ヒアルロン酸等の保湿剤、アミノフィリン等の抗脂肪沈着剤、レチノイン酸,ヒドロキノン,過酸化物等の皮膚漂白剤、アロエ−ベラ、野生のヤムイモ、マンサク、ヤクヨウニンジン、緑茶等の抽出物を含む植物製剤を使用することができる。
好ましくは、これらの薬物の1種以上を溶媒に溶解させて薬物溶液とする。溶媒の種類は特に限定されないが、皮膚透過性を考慮すると親水性のあるものが望ましい。溶媒は、容易に導電性を有する繊維層から漏洩しないよう、ある程度の粘度を有するものが望ましい。溶媒としては、例えば、親水ワセリンや加水ラノリン、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、グリセロール、ヒアルロン酸、プロピレングリコール、トレハロースなど、あるいはこれらを電解質溶液、例えば水や生理食塩水など、に溶解させたものなどが挙げられる。
疎水性あるいは分子量の大きい薬物を送達するためには、溶媒としてイオン液体を用いて薬物をマイクロ/ナノパーティクル化することが効果的である。イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム(Imidazolium)、ピロリジニウム(Pyrrolidinium)、ピペリジニウム(Piperidinium)、ピリジニウムアンモニウム(Pyridinium Ammonium)、ホスホニウム(Phosphonium)を有する化合物が挙げられる。
より具体的には、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(1‐Butyl‐3‐methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド
(1‐Butyl‐3‐methylimidazolium dicyanamide)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート
(1‐Butyl‐3‐methylimidazolium tetrafluoroborate)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホナート
(1‐Butyl‐3‐methylimidazolium trifluoromethanesulfonate)、
1−ブチル−1−メチルピペリジニウム テトラフルオロボラート
(1‐Butyl‐1‐methylpiperidinium tetrafluoroborate)、
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラート
(1‐Butyl‐1‐methylpyrrolidinium tetrafluoroborate)、
1−ブチルピリジニウム テトラフルオロボラート
(1‐Butylpyridinium tetrafluoroborate (1=N))、
コリン・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(Choline bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
コリン・二水素ホスファート
(Choline dihydrogen phosphate)、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホナート)
(N,N‐Diethyl‐N‐methyl‐N‐(2‐methoxyethyl)ammonium bis(trifluoromethanesul fonate)、
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボラート
(N,N‐Diethyl‐N‐methyl‐N‐(2‐methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート
(1‐Ethyl‐3‐methylimidazolium tetrafluoroborate)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート
(1‐Ethyl‐3‐methylimidazolium acetate)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(1‐Ethyl‐3‐methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド
(1‐Ethyl‐3‐methylimidazolium dicyanamide)、
1−エチル−1−メチルピロリジニウム テトラフルオロボラート
(1‐Ethyl‐1‐methylpyrrolidinium tetrafluoroborate)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート
(1‐Hexyl‐3‐methylimidazolium tetrafluoroborate)、
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム テトラシアノボラート
(1-Butyl-1-methyl-pyrrolidinium tetracyanoborate)、
