JP2016132007A - レーザ・アークハイブリッド溶接方法及びレーザ・アークハイブリッド溶接構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レーザ溶接とアーク溶接の両方を用いて鋼材を開先溶接するレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、前記鋼材の開先面の少なくとも一方に、粉末の脱酸剤を有機溶媒に混合した脱酸剤ペーストを塗布する脱酸剤塗布工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
より具体的には、レーザ切断のような熱加工法を用いて母材となる鋼板の開先加工を行うと、その開先面に酸化膜が生成する。当該酸化膜を開先面に残したままレーザ・アークハイブリッド溶接を行うと、溶接時に、Fe2O3、Fe3O4等で構成される前記酸化膜が前記レーザの高パワー密度の熱によってFeとOに解離するとともに、解離したOが溶融金属中に溶解する。その結果、溶融金属中において母材由来のCと前記開先面の酸化膜由来のOが反応してCOガスが発生し、溶融金属の凝固時に前記COガスが大気中に放出されずに金属内に残るとポロシティ(ブローホールとも言う)となる。
例えば、特許文献1には、熱間圧延した鋼材の接合(熱間接合)を行うにあたり、アルミニウム、シリコン、チタン等を含む鉄合金の粉末の脱酸剤を脱酸剤供給装置等を用いて開先部に供給しつつ、レーザ溶接する方法が開示されている。
また「粉末」とは、細かい粒子の集合体を意味する。前記粒子は球状、粒状等のほぼ同一形状の粒子の集合体である場合の他、不規則形状の粒子の集合体であってもよい。
本態様においては、前記鋼材の開先面の少なくとも一方に、粉末の脱酸剤を有機溶媒に混合した脱酸剤ペーストが塗布されていることにより、溶接時に、鋼板の厚さ方向全体の溶融金属中に脱酸剤を分散させることが可能となる。
脱酸剤が鋼板の厚さ方向全体の溶融金属中に分散されていることにより、該脱酸剤は、前記溶融金属中において発生したCOガスと速やかに反応することができる。以って、溶融金属中に発生したCOガスが高効率に系外に除去されるので、溶融金属が凝固して形成される溶接部(溶接金属)におけるポロシティの発生を効果的に抑制または回避することができる。
本態様によれば、厚さ6.0mm以上の鋼材をレーザ・アークハイブリッド法により溶接する際に、ポロシティの発生を効果的に抑制または回避し、より信頼性の高い溶接を行うことができる。
ここで、レーザ切断は、一般的にアシストガスとして酸素が使われるため、前記鋼材の開先面をレーザ切断により形成すると、開先面となる切断部に酸化膜が形成される。
本態様によれば、レーザ切断によって開先面を形成し、該開先面に酸化膜を有する場合に、ポロシティの発生を抑制または回避することができる。
本発明に係るレーザ・アークハイブリッド溶接方法の概要について図に基づいて説明する。図1は、本発明に係るレーザ・アークハイブリッド方法について説明する図である。
図1において符号3はレーザ溶接を行うレーザトーチであり、符号4はアークトーチである。符号5は溶接ワイヤである。鋼材1a、鋼材1bをレーザ・アークハイブリッド溶接する場合、アークトーチ4によるアーク溶接が先行して行われ、続いてレーザトーチ3によるレーザ溶接が行われる。
以下において、脱酸剤ペースト10を構成する脱酸剤と有機溶媒および脱酸剤ペースト10について説明し、続いて前記脱酸剤塗布工程について説明する。
前記脱酸剤としては、溶融金属中に含まれるOと反応して固体の酸化物(スラグ)を生成させるAl、Mn、Si、Ti、Mg等の金属元素を含む材料が用いられる。
特に、純アルミニウム、アルミニウム合金等が好ましい。
前記脱酸剤を混合する有機溶媒としては、前記脱酸剤と混合してペースト状になる有機溶媒を用いる。有機溶媒は、粘度が高く、室温で気化し易いものが好ましい。
例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコール系の溶媒が挙げられる。
脱酸剤ペースト10は、前記脱酸剤を前記有機溶媒に混合して調製することができる。
脱酸剤ペースト10は、液体よりも粘性が高く流動性が少ない状態で、溶接時、すなわち開先面2aがほぼ鉛直方向(図1における上下方向)に沿うように配置された場合に、脱酸剤ペースト10を開先面に保持させることが可能な粘度を有するものが好ましい。
