JP2016017231A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法及び炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液 - Google Patents

炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法及び炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液 Download PDF

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Abstract

【課題】耐炎化工程などの焼成工程における糸切れ等の工程トラブルを抑制し、高品質の炭素繊維束を安定的に製造するための炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液、及び該油剤処理液を付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
【解決手段】炭素繊維前駆体アクリル繊維束製造工程中の油剤処理工程において付与する油剤処理液の付着斑を抑制するために、界面活性剤を添加することを特徴とした炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液、及び該油剤処理液を付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維束前駆体アクリル繊維束の製造方法及び炭素繊維束前駆体アクリル繊維束用の油剤処理液に関する。
従来、炭素繊維束の製造方法として、アクリル繊維などからなる前駆体繊維束を200〜400℃の酸素存在雰囲気下で加熱処理して耐炎化繊維束に転換し(耐炎化工程)、引き続いて1000℃以上の不活性雰囲気下で炭素化して(炭素化工程)、炭素繊維束を得る方法が知られている。この方法で得られた炭素繊維束は、優れた機械的特性により、特に複合材料用の強化繊維として工業的に広く利用されている。
しかし、このような炭素繊維束の製造方法において、前駆体繊維束を耐炎化繊維束に転換する耐炎化工程で、単繊維間に融着が発生し、耐炎化工程およびそれに続く炭素化工程(以下、耐炎化工程と炭素化工程を総合して焼成工程と表記する場合もある。)において、毛羽や束切れといった工程障害が発生する場合がある。この融着を回避するためには、前駆体繊維束に付着させる油剤の選択が重要であることが知られており、多くの油剤組成物が検討されてきた。
その中で、耐炎化工程における融着を防止する効果が良好であるため、シリコーン系化合物を含有するシリコーン系油剤が最も一般的に用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、シリコーン系油剤は、加熱により架橋反応が進行して高粘度化し、粘着物を生成しやすい。粘着物が生成すると、前駆体繊維束の製造工程や耐炎化工程における繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積して、繊維束が粘着物に巻き付いたり引っかかったりして、断糸するなどの操業性低下を引き起こすことがある。また、シリコーン系化合物を含有する油剤組成物は、焼成工程において分解するなどして、酸化ケイ素や炭化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物を生成し、これらが飛散、堆積してスケールとなり、工程安定性、製品の品質を低下させるという問題をも有している。
このため、油剤組成物中のシリコーン化合物、ひいてはケイ素含有量を低減して、このような問題を回避しようとする油剤技術が提案されている。例えば、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物とシリコーン系化合物とを必須成分とした油剤組成物が提案されている(特許文献3参照)。該油剤組成物によれば、エステル化合物によってシリコーン含有量を低減させ、上述の粘着物やケイ素化合物の生成を抑制して、安定した操業性を得るとともに、炭素繊維製造における単繊維間の融着を防止することもできるとされている。
また、油剤が過剰に付着しないように付着量を調整する技術として、油剤を付着させ乾燥した後の前駆体繊維束を界面活性剤が含まれる洗浄液に通すことで、付着した油剤の一部を除去する方法が提案されている(特許文献4参照)。
また、シリコーン系化合物を含有しない非シリコーン系油剤も用いられている。例えば、非シリコーン成分であるヒドロキシ安息香酸エステルと非イオン系界面活性剤を含有する油剤処理剤を付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、炭素繊維製造における単繊維間の融着が発生せず、操業性の面も問題ない上に、得られる炭素繊維の品質もシリコーン系油剤と同等のものが得られるとされている。(特許文献5参照)
一方、機械的特性の安定した炭素繊維束を得るためには、長期の製造工程において、前駆体繊維束に油剤を均一に付着させることも重要である。油剤を均一に付着させることを目的とした装置としては、例えば、油剤付与ノズル(特許文献6参照)、油剤付与ガイド(特許文献7参照)、油剤付与ローラー(特許文献8参照)などが提案されている。
特開2006−183159号公報 特開2006−188795号公報 国際公開第07/066517号パンフレット 特開2007−113141号公報 特開2013−91867号公報 特開平10−280224号公報 特開2004−300582号公報 特開2001−98410号公報
しかしながら、特許文献3に記載のように、シリコーン含有量を低減した油剤組成物を付与した前駆体繊維束は、集束性が悪く、高い生産効率で製造するには適していない上、機械的特性に優れた炭素繊維束が得られないという問題があった。このように油剤組成物の組成を調整するだけでは、安定した操業性、高い生産効率のもとで、機械的特性に優れた炭素繊維束を得ることは困難であった。
