JP2016164846A - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超電導層を銅保護層で被覆した構成を有し、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造できる超電導線材の製造方法を提供すること。
【解決手段】テープ状の基板上に形成された中間層上に超電導層を形成する工程と、超電導層上に銀安定化層を形成する工程と、金属基板上に超電導層及び銀安定化層を形成した線材本体16を、供給リール31から供給して巻き取りリール32にて巻き取るリール方式を用いて、供給リール31と巻き取りリールとの間で張架した状態で硫酸銅の水溶液25中に浸漬して銀安定化層上に銅保護層を形成する工程とを含む。銅保護層を形成する際の水溶液25中における線材本体16の張力は、引っ張り歪みが0.6%以下となるようにした。
【選択図】図4

Description

本発明は、酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に、超電導層上に安定化層が形成されたテープ状の酸化物超電導線材本体を銅の保護膜で被覆して酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法に関する。
酸化物超電導体は、その臨界温度(Tc)が液体窒素温度(77K)を超えることから超電導マグネット、超電導ケーブル、電力機器及びデバイス等への応用が期待されており、多くの研究結果が報告されている。酸化物超電導体を上記の分野に適用するためには、臨界電流密度(Jc)が高く、かつ高い臨界電流(Icで示し、Jcとともに超電導特性を意味する)を有する長尺の線材を製造する必要がある。一方、長尺の線材を得るためには、強度及び可撓性の観点から金属テープ上に酸化物超電導体を形成する必要がある。また、NbSnやNbAl等の金属系超電導体と同等に実用レベルで使用可能とするためには、Icが500A/cm(77K、自己磁界中)程度の値が必要である。
これら条件を満たす酸化物超電導体を備える線材として、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7であり、以下、「RE系」とも称する)の酸化物超電導線材が知られている。
この酸化物超電導線材(以下、「超電導線材」とも称する)では、超電導体の結晶が2軸配向しているため、周知のビスマス系の銀シース線材に比べて臨界電流(Ic)が高く、液体窒素温度での磁場特性に優れている。これにより、RE系超電導線材は、現在、液体ヘリウム温度近傍の低温で使用されている超電導機器に適用して、高温状態で使用できる利点を有する。
RE系超電導線材は、基板上に、中間層、超電導層を順に成膜し、更にこの超電導層上に、導電性の高い銀を用いて安定化層を形成する。この構成において、より高い超電導特性(臨界電流)Icを確保するために、安定化層の膜厚を厚くすることが知られているが、安定化層の材料は銀であるため、銀の安定化層の膜厚を厚くすると高コストがかかる。
よって、超電導線材において、銀安定化層のコストの低廉化を図るため、銀安定化層まで積層した基板に、銀よりもコストの安い銅を用いた銅メッキで層を形成した構成とすることにより、安定化層の低コスト化を図ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
超電導層を有するテープ材に、銅メッキ処理を施して銅層を形成する場合、特許文献2に示すように、テープ材を送り出すリールと巻き取るリールとの間に、銅メッキ槽に配置し、この銅メッキ槽内にテープ材を通過させる、所謂、リールtoリール方式を用いて銅層を形成している。
特許4934155号公報 特許5085931号公報
このように銅層を備える超電導線材の従来の製造方法において、リールtoリール方式で、超電導線材となるテープ材に銅メッキ層による銅保護層を形成する際に、リール間に架け渡されるテープ材の張力(引張応力)が高すぎる場合、テープ材が伸び、超電導層にクラックが入る等の損傷が派生し、製造される超電導線材の超電導特性Icが低下する恐れがある。
一方、銅メッキ層を形成する際に、リール間に架け渡されるテープ材の張力が低すぎると、テープ材が弛み、テープ材の搬送速度も一定にならず、形成される銅メッキ層が不均一になり、製造される超電導線材の超電導特性Icが劣化する。