次に、脱酸剤塗布工程について説明する。本説明では、図1における一方の鋼材1aの開先面2aに脱酸剤ペースト10を塗布する場合について説明する。
脱酸剤塗布工程は、母材となる鋼材1aの開先面2aに脱酸剤ペースト10を塗布する工程である。脱酸剤ペースト10は、開先面2aにほぼ均一に塗布されることが好ましい。脱酸剤ペースト10を開先面2aに均一に塗布方法の一例としては、図2に示す方法が挙げられる。図2は、脱酸剤塗布工程について説明する図であり、(A)は開先面と同一面を成す支持板を配設した図、(B)は支持板上に枠板を配設した図、(C)は開先面に脱酸剤ペーストを塗布した図である。
尚、両方の開先面2a、開先面2bに脱酸剤ペースト10を塗布する場合には、例えば、一方の開先面にのみに塗布する場合の約半分ずつの脱酸剤ペースト10を二つの開先面2a、開先面2bに分けて塗布するなどして、開先面2a、開先面2bに塗布した脱酸剤ペースト10のトータルの厚さが約100μmとなるようにするとよい。
溶媒蒸発工程を行い、脱酸剤ペースト10に含まれる有機溶媒を減らすことにより、溶接部への前記有機溶媒由来の炭素の混入を低減することができる。
酸化膜(Fe2O3、Fe3O4等)があると、レーザ溶接を行った時に、そのレーザの高パワー密度の熱によって前記酸化膜から解離したOと鋼材1a、鋼材1b由来のCが反応して溶融金属21中にCOガスが発生する(図3)。溶融金属21中に残ったCOガスは、溶融金属21が凝固した溶接金属24においてポロシティ25となり、溶接部20の欠陥となる。
図3に示すように、溶接部20のうち、レーザ溶接部22にポロシティ25は生じやすい。
溶接される鋼材の厚さが厚くなると、その厚みのために溶融金属21中に発生したCOガスが系外に除去され難くなるのでポロシティ25は発生し易くなる。
更に、板厚L(図3)が厚い鋼板に対してレーザ・アークハイブリッド溶接を行った場合、アーク溶接部23の深さ(3〜6mm程度)は板厚Lが薄い場合と大きくは変わらず、レーザ溶接部22のみが深くなる。溶融幅が狭いレーザ溶接部22が深くなると溶融金属21の凝固速度が速くなるので、COガスはレーザ溶接部22から一層除去され難くなり、以ってポロシティ25が生じ易くなる。
レーザ切断は、一般的にアシストガスとして酸素が使われるため、開先面2a、開先面2bとなる切断部には酸化膜が形成されるが、本発明に係るレーザ・アークハイブリッド溶接方法を用いて溶接することにより、開先面2a、開先面2bに酸化膜があってもポロシティの発生を抑制または回避することができる。
レーザ・アークハイブリッド構造体を以下の手順で作成した(実施例1)。比較例は、開先面への脱酸剤塗布工程を行わないレーザ・アーク溶接によってレーザ・アークハイブリッド構造体を作製した(比較例1および比較例2)。
<レーザ・アークハイブリッド溶接構成>
レーザ:ディスクレーザ発振器(波長1030nm)
アーク:デジタルインバータ制御式CO2/MAG/MIG自動溶接機
先行熱源:アーク
溶接ワイヤ:YGW11(JIS Z3312)、φ1.2mm
母材(鋼材):船級規格鋼板KA、板厚12.5mm
開先加工:レーザ切断(I形開先)
脱酸剤ペーストを塗布した開先面と塗布しない開先面とを突き合わせ、表1に示す溶接条件によってレーザ・ハイブリッド溶接を行い、レーザ・ハイブリッド溶接構造体としての溶接継手を作製した。
比較例1は、実施例1と同じレーザ・アークハイブリッド溶接構成で、母材である鋼材の開先面への脱酸剤塗布工程を行わずにレーザ・アークハイブリッド溶接を行ったものである。
すなわち、脱酸剤ペーストが塗布されていない開先面(レーザ切断)同士を突き合わせ、表1に示す溶接条件によってレーザ・ハイブリッド溶接を行い、レーザ・ハイブリッド溶接構造体としての溶接継手を作製した。
比較例2も比較例1と同様に、開先面への脱酸剤塗布工程を行わずにレーザ・アークハイブリッド溶接を行ったものであるが、比較例2は、ワイヤブラシを用いて開先面の酸化膜を機械的に除去し、開先面に酸化膜がほぼ形成されていない状態で溶接を行い、レーザ・ハイブリッド溶接構造体としての溶接継手を作製した。
尚、表2に実施例1と比較例1、比較例2の条件の違いを示す。
<溶接部断面のマクロ観察>
溶接部断面について、ポロシティの有無の確認を行った。実施例1、比較例1、比較例2の溶接部の溶接部断面のマクロ観察写真を図4に示す。図4は、溶接部断面のマクロ観察写真であり、(A)は実施例1の溶接部であり、(B)は比較例1の溶接部であり、(C)は比較例2の溶接部である。
