JP2016148007A - ディーゼル燃料油組成物 - Google Patents

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Toshiyuki Shimizu
俊行 清水
高橋 大介
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大介 高橋
勉 内山
Tsutomu Uchiyama
勉 内山
野村 守
Mamoru Nomura
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Abstract

【課題】発熱量の向上と、低温における始動性、走行性能等の内燃機関の実用性能の向上とを高いレベルで両立するディーゼル燃料油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係るディーゼル燃料油組成物は、脱ろう軽油、水素化分解軽油、脱硫軽油の少なくとも1つと脱硫灯油とを含む基材を含有し、低温運転性指数P1及びP2がそれぞれ、0<(低温運転性指数P1)<2.2、0<(低温運転性指数P2)<3.2を満たす。
【選択図】なし

Description

本発明は、ディーゼル燃料油組成物に関する。
軽油は、沸点範囲が170〜370℃の炭化水素成分で構成されており、その中には着火性の良いノルマルパラフィン(n−パラフィン)が多く含まれている。そのため、軽油は自己着火燃焼方式を取るディーゼルエンジンの燃料として古くから利用されてきた。一方、このn−パラフィンのうち、重質なものは他の成分に比べ融点が高く溶解度が小さいため、寒冷下、例えば、0〜−20℃の低温では、ワックスとして析出し、低温流動性が低下する。析出したワックスは、配管系統内において固化したり、フィルタを詰まらせたりすることにより、低温における始動性、走行性能等の内燃機関の実用性能の低下を引き起こすことがあった。
そこで、脱硫灯油、水素化分解軽油、流動性向上剤等を混合して用いることにより、低温におけるワックスの析出を防止する試みが為されてきた(特許文献1参照)。
従来、脱ろう軽油、水素化分解軽油、灯油等の混合量は、低温における軽油の性状と相関のある「曇り点(ワックスが析出する温度)」に基づいて調整することも一手法として行われてきた。
特開2014−208752号公報
脱ろう軽油及び水素化分解軽油は、いずれも、低温において析出する可能性があるワックス分を含有する。また、灯油の添加は、軽油の発熱量を低下させるという問題もあった。
このように、軽油の発熱量を維持或いは向上することと、低温におけるワックスの析出を抑制することの間には、二律背反の関係がある。そのうえ、脱ろう軽油、水素化分解軽油、灯油等の各基材の混合量を決定するための一指標として用いることのできる曇り点の測定精度は、低い。また、ワックスの生成の指標として、重質ノルマルパラフィンの含有量があるが、低温での走行性との相関性が乏しい。
このため、曇り点や重質ノルマルパラフィンの含有量を用いたとしても、軽油の発熱量の維持或いは向上と、低温におけるワックス析出の抑制とを両立できるような各基材の組み合わせと混合量を調整することは、依然として困難性が高かった。
そこで、本発明は、発熱量の向上と、低温における始動性、走行性能等の内燃機関の実用性能の向上とを高いレベルで両立できるディーゼル燃料油組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、ディーゼル燃料油組成物の低温運転性指数Pを特定の範囲に設定することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
[1]脱ろう軽油、水素化分解軽油、脱硫軽油の少なくとも1つと脱硫灯油とを含む基材を含有し、低温運転性指数P1及びP2がそれぞれ、0<(低温運転性指数P1)<2.2、0<(低温運転性指数P2)<3.2を満たすディーゼル燃料油組成物。
[2]前記基材が水素化分解軽油を含む[1]に記載のディーゼル燃料油組成物。
[3]前記ディーゼル燃料油組成物全容量に対して、前記脱ろう軽油が、30容量%以上90容量%以下含まれ、前記脱硫灯油が、2容量%以上28容量%以下含まれ、前記水素化分解軽油が、2容量%以上35容量%以下含まれる[1]又は[2]に記載のディーゼル燃料油組成物。
[4]前記ディーゼル燃料油組成物中に含まれる炭素数20以上のn−パラフィンの割合が2容量%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のディーゼル燃料油組成物。
[5]以下の性状を有する[1]〜[4]のいずれかに記載のディーゼル燃料油組成物。
30℃における動粘度が1.8mm/s以上4.5mm/s以下であり、セタン価が45以上65以下であり、セタン指数が45以上65以下であり、90%留出温度が290℃以上360℃以下である。