1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム テトラシアノボラート
(1-Ethyl-3-methyl-imidazolium tetracyanoborate)、
1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム トリシアノメチド
(1-Butyl-3-methyl-imidazolium tricyanomethide)、
N−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム ジシアナミド
(N-Butyl-3-methyl-imidazolium dicyanamide)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム アミノ酸塩
(1‐Ethyl‐3‐methylimidazolium amino acids)
等の化合物が挙げられる。
上記化合物の中でも、水溶性の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホナートが好ましい。
溶媒としてイオン液体を用いると、従来送達させるのが困難であった疎水性の薬物やたんぱく質(サイトカインやTGF-βなど)をミセル化してマイクロ/ナノパーティクルとし、電気泳動により皮膚を浸透させることが可能となる。マイクロファイバー状の導電性繊維を用いて皮膚のインピーダンスを低下させ、さらに難溶性の薬物を例えばイミダゾリウム系のイオン液体を用いてマイクロパーティクル化して吸収させる経皮吸収型DDSは、従来は皮膚への浸透が困難であった薬物の経皮送達を実現する手法として高い効果を有する。
薬物溶液は、薬物の電荷と同じ符号を持つリザーバーに貯留する。薬物が電荷を持たない場合は、陽極から陰極への電気浸透流を利用して皮膚を透過させればよく、その場合は陽極12側のリザーバー15に貯留すればよい。従って、薬物は、リザーバー15の少なくとも1つに含まれていればよい。また、一方のリザーバーに薬物を貯留し、もう一方のリザーバーに、薬物とは逆の電荷を有する補助剤(アジュバント)等を貯留してもよい。
<リザーバー>
図1に示された経皮薬物送達システム10において、リザーバー15は、電極12、13と皮膚18の間に設置されている。リザーバー15は、電源20から電流を流すと、導電性を有する繊維層11との接触面すなわちリザーバー15の下面から薬物を放出する。
リザーバー15は、薬物を溶媒に溶解あるいは分散させた薬物溶液のための導電性の貯留体であり、ゲル、ペースト、エマルジョンなど様々な状態で構成され得る。これらを単独で用いてもよく、また例えばポリマーやシート等に浸みこませて貯留してもよい。薬物溶液は水分を多く含むため、リザーバー15自体が電極12、13と皮膚18とを導電させる役割を果たすことになる場合が多い。そうでない場合は、別途導電性ペーストまたはゲルを設け、この導電性ペーストまたはゲルを介して、皮膚との導通を取ってもよい。この際、先述したように、水分を多く含むリザーバー15、あるいは導電性ペーストまたはゲルを皮膚18に直接貼り付けると、通気性が悪いために様々な問題が生じる。本実施形態では、これらと皮膚18の間に導電性を有する繊維層11(好適には導電性繊維からなる網目状のシート)を配置して、皮膚18との電気的導通を損なうことなく通気性を改善している。
<電気配線>
図1において、電気配線14の一端は、電極12、13の一部と電気的に接続されている。電気配線14の他端は、電極12、13に給電するための電源20に接続されている。電気配線14は、給電のための配線として機能し得るものであれば特に制限されず、従来公知の銅線やアルミニウム線、あるいは銅や金を例えばポリイミドなどの絶縁体のフィルムにパターニングして配線としたものも適用可能である。
<電極>
電極12、13は、その材料や形状、配置は特定の例に限定されない。電極の材料としては、カーボン、金属(アルミニウム、白金、金、銀、銅など)、Ag/AgCl等の他、導電性高分子も適用可能である。また、これらの材料を、導電性を有しない材料にパターニング、あるいはコーティングしたものを用いても良い。電極12、13はリザーバー15と接続されるため、リザーバー15に含まれる薬物溶液による変質や腐食などを生じない材料を適宜選択すればよい。
また、電極の形状としては、装用感を考慮すると厚みのない形状が好ましく、例えばシート状(面状)やメッシュ状に構成されると良い。なお、電極の配置は、電気的に絶縁されていればよく、2つの電極を並列させる他、一方の電極の周辺部をもう一方の電極で囲む(例えば円形電極とリング状の電極で構成する等)ように配置しても良い。
<電源>
電源20は、電極の陽極12と陰極13の間に電位勾配を与えるためのものである。電源20を駆動するために制御部21が設けられている。薬物送達に必要な電流は、例えば0.1〜0.5mA/cmである。電源20として、陽極12と陰極13の間に前記電流をかけることが可能であれば、従来公知のボタン電池などが用いられてよい。また、制御部21に関しても、薬物送達の開始あるいは終了を制御するためのスイッチおよび/または薬物を定期的に送達するためのパルス駆動やフィードバック機構などの機能を備えていれば、従来公知の技術が用いられてよい。また、制御部21は、電源20を駆動するための入力信号、あるいは電源20を駆動した回数や時間を出力する出力信号を、外部の機器と有線、あるいは無線でやり取りする機能を備えていてもよく、これらの信号を送受信する機能については、従来広知の技術が用いられてもよい。
