JP2016148064A - 銀の析出抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銀を含有する塩化金酸溶液に還元剤を添加した際に、銀の析出を簡便に抑制する技術を提供すること。
【解決手段】本発明の銀の析出抑制方法は、銀を含有する塩化金酸溶液に還元剤、及び水溶性塩化物を添加して銀の析出を抑制することに要旨を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は銀の析出抑制方法に関し、詳細には銀を含む塩化金酸溶液に還元剤を添加した際に問題となる銀の析出を抑制する方法に関するものである。
金はターミナル端子やコネクタなどの電子部品、電子機器の集積回路基板における配線材料や電極材料として多用されている。金は高価かつ希少であるため、これら電子機器等の廃棄物から効率的、かつ再利用できるように高純度で回収することが望まれている。廃棄物から金を回収する方法として、廃棄物中の金を溶解させた塩化金酸溶液に還元剤を添加して金を還元、析出させて回収する技術が提案されている。
塩化金酸溶液は電子部品、配線材料、電極材料など様々な材料を原料としているため、銀、白金、パラジウムなどの貴金属や、コバルト、銅、鉄、ニッケル、鉛、錫などの重金属など金以外の金属(以下、「不純物金属」ということがある)が含まれている。そのため、金の純度を高めるためには、不純物金属の混入量を抑える必要がある。しかしながら還元剤を添加する上記方法では、金の還元に伴って塩化金酸溶液中の不純物金属も還元されてしまい、金の純度が低下するという問題があった。特に金と共に銀も析出しやすいことから、金の純度を高めるために銀の析出を抑制する技術が求められていた。
そこで、例えば特許文献1には塩化金酸溶液を精密ろ過後、金の還元反応を80〜95%の時点で中止することを特徴とする高純度金の製造方法が開示されている。この技術では還元剤を添加する前の塩化金酸溶液に臭化カリウムやヨウ化カリウムを添加して銀を沈殿除去(脱銀処理)した後、精密ろ過して塩化金酸溶液中の銀濃度を低下させている。この技術では予め銀濃度を低減させた塩化金酸溶液に還元剤を添加することで、金の還元、析出に伴う銀の析出を抑制している。
特開平6−57348号公報
銀の析出について上記特許文献1では、Pt、Pdは金の還元析出が終了する電位付近で析出するのに対し、Agは金の還元初期より析出しているため、還元処理時に銀の析出を抑制することが難しいことが指摘されている。そのため特許文献1では、還元処理前に予め塩化金酸溶液から銀を除去しているが、銀除去工程が増えるため処理時間、コスト共に増大するという問題があった。また、銀の除去効率を向上させるために塩化金酸溶液を希釈すると廃液量が増大し、廃液処理コストが増大するという問題があった。金の製造コスト、及び製造効率を考慮すると、銀の析出はできるだけ簡便に抑えることが求められている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、銀を含有する塩化金酸溶液に還元剤を添加した際に、銀の析出を簡便に抑制する技術を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の銀の析出抑制方法は、銀を含有する塩化金酸溶液に還元剤を添加する際に、水溶性塩化物を添加して銀の析出を抑制することに要旨を有する。
前記塩化金酸溶液中に銀錯イオンが存在するように前記水溶性塩化物を前記塩化金酸溶液に添加することも好ましい実施態様である。
更に前記還元剤と前記水溶性塩化物とを混合してなる還元剤含有液を前記塩化金酸溶液に添加することも好ましい実施態様である。
また前記還元剤含有液の塩素濃度は、下記式(1)を満足することも好ましい実施態様である。
銀濃度≦{5(塩素濃度)3+3(塩素濃度)2+3(塩素濃度)}/100・・・(1)
(式中、銀濃度(mmol/L)は塩化金酸溶液の銀濃度、塩素濃度(mol/L)は還元剤含有液の塩素濃度である)
