JP2016180331A - 内燃機関のピストンまたは内燃機関のピストンの表面処理方法 - Google Patents

内燃機関のピストンまたは内燃機関のピストンの表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スカート部の外周面の流体潤滑摩擦係数を低減できる内燃機関のピストンを提供すること。
【解決手段】内燃機関のピストン1は、シリンダ2の内壁20に対し摺動するスカート部12を有する。スカート部の外周面120は条痕を有しその表面に少なくとも1層の皮膜を有し、皮膜の少なくとも1層は電着膜である。他の皮膜は固体潤滑剤およびバインダー樹脂を含む層からなる。密着性に優れ、かつスカート部の外周面の流体潤滑摩擦係数を低減できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関のピストンまたはその表面処理方法に関する。
シリンダの内壁に対し摺動するスカート部の外周面に皮膜を有する内燃機関のピストンが知られている(例えば特許文献1)。
特開2010−216362号公報
従来、スカート部の外周面の流体潤滑における摩擦係数について考慮されていなかった。
本発明のピストンは、好ましくは、スカート部の外周面に少なくとも1層の電着膜を有する。
よって、スカート部の外周面の流体潤滑摩擦係数を低減できる。
実施形態のピストンの側面および断面を示す。 実施形態のシリンダおよびピストンの断面を示す。 実施形態1のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態の電着塗装用装置(第1の例)を示す。 第1の例の電着塗装用装置による電着塗装の様子を示す。 実施形態の電着塗装用装置(第2の例)を示す。 第2の例の電着塗装用装置における液路部材を示す。 スカート部外周面における条痕の高さと流体潤滑摩擦係数との関係を示す実験データである。 電着によらず1層の皮膜を形成した場合のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態2のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 電着によらず2層の皮膜を形成した場合のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態3のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態3の実験結果におけるスカート部外周面の断面を示す。 実施形態4のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態5のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態5の実験結果におけるスカート部外周面の断面を示す。 実施形態6のスカート部外周面の断面を模式的に示す。 実施形態6の実験結果におけるスカート部外周面の断面を示す。
以下、本発明のピストンおよびその表面処理方法を実施するための形態を、図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
まず、構成を説明する。図1は、本実施形態の内燃機関(以下、エンジンという。)のピストン1をピストンピン孔111の軸心Pが延びる方向から見た図である。右側半分で、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのピストン1の断面を示す。エンジンは例えば4サイクル・ガソリンエンジンであるがこれに限られない。ピストン1は、エンジンのシリンダ2内に、往復移動可能に収容される。図2は、コネクティングロッド(コンロッド)4に連結されたピストン1とシリンダ2とを、軸心Oを含み軸心Pに対し直交する平面で切った断面を示す。シリンダ2は、シリンダブロックに形成され、その内壁(内側の壁面)20が略円筒状である。すなわち、シリンダ2の軸心に直交する平面内で、シリンダ2の内壁20(以下、シリンダ内壁20という。)は略円形である。シリンダブロックには、シリンダヘッドが設置される。シリンダヘッドはシリンダ2の開口を塞ぐ。ピストン1の冠面104とシリンダ内壁20とシリンダヘッドとの間に、燃焼室が区画される。ピストン1は、ピストンピン3を介してコンロッド4の一端側(小端部40)に連結される。コンロッド4の他端側(大端部)はクランクシャフトに連結される。
ピストン1は、アルミニウム合金(例えばAl-Si系のAC8A)を母材(基材)として、鋳造等により成形される。ピストン1は、有底筒状であり、ヘッド部10とエプロン部11とスカート部12を有する。ヘッド部10は、その冠部に冠面104を有する。ヘッド部10において冠部を除く部位の内周側は中空である。ヘッド部10の外周面には、3本のリング溝101,102,103がピストン1の周方向(軸心Oの周り方向)に延びる。冠面104に近い側のリング溝101,102にはコンプレッションリング51,52がそれぞれ設置され、冠面104から遠い側のリング溝103にはオイルリング53が設置される。エプロン部11およびスカート部12は、ピストン1の軸心Oが延びる方向(軸心方向)において、リング溝101〜103に対し冠面104とは反対側にある。スカート部12およびエプロン部11の内周側は中空である。エプロン部11は、軸心Oを挟んでピストン1の径方向両側に一対ある。各エプロン部11はピンボス110を有する。各ピンボス110はピストンピン孔111を有する。ピストンピン孔111は、ピンボス110を貫通してピストン1の径方向に延びる。ピストンピン孔111にはピストンピン3の端部が嵌合する。エプロン部11の外周面は、ヘッド部10(スカート部12)の外周面よりも軸心Oの側にある。スカート部12は、軸心Oを挟んでピストン1の径方向両側に一対ある。スカート部12は、スラスト側スカート部121と反スラスト側スカート部122を有する。スカート部12は、ピストン1の周方向で両エプロン部11に挟まれる。スカート部12は、エプロン部11よりも薄肉である。軸心Oに対し直交する平面内で、スカート部12の外周面(以下、スカート部外周面という。)120は円弧状である。軸心Oからスカート部外周面120までの距離の2倍(スカート部12の外径)は、ヘッド部10の外径よりも若干大きく、シリンダ内壁20の径(シリンダ2の内径)よりも僅かに小さい。
図3は、軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面(部分)を示す。スカート部外周面120は、少なくとも1層の皮膜13で覆われる。本実施形態では、皮膜13は電着膜130の1層のみである。スカート部外周面120において、ピストン1の基材100は1層の電着膜130で覆われ、この電着膜130はスカート部外周面120に露出する(言換えると、電着膜130はシリンダ内壁20に直接対向する。露出の意味について、以下同様。)。ピストン1は、スカート部外周面120に条痕14を有する。条痕14は、ピストン1の周方向に延びる筋状の溝であり、ピストン1の軸心方向で互いに隣接して複数並ぶ。条痕14は、ピストン1の基材100における条痕140を含む。条痕140は、例えばバイトによる旋削加工やローラによる転造加工によって、軸心Oの周りに螺旋状に形成される。条痕140の断面形状(軸心Oを含む平面内での形状)は、加工工具の刃先の形状に倣うU字状やV字状である。なお、条痕140の断面形状は、例えば加工が部分的に重複して行われることで、段差状であってもよい。隣接する条痕140の間の部位(以下、頂部という。)の形状は、(先が尖った)突起状でもよいし(先が平らな)平面状でもよい。隣接する条痕140の間の距離(条痕のピッチ)は、数十μmから数百μmまでの範囲における所定値(例えば略250μm前後)である。条痕140の高さないし深さは、数μmから数十μmまでの範囲における所定値(例えば10μm前後)である。ここで条痕14の高さ(深さ)とは、スカート部外周面120の法線方向(ピストン1の径方向)における当該条痕14の最低部から最高部(頂部)までの距離をいう。なお、スカート部外周面120に沿って条痕140が延びる方向は、ピストン1の軸心方向に対して角度を有していればよく、条痕140は例えばピストン1の周方向に対して斜めに延びてもよい。条痕140は、直線状でなく波状に蛇行してもよい。スカート部12の位置や範囲によって条痕140の形状や大きさを変えてもよい。
電着膜130は、電着塗装により形成される皮膜である。すなわち、電着膜130は、スカート部外周面120に対する電着塗料の電着により形成される。電着膜130は、スカート部外周面120の平滑性を向上させるための化粧層として機能する。電着膜130は、他材料との接着性を有する結合剤(バインダー)としての樹脂(バインダー樹脂)を含む。バインダー樹脂として、耐熱性および耐摩耗性に優れた樹脂、例えばポリアミドイミド樹脂(以下、PAIという。)が用いられる。なお、電着膜130は、バインダー樹脂として、PAIと共に、またはPAIに代えて、他のバインダー樹脂、例えばポリイミド樹脂(以下、PIという。)またはエポキシ樹脂(以下、EPという。)の少なくとも一方を含んでもよい。PIは、PAIと同様、耐熱性および耐摩耗性に優れる。PAI,PI,EPは、接着性にも優れる。また、電着膜130は、バインダー樹脂以外の添加物を含んでもよい。電着膜130は、グラファイトや二硫化モリブデン等の導電性を有する固体潤滑剤を含まない。