本発明に係るディーゼル燃料油組成物によれば、発熱量の向上と、低温における始動性及び走行性能などの内燃機関の実用性能の向上とを高いレベルで両立できる。
[ディーゼル燃料油組成物]
本発明の実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、脱ろう軽油、水素化分解軽油、脱硫軽油の少なくとも1つと脱硫灯油とを含む基材を含有し、低温運転性指数P1及びP2がそれぞれ、0<(低温運転性指数P1)<2.2、0<(低温運転性指数P2)<3.2を満たす。
ここで、低温運転性指数P1及びP2とは、炭素数に分布のあるn−パラフィン成分を、溶解度の観点から炭素数20のn−パラフィンの量に近似し、特定の温度条件下でのワックス量の傾向を把握するファクターである。
低温運転性指数P1及びP2の値が低ければ、ワックスの析出量が少ない傾向となるため、低温運転性指数P1及びP2の値が低いほど、低温性能に優れた軽油となる。なお、その算出方法は、後述する。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、低温運転性指数P1及びP2から、ワックスが析出する傾向を見積もることができる。そして、低温運転性指数P1及びP2がそれぞれ、0<P1<2.2、0<P2<3.2を満たすことにより、−30℃以上0℃以下の範囲において、ワックスが析出しない条件を見積もることができる。
また、低温運転性指数が上記範囲に設定されたディーゼル燃料油組成物は、高い発熱量が得られ、低温における始動性、走行性能などの内燃機関の実用性能を向上させることができる。
[ディーゼル燃料油組成物の性状]
本発明に係るディーゼル燃料油組成物は、以下の性状を有する。すなわち、本発明に係るディーゼル燃料油組成物の15℃における密度は、0.80g/cm以上0.85g/cm以下であることが好ましい。この範囲であると、燃費を良好に保つことができ、燃焼性を良好にし、排気ガス中の全炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)及び粒子状物質(PM)の発生を抑制することができるとともに、エンジンの出力低下を生じさせることもない。この点から、15℃における密度は、0.81g/cm以上0.84g/cm以下であることがより好ましい。
なお、この密度は、JIS K 2249の「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に従って測定される値である。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物の30℃における動粘度が1.8mm/s以上4.5mm/s以下であることが好ましい。動粘度が上記範囲であれば、潤滑性維持と適正噴霧の確保の点で好ましく、加速性や始動性などの実用性能に優れる。この点から、上記動粘度は、2.0mm/s以上4.3mm/s以下であることがより好ましく、2.5mm/s以上4.0mm/s以下であることが更に好ましい。
なお、上記30℃における動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品−同粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に従って測定した値である。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物の硫黄含有量は、10質量ppm以下であることが好ましい。硫黄分含有量が10質量ppm以下であると、排気ガス中のSOx、及びNOx濃度を減少させることができ、環境性能に優れ、さらには排気ガス浄化触媒への負担を小さくすることによって、該触媒の寿命を延長させることができる。また、排気ガス中の粒子状物質(PM)に含まれる硫酸塩の含有量を減少させることができる。このような観点から、ディーゼル燃料油組成物中の硫黄分含有量は、9質量ppm以下であることがより好ましく、8質量ppm以下であることが更に好ましい。
なお、硫黄分含有量は、JIS K 2541−2の「原油及び石油製品−硫黄分試験方法−微量電量滴定式酸化法」に従って測定した値である。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物のセタン価は、45以上65以下であることが好ましい。セタン価がこの範囲であることにより、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。この点から、セタン価は48以上60以下であることがより好ましい。
なお、セタン価は、JIS K2280の「オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」によって測定され算出される値である。
