JP2016183331A - フォトンアップコンバージョン組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光を吸収した後に励起三重項状態となり増感剤として機能するドナー分子と、当該ドナー分子からの三重項エネルギー移動を受けた後、励起一重項状態となり発光体として機能するアクセプター分子とを含む、フォトンアップコンバージョン組成物。(a)ドナー分子として、ナフタロシアニン誘導体、テルピリジン誘導体とビピリジン誘導とを配位子とするオスミウム錯体、(b)アクセプター分子として、テリレンジイミド誘導体、ナフタセン誘導体及びポルフィリン誘導体から選ばれる少なくとも1つの化合物であるフォトンアップコンバージョン組成物。
【選択図】なし
Description
フォトン・アップコンバージョンの機構として、これまで多光子吸収などの非線形光学現象に基づく機構が知られている。しかし、この多光子吸収を起こすためには非常に高い励起光強度を必要とし、太陽光などの低強度の光を励起光として用いることは困難である。そこで近年では、低強度の励起光でもアップコンバージョン発光を達成可能な三重項-三重項消滅(triplet-triplet annihilation; TTA)を利用したフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)が注目を集めており(図23)、幅広く研究が行われている(非特許文献4〜16)4-16。
(1) まず、ドナー分子が光を吸収して励起一重項状態となる。続けて系間交差(ISC)を経て、励起三重項状態のドナー分子が生じる。
(2) 励起三重項状態となったドナー分子からアクセプター分子にエネルギーが移動し(三重項−三重項エネルギー移動(TTET))、励起三重項状態のアクセプター分子が生じる。
(3) 励起三重項状態のアクセプター分子が二分子間で衝突することでTTAが生じる。TTAにより、二分子の励起三重項状態のアクセプター分子から一分子の励起一重項状態のアクセプター分子が生じる。この時生じた励起一重項状態のアクセプター分子はドナーが吸収した励起光よりも高いエネルギーを有するため、アップコンバージョンされた発光となる(図5)。すなわち、低エネルギーの光子二つを用いて、より高エネルギーの光子一つを生み出すこととなる。
これまでに、様々なドナーとアクセプターの組み合わせによるTTA-UCが報告されているが、使用される励起光はそのほとんどが可視領域のものである(非特許文献4〜16)。フォトン・アップコンバージョンを太陽電池(非特許文献1〜3、12、17)や、光線力学療法、バイオイメージング(非特許文献3、10)等へ応用するためには、近赤外(NIR)光を励起光として用いることが求められる。このため、近赤外光を励起光として利用可能なTTA-UCを示す組成物を開発することが求められている。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)光を吸収した後に励起三重項状態となり増感剤として機能するドナー分子と、当該ドナー分子からの三重項エネルギー移動を受けた後、励起一重項状態となり発光体として機能するアクセプター分子とを含む、フォトン・アップコンバージョン組成物であって、
前記ドナー分子が、次式I:
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又は縮環したベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環若しくはテトラセン環を表し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して、水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又はOR101、COR102若しくはCOOR103(R101、R102及びR103は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基を表す。)で示される基を表し、
前記基及び環は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
M1は、白金、パラジウム、ニッケル、亜鉛及びスズから選ばれる金属原子、又はケイ素若しくは水素原子を表し、
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で示されるナフタロシアニン誘導体、又は次式II:
(式中、R21、R22、R23、R24及びR25は、それぞれ独立して、水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又は−CONHR100、OR101、COR102若しくはCOOR103(R100はC1−10アルキル基又はC2−10アルケニル基を表し、R101、R102及びR103は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基を表す。)で示される基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
YはOs原子を表し、
Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物であり、