<支持体>
支持体17は、電極12、13等を皮膚18に固定して支持するために用いることができる好適な構成要素である。支持体17は、例えば粘着層を塗布した通気性のよいシート状の支持体とすることができる。支持体17は、従来公知の製品名「スキナゲートメッシュ(ニチバン株式会社製)」のような通気性サージカルテープでもよく、あるいは流動体の流出を防ぎつつ通気性を確保する機能を有するものとして、例えば製品名「エントラント(東レ株式会社製)」のような防水透湿加工素材の布でもよい。
また、支持体17は、陽極12用と陰極13用としてそれぞれのために分離して形成されていてもよく、あるいは陽極12と陰極13の電気的な分離が担保できる形で一体的に形成されていてもよい。
[実施の形態2]
図2に、導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されたリザーバー35を備えた経皮吸収型DDSの例を示す。なお、図1で説明された部材と同一、共通、又は類似する部材には、図2において図1の参照符号に20だけ加算した参照符号を付し、図1の説明を援用することができる。
リザーバー35自体を導電性繊維で構成する場合、その内部に薬物溶液を貯蔵する必要があることから、繊維を網目構造や不織布のように適度な空隙を多く含む立体構造(厚みのある層)とすることが好ましい。空隙の大きさは、薬物溶液の粘度に合わせて選択すればよい。例えば粘度が低い場合は細かい網目構造、粘度が高い場合は粗い網目構造を適用するなどして、リザーバー35からの薬物溶液の浸み出しを制御することができる。
リザーバー35の薬物溶液を貯蔵する導電性繊維層が、皮膚38に対して適切な通気性を与える表面形状を有する場合、リザーバー35を皮膚38と直接接触させることが可能である。薬物溶液の貯蔵性と皮膚と接触する面の表面形状を独立に制御したい場合は、導電性を有する繊維層の皮膚と接触するように用いられる表面を、全体として平坦ではない立体構造を有する表面として構成することができる。ここで「全体として平坦ではない立体構造を有する表面」は、概観であるいは巨視的に見て平坦でない立体構造が付与された表面の意味を含む。例えばリザーバー35を構成する導電性繊維層の表面を、互いに異なる複数種の立体構造を有する導電性を有する繊維層から、貼り合わせや圧着により、一体形成された表面として構成することができ、あるいは、繊維層の表面のみを毛羽立たせて局所的に構造を変えることもできる。
[実施の形態3]
図3に、電極の陽極52と陰極53が、それぞれ薬物のリザーバーを兼ねた形態の経皮吸収型DDS50を示す。なお、図1で説明された部材と同一、共通、又は類似する部材には、図3において図1の参照符号に40だけ加算した参照符号を付し、図1の説明を援用することができる。
陽極52と陰極53は、導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されている。薬物のリザーバーを導電性繊維で構成する場合、リザーバー自体が導電性を有するので、リザーバーに電気配線54を接続することによりリザーバーを電極として用いることができる。電気配線54の一端は、本実施形態における電極(リザーバー、または電極兼リザーバーともいう)52、53の皮膚58に接触する面の反対側の面または側面に、電気的に接続されている。これにより、電極とリザーバーを一体化させ、取扱いを容易にすると共に、部品点数を少なくすることができる。また、実施の形態2と同様に、リザーバーの表面形状を制御することにより、皮膚58との接触面からそれぞれの電極52、53までを、1つの導電性を有する繊維層として構成することが可能となる。
経皮吸収型DDSにおいては、陽極と陰極は互いに短絡しないよう電気的に分離している必要がある。そのため、導電性繊維により構成された電極は、陽極52と陰極53が互いに分離独立した2つの繊維層(パッド)として形成されたものであってもよく、あるいは後述するように、導電性高分子を布地に部分的にコーティングして、陽極52と陰極53を含む一枚の繊維層(シート)として形成されていてもよい。
ここで、例えば電極兼リザーバー52、53を、内側に銀をコーティングした透湿性の高い素材でカバーし、銀コート面から電気配線を取り出しておく。この電気配線を電源に接続すると、銀コート面を通して導電性を有する繊維層全体に電流が流れ、電極として機能させることができる。これにより、コンパクトなデバイス構成が可能となる。
また、導電性繊維の電気抵抗を考慮して、局所的に接続された電気配線54から電極52、53全体に均一に電位を与えるために、導電性繊維からなる電極52、53と電気配線54の間に、電極52、53と概ね同じ形状の例えば銀めっき繊維布などを挟んでもよく、あるいは支持体57の一部を銀コート処理して、その処理面に電極52、53と電気配線54を設置するなどしてもよい。
[実施の形態4]
図4に、導電性高分子を塗布あるいは含浸してコーティングしたマイクロファイバーを導電性繊維として用いた経皮吸収型DDS70を示す。なお、図1で説明された部材と同一、共通、又は類似する部材には、図4において図1の参照符号に60だけ加算した参照符号を付し、図1の説明を援用することができる。