本発明に係るディーゼル燃料油組成物のセタン指数は、45以上65以下であることが好ましい。セタン指数が上記範囲内であれば、ディーゼル燃料に使用した場合、異常燃焼によるディーゼルノックを生じることなく、排気ガス中のNOxやPMの増大を抑制することができ、環境性能に優れる。また、このようなセタン指数を有することにより、低温時における始動性などの実用性能が良好である。この点から、上記セタン指数は、48以上であることがより好ましい。
なお、セタン指数は、JIS K2280の「オクタン価及びセタン価試験方法ならびにセタン指数算出方法」によって測定され算出される値である。
本発明に係るディーゼル燃料油組成物の好ましい蒸留性状は、以下のとおりである。
50%留出温度(T50):230℃以上320℃以下
90%留出温度(T90):290℃以上360℃以下
蒸留性状が、各々上記値を有することにより、それぞれ高粘度の軽油が内燃機関内部で良好な噴霧を形成でき、燃焼状態を良好に保つ効果を奏する。この点から、上記蒸留性状としては、T50が250℃以上310℃以下、T90が310℃以上350℃以下であることがより好ましい。
なお、上記T50及びT90は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に基づいて測定した蒸留性状から求められる値である。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は更に、下記の性状を有することが好ましい。すなわち、曇り点(CP)(JIS K 2269に準拠して測定)は、低温流動性の確保の観点から、好ましくは−5℃以下、より好ましくは、−9℃以下である。
本発明に係るディーゼル燃料油組成物は、上述の性状を有することにより、発熱量が向上し、低温における始動性、及び走行性能等の内燃機関の実用性能の向上を高いレベルで両立することができる。
[基材]
<脱ろう軽油>
脱ろう軽油(以下、DWGOと記すことがある)とは通常の軽油基材からワックス分を減少させたものであり、具体的には、炭素数20以上のノルマルパラフィン(n−パラフィン)成分を、脱ろう軽油全量に対して3質量%以下としたものが好ましく、さらには2質量%以下、特には1.5質量%以下であることが好ましい。炭素数20以上のノルマルパラフィン成分が上記範囲を超えると、製品軽油の低温流動性が不十分となり、曇り点や流動点が十分低下しない場合がある。また、曇り点は−25℃以上−5℃以下の範囲であることが好ましい。脱ろう処理の方法としては、特に限定されず、例えば、ゼオライト系等の脱ろう触媒を用い、310℃以上380℃以下の範囲で30kg/cmG以上70kg/cmG以下の圧力下、1.0hr−1以上2.0hr−1以下の液空間速度(LHSV)で行うことができる。
脱ろう軽油は、さらに、脱硫処理されていることが好ましく、その硫黄含有量は10質量ppm以下であることが好ましい。脱硫方法としては、通常の脱硫処理によることができ、例えば、Co−Mo/アルミナ触媒、Ni−Mo/アルミナ触媒等の脱硫触媒の存在下、30kg/cmG以上100kg/cmG以下の圧力下、好ましくは50kg/cmG以上70kg/cmG以下の圧力下、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上360℃以下の温度で、液空間速度(LHSV)0.5h−1以上5h−1以下、好ましくは1h−1以上2h−1以下の条件で深度脱硫反応を行うことでなされる。
脱ろう軽油の15℃における密度は、0.820g/cm以上0.860g/cm以下の範囲であることが好ましく、さらには0.830g/cm以上0.850g/cm以下の範囲であることが好ましい。この範囲であると製品軽油の密度の低下が抑制され、排気ガス中の粒子状物質(PM)が低減するなど、排気性状が良好となる。次に30℃における動粘度は2.0mm/s以上6.0mm/s以下の範囲であることが好ましく、またセタン指数が50以上70以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、低温流動性を向上させ、発熱量を高くさせ、内燃機関の実用性能を向上させる観点から、ディーゼル燃料油組成物全容量に対して、脱ろう軽油が30容量%以上90容量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは35容量%以上85容量%以下であり、更に好ましくは40容量%以上80容量%以下である。
<脱硫灯油>