前記アクセプター分子が、次式III:
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、
次式IV:
(式中、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立して、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、又は
次式V:
(式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で示されるものである、前記組成物。
(2)式Iで示される化合物が、次式VI又はVII:
で示されるものである(1)に記載の組成物。
(3)式IIで示される化合物が、次式VIII:
で示されるものである(1)に記載の組成物。
(4)式IIIで示される化合物が、次式IX:
で示されるものである(1)に記載の組成物。
(5)式IVで示される化合物が、次式X又はXI:
で示されるものである(1)に記載の組成物。
(6)式Vで示される化合物が、次式XII:
で示されるものである(1)に記載の組成物。
(7)ドナー分子/アクセプター分子のモル比が0.001%〜20%の範囲内にある、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物。
(8)近赤外光から可視光へのアップコンバージョン系として機能する、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の組成物。
(9)近赤外光の波長が800 nm〜1400 nmである、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の組成物。
(10) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の組成物に光を照射し、当該照射光のエネルギーよりも高いエネルギーの光を発生させることを特徴とする、フォトン・アップコンバージョン方法。
(11)照射光が近赤外光であり、発生する光が可視光である(10)に記載の方法。
(12)近赤外光の波長が800 nm〜1400 nmである、(10)又は(11)に記載の方法。
三重項-三重項消滅(TTA)を経る機構(図23)に基づくアップコンバージョン(TTA-UC)では、高い効率で三重項状態となるドナー(増感剤)、及び、高い蛍光量子収率を有するアクセプター(発光体)として機能する2種の色素分子を用いる。前記の通り、まず低いエネルギーの光を吸収して励起一重項状態(S1)となったドナー分子は、系間交差(ISC)を経て励起三重項状態(T1)となる。もしくは低いエネルギーの光を吸収して直接励起三重項状態(T1)となる。この励起三重項状態となったドナー分子からアクセプター分子にデクスター機構によって三重項エネルギーが移動する(三重項−三重項エネルギー移動(TTET))。これにより生じた励起三重項にある2つのアクセプター分子が衝突してTTAが起こると、TTA後に2分子のうち1分子が三重項状態よりも高い励起一重項状態となり、アップコンバージョン発光が生じる。
本発明は、ドナー分子として、例えばナフタロシアニン誘導体を使用し、アクセプター分子として、例えばテリレンジイミド誘導体などを用いることにより、近赤外光から可視光へのアップコンバージョンを達成することに成功した。従って、本発明は、近赤外光から可視光へのアップコンバージョンのための組成物及びその方法を提供する。
ここで、本明細書において、近赤外光から可視光を指すときは「NIR-to-visible」、近赤外光から可視光へのアップコンバージョンを「NIR-to-visible アップコンバージョン」又は「NIR-to-visible UC」、三重項-三重項消滅(TTA)を利用したアップコンバージョンを「TTA-UC」、さらに、TTAを利用した近赤外光から可視光へのアップコンバージョンを「NIR-to-visible TTA-UC」ということもある。
ドナー分子は、三重項増感剤として機能し、光を吸収した後、系間交差(ISC)を経て励起三重項状態となり、アクセプター分子に三重項エネルギーを与える機能を有する。もしくはドナー分子は、光を吸収した後、直接励起三重項状態となり、アクセプター分子に三重項エネルギーを与える機能を有する。
本発明において使用されるドナー分子は、次式I又はIIに示されるものである。
前記基及び環は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。
M1は、白金、パラジウム、ニッケル、亜鉛及びスズから選ばれる金属原子、又はケイ素若しくは水素原子を表す。
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。
YはOs原子を表す。
Xはハロゲン原子を表す。
「C2−10アルキニル基」とは、炭素数が2〜10個の直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素基を意味し、三重結合を1個有する。このようなアルキニル基としては、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基などが挙げられる。
「C3−15シクロアルキル基」とは、炭素数が3〜15個の環状のアルキル基を意味し、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。