したがって、銅保護層を備える超電導線材として、優れた超電導特性を有する超電導線材を製造することが望まれている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、超電導層を銅保護層で被覆した構成を有し、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造できる超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、テープ状の基板上に形成された中間層上に超電導層を形成する工程と、前記超電導層上に銀安定化層を形成する工程と、前記超電導層及び前記銀安定化層が形成された前記基板を、供給リールから供給して巻き取りリールにて巻き取るリール方式を用いて、前記供給リールと前記巻き取りリールとの間で張架した状態で銅保護層形成用の水溶液中に浸漬して前記銀安定化層上に銅保護層を形成する工程と、を含み、前記銅保護層を形成する際の前記水溶液中における前記基板の張力は、当該基板の引っ張り歪みが0.6%以下となる張力である、ようにした。
本発明によれば、超電導層を銅保護層で被覆した構成を有する酸化物超電導線材を、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造できる。
本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図 本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法の説明に供するフローチャート 銅保護層形成の工程を模式的に示す図 銅めっき形成工程の説明に供する図 超電導線材本体の引っ張り歪みと、この超電導線材本体を用いた酸化物超電導線材の超電導特性の変化の関係を示す図 線材の特性の一例を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で製造する酸化物超電導線材の一例について説明する。
<酸化物超電導線材>
図1は、本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で製造される酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。
酸化物超電導線材(以下、「超電導線材」という)10は、例えば、テープ状の金属基板11上に、中間層12、酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)13、銀安定化層14を順に積層して形成した線材本体16の周囲を、銅保護層15で被覆することで形成されている。これにより、超電導線材10は、テープ状をなしており、可撓性を有する。なお、線材本体16は、超電導層13及び銀安定化層14が形成された基板11であって、銅保護層15を形成する際の水溶液中における基板に対応する。
金属基板11は、強度及び耐熱性に優れた、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金を用いることができる。例えば、金属基板11として、Ni又はNiに、W、Mo、Cr、Fe、Co、V及びMnから選択された一種類以上の添加元素を含むNi基合金が用いられる。また、金属基板11を、強圧延加工後の金属基板とすると、Ni基合金とステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)、ニクロムから選択されたいずれか1種の耐熱金属を積層させた複合基板を用いることもできる。具体的には、金属基板11は、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、W−Mo系、Fe−Cr系(例えば、オーステナイト系ステンレス)、又は、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される低磁性の結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板にすることが望ましい。金属基板11の厚さは、例えば、0.1mm以下である。