ピストン1の表面処理では、スカート部外周面120を覆うように皮膜13(本実施形態では電着膜130)が形成される。ピストン1の表面処理方法は、電着膜形成工程を有する。電着膜形成工程では、電着塗装工程、水洗工程、焼成工程、冷却工程をこの順に行う。なお、電着塗装工程の前に、皮膜13の密着性を向上する等のため、塗装対象であるピストン1(基材100)のスカート部外周面120から油分や汚れを除去する等の処理を行ってもよい。電着塗装工程では、水性の電着塗料中に、被塗物であるピストン1のスカート部12を電極として晒し、電着塗料の側を対極とする。例えばアニオン型塗料を用いる場合、スカート部12を陽極とし、電着塗料の側を陰極とする。なお、カチオン型塗料を用いて極性を逆にしてもよい。電着塗料を調製するには、例えば、基剤となるバインダー樹脂を水に溶かしまたは分散させる(コロイド状態とする)。必要に応じて有機溶剤や中和剤、添加剤等を加える。電着は、定電流法または定電圧法で行うことができる。所定の電着条件で、電極間に直流電圧を印加して直流電流を通じる。電着条件は、例えば、電圧が数十V〜百数十Vで処理時間(通電時間)が数秒〜数十秒である。電流を通じると、電着塗料中の水が電気分解してバインダー樹脂を含む塗料粒子がイオン性をもち、この塗料粒子が電極としてのスカート部12の側に電気泳動する。スカート部外周面120に析出した塗料粒子は電気抵抗から発生するジュール熱によって融着し、イオン性を失って不溶性となる。これにより、スカート部外周面120に、基材100を覆う電気絶縁性の(非導電性の抵抗を示す)皮膜(電着膜130)が形成される。電着膜130の厚さ(膜厚)は電着条件によって適宜調整可能である。
図4は、電着塗装工程を行うための装置5の第1の例を概略的に示す。装置5は、電着塗料貯留手段6と、電着塗料流通手段7と、通電手段8と、制御手段9とを有する。電着塗料貯留手段6は液槽60を有する。液槽60は電着塗料を貯留する。電着塗料流通手段7は、マスキング板71と、ノズル72と、管路73と、ポンプ74とを有する。マスキング板71は、ピストン1の径方向両側に一対配置される。一方のマスキング板711は、ピストン1の径方向一方側の外周面においてスラスト側スカート部121を除く領域を覆う。他方のマスキング板712は、ピストン1の径方向他方側の外周面において反スラスト側スカート部122を除く領域を覆う。マスキング板71とピストン1の外周面との間には、スカート部12を囲むようにシール材(Oリング)713が配置される。ノズル72は、ピストン1の径方向両側に一対配置される。一方のノズル721はスラスト側スカート部121に対向し、他方のノズル722は反スラスト側スカート部122に対向する。各ノズル721,722はそれぞれ管路731,732を介してポンプ74に接続される。ポンプ74は管路730を介して液槽60に接続される。ポンプ74は液槽60から電着塗料を吸入し、ノズル72の側へ吐出する。
通電手段8は、電極と、電着用配線83,84と、電源85を有する。電極は陽極81と陰極82を有する。陽極81はピストン1の側に配置される。陽極81はロッド状であり、その先端がピストン1の冠面104に対向する。陰極82は円筒状であり、各ノズル72の内周側(電着塗料の側)に配置される。陰極82の内周側は電着塗料に接する。陰極82の外周側は絶縁材720により覆われる(図5参照)。陽極81は電着用配線83を介して電源85に接続される。陰極82は電着用配線84を介して電源85に接続される。制御手段9は、制御盤90と、アクチュエータと、制御用配線92〜94を有する。アクチュエータは、陽極駆動用アクチュエータ91と、マスキング板駆動用アクチュエータ92と、ポンプ駆動用アクチュエータを有する。陽極駆動用アクチュエータ91は、陽極81をピストン1の冠面104に対して押付けたり離間させたりすることが可能である。マスキング板駆動用アクチュエータ92は、マスキング板71をピストン1の外周面に対して押付けたり離間させたりすることが可能である。ポンプ駆動用アクチュエータは、ポンプ74を駆動する。各アクチュエータはそれぞれ制御用配線92,93,94を介して制御盤90に接続される。電源85は制御用配線95を介して制御盤90に接続される。マスキング板71および陽極81の位置、ポンプ74の作動状態、ならびに電極81,82への通電状態は、制御盤90により制御される。図5は、装置5による電着塗装工程の様子を模式的に示す。ピストンピン孔111の軸心Pが延びる方向から見た、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのピストン1等の断面を示す。スカート部121,122の各外周面120の周囲はそれぞれマスキング板711,712によりマスキングされる。ポンプ74から吐出された電着塗料は、各ノズル721,722からスカート部121,122に向けてそれぞれ噴射され、スカート部外周面120に当たった後、重力により落下して液槽60の内部に戻る。電着塗料中のバインダー樹脂は、ノズル72に配置された陰極82の内周面の側から、陽極となるスカート部外周面120に向けて、噴流中を電気泳動する。
図6は、装置5の第2の例を概略的に示す断面図である。電着塗料流通手段7は、液路部材75(751,752)を有する。アクチュエータは、液路部材駆動用アクチュエータ95(951,952)を有する。液路部材75および液路部材駆動用アクチュエータ95は、ピストン1の径方向両側に一対配置される。図7は、液路部材75と液路部材駆動用アクチュエータ95を概略的に示す斜視図である。液路部材75は、導電性の材料で形成されており、スカート部外周面120と略同形状の開口部76を有する。開口部76はスカート部外周面120に対向する。液路部材75における開口部76の周囲とピストン1の外周面との間には、スカート部外周面120を囲むようにシール材(Oリング)753が配置される。液路部材75は、スカート部外周面120と液路部材75の内周面とをその一部とする液路を構成する。すなわち、液路部材75は、開口部76とは別に2つの開口部77,78を有する。これら2つのうち一方の開口部77は管路731または732を介してポンプ74に接続し、他方の開口部78は管路733または734を介して液槽60に接続する。液路部材75を介してポンプ74と液槽60とを接続する液路は、液路部材75の内周面とスカート部外周面120とをその一部とする。ポンプ74と液路部材751を接続する管路731には、ドレン用の管路735が接続する。管路735は液槽60に開口する。管路735にはドレンバルブがある。陰極82は液路部材75に設置される。液路部材駆動用アクチュエータ95は、液路部材75をピストン1の外周面に対して押付けたり離間させたりすることが可能である。液路部材75の位置は、制御盤90により制御される。装置5の他の構成は上記第1の例と同様である。ポンプ74は液槽60から管路730を介して電着塗料を吸入し、液路部材75の側へ吐出する。ポンプ74から吐出された電着塗料は、液路部材75における液路を通って、液槽60へ戻る。液路部材75における液路を通る際、電着塗料はスカート部外周面120に接する。電着塗料中のバインダー樹脂は、陰極となる液路部材75の内周面の側から、陽極となるスカート部外周面120に向けて、電気泳動する。
装置5の第3の例は、液槽と、電極と、電着用配線と、電源を有する。陽極はピストン1の冠面104に設置され、陰極は液槽の電着塗料中に設置される。これらの電極はそれぞれ電着用配線を介して電源に接続される。ピストン1のピストンピン孔111にマスキング用の栓をする。このピストン1のヘッド部10を除く部分(スカート部12およびエプロン部11)を液槽の電着塗料中に浸漬して、通電を行う。スカート部外周面120に電着膜130を効率よく形成するという観点からは、第1の例が最も好ましく、第2の例が次に望ましい。装置5の簡素化という観点からは、第3の例が好ましい。
水洗工程では、電着塗装工程後のスカート部12(電着膜130)を水洗することで、残存液を洗い流す。これにより、仕上り性や上塗適性が向上する。なお、水洗工程を省略してもよい。その後、加熱による乾燥(焼付け乾燥)を行うと、電着膜130において、溶剤が揮発すると共に樹脂が重合して硬化する。電着膜130が硬化すると共に、スカート部外周面120に対して電着膜130が密着する。焼成工程では、水洗工程後のスカート部12(電着膜130)を、所定の焼成条件で焼成する。焼成することで、単なる焼付け乾燥(例えば90℃〜120℃で保持時間無し)よりも、電着膜130の硬度と密着性が向上する。焼成条件は、例えば180℃で30分である。200℃以下での低温焼成も可能であるため、ピストン1の基材100がアルミニウム合金である場合も焼成工程を容易に適用可能である。冷却工程では、焼成工程後のスカート部12(電着膜130)を冷却する。なお、強制的な冷却でなく自然的な(放置による)冷却でもよい。
次に、作用効果を説明する。クランクシャフトの回転運動はピストン1の往復運動に変換される。シリンダ2の内部をピストン1が往復運動する際、スカート部12の表面のうち外周面120はシリンダ内壁20に対し摺動する。これにより、シリンダ2の内部におけるピストンピン3の軸心Pを中心とするピストン1の首振り動作が抑制されるため、ピストン1の往復運動が円滑化されると共に打音が抑制される。なお、本明細書で摺動とは、スカート部外周面120が(部分的にでも)エンジンオイルの油膜を介さずシリンダ内壁20に固体同士で接触しながらこの内壁20に対し動くこと、および、スカート部外周面120がシリンダ内壁20に対して油膜を介した(すなわち固体同士で接触しない)状態でシリンダ内壁20に対し動くこと、の両方を含む。クランク角度に応じてコンロッド4はシリンダ2の軸心に対し傾く。膨張行程(燃焼行程)や圧縮行程では、ピストン1の冠面104の側から圧力が作用する。力の釣り合いにより、膨張行程でピストン1が下死点側へストロークする際、スラスト側スカート部121がシリンダ内壁20(スラスト側)に押付けられる。圧縮行程でピストン1が上死点側へストロークする際、反スラスト側スカート部122がシリンダ内壁20(反スラスト側)に押付けられる。シリンダ内壁20に押付けられる力(シリンダ内壁20との摺動面における面圧)は、燃焼圧力を受けてシリンダ内壁20に圧接するスラスト側スカート部121の方が、反スラスト側スカート部122よりも大きい。
