JP2016138228A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】間欠吐出安定性が良好であるとともに、写像性に優れた画像を記録することができ、かつ、保存後においても光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供する。【解決手段】顔料、水溶性ウレタン樹脂、樹脂粒子、及びポリエーテル変性シロキサン化合物を含有するインクジェット用の水性インクである。顔料が、C.I.ピグメントレッド254であり、水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が5,000以上20,000以下であるとともに、酸価が50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、樹脂粒子の体積平均粒子径が、10nm以上50nm以下であり、ポリエーテル変性シロキサン化合物が側鎖型であるとともに、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であり、樹脂粒子の体積平均粒子径(nm)が、顔料の体積平均粒子径(nm)に対する比率で、0.05倍以上0.60倍以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法によって記録される画像の耐光性、耐ガス性、及び耐水性などの堅牢性を優れたものとするために、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)が用いられるようになっている。また、写真印刷やグラフィックアート印刷などの用途の多様化に伴い、光沢紙などの表面光沢を有する記録媒体が使用されるようになっている。さらに、上記の用途では、シアン、マゼンタ、及びイエローの基本3原色のインクに加えて、基本3原色以外のいわゆる特色インクを追加し、色再現領域の拡大を図ることが種々検討されている。なかでも、レッドインクにより記録される色再現領域の彩度を高めるために、C.I.ピグメントレッド254を含有するインクが提案されている(特許文献1)。
一般的に、顔料が粒子であることに起因して、表面に光沢を有する記録媒体(光沢紙)に顔料インクで記録した画像の写像性は、染料インクで記録した画像の写像に比べて不十分であるという課題がある。「写像性」は、画像表面に映った像の鮮鋭度を示す特性の一つである。例えば、写像性が低い場合には像がぼやけて見え、写像性が高い場合には像がくっきり見える。
顔料インクで記録した画像の写像性を向上させる技術として、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3及び重量平均分子量33,000の水溶性ウレタン樹脂を用いたインクが提案されている(特許文献2)。また、色再現範囲が広く彩度が向上した画像を記録しうる、C.I.ピグメントレッド254及びウレタンエマルジョンを含有するインクが提案されている(特許文献3)。さらに、色相変化がなく分散安定化された、C.I.ピグメントレッド254と重量平均分子量が33,000の水溶性ウレタン樹脂を含有するインクが提案されている(特許文献4)。
特開2004−155830号公報 国際公開第2009/066577号 特開2007−119708号公報 国際公開第2012/115127号
本発明者らは、写像性に優れた画像を記録しうる、C.I.ピグメントレッド254を用いた顔料インクを提供するための検討を行った。まず、特許文献3を参考に、C.I.ピグメントレッド254及びウレタンエマルジョンを含有するインクを評価したところ、得られる画像の写像性は目標とするレベルに達しないことがわかった。また、特許文献4を参考に、C.I.ピグメントレッド254及び重量平均分子量33,000の水溶性ウレタン樹脂を含有するインクを評価したところ、得られる画像の写像性は向上したが、インクの間欠吐出安定性が低下するという課題が生じた。ここで、「間欠吐出安定性」とは、インクジェット記録装置の記録ヘッドの吐出口から一定時間インクが吐出されない状態が続いた後におけるインクの吐出性をいう。また、「間欠吐出安定性の低下」とは、記録ヘッドの吐出口からインク中の水分などが蒸発してしまい、インクが正常に吐出されなくなることをいう。
本発明者らは、上記の間欠吐出安定性を改善すべく、水溶性ウレタン樹脂についてさらに検討した。その結果、C.I.ピグメントレッド254と、重量平均分子量2,0000以下かつ酸価50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水溶性ウレタン樹脂とを用いると、画像の写像性が向上するとともに、間欠吐出安定性が改善することがわかった。しかし、高温で一定期間(例えば、70℃で7日間)保存後のインクを用いると、調製直後(保存前)のインクを用いた場合に比べ、得られる画像の光沢性が低下するという新たな課題が生ずることが判明した。ここで「光沢性」とは、画像の表面に光を当てたときの正反射光の強度を示す。光沢性が低い場合は正反射光の光強度が弱く見え、光沢性が高い場合は正反射光の光強度が強く見える。
したがって、本発明の目的は、間欠吐出安定性が良好であるとともに、写像性に優れた画像を記録することができ、かつ、保存後においても光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、顔料、水溶性ウレタン樹脂、樹脂粒子、及びポリエーテル変性シロキサン化合物を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記顔料が、C.I.ピグメントレッド254であり、前記水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が5,000以上20,000以下であるとともに、酸価が50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、前記樹脂粒子の体積平均粒子径が、10nm以上50nm以下であり、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物が側鎖型であるとともに、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であり、かつ、HLB値が12.0以上18.0以下であり、前記樹脂粒子の体積平均粒子径(nm)が、前記顔料の体積平均粒子径(nm)に対する比率で、0.05倍以上0.60倍以下であることを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、間欠吐出安定性が良好であるとともに、写像性に優れた画像を記録することができ、かつ、保存後においても光沢性に優れた画像を記録することが可能な水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。本発明における各種の物性値は、特に断りのない限り25℃における値である。