本発明によれば、銀を含む塩化金酸溶液に還元剤を添加する際に、水溶性塩化物を添加するという簡便な方法によって銀の析出を抑制できる。そのため、塩化金酸溶液中の金の還元に伴って析出する銀の混入が抑制され、回収した還元金に含まれる銀の混入量を低減できる。
図1は塩化金酸溶液における塩素濃度と銀の溶解度の関係を示すグラフである。
一般に溶液中の銀イオンは塩化物イオンと反応し、塩化銀として析出することが知られている。したがって銀を含む塩化金酸溶液に還元剤を添加して金を製造する場合も、銀の析出を抑制するために塩化物イオン等の塩素源は使用しない方がよいと考えられていた。ところが本発明者らが塩化金酸溶液の銀の析出挙動について検討した結果、銀の析出抑制にはむしろ塩素源を添加することが有効であることがわかった。以下、本発明に至った経緯について説明する。
銀を含む塩化金酸溶液(以下、塩化金酸溶液ということがある)は、電子機器等の廃棄物に金を溶解させる性質を有する塩素含有溶液(以下、「金溶解液」という)を加えて調製されている。例えば代表的な金溶解液である王水(濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合した混合液)の場合、銀は王水には溶解せずに難溶性の塩化銀(AgCl)を形成することが知られているが、微量ではあるが銀の一部は溶解して銀錯イオン([AgCln(n-1)-:nは2〜4の整数)として存在している。
しかし還元剤を塩化金酸溶液に添加すると溶解していた銀錯イオンが分解してAgClとして析出することを見出した。上記銀錯イオンの分解は還元剤添加時に該添加箇所近傍の塩素が希釈され、塩素濃度の低下に起因して銀の析出が生じる。そこで、上記銀錯イオンを安定的に存在させることができる程度の濃度のClを還元剤と共に塩化金酸溶液に添加すれば、銀錯イオンの分解を効果的に防止することができることを突き止め、本発明を完成させた。すなわち、塩化金酸溶液に後記する水溶性塩化物を添加することで、還元剤の添加に伴う局所的な塩素濃度の低下が抑制されて銀の析出を抑制できる。特に水溶性塩化物と還元剤とを混合して得られる還元剤含有液を塩化金酸溶液に添加すると、水溶性塩化物の使用量を抑えつつ、銀の析出抑制効果が得られることがわかった。
塩化金酸溶液中に銀錯イオンが存在するように水溶性塩化物を前記塩化金酸溶液に添加することが好ましい。例えば還元剤添加前の塩化金酸溶液中で銀は溶解しているため、少なくとも還元剤添加前後で塩化金酸溶液の塩素濃度を維持するように塩素濃度を調整すれば銀の析出を抑制できる。しかしながら塩化金酸溶液の塩素濃度は被処理物などにもよって異なるため、塩化金酸溶液の組成によっては、還元剤の添加によって銀が容易に析出してしまうような低い塩素濃度の場合もある。そこで本発明者らは銀の析出をより確実に抑制するために、塩化金酸溶液における塩素濃度と銀の溶解度の関係を実験により求めた。その結果、図1に示すように塩素濃度が高くなるほど、銀溶解度も高くなる傾向を示すことがわかった。したがって塩化金酸溶液の銀濃度に応じて塩素濃度を高くすることによって銀の析出を抑制することができる。
上記知見に基づき、本発明者らは更に塩素濃度と銀濃度が異なる塩化金酸溶液を様々な実験条件下で複数の実験を行って、銀の溶解度と塩素濃度の関係式を求めた。そして銀の溶解限界は本発明者らが実験結果から求めた下記式(1)に近似することを突き止めた。
銀濃度≦{5(塩素濃度)3+3(塩素濃度)2+3(塩素濃度)}/100・・・(1)
(式中、銀濃度(mmol/L)は塩化金酸溶液の銀濃度、塩素濃度(mol/L)は還元剤含有液の塩素濃度である)
そして上記式(1)に基いて塩素濃度をコントロールすることで、より一層確実に銀の析出を抑制できることを見出した。
以下本発明の銀の析出抑制方法について説明する。
本発明において銀を含有する塩化金酸溶液(HAuCl4)とは、少なくとも金イオン、銀イオン、塩化物イオンを含む溶液である。