「C3−15シクロアルケニル基」とは、炭素数が3〜15個の環状のアルケニル基を意味し、二重結合を1個有する。例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキシニル等が挙げられる。
「5〜14員ヘテロアリール基」とは、環を構成する原子数が5〜14個であり、その原子中に1〜5個のヘテロ原子(窒素原子、酸素原子又は硫黄原子)を含有する芳香族基を意味する。このようなヘテロアリール基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素(F)原子、塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、ヨウ素(I)原子、アスタチン(At)原子などが挙げられる。
式IIにおいて、R21、R22及びR23は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基又はOR101、COOR103若しくはCONHR100(R100はC1−10アルキル基又はC2−10アルケニル基を表し、R101及びR103は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基又はC2−10アルケニル基を表す。)で示される基が好ましく、−CONHR100で示される基がさらに好ましい。この場合のR100は、例えばC1−10アルキル基であり、エチルヘキシル基であることがさらに好ましい。また、R24及びR25は、それぞれ独立して水素原子又はC1−10アルキル基であることが好ましく、ブチル基であることがさらに好ましい。さらに、Xは塩素原子であることが好ましい。
式IIに示す化合物は、オスミウム(Os)錯体などを形成する。この化合物を用いると、近赤外光励起による通常はスピン禁制な基底状態から三重項励起状態への直接遷移を有意な吸光効率で引き起こすことが出来、さらにアクセプター分子への三重項増感を達成することができる。
本発明においては、ドナー分子として、好ましくは式VI又はVIIに示すものを例示することができる。
これらのドナー分子を使用することによって、光安定性を有するNIR-to-visibleアップコンバージョンが可能となった。
アクセプター分子は、前記ドナー分子からの三重項エネルギー移動を受けた後に、TTAを起こして励起一重項状態を与え、発光体として機能する。
本発明において使用されるアクセプター分子としては、次式III:
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基及び環は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、
(式中、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立して、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、又は
(式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で示されるものが挙げられる。
置換基の定義は、前記と同様である。
式III(テリレンジイミド誘導体)において、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基又はC6−20アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがさらに好ましい。この場合のC6−20アリール基(例えばフェニル基)は、C1−6アルキル基、例えばブチル基で置換されていることが好ましい。
テリレンジイミド誘導体としては、例えば下記式 (IX)で示されるものが挙げられる。
ナフタセン誘導体としては、例えば下記式 (X)又は(XI)で示されるものが挙げられる。
フタロシアニン誘導体としては、例えば下記式 (XII)で示されるものが挙げられる。
ドナー分子及びアクセプター分子は、公知方法に従って合成することができる。あるいは、市販品を使用することも可能である。合成の一例を実施例に示す。
本発明の組成物において、ドナー分子とアクセプター分子とを混合するには、それぞれの分子を適当な溶媒(例えば1,2-ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等)に溶解し、それを混合すればよい。
固体系で利用する場合、化合物の溶解性の溶媒間の差と溶媒の混合・混和を利用した再沈殿法を用いることでサンプルを作成可能である。例えば色素を溶解性の高い溶媒(例えば、THF、アセトン、アセトニトリル等)に溶解させた後、色素の溶解性が低い溶媒(例えば水等)に注入し混和させることでドナー分子とアクセプター分子の混合した固体を再沈殿物として得ることができる。水に予め適宜界面活性剤を加えておくことで、沈殿物の形態を制御することも可能である。
ドナー分子/アクセプター分子比のモル比は、0.001%〜20%の範囲内であり、好ましくは0.1%〜10%、より好ましくは0.5%〜10%の範囲内である。
第2の実施形態では、本発明は、前記組成物を使用してNIR-to-visibleアップコンバージョンを達成するための方法を提供する。
