JP2016010309A - 誘導電動機のための回転子磁束推定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、誘導電動機のための駆動制御装置に使用される回転子磁束推定装置に関し、最小次元(2次元)磁束状態オブザーバに基づく回転子磁束推定手段を有する回転子磁束推定装置を提供する。特に、回転子磁束推定の安定性と速応性を同時達成する、回転子磁束推定手段を有する回転子磁束推定装置を提供することにある。
【解決手段】 回転子磁束推定手段を、駆動用電圧の相当値と駆動用電流の相当値と回転子速度の相当値とを入力信号とする最小次元(2次元)磁束状態オブザーバとして構成した。この際、磁束状態オブザーバに使用されるオブザーバゲインを、速度の大小に関係なく一定とすることで、課題を解決した。
【選択図】図2

Description

本発明は、誘導電動機のための駆動制御装置に使用される回転子磁束推定装置に関する。特に、回転子磁束の位相を電動機駆動用の電圧・電流を用いて推定する回転子磁束装置に関する。なお、本発明の説明では、「位相」を「角度位置」と同義で使用する。また、誘導電動機の「固定子」と「回転子」を、各々、「1次側」と「2次側」と完全同義で使用する。
図1に、γδ一般座標系、αβ固定座標系、dq同期座標系の3座標系を描画した。αβ固定座標系の基軸であるα軸は、固定子のu相巻線中心と同一の方向の軸である。dq同期座標系の基軸であるd軸は、2行1列(2×1と略記)ベクトルとしての回転子磁束あるいは同比例値(同図では、φ2nと表現)と同一の方向の軸である。γδ一般座標系は、αβ固定座標系、dq同期座標系を特別の場合として包含する一般性に富む座標系である。本発明では、γδ一般座標系の中で、特にdq同期座標系への位相差の無い同期を目指した座標系を、γδ準同期座標系と呼称する。また、回転子磁束と同比例値とを含む物理量を総称して、「回転子磁束相当」と呼称する。
誘導電動機のベクトル制御のための、駆動用の電圧・電流を利用した回転子磁束推定法として、最小次元(すなわち、2次元)磁束状態オブザーバを用いて回転子磁束(2次磁束)を推定し、回転子磁束推定値からこれに含まれる回転子磁束位相情報を抽出する方法が特許文献1〜2、非特許文献1〜5に提案されている。なお、最小次元と2次元は同義である。以下の説明では、磁束状態オブザーバを、簡単に、状態オブザーバまたはオブザーバと略称することもある。
誘導電動機のための最小次元(2次元)磁束状態オブザーバは、非特許文献1〜5の公開時期から明白なように、元来、堀らによって提案されたものである。特許文献1〜2は、堀の状態オブザーバを無修正で利用している。堀の状態オブザーバの特徴は、次の2点にある。▲1▼状態オブザーバは、αβ固定座標系上で構成する。換言するならば、状態オブザーバの入力信号として、αβ固定座標系上で定義された電圧、電流を用い、αβ固定座標系上で評価された回転子磁束を推定する。▲2▼状態オブザーバに必須の2行2列(2×2と略記)行列オブザーバゲインを、回転子速度に応じて時々刻々変化する時変ゲインとする。
堀らによる非特許文献1〜5では、オブザーバゲインを、回転子速度の1次関数、または2次有理関数、またはリカッチ方程式の解関数などとして、変更する具体的記述を与えている。堀の状態オブザーバを無修正で利用した特許文献1では、オブザーバゲインの時変性を、段落「0035」において、「オブザーバゲイン(G)は、誘導電動機の実速度推定値により調整される」と明記している。また、特許文献2では、段落「0022」において、「オブザーバゲインGは、誘導電動機の実速度推定値により調整される」と明記している。図12は、参考までに、2×2行列オブザーバゲインが速度情報に応じて時々刻々調整される時変性を説明した特許文献1の図を複写・再掲したものである。
一般に、状態オブザーバの推定性能は、これに使用される行列オブザーバゲインにより支配的な影響を受ける。堀らの提案による時変ゲインを利用した磁束状態オブザーバは、特にこれをセンサレスベクトル制御に利用する際には、回転子磁束推定値と回転子速度の相当値が互いに非線形な影響を及ぼし合い、しばしば振動化・不安定化した。振動抑制性・安定性は、システム設計上、最優先で確保されるべき特性である。しかし、堀らの提案による時変オブザーバゲインによる場合、この確保が大変困難という欠点を有していた。安定性を確保するには、一般には、オブザーバゲインを小さく選定することになるが、この選定には速応性を失うという別の性能低下の代償が求められた。