中間層12は、例えば金属基板11からの元素の拡散が超電導層13に及ぶのを防止するための第1の中間層(拡散防止層)と、超電導層13の結晶を一定の方向に配向させるための第2の中間層(配向層)など、複数の中間層を有する。中間層12は、1層以上の何層で構成されてもよい。例えば、中間層12は、金属基板11上に、酸化アルミニウム(Al)層、ガリウムドープ酸化亜鉛層(GdZr:GZO)、或いはイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)等による第1層、Y又はLaMnO等の層である第2層、酸化マグネシウム(MgO)等から成る第3層、酸化ランタンマンガン(LaMnO)等の層である第4層、酸化セリウム(CeO)層である第5層を、順に積層することで構成される。第1層及び第2層は、スパッタリング法で成膜される。また、MgO層(第3層)をイオンビームアシスト蒸着法(IBAD:Ion Beam Assisted Deposition)により成膜し、その上のLaMnO層(第4層)を、スパッタリング法により成膜し、更に、その上のCeO層(第5層)を、スパッタリング法(PLD法でもよい)により成膜してもよい。なお、中間層12を構成する各層(1〜5層)の厚みは、例えば、約1000[nm]である。
超電導層13は、例えばREBaCu系超電導体(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択される1又は2種以上の希土類元素であり、y≦2及びz=6.2〜7)等の酸化物超電導体で構成される。このRE系超電導体としては、YBaCuで表されるイットリウム系超電導体が代表的である。超電導層13の成膜には、有機金属体積法(MOD:Metal-organic deposition)、パルスレーザー蒸着法(PLD:Pulsed Laser Deposition)、スパッタ法、又は有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を適用できる。
超電導層13は、ここでは、MOD法を用いて形成される。MOD法は、有機金属化合物を原料として、アモルファス状の活性な前駆体を基板表面に形成し、これを熱処理し結晶化することにより超電導層を成膜するものである。このMOD法は、非真空中でも長尺の基材に連続的に酸化物超電導層を形成できるので、PLD法やCVD法等の気相法よりも、プロセスが簡単で低コスト化が可能である。
なお、超電導層13には、Zr、Sn、Ce、Ti、Hf、Nbのうち少なくとも1つを含む50[nm]以下の酸化物粒子が磁束ピンニング点として分散していることが好ましい。この場合、超電導層13の成膜法としては、三フッ化酢酸塩(TFA)を用いたTFA−MOD法が好適である。例えば、TFAを含むバリウム(Ba)溶液中に、Baと親和性の高いジルコニウム(Zr)含有ナフテン酸塩等を混合することにより、RE系超電導体からなる超電導層13に、Zrを含む酸化物粒子(BaZrO)を磁束ピンニング点として分散させることができる。なお、超電導層13中に磁束ピンニング点を分散する手法は、公知の技術を適用することができる(例えば特開2012−059468号公報)。超電導層13中に磁束ピンニング点を分散させることにより、超電導線材10が湾曲した状態で用いられても、磁場の影響を受けにくく、安定した超電導特性が発揮される。
銀安定化層14は、超電導層13の直上に形成され、主に水分等から超電導層13を保護するとともに、超電導状態が部分的に破れて抵抗が発生(常電導転移)した場合に電流を迂回させる。銀安定化層14は、電気抵抗率が低く、熱伝導率の高い材料で構成されるのが好ましく、銀(Ag)、あるいは銀の合金で構成される。銀安定化層14の成膜には、例えばスパッタリング法を適用できる。銀安定化層14の厚みはここでは1〜30[μm]である。
銅保護層15は、銀安定化層14上に形成されており、銀安定化層14を形成する銀を用いるよりもコスト低廉化を図ることができる。ここでは、銅保護層15は、線材本体16の周囲を覆うように設けることで、銀安定化層14上に形成された状態になっている。銅保護層15は、例えば、メッキ法の電気メッキ法を用いて、線材本体16に形成される。なお、線材本体16の厚み、つまり、銅保護層15を形成する際の金属基板11の底面から銀安定化層14の表面までの厚みは、50〜130μmとしている。
<本実施の形態に係る超電導線材の製造方法の概要>
図2は、本発明の一実施の形態に係る超電導線材の製造方法の説明に供するフローチャートである。
図2に示すように、超電導線材10(図1参照)の製造方法は、ステップS1では、金属基板11上に、中間層12を形成する。この中間層12は、ここでは、複数層で形成し、例えば、金属基板11上に、スパッタリング法でAl層及びLaMnOを成膜し、LaMnO層上にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法によりMgO層を成膜する。次いで、MgO層上に、スパッタリング法によりLaMnO層を形成し、LaMnO層上に、スパッタリング法によりCeO層を成膜する。これら各層を順に成膜することで中間層12を形成する。
