JP2016013997A - 連鎖移動剤を含む歯科切削加工用コンポジットレジン材料組成物 - Google Patents

連鎖移動剤を含む歯科切削加工用コンポジットレジン材料組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を維持した上で、加圧加熱による成型過程において、ブロック内部で発生するひずみを低減しクラックやチッピングが起こらない、歯科切削加工用レジン材料としての歯科用硬化性組成物の提供。【解決手段】下記(a)〜(d)を含むブロック材料を製造するための歯科用硬化性組成物。(a)重合性単量体10〜70重量部、(b)充填材30〜90重量部、(c)重合開始剤0.01〜10重量部、及び(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤0.001〜1重量部。【選択図】なし

Description

本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科切削加工用レジン材料として好適に使用できる歯科用硬化性組成物に関する。
歯の欠損による口腔機能の低下を回復する治療方法としては、歯科充填用コンポジットレジンによる充填修復治療、または歯科用金属、歯科用陶材や歯冠用コンポジットレジン、歯科加圧成型用セラミックス等によって歯冠形態を作製して接着・合着させる補綴修復治療が行われている。歯科用コンポジットレジンによる充填修復治療は、前歯部においては3〜4級窩洞、くさび状欠損、根面窩洞、また臼歯部では1級および2級窩洞等において適応されるものであり、具体的には接着処理された窩洞に歯科用コンポジットレジンを直接填入後、窩洞内で重合硬化させるものである。一方、補綴修復治療は以下の内容で行われている。形成した窩洞または支台歯の印象採得を行い、得られた印象型に石こうを注入して石こう模型を製作する。その石こう模型上でワックスを用いて最終補綴物の形態を再現したワックスパターンを製作後、耐火埋没材中での埋没、硬化した埋没材の電気炉中での加熱によるワックスの焼却、得られた鋳型内への金属の溶融鋳造等を経て金属補綴物を製作する。又はその石こう模型上でレジン材料を築盛し最終形態を再現し、光及び/又は熱により硬化させることでレジン系補綴物を製作する。その後、完成した補綴物を形成した窩洞または支台歯にセメント材料を用いて接着・合着させるものである。
近年、ソフト面の進歩や切削加工技術の向上によって歯科用CAD/CAMシステムが普及してきている。補綴物を作製するための切削加工用材料としては、セラミックス、金属、レジン系材料に大別されるが、症例に応じてそれぞれの材料が選択される。
それらの材料の中でもレジンとしての柔軟さを併せ持つコンポジットレジンブロックは、セラミックス系ブロックと比較して、技工室やチェアサイドにおける咬合調整、研磨作業が容易であり、また材料自身が削れることによって対合歯を損傷しにくいといった特徴を有している。また、このコンポジットレジンブロックは金型中にペーストを充填して加圧・加熱重合させることよって成形することから、光重合型コンポジットレジンと比べて重合率が高く、硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性に優れることが知られている。さらに、加圧・加熱重合型コンポジットレジンブロックは工場で製造されるため、光重合型コンポジットレジンに見られるような重合不足が発生せず、一定の品質で補綴物を提供することができる。
特許文献1には、平均粒径0.01〜0.04μmの無機質充填剤20〜70重量部、少なくとも1個の不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマー、及び加熱重合開始剤からなる混合物を圧力50〜300MPa、温度100〜200℃の条件下において加圧・加熱して重合・硬化させる成形方法及びそれにより成形加工された歯科用レジン材料が開示されている。しかし、この歯科用レジン材料に含まれている(メタ)アクリレート系のモノマーは熱硬化反応速度が速いために金型が接している成形物の表面付近から急激に硬化が始まったり、またそれらモノマーの重合による体積収縮が局部的に起こったりする等、成形物内部でひずみが発生するためにクラックやチッピングが起こり均一な成形物が得られないなどの問題があった。