脱硫灯油(以下、DKと記すことがある)は、常圧蒸留装置から留出する直留灯油留分を脱硫触媒にて脱硫した留分をいい、硫黄含有量は10質量ppm以下であることが好ましい。脱硫は通常行われる方法で行うことができ、例えば固定床流通反応装置を用いて、Co−Mo/アルミナ触媒、Ni−Mo/アルミナ触媒等の脱硫触媒の存在下、30kg/cmG以上100kg/cmG以下の圧力下、好ましくは50kg/cmG以上70kg/cmG以下の圧力下、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上360℃以下の温度で、液空間速度(LHSV)0.5h−1以上5h−1以下、好ましくは1h−1以上2h−1以下の条件で深度脱硫反応を行い、その後ストリッパーで硫化水素とナフサ留分を除去して、脱硫灯油を得るものである。
また、脱硫灯油の15℃における密度は、0.780g/cm以上0.810g/cm以下の範囲であることが好ましく、さらには、0.790g/cm以上0.800g/cm以下の範囲であることが好ましい。この範囲であると出力及び燃費の悪化を抑制することができるという利点がある。
さらに、脱硫灯油の30℃における動粘度は、1.10mm/s以上1.55mm/s以下の範囲であることが好ましい。また、セタン指数は40以上60以下の範囲であることが好ましく、さらには43以上60以下の範囲であることが好ましい。この範囲であると着火性が良好となる。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物では、低温流動性維持の観点から、必要量の脱硫灯油を含有する一方、発熱量を高く保つ為には脱硫灯油が少ない方がよい。このため、脱硫灯油は、本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物全容量に対して、脱硫灯油が2容量%以上60容量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは、2容量%以上35容量%以下であり、更に好ましくは2容量%以上28容量%以下であり、最も好ましくは7容量%以上28容量%以下である。
<水素化分解軽油>
水素化分解軽油(以下、HCGOと記すことがある)は、重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)或いはこれらの混合油を触媒の存在下で水素化分解し、当該分解生成油を蒸留分離して得られたものである。
従来、軽油基材として用いられている水素化分解軽油は、硫黄含有量が0.0001質量%以上0.2質量%以下のものが一般的であったが、本実施形態では、水素化分解軽油の硫黄含有量が10質量ppm以下のものを使用することが好適である。水素化分解軽油の硫黄含有量を10質量ppm以下とすることによって、環境負荷の小さい軽油が製造できる。以上の観点から、水素化分解軽油の硫黄含有量は、好ましくは7質量ppm以下、さらには5質量ppm以下であることが特に好ましい。
次に、本実施形態において、水素化分解軽油の15℃における密度は、0.800g/cm以上0.850g/cm以下の範囲であることが好ましい。密度が上記範囲内であれば燃費が良好であり、排気ガス性状が優れる。以上の観点から、HCGOの密度は0.815g/cm以上0.840g/cm以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態において、水素化分解軽油は、その芳香族分含有量が5.0容量%以上19.5容量%以下であることが好ましい。芳香族分含有量が上記範囲内であれば、製品軽油中の芳香族分が少なくなり、排気ガス中の粒子状物質(PM)が抑制される。以上の観点から、水素化分解軽油の芳香族分含有量は、6.0容量%以上17.0容量%以下の範囲であることが好ましく、7.0容量%以上15.0容量%以下の範囲であることが更に好ましい。
また、芳香族化合物には一環芳香族化合物と二環以上の多環芳香族化合物があるが、本実施形態に係る水素化分解軽油では、一環芳香族化合物の含有量が5.0容量%以上17.0容量%以下の範囲であることが好ましく、さらには6.0容量%以上15.0容量%以下の範囲であることが好ましい。一環芳香族化合物がこの範囲であるとポンプ等に使用されるゴムの収縮がなく、また排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減できる。一方、二環芳香族化合物の含有量は4.0容量%以下であることが好ましく、さらには3.0容量%以下であることが好ましい。二芳香族化合物の含有量がこの範囲であると排気ガス中のPMを低減できる。さらに、三環以上の芳香族化合物の含有量は0.8容量%以下であることが好ましく、さらには0.6容量%以下であることが好ましい。三環以上の芳香族化合物の含有量がこの範囲であると排気ガス中のPMを低減できる。