スカート部外周面120において、シリンダ内壁20に押付けられる力(面圧ないし荷重)の分布を均一化することは、一般に困難である。通常、スカート部外周面120において、面圧が相対的に高い高面圧領域と相対的に低い低面圧領域とが生じる。スカート部外周面120のうち一部の範囲(以下、これを第1範囲という。)は、シリンダ内壁20との間の油膜の厚さより大きな凹凸を有することで、高面圧領域となる。一方、スカート部外周面120のうち第1範囲以外の範囲(以下、これを第2範囲という。)は、シリンダ内壁20との間の油膜の厚さより小さな凹凸を有することで、低面圧領域となる。
スカート部外周面120のうち第1範囲とシリンダ内壁20との間における油膜の形成は阻害されやすい一方、第2範囲とシリンダ内壁20との間には油膜が形成されやすい。エンジンの運転開始後、第1範囲が(部分的にでも)油膜を介さずシリンダ内壁20に固体同士で接触しつつ摺動する場面がある。例えば、ピストン1の上死点付近では、ピストン1の速度が低下すると共に荷重が増大する等により、シリンダ内壁20と第1範囲との間に油膜が特に形成されにくい。油膜の厚さが両者の表面粗さ以下となる(潤滑ギャップが下限値以下になる)と、両者間の潤滑は境界潤滑となり、両者間で固体接触がより頻繁に起こる。すなわち、場面によっては、シリンダ内壁20と第1範囲との間で、ストライベック曲線における荷重や速度等の条件によるパラメータが境界潤滑領域に位置することで、摩擦係数が大きくなると共に、両者間でスカッフが発生するおそれがある。一方、エンジン運転中、多くの場面で、第2範囲はシリンダ内壁20との間に油膜が形成された状態でシリンダ内壁20に対し摺動する。すなわち、油膜の厚さが両者の表面粗さよりも大きくなり(潤滑ギャップが下限値よりも大きくなり)、両者間の潤滑が流体潤滑となることで、両者間で固体接触が起こらない。すなわち、多くの場面では、シリンダ内壁20と第2範囲との間で、ストライベック曲線における上記パラメータが流体潤滑領域に位置することで、摩擦係数が小さくなると共に、両者間でスカッフが発生するおそれが少ない。
本実施形態で、第1範囲を含むスカート部外周面120にピストン1の基材100が露出することは、電着膜130によって抑制される。スカート部外周面120における第1範囲で、基材100とシリンダ内壁20とが固体同士で接触することが抑制されるため、ピストン1の耐スカッフ性が向上する。PAIやPIは耐摩耗性および耐熱性に優れるため、基材100からの電着膜130の剥離が抑制される。よって、電着膜130がバインダー樹脂としてPAIやPIを含む場合、上記効果が向上する。電着膜130は、バインダー樹脂を含む一方で、固体潤滑剤を含まない(樹脂単独の層である)。よって、電着膜130の接着力が高く、電着膜130と基材100との密着性がよい。また、電着膜130は、焼成されることで硬化する。これにより、基材100からの電着膜130の剥離が抑制される。
なお、電着膜130(電着塗料)は、電気的絶縁体である固体潤滑剤、例えばフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン。以下、PTFEという。)を含んでもよい。この場合、第1範囲で電着膜130がシリンダ内壁20に接触するときも、上記固体潤滑剤により、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の摩擦力の大きさが低減される。本実施形態では、電着膜130が最上層にあり、スカート部外周面120に露出する。このため、エンジン運転開始後のより早期の段階で上記摩擦力低減作用(潤滑性)が得られる。この場合、電着膜130における固体潤滑剤およびバインダー樹脂の含有量を調整することで、電着膜130の摩耗性や密着性を調節することができる。例えば、電着膜130において、固体潤滑剤の含有量が50重量%(以下、wt%)以上かつ95wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5wt%以上かつ50wt%以下である場合について説明する。電着膜130は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以上(バインダー樹脂の含有量が50wt%以下)であることで、摩耗しやすい。よって、スカート部外周面120がシリンダ内壁20に対し摺動する際の初期馴染み性が向上する。また、バインダー樹脂の含有量が5wt%以上(固体潤滑剤の含有量が95wt%以下)であることで、電着膜130の接着力がある程度確保される。よって、電着膜130と基材100との密着性の低下が抑制される。一方、電着膜130において、固体潤滑剤の含有量が0wt%より大きくかつ50wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上かつ100wt%未満である場合、電着膜130は、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上(固体潤滑剤の含有量が50wt%以下)であることで、接着力が高い。よって、電着膜130と基材100との密着性がよい。
一般に、スカート部外周面において、スカッフの発生を抑制する等のため、条痕を形成してこれに潤滑機能を発揮させることが行われる。すなわち、条痕にはエンジンオイル(以下、オイルという。)が溜まり、エンジンの停止中も条痕にオイルが保持される。保持されたオイルは、スカート部外周面とシリンダ内壁との間に適宜供給される。例えばエンジンが停止状態から始動する際や、ピストンが高速で往復移動する際、オイル切れが生じることが抑制される。これにより、スカート部外周面とシリンダ内壁との間でのスカッフ発生の抑制や、両者間の摩擦力低減によるピストンの往復運動の円滑化が図られる。これに対し、本発明者によって以下のことが見出された。すなわち、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の流体潤滑下における摩擦係数(以下、流体潤滑摩擦係数という。)は、スカート部外周面120における条痕14の高さと密接な関係があり、条痕14が低くなる(スカート部外周面120が平滑に近づく)ほど流体潤滑摩擦係数が小さくなる。条痕14が低いほどスカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の油膜のせん断抵抗が小さくなり、これが流体潤滑摩擦係数の低下に寄与している、と考えられる。なお、上記のスカート部外周面120における条痕14の高さとは、ピストン1の基材100を皮膜13が覆わない場合には、基材100に加工された条痕140の高さを指し、基材100を皮膜13が覆う場合には、基材100に加工された条痕140に相当する部位に(結果として)形成される、当該皮膜13における溝(条痕14)の高さを指す。
スカート部外周面120における条痕14の高さと、流体潤滑摩擦係数との関係を調べるため、実験を行った。この実験では、チップ(ブロック)オンディスク式の摩擦摩耗試験機を用いた。スカート部12を模擬する試験片(AC8A製)の条痕が形成された表面を、シリンダ内壁20を模擬するディスク(FC250製)の表面(表面粗さ:平均0.5μmRa(min.0.42〜max.0.66))に当てた。所定の荷重(面圧)および潤滑油を加えた状態で、ディスクを所定の速度で回転させた。ディスクの表面が試験片の表面に対して摺動する方向は、条痕が延びる方向に対し略直交する方向である。流体潤滑の状態となるよう、潤滑油の供給量その他の条件を調節した。条痕の高さを複数回変えて、摺動時の摩擦係数(流体潤滑摩擦係数)を測定した。図8は、試験条件を面圧:2.8Mpa、速度:2.0m/sec、潤滑油(グレード5W-30)の供給量:40ml/minとしたときの、条痕の各高さに対する摩擦係数の測定結果を示す。測定結果を示す複数のデータ(グラフにおける複数の点)は、1つの直線Lを中心とする所定範囲内の領域に収まった。上記直線Lは、条痕の高さに対し上記摩擦係数が比例して変化するものである。この実験結果は、スカート部外周面120における条痕14が低いときは高いときよりも流体潤滑摩擦係数が小さくなることを示す。
電着膜130により、スカート部外周面120の平滑性が向上する。すなわち、電着膜形成工程において、条痕140の底部が電着膜130で埋められることで、図3で模式的に示されるように条痕14が低くなる(条痕形状が平滑化する)。電着膜130で覆われた後、スカート部外周面120は、電着膜130で覆われる前よりも、平滑性が向上する。平滑性が向上することで、スカート部外周面120がオイルと接触して流体潤滑が行われる際の摩擦係数(流体潤滑摩擦係数)が小さくなる。よって、エンジンの効率(燃費)が向上する。エンジンの運転中、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の摩擦(およびこの摩擦によるエネルギー損失)は、主に、境界潤滑下における摩擦と、流体潤滑下における摩擦とにより構成される。そして、運転条件やピストン1の行程に関わらず、後者の摩擦が全体に占める割合は、前者の摩擦が全体に占める割合よりも、圧倒的に多い。後者の摩擦(流体潤滑下における摩擦)が電着膜130により低減されることで、スカート部外周面120で生じる全体としての摩擦(およびエネルギー損失)が効果的に低減される。なお、電着膜130の膜厚は、上記平滑化作用が得られる範囲内で、適宜選択可能である。