前述の問題点を克服するために特許文献2においては、無機充填材、アクリル系重合性モノマー、及び重合開始剤を含有する成形用組成物を加熱成形することで形成され、体積が20cm以上350cm以下であり、前記アクリル系重合性モノマーが、分子量300以上780以下のポリエチレングリコールジメタクリレートを6質量部以上30質量部以下の割合で含有する歯科切削加工用レジン材料が開示されている。この先行技術においてはアクリル系重合性モノマーとして特定の分子量を持ったポリエチレングリコールジメタクリレートを特定量含有することによって体積が20cm以上350cm以下の大きな歯科切削加工用レジン材料においてもクラックやチッピング等を発生することなく成形できるとことを特徴としている。しかしながらこの先行技術のレジン材料組成においても熱伝導性が異なる無機成分と有機成分が共存している状況にあり、またアクリル系重合性モノマーの種類が変わっても熱硬化速度が速いことには変わりがないことから、均一に熱硬化したレジン成形物を得ることはできず、依然に成形物内部でひずみが発生するためにクラックやチッピングが発生するなどの問題が起こるものであった。
特開平10−323353号公報 特開2012−214398号公報
歯科切削加工用レジン材料として用いられるレジン成形物(コンポジットレジンブロック)は歯冠補綴物に求められる審美性や機械的特性を発揮するためにシリカ充填材や有機無機複合充填材等の充填材が高密度に配合されている。また、その充填材の周囲には重合性単量体が重合硬化して存在するという材料構造になっている。このコンポジットレジンブロックは金型中でこれら充填材と重合性単量体からなるペースト状の歯科用硬化性組成物を填入して、加圧・加熱により成形加工することによって製作するが、充填材と重合性単量体との熱伝導率が大きく異なることから、ブロック内部でミクロ的なひずみが発生し、クラックやチッピング等の問題が起こる原因となる。これはブロックを製作する加圧加熱時において熱の伝わり方が速い重合性単量体が急激に熱重合するためである。また金型中でペースト状の歯科用硬化性組成物を加圧加熱する成形加工時において、金型近傍にあるペーストは熱が伝わりやすいために瞬時に熱重合するものの、熱が伝わりにくい金型から離れた内部付近にあるペーストはそれらに比較して熱重合が遅れて進むこととなる。このようにペーストの位置によって熱重合の進み方が不均一になると、ブロック内部においてマクロ的なひずみが発生しクラックやチッピング等の問題が起こる原因にもなっている。
以上のことから、本発明の課題は歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を維持した上で、歯科切削加工用レジン材料として用いることができるブロック形状を製作する段階においてブロック内部で発生するひずみを低減し、クラックやチッピングが起こらない加圧加熱による成形加工が可能な歯科用硬化性組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために発明者らは鋭意検討の結果、歯科切削加工用レジン材料として用いるブロックを製作する加圧加熱の加工成形段階において、金型を介した熱により重合硬化するペースト状の歯科用硬化性組成物に含まれる各成分の熱伝導性の違いがミクロ的・マクロ的なひずみを生じクラックやチッピングを引き起こしていることを見出し、本発明を完成させるに至った。詳しくは歯科用硬化性組成物に含まれる成分の中でも熱伝導性が高く、熱によって急激に重合が開始する重合性単量体の熱重合速度を連鎖移動材の添加により遅延させることによって、ブロック内部において均一な熱重合が進むことから、ミクロ的・マクロ的なひずみの発生を抑制し、クラックやチッピングが起こらないブロックを得ることが可能となった。さらにこの連鎖移動材の添加は熱伝導性が低い充填材を多量含む歯科用硬化性組成物を加圧加熱により成形加工する場合においてより効果が認められたのである。

具体的には
歯科切削加工用レジン材料としてのブロックを製造するための歯科用硬化性組成物であって、
(a)重合性単量体
(b)充填材
(c)重合開始剤、及び、
(d)連鎖移動剤
を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物を提供する。