さらに、本実施形態において、水素化分解軽油のセタン指数は、55以上80以下の範囲であることが好ましく、さらには57以上78以下の範囲であることが好ましい。この範囲であると燃焼性が良く、排気ガス性状が良好となる。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、動粘度を高くし、適度に密度を抑える観点から、ディーゼル燃料油組成物全容量に対して、水素化分解軽油が2容量%以上50容量%以下含まれることが好ましく、2容量%以上35容量%以下含有することがより好ましく、9容量%以上35容量%以下含有することが更に好ましい。
<脱硫軽油>
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、軽油基材として、脱硫軽油(以下、DGOと記すことがある)が含まれていてもよい。本実施形態では、脱硫軽油の硫黄含有量が10質量ppm以下のものを使用することが好適である。脱硫軽油の硫黄含有量を10質量ppm以下とすることによって、環境負荷の小さい軽油が製造できる。
次に、本実施形態において、脱硫軽油の15℃における密度は、0.810g/cm以上0.850g/cm以下の範囲であることが好ましい。密度が上記範囲内であれば燃費が良好であり、排気ガス性状が優れる。以上の観点から、脱硫軽油の密度は0.820g/cm以上0.840g/cm以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態において、脱硫軽油は、その芳香族分含有量が10容量%以上28容量%以下であることが好ましい。芳香族分含有量が上記範囲内であれば、製品軽油中の芳香族分が少なくなり、排気ガス中の粒子状物質(PM)が抑制される。以上の観点から、脱硫軽油の芳香族分含有量は、12容量%以上26容量%以下の範囲であることが好ましく、13容量%以上25容量%以下の範囲であることが更に好ましい。
また、芳香族化合物には一環芳香族化合物と二環以上の多環芳香族化合物があるが、本実施形態に係る脱硫軽油では、一環芳香族化合物の含有量が7容量%以上28容量%以下の範囲であることが好ましく、さらには9容量%以上25容量%以下の範囲であることが好ましい。一環芳香族化合物がこの範囲であるとポンプ等に使用されるゴムの収縮がなく、また排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減できる。一方、二環芳香族化合物の含有量は3容量%以下であることが好ましく、さらには2.8容量%以下であることが好ましい。二芳香族化合物の含有量がこの範囲であると排気ガス中のPMを低減できる。さらに、三環以上の芳香族化合物の含有量は2容量%以下であることが好ましく、さらには1容量%以下であることが好ましい。三環以上の芳香族化合物の含有量がこの範囲であると排気ガス中のPMを低減できる。
さらに、本実施形態において、脱硫軽油のセタン指数は、50以上75以下の範囲であることが好ましく、さらには55以上70以下の範囲であることが好ましい。この範囲であると燃焼性が良く、排気ガス性状が良好となる。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、動粘度を高くし、適度に密度を抑える観点から、ディーゼル燃料油組成物全容量に対して、脱硫軽油が6容量%以上70容量%以下含まれることが好ましく、30容量%以上66容量%以下含まれることがより好ましく、40容量%以上60容量%以下含まれることが更に好ましい。
<その他の成分>
本発明のディーゼル燃料油組成物には、必要に応じて、その他の軽油基材、あるいは各種の添加剤を適宜配合することができる。
その他の軽油基材としては、例えば、直留軽油(LGO)、水素化分解灯油(HCK)、脱硫重質ナフサ(DHN)、軽質潤滑油留分(LL:軽油に近い留分を水添仕上げして得られた留分)、接触分解軽油(LCO)、軽質接触分解軽油(LLCO)、熱分解軽油(CGO)、脱ろう脱硫軽油(DWDGO)、直接脱硫軽油(DSGO)、間接脱硫軽質軽油(VH−LGO)、高沸点重質ナフサ(HHN)、脂肪酸メチルエステル(FAME)、HBD(水素化バイオ燃料)、GTL(Gas To Liquid)やフィッシャートロプシュプロセス等により製造される軽油基材等が挙げられる。
また、添加剤としては、流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、清浄剤、酸化防止剤、色相改善剤、など公知の燃料添加剤が挙げられる。これらは一種または数種組み合わせて添加することができる。
<ディーゼル燃料油組成物に含まれるn−パラフィン>
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物は、ディーゼル燃料油組成物中に含まれる炭素数20以上のn−パラフィンの割合が2質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るディーゼル燃料油組成物に含まれるn−パラフィンは、水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフィー(以下、GC−FIDと記すことがある)を用いて、定量することができる。