また、特許文献4に記載の方法では、全体的に油剤付着量が低下するのみで、定着した余分な油剤成分のみを除去することはできず、均一に油剤が付着した前駆体繊維束を得ることはできなかった。
また、特許文献6〜8に記載の各装置は、繊維束中に油剤処理液を行き渡らせ、繊維束半径方向の斑を低減することはできたとしても、数日から数ヶ月に渡る長期の製造工程において、常に一定量の油剤を繊維束に安定に付与して、経時的な油剤付与の安定性を可能にするものではなかった。
つまり、焼成工程での油剤付着斑に端を発する操業性低下の問題を可能な限り低減し、かつ、得られる炭素繊維の機械的特性を安定に維持するためには、前駆体繊維束に対して、長期的にみて、必要最低限量(適正量)の油剤成分を均一に安定に付着させることが重要である。しかしながら、前駆体繊維束に対して必要最低限量の油剤成分を均一に安定に付着させる技術は見出されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐炎化工程などの焼成工程における単繊維間の融着を抑制でき、かつ、焼成工程での油剤付着斑による操業性低下を抑制し、機械的特性が安定に維持された炭素繊維束を得ることのできる、アクリル繊維束を連続的に製造できる炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液の提供を課題とする。また、該油剤処理液が均一に付着し、高生産性、高品質な炭素繊維束を製造し得るアクリル繊維束の提供を課題とする。
本発明者は鋭意検討した結果、炭素繊維前駆体アクリル繊維束用の油剤処理液に界面活性剤を添加することにより、炭素繊維前駆体アクリル繊維束上に斑なく均一に付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、油剤成分を含有し、下記式(1)の条件を満足する油剤処理液をアクリル繊維束に付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法である。
0.25≦(A−A)/A≦0.55・・・(1)
:表面寿命100msecにおける水の動的表面張力[mN/m]
A:表面寿命100msecにおける油剤処理液の動的表面張力[mN/m]
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、前記油剤処理液の前記動的表面張力Aが、33mN/m〜55mN/mであることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、界面活性剤が前記油剤処理液中に0.3質量%〜7質量%含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、油剤成分が前記油剤処理液中に0.7質量%〜1.5質量%含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、前記油剤成分にシリコーン成分を含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、前記油剤成分が、乾燥繊維質量に対し0.1質量%以上2.5質量%以下付着することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付与する油剤処理液であって、下記式(2)の条件を満足する炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液である。
0.25≦(A−A)/A≦0.55・・・(2)
:表面寿命100msecにおける水の動的表面張力[mN/m]
A:表面寿命100msecにおける油剤処理液の動的表面張力[mN/m]
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、油剤処理液の前記動的表面張力Aが、33mN/m〜55mN/mであることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、界面活性剤が油剤処理液中に0.3質量%〜7質量%含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、前記油剤処理液がシリコーン成分を含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、油剤成分が前記油剤処理液中0.7質量%〜1.5質量%含有することが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液は、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液を繊維束に付与し、乾燥繊維質量に対し油剤成分の付着量が0.1質量%以上2.5質量%以下とする炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法である。
本発明によれば、耐炎化工程などの焼成工程で、油剤の付着斑に端を発する操業性の低下を抑制し、機械的特性が安定に維持された炭素繊維束を製造可能な、炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液を提供できる。また、該油剤処理液を付与することにより、油剤成分が安定に付着し、高生産性、高品質な炭素繊維束を製造し得る炭素繊維前駆体アクリル繊維束を提供できる。
以下、本発明の油剤処理液を用いて前駆体繊維束を油剤処理し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を製造する方法の一例について説明する。
<アクリル繊維束の製造方法>
アクリル繊維束として炭素繊維前駆体アクリル繊維束を例示し、その製造方法の一例について、以下に詳細に説明する。
(紡糸工程)
本実施形態例の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法では、公知の紡糸技術によりアクリル繊維束(前駆体繊維束)を得る紡糸工程を行う。
