JP2016100280A - 有機elパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】 陽極を形成するための金属材料層の加熱焼成に伴う熱応力に起因して陽極表面に生じる欠陥の数を削減して有機ELパネルの品質を向上する。
【解決手段】 有機ELパネル100において、無機材料を主成分とする基板1と、樹脂を主成分とする絶縁層2と、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、厚みが50nm以上200nm未満である第1電極層3と、遷移金属酸化物からなるホール注入層5と、第1電極から注入されたキャリアを受け取る発光層を少なくとも含む有機発光8と、第1電極層3と異なる極性を有する第2電極層10とを、当該順に層状に備え、第1電極層3の金属酸化物層側の表面では、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトがホール注入層5と接し、絶縁層2の熱膨張率は、基板1の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下である。
【選択図】図5

Description

本開示は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルに関する。
近年、デジタルテレビ等の表示装置に用いられる表示パネルとして、基板上に有機発光素子をマトリックス状に複数配列し有機EL素子を利用したパネル(以後、「有機ELパネル」と略称する)が実用化されている。
各有機EL素子は電流駆動型の発光素子であって、陽極と陰極との一対の電極の間に有機発光材料を含む発光層が配設された基本構造を有する。陽極と有機発光層との間、並びに陰極と有機発光層との間には、必要に応じて電荷注入層、電荷輸送層などが介設されている。駆動時には、一対の電極間に電圧を印加し、陽極から有機発光層に注入されるホールと、陰極から発光層に注入される電子との再結合に伴って発光する。陽極と有機発光層との間には、ホールを効率よく有機発光層に注入するためのホール注入層が形成される。
有機ELパネルの一般的な製造工程では、TFT層を形成した基板上に樹脂材料からなる絶縁層を形成し、その上に陽極材料として、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む金属材料層を成膜し、この金属材料層を焼成して陽極を形成する。さらに、その上に、たとえば酸化タングステンや酸化モリブデン等からなる金属酸化物膜によりホール注入層、さらに有機発光層、陰極を形成する(例えば、特許文献1参照)。
国際公開番号 WO2012/001727号
ところが、従来の有機ELパネルでは、形成された陽極表面に不点灯画素の要因となり得る微小な欠陥が生じることがあり、有機ELパネルの製造品質低下の要因となっていた。
本開示は、上記課題に鑑み、陽極表面に生じる欠陥の数を削減し品質を向上した有機ELパネルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様における有機ELパネルは、無機材料を主成分とする基板と、樹脂を主成分とする絶縁層と、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、厚みが50nm以上200nm未満である第1電極層と、遷移金属酸化物からなるホール注入層と、前記第1電極から注入されたキャリアを受け取る発光層を少なくとも含む有機発光層と、前記第1電極と異なる極性を有する第2電極層とを当該順に積層された状態で備え、前記第1電極層の前記金属酸化物層側の表面では、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトが前記ホール注入層と接し、前記絶縁層の熱膨張率は、前記基板の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下であることを特徴とする。
本開示の一態様に係る有機ELパネルでは、第1電極を形成するための金属材料層の加熱焼成に伴う熱応力に起因して、第1電極表面に生じる欠陥の数を削減することができ、有機ELパネルの品質を向上できる。
実施の形態に係る有機ELパネル100の構成を示す模式的な断面図である。 実施の形態の有機EL素子の製造工程の一部を示すフロー図である。 有機ELパネル100の製造工程の一部を示す模式的な断面図である。 有機ELパネル100の製造工程の一部を示す模式的な断面図である。 有機ELパネル100における基板、絶縁層及び陽極の構成を示す模式的な断面図である。 比較例1に係る有機ELパネルにおける基板、絶縁層及び陽極の構成の一部を示す模式的な断面図である。 有機ELパネル100と比較例1の陽極を平面視した写真である。 有機ELパネル100と比較例1のアメーバ型ボイドの実験結果を示す分布図である。 図8に示す比較例1に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。 有機ELパネル100と比較例1のアメーバ型ボイドの実験結果を示す分布図である。 図10に示す比較例に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。 有機ELパネル100と比較例1の陽極の欠陥数を示す実験結果のグラフである。 比較例2に係る有機ELパネルにおける絶縁層及び陽極の構成を示す模式的な断面図である。 接続層の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。 接続層の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極の欠陥分布を示す実験結果のグラフである。 図15における有機ELパネルの陽極の欠陥分布の測定位置を示す模式図である。 陽極の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。 陽極の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極の欠陥数を示す実験結果のグラフである。 有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極膜厚と効率の関係を示す実験結果のグラフであり、(a)は、赤色のサブ画素の有機EL素子20cからの光出射効率、(b)は、緑色のサブ画素の有機EL素子20bからの光出射効率、(c)は、青色のサブ画素の有機EL素子20aからの光出射効率を示す。 従来の有機ELパネル100Xを構成する有機EL素子10Xの構成を示す模式的な断面図である。 有機EL素子10Xの陽極105を平面視した写真であり、(a)は、陽極105上にアメーバ型の欠陥が発生した状態を、(b)は、微小な点形状の欠陥が発生した状態を示す。
≪発明を実施するための形態に至った経緯について≫