まず、本発明者らは、写像性が向上した画像を記録することを目的として、C.I.ピグメントレッド254を含有するインクに重量平均分子量33,000の水溶性ウレタン樹脂を添加したものについて検討した。その結果、得られる画像の写像性は向上したが、インクの間欠吐出安定性が低下することがわかった。水溶性ウレタン樹脂は、インクのドット表面のエネルギーを高める。このため、ドットの濡れ性が高まることによって、後から付与されるインクとともに形成される顔料層の平滑性が向上するので、画像の写像性が向上する。しかし、添加した水溶性ウレタン樹脂によって記録ヘッドの吐出口近傍でインクの粘度が上昇してしまい、間欠吐出安定性が低下する。そこで、本発明者らは、吐出口近傍での粘度上昇を抑制することでインクの間欠吐出安定性を向上させることができると考え、水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量及び酸価についてさらに検討した。その結果、写像性と間欠吐出安定性をいずれも向上させるには、重量平均分子量が5,000以上20,000以下であるとともに、酸価が50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である水溶性ウレタン樹脂を用いる必要があることを見出した。しかし、このインクを高温で一定期間(70℃で7日間)保存した後に用いたところ、調製直後(保存前)のインクを用いた場合に比べ、得られる画像の光沢性が低下するという新たな課題が生ずることが判明した。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
水溶性ウレタン樹脂の分子中のウレタン結合は、構造が類似するC.I.ピグメントレッド254の分子中のジケトピロロピロール骨格の五員環部分と相互作用する。このため、C.I.ピグメントレッド254の周辺に水溶性ウレタン樹脂が存在し、C.I.ピグメントレッド254(顔料)の粒子間にできる空隙を水溶性ウレタン樹脂が効率的に埋めることで、画像の光沢性の向上効果が発揮される。しかし、上記の検討で用いた水溶性ウレタン樹脂は、インクの間欠吐出安定性を向上させるために分子量が比較的小さい(重量平均分子量5,000以上20,000以下)。このため、C.I.ピグメントレッド254と相互作用するウレタン結合の割合が、より高分子量の水溶性ウレタン樹脂と比較して少なく、C.I.ピグメントレッド254との相互作用が比較的弱い。
また、C.I.ピグメントレッド254は、ジケトピロロピロール骨格の両端に塩素原子が結合した極性を持った分子構造を有する。このため、顔料の粒子表面の親水性が高く、水溶性ウレタン樹脂との間で静電反発しやすい。したがって、C.I.ピグメントレッド254と上記の水溶性ウレタン樹脂を含有するインクを高温で一定期間(例えば、70℃で7日間)保存すると、各々の分子の運動エネルギーが高まる。これにより、C.I.ピグメントレッド254と水溶性ウレタン樹脂との相互作用が、保存前のインクと比較してさらに弱まることになる。すると、C.I.ピグメントレッド254に相互作用していない水溶性ウレタン樹脂がインク中に増加する。このため、保存後のインクで画像を記録すると、C.I.ピグメントレッド254と相互作用していない水溶性ウレタン樹脂が、顔料の粒子間に生じた空隙を通じて、顔料層の上部から下部に向かって浸透する。その結果、顔料層の上部の空隙が水溶性ウレタン樹脂によって埋められず、保存後のインクで記録した画像の光沢性が低下すると考えられる。
そこで、本発明者らは、高温で一定期間(70℃で7日間)保存後のインクで記録した画像の光沢性の低下を抑制するには、顔料層中に存在する空隙を低減することが重要であると考え、その空隙を樹脂粒子で埋めることを考えた。さらに、樹脂粒子の体積平均粒子径、及び顔料の体積平均粒子径と樹脂粒子の体積平均粒子径との関係(比率)に着目した。そして、顔料中の空隙を最も効率的に埋めることができる樹脂粒子の体積平均粒子径について種々検討した。その結果、本発明者らは、樹脂粒子の体積平均粒子径が10nm以上50nm以下であり、かつ、樹脂粒子の体積平均粒子径(nm)が、顔料の体積平均粒子径(nm)に対する比率で、0.05倍以上0.60倍以下であることが有効であることを見出した。但し、顔料、水溶性ウレタン樹脂、及び上記の樹脂粒子を含有するインクを高温で一定期間(70℃で7日間)保存した後、画像を記録したところ、光沢性の低下を抑制する効果がある程度認められたものの、満足するレベルには達していないことがわかった。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
前述の通り、C.I.ピグメントレッド254は粒子表面の親水性が高く、また、平面性の高い分子構造を有するために凝集しやすい。さらに、樹脂粒子は、その粒子径が小さいために表面エネルギーが高く、樹脂粒子同士で集まりやすい。したがって、顔料と樹脂粒子がそれぞれ局所的に凝集した部分が顔料層中に生じて凝集ムラとなって偏在するとともに、顔料のみが寄り集まって凝集した部分で空隙が形成される。そして、形成された空隙によって、水溶性ウレタン樹脂が顔料層の上部から下部へと浸透するため、水溶性ウレタン樹脂が顔料層の下部に偏在してしまい、顔料層の上部の空隙が残り、光沢性の低下を抑制する効果が不十分になったものと考えられる。
そこで、本発明者らは、顔料と樹脂粒子がそれぞれ局所的に凝集することが原因で生ずる空隙の形成を抑制し、顔料と樹脂粒子が均一に存在する顔料層を形成することが重要であると考え、さらに検討した。その結果、分子構造が側鎖型であるとともに、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であり、かつ、HLB値が12.0以上18.0以下のポリエーテル変性シロキサン化合物をさらにインクに添加することが有効であることを見出した。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