本発明の方法では、前記組成物に近赤外光(NIR)を照射し、当該照射光のエネルギーよりも高いエネルギーの光(可視光)を発生させることを特徴とする。
組成物に光を照射するときの波長、すなわち組成物中のドナー分子が吸収する光の波長は、特に限定されるものではなく、NIRであれば特に限定されず、例えば800 nmより大きく1400nm以下である。照射源は、太陽光、LED、Xeランプ、レーザーなどが挙げられ、特に限定されるものではない。また、照射時間は特に限定されるものではなく任意である。
組成物から発光するときの波長、すなわち組成物中のアクセプター分子が発する可視光の波長は、例えば400〜800nmである。
三重項-三重項消滅を利用したアップコンバージョン(TTA-UC)は、低強度及び非コヒーレント光を励起光として利用できるため、近年注目されている。1-22しかしながら、光源として近赤外光(波長>800nm)を用いたTTA-UCは、僅か三例しか報告がなく、800nmよりも長波長の近赤外(NIR)光を利用するには、未だ大きな課題が残されている。23-25
本実施例では、増感剤としてPtNac、PdNacを用いることにより、近赤外光(> 800 nm)から可視光への安定なTTA-UCを達成したことを示す。本実施例と三例の報告では、用いているドナー分子が大きく異なる。非特許文献23ではインドシアニン色素誘導体、非特許文献24、25では無機ナノ粒子である。また非特許文献23のインドシアニン色素誘導体を用いた場合、酸素による色素の分解のため安定したTTA-UCを示すことは困難である。本発明において提供される組成物により、本発明者は上記課題を解決することができた。
合成のための全ての試薬及び溶媒は、試薬を購入後さらなる精製を行うことなくそのまま使用した。
TDI は、文献に従って合成した。26
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS standard): d(ppm) 1.20 (d, J = 6.8 Hz, 24H, CH3), 2.78 (quintet, J = 6.8 Hz, 4H, CHCH3), 7.36 (d, J= 7.7 Hz, 4H, Ar-H), 7.50 (t, J = 7.7 Hz, 2H, Ar-H), 8.66 (d, J = 8.3 Hz, 4H, Ar-H), 8.75 (s, 4H, Ar-H), 8.77 (d, J = 8.3 Hz, 4H, Ar-H).
元素分析; C58H46N2O4について計算: C 83.43, H 5.55, N 3.35, Found: C 82.98, H 5.36, N 3.23.(図8)
1H NMR (300 MHz) スペクトルは、TMSを内部標準として用いてBruker DRX-スペクトロメーターで測定した。元素分析は、九州大学理学研究院中央元素分析所で実施した。
絶対量子収率は、Hamamatsu Photonics絶対量子収率測定システムを用い、積分球により測定した。過渡吸収スペクトルは、UNISOKU TSP-2000システムを用いて測定した。
アップコンバージョン発光の量子収率(ΦUC)は、標準物質として5,9,14,18,23,27,32,36-Octabutoxy-2,3-naphthalocyanine (Nac)の1,2-ジクロロベンゼン溶液(Φstd= 0.034)を用い、下記式(S1)に従って算出した。
ドナー分子のISC効率は、公知方法に基づき過渡吸収測定により求めた。27本実施例では、トルエン中のPtNac及びPdNac(20 μM)の過渡吸収のレーザーパルス強度依存性より計算を行った。PtNacは452nm、PdNacは468nmで励起し、680nmでの過渡吸収の値を用いた。ΔA対Eのプロットを式S2に当てはめることにより、
を計算した。
本実施例では、密度汎関数法(DFT)を使用して、最も低い一重項(S0)及び三重項(T1)のエネルギー準位を最適化した。計算はB3LYPを使用し、基底関数は6-311G**の計算レベルにより計算した。
S0-S1 エネルギーギャップは基底関数が6-311++G**である時間依存性DFT(TDDFT)を用いて計算した。
合成スキームを以下に示す。
アルゴンガス(Ar)雰囲気下、Nac (39 mg, 0.03 mmol) 及び PtCl2 (72 mg, 0.27 mmol)をベンゾニトリル(2 mL, アルゴンガスでバブリング)中、150 °C で16時間加熱した。その際、Nacの吸収バンドを追跡することで反応の進行を確認した。得られた混合物を室温まで冷却し、真空下(40 °C)で溶媒を留去した。残渣をクロマトグラフィ(Al2O3, トルエン)にかけ、メタノール及びヘキサンで洗浄し、PtNacを濃緑色の固体として得た(6 mg, 0.004 mmol, 13%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS standard): d(ppm) 1.05 (t, J = 7.4 Hz, 24H, CH3), 1.67 (sextet, J = 7.5 Hz, 16H, CH2CH3), 2.26 (quintet, J = 7.2 Hz, 16H, CH2CH2CH3), 5.20 (t, J = 6.9 Hz, 16 H, OCH2), 7.86 (br, ArH), 8.91 (br, ArH).