発明者は、従来の有機EL素子を用いて製造工程において陽極に生じる欠陥の発生要因を検討するために実験を行った。
図20は、特許文献1に記載された従来の有機ELパネル100Xを構成する1つの有機EL素子10Xの構成を示す模式的な断面図である。図20に示すように、有機EL素子10Xでは、基板101のZ軸方向上側の表面に、TFT層1010およびパッシベーション膜102が順に積層形成され、さらにその上に絶縁層103が積層形成されている。基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、又はアルミニウムナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。絶縁層103は、例えば、アクリル、ポリイミド、ゾルゲルなどの有機絶縁材料や、SiNやSiOXなどの無機絶縁材料などから形成されている。TFT層1010は、ゲート電極1011、ドレイン電極1012、ソース電極1013と、チャネル層1014およびゲート絶縁膜1015とから構成されており、陽極105に対してコンタクトホール(不図示)で接続されている。
有機EL素子10Xにおいては、X−Y平面において、画素部10aと非画素部10bとが含まれている。画素部10aにおいては、絶縁層103上に陽極105が形成されている。非画素部10bにおいては、絶縁層103上に補助電極106が形成されている。陽極105および補助電極106は、ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)を含み、アルミニウムを主成分とする合金材料から構成されている。
隣接する陽極105同士の間、および隣接する陽極105と補助電極106との間には、各々バンク107が立設されている。画素部10aにおいては、陽極105上に、ホール注入層108、有機発光層109、電子輸送層110、および陰極111が順に積層形成されている。このうち、電子輸送層110と陰極111とは、非画素部10bにも連続して形成され、陰極111と補助電極106とは、間に電子輸送層110が介在した状態で電気的に接続されている。陰極111の上面は、封止層112により覆われている。
次に、発明者が確認した有機EL素子の製造時の課題を、図面を用いて説明する。
有機ELパネル100Xの製造工程では、TFT層101およびパッシベーション膜102が順に積層形成され基板上に絶縁層103、陽極105及び補助電極106を構成する金属材料層を順次形成し、その後に焼成工程を実施する。成膜した金属材料層を焼成して、陽極105及び補助電極106の膜密度を向上(焼き締め)して低抵抗化するためである。その後、隣接する陽極105同士の間、および隣接する陽極105と補助電極106との間に、フォトリソグラフィー法に基づき、各々バンク107を形成した後、陽極105上にホール注入層108を形成する。陽極105、ホール注入層108は、それぞれフォトリソグラフィー法に基づき、エッチングしてパターニングして形成する。その後、ホール注入層108の上に、塗布法により有機発光層109、電子輸送層110、および陰極111を積層形成して有機ELパネル100Xを完成する。
以上の製造工程のうち、基板上に形成された陽極105の金属材料層を焼成する工程において、加熱によって陽極105の表面に微小な欠陥が生じることがある。図21は、有機EL素子10Xの陽極105を平面視した写真であり、(a)は、陽極105上にアメーバ型の欠陥(以後、「アメーバ型ボイド」とする)が発生した状態を、(b)は、微小な点形状の欠陥(以後、「点状ボイド」とする)が発生した状態を示す。
このアメーバ型ボイド及び点状ボイド(両者を総称する場合は、以後、「ボイド」とする)により、陽極105表面に穴が空いた場合、穴の中に有機発光層109又は電子輸送層110の溶液が流れこみ、いわゆる断切れ現象が生じる。その結果、陽極105と陰極111とがショートした状態となり画素部10aが不点灯となる滅点化現象が発生する。
発明者はボイドの発生要因について検討し、その結果、陽極105の金属材料層を焼成する工程において、加熱によって絶縁層103と陽極105との界面で剥離が生じ、この剥離が陽極105表面にボイド発生の主要因であることを見出した。そこで、焼成工程において、絶縁層103と陽極105との界面剥離を防止することが可能な有機EL素子のデバイス構造ついて鋭意検討を行い、実施の形態に係る有機EL素子に想到したものである。
≪発明を実施するための形態の概要≫
本実施の形態に係る有機ELパネルは、無機材料を主成分とする基板と、樹脂を主成分とする絶縁層と、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、厚みが50nm以上200nm未満である第1電極層と、遷移金属酸化物からなるホール注入層と、前記第1電極から注入されたキャリアを受け取る発光層を少なくとも含む有機発光層と、前記第1電極と異なる極性を有する第2電極層とを当該順に積層された状態で備え、前記第1電極層の前記金属酸化物層側の表面では、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトが前記ホール注入層と接し、前記絶縁層の熱膨張率は、前記基板の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下であることを特徴とする。
また、別の態様では、前記絶縁層と前記第1電極層とは直接面接触している構成であってもよい。
また、別の態様では、前記絶縁層を構成する物質の熱膨張率は、30×10-6/K以上60×10-6/K以下である構成であってもよい。
また、別の態様では、前記基板を構成する物質の熱膨張率は、3.9×10-6/K以上4.5×10-6/K以下である構成であってもよい。
また、別の態様では、前記第1電極を構成する物質の熱膨張率は、2.0×10-6/K以上2.8×10-6/K以下である構成であってもよい。
また、別の態様では、前記絶縁層の厚みは、3000nm以上5000nm以下である構成であってもよい。
また、別の態様では、前記樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、アクリル系樹脂からなるグループから選択された1以上の樹脂である構成であってもよい。
また、別の態様では、前記第1電極層の前記ホール注入層側の表面では、少なくとも一部にニッケル又はコバルトを析出させた状態でアルミニウムの酸化物層が形成されている構成であってもよい。
また、別の態様では、前記第1電極層の前記ホール注入層側の表面では、前記ニッケル又はコバルトは前記アルミニウムの金属酸化物層中に島状に存在している構成であってもよい。
また、別の態様では、前記第1電極層は陽極を構成し、前記第2電極層は陰極を構成し、前記ニッケル又はコバルト又はそれらが構成する酸化物は、キャリアとしてのホールを注入するホール注入性を備える構成であってもよい。