塩化金酸溶液の製造工程は特に制限されない。例えば樹脂材料、歯科材料、電子部品、配線材料、金属屑、電解スライムなど金、及び銀を含有する各種材料(以下、被処理物という)を金溶解液で溶解して金を浸出させればよい。金溶解液としては金を溶解する性質を有する塩化物イオンを含む溶液であればよく、特に限定されない。金溶解液としては王水や塩酸と過酸化水素水の混酸が例示される。これらのなかでも王水がコストや取扱い性の観点から好ましい。
なお、上記被処理物は必要に応じてボールミル、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー、超音波粉砕器、ハンマーなど公知の粉砕方法で効率的な溶解に適した大きさに粉砕してから金溶解液で溶解させてもよい。
また本発明では、必要に応じて塩化金酸溶液からセラミックスやガラス、プラスチックなどの不溶残渣や不溶性不純物などの不溶成分を除去してもよい。不溶成分の除去方法は特に限定されず、ろ過など公知の選別方法を採用できる。
塩化金酸溶液中の金の含有量は、被処理物によって異なるため特に限定されないが、金の回収効率を考慮すると、金濃度が低すぎると回収効率が悪いため、好ましくは10g/L以上である。金含有量が高い程、経済効率が高いため、上限は特に限定されない。また不純物金属である銀の含有量も、被処理物によって異なるため特に限定されない。例えば銀の含有量は、金回収の経済効率を考慮すると金含有量よりも少ないことが好ましいが、銀含有量が金含有量より多くても、本発明の方法によれば銀の析出を抑制して金との分離が可能である。なお、塩化金酸溶液には通常、銀以外にも白金、パラジウム、銅、鉛、錫、鉄、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、チタンなどの不純物金属が溶解していることもある。これら不純物金属の合計含有量は、被処理物によって異なるため特に限定されず、金含有量よりも多くてもよいが、還元金への不純物混入を抑制する観点からは少ない方が好ましい。
塩化金酸溶液の酸濃度は特に限定されないが、酸濃度を低減させてから還元剤含有液を添加することが望ましい。酸濃度が高すぎると還元剤が酸化されてしまい、金の還元に使われる還元剤の量が減少する。したがって塩化金酸溶液に水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ、水酸化アンモニウムなどを加えて塩化金酸溶液の酸濃度を好ましくは1N(規定度:Normality)以下、より好ましくは0.5N以下、更に好ましくは0.2N以下となるように調整することが望ましい。酸濃度の下限は特に限定されないが、酸濃度が低すぎると金が水酸化物となって沈殿することがある。そのため酸濃度は好ましくはpH7以下、より好ましくはpH4以下である。
還元剤としては特に限定されず、金の還元剤として各種公知の水溶性の還元剤を使用できる。例えばヒドロキノン等の多価フェノール類;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどの水素化ホウ素塩類;亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩;蓚酸ナトリウム、蓚酸カリウムなどの蓚酸塩;ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物;硫酸第一鉄(FeSO4)、硫酸第一鉄アンモニウム(FeSO4(NH42SO4)、塩化第一鉄(FeCl2)等の無機鉄(II)化合物;ギ酸、ホルムアルデヒドなどの各種公知の還元剤を単独、または複数組み合わせて使用できる。還元剤によって不純物の析出抑制効果が異なっているが、本発明によれば還元剤の種類を問わず、銀の析出を抑制できる。例えば亜硫酸塩やヒドラジン化合物のように銀の析出抑制効果が低い還元剤を使用した場合であっても、後記実施例で示すように銀の析出を抑制できる。
なお、上記したように従来は金イオンに塩化物イオンを添加すると、銀の析出が促進されると考えられていたため、銀を含む塩化金酸溶液には塩酸ヒドラジンなどのように水溶性塩化物を含む還元剤は使用されていなかった。しかしながら本発明によれば塩化物イオンを添加すると銀の析出を抑制できるため、公知の水溶性塩化物含有還元剤を使用してもよい。