元素分析; C80H88N8O8Pt計算値: C 64.72, H 5.97, N 7.55, 実験値: C 64.63, H 6.00, N 7.50. (図 6)
アルゴンガス(Ar)雰囲気下、Nac (39 mg, 0.03 mmol) 及びPdCl2 (48 mg, 0.27 mmol)をDMF (19 mL, アルゴンガスでバブリング)中、6時間還流した。その際、Nacの吸収バンドを追跡することで反応の進行を確認した。
得られた混合物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレータ(45 °C)を用いて溶媒を留去した。残渣をクロマトグラフィ(Al2O3, トルエン)にかけ、メタノール及びヘキサンで洗浄し、PdNacを濃い茶色の固体として得た(22 mg, 0.016 mmol, 53%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, TMS standard): d(ppm) 1.04 (t, J = 7.4 Hz, 24H, CH3), 1.67 (sextet, J = 7.5 Hz, 16H, CH2CH3), 2.25 (quintet, J = 7.3 Hz, 16H, CH2CH2CH3), 5.20 (t, J = 7.0 Hz, 16 H, OCH2), 7.86 (br, ArH), 8.96 (br, ArH).
元素分析; C80H88N8O8Pd計算値: C 68.83, H 6.35, N 8.03, 実験値: C 68.43, H 6.10, N 7.90. (図7)
図1に示すとおり、PtNac 及びPdNacは1,2-ジクロロベンゼン (1,2-DCB) 溶液中、それぞれ、812 nm (e = 2.6 x 105) 及び828 nm (e = 2.5 x 105)付近にQ-バンドの強い吸収ピークを示した。これらのピークの裾は約900nmを超えていた。またそれぞれ1256nm及び1348nm付近にリン光が観測された。以上の事からPtNacとPdNacは近赤外光をTTA-UCするドナー分子として適していると言える。
またTDIは可視領域に強い発光ピークを示し、高い蛍光量子収率を有した(1,2-DCB, 0.6 mM中でΦEm = 32%)。DFT計算の結果より、三重項励起状態のエネルギー準位が1462nm付近であることが判明した。以上の事から、TDIは近赤外光をTTA-UCするアクセプター分子として適していると言える。
856nmの近赤外光により励起したところ、どちらのドナー分子を用いた場合でも可視光領域にアップコンバージョン発光が観察された(図2)。これらのアップコンバージョン発光は、ドナー分子又はTDIのいずれか一方しか含まない溶液からは観察されなかった。PtNac-TDI溶液及びPdNac-TDI溶液のいずれにおいても、可視領域に観測されたアップコンバージョン発光はマイクロ秒レベルの遅延発光であることが示された(図9)。このことは、観測されたアップコンバージョンが長寿命の三重項種に基づく機構、すなわちTTAにより達成されたことを示すものである。
その結果、アクセプターの三重項寿命はPtNac-TDIペアより102μs、PdNac-TDIペアより106μsという値が得られた。
入射光強度の増加に伴い、PtNac-TDIペア及びPdNac-TDIペアのΦUC 値は、それぞれ0.0089% 及び0.067%まで増加した (図12)。
スピン禁制遷移吸収は一般には非常に弱いが、Ir, Ru,及びOsなどの重原子を含む金属錯体は、大きなスピン-軌道カップリングにより十分な吸収効率(ε>1000)を有する。30-34 また、NIR領域にスピン禁制遷移吸収を有する金属錯体も報告がされている33, 34。NIR領域にスピン禁制吸収を示す金属錯体は、ISCプロセスの間にエネルギー損失がないため、TTA-UCで獲得されるエネルギーが大きくなり、NIR-to-visible TTA-UCに用いるドナー分子として有利であると考えられる。
この遅延したUC発光は、D1又はルブレンの単一の成分溶液からは観察されなかった(図19b)。D1-ルブレンペア(脱気したクロロホルム溶液中)からのUC発光強度と励起強度の両対数プロットを図19cに示す。両対数プロットにおける傾きは2に近く、この結果はTTAの二光子過程と整合する。