森真人・足利正:「誘導電動機の速度ベクトル制御方式」、特開平7−123799号(1993−10−25) 森真人・足利正・渡邉勝之:「誘導電動機の二次抵抗補償方式」、特開平7−303398号(1994−5−9)
堀洋一・V.Cotter・茅陽一:「誘導電動機の磁束状態オブザーバに関する制御理論的考察」、電気学会論文誌B、Vol.106、No.11、pp.1001−1008(1986−11) 堀洋一:「誘導機の磁束オブザーバの離散形実現と電動機定数変動に対する低感度化」、電気学会論文誌D、Vol.108、No.7、pp.665−671(1988−7) 堀洋一・梅野孝治・鈴木裕之:「高速低感度磁束オブザーバに基づく磁界オリエンテーション形ベクトル制御系の実現」、電気学会論文誌D、Vol.109、No.10、pp.771−777(1989−10) 梅野孝治・堀洋一・鈴木裕之:「ロバスト安定性を考慮した磁束オブザーバに基づく誘導機のベクトル制御系の設計」、電気学会論文誌D、Vol.110、No.4、pp.333−342(1990−4) H.Tajima and Y.Hori:"Speed Sensorless Field−Orientation Control of the Induction Machine"、IEEE Trans. on Industry Application、Vol.29、No.1、pp.175−180(1993−1/2)
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、誘導電動機のための駆動制御装置に使用され、最小次元(2次元)磁束状態オブザーバに基づく回転子磁束推定手段を有する回転子磁束推定装置を提供することにある。特に、磁束推定の安定性と速応性とを同時に達成できる最小次元(2次元)磁束状態オブザーバに基づく回転子磁束推定値の生成手段を備える回転子磁束推定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、誘導電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、駆動用電圧の相当値と駆動用電流の相当値と回転子速度の相当値とを入力信号とし、回転子磁束相当の推定値を状態変数とする2次元磁束状態オブザーバを構成して、回転子磁束相当推定値を生成する手段を少なくとも備えることを特徴とする回転子磁束推定装置であって、該磁束状態オブザーバにおいて、回転子速度相当値をω^2nとし、回転子時定数の逆数をW2とし、2×2単位行列をIとし、さらに2×2交代行列J、符号関数sgnを以下のように定め、
回転子磁束相当推定値のフィードバックを司る2×2行列Aを次式のように表現した場合、
2×2行列Aにおけるフィードバック用2×2行列オブザーバゲインGbを、定数g1、g2と回転子速度相当値の極性とを用いた次式
に従い、回転子速度相当値の大きさに依存しない固定ゲインとして設定したことを特徴とする。(4)式に利用された符号関数(シグナム関数とも呼ばれる)sgnの働きは、(2)式が明瞭に示しているように、回転子速度相当値の極性(すなわち、プラス、マイナス)を抽出することであり、その大きさは、回転子速度相当値に拘わりなく一定である。なお、本明細書では、2行2列の行列を簡単に2×2行列と表現している。
請求項2の発明は、請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、該2次元磁束状態オブザーバへの入力信号である該駆動用電圧相当値と該駆動用電流相当値とを、αβ固定座標系上の信号、または、回転子磁束の位相をd軸の位相とするdq同期座標系への収束を目指したγδ準同期座標系上の信号としたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、該2次元磁束状態オブザーバへの入力信号である該回転子速度相当値を、回転子速度検出値(回転子速度真値)、または、回転子速度推定値としたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、回転子磁束相当推定値の生成手段が生成した回転子磁束相当推定値から、微積分の関係を用いて回転子磁束相当の周波数推定値または電源周波数を生成し、さらに回転子磁束相当推定値からすべり周波数推定値を生成し、回転子磁束相当の周波数推定値または電源周波数からすべり周波数推定値を減じることにより回転子速度推定値を生成する手段を備えることを特徴とする。
なお、上に用いた「相当値」なる用語は、当該信号の真値、真値の良好な近似値、推定値、あるいは真値と良好な相関を有する信号などを意味する。