溶接部に対し、放射線透過検査(RT)による溶接部内のポロシティの有無の確認を行った。実施例1、比較例1、比較例2の溶接部の放射線透過検査の結果を図5に示す。図5(A)は実施例1の溶接部であり、図5(B)は比較例1の溶接部であり、図5(C)は比較例2の溶接部である。尚、図5の画像は、図3における+Z側から−Z側に向けて撮影したものである。
比較例2は、開先面に酸化膜がほぼない状態であるので、脱酸剤ペーストを塗布せずにレーザ・アークハイブリッド溶接を行っても溶接部にポロシティは発生していなかった[図4(C)および図5(C)]。
また、溶接部について、アーク溶接部とレーザ溶接部のそれぞれの溶接金属に対して光学顕微鏡によるミクロ組織観察を行った。その結果を図6に示す。図6(A)は実施例1の溶接部であり、図6(B)は比較例1の溶接部であり、図6(C)は比較例2の溶接部である。
つまり、開先面に脱酸剤ペーストを塗布してレーザ・アークハイブリッド溶接を行うと、アークによる溶接金属23(図3を参照)のミクロ組織において、粒界フェライトおよびフェライトサイドプレートが減少すると考えられる。
このようなレーザ・アークハイブリッド溶接構造体は、溶接部におけるポロシティの発生が抑制され、信頼性の高い溶接構造体であると言える。
実施例1におけるベイナイトの体積分率に対する粒界フェライトの体積分率の割合の10視野平均値は19.6%であるが、前記10視野における値の分布から、本発明の適用の有無を判定するための、当該部におけるベイナイトの体積分率に対する粒界フェライトの体積分率の割合の閾値としては、25%が妥当と判断される。
このようなレーザ・アークハイブリッド溶接構造体は、溶接部におけるポロシティの発生が抑制され、信頼性の高い溶接構造体であると言える。
3 レーザトーチ、4 アークトーチ、5 溶接ワイヤ
10 脱酸剤ペースト、11 支持板、12 開口部、13 枠板、14 開口部、
20 溶接部、21 溶融金属、22 レーザ溶接部、23 アーク溶接部、
24 溶接金属、 25 ポロシティ、L 板厚
Claims (6)
- レーザ溶接とアーク溶接の両方を用いて鋼材を開先溶接するレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
前記鋼材の開先面の少なくとも一方に、粉末の脱酸剤を有機溶媒に混合した脱酸剤ペーストを塗布する脱酸剤塗布工程を有することを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接方法。 - 請求項1に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
前記鋼材の厚さは6.0mm以上であることを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接方法。 - 請求項1又は請求項2に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
前記脱酸剤塗布工程の後に、前記脱酸剤ペーストに含まれる有機溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程を有することを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
前記鋼材の開先面をレーザ切断により形成することを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接方法において、
前記脱酸剤は、純アルミニウム、アルミニウム合金から選択される材料であることを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接方法。 - レーザ溶接とアーク溶接の両方を用いて鋼材を開先溶接したレーザ・アークハイブリッド溶接部を有する溶接構造体であって、
前記鋼材の厚さは6.0mm以上であり、
前記溶接部のうち、前記アーク溶接による溶接金属のミクロ組織において、ベイナイトの体積分率に対する粒界フェライトの体積分率が25%以下であることを特徴とする、レーザ・アークハイブリッド溶接構造体。
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