JP2016157794A - 電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電圧印加による圧電体を駆動することでの応力緩和において、温度変化による特性変化を抑制することで、圧電体の特性を安定化させることができる電気機械変換部材の製造方法を提供する。
【解決手段】振動板15上に下部電極161、圧電体162、上部電極163がこの順に形成された圧電素子16による電気機械変換部材に対して、常温よりも高温である保持温度にて電気機械変換部材を保持し、電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程を有するようにする。
【選択図】図1
【解決手段】振動板15上に下部電極161、圧電体162、上部電極163がこの順に形成された圧電素子16による電気機械変換部材に対して、常温よりも高温である保持温度にて電気機械変換部材を保持し、電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程を有するようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は、電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置に関する。
一般に、プリンタ、ファクシミリ、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。
液滴吐出ヘッドは、インクなどの液体の液滴を吐出するノズルと、このノズルに連通し液体を収容した液室(加圧液室、圧力室、加圧室、吐出室などとも称される。)と、圧電素子(薄膜圧電体ともいう)などの電気機械変換素子とを備えた構成が知られている。この液滴吐出ヘッドでは、圧電素子に電圧が印加されることにより圧電素子は液室の壁の一部を形成する振動板を変形させるように振動し、その振動板の変形により液室内の液体が加圧され、ノズルから液滴を吐出させることができる。
液滴吐出ヘッドには、振動板上に、圧電素子を構成する下部電極(共通電極)、圧電体及び上部電極(個別電極)を積層形成し、たわみ振動モードを使用した電気機械変換部材(圧電アクチュエータともいう)が実用化されている。
ところで、圧電素子は、その成膜過程において下地となる部位や構造そのものから受ける応力の影響によって、所望の特性を得られない場合(特性ロス)があることや、使用中の特性変化を生じることがあることが知られている。
これに対し、使用時に用いる駆動波形や、それに準ずる圧電体を駆動させる電圧波形を印加することで圧電体内の応力を緩和させる方法が提案されている。
特許文献1には、加熱処理と分極処理によって応力の緩和を行い、その後の電圧印加によって分極を揃えることで応力の緩和をした上で安定した分極特性を得る圧電/電歪素子の製造方法が開示されている。
しかしながら、これまでの電圧印加による圧電体を駆動することでの応力緩和(エージングという)では、あくまで常温での残留応力の緩和をしているにすぎなかった。
具体的には、実際の圧電素子の使用環境全域で考えると、高温時や低温時において構造全体の線膨張差による応力が発生してしまい、応力の影響による圧電体の変位特性の変化が生じてしまう。
また、このように変位特性に変化が生じると、生じた特性変化は常温に戻しても残留してしまい、特性変化が常温でも発生してしまうことが判明した。このように、従来のエージングでは、圧電体の特性の安定化に検討の余地が残されていた。
そこで本発明は、電圧印加による圧電体を駆動することでの応力緩和において、温度変化による特性変化を抑制することで、圧電体の特性を安定化させることができる電気機械変換部材の製造方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明に係る電気機械変換部材の製造方法は、振動板上に下部電極、圧電体、上部電極がこの順に形成された電気機械変換部材に対して、常温よりも高温である保持温度にて前記電気機械変換部材を保持し、該電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、前記保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程を有するものである。
本発明によれば、圧電体の特性を安定化させることができる。
以下、本発明に係る構成を図1から図19に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
(電気機械変換部材/液滴吐出ヘッドの構成)
図1は液滴吐出ヘッドの基本構成部分である液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向の断面図であり、便宜上、1つの液室に対応する部分のみ示している。また、図2は、液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向と直交する方向の断面図である。
図1は液滴吐出ヘッドの基本構成部分である液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向の断面図であり、便宜上、1つの液室に対応する部分のみ示している。また、図2は、液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向と直交する方向の断面図である。
図1に示すように、液滴吐出部10は、インクなどの液体の液滴を吐出するノズル11を有するノズル基板12と、ノズル11に連通し液体を収容した液室13が形成された液室基板14(以下、単に「基板」という)とを備えている。この基板14は、ノズル11と連通する液室13の隔壁部、流体抵抗部32、液室13へのインク導入路33などが形成されている。基板14上には、液室13の一壁面となる振動板15を形成し、振動板15上に下部電極161、圧電体(PZT)162及び上部電極163からなる圧電素子16が設けられている。また、圧電素子16を覆うように第1の保護膜としての第1の絶縁保護膜17、第2の絶縁保護膜18、第3の絶縁保護膜19及びサブフレーム20が設けられている。
圧電素子16は、振動板15側で共通電極となる下部電極161と、電気機械変換膜としてのPZTなどからなる圧電体162と、圧電体162の振動板15側とは反対側で個別電極となる上部電極163とが積層されている。下部電極161は、第1の絶縁保護膜17に形成されたコンタクトホール17aにより配線21に接続されており、この配線21を介して外部接続用の端子電極としての共通電極用のパッド電極に接続されている。また、上部電極163は、第2の絶縁保護膜18に形成されたコンタクトホール18aにより配線22に接続されており、この配線22を介して外部接続用の端子電極としての個別電極用のパッド電極23に接続されている。
サブフレーム20は、下部電極161及び上部電極163に電気的に接続される共通電極用の配線21、個別電極用の配線22を含めて圧電素子16の保護空間20aと、駆動IC24の配置するための空間とを有している。また、共通液室から液室13へのインク流路35となる溝部を有している。このインク流路35は、インク供給口34を介して基板14に形成されたインク導入路33に連通している。
上記構成の液滴吐出部10において、共通電極用のパッド電極と配線21及び個別電極用のパッド電極23と配線22を介してそれぞれ圧電素子16の下部電極161と上部電極163との間に所定の周波数及び振幅の駆動電圧が印加される。この駆動電圧が印加された圧電素子16が、基板14と圧電素子16との間にある振動板15を変形させるように振動し、その振動板15の変形により液室13内の液体が加圧され、ノズル11から液滴を吐出させることができる。
次に、液滴吐出ヘッドを構成する構成要素である各部及び部材などの材料及び工法について、より具体的に説明する。
〔基板〕
基板14としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成例においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような液室(圧力室)13を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本構成例としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点も留意して利用することが好ましい。
基板14としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100[μm]以上600[μm]以下の範囲の厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成例においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような液室(圧力室)13を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができるため、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっている。本構成例としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiO2もエッチングされてしまうため、この点も留意して利用することが好ましい。
〔振動板〕