以下、図面と数式を用いて、本発明の効果を明快に説明する。図1のように、任意の速度ωγで回転するγδ一般座標系を考える。また、誘導電動機の回転子磁束が主軸のγ軸に対し、ある瞬時に位相θγをなしているものとする。γδ一般座標系上における誘導電動機の数学モデル(回路方程式)は、次の(5)〜(6)式により記述される。
(5)〜(6)式において、2×1ベクトルv1、i1は、それぞれ固定子の電圧、電流を、φ2は回転子磁束を意味している。ω2nは回転子の電気速度であり、sは微分演算子d/dtである。R1、l1t、M、L2、W2は、電動機パラメータを示しており、おのおの、固定子抵抗、固定子総合漏れインダクタンス、相互インダクタンス、回転子インダクタンス、回転子時定数の逆数(以下、回転子逆時定数と呼称)を意味する。
ここで、回転子磁束相当の1つとして、正規化回転子磁束φ2nを以下のように定義する。
上式より明白なように、正規化回転子磁束は回転子磁束の比例値であり、回転子磁束相当の物理量に該当する。同様に、回転子抵抗R2の比例値として、正規化回転子抵抗R2nを以下のように定義する。
(5)式の回路方程式は、(7)、(8)式を用いて、次式のように書き改めることができる。
(9)式における正規化回転子磁束を推定するためのγδ一般座標系上の最小次元(2次元)磁束状態オブザーバは、(6)式の2×2D因子「D」を用い以下のように新規構築される。
本発明おける「回転子磁束相当推定値のフィードバックを司る2×2行列A」は、γδ一般座標系上で記述された(10)式で例えるならば、左辺の回転子磁束相当推定値φ^2nと右辺の回転子磁束相当推定値φ^2nとのフィードバック関係を記述した(10)式右辺の1項の2×2行列Aに該当する。
(10)式における記号∧は、関連信号の推定値を意味する。上式における2×2行列Gb、Gは、共に、正規化回転子磁束を推定するためのオブザーバゲインである。本発明では、簡単に、前者の2×2行列オブザーバゲインGbを「フィードバック用ゲイン」、後者の2×2行列オブザーバゲインGを「入力用ゲイン」と呼称する。請求項1記載の「フィードバック用2×2行列オブザーバゲインGb」は、略称の「フィードバック用ゲイン」を意味する。通常は、入力用ゲインGはフィードバック用ゲインGbと次式のように同一に選定され、フィードバック用ゲインGbが定まれば、入力用ゲインGも必然的に定まる。
(10)式の磁束状態オブザーバでは、説明の簡明性を維持すべく、回転子速度は実測可能であるとして、回転子速度相当値ω^2nとして回転子速度真値(回転子速度検出値)ω2nを用いた。(10)式の最小次元(2次元)磁束状態オブザーバは、αβ固定座標系、γδ準同期座標系を特別の場合として含むγδ一般座標系上で構成されている。以上の2点には、注意されたい。γδ一般座標系上の本状態オブザーバは、図2のように図示することができる。
請求項1の発明によれば、(10)式の最小次元(2次元)磁束状態オブザーバにおけるフィードバック用ゲインGbは、(4)式に従った固定ゲインとして定められる。図2では、既に、(11)式を併用する形で、固定ゲインの様子を取り入れて、オブザーバゲインが回転子速度相当値ω^2nの極性のみに従い変更される様子、換言するならば同一方向の回転では常時一定である様子を、回転子速度相当値ω^2nの極性に基づく貫徹矢印で明記している。
状態オブザーバの推定性能はフィードバック用ゲインGbによって支配的影響を受ける。この解析は、誤差方程式により行なうことができる。(10)式から(9)式を減ずると、(3)式の2×2行列Aを用いた次の誤差方程式を得る。
(12)式のフィードバック用ゲインGbに、請求項1の発明に従い、(4)式のフィードバック用ゲインGbを適用する場合には、誤差方程式の特性を支配する2×2行列Aは、次のように評価される。
上式を(12)式に用いた上で、(6)式に従いD因子「D」を展開すると、次式を得る。
誤差方程式(14)式の特性を支配する右辺第1項の2×2行列は、次の共役の固有値λ1、λ2を有する。
(14)式の特性を支配する2個の固有値は、(15)式が示しているように、回転子速度のいかんにかかわらず負性が維持される。これらは、推定誤差のゼロ収束を意味する。換言するならば、(4)式のフィードバック用ゲインGbを用いた最小次元(2次元)磁束状態オブザーバ(10)式は、4象限全領域で、任意の初期値に対し正規化回転子磁束推定値が同真値への収束することを保証する。正規化回転子磁束推定値の同真値への収束レイトは、固有値の実数部の極性反転値である「(1+g1)W2+g2・abs(ω2n)」となる。磁束推定値の安定性と速応性の確保には、固有値の実数部が回転子速度に比例して増減することにより、達成される。請求項1の発明によれば、上に新規提示した一連の解析式が示すように、本収束特性が確保される。なお、本収束特性は、正規化回転子磁束に代わって、回転子磁束を推定する場合も同一である。