例えば、マイクロファイバーやピーチスキン(KBセーレン社の登録商標)のような繊維に導電性高分子をコーティングしたものを用いて、細かいスパイク状の表面形状を有する導電性を有する繊維層を作製することができる。これを皮膚78に圧着させると、皮膚78の凹凸が広げられて薄くなり、インピーダンスが低下して、個人差や角質層の厚さの違いなどによる部位差を低減することができる。これにより、電極72、73の面積を大型化しなくても、皮膚78のインピーダンスを長期間にわたって安定させ、薬物の経皮送達を安定した濃度で行うことが可能となる。
また、微細構造を有するマイクロファイバーを用いて導電性繊維を実現する場合、金属やプラスチックを用いたマイクロニードルとは異なり、突起が皮膚78の内側に刺さることはない。このため、異物を体内に残すリスクは発生しない。また、マイクロファイバーが皮膚78とリザーバーすなわち電極72、73の間に空隙を設けて通気性を保つことができる。同時に、スパイク部では毛細管現象により薬物を含む流体が効率よく送達される。これにより、装用感に優れ、かつ安定した経皮吸収型DDSを実現することができる。
[実施の形態5]
図5に、導電性高分子を部分的にコーティングして、陽極92と陰極93を同一の支持体に形成した経皮吸収型DDS90の一例を示す。なお、図1で説明された部材と同一、共通、又は類似する部材には、図5において図1の参照符号に80だけ加算した参照符号を付し、図1の説明を援用することができる。
図5において、陽極92と陰極93はそれぞれ導電性を有する繊維層として構成され、これらの導電性を有する繊維層は、支持体97を構成する繊維の一部に導電性高分子をコーティングするか、あるいは支持体97に導電性繊維を部分的に織り込むことにより形成されている。導電性を有する繊維層を支持体97の一部に形成する手法は、実施の形態1で説明した通りである。陽極92と陰極93の間は、絶縁層96で分離されており、電極間の短絡を回避することができる。
一般的な繊維は、乾燥した状態では電気的に絶縁しており、導電性高分子がコーティングあるいは織り込まれていない領域は、基本的に絶縁層となる。導電性高分子がコーティングあるいは織り込まれていない領域が、リザーバー95から滲み出す薬物や水分などのために、陽極92と陰極93との間の領域が導電性を帯びる恐れがある場合は、その領域に絶縁物質をコーティングして、陽極92と陰極93との間の絶縁層96の絶縁性をより確実なものとすることができる。絶縁物質としては、油性物質などの従来公知の物質を用いることができる。さらに、電極92、93の周辺部に粘着剤102をコーティングすれば、陽極92と陰極93を含む一枚の繊維層(シート)自体を支持体97として、そのまま皮膚98に貼り付けることもできる。粘着剤102が導電性の低い材料である場合、粘着剤102自体を絶縁物質として用いても良い。
本実施形態において、リザーバー95と電極92、93の間に、導電性ペーストまたはゲル(図示省略)を配置してもよく、また、リザーバー95を導電性繊維で構成することにより、電極がリザーバーを兼ねる構成としてもよい(図示省略)。また、実施の形態2と同様に、リザーバーの95の表面形状を制御することにより、皮膚98との接触面からそれぞれの電極92、93までを、1つの導電性を有する繊維層として構成することが可能となり、かつ全体を支持体97と一体化できる。さらに、電極92、93の周辺部に粘着剤102をコーティングすれば、そのまま皮膚98に貼り付けることができる。この場合、電極92、93が配置された領域の支持体97の表面に銀コート処理して、その処理面に電気配線94を設置するなどして電源と接続してもよく、大幅な部品点数削減とコンパクトなレイアウトを実現する。
[実施例]
<電極の作製>
汎用マイクロファイバー布「トレシー」(東レ株式会社製、繊維直径約2μm)を、PEDOT−PSS(CLEVIOS(ヘレウス社の登録商標)P、ドイツ国ヘレウス社製)にEDOT(ドイツ国ヘレウス社製)を0.1%添加した溶液に浸漬した。続いて、電極を用いて前記マイクロファイバー布に通電し、マイクロファイバーの表面及び内部に、電気化学的にPEDOT−PSSを固定することにより、導電性繊維布を得た。さらにこの導電性繊維布にグリセロールを含浸させた。さらにもう一度、PEDOT−PSS(CLEVIOS(ヘレウス社の登録商標) P、ドイツ国ヘレウス社製)にEDOT(ドイツ国ヘレウス社製)を0.1%添加した溶液への浸漬、通電、グリセロールの含浸を行い、電気化学的にPEDOT−PSSを固定することにより、前記マイクロファイバー布へのPEDOT−PSSのコーティングを完了した。作製した導電性繊維布の抵抗値を直流安定化電源(PAB18−5.5;菊水電子工業社製)及びデジタルマルチメーター(VOAC7511;岩崎通信機社製)を用いてDC5V負荷時の電流量から計算した結果、抵抗値は0.02MΩ/cm、導電率は0.1S/cmであった。
次に、前記導電性繊維布を直径5mmの小片として2枚切り出し、通気性サージカルテープ「スキナゲートメッシュ」(ニチバン株式会社製)」に約10mm離して設置し、それぞれの導電性繊維布とサージカルテープの間に先端の被覆を除去した銅線を挟んで、経皮吸収型DDS用のパッチを得た。
次に、前記導電性繊維布を電極として用いた場合の薬物輸送速度を測定する目的で、実験用マウス皮膚を用いて薬物輸送実験を行った。