側鎖型のポリエーテル変性シロキサン化合物は、疎水性部分の間に親水部分が配置された分子構造を有するとともに、HLB値が12.0以上18.0以下であるため、親水性がかなり高い。また、ポリエーテル変性シロキサン化合物は、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であるため、顔料と樹脂粒子のいずれにも配向することができる。すなわち、親水性の高いポリエーテル変性シロキサン化合物は、親水的なC.I.ピグメントレッド254や樹脂粒子と馴染みやすい。このため、上記のポリエーテル変性シロキサン化合物を用いると、顔料と樹脂粒子がそれぞれ凝集して形成される局所的な凝集ムラが抑制され、顔料層の空隙を樹脂粒子が効率的に埋めることが可能となる。その結果、水溶性ウレタン樹脂が顔料層の上層に留まり、保存後のインクで記録した画像の光沢性が向上すると考えられる。
<インク>
本発明のインクは、顔料、水溶性ウレタン樹脂、樹脂粒子、及びポリエーテル変性シロキサン化合物を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性などについて詳細に説明する。
(顔料)
本発明のインクは、C.I.ピグメントレッド254を顔料として含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。顔料の体積平均粒子径は、50nm以上200nm以下であることが好ましい。また、顔料は樹脂分散剤によってインク中に分散されていることが好ましい。この樹脂分散剤としては、水溶性アクリル樹脂を用いることが好ましい。
アクリル樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当の水酸化カリウムにより中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の粒子の粒径を測定した場合に、粒径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱式の粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性アクリル樹脂は、2種以上のモノマーに由来する2以上のユニットを有する水溶性の共重合体である。水溶性樹脂は、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。なお、以下の記載における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。
親水性ユニットは、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有するモノマーなどを挙げることができる。
酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。本発明のインクに用いる水溶性アクリル樹脂は、通常、酸価を有するため、親水性ユニットには上述のアニオン性モノマーに由来するユニットが含まれる。水溶性アクリル樹脂は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性となるものが好ましい。
疎水性ユニットは、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾールなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
インク中の水溶性アクリル樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
(水溶性ウレタン樹脂)
本発明のインクは、水溶性ウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂が水溶性であるか否かについては、アクリル樹脂と同様の方法で判断することができる。インク中の水溶性ウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性ウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。さらに、ウレタン樹脂とその他の樹脂とを結合させたハイブリッド型の樹脂であってもよい。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、酸基を有するポリオールなどを用いることができる。また、水溶性ウレタン樹脂は水溶性であるため、その構造中にカルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基などの酸基;カルボニル基、ヒドロキシ基などの親水性基を含むことが好ましい。特に、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などの酸基を有するポリオールを用いて合成された水溶性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。酸基は塩の形態であってもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
鎖延長剤は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマー中のポリイソシアネートユニットのうち、ウレタン結合を形成しなかった残存イソシアネート基と反応しうる化合物である。鎖延長剤としては、ジメチロールエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン;ポリエチレンポリイミンなどの多価イミン;ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオールなどの多価アルコールを用いることができる。
水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、5,000以上20,000以下である。水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると分子内のウレタン結合が少ないため、インクドット表面を高エネルギー化する効果が小さくなり、顔料層の濡れ性が低下する。その結果、顔料層の平滑性が低下して画像の写像性が不十分となる。一方、水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が20,000超であると、吐出口近傍での粘度上昇に伴ってインクの間欠吐出安定性が不十分となる。水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算として求めた値である。
水溶性ウレタン樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。水溶性ウレタン樹脂の酸価が50mgKOH/g未満であると疎水性が高いため、吐出口近傍での粘度上昇に伴ってインクの間欠吐出安定性が不十分となる。一方、水溶性ウレタン樹脂の酸価が100mgKOH/g超であると、水溶性ウレタン樹脂の凝集性が低くなりすぎるために顔料層に残りにくくなり、画像の写像性が不十分となる。