図1に示すように電気機械変換素子としての圧電素子16によって発生した力を受けて、その下地の振動板15が変形して、液室(圧力室)13のインクなどの液体の液滴を吐出させる。そのため、振動板15としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4などを例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により作製したものが挙げられる。さらに図1に示すような共通電極(下部電極)161及び圧電体162の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、圧電体162としては、一般的に材料としてPZTが使用される場合が多い。従って、振動板15の材料は、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6(1/K)以上10×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには7×10−6(1/K)以上9×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。これらの材料を、例えばスパッタ法又はゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲が好ましく、0.5[μm]以上3[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと、図1に示すような液室(圧力室)13の加工が難しくなる。また、上記範囲より大きいと振動板15が変形しにくくなり、インク滴などの液滴の吐出が不安定になる。
図1に示すように電気機械変換素子としての圧電素子16によって発生した力を受けて、その下地の振動板15が変形して、液室(圧力室)13のインクなどの液体の液滴を吐出させる。そのため、振動板15としては所定の強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO2、Si3N4などを例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により作製したものが挙げられる。さらに図1に示すような共通電極(下部電極)161及び圧電体162の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、圧電体162としては、一般的に材料としてPZTが使用される場合が多い。従って、振動板15の材料は、PZTの線膨張係数8×10−6(1/K)に近い5×10−6(1/K)以上10×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料が好ましい。さらには7×10−6(1/K)以上9×10−6(1/K)以下の範囲の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。これらの材料を、例えばスパッタ法又はゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲が好ましく、0.5[μm]以上3[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと、図1に示すような液室(圧力室)13の加工が難しくなる。また、上記範囲より大きいと振動板15が変形しにくくなり、インク滴などの液滴の吐出が不安定になる。
〔下部電極(共通電極)〕
下部電極(共通電極)161としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。ここで、どちらの材料も振動板15と下部電極161を構成する金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層含めて金属電極膜及び酸化物電極膜の詳細について記載する。
下部電極(共通電極)161としては、金属もしくは金属と酸化物からなっていることが好ましい。ここで、どちらの材料も振動板15と下部電極161を構成する金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。以下に密着層含めて金属電極膜及び酸化物電極膜の詳細について記載する。
〔密着層〕
密着層は、例えば次のように形成する。Tiをスパッタ成膜後、成膜したチタン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて熱酸化して酸化チタン膜にする。熱酸化の条件は、例えば、650[℃]以上800[℃]以下の範囲の温度、1[分]以上30[分]以下の範囲の処理時間、及びO2雰囲気である。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタン酸化膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。また、Ti以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料を用いることもできる。密着層の膜厚としては、10[nm]以上50[nm]以下の範囲が好ましく、15[nm]以上30[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念がある。また、この範囲以上になってくると、下部電極の表面粗さが大きくなり圧電膜との密着性が低下し、圧電膜の結晶性に悪影響を及ぼしインク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
密着層は、例えば次のように形成する。Tiをスパッタ成膜後、成膜したチタン膜をRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて熱酸化して酸化チタン膜にする。熱酸化の条件は、例えば、650[℃]以上800[℃]以下の範囲の温度、1[分]以上30[分]以下の範囲の処理時間、及びO2雰囲気である。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタン酸化膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。また、Ti以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料を用いることもできる。密着層の膜厚としては、10[nm]以上50[nm]以下の範囲が好ましく、15[nm]以上30[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念がある。また、この範囲以上になってくると、下部電極の表面粗さが大きくなり圧電膜との密着性が低下し、圧電膜の結晶性に悪影響を及ぼしインク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
〔金属電極膜〕
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、前述の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、100[nm]以上150[nm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より薄い場合においては、下部電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴の吐出をする際に不具合が発生する。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる。また、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
金属電極膜の金属材料としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO2)との密着性が悪いために、前述の密着層を先に積層することが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、100[nm]以上150[nm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より薄い場合においては、下部電極161として十分な電流を供給することができなくなり、液滴の吐出をする際に不具合が発生する。さらに、この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる。また、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られないような不具合が発生する。
〔酸化物電極膜〕
酸化物電極膜の材料としてはSrRuO3(以下、SROと称することがある。)を用いることが好ましい。他に、Srx(A)(1−x)Ruy(B)(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。なお、スパッタ条件によってSrRuO3薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、第1電極のPt(111)にならってSrRuO3膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500[℃]以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