さらに前記歯科用硬化性組成物に含まれている(d)連鎖移動剤がテルペノイド系化合物である歯科用硬化性組成物を提供する。
本発明により以下の諸効果がもたらされる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合時におけるミクロ的・マクロ的なひずみが緩和されることから、チッピングやクラック等がない均一で様々な形状の歯科切削加工用レジン材料を製造することができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は連鎖移動材の添加によって均一に熱重合が進むために、歯科用硬化性組成物中に充填材を多く配合することができ、歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を高いレベルで安定的に発現させることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、歯科切削加工用レジン材料としてのブロックを製造するための歯科用硬化性組成物であって、
(a)重合性単量体
(b)充填材
(c)重合開始剤、及び、
(d)連鎖移動剤
を含むことを特徴としている。
本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(a)重合性単量体は、一般に歯科分野で用いられている公知の単官能性および多官能性の重合性単量体のうちから、何等制限なく使用することができる。一般に好適に使用される代表的なものを例示すれば、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合性単量体である。なお、本発明においては(メタ)アクリレート重合性単量体をもってアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。
(a)重合性単量体として用いることができる(メタ)アクリレート重合性単量体を具体的に例示すれば次の通りである。

単官能性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、Γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、Γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物が挙げられる。
芳香族系二官能性単量体としては、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
脂肪族系二官能性単量体としては、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン系重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体と、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能性または三官能性以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート重合性単量体以外に分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有するオリゴマーまたはプレポリマーを用いても何等制限はない。また、フルオロ基等の置換基を同一分子内に有していても何等問題はない。
以上に記載した重合性単量体は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(a)重合性単量体の含有量は特に制限はないが、歯科用硬化性組成物中において10〜70重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量部である。(a)重合性単量体の含有量が10重量部未満の場合には、均一に充填材が分散した組成物を得ることが難しく、また70重量部を超える場合には十分な機械的強度を得ることができない。
本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(b)充填材は一般に歯科用複合材料に用いられている公知の充填材を使用することができる。充填材としては無機充填材、有機充填材、有機無機複合充填材などがあげられるが、それらは単独の使用だけでなく、充填材の種類に関係なく複数を組み合わせて使用することができる。
無機充填材を具体的に例示すると、シリカ、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、また、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、アエロジル(登録商標)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。これら無機充填材は凝集体として用いてもよく、例としてシリカゾルとジルコニアゾルを混合し、噴霧乾燥及び熱処理をすることで得られるシリカ−ジルコニア複合酸化物凝集体などが挙げられる。
有機充填材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、有機無機複合充填材としては、例えば充填材の表面を重合性単量体により重合被覆したもの、充填材と重合単量体を混合・重合させた後、適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体中に充填材を分散させて乳化重合または懸濁重合させたものが挙げられるが、これらに何等限定するものではない。
本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(b)充填材の含有量は特に制限はないが、歯科用硬化性組成物中において30〜90重量部であることが好ましく、より好ましくは50〜90重量部である。(b)充填材の含有量が30重量部未満の場合には、十分な機械的強度を得ることができず、また90重量部を超える場合には均一に充填材が分散した歯科用硬化性組成物を得ることが難しい。
また、充填材の平均粒子径は0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmの範囲にあることである。尚、平均粒子径、粒子径の変動係数等の情報は、レーザー回折式粒度測定機によって調べることができ、(b)充填材が凝集体である場合、上記の平均粒子径は凝集体の平均粒子径である。平均粒子径が0.5μm未満では、歯科用硬化性組成物にべたつきが生じ、気泡を混入しやすくなる。100μmを超えると、(b)充填材が組成物中で沈降しやすくなり、均一に分散しないおそれがある。