ここで、電着膜130により条痕14が低くなる(平滑性が向上する)とは、次のことを意味する。すなわち、ピストン1の基材100を覆う皮膜13の表面には、基材100に加工された条痕140に相当する(当該条痕140を覆う)部位に、新たな条痕141が(結果として)形成される。条痕141の高さは、(電着によらない)一般の皮膜13よりも電着膜130のほうが低くなる。具体的に図を用いて説明する。図9は、図3と同様、スカート部12の外周側の断面を模式的に示す。条痕140の高さをa0とする。基材100を直接覆う皮膜13に形成される条痕141の高さをa1とする。条痕140の最低部から条痕141の最低部までの距離をb1とする。条痕140の最高部(頂部)から条痕141の最高部(頂部)までの距離をc1とする。次式(1)が成り立つ。
(数1)
a1=a0+c1-b1
一般に塗料は、溶剤等の揮発成分と、樹脂等の固体成分からなる。固体成分は、塗料の乾燥(揮発成分の揮発)後も皮膜として残る。揮発成分は、塗料から揮発して、皮膜として残らない。塗装工程後、塗料の揮発成分が揮発する前の皮膜13の表面は、図9の一点鎖線で示すように、条痕140に相当する部位であるか否かに関わらず、凹凸がなく完全に平滑な面であると仮定する。条痕140の最高部(頂部)から上記揮発前の皮膜13の表面までの距離をxとする。条痕140の最低部から上記揮発前の皮膜13の表面までの距離は(a0+x)となる。塗料全体の体積(揮発成分の体積と固体成分の体積との和)に対する固体成分の体積の比をαとすると、次式(2)(3)が成り立つ。
(数2)
b1=(a0+x)α
(数3)
c1=αx
なお、αは、通常の塗料であれば0.3〜0.5であるが、特殊なものを含めると0.1〜0.6である。上記式(1)〜(3)より、次式(4)が成り立つ。
(数4)
a1=a0+αx-α(a0+x)= (1-α)a0
すなわち、塗料の揮発成分が揮発する前の状態で、条痕140に相当する部位で塗膜が平らであったとしても、この塗膜から揮発成分が揮発することで、皮膜13の表面に条痕141が形成される。(1-α)a0は、この条痕141の高さである。皮膜13の塗料における固体成分の体積比αの分だけ、当該皮膜13の条痕141が元の条痕140よりも低くなる。電着膜130により条痕14が低くなる(平滑性が向上する)とは、a1が(1-α)a0よりも低くなることを意味するから、次式(5)で表される。
(数5)
a1<(1-α)a0
すなわち、電着塗料における固体成分の体積比αの分よりも多く、電着膜130の条痕141が元の条痕140よりも低くなる。
上記式(4)のように、皮膜13の塗料からその揮発成分が揮発することにより、元の条痕14の高さに対し上記揮発成分の体積比(1-α)を掛けた高さで、当該皮膜13の条痕14が形成される。言換えると、皮膜13の塗料における固体成分の体積比αの分だけ、当該皮膜13の条痕14が元の条痕14よりも低くなる。よって、電着膜130ではない通常の皮膜13を何層も重ねれば、電着膜130によると同程度に、スカート部外周面120が平滑化されうる。本実施形態では、電着膜130を用いることにより、上記式(5)のように、体積比αの分よりも多く条痕14が低くなる。皮膜13を何層も重ねることなく、電着膜130それ単独で、スカート部外周面120が効率的に平滑化される。よって、ピストン1の製造工程の簡略化が可能である。なお、スカート部12は1層に限らず複数層の電着膜130を有してもよい。本実施形態のスカート部12は電着膜130を1層のみ有する。電着膜130を何層も重ねることがないため、ピストン1の製造工程の簡略化が可能である。
なお、電着膜130によるスカート部外周面120の平滑化(条痕が低くなること)のメカニズムは、例えば以下のものが考えられる。電着塗装工程で、通電時にスカート部外周面120に析出した塗料は導電性を失う。すなわち、電気抵抗が上がって電流が流れなくなる。このため、皮膜の成長が止まって、スカート部外周面120には均一な厚さの薄膜が形成されるはずである。しかし、条痕14の底部(谷部)と頂部(山部)とではジュール熱の放熱状態が異なる。このことが、平滑化に寄与すると考えられる。すなわち、条痕14の頂部では放熱性が良いが、底部では熱がこもる。よって、底部の方が塗料粒子の融着による皮膜の成長が早くなる。一方、スカート部外周面120に塗料が析出した後も、電解によって発生するガスにより皮膜はポーラス化するため、実際には皮膜の電気抵抗はそれほど上がらず電流が流れ続ける。よって、皮膜は成長し続けると共に、条痕14の底部の方が皮膜の成長速度が早くなる。これにより、膜厚の均一化が阻害され、条痕14の底部を埋めるように皮膜が形成される。なお、ポーラス状態の皮膜は、次の焼成(焼付け乾燥)工程において溶けて流動することで連続膜となる。
なお、ピストン1は必ずしも条痕140を有しなくてもよい。すなわち、スカート部外周面120において基材100に条痕140を有しないピストン1に電着膜130を設けてもよい。本実施形態では、基材100がスカート部外周面120に条痕140を有する。これにより、スカート部外周面120における基材100の表面積が増加し、基材100と電着膜130との接触面積が増え、両者の接着力が向上する。よって、基材100からの電着膜130の剥離が抑制されるため、第1範囲での基材100とシリンダ2との固体接触がより確実に抑制される。仮に電着膜130が基材100から剥離した場合であっても、基材100に形成された条痕140がスカート部外周面120に露出することになり、条痕140による潤滑機能が発揮される。
電着膜130によるスカート部外周面120の平滑化を向上させるためには、電着塗料の固体成分(塗料粒子)をより非導電性に近づけることが重要となる。すなわち、電着塗料に導電性の固体成分を添加すると、通電によりスカート部外周面120に形成される皮膜は、導電性となる。この皮膜は電気抵抗が小さいため、ジュール熱の発生が少なくなる。よって、条痕14の底部と頂部とで、塗料粒子の融着による皮膜の成長速度があまり違わなくなる。これにより、膜厚の均一化が促進され、条痕14の底部を埋めるように皮膜が形成されにくくなる(平滑化が阻害される)。上記導電性の固体成分は、導電性の固体潤滑剤、例えばグラファイト(以下、Cという。)や二硫化モリブデン(以下、MoS2という。)を含む。これに対し、本実施形態の電着塗料は、導電性の固体潤滑剤を含まない。よって、電着塗料がより非導電性に近づくため、電着膜130による上記平滑化作用が向上する。なお、電着塗料の非導電性がある程度保たれ、電着膜130による上記平滑化作用が得られる限り、電着塗料に少量の導電性の固体成分(固体潤滑剤)が添加されたり混入したりすることは許容される。また、電気的絶縁体である固体潤滑剤(PTFE等)が電着塗料に含まれることも許容される。すなわち、電着塗料に非導電性の固体潤滑剤を添加した場合も、通電時の電着塗料は、固体潤滑剤を全く添加しない場合と同様の挙動を示し、条痕14の底部を埋めるように電着膜130が形成される。なお、電着膜130に含まれる固体潤滑剤は、CやMoS2よりも非導電性であればよく、PTFEに限らない。
基材100と電着膜130との間には他の皮膜13が介在しない。電着塗装工程では、基材100が電着塗料に対してスカート部外周面120に露出する。よって、スカート部外周面120が電極として機能しやすく、電着膜130の形成が容易である。
[実施形態2]
まず、構成を説明する。図10は、本実施形態における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。皮膜13は、電着膜130を有すると共に、電着膜130とは別に、1層の皮膜を有する。すなわち、ピストン1のスカート部12は2層の皮膜を有する。電着膜130以外の上記皮膜は、潤滑皮膜131である。皮膜13は、ピストン1の基材100の側から電着膜130と潤滑皮膜131とをこの順に有する。電着膜130は基材100を覆う。電着膜130の組成は、実施形態1と同様である。潤滑皮膜131は電着膜130を覆い、スカート部外周面120に露出する。潤滑皮膜131は、固体潤滑剤とバインダー樹脂を含む。固体潤滑剤は、Cである。なお、潤滑皮膜131は、固体潤滑剤として、Cと共に、またはCに代えて、他の固体潤滑剤、例えばMoS2またはPTFEの少なくとも一方を含んでもよい。バインダー樹脂は、固体潤滑剤を被塗物に定着させる機能を有し、例えばPAIが用いられる。なお、潤滑皮膜131は、バインダー樹脂として、PAIと共に、またはPAIに代えて、他のバインダー樹脂、例えばPIまたはEPの少なくとも一方を含んでもよい。潤滑皮膜131は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以上かつ95wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5wt%以上かつ50wt%以下である。
ピストン1の表面処理方法(本処理)は、電着膜形成工程と潤滑皮膜形成工程を有する。本処理では、電着膜形成工程と潤滑皮膜形成工程をこの順に行う。電着膜形成工程の手順は、実施形態1と同様である。潤滑皮膜形成工程では、バインダー樹脂の溶液中に固体潤滑剤を分散させた塗料を対象物表面に塗布し、乾燥・焼付を行うことにより乾燥皮膜を形成させる、いわゆる乾燥・焼付法を行う。潤滑皮膜形成工程では、塗装工程、乾燥工程、冷却工程をこの順に行う。なお、塗装工程の前に、潤滑皮膜131の密着性を向上する等のため、塗装対象であるスカート部外周面120(電着膜130)から油分や汚れを除去する等の処理を行ってもよい。塗装工程では、スクリーン印刷により、塗料をスカート部外周面120(電着膜130)に塗布する。なお、スクリーン印刷以外の印刷や、スプレー等による塗料の吹き付け、ないし塗料中への浸漬により、塗布を行ってもよい。塗料を調製するには、例えば、有機溶剤にバインダー樹脂と固体潤滑剤を配合し、その溶液に必要に応じて添加剤や硬質粒子を添加して、ビーズミル等を用いて混合・分散すればよい。塗料は、必要に応じて有機溶剤により希釈することができる。塗装工程により、スカート部外周面120に、電着膜130を覆う塗膜が形成される。乾燥工程では、90℃〜120℃で加熱(保持時間は必要無し)などの乾燥条件で、塗膜を焼付け乾燥させる。例えば塗料が手に付かない状態になると、乾燥工程が終了する。乾燥により上記塗膜から揮発成分(有機溶剤)が除去されると共に、焼付けにより固体潤滑剤がバインダー樹脂を介してスカート部外周面120に定着し、潤滑皮膜131が形成される。冷却工程では、焼成工程後のスカート部12(潤滑皮膜131)を冷却する。なお、強制的な冷却でなく自然的な冷却でもよい。