固体系のサンプルの場合でも938nmの近赤外光を用いて励起したところ、可視領域にアップコンバージョンされた発光が観察された(図20a)。また、600nmでのUC発光はマイクロ秒スケールの遅延蛍光であり(図20b)、TTAに由来する発光であることが示された。UC発光の強度と励起光強度を両対数プロットした結果、2から1への傾きの変化が観察された(図20c)。
Ith 値は6 Wcm-1であったが、これまでに報告されているNIRから可視光へのTTA-UCのシステムのIth 値が10 Wcm-1以上であることを考慮すると24, 25、本系で得られたIth 値はこれまでで最も良い値であると言える。
次に、固体系においてD1-ルブレンペアのΦUCを、積分球を用いて評価した。その結果、20Wcm-1の励起光強度で0.035%という値が得られた。すなわち、固体系を利用することで液体系から改善されたΦUC 値を得ることができた。
1H NMR (300 MHz) スペクトルは、TMSを内部標準として用いてBruker DRX-スペクトロメーターで測定した。元素分析は、九州大学理学研究院中央元素分析所で実施した。
吸収スペクトルは、JASCO V-670 を用いて測定した。蛍光スペクトルは、PerkinElmer LS 55を用いて測定した。NIR リン光スペクトルは、Horiba FluoroLog-3を用いて測定した。発光寿命の測定は、HAMAMATSU Quantaurus-Tau C11567-02を用いて行った。アップコンバージョン発光スペクトルは、外付けのレーザー強度調整可能な半導体レーザー(938nm)を励起光として、検出器としてOtsuka Electronics MCPD-7000を用いて測定した。
絶対量子収率は、Hamamatsu Photonics絶対量子収率測定システムを用いた積分球により測定した。過渡吸収スペクトルは、UNISOKU TSP-2000システムを用いて測定した。
アップコンバージョンされた発光の量子収率(ΦUC)は、参照としてナイルレッドのクロロホルム溶液(Φstd= 0.82, 532 nm)を用い、下記式(S5)に従って算出した。
Trimethyl 2,2’:6’,2”-terpyridine-4,4’,4”-tricarboxylate (204 mg, 0.5 mmol) 、NaOH水溶液 (1M, 9.6 mL) 及びメタノール(27 mL)の混合物を16時間還流させた。得られた混合物を室温まで冷却し、減圧濾過した。固体を水/メタノール(1:3)の混合溶液で洗浄した。得られた固体を水(20 mL)に溶解し、3MのHCl水溶液を用いてpH4に調整した。析出した白色固体を水及びメタノールで濾過、洗浄して回収し、乾燥させることにより、化合物1を得た(160 mg, 0.44 mmol, 88%)。
1H NMR (300 MHz, D2O-NaOD): d (ppm) 7.47 (d, J = 5.0 Hz, 2 H, ArH), 8.04 (s, 2 H, ArH), 8.20 (s, 2 H, ArH), 8.39 (d, J = 5.0 Hz, 2 H, ArH).
化合物1(292 mg, 0.8 mmol)をSOCl2 (6 mL)中で6時間還流させた。溶液を冷却後、SOCl2を留去した。得られた酸塩化物の脱水CH2Cl2懸濁液 (5 mL)を2-エチルヘキシルアミン(929 mg, 7.2 mmol)の脱水CH2Cl2溶液に加えた。
1日攪拌後、得られた混合物をCH2Cl2で希釈して水中に注ぎ、CH2Cl2で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、続いて溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(Al2O3, CH2Cl2/メタノール=97/3)で精製し、薄い白色固体の化合物2を得た(350 mg, 0.50 mmol, 63%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, TMS standard): d(ppm) 0.83-0.93 (m, 18 H, CH3), 1.22-1.45 (m, 24H, CH2), 1.63 (br, 3H, CH), 3.22-3.30 (m, 6 H, CH2), 7.87 (dd, J = 1.7, 5.0 Hz, 2H, ArH), 8.84 (t, J = 5.7 Hz, 2H, NH), 8.87 (s, 2H, AH), 8.89-8.93 (m, 4 H, AH), 9.06 (t, J = 5.9 Hz, 1H, NH).