酸化物電極膜の材料としてはSrRuO3(以下、SROと称することがある。)を用いることが好ましい。他に、Srx(A)(1−x)Ruy(B)(1−y)、A=Ba、Ca、B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。なお、スパッタ条件によってSrRuO3薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、第1電極のPt(111)にならってSrRuO3膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500[℃]以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
例えば、特許第3782401号公報に記載のSRO成膜条件について、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650[℃])で熱酸加する場合、SRO膜としては、十分結晶化され、電極としての比抵抗としても十分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向しやすくなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。
図19に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときの測定結果の例を示す。Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから、本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できる。また、上述の室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときにSRO(110)の回折強度が見られる。
また、圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が、初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、(110)では変位劣化抑制において不十分である。さらにSRO膜の表面粗さを見たときに、成膜温度に影響し、室温から300[℃]では表面粗さが非常に小さく2[nm]以下になる。粗さについてはAFMにより測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。
表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が十分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。表面粗さとしては、4〜15[nm]になっていることが好ましく、6〜10[nm]がさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。したがって、上述に示すような、結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500〜700[℃]、好ましくは520〜600[℃]の範囲で成膜を実施している。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として十分な導電性が得られなくなる。
さらに、SRO膜の膜厚としては、40〜150[nm]が好ましく、50〜80[んm]がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない場合があり、また、PZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなる。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
また比抵抗としては、5×10−3[Ω・cm]以下になっていることが好ましく、さらに1×10−3[Ω・cm]以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
〔圧電体(電気機械変換膜)〕
圧電体162の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、 B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
圧電体162の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸(PbTiO3)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O3、一般PZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、 B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O3、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O3、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
圧電体162の作製方法としては、スパッタ法もしくは、ゾルゲル法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。PZTをゾルゲル法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加してもよい。
基板14の全面に圧電体162の膜(PZT膜)を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100[nm]以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
圧電体162の膜厚としては0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲が好ましく、1[μm]以上2[μm]以下の範囲がより好ましい。この範囲より小さいと十分な変形(変位)を発生することができなくなり、この範囲より大きいと何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
また、圧電体162の比誘電率としては600以上2000以下の範囲になっていることが好ましく、さらに1200以上1600以下の範囲になっていることが好ましい。このとき、この範囲よりも小さいときには十分な変形(変位)特性が得られず、この範囲より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られないといった不具合が発生する。
〔上部電極(個別電極)〕
上部電極(個別電極)163は、下部電極材料層とは異なり、圧電体162の膜を形成する際のような高温のプロセスが後の工程で無く、圧電体162の膜との格子定数マッチングも必要とならないため材料選択幅が下部電極161に比較し広くなる。上部電極163においては、白金膜、イリジウムや金などの金属電極を用いることができる。また、酸化物電極層と金属電極の積層膜を利用することもできる。
上部電極(個別電極)163は、下部電極材料層とは異なり、圧電体162の膜を形成する際のような高温のプロセスが後の工程で無く、圧電体162の膜との格子定数マッチングも必要とならないため材料選択幅が下部電極161に比較し広くなる。上部電極163においては、白金膜、イリジウムや金などの金属電極を用いることができる。また、酸化物電極層と金属電極の積層膜を利用することもできる。
上部電極163としては、金属もしくは酸化物と金属からなっていることが好ましい。以下に酸化物電極膜及び金属電極膜の詳細について記載する。
〔酸化物電極膜〕
酸化物電極膜の材料としては、前述の下部電極(共通電極)161で使用した酸化物電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。酸化物電極膜は、例えばスパッタ法等の成膜方法により作製することができる。酸化物電極膜の膜厚としては、20[nm]以上80[nm]以下の範囲が好ましく、40[nm]以上60[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変形(変位)や変形(変位)の劣化特性については十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後に成膜したPZT膜の絶縁耐圧が悪くなり、リークしやすくなる。
酸化物電極膜の材料としては、前述の下部電極(共通電極)161で使用した酸化物電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。酸化物電極膜は、例えばスパッタ法等の成膜方法により作製することができる。酸化物電極膜の膜厚としては、20[nm]以上80[nm]以下の範囲が好ましく、40[nm]以上60[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変形(変位)や変形(変位)の劣化特性については十分な特性が得られない。また、この範囲を超えると、その後に成膜したPZT膜の絶縁耐圧が悪くなり、リークしやすくなる。
〔金属電極膜〕