還元剤の添加量は特に限定されないが、還元剤の添加量が少なすぎると金を十分に還元できず、回収率が低下する。一方、過剰に添加すると不純物金属の析出量が多くなることがある。還元剤の添加量は、塩化金酸溶液中の溶解金量、還元剤の種類に応じて適宜調整すればよく、例えば還元剤は塩化金酸溶液中の溶解金の当量に対して好ましくは1当量以上、より好ましくは1.2当量以上、好ましくは2当量以下、より好ましくは1.5当量以下である。
還元剤は水など公知の溶媒と混合した還元剤含有液、或いは後記する水溶性塩化物、及び必要に応じて更に水などの他の溶媒と混合した還元剤含有液として塩化金酸溶液に添加することが好ましい。還元剤含有液の酸濃度も特に限定されないが、酸濃度が高すぎると金の還元速度が遅くなり、還元効率が低下することがある。好ましくは1N以下、より好ましくは0.5N以下である。一方、酸濃度が低すぎると塩化金酸溶液中の不純物金属が析出して還元金に混入することがあるため、pH4以下とすることが好ましい。還元剤の酸濃度は塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムなど公知の調整剤を添加して適宜調整すればよい。
水溶性塩化物としては水溶性塩化物イオン(Cl)を含んでいればよく、例えば塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化リチウム(LiCl)などのアルカリ金属塩化物、塩酸などが挙げられ、これらは1種、あるいは複数を組み合わせて使用できる。また他の材料と組み合わせて用いることもできる。例えばコストの観点からは塩化ナトリウムが好ましい。なお、塩化物を含んでいても電離してイオン化しない有機塩素化合物は好ましくない。
塩化金酸溶液に還元剤を添加する際の水溶性塩化物の添加方法は特に限定されない。例えば水溶性塩化物は還元剤と混合せずに別々に、或いは還元剤と混合して、塩化金酸溶液に添加してもよい。水溶性塩化物と還元剤を混合せずに別々に塩化金酸溶液に添加する場合の水溶性塩化物の添加タイミングは特に限定されず、還元剤と同時、あるいは非同時に添加することができる。なお、水溶性塩化物よりも還元剤を先に塩化金酸溶液に添加すると、還元剤添加箇所近傍の塩素が消費されて塩素濃度が低下して銀が析出することがあるため、先に水溶性塩化物を塩化金酸溶液に添加してから還元剤を添加することが好ましい。また先に水溶性塩化物を塩化金酸溶液に添加する場合は、塩化金酸溶液の塩素濃度を高めるために必要となる水溶性塩化物量が増大するため、コストの観点からは上記還元剤と水溶性塩化物を混合した液を塩化金酸溶液に添加することが好ましい。還元剤と水溶性塩化物を混合した液を塩化金酸溶液に添加する場合は、還元剤添加近傍の塩素濃度を高めることができるため、使用する水溶性塩化物量を抑えることができる。
なお、塩化金酸溶液中、または還元剤含有液中の塩素濃度は銀が析出しないように調整できればよく、特に限定されない。例えば塩化金酸溶液中に銀錯イオンが存在するように還元剤、及び水溶性塩化物を塩化金酸溶液に添加する場合は、塩化金酸溶液の塩素濃度を上記式(1)(ただし、式中、塩素濃度(mol/L)は塩化金酸溶液の塩素濃度である)に基いて調整することが望ましい。また使用する塩化物量を抑える観点からは還元剤含有液に添加するのが好ましく、還元剤含有液に添加する場合も、還元剤含有液の塩素濃度を上記式(1)に基いて調整することが望ましい。上記式(1)(銀濃度≦[5(塩素濃度)3+3(塩素濃度)2+3(塩素濃度)]/100)に基いて塩化金酸溶液中、または還元剤含有液中の塩素濃度を調整することで銀の析出を抑制しつつ、塩化物の使用量を抑制できる。具体的には、塩素濃度を上記式(1)の右辺(塩素濃度)の値が左辺(銀濃度)の値以上となるように(左辺≦右辺)、塩素濃度を調整することが好ましく、より好ましくは右辺の値が左辺の値よりも大きくなるように塩素濃度を調整することである(左辺<右辺)。上記式(1)の銀濃度は、塩化金酸溶液の銀濃度(mmol/L)を測定し、上記式(1)の塩素濃度は、塩化金酸溶液、または還元剤含有液の塩素濃度(mol/L)である。なお、銀の析出を抑制する観点からは塩素濃度は高くなる程、銀析出抑制効果も高くなるため、塩素濃度は高いほど望ましく、上限は特に限定されないが、効果が飽和しない程度に調整することが好ましい。