また、別の態様では、前記第1電極層は、前記絶縁層の上にアルミニウム、及びアルミニウムニッケル合金、又はアルミニウムコバルト合金をスパッタリングにより堆積したのち焼成して形成されている構成であってもよい。
≪実施の形態≫
1.構成について
実施の形態に係る有機ELパネル100の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の有機ELパネルの一態様として、実施の形態に係る有機ELパネル100の構成を模式的に示す断面図である。有機ELパネル100は、これに接続された駆動制御部(不図示)とで表示装置を構成することができる。
有機ELパネル100では、画素(ピクセル)が基板1の上面に沿ってマトリクス状に配列されている。各画素は隣接するRGB3色のサブ画素の有機EL素子を1組として構成される。有機EL素子20a、20b、20cは、基板1上に配列されたトップエミッション型であって、有機EL素子20aは青色のサブ画素、有機EL素子20bは緑色のサブ画素、有機EL素子20cは赤色のサブ画素にそれぞれ相当する。
基板1は、基板本体(不図示)の上面に、有機ELパネル100全体の有機EL素子20a〜20cをアクティブマトリクス方式で駆動するためのTFT層(不図示)が形成されてなり、その上を絶縁層2で被覆されて構成されている。
基板本体は、有機ELパネル100のベース部分となる基板であって、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、又はアルミニウムナ等の無機絶縁性材料で形成されている。
絶縁層2は、TFTを外部より絶縁するために設ける樹脂膜であって、絶縁性に優れる有機材料、例えばポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料等の有機絶縁性材料で形成されている。また、絶縁層2は、膜厚によっては、基板1の表面を平坦化する機能を有する平坦化層であってもよい。
次に、有機EL素子20a〜20cの素子の構成について説明する。絶縁層2上には、陽極(第1電極)3、透明電極4、ホール注入層5、有機発光層8、電子注入層9、陰極10、封止層11が順次積層形成されている。本実施の形態では、陽極3は、絶縁層2上面に直接積層されており、そのため、絶縁層2と陽極3とは直接面接触している。
陽極3は、ここではアルミニウム又はアルミニウム合金を含む電気抵抗の低い材料で構成され、厚み(膜厚)が好ましくは50nm以上200nm未満、より好ましくは75nm以上150nm以下の反射陽極として形成されている。アルミニウムやアルミニウム合金は、高光反射性を有する高導電性金属材料であり好適である。アルミニウム合金の例としては、アルミニウムコバルト合金(例えば、Al9Co2)、又は、アルミニウムニッケル合金(例えば、AlNi3)を用いることが好ましい。アルミニウムコバルト合金、又は、アルミニウムニッケル合金に加えて、例えば、アルミニウム・コバルト・ゲルマニウム・ランタン(Al−Co−Ge−La)合金、アルミニウム・カーボン・マグネシウム(Al−C−Mg)合金や、アルミニウムネオジウム(Al−Nd)合金、アルミニウムジルコニウム(Al−Zr)合金、アルミニウム銅(Al−Cu)合金、アルミニウムシリコン(Al−Si)合金、アルミニウムシリコン−銅(Al−Si−Cu)合金などを用いてもよい。
透明電極4は、インジウムを含む導電性材料、例えばITO(酸化インジウム)やIZO(酸化インジウム亜鉛)等の透明電極材料で構成される。
厚みが約16nm程度の膜であり、陽極3の上面を被覆している。なお陽極(反射陽極)3と透明電極4とを併せて陽極とすることもある。
陽極3及び透明電極4は、各サブ画素を構成する有機EL素子20a、20b、20cごとに分離してパターニングされている。
ホール注入層5は、有機発光層8に対して陽極3側からホールを効率よく注入するための層であり、例えば、酸化モリブデン(MoOx)や酸化タングステン(WOx)の遷移金属酸化物膜で形成されている(xは正数)。その他、例えば、銀(Ag)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層を用いてもよい。ホール注入層5の厚みは、0.1〜20nm程度の範囲内が好ましい。なお、ホール注入層5は、有機EL素子20a、20b、20cごとに分離してパターニングされている。
ホール注入層5を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WOX)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能およびプロセス耐性を有するという観点から望ましい。本実施の形態では、酸化タングステン(WOx)(WOx:約10[nm])を採用している。ただし、層厚はこれに限定されるものではなく、例えば、酸化タングステン(WOx)の層厚は、5[nm]〜30[nm]の範囲とすることができる。
ホール注入層5の上には、少なくとも隣り合うサブピクセル同士の間を仕切るように、絶縁材料からなるバンク6が設けられている。バンク6は、個々の有機EL素子20a、20b、20cの有機発光層8を個別に区画するいわゆるピクセルバンク構造としてもよいし、同発光色の有機EL素子20a、20b、20cの有機発光層8を一群ずつストライプ状に区画する、ラインバンク構造としてもよい。
バンク6は、絶縁性を有する樹脂等の有機材料で形成され、形成工程においてエッチング処理、ベーク処理などが施される。有機材料の例としてはアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。
バンク6で仕切られた領域内には、ホール輸送層7、有機発光層8が積層形成されている。
ホール輸送層7は、陽極3側からホールを輸送し、有機発光層8に注入する役目を持つ。その材料の具体例としては、4、4'−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N、N'−ビス(3−メチルフェニル)−(1、1'−ビフェニル)−4、4'−ジアミン(TPD)などのトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。これらの材料を含む溶液を用いたウェットプロセスで作製できる。
有機発光層8は、ホールと電子とが注入されて再結合されることにより励起状態が生成され、これにより発光する機能を有する。有機発光層8もウェット法で形成できる。その材料は、例えば特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
有機発光層8の上には、電子注入層9、陰極(第2電極)10および封止層11が、バンク6の上部を超えてパネル全体の有機EL素子20a、20b、20cにわたり連続して形成されている。
電子注入層9は、陰極10側から注入される電子を有機発光層8へ輸送する機能を有する。例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、あるいはこれらを組み合わせた材料で構成される。