具体的には、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して、紡糸原液とし、この紡糸原液を凝固浴中に吐出して繊維化し、凝固糸を製造する方法が挙げられる。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体であり、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーでも、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を併用したアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリル系共重合体におけるアクリロニトリル単位の含有量は、96.0質量%〜98.5質量%であることが焼成工程での繊維の熱融着防止、共重合体の耐熱性、紡糸原液の安定性、および炭素繊維にした際の品質の観点でより好ましい。アクリロニトリル単位が96質量%以上の場合は、炭素繊維に転換する際の焼成工程で繊維の熱融着を招くことなく、炭素繊維束の優れた品質および性能を維持できるので好ましい。また、共重合体自体の耐熱性が低くなることもなく、アクリル繊維束の後述の乾燥緻密化工程や、例えば加熱ローラーや加圧水蒸気による後述の延伸処理工程、二次延伸処理工程などにおいて、単繊維間の接着を回避できる。一方、アクリロニトリル単位が98.5質量%以下の場合には、溶剤への溶解性が低下することもなく、紡糸原液の安定性を維持できると共に共重合体の析出凝固性が高くならず、アクリル繊維束の安定した製造が可能となる。
アクリロニトリル共重合体を用いる場合のアクリロニトリル以外の単量体としては、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体から適宣選択することができる。例えば、耐炎化反応を促進する作用を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体、または、これらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アクリルアミド等の単量体から選択することが好ましい。より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体である。
アクリロニトリル系共重合体におけるカルボキシル基含有ビニル系単量体単位の含有量は0.5〜2.0質量%が好ましい。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
紡糸の際には、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解し紡糸原液とする。このときの溶剤には、ジメチルアセトアミドあるいはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、または塩化亜鉛やチオシアン酸ナトリウム等の無機化合物水溶液等、公知のものから適宜選択して使用することができる。これらの中でも、生産性向上の観点から、凝固速度が早いジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドが好ましく、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
また、緻密な凝固糸を得るためには、紡糸原液の重合体濃度がある程度以上になるように紡糸原液を調製することが好ましい。具体的には、紡糸原液中の重合体濃度が17質量%以上になるように調製することが好ましく、より好ましくは19質量%以上である。
なお、紡糸原液は適正な粘度・流動性を必要とするため、重合体濃度は25質量%を超えない範囲が好ましい。
具体的な紡糸方法としては、上述した紡糸原液を直接凝固浴中に紡出する湿式紡糸法、空気中で凝固する乾式紡糸法、および一旦空気中に紡出した後に浴中凝固させる乾湿式紡糸法など公知の紡糸方法を適宜採用できるが、より高い性能を有する炭素繊維束を得るには湿式紡糸法または乾湿式紡糸法が好ましい。
湿式紡糸法または乾湿式紡糸法による紡糸賦形は、紡糸原液を円形断面の孔を有するノズルより凝固浴中に紡出することで行える。凝固浴としては、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液を用いるのが溶剤回収の容易さの観点から好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、ボイドがなく緻密な構造を形成させ高性能な炭素繊維束を得られ、かつ延伸性が確保でき生産性に優れる等の理由から、50〜85質量%が好ましく、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。
(延伸処理工程)
紡糸工程において、紡糸原液を凝固浴中に吐出して繊維化し、得られた凝固糸には、延伸処理工程により延伸し、アクリル繊維束とすることができる。具体的な延伸方法としては、凝固浴中または延伸浴中で延伸する浴中延伸や、一部空中延伸した後に、浴中延伸する方法が挙げられる。そして、延伸の前後あるいは延伸と同時に適宜水洗を行うことにより、水膨潤状態のアクリル繊維束を得ることができる。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行い、空中延伸と浴中延伸を行う場合には、合計倍率が2〜10倍になるように凝固糸を延伸するのが、得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
(油剤処理工程)
前駆体繊維束への油剤の付与には、油剤成分が水中に分散した油剤処理液に、水膨潤状態のアクリル繊維束を連続的に接触させ、油剤成分をアクリル繊維束に付着させる油剤処理工程を行う。ここでの油剤成分は、シリコーン成分を含有することが望ましいが、耐熱性樹脂や芳香族エステルなどの非シリコーン成分であっても良い。 ここで油剤処理液としては、油剤成分を水中に分散させて、平均粒子径が0.01〜0.50μmのミセルを形成させた水系の乳化溶液(エマルション)を用いる。
なお、油剤処理液中のミセルの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定することができる。