ステップS2では、テープ状の金属基板11に形成した中間層12上に、ここでは、金属基板11に中間層12を形成してなるテープ状の基材上に、MOD法により超電導層13を形成する。MOD法では、先ず、金属基板11上に中間層12を成膜してなるテープ状の基材を、超電導原料溶液(有機金属塩を有機溶媒に溶解させたもの)に浸して、引き上げること(いわゆるディップコート法)により、基材の表面、つまり中間層12の表面に超電導原料溶液を付着させて、仮焼成炉内で、仮焼成する。そして、これらの処理(ディップコートと仮焼成)を適宜繰り返すことで、超電導前駆体を形成する。次いで、本焼成炉内で、基材上の超電導前駆体に対して本焼成を行うことにより、酸化物超電導層(超電導層13)を形成する。なお、これらディップコート、仮焼成、本焼成等の各処理は、各処理を施す機器(例えば、超電導原料溶液を貯留した容器、仮焼成炉、本焼成炉)内を、送り出しリールから巻き取りリールに送られる基材を通過させることで行うことが望ましい。
ステップS3では、超電導層13上にスパッタリング法により銀安定化層14を形成する。これにより、金属基板11上に、中間層12、超電導層13及び銀安定化層14を順に積層されて構成される線材本体(超電導層13及び銀安定化層14が形成された基板)16(図1参照)が形成される。
そして、ステップS4では、線材本体16における銀安定化層14上に銅保護層15を形成する。これにより、超電導線材10が製造される。
ここで、図2のステップS4における銅保護層形成の工程を詳細に説明する。
図3は、銅保護層形成の工程を模式的に示す図である。
銅保護層15(図1参照)の形成は、ステップS3を経て、線材本体16を形成した後、ステップS4において、線材本体16(詳細には銀安定化層14)に対して行われる。ここでは、線材本体16(図1参照)の周囲に銅保護層15を形成することによって、銀安定化層14上に銅保護層15が形成される。
銅保護層形成工程(図2のステップS4の工程に相当)は、図3に示すように、水洗部21及びメッキ部22を用いて、線材本体16の銀安定化層14上に銅保護層15を形成する銅めっき工程と、銅保護層15を形成した後、水洗部23、乾燥部24を用いて洗浄して乾燥させる仕上げ工程とを有する。
銅めっき工程及び仕上げ工程は、水洗部21、メッキ部22、水洗部23、乾燥部24を有する銅保護層形成装置20により行われる。なお、この銅保護層形成装置20は、酸化物超電導線材を製造する製造システムに含まれる。
線材本体16は、供給リール31に巻回されており、この供給リール31から銅保護層形成装置20に供給され、銅保護層形成装置20で銅保護層が形成された後、巻き取りリール32で巻き取られる。
具体的には、銅保護層形成工程は、供給リール31から送り出される線材本体16を、水洗部21、メッキ部22、水洗部23、乾燥部24を通過させて、巻き取りリール32で巻き取るリール方式を用いて行われる。すなわち、メッキ部22、水洗部23、乾燥部24を通過する線材本体16は、巻き取りリール32により巻き取られることで、各部21〜24内に搬送される。
水洗部21は、供給リール31から供給される線材本体16(超電導層13及び銀安定化層14が形成された後の金属基板11)を洗浄する。
ここでは、水洗部21は、洗浄水(イオン交換水)を貯留する水洗槽を有し、この水洗槽内に、線材本体16を導入して通過させることで、線材本体16を洗浄し、銀安定化層14の表面に付着した異物を洗い流す。
メッキ部22は、水洗部21から供給される線材本体16に対して銅を付着させることにより銅保護層15を形成し、銅保護層15が形成された線材本体16は、ターンガイド部33を介して搬送方向を折り返されて、水洗部23に供給される。
水洗部23は、洗浄水(イオン交換水)を貯留する水洗槽を有し、この水洗槽内に、銅保護層15が形成された線材本体16を導入して通過させることで、銅保護層15の外面を洗浄し、外面に付着した異物を洗い流す。
乾燥部24は、水洗部23の水洗槽から搬送される銅保護層付きの線材本体16に付着した水分を乾かして乾燥する。乾燥部24は、例えば、銅保護層付きの線材本体16にエアを吹き付けることで水分を落として除去する。なお、エアは、ドライエア、クリーンドライエアのいずれかであることが望ましい。また、銅保護層付きの線材本体16をヒータで加熱して乾燥するようにしてもよい。具体的には、内部にヒータを配置した乾燥室内に、銅保護層付線材本体16を通過させることにより乾燥する。乾燥することで形成された超電導線材は巻き取りリール32により巻き取られる。