これらの充填材は、公知のチタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤やシランカップリング剤により表面処理を施しても何ら問題はない。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。好ましくはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。凝集物や充填材の表面処理は同種のカップリング剤で行ってもよく、異種のカップリング剤で行ってもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(c)重合開始剤は特に限定されず、公知の重合開始剤、例えばラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。重合開始剤としては混合することにより重合を開始させるもの(化学重合開始剤)、加熱により重合を開始させるもの(熱重合開始剤)、光照射により重合を開始させるもの(光重合開始剤)に大別されるが、本発明においてはいずれの重合開始剤も何等制限なく用いることができる。また、それぞれ単独だけでなく、重合開始剤の種類に関係なく複数の重合開始剤を組み合わせて用いることができる。これらの重合開始剤の中でも、熱重合開始剤を用いることが好ましい。
熱重合開始剤として具体的に例示するとベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。これらの中でも有機過酸化物の使用が好ましく、より好ましくはベンゾイルパーオキサイドである。
これらの重合開始剤は重合特性を制御したり、安定性を確保するために二次的な加工を施しても何等制限はなく用いることができる。
本発明の硬化性歯科用組成物に用いる(c)重合開始剤の含有量は、歯科切削加工用レジン材料としてのブロックを製造する方法に応じて適宜選択することができるが、(a)重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。(c)重合開始剤の配合量が0.01重量部未満の場合、重合が十分に進行せずに機械的強度が低下し、10重量部を超える場合は、組成物からの析出を招くおそれがある。
本発明の硬化性歯科用組成物に用いる(d)連鎖移動剤は、公知の化合物が何等制限無く使用することができる。具体的に例示すると、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、リモネン、ミルセン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、β−ピネン、α−ピネンなどのテルペノイド系化合物、α−メチルスチレンダマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動材の中でもテルペノイド系化合物が特に好ましい。また、これら連鎖移動剤は、1種だけでなく2種以上を組み合わせて用いることができる。これら連鎖移動剤の添加量は、(a)重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、また、特に0.1重量部以上0.5重量部以下であることが好ましい。(d)連鎖移動剤の配合量が0.001重量部未満の場合、歯科用硬化性組成物の重合時に生じる内部のひずみを十分に抑制できないおそれがある。また、1重量部を超えると硬化後の組成物中に未反応の重合性単量体の残存量が多くなり、機械的強度が低下するおそれがある。
また、本発明の歯科用硬化性組成物には、上記の(a)〜(d)の成分以外に、フュームドシリカに代表される賦形剤、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2、5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を必要に応じて任意に添加できる。
本発明を用いた歯科切削加工用レジンの製造方法は何等制限されることはない。例えば熱重合開始剤を添加した歯科用硬化性組成物を金型へ充填し、加圧・加熱により作製する方法、光重合開始剤および熱重合開始剤を添加した歯科用硬化性組成物を金型へ充填し、光照射により表層部分を重合させた後に、加熱することにより内部まで十分に硬化させる方法などが挙げられる。
本発明を用いて製造される歯科切削加工用レジン材料のサイズ、形状については何等制限されることはない。例えば、12×14×18mmの角柱状、厚み10〜30mm×直径98mmの円板状などが挙げられる。
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例にて調製した歯科用硬化性組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。
(1)クラック確認試験
目的:サイズの大きいブロック硬化体作製時におけるひずみの評価
方法:硬化性組成物をアルミ合金製金型に充填し、上下にナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板温度100℃、プレス時間30分の条件下で熱プレスを行い、φ100×14mmのブロック硬化体を得た。これを5回繰り返し行い、5個のブロック硬化体を作製した。ブロック硬化体は目視において観察し、一個でもクラックが生じている場合には「あり」、クラックが認められなかった場合を「なし」と評価した。
(2)曲げ強度試験
目的:ブロック硬化体から切り出した試験体の曲げ強度の評価
方法:歯科用硬化性組成物をアルミ合金製金型に充填し、上下にナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板温度95℃、プレス時間10分の条件下で熱プレスを行い、12×14×18mmのブロック硬化体を得た。そのブロック硬化体を精密切断機を用いて18×2×2mmの試験片に切断後、表面をバフ研磨することにより試験体(5個作製)を得た。万能試験機を用いて、支点間距離10mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minで試験を実施し、試験体5個の平均値で評価した。
(3)落錘試験
目的:ブロック硬化体から切り出した試験体の耐衝撃性の評価
方法:曲げ強度試験と同様に12×14×18mmのブロック硬化体を作製した。そのブロック硬化体を精密切断機を用いて12×14×2mmの試験片に切断後、表面をバフ研磨することにより試験体(10個作製)を得た。ステンレス製ステージに試験体を配置し、重量110gのステンレス球体を高さ3cmより自由落下させた。試験体に変化が見られない場合は落下高さを1cm上げていき、試験体に亀裂または破壊が生じた落下距離を破壊距離とし、試験体10個の平均値で評価した。
本発明の実施例に使用した化合物および化合物の略号を以下に示す。
UDMA:ウレタンジメタクリレート
Bis-GMA:2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
R−972:アエロジルR-972(日本アエロジル社製)
γ−MPS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
シリカ充填材の平均粒子径、細孔容積、BET比表面積のカタログ値を表1に示した。シリカ充填材(1)、(2)は適宜シラン処理を行い歯科用組成物の調製に使用した。
表2に示した組成にてレジン組成物(I1〜I9)をそれぞれ作製した。
表2記載のレジン組成物を用いて、表3の組成に従い硬化性組成物(実施例1〜7、比較例1、2)を調製した。その硬化性組成物を用いてブロック硬化体を製造後、クラック確認試験を実施し、その結果を表3に示した。