以上の解析的説明より明白なように、請求項1の発明によれば、磁束推定の安定性と速応性を同時に達成できる最小次元(2次元)磁束状態オブザーバに基づく回転子磁束推定手段を実現できるという効果が得られる。
つづいて請求項2の発明の効果を説明する。請求項2の発明によれば、最小次元(2次元)磁束状態オブザーバに利用する駆動用電圧相当値と該駆動用電流相当値とを、αβ固定座標系上の信号、または、γδ準同期座標系上の信号とすることができる。これにより、αβ固定座標系上またはγδ準同期座標系上で評価した回転子磁束相当推定値を生成できるようになる。ひいては、請求項2の発明によれば、回転子磁束推定装置の実現の自由を高める効果が得られ、さらには、請求項1の効果を高める効果も得られる。
つづいて請求項3の発明の効果を説明する。請求項3の発明によれば、回転子磁束推定装置への回転子速度相当値を回転子速度検出値または回転子速度推定値とできる。これにより、回転子磁束推定装置は、速度センサつき誘導電動機、速度センサレス誘導電動機のいずれにも適用可能な柔軟性を具備できるという効果を得る。この結果、請求項3の発明によれば、回転子磁束推定装置の実現の自由を高める効果が得られ、さらには、請求項1の効果を高める効果が得られる。
つづいて請求項4の発明の効果を説明する。請求項4の発明によれば、回転子磁束相当推定値の生成手段が生成した回転子磁束相当推定値から、回転子速度推定値を生成できるようになる。これは、回転子磁束相当値推定値と整合性のとれた形で、さらには簡単な形で、速度推定値が得られることを意味する。請求項4の発明によれば、位相と周波数との間の不変的関係である微積分の関係を利用することになるので、速度の瞬時推定あるいは高速推定が可能となる。以上のように、請求項4の発明によれば、回転子磁束相当値推定値と整合性のとれた形で、さらには簡単な形で、しかも高速推定が可能な形で、速度推定値が得られる効果を得ることができる。ひいては、請求項1の効果を高める効果も得られる。
3種の座標系と回転子磁束位相の1関係例を示す図 γδ一般座標系上における最小次元(2次元)磁束状態オブザーバの構成例 本発明に基づくαβ固定座標系上の回転子磁束推定器を利用した駆動制御システム例を示すブロック図 本発明に基づくαβ固定座標系上の回転子磁束推定器の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくαβ固定座標系上のオブザーバ部の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくαβ固定座標系上の後処理部の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくαβ固定座標系上の後処理部の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上の回転子磁束推定器を利用した駆動制御システム例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上の回転子磁束推定器の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上のオブザーバ部の内部構成例を示すブロック図 本発明に基づくγδ準同期座標系上の後処理部の内部構成例を示すブロック図 速度に応じて変化するオブザーバゲインをもつ従前の最小次元(2次元)磁束状態オブザーバのブロック図
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