図4は、銅めっき工程の説明に供する図であり、メッキ部22のメッキ槽の概要を示す図である。
メッキ部22では、メッキ法の電気メッキ法を用いて銅保護層15を形成する。メッキ部22は、銅保護層形成用の水溶液25を貯留するメッキ槽221と、メッキ槽221内に浸漬する線材本体16の張力を調整する張力調整部26と、を有する。
このメッキ槽221では、巻き取りリール32が回転して線材本体16を巻き取る動作により、水洗部21の水洗槽(図示省略)から搬送される線材本体16を、一側面から搬入し、銅層形成用の水溶液25中に浸漬して他側面から搬出する。銅層形成用の水溶液25は、例えば、硫酸銅及び硫酸を含む硫酸銅溶液である。
メッキ槽221内には、線材本体16とともに、銅アノード28が浸されており、これらには外部電源から電流を供給可能となっている。線材本体16は、メッキ槽221内の水溶液(硫酸銅溶液)25中において、カソードとして機能する。
このように、メッキ部22では、水溶液25が貯留されたメッキ槽内において、水洗部21から導入される線材本体16をカソードとして、銅アノード28とともに、水溶液25に浸し、外部直流電源から直流を印加する。これにより、カソード反応して線材本体16の表面に銅保護層15を形成する。なお、メッキ槽221中の水溶液25は、メッキ槽221の周囲(例えば、前後)に設けられた液受け224の中にオーバーフロー(フロー部分25a参照)する。オーバーフローすることで液受け224に回収される水溶液25は、液受け224に接続されたポンプ27により、再びメッキ槽221内の水溶液25中に戻される。
張力調整部26は、銅保護層15が形成されるとき、つまり、供給リール31と巻き取りリール32との間で張架した状態で水溶液25中に浸漬している線材本体16の張力を調整する。ここでは、張力調整部26は、メッキ槽221前でテープ状の線材本体16を押さえて、巻き取りリール32で巻き取られることでメッキ槽221に搬送される線材本体16の移動を規制する。これにより、供給リール31と巻き取りリール32との間で張架される(張力がかかった状態で架け渡される)線材本体16が、メッキ槽221内を移動する際の張られた状態を調整する。
例えば、張力調整部26は、メッキ槽221の上流側に配置され、且つ、線材本体16を挟むローラ対261(ローラ261a、261b)を有し、このローラ対261の一方のローラ261aの回転方向に負荷をかけることで、ローラ対261を経由してメッキ槽221に送出される線材本体16の移動速度を規制する。ローラ対261の一方のローラ261aをモータ(図示省略)により回転可能に構成し、このモータに、モータの回転を制御する駆動部264を介して、搬送方向への線材本体16の移動を規制するよう、電流を供給する。これにより、メッキ槽221内における線材本体16は、張力調整部26により一端部側で固定され、他端部側で搬送方向に引っ張られた状態、つまり、両端で矢印T1方向、T2方向に引っ張られた状態となり、引っ張り荷重が付与され張力が発生する。線材本体16の他端部側は、巻き取りリール32により一定の力で搬送方向に引かれた状態であるので、張力調整部26における線材本体16の搬送方向へ移動を調整することで、メッキ槽221内の線材本体16の張力を調整できる。
メッキ部22では、張力調整部26が、銅保護層を形成する際の線材本体16の張力、つまり、線材本体16をメッキ槽221に浸漬させた際の線材本体16にかける所定の張力、を調整する。
すなわち、メッキ部22では、線材本体16は、所定の張力をかけられて、張られた状態で、銅保護層15が形成される。
銅保護層の形成の際(メッキ槽内)における線材本体16の所定の張力は、線材本体16の引っ張り歪みによる超電導特性Icの変化に基づいて設定される。引っ張り歪みは、線材本体が長手方向に引っ張られた際に延びて歪んだ割合%であり、(引っ張られて延びて歪んだ際の全長−引っ張られる前の全長)/引っ張られる前の全長×100で示される。