金属電極膜の材料等については、前述の下部電極(共通電極)161で使用した金属電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。金属電極膜の膜厚としては30[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上120[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、上部電極(個別電極)163として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。また、上記範囲より厚いと、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなる。また、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して配線などを作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
金属電極膜の材料等については、前述の下部電極(共通電極)161で使用した金属電極膜について記載したものと同様なものを挙げることができる。金属電極膜の膜厚としては30[nm]以上200[nm]以下の範囲が好ましく、50[nm]以上120[nm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、上部電極(個別電極)163として十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出する際に不具合が発生する。また、上記範囲より厚いと、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなる。また、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていたったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して配線などを作製する際に、膜剥がれ等のプロセス不具合が発生しやすくなる。
〔第1の絶縁保護膜〕
成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、第1の絶縁保護膜17の材料は緻密な無機材料とする必要がある。また、第1の絶縁保護膜17として有機材料を用いる場合は、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。第1の絶縁保護膜17を厚い膜とした場合、振動板15の振動を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまう。薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物,窒化物,炭化膜を用いるのが好ましいが、第1の絶縁保護膜17の下地となる電極材料、圧電体材料及び振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、第1の絶縁保護膜17の成膜法も、圧電素子16を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1の絶縁保護膜17の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al2O3,ZrO2,Y2O3,Ta2O3,TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、第1の絶縁保護膜17の材料は緻密な無機材料とする必要がある。また、第1の絶縁保護膜17として有機材料を用いる場合は、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。第1の絶縁保護膜17を厚い膜とした場合、振動板15の振動を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低い液滴吐出ヘッドになってしまう。薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物,窒化物,炭化膜を用いるのが好ましいが、第1の絶縁保護膜17の下地となる電極材料、圧電体材料及び振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、第1の絶縁保護膜17の成膜法も、圧電素子16を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。第1の絶縁保護膜17の好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al2O3,ZrO2,Y2O3,Ta2O3,TiO2などのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
第1の絶縁保護膜17の膜厚は、圧電素子16の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、振動板15の変形(変位)を阻害しないように可能な限り薄くする必要がある。第1の絶縁保護膜17の膜厚は、20[nm]以上100[nm]以下の範囲が好ましい。100[nm]より厚い場合は、振動板15の変形(変位)量が低下するため、吐出効率の低い液滴吐出ヘッドとなる。一方、20[nm]より薄い場合は、圧電素子16の保護層としての機能が不足してしまうため、圧電素子16の性能が前述の通り低下してしまう。
〔第2の絶縁保護膜〕
第2の絶縁保護膜18としては、任意の酸化物,窒化物,炭化物又はこれらの複合化合物を用いることができ、また、半導体デバイスで一般的に用いられるSiO2を用いることもできる。第2の絶縁保護膜18の成膜は任意の手法を用いることができ、例えばCVD法、スパッタリング法、ALD法等が例示できる。電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。第2の絶縁保護膜18の膜厚は共通電極(下部電極)161と個別電極の配線22との間に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち第2の絶縁保護膜18に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、第2の絶縁保護膜18の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、第2の絶縁保護膜18の膜厚は200[nm]以上必要であり、さらに好ましくは500[nm]以上である。
第2の絶縁保護膜18としては、任意の酸化物,窒化物,炭化物又はこれらの複合化合物を用いることができ、また、半導体デバイスで一般的に用いられるSiO2を用いることもできる。第2の絶縁保護膜18の成膜は任意の手法を用いることができ、例えばCVD法、スパッタリング法、ALD法等が例示できる。電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。第2の絶縁保護膜18の膜厚は共通電極(下部電極)161と個別電極の配線22との間に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち第2の絶縁保護膜18に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、第2の絶縁保護膜18の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、第2の絶縁保護膜18の膜厚は200[nm]以上必要であり、さらに好ましくは500[nm]以上である。
〔配線、パッド電極〕
配線21、22及びパッド電極の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1[μm]以上20[μm]以下の範囲が好ましく、0.2[μm]以上10[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になる。一方、この範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、下部電極161及び上部電極163に接続されるコンタクトホール部(例えば10[μm]×10[μm])での接触抵抗としては、共通電極である下部電極161に対して10[Ω]以下、個別電極である上部電極163に対して1[Ω]以下が好ましい。さらに好ましくは、下部電極161に対して5[Ω]以下、上部電極163に対して0.5[Ω]以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出をする際に不具合が発生する。
配線21、22及びパッド電極の材料は、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。これらの電極の作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1[μm]以上20[μm]以下の範囲が好ましく、0.2[μm]以上10[μm]以下の範囲がさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に十分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になる。一方、この範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、下部電極161及び上部電極163に接続されるコンタクトホール部(例えば10[μm]×10[μm])での接触抵抗としては、共通電極である下部電極161に対して10[Ω]以下、個別電極である上部電極163に対して1[Ω]以下が好ましい。さらに好ましくは、下部電極161に対して5[Ω]以下、上部電極163に対して0.5[Ω]以下である。この範囲を超えると十分な電流を供給することができなくなり、液滴を吐出をする際に不具合が発生する。