なお、潤滑皮膜形成工程における乾燥工程を焼成工程に変えてもよいし、電着膜形成工程における焼成工程を(潤滑皮膜形成工程におけると同様の)乾燥工程に変えてもよい。各皮膜について乾燥と焼成のどちらを行うかで、全体の(複層)皮膜を形成する工程として4通りが考えられる。ただし、皮膜の強度を全体として向上するため、全体の皮膜を形成する工程で1回以上の焼成(少なくとも1つの皮膜の焼成)を行うことが好ましい。よって、焼成を1回も行わない(全ての皮膜について乾燥を行う)場合を除くと、各皮膜について乾燥と焼成のどちらを行うかで、全体の皮膜を形成する工程として、3通りが考えられる。本実施形態では、全体の皮膜を形成する代表的な工程として、電着膜形成工程が焼成工程を含み、潤滑皮膜形成工程が乾燥工程を含むものを例示する。
次に、作用効果を説明する。潤滑皮膜131により、エンジン運転開始後の比較的早期(初期)に、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の摩擦が低減される。すなわち、第1範囲で、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間に油膜が形成されなくても、潤滑皮膜131がスカート部外周面120に露出しているため、潤滑皮膜131の固体潤滑剤により、両者間の摩擦力の大きさが低減される。なお、潤滑皮膜131は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以下(バインダー樹脂の含有量が50wt%以上)であってもよい。この場合、潤滑皮膜131の接着力が高く、潤滑皮膜131と電着膜130との密着性がよい。本実施形態では、潤滑皮膜131は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以上(バインダー樹脂の含有量が50wt%以下)である。潤滑皮膜131は、固体潤滑剤を多く含む(バインダー樹脂が少ない)ことで、摩耗しやすい。よって、ピストン1の外周面がシリンダ内壁20に対し摺動する際の初期馴染み性が向上する。すなわち、第1範囲(潤滑皮膜131の表面)が早期に摩耗して平滑化し、シリンダ内壁20と早急に馴染む。第1範囲において滑らかな摺動面が速やかに形成され、潤滑ギャップが下限値よりも大きくなる。これにより、第1範囲の潤滑が、境界潤滑から流体潤滑へ変わる。また、平滑性が向上することで、第1範囲(および後述するように第2範囲)での流体潤滑摩擦係数が小さくなる。これらにより、スカート部外周面120とシリンダ内壁20との間における摩擦力の大きさが低減され、スカート部12での摩擦損失が低減される。
潤滑皮膜131は、バインダー樹脂の含有量が5wt%以上(固体潤滑剤の含有量が95wt%以下)である。よって、潤滑皮膜131の接着力がある程度確保され、潤滑皮膜131と電着膜130との密着性の低下が抑制される。潤滑皮膜131は焼成されないため、焼成された場合よりも摩耗しやすい。よって、潤滑皮膜131による初期馴染み性が得られやすい。なお、初期馴染み性を向上させるため、潤滑皮膜131に含まれるバインダー樹脂として、耐摩耗性が低いものを用いてもよい。
電着膜130により、スカート部外周面120の少なくとも第2範囲で、基材100における条痕形状が平滑化される(条痕14が電着膜130により低くなる)。平滑化されたスカート部外周面120(電着膜130)を覆うように潤滑皮膜131が形成されることで、(結果として)潤滑皮膜131の表面も平滑化される。すなわち、潤滑皮膜131で覆われたスカート部外周面120(少なくとも第2範囲)が平滑化される。これにより、第2範囲での流体潤滑摩擦係数が小さくなる。従来、スカート部外周面に、固体潤滑剤を含むと共に摩耗性の高い皮膜を有するピストンが知られている。このピストンでは、スカート部外周面の第1範囲において、皮膜が早期に摩耗してシリンダの内壁と馴染むことで、境界潤滑から流体潤滑へ変わると共に、流体潤滑摩擦係数が小さくなる。しかし、第1範囲以外の第2範囲では、皮膜がシリンダの内壁に対し直接接触しつつ動くことがないため、流体潤滑のままであると共に、第2範囲の皮膜に形成された条痕の高さは変化しない。よって、オイルとの接触面である第2範囲において、平滑性が低いため、高摩擦を示す。これに対し、本実施形態のピストン1では、オイルとの接触面である第2範囲で、電着膜130により条痕14が低くなることで、平滑性が向上する。よって、第1範囲だけでなく、第2範囲において、流体潤滑下での摩擦が低減される。すなわち、スカート部外周面120における(第1範囲と第2範囲を含む)全体にわたって、流体潤滑下での摩擦係数(摩擦力)が小さくなる。
2層の皮膜130,131で覆われたスカート部外周面120における条痕14の高さが電着膜130により低くなる(平滑性が向上する)ことの意味は、実施形態1に準じて理解することができる。図9と同様の模式的断面を示す図11を用いて、以下、説明する。a0,a1,b1,c1は図9と同様である。電着膜130を覆う潤滑皮膜131の表面には、条痕141に相当する部位に、溝(条痕142)が(結果として)形成される。条痕142の高さをa2とする。条痕141の最低部から条痕142の最低部までの距離をb2とする。条痕141の最高部(頂部)から条痕142の最高部(頂部)までの距離をc2とする。次式(6)が成り立つ。
(数6)
a2=a1+c2-b2
潤滑皮膜131の塗装工程後、塗料の揮発成分が揮発する前の潤滑皮膜131の表面は、図11の二点鎖線で示すように、凹凸がなく完全に平滑な面であると仮定する。条痕141の最高部(頂部)から上記揮発前の潤滑皮膜131の表面までの距離をyとする。条痕141の最低部から上記揮発前の潤滑皮膜131の表面までの距離は(a1+y)となる。潤滑皮膜131の塗料全体の体積に対する固体成分の体積の比をβとする。固体成分は固体潤滑剤や樹脂等である。次式(7)(8)が成り立つ。
(数7)
b2=(a1+y)β
(数8)
c2=βy
なお、βは、通常の塗料であれば0.3〜0.5であるが、特殊なものを含めると0.1〜0.6である。上記式(6)〜(8)より、次式(9)が成り立つ。
(数9)
a2=a1+βy-β(a1+y)= (1-β)a1
(1-β)a1は、a1をベースとして、潤滑皮膜131の塗料からその揮発成分が揮発することにより潤滑皮膜131の表面に形成される、条痕142の高さである。上記式(4)を用いて、上記式(9)は次式(10)のように書き換えられる。
(数10)
a2= (1-α) (1-β) a0
すなわち、皮膜130,131の各塗料における固体成分の体積比α,βの分だけ、当該皮膜130,131の複層における条痕142が元の条痕140よりも低くなる。電着膜130により条痕142の高さが低くなる(平滑性が向上する)とは、a2が(1-α)(1-β)a0よりも低くなることを意味するから、次式(11)で表される。
(数11)
a2< (1-α) (1-β) a0
この式(11)は、上記式(5)(9)からも導かれる。
上記式(9)のように、潤滑皮膜131の塗料からその揮発成分が揮発することにより、電着膜130における条痕141の高さa1に対し上記揮発成分の体積比(1-β)を掛けた高さa2で、潤滑被膜131における条痕142が形成される。言換えると、潤滑皮膜131の塗料における固体成分の体積比βの分だけ、潤滑皮膜131の条痕142が元の条痕141よりも低くなる。上記式(5)(11)を比べると、潤滑被膜131により、実施形態1(条痕141)よりもβの分だけ条痕142がさらに低くなる。よって、電着膜130それ単独の場合よりも、スカート部外周面120がより効率的に平滑化される。
電着膜130は、バインダー樹脂を含む一方で、固体潤滑剤を含まない。よって、電着膜130の接着力が高く、電着膜130と基材100との密着性がよい。また、電着膜130と潤滑皮膜131との密着性がよい。また、電着膜130は、焼成されることで硬化する。よって、基材100からの電着膜130の剥離が抑制される。なお、実施形態1と同様、電着膜130は、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含んでもよい。この場合、実施形態1と同様、電着膜130による平滑化作用が得られると共に、潤滑皮膜131の摩耗等により電着膜130がスカート部外周面120に露出すると、固体潤滑剤を含む電着膜130による潤滑性等が得られる。
[実施形態3]
まず、構成を説明する。図12は、本実施形態における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。実施形態2と同様、スカート部12は2層の皮膜を有する。皮膜は、基材100の側から潤滑皮膜131と電着膜130とをこの順に有する。潤滑皮膜131は基材100を覆う。潤滑皮膜131は、固体潤滑剤としてCを含む。なお、固体潤滑剤は、Cと共に、またはCに代えて、MoS2を含んでもよい。潤滑皮膜131は、固体潤滑剤の含有量が0wt%より大きくかつ50wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上かつ100wt%未満である。電着膜130は潤滑皮膜131を覆い、スカート部外周面120に露出する。電着膜130の組成は、実施形態1と同様である。