(樹脂粒子)
本発明のインクは樹脂粒子を含有する。樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などで構成される樹脂粒子を挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂で構成される樹脂粒子を含有させることが好ましい。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットや、アクリルエステルに由来するユニットなどのアクリル成分を少なくとも有するものであればよい。より具体的には、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。
親水性ユニットは、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有するモノマー;スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有するモノマー;これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有するモノマーを挙げることができる。アニオン性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
疎水性ユニットは、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
本発明においては、コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いることが好ましい。コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いることで、より写像性に優れた画像を記録することができる。コアシェル構造を有する樹脂粒子は、形成される顔料層中でその形状を維持しやすい。疎水性ユニットのみを有するポリマーからなるコア部、及び親水性ユニットを含むポリマーからなるシェル部で構成されたコアシェル構造の樹脂粒子と、親水性ユニット及び疎水性ユニットを含むポリマーからなる単層構造の樹脂粒子とを比較する。上記コアシェル構造を有する樹脂粒子は、上記単層構造の樹脂粒子に比して、粒子の中心部が水性媒体の影響を受けにくく、その形状が変化しにくい。このため、コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いると、単層構造の樹脂粒子を用いた場合に比して、インクの浸透性を高める作用が発現しやすく、写像性がより高まると考えられる。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、10nm以上50nm以下である。樹脂粒子の体積平均粒子径が10nm未満であると、小さすぎるために顔料粒子同士の間にできる空隙に留まらず、顔料層の下部に偏在してしまう。このため、空隙を満たすことができず、保存後のインクで記録される画像の光沢性が不十分となる。一方、樹脂粒子の体積平均粒子径が50nm超であると、大きすぎるために顔料粒子同士の間の空隙を埋めることができず、顔料層に空隙が残ってしまい、保存後のインクで記録した画像の光沢性が不十分となる。
樹脂粒子の体積平均粒子径(nm)は、顔料の体積平均粒子径(nm)に対する比率で、0.05倍以上0.60倍以下である。上記の比率が0.05倍未満であると、樹脂粒子と比べて顔料が大きすぎる。このため、樹脂粒子が顔料層の下部に偏在してしまい、顔料層の上部から下部への水溶性ウレタン樹脂の浸透を抑制する効果が低下する。その結果、保存後のインクで記録する画像の光沢性が不十分となる。一方、上記の比率が0.60倍超であると、顔料と比べて樹脂粒子が大きすぎる。このため、樹脂粒子が顔料粒子同士の間の空隙を埋めることができず、顔料層の上部から下部への水溶性ウレタン樹脂の浸透を抑制する効果が低下する。その結果、保存後のインクで記録する画像の光沢性が不十分となる。
本発明における「体積平均粒子径」は、体積基準の累積50%粒径(D50)を意味し、以下に示すような条件にしたがって測定することができる。まず、樹脂粒子を純水で50倍(体積基準)に希釈した測定試料を用意する。そして、粒度分布測定装置を使用し、以下に示す測定条件にしたがって測定試料中の樹脂粒子の体積平均粒子径を測定する。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
屈折率:1.5
粒度分布測定装置としては、動的光散乱式の粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。また、樹脂粒子の含有量(質量%)は、顔料(C.I.ピグメントレッド254)の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上0.50倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.05倍未満であると、樹脂粒子の量が不足する傾向にあるため、顔料層中の空隙が埋まりにくくなり、画像の光沢性の低下を抑制する効果が弱まる場合がある。一方、上記の質量比率が0.50倍超であると、樹脂粒子に対するC.I.ピグメントレッド254が少なくなってしまい、一部の樹脂粒子が樹脂粒子のみで凝集する傾向にある。このため、顔料層中に顔料と樹脂粒子が均一に存在しない部分ができて空隙が埋まりにくくなり、保存後のインクで記録する画像の光沢性が低下する場合がある。
樹脂粒子の酸価は、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子の酸価が100mgKOH/g未満であると、親水性が低いためにポリエーテル変性シロキサン化合物が配向しにくくなる傾向にある。このため、顔料と樹脂粒子のそれぞれの凝集が十分に抑制されず、凝集ムラが発生しやすくなり、保存後のインクで記録した画像の光沢性が低下する場合がある。一方、樹脂粒子の酸価が200mgKOH/g超であると、親水性が高すぎるためにポリエーテル変性シロキサン化合物が配向しにくくなり、保存後のインクで記録した画像の光沢性が低下する場合がある。
(ポリエーテル変性シロキサン化合物)