油剤処理液の製造方法は、最初に油剤成分の水系乳化溶液を製造し、その後、水系乳化溶液にさらに水を加えて
水系乳化溶液は、例えば以下のようにして調製できる。すなわち、シリコーン系化合物、或いは非シリコーン成分と乳化剤とを攪拌しながら、そこに水を加えることで油剤成分が水中に分散した水系乳化溶液が得られる。
油剤成分には、帯電防止剤や酸化防止剤、抗菌剤、浸透剤などの添加物を任意成分として含有させてもよい。これらは、アクリル繊維束に油剤成分を付着させるための装置の種類、使用環境などに応じて、操業性向上の目的や、水系乳化溶液の安定性や付着特性の向上を目的として使用される。
酸化防止剤を含有させる場合は、酸化防止剤を予めシリコーン系化合物に溶かしておくことが好ましい。また、帯電防止剤および/または抗菌剤を含有させる場合は、水を加えて水系乳化溶液とした後に添加攪拌することが好ましい。
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使って行うことができる。特に、150MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
油剤成分としては特に制限なく使用できる。例えばシリコーン系化合物としては、アクリル繊維束に対する油剤成分の親和性が良好となることから、アミノ変性シリコーンが好ましい。アミノ変性シリコーンは、アミノ変性基の位置が側鎖型、片末端型、両末端型、側鎖両末端型など、いずれの構造のものでも差し支えない。より好ましくは側鎖型のアミノ変性シリコーンである。アミノ基の含有量は、アクリル繊維束への馴染みやすさと、耐熱性の点から、アミノ当量が2000〜6000g/molが好ましい。
シリコーン系化合物の粘度は25℃において50〜300mm2/sが水系乳化溶液の調製の容易さ、耐熱性保持の観点から特に好ましい。
シリコーン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。変性基が異なる、あるいは変性基を有しないシリコーン系化合物を混合して用いても差し支えない。
非シリコーン系化合物としては、公知の様々な物質を用いることができる。ポリブテン、ポリオキシエチレン高級脂肪族アルキルエーテル、ネオペンチルアルコール誘導体、アルキル又はアルケニルチオ脂肪酸エステル、高分子アミド化合物、脂肪酸エステル、フッ素系界面活性剤、芳香族複合エステルなどが挙げられるが、その限りではない。これら非シリコーン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化剤としては、アクリル繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的強度発現性に優れることから、非イオン系乳化剤を用いることが好ましい。非イオン系乳化剤としては公知の様々な物質を用いることができる。例えば高級アルコ−ルエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノ−ルエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコ−ル脂肪族エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物などのポリエチレングリコ−ル型非イオン性界面活性剤;グリセロ−ルの脂肪族エステル、ペンタエリスト−ルの脂肪族エステル、ソルビト−ルの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪族エステル、ショ糖の脂肪族エステル、多価アルコ−ルのアルキルエ−テル、アルカノ−ルアミン類の脂肪酸アミドなどの多価アルコ−ル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これら乳化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述の方法で調製される水系乳化溶液中の油剤成分(すなわち、シリコーン系化合物、或いは非シリコーン系化合物と乳化剤と、必要に応じて添加される任意成分)の含有量は、2〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。油剤成分の濃度が2質量%未満であると、必要な量の油剤成分を水膨潤状態のアクリル繊維束に付与することが困難となる。一方、油剤成分の濃度が40質量%を超えると、水系乳化溶液が不安定となり乳化の破壊が起こりやすくなる。
油剤処理工程では、このような水系乳化溶液にさらにイオン交換水を加えて所定の濃度に希釈したものを油剤処理液として用いる。なお、「所定の濃度」は、油剤処理時の前駆体繊維束の状態によって調整される。
油剤成分の前記油剤処理液中の含有量は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付着させる量によって、0.7質量%〜1.5質量%の範囲で調整することが好ましい。
本発明によれば、該油剤処理液にさらに界面活性剤を添加することにより、油剤処理液と前駆体繊維束との馴染みやすさが向上し、油剤処理液中の成分が前駆体繊維束上に均一に付着しやすくなる。
本発明における油剤処理液の成分は特に限定するものではないが、撥水性を有するシリコーン成分を含有する油剤処理液を用いる際には特に顕著な効果が期待できる。
表面寿命100msecにおける水の動的表面張力をAw、油剤の動的表面張力をAとした時に得られる(A−A)/Aは0.25〜0.55の範囲内であることが好ましい。(A−A)/Aは、油剤処理液中の表面張力低下に寄与するフリーな界面活性剤の割合を示す規格化定数であり、この値が高いほど油剤処理液中に存在するフリーな界面活性剤の量が多く、濡れ性が高いということになる。この(A−A)/Aは0.25以上であれば前駆体繊維束に対して十分な濡れ性を有しており、油剤処理液中の成分の均一付与に寄与するが、好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.30以上であることがよい。また、(A−A)/Aの上限については、濡れ性の向上の観点から特に制限するものではないが、均一付与の効果が飽和すること、経済性の観点から0.55以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.40以下であることがよい。