図5は、線材本体16の引っ張り歪み%と、この線材本体16を用いた超電導線材の超電導特性の変化の関係を示す。図5では、線材本体として、超電導特性Icの異なる2種類の線材(線材Aを「〇」のグラフ、線材Bを「■」のグラフで示す)の線材本体を用いている。線材A、Bは、それぞれ超電導層の厚みのみが異なり、その他の構成は同様に構成された線材である。例えば、線材AのIc=130A、線材BのIc=125Aとしている。また、図5における横軸は、線材本体の引っ張り歪み%を示し、縦軸は、Ic維持率を示し、ここでのIc維持率は、引っ張り力による各歪み発生後に、引っ張り張力を開放してから測定したIcを、引っ張り力を印加する前のIc(≡Ic0)で除した値(Ic/Ic0)としている。すなわち、Ic維持率とは、超電導線材における0Tでの臨界電流(自己磁場下における臨界電流):Ic0(=Ic@0T)に対する、当該超電導線材における印加磁場(ここでは平行磁場)での臨界電流Icとの比:Ic/Ic0を言う。
図5の線材A「〇」、線材B「■」のそれぞれで示すように、それぞれの線材本体16の張力は、線材本体16の引っ張り歪み0.7%を超えると、急激に超電導特性(Ic維持率)は劣化する。また、引っ張り歪み0.6%以下であれば、超電導特性(Ic維持率)は殆ど劣化しない。線材本体16にかける張力は、線材本体16の引っ張り歪みが0.5%以下であることが好ましい。
また、線材本体16の張力が小さすぎる場合、例えば、張力が下限値0.02kN未満の場合、リールtoリール方式では、上述したように線材本体16を均一な速度で搬送できず、線材本体16に形成される銅保護層15の長手方向及び幅方向での膜厚のばらつきが大きくなる。加えて、メッキ槽内で線材本体16が弛むことになるため、線材本体16に直流を印加する電極(図4に示す銅アノード28)からずれたり、キンクが発生し易くなる。
よって、張力調整部26からの引っ張り荷重を受けることで、線材本体16に発生する所定の張力(銅保護層15を形成する際の水溶液中における基板11の張力)は、線材本体16が均一な速度で搬送される下限値に相当する0.02kN以上の張力で、且つ、線材本体16の引っ張り歪み0.6%以下となる張力としている。なお、線材本体16に対する張力の下限値0.02kNを含む張力と線材本体16の引っ張り歪み%との関係は、後述する実施例で説明する。
このようにメッキ部22のメッキ槽内で銅保護層が形成された線材本体16は、ターンガイド部33を経由して、水洗部23、乾燥部24を経て巻き取りリール32により巻き取られる。
これにより、線材本体16に、より均一な厚みの銅保護層15を好適に形成することができる。また、線材本体16を銅保護層15で被覆することで超電導線材10を形成する。これにより、超電導特性Icの高い超電導線材を製造する際に必要な所定厚(例えば数10μmの膜厚)の安定化層を、全て銀ではなく、一部を銀に代えて銅で形成することになり、材料コストの低廉化が図られた導電性の高い安定化層を形成できる。
したがって、超電導層13を銅保護層15で被覆した構成を有した酸化物超電導線材10を、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造することができる。
図6に示すSSカーブを有する線材本体(超電導層及び銀安定化層が形成された基板)16となる線材A、Bを用いて、図3に示す製造方法により下記の条件で図1に示す構成の超電導線材10を製造した。図6は、線材の特性の一例を示す図であり、図5で用いた線材A、線材BのSSカーブを示し、各線材に加わる引っ張り荷重(線材の張力に相当)kNと、それによる線材本体の引っ張り歪み(%)の関係を示す。
線材A、Bは、それぞれ長さ10m、幅5mm、100μm厚の線材であり、超電導層13の厚みが異なることで、それぞれ超電導特性Icが異なる。線材Aの超電導特性Ic=130Aであり、線材Bの超電導特性Ic=125Aである。また、メッキ槽221の水溶液を硫酸銅溶液とし、メッキ部22は、20A、0.5m/分で線材本体16を、メッキ槽221内で移動させてメッキ処理(銅保護層形成)を行い、線材本体に20μm厚の銅保護層15を形成した。このように、超電導線材10を製造する際に、実施例1〜5、比較例1で示すように、線材本体16の張力を変更(つまり線材への張力を変更)して超電導線材10を製造した。
実施例1〜3は、線材Aを用い、これに張力0.48kN、0.06kN、0.3kNをかけて上記条件で銅保護層を形成した。また、実施例4、5は、線材Bを用い、これに張力0.38kN、0.06kNをかけて上記条件で銅保護層を形成した。
また、比較例1、2は、線材Aを用い、これに張力0.6kN、0.01kNをかけて上記条件で銅保護層を形成し、比較例3では、線材Bを用い、これに張力0.5kNをかけて上記条件で銅保護層を形成した。比較例4では、線材Bを用い、これに張力0.01kNをかけて上記条件で銅保護層を形成した。