〔第3の絶縁保護膜〕
第3の絶縁保護膜19としての機能は、共通電極用の配線21や個別電極用の配線22の保護層としての機能を有するパッシベーション層である。図2に示したように、上部電極163の引き出し部と、下部電極161の引き出し部(コンタクトホール18a)と、を除き、上部電極163及び下部電極161を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることができる。第3の絶縁保護膜19の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200[nm]以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500[nm]以上である。膜厚が薄い場合は十分なパッシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
第3の絶縁保護膜19としての機能は、共通電極用の配線21や個別電極用の配線22の保護層としての機能を有するパッシベーション層である。図2に示したように、上部電極163の引き出し部と、下部電極161の引き出し部(コンタクトホール18a)と、を除き、上部電極163及び下部電極161を被覆する。これにより、電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高い液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることができる。第3の絶縁保護膜19の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、パターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSi3N4を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。また、膜厚は200[nm]以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500[nm]以上である。膜厚が薄い場合は十分なパッシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
また、圧電素子16上とその周囲の振動板15上に開口部をもつ構造が好ましい。これは、前述の第1の絶縁保護膜17の液室13に対応した領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが可能になる。第1,第2の絶縁保護膜17,18で圧電素子16が保護されているため、第3の絶縁保護膜19の開口部の形成には、フォトリソグラフィー法とドライエッチングを用いることができる。なお、パッド電極の面積については、50×50[μm2]以上になっていることが好ましく、さらに100×300[μm2]以上になっていることが好ましい。
(液滴吐出ヘッドの製造プロセス)
次に、液滴吐出ヘッド1の製造方法の一例について説明する。図3は、液滴吐出ヘッド1の製造プロセスの一例を説明するためのフローチャートである。
次に、液滴吐出ヘッド1の製造方法の一例について説明する。図3は、液滴吐出ヘッド1の製造プロセスの一例を説明するためのフローチャートである。
まず、基板14上に、振動板15を形成する(ステップS1)。基板14としては、例えば625[μm]厚のシリコンウェハが用いられる。この基板14上に、振動板15が、熱酸化膜や、例えばCVD法によって形成されるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコン膜などの所望の構成にて形成されている。
次に、振動板15上に圧電素子16を形成する。詳しくは、圧電素子16は、共通電極である下部電極の成膜(ステップS2)、圧電体162であるPZT膜の成膜(ステップS3)、個別電極である上部電極163の成膜(ステップS4)の順に行われる。
上記ステップS2の下部電極の成膜は、具体的には、まず、密着膜として、チタン膜(膜厚30[nm])をスパッタ装置にて成膜した後にRTAを用いて750[℃]にて熱酸化した。
そして、引き続き金属膜として白金膜(膜厚100[nm])を成膜した。白金膜上に酸化チタン膜を形成する。白金膜上にチタン膜をスパッタ成膜で形成し、続いてRTAを用いて650〜750[℃]、1〜5分、O2雰囲気でチタン膜を熱酸化させて、酸化チタン膜とさせる。チタン膜の膜厚は、30〜70オングストロームとするのが好ましい。
上記ステップS3では、ゾルゲル法によってPZT膜が所望の厚みに成膜される。
上記ステップS4の上部電極の成膜は、具体的には、酸化物膜としてSrRuO3膜(膜厚20[nm])を、金属膜としてPt膜(膜厚100[nm])を、それぞれスパッタ成膜した。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した。その後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合方式)エッチング装置(サムコ株式会社製)を用いてPZT膜、上部電極をエッチングにより個別化し、パターンを作製した(ステップS5)。これにより、上部電極163は個別電極として機能する。
次いで、同様の方法で、フォトリソグラフィーでレジストパターンを形成し、エッチングにより下部電極のパターンを作製する(ステップS6)。下部電極161は、PZT膜、上部電極のようには個別化されず、複数の圧電体162及び上部電極163に対して共通電極として機能するようパターニングする。
次に、第1の絶縁保護膜17として、ALD法によりAl2O3膜を成膜した(ステップS7)。この第1の絶縁保護膜17は、水素等のプロセスダメージから圧電素子16を保護するバリア層として機能する。第1の絶縁保護膜17(バリア層)としてALD法により成膜したAl2O3を用いることにより、透湿性の低い良質なバリア層を得ることができる。
また、バリア層として機能する第1の絶縁保護膜17の膜厚は、30[nm]以上、80[nm]以下の範囲であることが好ましい。これにより、第1の絶縁保護膜17がバリア層として十分なバリア性を有しつつ、圧電素子16のアクチュエータとしての機能を維持することができる。
また、基板14表面と第1の絶縁保護膜17(バリア層)の側壁とのなす角度であるテーパ角は、基板14表面と圧電素子16の側壁面とのなすテーパ角よりも小さいことが望ましい。これにより、圧電素子16の端部における応力の集中が緩和され、長寿命化を図ることができ、信頼性が向上する。
次に、第2の絶縁保護膜18としてSiO2層間膜を成膜した(ステップS8)。このように層間膜であるSiO2を利用することで、新たな工程を加えることなく、第1の絶縁保護膜17(バリア層)のうち圧電素子16の側壁面を覆っている部分に更に第2の保護膜を形成することができる。従って、生産効率の低下や製造コストの上昇を防ぐことができる。また、後工程のフォトリソグラフィー・エッチング工程で、圧電素子16の側壁面をレジストでマスクした状態でエッチング処理することにより、第1の絶縁保護膜17(バリア層)のうち圧電素子16の側壁面を覆っている部分にSiO2層間膜を残留させる。これにより、第1の絶縁保護膜17(バリア層)のオーバーエッチングをより確実に防ぐことができる。
上記SiO2層間膜の膜厚は、10[nm]以上500[nm]以下の範囲が好ましい。10[nm]よりも薄いと十分なエッチング耐性を確保できない。一方、500[nm]よりも厚いと圧電素子16が変形し難くなり、アクチュエータとしての機能を維持できなくなるおそれがある。
その後、エッチングによりコンタクトホール18aを形成した(ステップS9)。そして、配線を形成するためにAlをスパッタにより成膜した(ステップS10)。また、上記ステップS8で成膜したAlをエッチングしてパターニング形成した(ステップS11)。
さらにその後、第3の絶縁保護膜19としてSiNパッシベーション層を成膜し、エッチング処理を行った(ステップS12,13)
最後に、振動板にインク供給口34となる貫通孔をエッチングにより形成した(ステップS14)。
このようにして形成された、振動板15と、圧電素子16と、各種電極とを含む複合積層基板は、アクチュエータ基板30と呼ばれる電気機械変換部材である。なお、基板14を含めて電気機械変換部材と呼ぶこともある。また、ここまで説明した電気機械変換部材の各層の材料や膜厚等の数値は、一例であってこれに限られるものではない。
(エージング処理)
以下、本実施形態に係る圧電素子の製造方法について説明する。本実施形態に係る圧電素子の製造方法は、振動板(振動板15)上に下部電極(下部電極161)、圧電体(圧電体162)、上部電極(上部電極163)がこの順に形成された電気機械変換部材(アクチュエータ基板30)に対して、常温よりも高温である保持温度にて電気機械変換部材を保持し、該電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程(エージング処理)を有するようにしたものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