まず、前記導電性繊維布からなる2つの電極に、グリセロールを湿潤させ、そのうちの一方に、生理的食塩水0.1mLに蛍光物質のルシファーイエロー10μMを溶解させた液体を含ませた。これを実験用マウス皮膚に貼り付け、ルシファーイエローを含ませた側の電極の配線を電源の陽極側に、もう一方を陰極側に接続し、0.5mA/cmの電流を断続的に通電した。
通電後のマウス皮膚を、蛍光強度測定装置(マルチラベルカウンター、ALVO SX1420、パーキンエルマー社製)を用いて蛍光測定法にて測定したところ、6.7μM/dayの速度でマウス皮膚中にルシファーイエローの移行が認められた。
マイクロファイバーを皮膚に圧着させると、皮膚の凹凸が広げられて薄くなり、インピーダンスが低下して、個人差や角質層の厚さの違いなどによる部位差を低減することができる。本実施例では、上記マイクロファイバーの皮膚への押付圧0.1〜2.0kPaの間で、皮膚インピーダンスが1.5〜3kΩ/cmとなった。これにより、電極面積を大型化しなくても、皮膚のインピーダンスを長期間にわたって安定させ、薬物の経皮送達を安定した濃度で行うことが可能となることが確認された。
繊維の微細構造によりマイクロファイバーを実現する場合、金属やプラスチックを用いたマイクロニードルとは異なり、突起が皮膚の内側に刺さることはない。このため、異物を体内に残すリスクは発生しない。また、マイクロファイバーが皮膚とリザーバーとの間に空隙を設けて通気性を保つことができる。同時に、スパイク部では毛細管現象により薬物を含む薬物溶液が効率よく送達される。これにより、装用感に優れ、かつ安定した経皮吸収型DDSを実現することができる。なお、マイクロファイバーとしては、本実施例で述べた「トレシー」の他、「ピーチスキン(KBセーレン社の登録商標)」と呼ばれる、超極細繊維を用いた高密度な布の表面にある単繊維を引き出して短く切った布などを用いても良い。
なお、本発明は図示された実施の形態および実施例に限定されない。実施の形態または実施例に示された少なくとも1つの構成要素と、他の実施の形態または実施例に示された少なくとも1つの構成要素とを、適宜組み合わせることが可能である。また、本発明は、図示を省略するが、リザーバーを一方の電極側に1つだけ設けた経皮薬物送達システム、一方のリザーバーのみを電極として構成した経皮薬物送達システム、一方のリザーバーと電極のみを導電性繊維から一体的に構成した経皮薬物送達システムをも含むものである。
10、30、50、70、90…経皮吸収型薬物送達システム、11…導電性を有する繊維層、12、32、52、92…陽極、13、33、53、93…陰極、14、34、54、74、94…電気配線、15、35、95…リザーバー、17、37、57、77、97…支持体、18、38、58、78、98…皮膚、20、40、60、80、100…電源、21、41、61、81、101…制御部、72…マイクロファイバーによる陽極、73…マイクロファイバーによる陰極、96…絶縁層、102…粘着剤

Claims (8)

  1. 薬物のリザーバーと、電極と、前記電極に電力を供給するための電源と、導電性を有する繊維層とを備え、前記リザーバーが前記電極と接続されており、前記導電性を有する繊維層が皮膚と接触するように用いられ、前記薬物が前記導電性を有する繊維層を通じて供給可能に構成されており、さらに前記導電性を有する繊維層が導電性高分子を用いた導電性繊維から形成されていることを特徴とする、経皮薬物送達システム。
  2. 前記リザーバーが導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されており、さらに前記リザーバーが前記導電性を有する繊維層と接続あるいは一体形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
  3. 前記リザーバーと前記電極が導電性高分子を用いた導電性繊維で構成されており、前記リザーバーと前記電極が互いに接続あるいは一体形成されており、さらに前記リザーバーと前記電極が前記導電性を有する繊維層と接続あるいは一体形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
  4. 前記薬物が、イオン液体を溶媒としてリザーバーから供給されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
  5. 前記電極が陽極と陰極から形成されており、前記陽極と前記陰極の間に絶縁層が設けられており、前記陽極と前記陰極と前記絶縁層が同一の支持体に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
  6. 前記導電性繊維が、マイクロファイバーから形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
  7. 前記導電性繊維が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたPEDOT/PSSをコーティングしたものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
  8. 前記導電性を有する繊維層の皮膚と接触するように用いられる表面が、全体として平坦ではない立体構造を有する表面として構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮薬物送達システム。
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