実施例1〜3は連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加したレジン組成物I1を用い、且つ(b)充填材の添加量を変化させた系である。充填材の添加量を増加させた歯科用硬化性組成物においてもクラックが発生することなく、φ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。
実施例4は、連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加したレジン組成物I1を用い、且つ(b)充填材の種類を変更した系である。充填材の種類を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。
実施例5は、連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加した系であるが、レジン組成物I1と比較して重合性単量体の一部を変更したレジン組成物I2を用いた系である。(a)重合性単量体の種類を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。
実施例6、7においては、連鎖移動剤種をそれぞれβ−テルピネン、γ−テルピネンと変更したレジン組成物I3又はI4を用いた系である。連鎖移動剤種を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。
比較例1、2においては、レジン組成物中に連鎖移動剤を添加していないレジン組成物I8又はI9を用いた系である。硬化組成物中に連鎖移動剤種を含んでいないことにより、ブロック硬化体に作製時に割れが生じた。
次に表2記載のレジン組成物を用いて、表4の組成に従い硬化性組成物(実施例8〜11、比較例3)を調製した。その硬化性組成物を用いてブロック硬化体を製造後、曲げ強度試験、落錘試験を実施し、その結果を表4に示した。
実施例8〜11は、連鎖移動剤の添加量を変化させたレジン組成物により調製した硬化性組成物を用いた系である。連鎖移動剤の添加量を増加させることで、製造したブロック硬化体の落錘試験による破壊距離が長くなり、耐衝撃性が向上した。実施例11は実施例8〜10に比較して、連鎖移動剤の添加量が多いレジン組成物により調製した硬化性組成物を用いていることから、曲げ強度がやや低下し、破壊距離も短くなった。
比較例3はレジン組成物中に連鎖移動剤を含んでいない硬化性組成物を用いていることから、ブロック硬化体製造時にクラックが入ると共に、落錘試験による破壊距離も実施例8〜11と比較して短かった。

Claims (3)

  1. 歯科切削加工用レジン材料としてのブロック材料を製造するための歯科用硬化性組成物であって、
    (a)重合性単量体
    (b)充填材
    (c)重合開始剤、及び
    (d)連鎖移動剤
    を含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  2. (a)重合性単量体の含有量が10〜70重量部、
    (b)充填材の含有量が30〜90重量部であり、
    (a)重合性単量体100重量部に対して、
    (c)重合開始剤が0.01〜10重量部、
    (d)連鎖移動剤が0.001〜1重量部であることを特徴とする請求項1記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記(d)連鎖移動剤がテルペノイド系化合物であることを特徴とする請求項1記載の歯科用硬化性組成物。



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