陰極10は、例えばITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などの光透過性の材料で形成される。この他に、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層と銀を含む層とをこの順で積層した構造とすることもできる。
封止層11は、有機発光層8などが水分や空気に曝されるのを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの光透過性の材料で形成することが好ましい。
2.製造方法
有機ELパネル100の製造方法について図2、図3及び図4を用いて説明する。図2は、実施の形態の有機EL素子の製造工程の一部を示すフロー図である。図3及び図4は、有機ELパネル100の製造工程の一部を示す模式的な断面図である。
先ず、基板本体を準備する。反応性スパッタ法に基づき、前記基板本体の表面にTFT層を形成し、基板1とする(S1)。
次に、TFT層を覆うように、厚み約4μmの絶縁層2を形成する(S2、図3(a))。この絶縁層2は、公知の感光性有機材料(例えばシロキサン共重合型感光性ポリイミド)を塗布して形成できる。また、絶縁層2は、本形態のように、厚みが4μm程度あれば、基板1の表面を平坦化する平坦化層としても機能する。
次に、絶縁層2の上(基板1の上)に、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属材料を用い、スパッタリング法により金属材料層3Xを薄膜成形する(S3、図3(b))。
次に、金属材料層3Xの表面上に、ITO、IZO等の透明電極材料からなる透明導電膜4Xを真空成膜法に基づき成膜する(S4、図3(c))。
次に、遷移金属化合物(モリブデンやタングステン等)の金属材料を真空成膜法又は反応性スパッタ法で成膜することによって金属酸化物膜5Xを形成する(S5、図3(d))。
次に、金属材料層3X、透明導電膜4X、金属酸化物膜5Xの各成膜の後、金属材料層3Xの焼成工程を行う(S6、図3(e))。これは、金属材料層3X中のアルミニウムとニッケル又はコバルトで形成された合金粒子をホール注入層5側の表面に析出させて、陽極3のホール注入層5側の表面で、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトがホール注入層5と接触させるためである。その結果、陽極3のホール注入層5側の表面全体を絶縁体であるアルミニウムの酸化物で覆われ陽極3−ホール注入層5間の電流が遮断されることを防止し、陽極3とホール注入層5とはニッケル又はコバルトを介して接触する構成を採ることができる。そして、陽極3とホール注入層5とは電気的に接続される。
陽極(金属材料層3X)の焼成工程は、金属材料層成膜、透明導電膜成膜、金属酸化物膜成膜を全て行った時点で実施する構成としている。焼成温度は、当該焼成工程以前の各工程よりも高い温度(一例として200℃以上230℃以下の範囲)とし、15分以上、好ましくは40分以上の時間で焼成する。この焼成工程の実施により膜密度を向上させ、且つ電気抵抗を低減した金属材料層3Xが得られる。また、この焼成工程で透明導電膜4Xの膜密度も向上し、電気抵抗を低減できる。このように金属材料層3Xと透明導電膜4Xをまとめて焼成することで、製造工程を容易化することができる。
なお、陽極(金属材料層3X)の焼成工程は、金属材料層成膜後、透明導電膜成膜、金属酸化物膜成膜前に実施する構成としてもよい。
次に、フォトグラフィー法に基づいて金属酸化物膜の上に感光性レジストRを塗布し金属酸化物膜5Xのパターニングを実施する(S7)。まず金属酸化物膜5Xの上面に感光性レジスト膜Rを配設し、パターンマスクの上から露光を行う(図3(f))。感光性レジスト膜Rにポジ型感光性レジストを用いる場合、パターンマスクは陽極3を形成すべき部分を遮光し、それ以外の部分を露光するように開口部を形成する。その後、アルカリ水溶液からなる現像液(レジスト現像液)を用いてレジスト現像を行う(図4(a))。
次に、ドライエッチングに基づいて金属酸化物膜5Xのパターニングを行いホール注入層5を形成する(S8、図4(b))。
次に、金属材料層3Xおよび透明導電膜4Xとをウエットエッチングすることにより、透明電極4、陽極3を形成する(S9、図4(c))同じエッチング液を用いて一括エッチングする。エッチング液としては、例えばフッ硝酸系の混酸を用いることができる。
その後、不要になったレジストを剥離する(S10、図4(d))。以上で陽極、透明電極、ホール注入層のパターニング形成が終了する。なお、上記陽極3、透明電極4、ホール注入層5はドライエッチング、ウエットエッチングのいずれを用いて形成してもよい。また、これらは個別にエッチングするか、またはいずれかと組み合わせて一括エッチングするようにしてもよい。
次に、バンク材料として、感光性のレジスト材料、もしくはフッ素系やアクリル系材料を含有するレジスト材料を用意する。この材料をスピンコート法で前記ホール注入層5上に塗布し、フォトレジスト法に基づいてパターニングする。その後、熱キュアすることによってバンク6を形成する(S11)。
次に、バンク6間の領域内に、例えばインクジェット法に基づき、ホール輸送層材料を含むインクを滴下する。このインクを乾燥させることでホール輸送層7を形成する。
さらに、ホール輸送層7の上面に、有機EL材料を含むインクを滴下し、そのインクを乾燥させて有機発光層8を形成する。なお上記各インクの塗布方法としては、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等のいずれでも良い。インクの乾燥は、例えば真空乾燥で実施するのが望ましい。インク乾燥後、窒素雰囲気中においてベークを行う。有機発光層8の平均厚みは、例えば70nmとする。
次に、有機発光層8およびバンク6を覆うように、真空蒸着法に基づき、バリウムからなる薄膜を成膜する。次に共蒸着法に基づき、バリウムを混合した化合物Alqの膜を、所定の厚み(例えば20nm)で成膜し、電子注入層9とする。
次に、電子注入層9の上に、例えばプラズマコーティング法に基づき、例えば100nmの厚みでIZOの薄膜を成膜し、陰極10とする。
次に、陰極10の上にSiN、SiON等の材料を用い、真空蒸着法等に基づき、封止層11を成膜する。
以上で有機ELパネル100が完成する。
3.有機ELパネル100の要部構成
次に、有機ELパネル100の要部の構成について説明する。
図5は、有機ELパネル100における基板1、絶縁層2及び陽極3の構成を示す模式的な断面図である。上述のとおり、有機ELパネル100では、無機材料を主成分とする基板1の上面に、樹脂を主成分とする絶縁層である絶縁層2を備え、絶縁層2の上面に、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含む陽極3を備えた構成を有している。