誘導電動機に対して、本発明の回転子磁束推定装置を用いた駆動制御装置を適用した1実施例を図3に示す。本発明の主眼は回転子磁束推定装置(以下、回転子磁束推定器とも言う)にあるが、電動機駆動制御システム全体における回転子磁束推定装置(回転子磁束推定器)の位置づけを明示すべく、あえて、駆動制御装置を含む電動機駆動制御システム全体から説明する。1は誘導電動機を、2は電力変換器を、3は電流検出器を、4a、4bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、5a、5bは共にベクトル回転器を、6は電流制御器を、7は本発明を利用した回転子磁束推定器(回転子磁束推定装置)を、8は磁束制御器を、9は指令変換器を、各々示している。当業者には容易に理解されるように、図3では、1の電動機を除く、2から9までの諸機器が駆動制御装置を構成している。本発明に直接的に関連した回転子磁束推定器は、トルク制御、速度制御でも利用される。本図では、簡単のためトルク制御を遂行するためのシステムを示している。なお、本図では、電圧、電流の座標系を明示すべく、これら信号には脚号t(uvw座標系)、s(αβ固定座標系)、r(γδ準同期座標系)を付している。更には、簡明性を確保すべく、3×1または2×1のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。
駆動制御装置の中で、本発明と関係するのは、回転子磁束推定器7である。図3のシステムでは、特に回転子磁束推定器が、請求項2の発明に従い、αβ固定座標系上で構成されている点に特色がある。図4に、回転子磁束推定器の内部構成を示した。本回転子磁束推定器は、オブザーバ部7aと後処理部7bとから構成されている。
オブザーバ部7aは、請求項1の発明における「回転子磁束相当推定値を生成する手段」を具現化したものである。本オブザーバ部7aは、固定子電流検出値と固定子電圧指令値に加えて、回転子速度相当値(本例では、請求項3の発明に従い回転子速度推定値を利用)ω^2nを入力信号として得て、αβ固定座標系上の正規化回転子磁束推定値φ^2nを生成し出力している。αβ固定座標系上の本オブザーバ部の詳細を、図5に示した。本オブザーバ部は、(10)式(すなわち図2)のγδ一般座標系上の最小次元磁束状態オブザーバに従い構成している。具体的には、(10)式(すなわち図2)のγδ一般座標系上の最小次元磁束状態オブザーバにαβ固定座標系の条件(ωγ=0)を付与して得ている。
簡単には、図2において逆D因子を積分器に形式的に置換すれば得ることができる。回転子磁束相当推定値のフィードバックを司る2×2行列Aにおけるフィードバック用ゲインGbは、請求項1の発明に従いすなわち(4)式に従い、定められている。オブザーバ部では、正規化回転子磁束推定値とともに無修正の固定子電流を後処理部へ送り出している。
後処理部7bは、正規化回転子磁束推定値から、正規化回転子磁束の位相推定値(回転子磁束の位相推定値と同一)、正規化回転子磁束の振幅推定値((7)式が明示しているように、正規化回転子磁束の振幅は、回転子磁束の振幅と単純比例関係にある)を生成・出力する役割を少なくとも担っている。図3の例は、誘導機に速度検出器(速度センサ)を装着しない、いわゆるセンサレス駆動の例である。センサレス駆動の場合には、後処理部は、回転子速度推定値も出力することになる。図4では、正規化回転子磁束の位相推定値(余弦正弦形式)、正規化回転子磁束の振幅推定値、速度推定値ω^2n、さらには電源周波数ωγを出力する様子を示している。センサレス駆動の場合には、後処理部で生成された速度推定値ω^2nがオブザーバ部へフィードバックされる。図4は、この様子も示している。
図6は、後処理部の1実施形態例である。図6の後処理部は、大きくは、下段部と上段部に分けられる。下段部は、正規化回転子磁束の位相(余弦正弦形式)と振幅の推定値を出力している。一方、上段部は回転子速度(電気速度)の推定値を出力している。下段部は、速度センサの有無に関係なく必要な機能ブロックである。一方、上段部は、速度センサを利用する場合には不要である。本実施形態例は、速度センサレスの例であるので、上段部を付加している。上段部は、請求項4の発明に従って「回転子速度推定値を生成する手段」を具現化したものであり、以降では、速度推定器7b−1と呼称する。
速度推定器7b−1の構成は、請求項4の発明の通りであるが、これは数式を用い以下のように記述される。
(16a)式の第1式が明示しているように、回転子磁束の(角)周波数の推定値ω^2fから、すべり(角)周波数の推定値ω^sを減じて、速度推定値ω^2nを得ている。両推定値は、請求項4の発明に従い、正規化回転子磁束推定値(回転子磁束相当推定値)から生成している。このときの生成は、(16a)式の第2式が示すように、瞬時推定(動的要素を伴わない推定)である。特に、回転子磁束の(角)周波数の推定値は、回転子磁束相当推定値の微分処理を介して得ている。計算量の低減を図るべく、速度推定値の実際生成は、(16a)式の第3式に従い、遂行されている(請求項3の発明は、このような演算量低減処理を排除するものでない)。図6における速度推定器7b−1は、(16a)式の第3式による処理過程を忠実にブロック線図化したものである。なお、図6の速度推定値生成の最終工程に付加されたFl(s)は広帯域幅をもつローパスフィルタであるが、これは必ずしも必要がない。このため、本フィルタブロックは破線で描画した。