本発明のインクは、ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する。本発明における「ポリエーテル変性シロキサン化合物」とは、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有するとともに、ポリエーテル鎖(例えば、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなど)をさらに有する化合物をいう。さらに、ポリエーテル変性シロキサン化合物は、側鎖型であるとともに、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であり、かつ、HLB値が12.0以上18.0以下であることを要する。
ポリエーテル変性シロキサン化合物の構造が側鎖型ではなく、例えば、両末端型や片末端型であると、親水性部分と疎水性部分が明確に分かれているため分子全体の親水性はさほど高くない。このため、C.I.ピグメントレッド254や樹脂粒子と馴染みにくく、C.I.ピグメントレッド254と樹脂粒子のそれぞれの凝集が抑制されない。その結果、保存後のインクで記録した画像の光沢性が不十分となる。ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリオキシエチレン変性シロキサン化合物であることが好ましい。ポリエーテル部分が親水性の高いポリオキシエチレンであることで、親水的なC.I.ピグメントレッド254及び樹脂粒子とより馴染みやすくなる。このため、C.I.ピグメントレッド254と樹脂粒子のそれぞれの凝集を抑制してより均一な顔料層が形成される。その結果、保存後のインクで記録した画像の光沢性がさらに向上する。
側鎖型の構造を有するポリエーテル変性シロキサン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。下記一般式(1)中、(C24O)はエチレンオキサイドユニットを示し、(C36O)はプロピレンオキサイドユニットを示す。エチレンオキサイドユニット及びプロピレンオキサイドユニットは、分子構造中において、ランダム状態で存在していても、ブロック状態で存在していてもよい。ここで、各ユニットが「ランダム状態で存在する」とは、エチレンオキサイドユニットとプロピレンオキサイドユニットとが不規則に配列していることを意味する。また、各ユニットが「ブロック状態で存在する」とは、複数のユニットを含んで構成されたブロックが規則的に配列していることを意味している。
Figure 2016138228
(前記一般式(1)中、R1は炭素数1以上20以下のアルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基を表す。mは1以上350以下の数を表し、nは1以上100以下の数を表し、aは1以上100以下の数を表し、bは0以上100以下の数を表す)
一般式(1)中、R1は炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基であることがさらに好ましい。R2は炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、エチル基又はプロピル基であることがさらに好ましい。nは1以上50以下の数であることが好ましい。aは1以上50以下の数であることが好ましい。bは1以上50以下の数であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記式で表される2種の化合物を付加反応させ、ポリシロキサンの水素原子にアルケニル基を付加させることによって合成することができる。下記式中、mは1以上350以下の数を表し、nは1以上100以下の数を表し、aは1以上100以下の数を表し、bは0以上100以下の数を表し、Rは炭素数1以上20以下のアルケニル基を表す。
Figure 2016138228
ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量が5,000未満であると、C.I.ピグメントレッド254及び樹脂粒子と相互作用する部分が減少する。このため、C.I.ピグメントレッド254と樹脂粒子のそれぞれの凝集を抑制する効果が弱くなり、保存後のインクで記録した画像の光沢性が不十分となる。一方、ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量が10,000超であると、ポリエーテル変性シロキサン化合物同士の相互作用が強くなりすぎてしまい、C.I.ピグメントレッド254及び樹脂粒子に対して配向しなくなる。このため、顔料層中の凝集ムラを抑制することができず、保存後のインクで記録した画像の光沢性が不十分となる。
ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを移動相としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。以下、ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量の測定方法について説明する。測定条件の他、使用するフィルター、カラム、標準ポリスチレン試料、及び標準ポリスチレン試料の分子量などについては、以下に示すものに限られるものではない。
まず、測定対象となる試料(ポリエーテル変性シロキサン化合物)をテトラヒドロフランと混合して数時間静置し、ポリエーテル変性シロキサン化合物を溶解させて溶液を調製する。ポアサイズ0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(例えば、商品名「TITAN2 Syringe Filter」、PTFE、0.45μm、SUN−SRi製)で調製した溶液をろ過して試料溶液を得る。試料溶液中のポリエーテル変性シロキサン化合物の濃度を0.1質量%乃至0.5質量%になるように適宜調整する。GPCには、RI検出器(Refractive Index Detector)を用いる。また、103〜2×106の分子量の範囲を正確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数本組み合わせて用いることが好ましい。例えば、商品名「Shodex KF−806M」(昭和電工製)を4本組み合わせたものや、これに相当するものを用いることができる。40.0℃のヒートチャンバー中で安定化させたカラムにテトラヒドロフランを流速1mL/分で流し、上記の試料溶液を約0.1mL注入する。ポリエーテル変性シロキサン化合物の重量平均分子量は、標準ポリスチレン試料で作成した分子量検量線を用いて決定する。標準ポリスチレン試料としては、分子量が102〜107程度のもの(例えば、Polymer Laboratories製)を用いる。また、少なくとも10種程度の標準ポリスチレン試料を用いることが適切である。
ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が12.0未満であると、疎水性が高いため、顔料及び樹脂粒子に配向しなくなる。このため、顔料層での凝集ムラの抑制効果が弱くなり、保存後のインクで記録する画像の光沢性が不十分となる。一方、ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が18.0超であると、親水性が高くなりすぎてしまい、顔料及び樹脂粒子に配向性しなくなる。このため、顔料層での凝集ムラの抑制効果が弱くなり、保存後のインクで記録する画像の光沢性が不十分となる。
グリフィン法によるHLB値は、下記式より算出することができる。グリフィン法によって計算されるHLB値は、化合物の親水性や親油性の程度を表す物性値であり、0.0乃至20.0の値をとる。HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高い。
Figure 2016138228
インク中のポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.4質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。また、顔料(C.I.ピグメントレッド254)及び樹脂粒子の合計の含有量(質量%)は、ポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以上10.00倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.50倍未満であると、ポリエーテル変性シロキサン化合物が相対的に多くなるため、吐出口近傍のインクの粘度上昇が大きくなり、間欠吐出安定性がやや低下する場合がある。一方、上記の質量比率が10.00倍超であると、顔料と樹脂粒子に対するポリエーテル変性シロキサン化合物の量が少ないため、保存後のインクで記録した画像の光沢性がやや低下する場合がある。
(水性媒体)
本発明のインクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する水性インクである。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下、さらには15.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲を外れると、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素やその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<水溶性アクリル樹脂の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコにメチルエチルケトン200.0部を入れ、反応系を窒素に置換して温度80℃に昇温させた。ベンジルアクリレート25.0部、スチレン35.0部、2−エトキシエチルアクリレート5.0部、メチルメタクリレート15.0部、アクリル酸20.0部、及びt−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)2.0部の混合物を2時間かけて滴下した。温度80℃で反応させて、水溶性アクリル樹脂であるアクリル樹脂1を得た。得られたアクリル樹脂1の酸価は156mgKOH/g、重量平均分子量は8,000であった。アクリル樹脂1の酸価は、電位差自動滴定装置を使用し、水酸化カリウム/エタノール滴定液で電位差滴定することにより測定した。また、アクリル樹脂1の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりにより求めた。得られたアクリル樹脂1のすべての酸性基を10.0%水酸化カリウム水溶液で中和した後、イオン交換水を加えて、樹脂(固形分)の含有量が10.0%であるアクリル樹脂1の水溶液を得た。
<顔料分散液の調製>
表1の上段に示す各成分(単位:部)及び0.3mmのジルコニアビーズ85部をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、水冷しながら表1に示す時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。次いで、ポアサイズの3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1〜8を調製した。表1の下段には、顔料の含有量(%)、アクリル樹脂の含有量(%)、及び顔料の体積平均粒子径(nm)を示す。
Figure 2016138228
<水溶性ウレタン樹脂の合成>
(ウレタン樹脂1〜10)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、表2に示す使用量のポリオール、イソホロンジイソシアネート44.5g、及びジブチル錫ジラウレート0.007gを入れ、窒素雰囲気下、温度100℃で5時間反応させた。温度65℃以下に冷却した後、表2に示す使用量のジメチロールプロピオン酸、及びネオペンチルグリコール3.0g、及びメチルエチルケトン150.0gを添加し、温度80℃で反応させた。その後、温度40℃に冷却し、メタノール20.0gを加えて反応を停止させた。次いで、適量のイオン交換水を添加し、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂を中和するために必要な水酸化カリウム水溶液を添加した。その後、加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、樹脂(固形分)の含有量が10.0%であるウレタン樹脂1〜10の水溶液を得た。ウレタン樹脂の酸価は、電位差自動滴定装置を使用し、水酸化カリウム/エタノール滴定液で電位差滴定することにより測定した。また、ウレタン樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた。なお、重量平均分子量は、温度80℃での反応時間を適宜変化させて調整した。各樹脂の酸価及びポリスチレン換算の重量平均分子量を表2に示す。表2中のモノマーの略記号の意味を以下に示す。なお、略記号に付した数値はポリオールの和平均分子量である。
PPG:ポリプロピレングリコール
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
IPDI:イソホロンジイソシアネート