図5に示すように、基板1の線膨張係数は3.9〜4.5×10-6/Kであり、厚みは例えば、約500μmである。絶縁層2の線膨張係数は30〜60×10-6/K、本実施の形態では約46×10-6/Kであり、厚みは約4μmである。さらに、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含む陽極3の線膨張係数は約24×10-6/K、であり、厚みは例えば、約50〜200nmである。すなわち、有機ELパネル100では、基板1、第1電極層3、絶縁層2のうち熱膨張率が最も小さい基板1と、熱膨張率が中間の値である第1電極層3との間に、熱膨張率が最も大きい絶縁層2を介在させた構成を有する。そして、絶縁層である絶縁層2の熱膨張率は、基板1の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下であることが好ましい。
上述のとおり、有機ELパネル100では、陽極3を形成するための金属材料層3Xの焼成工程を行う(S6、図3(e))。これは、金属材料層3X中のニッケル又はコバルトをホール注入層5側の表面に析出させて、陽極3のホール注入層5側の表面において、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトがホール注入層5と接触させるためである。その結果、焼成工程においては、基板1、絶縁層2及び陽極3には加熱膨張による熱ストレスが発生し、従来の有機ELパネルでは陽極3におけるボイド発生の要因となっていた。
これに対し、有機ELパネル100では、基板1、陽極3、絶縁層2のうち熱膨張率が最も小さい基板1と、熱膨張率が中間の値である陽極3との間に、熱膨張率が最も大きい絶縁層2を介在させる。併せて、絶縁層2の熱膨張率が基板1の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下とする。これにより、陽極3を形成するための加熱焼成に伴う熱応力に起因して陽極3表面に生じるボイドを抑制することができる。
以下、実施の形態に係る有機ELパネル100の陽極表面の欠陥数削減の効果について、実験結果に基づいて説明する。
4.効果確認試験
4.1 陽極表面の欠陥数削減
<試験1>
実施の形態に係る有機ELパネル100の陽極表面の欠陥数削減の効果を確認するため、以下の効果確認試験を行った。試験は、実施の形態に係る有機ELパネル100と、有機ELパネル100と同様の構成において絶縁層2を設けず基板1上に陽極3を直接形成した比較例1とを用いて行った。
図6は、比較例1に係る有機ELパネルにおける基板及び陽極の構成の一部を示す模式的な断面図である。比較例1は、有機ELパネル100と同様の構成において基板1の上面に陽極3を直接積層した構成である。基板1の上面と陽極3の下面との間に絶縁層2を設けていない点で有機ELパネル100と相違し、それ以外の構成には有機ELパネル100と同じである。
上述のとおり、基板1は無機材料を主成分とし、基板1の線膨張係数は3.9〜4.5×10-6/Kであり、厚みは例えば、約500μmである。陽極3は、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、陽極3の線膨張係数は約24×10-6/Kであり、厚みは例えば約50〜200nmである。このように、比較例1では、無機材料からなり熱膨張率が相対的に小さい基板1と、金属からなり熱膨張率が相対的に大きい陽極3とを直接面接触させた構成を有している。
試験1では、先ず、両者の陽極厚みを50nmから200nmまで変更させて、陽極表面のボイドの状態を比較した。図7は、有機ELパネル100と比較例1の陽極を平面視した写真である。図7に示すように、比較例1において、陽極厚みが50nm、75nmm、100nmであるサンプルb1、b2、b3においてアメーバ型ボイドが陽極上に各1箇所ずつ発生していることが確認できた。また、比較例1において、陽極厚みが100nm、150nm、200nmであるサンプルb3、b4、b5において点状ボイドが陽極上のほぼ全体に発生していることが確認できた。これに対し、実施の形態に係る有機ELパネル100では、陽極厚みが50nmから200nmであるサンプルa1からa5において陽極上にアメーバ型ボイド又は点状ボイドが発生していることは確認できなかった。
次に、有機ELパネル100と比較例1の陽極厚みを50nmから200nmまで変更させて、有機ELパネル内のアメーバ型ボイドの分布の状態を比較した。図8及び図10は、有機ELパネル100と比較例1のアメーバ型ボイドの実験結果を示す分布図である。図8は、陽極成膜後に測定した結果であり、図10はバンク焼成後に測定した結果である。これらの図において、各条件に記載された矩形枠は有機ELパネルを表し、枠内にプロットはアメーバ型ボイドの位置を示したものである。
図8に示すように、陽極厚みが50nm、75nmm、100nmであるサンプルb1、b2、b3においてパネル全体にわたってアメーバ型ボイドが多数発生し、それ以外のサンプルにおいては、アメーバ型ボイドは発生しているがその数は比較的少ないことを確認できた。図9は、図8に示す比較例1に係るサンプルb1、b2、b3の陽極を平面視した写真である。図9に示すように、アメーバ型ボイドについてはサンプルb1、b2において陽極上に多数、b3において1箇所、点状ボイドについてはサンプルb3において多数発生していることが確認できた。このアメーバ型ボイドは、焼成時に発生したボイドと考えられる。発明者の検討では、アルミニウムの孔食はアルカリによって促進されるが、陽極パターニング工程ではアルミニウムとアルカリとの接触は生じない。したがって、図8は、陽極パターニング後における測定結果ではあるが、アメーバ型ボイドは、エッチング薬液による孔食ではなく、焼成時にボイドが発生したものとを考えられる。
また、図10に示すように、陽極厚みが50nm、75nmm、100nmであるサンプルb1、b2、b3においてパネル全体にわたってアメーバ型ボイドが多数発生し、それ以外のサンプルにおいては、アメーバ型ボイドは発生しているがその数は比較的少ないことを確認できた。図11は、図10に示す比較例1に係るサンプルb1、b2、b3、b4の陽極を平面視した写真である。図11に示すように、アメーバ型ボイドについてはサンプルb1、b2において陽極上に多数、b3において1箇所、点状ボイドについてはサンプルb3、b4において多数発生していることが確認できた。図10に示す結果より、焼成時に発生したアメーバ型ボイドを起因として現像液による浸食がされアメーバ型ボイドが増加したものと考えられる。
なお、アメーバ型ボイドは薄膜に発生しやすく、点状ボイドは膜厚が厚い部分に発生しやすい傾向がある。これは熱応力緩和発生の状態の違いに起因すると考えられる。すなわち、薄膜では、加熱時に集中的に応力緩和がされる傾向があり、薄膜では結合の弱い部分では原子間に孔開きが発生しアメーバ型ボイドとなる。一旦、アメーバ型ボイドによる孔開きが発生すると、応力緩和がなされ他には小さな点状ボイドは形成されない。他方、厚膜の場合には、相対的に孔開きが発生しにくい傾向があり、そのため熱応力により弱い微小部分に、均等に多数の点状ボイドが発生するものと考えられる。