GC−FIDによって得られた軽油基材のクロマトグラムから、任意の波形処理パラメータを用いて、各n−パラフィンのピークにベースラインを引き、全面積値に対する各n−パラフィンのピーク面積の面積%により、各n−パラフィン濃度を定量することができる。
GC装置及び分析条件は、下記のものとすることができる。
分析装置:Agilent Technologies GC6890
カラム:メチルシリコン系ヒューズドシリカキャピラリー
注入口:スプリットレス
注入口温度:340℃
注入量:0.1μL
検出器:水素イオン化炎検出器(FID)
検出器温度:340℃
キャリーガス:ヘリウム 20mL/min
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例のディーゼル燃料油組成物を下記の方法により評価した。
[評価方法]
<炭素数C20以上のn−パラフィンの算出方法>
GC−FIDを用い、規定の測定条件及び波形処理パラメータにより、副標試料の測定を行い、n−パラフィン炭素数14〜27までの合計値が基準値に入ることを確認した上で、評価燃料(各ディーゼル燃料油組成物)を同装置に導入し、炭素数毎にn−パラフィンの濃度を算出した。C20+n−Pは、上述のように定量されたn−パラフィンのうち、炭素数20以上の含量を足し合わせたものである。
<目詰まり点>
目詰まり点(Cold Filter Plugging Point:CFPP)は、JIS K 2288に準拠して測定した。
<流動点>
流動点(Pour Point:PP)は、JIS K 2269に準拠して測定した。
<曇り点>
曇り点(Cloud Point:CP)は、JIS K 2269に準拠して測定した。
<引火点>
引火点は、JIS K 2265−3に準拠して測定した。
<低温運転性指数(P1,P2)>
低温運転性指数Pは、炭素数に分布のあるn−パラフィン成分を、炭素数20のn−パラフィンの量に近似することにより、次のように求められる。
P1=(Tc+20)×W ・・・(1)
P2=(Tc+15)×W ・・・(2)
ここで、Tcは次の式(3)及び(4)を満足させる変数である。
Figure 2016148007
Figure 2016148007
ここで、iは炭素数、Tmiは炭素数iのノルマルパラフィンの融点、Rはガス定数、ni0は軽油中の炭素数iのノルマルパラフィンのモル数、nは溶媒のモル数である。
また、ここで、炭素数iのノルマルパラフィンの溶解潜熱ΔHmiと溶媒のモル数は、それぞれ式(5)と式(6)を用いる。
ΔHmi=484.9×炭素数+1737.9 ・・・(5)
=(軽油のモル数)−(全ノルマルパラフィンのモル数) ・・・(6)
また、ここで、軽油の分子量は、式(7)を用いる。
軽油の分子量=0.0019265×(軽油の50%留出温度)−0.29548×(軽油の50%留出温度)+135.619 ・・・(7)
ここで、式(4)には、2つの変数FとTが含まれるため、Tcに任意の定数(例:273)を設定して、式(3)よりFを求める。このFを式(4)に代入し、Tを求める。次に、求めたTを、再度、式(3)に代入してFを算出し、式(4)から再びTを求める。
この繰り返し計算を行い、Tの計算前後の差が0.1以下になったところを、真のF及びTcpと定めた。
また、Wは次の式(8)を用いて求められる。
W=Q/α・・・(8)
ここで、αは5と設定する。Qは式(9)から求められる。
Figure 2016148007

ここで、Miは炭素数iのノルマルパラフィンの分子量で、Msは軽油の分子量である。変数Kは下記の式(10)を満足させる変数である。
Figure 2016148007

したがって、式(10)よりKを求め、このKを用いて式(9)よりQを求め、このQを用いて式(8)よりWが求められる。
以上の方法により求めたTc、W、P1、P2を第2表に記した。
なお、低温運転指数の計算で用いるノルマルパラフィンは、軽油からの測定又は各軽油基材からの測定のどちらでも可能である。
<CH−DY実用性能評価>
環境温度が制御可能なシャシダイナモ上で、下記諸元のディーゼル車両に供試体であるディーゼル燃料油組成物を適用して低温実車試験を実施した。
(供試車両諸元)
エンジンの種類:直列4気筒ディーゼルエンジン
エンジンの排気量:4,777cm3
燃料噴射システム:コモンレール方式
最大積載量:2,000kg
適合規制:新短期排出ガス規制適合
排ガス後処理装置:DPF(Diesel Particulate Filter)
(試験手順)
試験は、公益社団法人石油学会ディーゼル車の燃料供給システム調査専門委員会にて検討の上、提示された“低温シャシによるディーゼル車のフィルタ閉塞性試験マニュアル”に基づいて実施した。性能評価試験の手順は下記のとおりである。