以下、本実施形態に係る圧電素子の製造方法について説明する。本実施形態に係る圧電素子の製造方法は、振動板(振動板15)上に下部電極(下部電極161)、圧電体(圧電体162)、上部電極(上部電極163)がこの順に形成された電気機械変換部材(アクチュエータ基板30)に対して、常温よりも高温である保持温度にて電気機械変換部材を保持し、該電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程(エージング処理)を有するようにしたものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
詳しくは、電気機械変換部材、液滴吐出ヘッドの製造工程において、圧電素子に電圧印加によるエージング処理を行う際に、事前に加熱をし、常温よりも高温に圧電素子を保持したまま、波形印加と同時に徐々に温度を下げて常温に戻すものである。これにより、線膨張係数差による熱応力を除熱速度と波形印加による駆動(機械的な動き)の両面で開放していくことで、加熱から除熱後の温度範囲における熱応力を緩和し、エージングにて実施した範囲内の温度域での特性変化を抑制することができる。
すなわち、電圧印加による分極を揃える降下と、熱応力の開放とを並行して行うことで、駆動が応力緩和をアシストする効果を生じさせて、通常の緩和よりもより効率よく応力緩和を行うことを可能としている。
これにより、圧電素子の特性安定性、特に外部環境の影響に対しての特性安定性をより高めることができるものである。
以下に本発明に係る電気機械変換部材の実施例および比較例について説明する。
<実施例1>
図4は、実施例1に係る圧電素子16を有する液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向の断面図である。また、図5は図4に示す液滴吐出部を複数配置した例を示す断面図である。
図4は、実施例1に係る圧電素子16を有する液滴吐出部の概略構成を示す液室の配列方向の断面図である。また、図5は図4に示す液滴吐出部を複数配置した例を示す断面図である。
以下のように圧電素子16を製造した。先ず、6インチシリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1[μm])を形成し、下部電極161の密着膜として、チタン膜(膜厚30[nm])をスパッタ装置にて成膜した後に、RTAを用いて750[℃]にて熱酸化した。
そして、引き続き金属膜として白金膜(膜厚100[nm])、酸化物膜としてSrRuO3膜(膜厚60[nm])をスパッタ成膜した。
スパッタ成膜時の基板加熱温度については550[℃]にて成膜を実施した。次に、圧電体162としてPb:Zr:Ti=114:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、ノルマルプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後に脱水した。また、熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐため、化学両論組成に対し鉛量を過剰にした。
イソプロポキシドチタン、ノルマルポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、上記酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。
このPZT濃度は0.5[モル/l]にした。この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120[℃]乾燥から500[℃]熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750[℃])をRTA(急速熱処理)にて行った。
このときPZTの膜厚は240[nm]であった。この工程を計8回(24層)実施し、約2[μm]のPZT膜厚を得た。
次に、上部電極163の酸化物膜として、SrRuO3膜(膜厚40[nm])、金属膜としてPt膜(膜厚125[nm])をスパッタ成膜した。
その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ株式会社製)を用いてPt膜、酸化物膜をエッチング後、レジスト剥離装置(セミツール・ジャパン株式会社製)にてアミン系の剥離液を用いて、30分レジスト剥離処理、およびアッシャー(キヤノン株式会社製)にて3分のアッシング処理を行い上部電極163をパターニングした。
同様にフォトリソグラフィーでレジストパターンを形成した後、圧電体162をエッチングし、レジスト剥離処理、アッシング処理を行い圧電体162をパターニングした。次にフォトリソグラフィーで下部電極161のパターンを形成した後、レジスト剥離処理、アッシング処理を行い下部電極161をパターニングした。
なお、実施例1では、図4、図5に示すように、下部電極161を共通電極、上部電極163を個別電極にしているが、図6、図7に示すように、下部電極161を個別電極、上部電極163を共通電極とする形態としてもよい。
また、液滴吐出ヘッド1は、圧力室形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板を接合することで製造することができ、この工程の製造方法は特に限られるものではなく、公知のヘッド製造プロセスにて作製を行った。
この圧電素子16を有する液滴吐出ヘッド1に対して、エージング処理を施した。図8は、実施例1でのエージング処理時の温度プロファイルである。外気温は25[℃]の場合を例にする。
エージング処理として、先ず、恒温槽にて所定の保持温度(70[℃])にて液滴吐出ヘッド1を保持した。このとき10[℃/min]にて昇温を行ったが、昇温速度は任意の値でよく、特に限られるものではない。また、例えば、70[℃]に保持した恒温槽に直接投入してもよい。このときの保持温度は、圧電素子について規定される仕様範囲の温度の上限以上であることが好ましい。保持温度を仕様範囲よりも高温とすることで、仕様範囲内の熱応力緩和を行うことができ、仕様範囲内の温度変化による変化を抑制することができる。
液滴吐出ヘッド1の温度が均一になった後、図9に示す波形(単純pull波形)を1[kHz]周期にて印加すると同時に、恒温槽の温度を下げ始めた。ここで、印加波形の周波数は、液滴吐出ヘッド1を使用するインクジェット記録装置の温度分解能以上の短い周期であることが好ましい。
インクジェット記録装置の温度分解能について説明する。温度によってインクの粘度が変わるため、一般にインクジェット記録装置は温度センサを内蔵しており、温度センサの検知温度に基づいて使用する印加波形を変更する制御がされている。本実施例では、この温度センサの検知温度に基づく印加波形の変更制御の際、波形を切り替える温度の刻みを温度分解能としている。なお、温度センサ自体の分解能(0.1℃、0.5℃など)をインクジェット記録装置の温度分解能としてもよい。また、上記2つの分解能のうち、分解能の良いものをインクジェット記録装置の温度分解能としてもよい。
印加波形の周波数は、例えば、温度が0.1℃変化するよりも短い周期であることが好ましい。このとき、液滴吐出ヘッド1が備えるセンサの分解能と同等とすることも好ましい。これにより、温度変化の速度以上で機械的に変形させることで応力の緩和をより効率よくアシストできる。
また、急激な温度変化は応力を残留させ、温度変化が遅いほうが熱応力の緩和をしやすいため、降温速度は1[℃/min]以下で降温することが好ましい。実施例1では、降温速度は1[℃/min]で降温した。
また、印加波形の電圧最大値は、使用する電圧域の上限かそれ以上の値であり、印加波形の電圧最小値は、使用する電圧域の下限および圧電体の抗電界のいずれか小さい値とすることが好ましい。また、印加波形は、時間軸上では、実際に使用する波形と略同じ波形形状であることが好ましい(電圧軸上では異なっていてもよい)。このように、圧電素子の仕様範囲よりも大きな範囲で振動させることで分極を所望の範囲内で安定化させることができる。
恒温槽が外気温(25[℃])と同温度(25[℃])になったところで、波形の印加および恒温槽の温度変化を停止し、取り出した。以上が実施例1のエージング処理である。
エージング処理を実施した液滴吐出ヘッド1を用いて吐出評価を実施した。まず、常温(25[℃])で粘度を5[cp]に調整したインクを用いて、単純pull波形により−5〜15[V]の印可電圧を加えたときの吐出状況を確認した。その結果、全てどのノズル孔からも吐出できていることを確認した。
そして、恒温槽にて仕様範囲内でのヒートサイクル試験(−20[℃]〜60[℃]のサイクルを数サイクル)を行い、吐出波形を印加してのヒートサイクル前後での吐出速度差を評価した。また、圧電体の特性を示す指標として静電容量が知られている。詳細な説明は省略するが、図10に静電容量測定装置での(A)入力信号、(B)出力信号、(C)換算式を示す。静電容量測定装置を用いてヒートサイクル前後での静電容量の測定を実施した。
<実施例2>