図12は、有機ELパネル100と比較例1の陽極の欠陥数を示す実験結果のグラフである。比較例1において、陽極厚みが50nm、75nmm、100nmであるサンプルb1、b2、b3においてアメーバ型ボイドが陽極パターンニング後に約1000以上、バンク焼成後に約4000以上発生している。また、比較例1において、陽極厚みが100nm、150nm、200nmであるサンプルb3、b4、b5において点状ボイドが約400以上発生している。これに対し、実施の形態に係る有機ELパネル100では、陽極厚みが50nmから200nmであるサンプルa1からa5においてアメーバ型ボイド及び点状ボイドともに微小量(約200以下)しか発生していない。
以上により、実施の形態に係る有機ELパネル100では、陽極3厚みが50nmから200nmまでの範囲において、絶縁層2を設けず基板1上に陽極3を直接形成した比較例1に比べて、陽極表面の欠陥(アメーバ型ボイド、点状ボイド)数が少ないことを確認できた。
<有機ELパネル100が比較例1に比べて陽極表面の欠陥発生を抑制できる理由>
有機ELパネル100が比較例1に比べて陽極表面の欠陥数が少ない結果となった理由として、以下のことが想定される。
上述のとおり、無機材料からなる基板1の線膨張係数は3.9〜4.5×10-6/Kであるのに対し、金属からなる陽極3の線膨張係数は約24×10-6/Kと相対的に大きい。そのため、焼成工程(S6)における加熱中の状態では、加熱温度から算出される金属材料層3Xの熱ひずみの量は、基板1の値に対して相対的に大きなものとなる。しかしながら、上述のとおり、比較例1では基板1と陽極3(金属材料層3X)とは直接面接触しているので、相対的な変位は互いに拘束されている。したがって、界面近傍では基板1及び陽極3内部に熱応力が発生する。そして、焼成工程(S6)における加熱中に、基板1及び陽極3内部に熱応力に起因して界面の一部箇所において金属材料層3Xの原子間結合が切断されることにより熱応力が緩和される。このとき、上述したアメーバ型ボイドでは、一か所の比較的大きなボイドにより集中して熱応力が緩和される。点状ボイドでは、多数の小さなボイドにより複数個所にて熱応力が緩和される。
その後、焼成工程(S6)における加熱を終了し冷却した状態では、基板1と陽極3とは各々収縮する。そのとき、基板1及び陽極3の界面で陽極3の原子間結合が切断された箇所では、陽極3の厚さ方向に孔状の欠陥(ボイド)が発生することがある。
以上が、比較例1において、陽極表面の欠陥(ボイド)が発生する理由と考えられる。
これに対し、有機ELパネル100では、絶縁層2及び陽極3の界面において陽極3の原子間結合は切断されず、陽極表面の欠陥(ボイド)発生が抑制されると考えられる。
上述のとおり、樹脂を主成分とする絶縁層2の線膨張係数は30〜60×10-6/Kであり、基板1及び陽極3の両者に対し相対的に大きい。すなわち、有機ELパネル100では、基板1、第1電極層3、絶縁層2のうち熱膨張率が最も小さい基板1と、熱膨張率が中間の値である第1電極層3との間に、熱膨張率が最も大きい絶縁層2が介在させた構成を有する。そのため、焼成工程(S6)における加熱中の状態では、加熱温度から算出される絶縁層2の熱ひずみの量は、金属材料層3Xの熱ひずみの量に対して大きなものとなる。しかしながら、実際の絶縁層2の熱ひずみの量は、加熱温度から算出される熱ひずみ量の小さい基板1の熱ひずみの量と相殺される。すなわち、絶縁層2と基板1は互いに相対的な変位を拘束されている。その結果、金属材料層3Xと絶縁層2の変位はほぼ等しくなり、金属材料層3Xと絶縁層2との界面近傍においては、金属材料層3Xと絶縁層2内部に発生する熱応力は小さい。他方、絶縁層2と基板1は互いに相対的な変位を拘束されているので、絶縁層2と基板1との界面近傍では、基板1及び絶縁層2内部に熱応力が発生する。しかしながら、絶縁層2は樹脂であるために弾性率が小さく、無機材料である基板1よりも大きく変位する。そのため、基板1及び絶縁層2内部に生じた熱応力は主に絶縁層2内部で緩和され、基板1及び絶縁層2内部に生じた熱応力に起因して界面の一部箇所において陽極3の原子間結合が切断されることはない。
その後、焼成工程(S6)における加熱を終了し冷却した状態では、各層は各々もとの状態に収縮する。そのとき、金属材料層3Xと絶縁層2の界面において金属材料層3Xの原子間結合が切断されず、陽極3の厚さ方向に孔状の欠陥が発生することはない。
以上が、有機ELパネル100において、陽極表面の欠陥(ボイド)発生が抑制される理由であると考えられる。
<試験2>
次に、有機ELパネル100の陽極表面の欠陥数削減の効果を確認するため、有機ELパネル100と、有機ELパネル100と同様の構成において絶縁層2と陽極3との間に遷移金属からなる接続層を備えた比較例2を用いて試験を行った。陽極3との間に遷移金属からなる接続層を備えた比較例2に係る構成は、特許文献1に記載された従来の有機ELパネル100Xを構成する有機EL素子10Xの構成の一例である。
図13は、比較例2に係る有機ELパネルにおける基板、絶縁層及び陽極の構成を示す模式的な断面図である。比較例2は、有機ELパネル100と同様の構成において絶縁層2の表面に、タングステン(W)からなる接続層3Yを備え、接続層3Y上に陽極3を積層した構成を有している。それ以外の構成については有機ELパネル100と同じである。接続層3Yは、絶縁層2の表面に接続層構成材料(例えばタングステン)をスパッタリング法又は真空蒸着方により成膜し、さらにその上に成膜した陽極3の金属材料層3Xと共にフォロリソグラフィィー法によりパターンニングして形成することができる。接続層3Yの線膨張係数は4.3×10-6/Kであり、接続層3Yの厚みは20nmから40nmとした。すなわち、比較例2では、遷移金属からなり熱膨張率が相対的に小さい接続層3Yと、金属からなり熱膨張率が相対的に大きい陽極3とを直接面接触させた構成を有する。
試験2では、先ず、接続層の厚みを0nmから40nmまで変更させて、陽極表面のボイドの状態を比較した。図14は、接続層の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。この試験に用いたサンプルの陽極3厚みは200nmである。図14に示すように、比較例2において、接続層の厚みが20nm、40nmmであるサンプルb1、b2において点状ボイドが陽極上に陽極上のほぼ全体に発生していることが確認できた。これに対し、実施の形態に係る有機ELパネル100であるサンプルa1においてボイドは陽極上に発生していることは確認できなかった。