1.車両の燃料系統を評価燃料(各供試体のディーゼル燃料油組成物)にてフラッシングした。
2.フラッシング燃料の抜き出し後、燃料フィルタ(メインフィルタ)を新品に交換した。
3.燃料タンクに評価燃料を規定量(36L)の充填した。
4.環境温度を室温から−10℃まで急冷し、−10℃で1時間保持した。
5.環境温度を2℃/hの冷却速度にて−30℃まで徐冷し、−30℃にて1時間保持した。
6.運転性評価を開始した(運転性評価の詳細は以下に示す)。
(運転性評価)
運転性評価は、低温始動性と低温走行性の2つの観点にて実施した。
・低温始動性試験
1.アクセル全開でクランキングを10秒間行った。
2.工程1でエンジンがかからない場合、30秒後に再度クランキングした。
3.エンジン始動後、アイドリングを5分間実施した。
上記工程1〜3にて、問題無く始動した場合は、始動性PASSとした。工程1〜2においてクランキングを5回繰り返してもエンジンが始動しない場合、あるいは工程3においてアイドリング中にエンジンストールした場合には、始動性FAILとした。なお、始動性がPASSの結果になった場合においても、各評価燃料間の有意差を見出す為、始動に要したクランキング回数を記録した。
・低温走行性試験
4.工程3の5分間のアイドリング後、50km/hまで速やかに加速した。
5.50km/hの一定速度にて、最高ギアを使用して1時間を目安に定速走行を実施した。
上記工程5にて、1時間に亘って50km/hの定速走行が維持できた場合には、走行性PASSとした。1時間に亘る50km/hの定速走行が維持できなかった場合、あるいはエンジンストールが生じた場合には、走行性FAILとした。
<発熱量>
発熱量はJIS K 2279に準拠して測定または計算した。発熱量が37500J/ml以上である場合は、発熱量が優れた軽油であると判断した。
なお、発熱量評価として、37500J/ml未満をC、37500J/ml以上38100J/ml未満をB、38100J/ml以上をAとした。
[ディーゼル燃料油組成物の調製]
第1表に示す基材を用いて、第2表に記載の配合組成で混合して実施例1〜4のディーゼル燃料油組成物、及び比較例1,2のディーゼル燃料油組成物を製造した。
Figure 2016148007
[評価結果]
実施例1〜4、比較例1〜3のディーゼル燃料油組成物の特性を上述した評価方法により評価した。結果を第2表に示す。
Figure 2016148007
比較例3のディーゼル燃料油組成物の曇り点は、実施例4のディーゼル燃料油組成物の曇り点と同じであるが、比較例3では、低温走行性が規定に満たなかった。
実施例3のディーゼル燃料油組成物のC20以上のノルマルパラフィン分は、比較例2のディーゼル燃料油組成物のC20以上のノルマルパラフィン分より多いが、比較例2では低温走行性が満足できなかった。また、実施例3のディーゼル燃料油組成物のC20以上のノルマルパラフィン分は、比較例1のディーゼル燃料油組成物のC20以上のノルマルパラフィン分より多いが、実施例2は、比較例1よりも脱硫灯油の混合量を低減できた。そのため、高い発熱量が得られた。
すなわち、本発明によれば、低温における始動性、走行性能等の内燃機関の実用性能の向上と、発熱量の向上とを高いレベルで実現できる。

Claims (5)

  1. 脱ろう軽油、水素化分解軽油、脱硫軽油の少なくとも1つと脱硫灯油とを含む基材を含有し、低温運転性指数P1及びP2がそれぞれ、0<(低温運転性指数P1)<2.2、0<(低温運転性指数P2)<3.2を満たすディーゼル燃料油組成物。
  2. 前記基材が水素化分解軽油を含む請求項1に記載のディーゼル燃料油組成物。
  3. 前記ディーゼル燃料油組成物全容量に対して、前記脱ろう軽油が、30容量%以上90容量%以下含まれ、
    前記脱硫灯油が、2容量%以上28容量%以下含まれ、
    前記水素化分解軽油が、2容量%以上35容量%以下含まれる請求項1又は2に記載のディーゼル燃料油組成物。
  4. 前記ディーゼル燃料油組成物中に含まれる炭素数20以上のn−パラフィンの割合が2容量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のディーゼル燃料油組成物。
  5. 以下の性状を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のディーゼル燃料油組成物。
    30℃における動粘度が1.8mm/s以上4.5mm/s以下であり、
    セタン価が45以上65以下であり、
    セタン指数が45以上65以下であり、
    90%留出温度が290℃以上360℃以下である。
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