ピストン1の表面処理方法(本処理)では、潤滑皮膜形成工程と電着膜形成工程をこの順に行う。潤滑皮膜形成工程では、塗装工程、焼成工程、冷却工程をこの順に行う。焼成工程では、塗装工程後のスカート部12(潤滑皮膜131)を、例えば180℃で30分、または200℃で20分などの焼成条件で焼成する。これにより、単なる焼付け乾燥よりも、潤滑皮膜131の硬度と密着性が向上する。潤滑皮膜形成工程における他の工程は実施形態2と同様である。電着膜形成工程では、電着塗装工程、水洗工程、乾燥工程、冷却工程をこの順に行う。乾燥工程では、90℃〜120℃で加熱(保持時間は必要無し)などの乾燥条件で、塗膜を焼付け乾燥させる。例えば塗料が手に付かない状態になると、乾燥工程が終了する。電着膜形成工程における他の工程は実施形態1と同様である。なお、水洗工程を省略してもよい。
次に、作用効果を説明する。電着膜130および潤滑皮膜131により、スカート部外周面120に基材100が露出することが抑制される。よって、実施形態1と同様、ピストン1の耐スカッフ性が向上する。
電着膜130により、スカート部外周面120の平滑性が向上する。これにより、少なくとも第2範囲で、流体潤滑摩擦係数が小さくなる。電着膜130は、固体潤滑剤を含まない。よって、電着膜130の接着力が高く、電着膜130と潤滑皮膜131との密着性がよい。なお、実施形態1と同様、電着膜130は、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含んでもよい。この場合、電着膜130による平滑化作用が得られると共に、電着膜130による潤滑性等が得られる。本実施形態で、電着膜130は、固体潤滑剤を含まないため、固体潤滑剤を含む場合よりも耐摩耗性がある。一方、電着膜130は、焼成されないため、焼成される場合よりも摩耗しやすい。よって、第1範囲において電着膜130が早期に摩耗して平滑化し、シリンダ内壁20と早急に馴染みやすい。また、電着膜130に覆われた潤滑皮膜131がスカート部外周面120に露出しやすくなる。これにより、潤滑皮膜131のメリット(潤滑性や初期馴染み性)が得られやすい。なお、電着膜130を摩耗しやすくするため、電着膜130に含まれるバインダー樹脂として、耐摩耗性が低いものを用いてもよい。また、電着膜130に電気的絶縁体である固体潤滑剤を含める場合、固体潤滑剤の含有量を多く(言換えるとバインダー樹脂の含有量を少なく)してもよい。
潤滑皮膜131は、固体潤滑剤を含む(固体潤滑剤の含有量が0wt%より大きい)。よって、第1範囲で、電着膜130が摩耗する等により、潤滑皮膜131がスカート部外周面120に露出すれば、実施形態2と同様、固体潤滑剤によりスカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の摩擦力の大きさが低減される。なお、潤滑皮膜131は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以上でもよい。この場合、潤滑皮膜131は、摩耗しやすい。よって、第1範囲で、電着膜130が摩耗する等により、潤滑皮膜131がスカート部外周面120に露出すれば、実施形態2と同様、潤滑皮膜131の表面が早期に摩耗して平滑化することで、初期馴染み性が良くなる。本実施形態では、潤滑皮膜131は、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上(固体潤滑剤の含有量が50wt%以下)である。よって、潤滑皮膜131の接着力が高く、潤滑皮膜131と基材100との密着性がよい。また、潤滑皮膜131と電着膜130との密着性がよい。また、潤滑皮膜131は、焼成されることで硬化する。よって、基材100からの潤滑皮膜131の剥離が抑制される。なお、基材100はスカート部外周面120に条痕140を有する。これにより、基材100に潤滑皮膜131がより強固に接着する。潤滑皮膜131に含まれる固体潤滑剤は、CやMoS2であり、導電性を有する。よって、電着塗装工程では、潤滑皮膜131に覆われたスカート部外周面120が電極として機能しやすく、潤滑皮膜131の上に電着膜130を形成することが容易である。
図13は、電着塗装工程における電着条件を60Vで5秒としたときの実験結果における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。表1は、この実験において形成された各皮膜13の膜厚と条痕14の高さを示す。
(表1)
Figure 2016180331
ここで膜厚とは、スカート部外周面120の法線方向において、ある層の皮膜13における条痕14の最高部(頂部)から、当該皮膜13を覆う次の層の皮膜13における条痕14の最高部(頂部)までの距離をいう。なお、膜厚を測定するための基準位置は、条痕14の頂部に限らない。膜厚や条痕14の高さの各数値は、複数の条痕14について平均したものを示す。基材100に加工された条痕140の高さa0は9.5μmだった。潤滑皮膜131の膜厚は6.9μmだった。潤滑皮膜131に形成された条痕141の高さa1は6.5μmだった。電着膜130の膜厚は2.0μmだった。電着膜130に形成された条痕142の高さa2は1.7μmだった。条痕14の高さが電着膜130により低くなる(平滑性が向上する)ことの意味は、実施形態2に準じて理解することができる。a1(=6.5μm)は、「条痕140の高さa0をベースとして潤滑皮膜131の塗料からその揮発成分が揮発することによる条痕141の高さ(1-β)a0」に相当する。a2(=1.7μm)は、「条痕141の高さa1をベースとして電着塗料からその揮発成分が揮発することによる条痕142の高さ(1-α) a1=(1-α) (1-β)a0」よりも低い高さに相当する。
図8のグラフ(直線L)に従えば、流体潤滑摩擦係数は、スカート部外周面120における条痕14の高さがa0(=9.5μm)であるとき略0.012であり、a1(=6.5μm)であるとき0.009であり、a2(=1.7μm)であるとき略0.004である。よって、本実施形態のピストン1では、スカート部外周面120に基材100の条痕140が露出しているもの(以下、比較例1という。)に比べ、条痕14の高さがa0からa2へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略1/3まで低下することが分かる。また、スカート部外周面120(基材100)が潤滑皮膜131のみで覆われているもの(以下、比較例2という。)に比べ、条痕14の高さがa1からa2へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略4/9まで低下することが分かる。なお、図8のグラフに従えば、流体潤滑摩擦係数は、スカート部外周面120における条痕14の高さが2.0μm以下であるとき、略0.0045以下である。このとき、流体潤滑摩擦係数は、比較例1に比べて略3/8以下まで低下し、比較例2に比べて略半分以下まで低下することが分かる。
表2は、電着条件を変化させたときの条痕142の高さa2を示す実験結果である。条痕140,141の高さa0,a1および潤滑皮膜131の膜厚は、電着条件を60Vで5秒としたときの上記実験結果と同じとした。
(表2)
Figure 2016180331
a2は、処理時間(通電時間)を5秒とした場合、電圧が40Vのときは5.0μmとなり、60Vのときは1.7μmとなった。処理時間を10秒とした場合、電圧が40Vのときは6.3μmとなり、60Vのときは1.6μmとなり、80Vおよび100Vのときは1.5μmとなった。なお、a0が7.5μmでありa1が5.3μmである条件下で、a2は、処理時間を15秒とした場合、電圧が40Vのときは1.1μmとなり、60Vのときは1.0μmとなった。同条件下で、a2は、処理時間を30秒とした場合、電圧が40Vのときは1.3μmとなり、60Vのときは0.9μmとなった。a2は、電圧が40Vのときは、処理時間が10秒以下では、条痕141の高さから大きく低下しなかった。電圧が60Vのときは、処理時間が10秒以下であっても、条痕141の高さから大きく低下し、2.0μm以下となった。このように、電圧を60Vよりも大きくしても、処理時間が10秒では、a2は大きく変化しなかった。電圧が60Vのとき、処理時間が5秒でも、10秒のときからa2は大きく変化しなかった。よって、電圧を低く保ち、処理時間を短くし、かつa2を2.0μm以下まで低くするための電着条件は、60Vで5秒であれば足りることが分かった。基材100と電着膜130との間には、潤滑皮膜131が介在する。電着は、潤滑皮膜131に電流が流れ、潤滑皮膜131の表面に電着塗料が析出することで行われる。潤滑皮膜131は、導電性が基材100よりも低く、6.9μmの膜厚で基材100を覆った。この場合であっても、60Vで5秒という電着条件で、上記のように条痕142の高さa2が2.0μm以下まで低い電着膜130が形成されることが分かった。
電着条件を60Vで5秒としたとき、電着膜130の膜厚は2.0μmだった。この値は、潤滑皮膜131の膜厚(6.9μm)よりも大幅に小さい。このように電着膜130の膜厚の増大が抑制されることで、電着膜130が摩耗しやすくなる。これにより、上記のように初期馴染み性や潤滑性が向上する。なお、初期馴染み性等を向上させるためには、電着膜130の膜厚は、2.0μmに限らず、例えば略3.0μmよりも若干厚くてもよく、好ましくは3μm以下(0μmより大きい)である。
[実施形態4]