以下の実施例の説明においては、実施例1と同様の点は説明を省略する。実施例2では、エージング時に印加する吐出波形として、図11に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形の上下限電圧の単純pull波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
以下の実施例の説明においては、実施例1と同様の点は説明を省略する。実施例2では、エージング時に印加する吐出波形として、図11に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形の上下限電圧の単純pull波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
<実施例3>
実施例3では、エージング時に印加する吐出波形として、図12に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形のうち一番使用頻度の高い波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
実施例3では、エージング時に印加する吐出波形として、図12に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形のうち一番使用頻度の高い波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
<実施例4>
実施例4では、エージング時に印加する吐出波形として、図13に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形のうち一番使用頻度の高い波形を上下限電圧まで電圧の倍率を変更した波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
実施例4では、エージング時に印加する吐出波形として、図13に示すように、液滴吐出ヘッド1の吐出波形のうち一番使用頻度の高い波形を上下限電圧まで電圧の倍率を変更した波形を印加した。実施例1と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
<比較例1>
比較例1として、エージング処理では温度変化をさせず、常温状態のままでエージング処理を行い、実施例1〜4と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
比較例1として、エージング処理では温度変化をさせず、常温状態のままでエージング処理を行い、実施例1〜4と同様に、ヒートサイクル前後の吐出速度差の評価と静電容量の評価を実施した。
実施例1〜4および比較例1でのヒートサイクル前後での吐出速度の前後比較結果を図14に示す。また、ヒートサイクル前後での静電容量の前後比較結果を図15に示す。
図14および図15より、上述したように、所定の保持温度から常温まで降下させながらエージング処理を行うことで、ヒートサイクル試験での環境影響に対して堅牢なヘッド特性を得ることができていることが確認できた。また、液滴吐出ヘッド1のため吐出速度に重きを置いて評価を実施しているが、同時に計測している静電容量の結果が示すように、変位を主とする圧電素子でも同様の効果を得ることができていることを確認することができた。
また、吐出耐久評価として常温(25[℃])で粘度を5[cp]に調整したインクを用いて、単純pull波形により−5〜15[V]の印可電圧を加えた吐出波形により、連続吐出耐久評価を行ったところ、実施例1〜4、比較例1ともに100億回の駆動後も問題なく吐出できることを確認した。これは電圧印加による効果であり、評価が温度一定による部分が大きい。
(インクカートリッジ)
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1を備えたインクカートリッジについて説明する。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1を備えたインクカートリッジについて説明する。
図16は液滴吐出ヘッド1を備えたインクカートリッジの構成例を示す斜視図である。インクカートリッジ90は、ノズル11等を有する上述の液滴吐出ヘッド1(インクジェットヘッド)と、液滴吐出ヘッド1に対してインクを供給するインクタンク91とを一体化したものである。
液滴吐出ヘッド1とインクタンク91とを一体とした場合、液滴吐出ヘッド1の低コスト化および信頼性向上は、ただちにインクカートリッジ90の全体の低コスト化、信頼性向上につながる。よって、液滴吐出ヘッド1の低コスト化、高信頼性化、製造不良低減を図ることで、インクカートリッジ90の歩留まり、信頼性を向上させて、ヘッド一体型のインクカートリッジ90の低コスト化を図ることができる。
(画像形成装置)
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1を備えた画像形成装置であるインクジェット記録装置について説明する。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1を備えた画像形成装置であるインクジェット記録装置について説明する。
図17は液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の構成例を示す斜視図であり、図18は同記録装置の機構部の構成例を示す側面図である。
インクジェット記録装置100は、装置本体の内部に印字機構部103等を収納し、装置本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙130を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)104を抜き差し自在に装着されている。また、記録紙130を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ105を有している。給紙カセット104あるいは手差しトレイ105から給送される記録紙130を取り込み、印字機構部103によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ106に排紙する。
印字機構部103は、主走査方向に移動可能なキャリッジ101とキャリッジ101に搭載した液滴吐出ヘッド及び液滴吐出ヘッドに対してインクを供給するインクカートリッジ102等で構成される。また、印字機構部103は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド107と従ガイドロッド108とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持する。このキャリッジ101にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドを複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ101には液滴吐出ヘッドに各色のインクを供給するための各インクカートリッジ102を交換可能に装着している。
インクカートリッジ102は上、方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッドへインクを供給する供給口が設けられている。インクカートリッジ102の内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッドとしては各色の液滴吐出ヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液滴吐出ヘッドでもよい。
ここでキャリッジ101は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド107に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド108に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ109で回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間にタイミングベルト112を張装し、このタイミングベルト112をキャリッジ101に固定している。これにより、主走査モータ109の正逆回転によりキャリッジ101が往復駆動される。
一方、給紙カセット104にセットした記録紙130を液滴吐出ヘッドの下方側に搬送するために、給紙カセット104から記録紙130を分離給装する給紙ローラ113及びフリクションパッド114と、記録紙130を案内するガイド部材115とを有する。また、給紙された記録紙130を反転させて搬送する搬送ローラ116と、この搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116からの記録紙130の送り出し角度を規定する先端コロ118とを有する。搬送ローラ116は副走査モータによってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ116から送り出された記録紙130を液滴吐出ヘッドの下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向下流側には、記録紙130を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ120と拍車121とを設けている。さらに記録紙130を排紙トレイ106に送り出す排紙ローラ123と拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125,126とを配設している。