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
Figure 2016138228
(ウレタン樹脂11)
市販のアクリル−ウレタン−コアシェル型水系エマルジョン(商品名「アクリットWEM−321U」、大成化工製)中の樹脂をウレタン樹脂11とした。ウレタン樹脂11は自己架橋性を有し、最低造膜温度10℃、体積平均粒子径100nm、アクリル/ウレタン比=50/50であり、エマルジョン中の樹脂(固形分)の含有量は38.0%である。
(ウレタン樹脂12)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール39.3g、イソホロンジイソシアネート282.0g、及びジブチル錫ジラウレート0.007gを入れた。窒素雰囲気下、温度100℃で5時間反応させた。温度65℃以下に冷却した後、ジメチロールプロピオン酸13.2g、ネオペンチルグリコール3.0g、メチルエチルケトン150.0gを添加し、温度80℃で反応させた。その後、温度40℃に冷却し、メタノール20.0gを加えて反応を停止させた。次いで、適量のイオン交換水を添加し、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂を中和するために必要な水酸化カリウム水溶液を添加した。その後、加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、樹脂(固形分)の含有量が10.0%であるウレタン樹脂12の水溶液を得た。ウレタン樹脂12の酸価は55mgKOH/g、重量平均分子量は33,000であった。
<樹脂粒子の調製>
以下に示す手順にしたがって樹脂粒子を調製した。なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、樹脂(固形分)の含有量が0.4%になるように純水で希釈して調製した水分散液を測定用試料とし、粒度分布測定装置(商品名「UPA−EX150」、日機装製)を使用して以下に示す測定条件にしたがって測定した。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
屈折率:1.5
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにエチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を入れて窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。2−エチルヘキシルアクリレート38.0部、メチルメタクリレート34.0部、及びアクリル酸28.0部の混合物と、t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.3部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、減圧下でエチレングリコールモノブチルエーテルを除去して固形の樹脂(シェルポリマー)を得た。得られたシェルポリマーに酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加え、80℃で中和溶解して、固形分(シェルポリマー)の含有量が30%であるシェルポリマーの水溶液を得た。シェルポリマーの酸価は216mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、表3に示す量(部)のシェルポリマーの水溶液を入れて窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。表3に示す量(部)のスチレンとメチルメタクリレートと2−エチルへキシルアクリレートの4:1(質量比)の混合物及び水を添加した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部を水16.7部に溶解した液体を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、適量のイオン交換水を添加して固形分を調整した。これにより、樹脂(固形分)の含有量が10.0%である、コアシェル構造を有する樹脂粒子1〜9を含む水分散液を得た。得られた水分散液中の樹脂粒子の体積平均粒子径を表3に示す。
Figure 2016138228
<ポリエーテル変性シロキサン化合物の合成>
(化合物1〜10)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器に下記式(A)で表されるポリシロキサン化合物及び下記式(B)で表されるポリオキシアルキレン化合物を入れた。白金触媒の存在下で付加反応させて、一般式(1)で表される化合物(側鎖型のポリエーテル変性シロキサン化合物)を合成した。合成した各化合物の特性を表4に示す。なお、下記式(A)及び(B)中のm、n、R1、R2、a、及びbは、合成した各化合物の構造を表す一般式(1)中のm、n、R1、R2、a、及びbにそれぞれ対応する。
Figure 2016138228
Figure 2016138228
(化合物11)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器に下記式(C)で表されるポリシロキサン化合物(p=4)及び下記式(D)で表されるポリオキシエチレン化合物(R3はH、R4はCH2=CH−CH2−、c=75、d=0)を入れた。白金触媒の存在下で付加反応させて、化合物11(両末端型のポリエーテル変性シロキサン化合物)を合成した。得られた化合物11の重量平均分子量は8,020、HLB(理論値)は16.5であった。
Figure 2016138228
(化合物12)
温度計及び撹拌手段を備えたガラス製の容器に下記式(E)で表されるポリシロキサン化合物(q=4)及び下記式(F)で表されるポリオキシエチレン化合物(R5はH、R6はCH2=CH−CH2−、e=20、f=6)を入れた。白金触媒の存在下で付加反応させて、化合物12(片末端型のポリエーテル変性シロキサン化合物)を合成した。得られた化合物12の重量平均分子量は8,000、HLB(理論値)は16.0であった。
Figure 2016138228
<インクの調製>
表5−1〜5−5の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが0.8μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。表5−1〜5−5の下段にはインクの特性を示した(ポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量を「Si化合物の含有量」と表記した)。また、表5−1〜5−5中の「NIKKOL BO50」、「メガファックF−444」、及び「アセチレノールE100」の詳細を以下に示す。