アルゴン雰囲気下、化合物2 (304 mg, 0.44 mmol)及び(TBA)2Os(Cl)6(390 mg, 0.44 mmol)の1-ブタノール溶液(10 mL)を12時間還流させた。室温まで冷却した後、4,4’-di-tert-butyl-2,2’-bipyridine (118 mg, 0.44 mmol)を反応混合物中に加え、さらに24時間還流した。室温まで冷却した後、得られた混合物を水中に注ぎ、CH2Cl2で抽出した。有機層を水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた固体及びKPF6 (558 mg, 3.0 mmol) をCH2Cl2 (3 mL)及びメタノール(6 mL)の混合溶液中に加えて室温で1時間撹拌した。得られた混合物を水中に注ぎ、CH2Cl2で抽出した。有機層を水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をクロマトグラフィ (Al2O3, CH2Cl2/メタノール=97/3)、続いてシリカゲルクロマトグラフィ(SiO2, CH2Cl2/メタノール=197/3)に付し、D1を茶色の固体として得た(190 mg, 0.14 mmol, 32%)。
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Claims (12)
- 光を吸収した後に励起三重項状態となり増感剤として機能するドナー分子と、当該ドナー分子からの三重項エネルギー移動を受けた後、励起一重項状態となり発光体として機能するアクセプター分子とを含む、フォトンアップコンバージョン組成物であって、
前記ドナー分子が、次式I:
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又は縮環したベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環若しくはテトラセン環を表し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して、水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又はOR101、COR102若しくはCOOR103(R101、R102及びR103は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基を表す。)で示される基を表し、
前記基及び環は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
M1は、白金、パラジウム、ニッケル、亜鉛及びスズから選ばれる金属原子、又はケイ素若しくは水素原子を表し、
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で示されるナフタロシアニン誘導体、又は次式II:
(式中、R21、R22、R23、R24及びR25は、それぞれ独立して、水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基、5〜14員ヘテロアリール基、又は−CONHR100、OR101、COR102若しくはCOOR103(R100はC1−10アルキル基又はC2−10アルケニル基を表し、R101、R102及びR103は、それぞれ独立して水素原子、C1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基を表す。)で示される基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
YはOs原子を表し、
Xはハロゲン原子を表す。)
で示される化合物であり、
前記アクセプター分子が、次式III:
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、
次式IV:
(式中、R41、R42、R43及びR44は、それぞれ独立して、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよい。)、又は
次式V:
(式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、C1−10アルキル基、C2−10アルケニル基、C2−10アルキニル基、C3−15シクロアルキル基、C3−15シクロアルケニル基、C6−20アリール基又は5〜14員ヘテロアリール基を表し、前記基は、任意に、C1−6アルキル基又はC6−14アリール基で置換されてもよく、
m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
で示されるものである、前記組成物。 - 式Iで示される化合物が、次式VI又はVII:
で示されるものである請求項1に記載の組成物。 - 式IIで示される化合物が、次式VIII:
で示されるものである請求項1に記載の組成物。 - 式IIIで示される化合物が、次式IX:
で示されるものである請求項1に記載の組成物。 - 式IVで示される化合物が、次式X又はXI:
で示されるものである請求項1に記載の組成物。 - 式Vで示される化合物が、次式XII:
で示されるものである請求項1に記載の組成物。 - ドナー分子/アクセプター分子のモル比が0.001%〜20%の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
- 近赤外光から可視光へのアップコンバージョン系として機能する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
- 近赤外光の波長が800 nm〜1400 nmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物に光を照射し、当該照射光のエネルギーよりも高いエネルギーの光を発生させることを特徴とする、フォトンアップコンバージョン方法。
- 照射光が近赤外光であり、発生する光が可視光である請求項10に記載の方法。
- 近赤外光の波長が800 nm〜1400 nmである、請求項10又は11に記載の方法。
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