このインクジェット記録装置100で記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッドを駆動することにより、停止している記録紙130にインクを吐出して1行分を記録する。その後、記録紙130を所定量搬送した後、次の行の記録を行う。記録終了信号または記録紙130の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙130を排紙する。
また、キャリッジ101の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッドの吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段とを有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッドをキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。このように、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。このように、本実施形態のインクジェット記録装置100においては回復装置127を備えているので、液滴吐出ヘッドの吐出不良が回復されて、安定したインク滴吐出特性が得られ、画像品質を向上することができる。
なお、本実施形態では、インクジェット記録装置100に液滴吐出ヘッドを使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置に液滴吐出ヘッド1を適用してもよい。
以上、本実施形態のインクジェット記録装置(画像形成装置)100では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、安定したインク滴吐出特性が得られて、高画質の画像を安定して形成することができる。
なお、インクジェット記録装置では、媒体を搬送しながら液滴吐出ヘッドによりインク滴を用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液滴となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、圧電アクチュエータを備えたマイクロポンプ、マイクロアクチュエータ、その他の光学デバイス、などにも適用可能である。
1 液滴吐出ヘッド
10 液滴吐出部
11 ノズル
12 ノズル基板
13 液室
14 液室基板
15 振動板
16 圧電素子
161 下部電極
162 圧電体
163 上部電極
17 第1の絶縁保護膜
17a コンタクトホール
18 第2の絶縁保護膜
18a コンタクトホール
19 第3の絶縁保護膜
20 サブフレーム
20a 保護空間
21,22 配線
23 パッド電極
24 駆動IC
30 アクチュエータ基板
32 流体抵抗部
33 インク導入路
34 インク供給口
35 インク流路
90 インクカートリッジ
100 インクジェット記録装置
10 液滴吐出部
11 ノズル
12 ノズル基板
13 液室
14 液室基板
15 振動板
16 圧電素子
161 下部電極
162 圧電体
163 上部電極
17 第1の絶縁保護膜
17a コンタクトホール
18 第2の絶縁保護膜
18a コンタクトホール
19 第3の絶縁保護膜
20 サブフレーム
20a 保護空間
21,22 配線
23 パッド電極
24 駆動IC
30 アクチュエータ基板
32 流体抵抗部
33 インク導入路
34 インク供給口
35 インク流路
90 インクカートリッジ
100 インクジェット記録装置
Claims (10)
- 振動板上に下部電極、圧電体、上部電極がこの順に形成された電気機械変換部材に対して、
常温よりも高温である保持温度にて前記電気機械変換部材を保持し、該電気機械変換部材を電圧印加により駆動させながら、前記保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程を有することを特徴とする電気機械変換部材の製造方法。 - 前記工程は、前記保持温度を徐々に常温まで温度変化させた時点で終了することを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 前記保持温度は、前記電気機械変換部材ついて規定された仕様範囲温度の上限以上の温度であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 前記保持温度から1℃/分以下の温度変化速度にて温度変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 印加波形の周波数は、前記電気機械変換部材が使用される画像形成装置の温度分解能以上の短い周期であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 印加波形の電圧最大値は、前記電気機械変換部材が使用する電圧域の上限またはそれ以上の値であり、印加波形の電圧最小値は、前記電気機械変換部材が使用する電圧域の下限および前記圧電体の抗電界のいずれか小さい値であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 印加波形は、時間スケールにおいて、前記電気機械変換部材が使用する波形と略同じ波形形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電気機械変換部材の製造方法。
- 液滴を吐出するノズルに連通する液室と、
前記液室内の液体を加圧可能にするよう前記液室を形成する基板と、
前記基板上に設けられ、振動板上に下部電極、圧電体、上部電極がこの順に形成された電気機械変換部材と、
を有する液滴吐出ヘッドに対して、
常温よりも高温の保持温度にて前記液滴吐出ヘッドを保持し、前記電気機械変換部材を電圧印加により駆動をさせながら、前記保持温度を徐々に低温に温度変化させる工程を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。 - 液滴を吐出するノズルに連通する液室と、
前記液室内の液体を加圧可能にするよう前記液室を形成する基板と、
前記基板上に設けられる電気機械変換部材と、
を有する液滴吐出ヘッドにおいて、
前記電気機械変換部材として、請求項1から7までのいずれかに記載の電気機械変換部材の製造方法にて製造された電気機械変換部材を用いたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置において、
前記液滴吐出ヘッドとして、請求項8に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法にて製造された液滴吐出ヘッド、または請求項9に記載の液滴吐出ヘッドを用いたことを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2015034146A JP2016157794A (ja) | 2015-02-24 | 2015-02-24 | 電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2015034146A JP2016157794A (ja) | 2015-02-24 | 2015-02-24 | 電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2016157794A true JP2016157794A (ja) | 2016-09-01 |
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ID=56826365
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2015034146A Pending JP2016157794A (ja) | 2015-02-24 | 2015-02-24 | 電気機械変換部材の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド、および画像形成装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2016157794A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2021512492A (ja) * | 2018-02-05 | 2021-05-13 | ザール テクノロジー リミテッドXaar Technology Limited | アクチュエータの圧電素子のポーリング処理方法 |
| CN116803689A (zh) * | 2022-03-23 | 2023-09-26 | 精工爱普生株式会社 | 液滴喷出头以及液滴喷出装置 |
-
2015
- 2015-02-24 JP JP2015034146A patent/JP2016157794A/ja active Pending
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