まず、構成を説明する。図14は、本実施形態における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。皮膜13は、電着膜130を有すると共に、電着膜130とは別に、下層皮膜(第1皮膜)132および上層皮膜(第2皮膜)133を有する。すなわち、ピストン1のスカート部12は3層の皮膜を有する。下層皮膜132および上層皮膜133は、バインダー樹脂と固体潤滑剤を含む潤滑皮膜が複層化したものである。皮膜13は、基材100の側から電着膜130と下層皮膜132と上層皮膜133とをこの順に有する。電着膜130は基材100を覆う。電着膜130の組成は、実施形態1と同様である。下層皮膜132は、上層皮膜133よりも基材100に近い側すなわち下層側にあり、電着膜130を覆う。下層皮膜132は、バインダー樹脂としてPAIを含む。なお、バインダー樹脂は、PAIと共に、またはPAIに代えて、PIまたはEPの少なくとも一方を含んでもよい。下層皮膜132は、固体潤滑剤としてCを含む。なお、固体潤滑剤は、Cと共に、またはCに代えて、MoS2またはPTFEの少なくとも一方を含んでもよい。下層皮膜132は、固体潤滑剤の含有量が0wt%より大きく50wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上かつ100wt%未満である。上層皮膜133は、下層皮膜132よりも基材100から遠い側すなわち上層側にある。上層皮膜133は下層皮膜132を覆い、スカート部外周面120に露出する。上層皮膜133は、バインダー樹脂としてPAIを含む。なお、バインダー樹脂は、PAIと共に、またはPAIに代えて、PIまたはEPの少なくとも一方を含んでもよい。上層皮膜133は、固体潤滑剤としてMoS2を含む。なお、固体潤滑剤は、MoS2と共に、またはMoS2に代えて、CまたはPTFEの少なくとも一方を含んでもよい。上層皮膜133は、固体潤滑剤の含有量が50wt%以上かつ95wt%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5wt%以上かつ50wt%以下である。
ピストン1の表面処理方法(本処理)は、電着膜形成工程と下層皮膜形成工程と上層皮膜形成工程を有する。本処理では、電着膜形成工程と下層皮膜形成工程と上層皮膜形成工程をこの順に行う。電着膜形成工程の手順は、実施形態1と同様である。下層皮膜形成工程および上層皮膜形成工程の手順は、実施形態2の潤滑皮膜形成工程の手順と同様である。なお、電着膜形成工程における焼成工程を乾燥工程に変えてもよいし、下層皮膜形成工程における乾燥工程を焼成工程に変えてもよいし、上層皮膜形成工程における乾燥工程を焼成工程に変えてもよい。各皮膜について乾燥と焼成のどちらを行うかで、全体の皮膜を形成する工程として8通りが考えられる。焼成を1回も行わない(全ての皮膜について乾燥を行う)場合を除くと、全体の皮膜を形成する工程として、7通りが考えられる。本実施形態では、全体の皮膜を形成する代表的な工程として、電着膜形成工程が焼成工程を含み、下層皮膜形成工程および上層皮膜形成工程が乾燥工程を含むものを例示する。
次に、作用効果を説明する。皮膜13は、下層皮膜132と上層皮膜133とをこの順に有する。上層皮膜133により、実施形態2の潤滑皮膜と同様の作用効果(初期馴染み性等)が得られる。下層皮膜132は、固体潤滑剤を含む(固体潤滑剤の含有量が0wt%より大きい)。よって、第1範囲で、上層皮膜133の摩耗等により、下層皮膜132がスカート部外周面120に露出すれば、実施形態2と同様、下層皮膜132の固体潤滑剤によりスカート部外周面120とシリンダ内壁20との間の摩擦力の大きさが低減される。下層皮膜132は、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上(固体潤滑剤の含有量が50wt%以下)である。よって、下層皮膜132の接着力が高く、下層皮膜132と電着膜130との密着性がよい。また、下層皮膜132と上層皮膜133との密着性がよい。
電着膜130により、実施形態2の電着膜130と同様の作用効果(平滑性の向上等)が得られる。すなわち、潤滑皮膜(上層皮膜133)で覆われたスカート部外周面120が平滑化される。3層の皮膜で覆われたスカート部外周面120における条痕14の高さが電着膜130により低くなる(平滑性が向上する)ことの意味は、実施形態1,2に準じて理解することができる。例えば、下層皮膜132における塗料全体の体積に対する固体成分の体積の比をβ、上層皮膜133における塗料全体の体積に対する固体成分の体積の比をγとして、実施形態2と同様に計算すればよい。電着膜130の他に複数(2層)の皮膜132,133を形成することで、スカート部外周面120がより効率的に平滑化される。なお、実施形態2と同様、電着膜130は、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含んでもよい。
[実施形態5]
まず、構成を説明する。図15は、本実施形態における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。実施形態4と同様、スカート部12は3層の皮膜を有する。皮膜13は、基材100の側から下層皮膜132と電着膜130と上層皮膜133とをこの順に有する。下層皮膜132は基材100を覆う。下層皮膜132の組成は、実施形態3の潤滑皮膜131と同様である。電着膜130は下層皮膜132を覆う。電着膜130の組成は、実施形態1と同様である。上層皮膜133は電着膜130を覆い、スカート部外周面120に露出する。上層皮膜133の組成は、実施形態4と同様である。ピストン1の表面処理方法(本処理)では、下層皮膜形成工程と電着膜形成工程と上層皮膜形成工程をこの順に行う。下層皮膜形成工程の手順は、実施形態3の潤滑皮膜形成工程の手順と同様である。電着膜形成工程の手順は、実施形態3と同様である。上層皮膜形成工程の手順は、実施形態4と同様である。
次に、作用効果を説明する。上層皮膜133により、実施形態2の潤滑皮膜131と同様の作用効果(初期馴染み性等)が得られる。電着膜130により、実施形態2の電着膜130と同様、潤滑皮膜(上層皮膜133)で覆われたスカート部外周面120(少なくとも第2範囲)が平滑化される。電着膜130は固体潤滑剤を含まない。よって、電着膜130の接着力が高く、電着膜130と下層皮膜132との密着性がよい。また、電着膜130と上層皮膜133との密着性がよい。なお、実施形態2と同様、電着膜130は、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含んでもよい。電着膜130は焼成されないため、実施形態3の電着膜130と同様、第1範囲において電着膜130が(上層皮膜133と共に)早期に摩耗して平滑化し、シリンダ内壁20と早急に馴染みやすい。また、電着膜130に覆われた下層皮膜132がスカート部外周面120に露出しやすくなるため、下層皮膜132のメリット(潤滑性や初期馴染み性)が得られやすい。なお、実施形態3と同様、電着膜130に、耐摩耗性が低いバインダー樹脂を含めてもよいし、電気的絶縁体である固体潤滑剤を多く含めてもよい。下層皮膜132により、実施形態3の潤滑皮膜131と同様の作用効果が得られる。
図16は、電着条件を60Vで5秒としたときの実験結果における、図13と同様の断面を示す。表3は、この実験において形成された各皮膜13の膜厚と条痕14の高さを示す。条痕140,141,142の高さa0,a1,a2、下層皮膜132および電着膜130の膜厚は、実施形態3における実験結果(図13、表1)と同じとした。
(表3)
Figure 2016180331
上層皮膜133の膜厚は4.0μmだった。上層皮膜133に形成された条痕143の高さa3は1.2μmだった。a3は、「条痕142の高さa2をベースとして上層皮膜133の塗料からその揮発成分が揮発することにより形成される条痕143の高さ(1-γ) a2」に相当する。上層皮膜133により覆われる分だけ、スカート部外周面120における条痕143の高さa3が実施形態3(条痕142の高さa2=1.7μm)よりも低いことが分かる。
図8のグラフ(直線L)のグラフに従えば、流体潤滑摩擦係数は、スカート部外周面120における条痕14の高さがa3(=1.2μm)であるとき略0.0037である。よって、本実施形態のピストン1では、上記比較例1に比べ、条痕14の高さがa0からa3へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略30%まで低下することが分かる。また、上記比較例2に比べ、条痕14の高さがa1からa3へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略40%まで低下することが分かる。
電着膜130の膜厚は3μm以下だった。このように電着膜130の膜厚の増大が抑制されることで、電着膜130が摩耗しやすくなる。これにより、上記のように初期馴染み性や潤滑性が向上する。なお、初期馴染み性等を向上させるためには、電着膜130の膜厚は、例えば略3.0μmよりも若干厚くてもよい。
[実施形態6]
まず、構成を説明する。図17は、本実施形態における、ピストン1の軸心Oを含む平面内でのスカート部12の外周側の断面を示す。実施形態4と同様、スカート部12は3層の皮膜を有する。皮膜13は、基材100の側から下層皮膜132と上層皮膜133と電着膜130とをこの順に有する。下層皮膜132は基材100を覆う。下層皮膜132の組成は、実施形態3の潤滑皮膜131と同様である。上層皮膜133は下層皮膜132を覆う。上層皮膜133の組成は、実施形態4と同様である。上層皮膜133は、固体潤滑剤としてMoS2を含む。なお、固体潤滑剤は、MoS2と共に、またはMoS2に代えて、Cを含んでもよいが、PTFEを含まない。電着膜130は上層皮膜133を覆い、スカート部外周面120に露出する。電着膜130の組成は、実施形態1と同様である。ピストン1の表面処理方法(本処理)では、下層皮膜形成工程と上層皮膜形成工程と電着膜形成工程をこの順に行う。下層皮膜形成工程および上層皮膜形成工程の手順は、実施形態3の潤滑皮膜形成工程の手順と同様である。例えば、下層皮膜形成工程における焼成工程後、ピストン1の温度が50℃〜120℃にあるとき、上層皮膜形成工程における塗装工程を行う。電着膜形成工程の手順は、実施形態3と同様である。