図6を用い例示した後処理部に代わって、請求項4の発明に基づき同様な機能を有する後処理部を構成してよいことを指摘しておく。図7は、この観点から用意した、請求項4の発明に基づく他の後処理部の実施形態例である。本後処理部は、正規化回転子磁束の位相(余弦正弦形式)、振幅、電源周波数を生成する上段部と、速度推定値を生成する下段部から構成されている。上段部は、PLLの原理に基づき構成されている。C(s)は安定を確保するための有理関数形式の制御器である。これは、本発明の主眼ではないので、これ以上の説明は省略する。
下段部すなわち速度推定器7b−1は、請求項4の発明に基づいており、電源周波数(γδ準同期座標系の速度と同一)ωγからすべり周波数推定値ω^sを減じることにより、速度推定値ω^2nを得ている。このときの電源周波数、すべり周波数推定値は、図7が明示しているように、オブザーバ部が生成した正規化回転子磁束推定値から得ている。また、電源周波数(γδ準同期座標系の速度と同一)ωγは、積分器(1/s)の存在が明示しているように、微積分の関係を利用して得ている。以上のように、本例の速度推定器の構成は、請求項4の発明の通りであるが、これは、数式を用いて以下のように記述される。
図6、図7が明瞭に例示しているように、請求項4の発明に従った速度推定器7b−1の実現は、すこぶる簡単である。
誘導電動機に対して、本発明の回転子磁束推定装置を用いた駆動制御装置を適用した他の実施例を図8に示す。図8と図3との電動機駆動制御システムの基本的相違は、回転子磁束推定装置(回転子磁束推定器)の位置にある。図3の実施例では、回転子磁束推定器をαβ固定座標系上で構成した。これに対して、図8は、請求項2の発明に従い、回転子磁束推定器をγδ準同期座標系上で構成した実施例となっている。
図8において、回転子磁束推定器を除く他の機器の機能は、図3と同一であるので、この説明は省略する。図8における回転子磁束推定器の内部構成を図9に示した。本実施形態例のγδ準同期座標系上の回転子磁束推定器も、概略的には、オブザーバ部7aと後処理部7bから構成されている。すなわち、概略的構成に関しては、図4のαβ固定座標系上の回転子磁束推定器の場合と同様である。しかしながら、細部構成は異なる。
オブザーバ部7aは、γδ準同期座標系上の固定子電流検出値と固定子電圧指令値に加えて、座標系速度(電源周波数)ωγと回転子速度相当値(本例では、速度推定値)ω^2nを入力信号として得て、γδ準同期座標系上で評価した正規化回転子磁束推定値を生成し出力している。γδ準同期座標系上のオブザーバ部は、請求項1の発明に基づく(10)式のγδ一般座標系上の最小次元磁束状態オブザーバに従い構成することができる。
(10)式のγδ一般座標系上の最小次元磁束状態オブザーバにγδ準同期座標系の条件を付与すればγδ準同期座標系上の最小次元磁束状態オブザーバを得ることができる。具体的には、座標系速度ωγを、電源周波数とすればよい。すなわち、両信号を同一とすればよい。
図10にγδ準同期座標系上で構成したオブザーバ部(最小次元磁束状態オブザーバ)の詳細構造を示した。形式的には、図10の磁束状態オブザーバは、図2の磁束状態オブザーバと同一である。ただし、図10における座標系速度ωγは電源周波数ω1fと同一であるが、図2における座標系速度ωγは任意である。当然のことながら、図10のオブザーバ部(最小次元磁束状態オブザーバ)におけるフィードバック用ゲインGbは、請求項1の発明である(4)式に従って定められている。
図9における後処理部7bの役割は、γδ準同期座標系上で評価された正規化回転子磁束推定値(回転子磁束相当推定値)からαβ固定座標系から見た正規化回転子磁束位相推定値(回転子磁束位相推定値と同一)、正規回転子磁束の振幅推定値、座標系速度(電源周波数)ωγを生成することにある。図8、図9の例は、請求項3の発明に従い、回転子速度相当値として回転子速度推定値を利用する例となっているので、後処理部7bは、これら3信号に加え、回転子速度推定値ω^2nを生成・出力するようにしている。
図8、図9のための後処理部7bの実施形態例を図11に示した。本後処理部は、正規化回転子磁束の位相(余弦正弦形式)、振幅、電源周波数を生成する上段部と、速度推定値を生成する下段部から構成されている。上段部の構成原理は、図7の場合と同様にPLLに基づいている。図7と同様に、上段部は本発明の主眼ではないので、これ以上の説明は省略する。