上記したように少なくとも還元剤添加前後で塩化金酸溶液の塩素濃度を維持できれば銀の析出を抑制できるため、例えば塩化金酸溶液中の銀濃度の測定が困難な場合などは、還元剤含有液の塩素濃度を塩化金酸溶液の塩素濃度よりも高く調整して、銀の析出を抑制することもできる。
還元剤の添加方法は特に限定されず、通常の添加方法でよい。特に銀を還元する酸化還元電位を持つ還元剤を使用する場合は、還元剤が銀を直接還元しないように添加することが望ましい。例えば塩化金酸溶液中に銀錯イオンが存在するように、還元剤、及び水溶性塩化物を塩化金酸溶液に添加すればよい。具体的には塩化金酸溶液の酸化還元電位を確認したり、還元剤等の添加速度を調整したり、還元剤を希釈して添加すればよい。
還元処理時間は特に限定されず、溶解金が十分に析出するように設定すればよい。例えば好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上である。
なお、塩化金酸溶液の温度は特に限定されず、10℃以上であればよく、好ましくは常温である。また塩化金酸溶液の温度は使用する還元剤に応じて変更してもよい。例えば還元剤として無機鉄(II)化合物を用いる場合、塩化金酸溶液の液温を好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上であって、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下に調整することによって、銀の析出抑制効果が一層向上する効果が得られる。本発明において、塩化金酸溶液の液温とは、還元処理時、すなわち、還元剤投入時から還元反応が終了するまでの間の液温であり、好ましくは還元剤投入前から還元反応が終了するまでの間の液温である。
還元剤を添加すると、溶解金は還元されて析出して沈殿する。沈殿した金は任意の方法で回収して、ろ過、洗浄して還元金が得られる。
本発明によれば、塩化金酸溶液の組成にかかわらず、水溶性塩化物を添加するという簡便な方法で、塩化金酸溶液に含まれている銀の析出を抑えて還元金に混入する銀量を大幅に低減することができ、還元金の純度を向上できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
各実験には表1に示す組成を有する塩化金酸溶液を用いた。なお、塩化金酸溶液の組成のうち、金属元素はICP発光分析装置、ClとNOはイオンクロマトグラフィーを用いて測定した。また析出した金は回収してICP発光分析装置を用いて銀の含有量を測定すると共に(表1)、銀の析出抑制効果について評価した。
各種還元剤に塩素源として水溶性塩化物(塩化ナトリウム)を添加した場合と、水溶性塩化物を添加しなかった場合とで銀の析出に与える影響を調べた。水溶性塩化物を添加しなかった例と比べて銀の析出量が低下している場合を合格とし、銀の析出抑制効果が優れていると評価した。
試験液
No.1、2
表1に示す組成の塩化金酸溶液30mLに25%水酸化ナトリウム水溶液(中和液)を10mL添加して酸濃度1Nとなるように調整して試験液1、2を用意した。
No.3、4
表1に示す組成の塩化金酸溶液30mLに25%水酸化ナトリウム水溶液(中和液)を5.9mL添加して酸濃度1Nとなるように調整して試験液3、4を用意した。
No.5、6
表1に示す組成の塩化金酸溶液50Lに48%水酸化ナトリウム水溶液を5L添加して酸濃度0.1Nとなるように調整して試験液5、6を用意した。
No.7
表1に示す組成の塩化金酸溶液30mL(酸濃度0.1N)を試験液7とした。
No.8、9