図15は、接続層の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極の欠陥分布を示す実験結果のグラフである。図15において、縦軸は顕微鏡で観察された3ピクセル内欠陥数(ボイド数)を示し、横軸はパネルの陽極の欠陥分布の測定位置を示す。図16は、図15における有機ELパネルの陽極の欠陥分布の測定位置を示す模式図である。試験に用いた有機ELパネル100、比較例2のサンプルの陽極3形成時のスパッタ条件(チャンバー圧)を0.3Pa及び0.8Paの2水準とした。図15に示すように、比較例2において、接続層の厚みが20nm、40nmmであるサンプルb1、b2において各測定位置において欠陥がほぼ20以上カウントされた。これに対し、有機ELパネル100であるサンプルa1では各測定位置において欠陥は概ねカウントされない。
図17は、陽極の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極を平面視した写真である。この試験に用いたサンプルの陽極3厚みは100nm、200nmであり、接続層3Yの厚みは40nmである。図15に示すように、比較例2において、陽極3厚みは100nm、200nmであるサンプルb1、b2において点状ボイドが陽極上に陽極上のほぼ全体に発生していることが確認できた。これに対し、実施の形態に係る有機ELパネル100であるサンプルa1においてボイドは陽極上に発生していることは確認できなかった。
図18は、陽極の厚みを変えたときの有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極の欠陥数を示す実験結果のグラフであり、(a)は、有機ELパネル100(b)は比較例2の結果である。この試験に用いたサンプルの接続層3Yの厚みは40nmである。図18(b)に示すように、比較例2において、陽極3の厚みが280nm以下の範囲において陽極3厚みの減少に伴って欠陥数が顕著に増加することが確認された。これに対し、図18(a)に示すように、有機ELパネル100では陽極3の厚みにかかわらず欠陥数は約20から30個と少なく、陽極3の厚みの減少に伴う欠陥数の増加は確認されなかった。これより、有機ELパネル100は、比較例2との比較において陽極3の厚みが280nm以下の範囲において欠陥数がより多く削減されていることがわかる。すなわち、絶縁層2と陽極3とを直接接触させた構成は、絶縁層2と陽極3との間に遷移金属からなる接続層を備えた構成に対して、陽極3の厚みが280nm以下の範囲において、欠陥数の削減に効果的であることがわかる。
<比較例2における陽極表面の欠陥発生理由>
有機ELパネル100が比較例2に比べて陽極表面の欠陥数が少ない結果となった理由として、以下のことが想定される。
上述のとおり、陽極3と直接接触する遷移金属からなる接続層3Yの線膨張係数は4.3×10-6/であるのに対し、金属からなる陽極3の線膨張係数は約24×10-6/Kと相対的に大きい。また、比較例1において陽極3と直接接触する基板1の線膨張係数3.9〜4.5×10-6/Kとほぼ同等である。そのため、比較例2において陽極3は比較例1と同様の挙動を示すとものと考えられる。
すなわち、焼成工程(S6)における加熱中の状態では、加熱温度から算出される金属材料層3Xの熱ひずみの量は、接続層3Yの値に対して相対的に大きい。しかしながら、上述のとおり、比較例2では接続層3Yと陽極3(金属材料層3X)とは直接面接触しているので、相対的な変位は互いに拘束される。したがって、界面近傍では接続層3Y及び陽極3内部に熱応力が発生する。そして、焼成工程(S6)における加熱中に、接続層3Y及び陽極3内部に、熱応力に起因して界面の一部の箇所において陽極3の原子間結合が切断される。その後、焼成工程(S6)における加熱を終了し冷却した状態では、上述の比較例1の場合と同様に、接続層3Yと陽極3とは各々収縮する。そのとき、接続層3Y及び陽極3の界面において陽極3の原子間結合が切断された箇所で陽極3の厚さ方向に孔状の欠陥が発生することがある。
以上が、比較例2において、比較例1と同様に陽極表面の欠陥(ボイド)が発生した理由であると考えられる。
4.2 陽極厚みと光出射効率との関係
<試験3>
実施の形態に係る有機ELパネル100の光出射効率向上の効果を確認するため、以下の効果確認試験を行った。試験は、実施の形態に係る有機ELパネル100において、陽極厚みを100nmから400nmまで変更させて、有機ELパネル100の光出射効率を測定した。測定は、陽極3と陰極10との間に陽極3を正の電位とする電圧を印加して所定の電流を流し、封止層11から出射される光の照度(カンデラ)を測定した。
図19は、有機ELパネル100と比較例2に係る有機ELパネルの陽極の厚みと光出射効率との関係を示す実験結果のグラフであり、(a)は、赤色のサブ画素の有機EL素子20cからの光出射効率、(b)は、緑色のサブ画素の有機EL素子20bからの光出射効率、(c)は、青色のサブ画素の有機EL素子20aからの光出射効率を示す。図19に示すように、有機ELパネル100では、陽極3厚みの減少に伴って光出射効率は向上し、陽極3の厚みが200nm未満の範囲において陽極3厚みの減少に伴う出射効率の傾きが増加することが確認された。これにより、有機ELパネル100では、陽極3の厚みが200nm未満の範囲において出射効率がより一層向上することがわかる。
5.まとめ
以上、説明したとおり、本実施の形態に係る有機ELパネル100では、無機材料を主成分とする基板1と、樹脂を主成分とする絶縁層2と、アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、厚みが50nm以上200nm未満である第1電極層3と、遷移金属酸化物からなるホール注入層5と、第1電極から注入されたキャリアを受け取る発光層を少なくとも含む有機発光層8と、第1電極層3と異なる極性を有する第2電極層10とを、当該順に層状に備え、第1電極層3の金属酸化物層側の表面では、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトがホール注入層5と接し、絶縁層2の熱膨張率は、基板1の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下である構成を採る。すなわち、有機ELパネル100では、基板1、第1電極層3、絶縁層2のうち熱膨張率が最も小さい基板1と、熱膨張率が中間の値である第1電極層3との間に、熱膨張率が最も大きい絶縁層2を介在させた構成を採ることができる。これにより、第1電極層3を形成するための金属材料層の加熱焼成に伴う熱応力に起因して第1電極表面に生じる欠陥(ボイド)の発生を抑制し、第1電極表面に生じる欠陥の数を削減することができ、有機ELパネルの製造品質を向上できる。また、第1電極層3の厚みを50nm以上200nm未満とすることにより、有機ELパネル100の出射効率を向上することができる。