次に、作用効果を説明する。電着膜130により、実施形態3の電着膜130と同様の作用効果(外周面120の平滑化等)が得られる。第1範囲で、電着膜130の摩耗等により、上層皮膜133がスカート部外周面120に露出すれば、上層皮膜133の固体潤滑剤により摩擦力の大きさが低減されると共に、上層皮膜133が早期に摩耗することで初期馴染み性がよくなる。第1範囲で、電着膜130および上層皮膜133の摩耗等により、下層皮膜132がスカート部外周面120に露出すれば、下層皮膜132の固体潤滑剤により摩擦力の大きさが低減される。
下層皮膜132は、バインダー樹脂の含有量が50wt%以上(固体潤滑剤の含有量が50wt%以下)である。よって、下層皮膜132の接着力が高く、下層皮膜132と基材100との密着性がよい。また、下層皮膜132と上層皮膜133との密着性がよい。下層皮膜132および上層皮膜133に含まれる固体潤滑剤は、CやMoS2であり、導電性を有する。よって、電着塗装工程において、下層皮膜132および上層皮膜133に覆われたスカート部外周面120を電極として機能させ、上層皮膜133の上に電着膜130を形成することが容易である。
図18は、電着条件を100Vで10秒としたときの実験結果における、図13と同様の断面を示す。表4は、この実験において形成された各皮膜13の膜厚と条痕14の高さを示す。
(表4)
Figure 2016180331
条痕140の高さa0は8.8μmだった。下層皮膜132の膜厚は6.0μmだった。下層皮膜132に形成された条痕141の高さa1は5.6μmだった。上層皮膜133の膜厚は4.0μmだった。上層皮膜133に形成された条痕142の高さa2は5.2μmだった。電着膜130の膜厚は3.2μmだった。電着膜130に形成された条痕143の高さa3は1.9μmだった。a1(=5.6μm)は、「条痕140の高さa0をベースとして下層皮膜132の塗料からその揮発成分が揮発することによる条痕141の高さ(1-β)a0」に相当する。a2(=5.2μm)は、「条痕141の高さa1をベースとして上層皮膜133の塗料からその揮発成分が揮発することによる条痕142の高さ(1-γ) a1= (1-β) (1-γ) a0」に相当する。a3(=1.9μm)は、「条痕142の高さa2をベースとして電着塗料からその揮発成分が揮発することによる条痕143の高さ(1-α) a2=(1-α) (1-β) (1-γ)a0」よりも低い高さに相当する。
図8のグラフ(直線L)のグラフに従えば、流体潤滑摩擦係数は、スカート部外周面120における条痕14の高さがa0(=8.8μm)であるとき略0.011であり、a2(=5.2μm)であるとき0.008であり、a3(=1.9μm)であるとき略0.004である。よって、本実施形態のピストン1では、比較例1に比べ、条痕14の高さがa0からa3へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略40%まで低下することが分かる。また、スカート部外周面120(基材100)が潤滑皮膜132,133のみに覆われているものに比べ、条痕14の高さがa2からa3へ低くなることにより、流体潤滑摩擦係数が略半分まで低下することが分かる。
表5は、電着条件を変化させたときの条痕143の高さa3を示す実験結果である。条痕140〜142の高さa0〜a2および潤滑皮膜132,133の膜厚は、電着条件を100Vで10秒としたときの上記実験結果と同じとした。
(表5)
Figure 2016180331
a3は、処理時間を5秒とした場合、電圧が60Vのときは5.0μmとなり、80Vのときは4.4μmとなり、100Vのときは3.4μmとなり、120Vのときは3.8μmとなった。a3は、処理時間を10秒とした場合、電圧が60Vのときは4.4μmとなり、80Vのときは3.9μmとなり、100Vのときは1.9μmとなり、120Vのときは5.0μmとなった。このように、a3は、電圧が100V以下のときは、処理時間に関わらず、電圧が高くなるほど低くなった。電圧が120Vのときは、処理時間に関わらず、100Vのときよりもa3が高くなった。電圧が100V以下の場合、処理時間が10秒のときは、5秒のときのときよりも、a3は低くなった。60Vで5秒では、a3は5.0μmとなり、a2(=5.2μm)からほとんど低くならなかった。60Vで5秒では、a3を低くするために電着膜130の生成が不十分であることが分かった。100Vで10秒であれば、a3を2.0μm以下まで低くできることが分かった。基材100と電着膜130との間には、潤滑皮膜(下層皮膜132および上層皮膜133)が介在する。電着は、潤滑皮膜132,133に電流が流れ、上層皮膜133の表面に電着塗料が析出することで行われる。潤滑皮膜132,133は、導電性が基材100よりも低く、基材100を10.0μm(=6.0μm+4.0μm)の膜厚で覆った。この場合でも、100Vで10秒という電着条件で、上記のように条痕143の高さa3が2.0μm以下まで低い電着膜130が形成されることが分かった。
電着条件を100Vで10秒としたとき、形成される電着膜130の膜厚は3.2μmだった。この値は、潤滑皮膜132,133の膜厚(10.0μm)よりも大幅に小さい。このように電着膜130の膜厚の増大が抑制されることで、電着膜130が摩耗しやすくなる。これにより、上記のように初期馴染み性や潤滑性が向上する。なお、実施形態3と同様、電着膜130に、耐摩耗性が低いバインダー樹脂を含めてもよいし、電気的絶縁体である固体潤滑剤を多く含めてもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態を、実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、ピストンの基材は、アルミニウム合金に限らず、鉄等でもよい。PAI、PI、およびEPは密着性に優れることから、基材によらず適用可能である。
1 ピストン
100 基材
12 スカート部
120 外周面
13 皮膜
130 電着膜
132 下層皮膜(第1皮膜)
133 上層皮膜(第2皮膜)
14 条痕
2 シリンダ
20 内壁

Claims (11)

  1. シリンダの内壁に対し摺動するスカート部の外周面に少なくとも1層の皮膜を有し、
    前記皮膜の少なくとも1層は電着膜である
    内燃機関のピストン。
  2. 請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記ピストンの基材は、前記スカート部の外周面に条痕を有する
    内燃機関のピストン。
  3. 請求項2に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記皮膜は、前記電着膜とは別に、前記ピストンの基材の側から第1皮膜と第2皮膜とを順に有し、
    前記第1皮膜および前記第2皮膜は共にバインダー樹脂を含み、
    前記第1皮膜における固体潤滑剤の含有量が50重量%以下であり、
    前記第2皮膜における固体潤滑剤の含有量が50重量%以上かつ95重量%以下である
    内燃機関のピストン。
  4. 請求項3に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記皮膜は、前記ピストンの基材の側から前記第1皮膜と前記電着膜と前記第2皮膜とを順に有する
    内燃機関のピストン。
  5. 請求項4に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記電着膜は、固体潤滑剤を含まないか、または、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含む
    内燃機関のピストン。
  6. 請求項3に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記皮膜は、前記ピストンの基材の側から前記第1皮膜と前記第2皮膜と前記電着膜とを順に有する
    内燃機関のピストン。
  7. 請求項2に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記皮膜は、前記電着膜とは別に皮膜を有し、
    前記電着膜以外の前記皮膜は、バインダー樹脂を含み、固体潤滑剤の含有量が50重量%以下である
    内燃機関のピストン。
  8. シリンダの壁面に対し摺動するスカート部の外周面に少なくとも1層の皮膜を有し、
    前記皮膜の少なくとも1層は、塗料の電着による皮膜である
    内燃機関のピストン。
  9. シリンダの内壁に対し摺動するスカート部の外周面に少なくとも1層の皮膜を形成する内燃機関のピストンの表面処理方法であって、
    塗料の電着により、前記皮膜の少なくとも1層を形成する
    内燃機関のピストンの表面処理方法。
  10. 請求項9に記載の内燃機関のピストンの表面処理方法において、
    前記電着により形成された前記皮膜を焼成しない
    内燃機関のピストンの表面処理方法。
  11. 請求項10に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記塗料は、固体潤滑剤を含まないか、または、電気的絶縁体である固体潤滑剤を含む
    内燃機関のピストンの表面処理方法。
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