表1に示す組成の塩化金酸溶液100mL(酸濃度0.1N)を試験液9、10とした。
還元剤
No.1、3
亜硫酸ナトリウム濃度(還元剤)が150g/Lとなるように亜硫酸ナトリウムと純水を添加、混合して還元剤含有液を用意した。
No.2、4
亜硫酸ナトリウム濃度(還元剤)が150g/L、塩素濃度が2mol/Lとなるように亜硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムと純水を添加、混合して還元剤含有液を用意した。
No.5
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)に鉄(II)イオン(Fe2+)の濃度が70g/Lとなるように純水を添加、混合した後、塩酸でpH1に調整して還元剤含有液(硫酸第一鉄:FeSO4)を用意した。
No.6
硫酸第一鉄七水和物と塩酸ナトリウムを鉄(II)イオンの濃度が74g/L、塩素濃度が2mol/Lとなるように純水を添加、混合して還元剤含有液(硫酸第一鉄)を用意した。
No.7
塩素濃度が5.2mol/Lとなるように鉄粉を塩酸に溶解させて還元剤(硫酸第一鉄:FeSO4)含有液を用意した。
No.8
ヒドラジン(還元剤)が2.7g/L、塩素濃度が0.2mol/Lとなるようにヒドラジンを塩酸に溶解させて還元剤含有液を用意した。
No.9
ヒドラジン濃度が、2.7g/Lとなるようにヒドラジンと硫酸を混合して還元剤含有液を用意した。
試験液の温度を表1に示す温度に保ちつつ、1時間(No.5、6は2時間)かけて還元剤含有液を試験液に添加すると共に試験液を撹拌した。還元剤含有液の添加によって試験液に溶解している金は還元析出され、試験容器下部に沈殿した。沈殿物(還元金)を回収して、還元金に含まれている銀含有量を調べた。なお、還元剤含有溶液の添加量は金1モルを還元するのに必要な還元剤の量(Fe2+は3モル、SO3 2-は1.5モル)を1当量として計算した。
同じ組成の塩化金酸溶液を使用したNo.1とNo.2を比べると、水溶性塩化物を添加したNo.2はNo.1よりも還元金に含まれる銀含有量が少なく、銀の析出効果が得られた。
同様にNo.3とNo.4を比べると、水溶性塩化物を添加したNo.4はNo.3よりも還元金に含まれる銀含有量が少なく、銀の析出抑制効果が得られた。
なお、No.1とNo.4を比べると、水溶性塩化物を添加していないNo.1は、塩化金酸溶液中の塩素濃度が高かったため水溶性塩化物を添加したNo.4と比べて銀含有量が少ない結果となっている。しかしながら同じ組成の塩化金酸溶液においては水溶性塩化物を添加して塩素濃度を高めることによって(No.2、4)、上記したように優れた銀の析出抑制効果が得られる。
No.5〜7を比べると、水溶性塩化物を含有する還元剤を塩化金酸溶液に添加したNo.6、7はNo.5よりも優れた銀の析出抑制効果を示した。
No.8とNo.9を比べると、水溶性塩化物を添加したNo.8はNo.9よりも還元金に含まれる銀含有量が少なく、銀の析出抑制効果が得られた。

Claims (4)

  1. 銀を含有する塩化金酸溶液に還元剤を添加する際に、水溶性塩化物を添加して銀の析出を抑制することを特徴とする銀の析出抑制方法。
  2. 前記塩化金酸溶液中に銀錯イオンが存在するように前記水溶性塩化物を前記塩化金酸溶液に添加するものである請求項1に記載の銀の析出抑制方法。
  3. 前記還元剤と前記水溶性塩化物とを混合してなる還元剤含有液を前記塩化金酸溶液に添加するものである請求項1または2に記載の銀の析出抑制方法。
  4. 前記還元剤含有液の塩素濃度は、下記式(1)を満足するものである請求項3に記載の銀の析出抑制方法。
    銀濃度≦{5(塩素濃度)3+3(塩素濃度)2+3(塩素濃度)}/100・・・(1)
    (式中、銀濃度(mmol/L)は塩化金酸溶液の銀濃度、塩素濃度(mol/L)は還元剤含有液の塩素濃度である)
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