油剤処理液の動的表面張力は、例えばバブルプレッシャー法やドロップボリューム法などの方法によって測定可能であるが、測定方法はその限りではない。
油剤処理液の動的表面張力は、例えばバブルプレッシャー法やドロップボリューム法などの方法によって測定可能であるが、測定方法はその限りではない。前述の方法により得られる20℃、表面寿命100msecの動的表面張力は55mN/m以下であることが好ましい。55mN/m以下であれば、前駆体繊維束に対して十分な濡れ性を有しており、油剤処理液中の成分の均一付与に寄与するが、好ましくは53mN/m以下、さらに好ましくは50mN/m以下であることがよい。動的表面張力の下限は、濡れ性の向上の観点から特に制限するものではないが、均一付与の効果が飽和すること、経済性の観点から35mN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは40mN/m以上であることがよい。
界面活性剤の添加量としては、油剤処理液中に0.3質量%〜15質量%であることが好ましい。0.3質量%以上であれば、油剤の均一付与の効果を十分得ることができ、15質量%以下であれば、後の紡糸、焼成工程で悪影響を与えることがない。但し、前駆体繊維束上への更なる均一付与、及び焼成工程通過性の観点から0.5質量%〜10.0質量%であることがより好ましく、0.8質量%〜5.0質量%の範囲がさらに好ましい。
界面活性剤の成分としては工程障害が発生しなければ特に限定するものではないが、シリコーン成分と親和性のある非イオン性の界面活性剤を選択することが好ましく、例えば高級アルコ−ルエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノ−ルエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコ−ル脂肪族エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコ−ルエチレンオキサイド付加物などのポリエチレングリコ−ル型非イオン性界面活性剤;グリセロ−ルの脂肪族エステル、ペンタエリスト−ルの脂肪族エステル、ソルビト−ルの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪族エステル、ショ糖の脂肪族エステル、多価アルコ−ルのアルキルエ−テル、アルカノ−ルアミン類の脂肪酸アミドなどの多価アルコ−ル型非イオン性界面活性剤等が使用できる。これら界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
該油剤処理液を水膨潤状態の前駆体繊維束を連続的に接触させることが好ましい。
前述の通り、油剤処理液を前駆体繊維束に連続的に接触させるが、その状態が長時間続くことで前記油剤処理工程の油剤処理液が泡立つことがある。その泡を前記繊維束が油剤処理工程から持ち出すことにより、油剤付着斑となる。このような現象は油剤処理液に消泡剤を添加することにより回避できる。
前記油剤処理液に添加する消泡剤としては、消泡機能を発現する成分であり後に工程障害を引き起こさないような剤であれば、特に限定するものではない。消泡剤としては、公知の様々な物質を用いることができる。例えば、疎水性シリカ系、金属石鹸系、アマイド系、シリコン系、ポリエーテル系、鉱物油系、ワックス系、アクリル系、アセチレンジオール系等の消泡剤などが挙げられるが、前記アクリル繊維束の油剤処理液の消泡剤としては、消泡能力の観点から特にシリコン系消泡剤が好ましい。これら消泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。消泡剤の濃度としては、前記油剤処理液に対して0.005〜5質量%であることが望ましい。消泡剤の濃度が0.005質量%未満であると、消泡機能の効果がなく、5質量%を超えると、経済性、環境面の観点から好ましくない。
具体的に、所定の濃度に調整された油剤処理液に水膨潤状態のアクリル繊維束を接触させる方法としては、ローラーの下部を油剤処理槽内の油剤処理液に浸漬させ、そのローラーの上部にアクリル繊維束を接触させるローラー付着法、油剤処理槽内から油剤処理液をポンプで一定量ガイドから吐出し、そのガイド表面にアクリル繊維束を接触させるガイド付着法、油剤処理槽と通じたノズルから一定量の油剤処理液をアクリル繊維束に噴射するスプレー付着法、油剤処理槽内の油剤処理液の中にアクリル繊維束を導いて連続的に浸漬し、その後、ローラー等で絞って余分な油剤処理液を除去するディップ付着法等の公知の方法を用いることができる。
これらの方法の中でも、均一付着の観点から、アクリル繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、その後余分な油剤処理液を除去するディップ付着法が好ましい。より均一に付着させるためには、油剤処理工程を2つ以上の多段にし、繰り返し付着させることも有効である。
(乾燥緻密化工程)
ついで、油剤処理工程で油剤成分が付着したアクリル繊維束を乾燥して、緻密化する乾燥緻密化工程を行う。乾燥緻密化工程の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度とすることが必要である。例えば温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法にて乾燥緻密化するのが好ましい。このとき加熱ローラーの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
(二次延伸処理工程)