また、別の態様では、絶縁層2と第1電極層3とは直接面接触している構成であってもよい。これにより、有機ELパネル100の出射効率が高めるとともに、有機ELパネル100の出射効率が高い第1電極層3の厚み範囲において、第1電極層3との間に遷移金属からなる接続層3Yを備えた構成を採る場合に比べて、陽極3表面におけるボイドの発生をより一層抑制することができる。
また、別の態様では、第1電極層3のホール注入層5側の表面では、少なくとも一部にニッケル又はコバルトを析出させた状態でアルミニウムの酸化物層が形成されている構成であってもよい。また、別の態様では、第1電極層3は、絶縁層2の上にアルミニウム、及びアルミニウムニッケル合金、又はアルミニウムコバルト合金をスパッタリングにより堆積したのち焼成して形成されている構成であってもよい。これにより、第1電極層3のホール注入層5側の表面全体を絶縁体であるアルミニウムの酸化物で覆われ第1電極層3とホール注入層5間の電流が遮断されることを防止し、第1電極層3とホール注入層5とはニッケル又はコバルトを介して接触する構成を採ることができる。その結果、第1電極層3とホール注入層5とは電気的に接続され有機発光層8における良好なキャリア移動を実現できる。
≪変形例≫
実施の形態では、本発明の一態様に係る有機ELパネル100を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、有機ELパネル100の変形例を説明する。
上記実施の形態では、トップエミッション型の有機ELパネルを示したが、本開示はこれに限定されず、ボトムエミッション型とすることもできる。この場合、第1電極(陽極)を透明材料で構成する点に留意する。
上記実施の形態では、金属酸化物膜5Xを形成した後に金属材料層3Xの焼成工程を実施したが、これは必須ではなく、少なくとも透明導電膜4Xの成膜後に前記焼成工程を実施すればよい。この方法でも金属材料層3Xの上に透明導電膜4Xが存在することで、絶縁層2と金属材料層3Xの間における気泡の発生を防止することができる。
上記実施の形態では、ホール輸送層、電子注入層等を設ける構成を例示したが、これらの層は適宜省略することもできる。
また、上記実施の形態では、発光層の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。
また、上記実施の形態では、有機ELパネル100がアクティブマトリクス型の構成であったが、本発明はこれに限られず、例えば、パッシブマトリクス型の構成であってもよい。具体的には、バンクの延伸方向と平行な線状の電極と、バンクの延伸方向と直交する線状の電極とを発光層を挟むようにそれぞれ複数並設すればよい。このとき、バンクの延伸方向と直交する線状の電極を下部側とすれば、各間隙では、複数の下部側の電極が、互いに間隔をあけてバンクの延伸方向に並び、本発明の一態様となる。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。なお、上記実施の形態1では、基板1がTFT層を有する構成であったが、上記パッシブマトリクス型の例などから分かるように、基板1はTFT層を有する構成に限られない。
本発明に係る有機ELパネルを用いた表示装置は、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話などの装置、又はその他表示パネルを有する様々な電子機器に広く利用することができる。
1基板
2 絶縁層
3X 金属材料層
3 陽極
4X 透明導電膜
4 透明電極
5X 遷移金属酸化物膜
5 ホール注入層
6 バンク
7 ホール輸送層
8 有機発光層
9 電子注入層
10 陰極
11 封止層
20a、20b、20c 有機EL素子
100 有機ELパネル

Claims (11)

  1. 無機材料を主成分とする基板と、
    樹脂を主成分とする絶縁層と、
    アルミニウム及び、ニッケル又はコバルトを含むアルミニウム合金を含み、厚みが50nm以上200nm未満である第1電極層と、
    遷移金属酸化物からなるホール注入層と、
    前記第1電極から注入されたキャリアを受け取る発光層を少なくとも含む有機発光層と、
    前記第1電極と異なる極性を有する第2電極層とを当該順に積層された状態で備え、
    前記第1電極層の前記金属酸化物層側の表面では、少なくとも一部においてニッケル又はコバルトが前記ホール注入層と接し、
    前記絶縁層の熱膨張率は、前記基板の熱膨張率に対し8倍以上13倍以下である
    有機ELパネル。
  2. 前記絶縁層と前記第1電極層とは直接面接触している
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  3. 前記絶縁層を構成する物質の熱膨張率は、30×10-6/K以上60×10-6/K以下である
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  4. 前記基板を構成する物質の熱膨張率は、3.9×10-6/K以上4.5×10-6/K以下である
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  5. 前記第1電極を構成する物質の熱膨張率は、2.0×10-6/K以上2.8×10-6/K以下である
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  6. 前記絶縁層の厚みは、3000nm以上5000nm以下である
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  7. 前記樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、アクリル系樹脂からなるグループから選択された1以上の樹脂である
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  8. 前記第1電極層の前記ホール注入層側の表面では、少なくとも一部にニッケル又はコバルトを析出させた状態でアルミニウムの酸化物層が形成されている
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  9. 前記第1電極層の前記ホール注入層側の表面では、前記ニッケル又はコバルトは前記アルミニウムの金属酸化物層中に島状に存在している
    請求項8に記載の有機ELパネル。
  10. 前記第1電極層は陽極を構成し、
    前記第2電極層は陰極を構成し、
    前記ニッケル又はコバルト又はそれらが構成する酸化物は、キャリアとしてのホールを注入するホール注入性を備える
    請求項1に記載の有機ELパネル。
  11. 前記第1電極層は、前記絶縁層の上にアルミニウム、及びアルミニウムニッケル合金、又はアルミニウムコバルト合金をスパッタリングにより堆積したのち焼成して形成されている
    請求項1に記載の有機ELパネル。
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