下段部すなわち速度推定器7b−1は、請求項4の発明に基づいており、電源周波数(γδ準同期座標系の速度と同一)ωγ=ω1fからすべり周波数推定値ω^sを減じることにより、速度推定値ω^2nを得ている。このときの電源周波数、すべり周波数推定値は、図11が明示しているように、オブザーバ部が生成した正規化回転子磁束推定値から得ている。また、電源周波数(γδ準同期座標系の速度と同一)ωγは、積分器(1/s)の存在が明示しているように、微積分の関係を利用して得ている。本例の速度推定原理は、(17)式と同一であるので、これ以上の説明は省略する。図11が明瞭に例示しているように、請求項4の発明に従った速度推定器7b−1の実現は、すこぶる簡単である。
図3〜図11を用いて説明した実施形態例は、回転子速度相当値として回転子速度推定値を使用するものであった。回転子速度相当値ω^2nとして、回転子速度真値(回転子速度検出値)ω2nを利用してよい。この利用の具体的方法は、オブザーバ部に利用する回転子速度相当値を、単に、回転子速度真値(検出値)に置換することに尽きる。当然のことながら、回転子速変相当値として回転子速度真値を利用する場合には、後処理部7bにおける速度推定器7b−1は不要であり、撤去することになる。後処理部の他の構成機器に関しては、回転子速度推定値に代わって回転子速度真値(検出値)を利用する場合も変更はない。
以上、本発明に関し、各種の図を利用しつつ複数の実施例を用いて具体的かつ詳しく説明した。上記説明の本発明は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術的範囲を外れない範囲内で多様な変形及び変更が可能であり、前述した実施例及び添付図面に限定されるものではないことを指摘しておく。
本発明は、誘導電動機が応用される用途に広く活用することができる。
1 誘導電動機
2 電力変換器
3 電流検出器
4a 3相2相変換器
4b 2相3相変換器
5a ベクトル回転器
5b ベクトル回転器
6 電流制御器
7 回転子磁束推定器
7a オブザーバ部
7b 後処理部
7b−1 速度推定器
8 磁束制御器
9 指令変換器

Claims (4)

  1. 誘導電動機のための駆動制御装置に使用され、かつ、駆動用電圧の相当値と駆動用電流の相当値と回転子速度の相当値とを入力信号とし、回転子磁束相当の推定値を状態変数とする2次元磁束状態オブザーバを構成して、回転子磁束相当推定値を生成する手段を少なくとも備えることを特徴とする回転子磁束推定装置であって、
    該磁束状態オブザーバにおいて、回転子速度相当値をω^2nとし、回転子時定数の逆数をW2とし、2×2単位行列をIとし、さらに2×2交代行列J、符号関数sgnを以下のように定め、
    回転子磁束相当推定値のフィードバックを司る2×2行列Aを次式のように表現した場合、
    2×2行列Aにおけるフィードバック用2×2行列オブザーバゲインGbを、定数g1、g2と回転子速度相当値の極性とを用いた次式
    に従い、回転子速度相当値の大きさに依存しない固定ゲインとして設定したことを特徴とする回転子磁束推定装置。
  2. 請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、該2次元磁束状態オブザーバへの入力信号である該駆動用電圧相当値と該駆動用電流相当値とを、αβ固定座標系上の信号、または、回転子磁束の位相をd軸の位相とするdq同期座標系への収束を目指したγδ準同期座標系上の信号としたことを特徴とする回転子磁束推定装置。
  3. 請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、該2次元磁束状態オブザーバへの入力信号である該回転子速度相当値を、回転子速度検出値、または、回転子速度推定値としたことを特徴とする回転子磁束推定装置。
  4. 請求項1記載の回転子磁束推定装置であって、回転子磁束相当推定値の生成手段が生成した回転子磁束相当推定値から、微積分の関係を用いて回転子磁束相当の周波数推定値または電源周波数を生成し、さらに回転子磁束相当推定値からすべり周波数推定値を生成し、回転子磁束相当の周波数推定値または電源周波数からすべり周波数推定値を減じることにより回転子速度推定値を生成する手段を備えることを特徴とする回転子磁束推定装置
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