乾燥緻密化したアクリル繊維束には、二次延伸処理工程により、更に延伸処理を施すことが好ましい。延伸方法としては、加圧あるいは常圧水蒸気による水蒸気延伸、熱盤延伸、加熱ローラーによる延伸等、公知の延伸技術を用いることができる。これらの中でも、安定した均一延伸が可能な加熱ローラーによる延伸処理が好ましい。このような延伸処理により、得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の緻密性や配向度をさらに高めることができる。特に、加熱ローラーにより乾燥緻密化したアクリル繊維束を搬送させながら、ローラー速度を変えることで、1.1〜4.0倍に延伸すると、得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の緻密性や配向度をより向上できる。
加熱ローラーの温度としては150〜200℃程度が好ましい。温度が150℃未満であると、可塑化が不完全となり、延伸をかけた際に毛羽等が発生し、得られたアクリル繊維束を炭素繊維束にするための炭素化工程で繊維束が搬送ローラー等に巻き付いて、工程障害を招き操業性が低下することがある。一方、温度が200℃を超えると、酸化反応や分解反応などが開始され、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の品質を低下させる場合がある。
以上のようにして得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、室温のロールを通し、常温の状態まで冷却した後にワインダーでボビンに巻き取られる、あるいはケンスに振込まれて収納される。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、この状態で、炭素繊維束とするための焼成工程に移される。
<アクリル繊維束>
このようにして得られる本発明のアクリル繊維束は、このアクリル繊維束の質量を100質量%とした場合、付着した油剤成分を100質量%中、0.1質量%〜2.5質量%含むことが好ましく、0.3質量%〜2.0質量%含むことがより好ましく、0.7質量%〜1.3質量%むことがさらに好ましい。油剤成分の付着量が0.1質量%以上であると、油剤成分本来の機能を十分に発現し易くなる。一方、油剤成分の付着量が2.5質量%以下であると、油剤成分が過剰にならず、アクリル繊維束の製造過程において、アクリル繊維束を搬送しながら乾燥したり延伸したりする際などに用いられる加熱ローラー上に析出、堆積し、アクリル繊維束が巻き付くなどの操業性を低下させることを防止し易くなる。
なお、「乾燥質量」とは、乾燥緻密化工程で処理された後のアクリル繊維束の乾燥繊維質量のことである。
以上説明したように、本発明のアクリル繊維束は、耐炎化工程などの焼成工程における単繊維間の融着が抑制され、かつ、焼成工程での束切れに端を発する操業性低下が抑制され、機械的特性が安定に維持された炭素繊維束を製造可能となる。また、このような炭素繊維束は、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料の強化繊維として好適である。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例に用いた各種測定方法、および評価方法は以下の通りである。
<動的表面張力の測定>
バブルプレッシャー動的表面張力測定装置(KRUSS株式会社製、商品名:BP−50)を用いて、油剤処理液の動的表面張力の測定を行った。油剤処理液温度20℃、表面寿命100msecの時の動的表面張力を10点測定し、その平均値を油剤処理液の動的表面張力とした。また同様の手法で測定した水の動的表面張力Awは72.8mN/mであった。
<油剤付着斑評価>
連続して製造された炭素繊維前駆体アクリル繊維束繊維束100m中の抵抗値をオンライン油分測定装置(インテック株式会社製、商品名:OE−3)を用いて測定した。該オンライン油分測定装置の前後に5mmピッチの溝ロールを設置し、アクリル繊維束のトウ幅を5mmに、張力は300〜500gf/mmの範囲で制御して抵抗値の測定を行った。抵抗の平均値をRave、実測値をRとして、一連の製品における油剤付着斑を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:0.5<R/Rave<2.0の範囲から外れる点が3点以下。
×:0.5<R/Rave<2.0の範囲から外れる点が3点より多い。
<工程通過性評価>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用いて、焼成工程で炭素繊維束を5日間連続して製造した時に、焼成工程での束切れ発生頻度により、操業性の評価をした。評価基準は1日当たりの平均除去回数とし、次の通りとした。
○:束切れ発生回数(回/日)≦1
△:束切れ発生回数(回/日)2〜5
×:束切れ発生回数(回/日)>5
<ストランド強度の測定>
連続して製造された炭素繊維前駆体アクリル繊維束を焼成し、JIS−R−7608に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて測定した。なお、測定回数はアクリル繊維束の各ボビンあるいは各ケンスにつき10回とし、それらの平均値をストランド強度として評価した。
(実施例1)
下記の組成で油剤成分の水系乳化溶液を調製した。
・1、2級側鎖タイプのアミノ変性シリコーン 90質量%
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、
商品名:XF−42−B5377)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(非イオン系乳化剤) 10質量%
(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)
調製手順は、上記の油剤成分を混合し、さらに上記油剤成分の濃度が30質量%になるようにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名:LA−910)を用いて測定し、10μm程度となるようにした。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤成分の水系乳化溶液を得た。
油剤成分を付着させるアクリル繊維束は、次の方法で製造した。
アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=97/2/1(質量比))をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%の紡糸原液を調製し、濃度60質量%、温度35℃のジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)45μm、孔数60000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに4.6倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維束とした(紡糸工程および延伸処理工程)。
先に調整した油剤成分の水系乳化溶液をイオン交換水で希釈して、油剤成分の濃度が1.2質量%になるように調整し、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)を油剤処理液に対して0.5質量%となるように添加、混合して油剤処理液を調整した。前記油剤処理液を満たした油剤処理槽を通過したアクリル繊維束は油剤の斑付き抑制や、必要以上の処理液を後工程に持ち出さないためにガイドバーで絞られる。ガイドバーは工程中の糸道を制御する円柱状のバーであり、繊維束をローラーで搬送するためには一定の張力が発生するため、その張力によってバーで扱かれて余分な油剤処理液が除去される。炭素繊維前駆体アクリル繊維束への付着量1.0質量%を目標値とし、電磁定量ポンプを用いて、油剤成分が30質量%濃度の水系乳化溶液を油剤処理槽に定量的、連続的に追加し、油剤処理槽中の油剤処理液の濃度が1.2質量%になるようにした(油剤処理工程)。
その後、油剤処理液が付着したアクリル繊維束を表面温度180℃のロールにて乾燥緻密化(乾燥緻密化工程)した後に、表面温度190℃のロールを用い1.5倍延伸を施し(二次延伸処理工程)、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束をケンスに振り込んで後述の焼成工程に移した。
この際、乾燥緻密化工程から後述の二次延伸処理工程へと、油剤成分が付着したアクリル繊維束を搬送する途中の搬送ローラー間のアクリル繊維束について、このアクリル繊維束の近傍に設置された電気抵抗測定装置により、アクリル繊維束の電気抵抗値Rを測定した。電気抵抗測定装置にはインテック株式会社製のインライン油分測定装置(商品名:OE−3)を用いた。測定した電気抵抗の平均値Raveと実測値Rとし、油剤付着斑の判断を行った。
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に通して耐炎化し、耐炎化繊維束とした(耐炎化工程)。
その後、該耐炎化繊維束を窒素雰囲気中で400〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉に入れて、炭素繊維束とした(炭素化工程)。得られた炭素繊維束の束切れ発生頻度からみた工程通過性、ストランド強度を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を1.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例3)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を、3.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例4)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を5.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例5)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を7.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例6)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を10.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(比較例1)
界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(比較例2)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を0.1質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例7)
油剤組成及び成分を以下の通りにした以外は実施例1と同様の手法で水系乳化溶液を調製した。
・1級側鎖タイプのアミノ変性シリコーン 90質量%
(粘度150cst、アミノ当量6000g/mol)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(非イオン系乳化剤) 10質量%
(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)
界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)を油剤処理液に対して0.5質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例8)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を1.0質量%となるように調整した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例9)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を3.0質量%となるように調整した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例10)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を5.0質量%となるように調整した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(実施例11)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を7.0質量%となるように調整した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(比較例3)