・アセチレノールE100:アセチレングリコール系界面活性剤(川研ファインケミカル製)
・NIKKOL BO50:ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(日光ケミカルズ製)
・メガファックF−444:フッ素系界面活性剤(DIC製)
Figure 2016138228
Figure 2016138228
Figure 2016138228
Figure 2016138228
Figure 2016138228
<評価>
熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro 9500MarkII」、キヤノン製)を使用して以下に示す評価を行った。上記のインクジェット記録装置では、解像度が600dpi×600dpiで、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.5ngのインク滴を8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表6に示す。
(光沢性)
調製したインク30.0gをそれぞれ密閉容器に入れ、温度70℃で7日間保存した後、常温に戻して「保存インク」を用意した。調製した実施例、参考例及び比較例の各インクと、これらのインクに対応する保存インクとをそれぞれインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ(プラチナグレード)」、キヤノン製)に、記録デューティが30%、60%、90%、120%である、5cm×5cmの4種のベタ画像を含むパターンを記録して記録物を得た。得られた記録物を室温で1日放置して乾燥させた。マイクロヘイズメーター(BYKガードナー製)を使用して得られた記録物の4種のベタ画像の20°グロスの値を測定し、それらの平均値を求めた。そして、下記式より「光沢性変化」の値を算出し、以下に示す評価基準にしたがって画像の光沢性を評価した。
光沢性変化=(保存していないインクで記録したベタ画像の20°グロスの平均値)−(保存インクで記録したベタ画像の20°グロスの平均値)
A:光沢性変化の値が10未満であった。
B:光沢性変化の値が10以上15未満であった。
C:光沢性変化の値が15以上であった。
(写像性)
調製した実施例及び比較例の各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ(プラチナグレード)」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、5cm×5cmのベタ画像を記録して記録物を得た。得られた記録物を室温で1日放置して乾燥させた。得られた記録物のベタ画像について、10cm間隔で配置した2本の蛍光灯を観察光源として使用し、2m離れた位置から画像に対して蛍光灯を投影した。画像に投影された蛍光灯の形状を、照明角度45度、観察角度45度の条件下、目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の写像性を評価した。
A:投影された2本の蛍光灯の境目がわかり、エッジ部分にぼやけが認められなかった。
B:投影された2本の蛍光灯の境目及びエッジ部分はわかったが、エッジ部分はぼやけていた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
(間欠吐出安定性)
調製した実施例及び比較例の各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録ヘッドの回復動作を行った後、1.5秒間インクを吐出しない時間を置き、その後、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」、キヤノン製)に、記録デューティが100%であるベタ画像を記録して記録物を得た。得られた記録物のベタ画像の書き出し部分における画像のかすれの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって間欠吐出安定性を評価した。
A:画像のかすれが生じていなかった。
C:画像のかすれが生じていた。
Figure 2016138228

Claims (7)

  1. 顔料、水溶性ウレタン樹脂、樹脂粒子、及びポリエーテル変性シロキサン化合物を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記顔料が、C.I.ピグメントレッド254であり、
    前記水溶性ウレタン樹脂の、重量平均分子量が5,000以上20,000以下であるとともに、酸価が50mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、
    前記樹脂粒子の体積平均粒子径が、10nm以上50nm以下であり、
    前記ポリエーテル変性シロキサン化合物が側鎖型であるとともに、重量平均分子量が5,000以上10,000以下であり、かつ、HLB値が12.0以上18.0以下であり、
    前記樹脂粒子の体積平均粒子径(nm)が、前記顔料の体積平均粒子径(nm)に対する比率で、0.05倍以上0.60倍以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上0.50倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記樹脂粒子の酸価が、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記顔料及び前記樹脂粒子の合計の含有量(質量%)が、前記ポリエーテル変性シロキサン化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以上10.00倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. 前記ポリエーテル変性シロキサン化合物が、ポリオキシエチレン変性シロキサン化合物である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  7. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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