これら実施例1〜5、比較例1〜4で製造した超電導線材の銅メッキ厚(銅保護層の厚み)と、張力付与後に測定した線材本体の超電導特性Icを表1に示す。表1における「歪」は、線材本体としての線材A、Bの引っ張り歪であり、「Ic」は、線材本体としての線材A、Bに張力(線材への引っ張り荷重に相当)をかけた後の超電導特性を示す。また、実施例における銅保護層の膜厚の変化の判定については、目標膜厚±1μmの範囲であれば許容範囲であり、均一膜厚(表1では「均一」で図示する)と判定した。
Figure 2016164846
図6及び実施例1〜5、比較例1〜4の結果に示すように、線材A、Bの引っ張り歪みが0.75(つまり、0.75以上)になると、弾性変形から塑性変形に変わり、超電導特性Icは、急激に低下する。
加えて、銅保護層形成の際に線材本体(銅保護層を形成する際の水溶液中における基板であり、超電導層及び銀安定化層が形成された基板)16に付与する張力を0.01kNとする(つまり、0.01kN以下になる)と、製造される超電導特性の低下はないものの、銅保護層厚は不均一となる。このとき、線材本体16に直流を印加する電極(図4に示す銅アノード28)から線材本体16がずれたり、キンクが発生し易くなる。これは0.01kNが、線材本体16に発生する所定の張力(超電導層及び銀安定化層が形成された基板であり主に金属基板の張力)の下限値に相当する0.02kN未満の値であるからである。なお、直流が印加する電極(図4に示す銅アノード28)から線材本体16がずれることなく、キンクが発生しない線材本体16への張力(線材本体の張力)の下限値0.02kNに対応する引っ張り歪み%は0.05%である。
これらを踏まえて、銅保護層を形成する際の線材本体16(超電導層及び銀安定化層が形成された金属基板であり、主に金属基板)の張力は、線材本体(主に金属基板11)16の引っ張り歪み0.05%以上で0.6%以下、好ましくは0.5%以下となるような張力とすることが好ましい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、超電導層上に形成された銀安定化層に、銅保護層を好適に形成することにより、超電導層を銅保護層で被覆した構成を有する酸化物超電導線材を、低コスト化を図りつつ、超電導特性を劣化させることなく好適に製造できる効果を有し、長尺のテープ状の酸化物超電導線材の製造に有用である。
10 超電導線材
11 金属基板(基板)
12 中間層
13 超電導層
14 銀安定化層
15 銅保護層
16 線材本体
20 銅保護層形成装置
21、23 水洗部
22 メッキ部
24 乾燥部
25 水溶液
26 張力調整部
27 ポンプ
31 供給リール
32 巻き取りリール
33 ターンガイド部
221 メッキ槽
224 液受け
261 ローラ対
264 駆動部

Claims (5)

  1. テープ状の基板上に形成された中間層上に超電導層を形成する工程と、
    前記超電導層上に銀安定化層を形成する工程と、
    前記超電導層及び前記銀安定化層が形成された前記基板を、供給リールから供給して巻き取りリールにて巻き取るリール方式を用いて、前記供給リールと前記巻き取りリールとの間で張架した状態で銅保護層形成用の水溶液中に浸漬して前記銀安定化層上に銅保護層を形成する工程と、を含み、
    前記銅保護層を形成する際の前記水溶液中における前記基板の張力は、当該基板の引っ張り歪みが0.6%以下となる張力である、
    ことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記銅安定化層を形成する際の前記水溶液中における前記基板の張力は、当該基板の引っ張り歪みを0.05%以上にする張力である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記基板には、ニッケル或いはニッケル合金が用いられる、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記基板には、ハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)又はステンレス鋼の金属材料が用いられる、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記銅保護層を形成する際の前記基板の底面から前記銀安定化層の表面までの厚みは50〜130μmである、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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