界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(比較例4)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を0.1質量%となるように調整した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
(比較例5)
界面活性剤の油剤処理液に対する量を10.0質量%となるように調整した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束、炭素繊維束を製造した。各評価結果を表1に示した。
表1から、各実施例では付着斑評価において良好な結果が得られた。また、各実施例で得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を前駆体繊維束として焼成して得られた炭素繊維束には、実質的に束切れは発生せず、品質安定性に優れていた。
一方、表1から、全ての比較例で油剤の付着斑が検出された。また、各比較例で得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を前駆体繊維束として焼成して得られた炭素繊維束は束切れが多発し、高品質な炭素繊維を安定的に得られるものではなかった。
以上より、各実施例と比較して、全ての面で劣る結果となった。油剤成分の付着が不均一であるために、焼成工程での操業性低下を引き起こし、結果として品質安定性を損なったものと考えられる。
本発明のアクリル繊維束の製造方法によれば、炭素繊維の高品質化および高性能化と操業安定性、延いては生産性を共に向上させることができるアクリル繊維束を得ることができる。
このようにして製造されたアクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、例えばプリプレグ化したのち複合材料に成形することもできる。この炭素繊維束を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。

Claims (13)

  1. 油剤成分を含有し、下記式(1)の条件を満足する油剤処理液をアクリル繊維束に付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
    0.25≦(A−A)/A≦0.55・・・(1)
    :表面寿命100msecにおける水の動的表面張力[mN/m]
    A:表面寿命100msecにおける油剤処理液の動的表面張力[mN/m]
  2. 前記油剤処理液の前記動的表面張力Aが、33mN/m〜55mN/mである請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  3. 界面活性剤が前記油剤処理液中に0.3質量%〜7質量%含有する請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  4. 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項3に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  5. 油剤成分が前記油剤処理液中に0.7質量%〜1.5質量%含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  6. 前記油剤成分にシリコーン成分を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  7. 前記油剤成分が、乾燥繊維質量に対し0.1質量%以上2.5質量%以下付着する炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
  8. 炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付与する油剤処理液であって、下記式(2)の条件を満足する炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
    0.25≦(A−A)/A≦0.55・・・(2)
    :表面寿命100msecにおける水の動的表面張力[mN/m]
    A:表面寿命100msecにおける油剤処理液の動的表面張力[mN/m]
  9. 油剤処理液の前記動的表面張力Aが、33mN/m〜55mN/mである請求項8に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
  10. 界面活性剤が油剤処理液中に0.3質量%〜7質量%含有する請求項8または9に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
  11. 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項10のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
  12. 油剤成分が前記油剤処理液中0.7質量%〜1.5質量%含有する請求項8〜11のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
  13. 前記油剤成分がシリコーン成分を含有する請求項12のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤処理液。
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