JP2016192511A - 圧電素子及び圧電素子応用デバイス - Google Patents

圧電素子及び圧電素子応用デバイス Download PDF

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和也 北田
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Abstract

【課題】 アルカリ金属が基板へ到達することを抑制でき、耐久性等をはじめとする各種特性の低下を回避できる圧電素子を提供する。
【解決手段】 基板10上に形成される酸化ジルコニウム層52と、酸化ジルコニウム層52上に形成された第1電極60と、第1電極60上に形成され、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びニオブ(Nb)を含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層70と、圧電体層70上に形成された第2電極80と、を具備する圧電素子300であって、酸化ジルコニウム層52の第1電極60側の界面fを跨ぐ領域Rfにおいて、カリウム及びナトリウムの量の変化をみたとき、該界面fの第1電極60側よりも該界面fの基板10側の方が小さくなる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、圧電素子及び圧電素子応用デバイスに関する。
圧電素子は、一般に、電気機械変換特性を有する圧電体層と、圧電体層を挟持する2つの電極と、を有している。このような圧電素子を駆動源として用いたデバイス(圧電素子応用デバイス)の開発が、近年、盛んに行われている。圧電素子応用デバイスとしては、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッド、圧電MEMS素子に代表されるMEMS要素、超音波センサー等に代表される超音波測定装置、更には、圧電アクチュエーター装置等がある。
例えば、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子の圧電体層の材料(圧電材料)として、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN;(K,Na)NbO)が提案されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1では、基板上に、Tiからなる下部密着層と、下部電極と、KNN圧電体層と、上部電極等を積層して圧電素子を構成している。特許文献2では、基板上に、弾性膜と、Ti等からなる密着層と、第1電極と、KNN圧電体層と、第2電極と、等を積層して圧電素子を構成している。
特開2014−60267号公報(請求項1,[0029]等) 特開2014−65317号公報(請求項1,[0019]等)
しかしながら、特許文献1及び2のように、KやNaを含む圧電材料を用いた場合、圧電体層の作製過程において、KやNaが第1電極(下部電極)中に拡散することがある。仮に、アルカリ金属が第1電極及び密着層を通り越して基板に達すると、基板と反応を起こしてしまい、耐久性等の各種特性に悪影響が生じ得る。このような問題は、特許文献1及び2に限られず、アルカリ金属を含む圧電材料を用いた場合にも同様に存在する。また、このような問題は、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子に限られず、他の圧電素子応用デバイスに用いられる圧電素子にも同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑み、アルカリ金属が基板に到達することを抑制でき、耐久性等の各種特性の低下を回避できる圧電素子及び圧電素子応用デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板上に形成される酸化ジルコニウム層と、前記酸化ジルコニウム層上に形成された第1電極と、前記第1電極上に形成され、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びニオブ(Nb)を含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、前記圧電体層上に形成された第2電極と、を具備する圧電素子であって、前記酸化ジルコニウム層の前記第1電極側の界面を跨ぐ領域において、前記カリウム及び前記ナトリウムの量の変化をみたとき、前記界面の前記第1電極側よりも前記界面の前記基板側の方が小さくなることを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様において、酸化ジルコニウム層は、KやNaのストッパー機能を果たしている。すなわち、圧電体層の作製過程でKやNaが第1電極中に拡散するとしても、基板に至る手前のジルコニウム層によってKやNaの拡散が抑制される。このため、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。その結果、耐久性等の各種特性の低下を回避できる。
ここで、前記ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物は、下記式(1)で表される組成であることが好ましい。
(K,Na1−X)NbO (0.1≦x≦0.9) ・・・ (1)
上記式(1)で表される複合酸化物は、いわゆるKNN系の複合酸化物である。KNN系の複合酸化物では、ABO型ペロブスカイト構造のAサイトが、アルカリ金属の多くで占められている。本態様によれば、このようなKNN系の複合酸化物を用いた場合にも、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。
また、前記カリウムの含有量が、前記ABO型ペロブスカイト構造のAサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下であることが好ましい。尚、前記カリウムの含有量が、前記ABO型ペロブスカイト構造のAサイトを構成する金属元素の総量に対して35モル%以上55モル%以下であることがより好ましい。これによれば、圧電特性に有利な組成を有する複合酸化物となる。この複合酸化物からなる圧電体層を具備することで、アルカリ金属が基板に到達することを抑制でき、しかも変位特性に有利な圧電素子となる。
また、前記界面を跨ぐ領域を二次イオン質量分析により測定したとき、前記第1電極側の前記カリウム及び前記ナトリウムの検出強度よりも、前記基板側の前記カリウム及び前記ナトリウムの検出強度が小さくなることが好ましい。これによれば、上記の測定の結果に基づき、本発明の要件を具備することを容易に判定できる。よって、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる圧電素子を容易に提供できる。
また、前記基板と前記第1電極との間に、密着層を具備することが好ましい。これによれば、基板と第1電極との密着性が向上した圧電素子となる。また、圧電体層の作製過程でKやNaが第1電極を通り越し、密着層中に拡散するとしても、基板に至る手前のジルコニウム層によってKやNaの拡散が抑制される。このため、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。
また、前記密着層は、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層の何れかであることが好ましい。酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層は、何れも密着層として構成しやすい。ただ、何れの場合も、第1電極を通り越したKやNaが密着層中に拡散し得る。一方、これらのアルカリ金属の拡散は、基板に至る手前のジルコニウム層によって抑制される。よって、本態様によれば、これらの密着層を用いた場合にも、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。
上記課題を解決する本発明の他の態様は、上記の何れか一つに記載の圧電素子を具備することを特徴とする圧電素子応用デバイスにある。かかる態様によれば、上記の圧電素子を具備するため、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。その結果、第1電極と振動板との密着性が低下することを防止でき、また形状不良の発生も防止できる。従って、耐久性等の各種特性の低下を回避できる。
記録装置の概略構成を示す図。 記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 記録ヘッドの概略構成の平面図及び断面図。 記録ヘッドの概略構成の断面図及び拡大図。 記録ヘッドの製造例を説明する図。 記録ヘッドの製造例を説明する図。 実施例1及び比較例1でのSIMS測定結果を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、図2〜6において、X,Y,Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をそれぞれX方向,Y方向及びZ方向として説明する。Z方向は、板、層、及び膜の厚み方向あるいは積層方向を表す。X方向及びY方向は、板、層及び膜の面内方向を表す。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例である、インクジェット式記録装置(記録装置)の概略構成を示している。
インクジェット式記録装置Iにおいて、インクジェット式記録ヘッドユニット(ヘッドユニットII)が、カートリッジ2A及び2Bに着脱可能に設けられている。カートリッジ2A及び2Bは、インク供給手段を構成している。ヘッドユニットIIは、複数のインクジェット式記録ヘッド(記録ヘッド)を有しており、キャリッジ3に搭載されている。キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に、軸方向移動自在に設けられている。これらのヘッドユニットIIやキャリッジ3は、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出可能に構成されている。
駆動モーター6の駆動力は、図示しない複数の歯車及びタイミングベルト7を介し、キャリッジ3に伝達される。これにより、キャリッジ3が、キャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には、搬送手段としての搬送ローラー8が設けられている。搬送ローラー8により、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送される。尚、搬送手段は、搬送ローラーに限られず、ベルトやドラム等であってもよい。
上記のインクジェット式記録ヘッドには、アクチュエーターとして、圧電素子が用いられている。後に詳しく述べる圧電素子を用いることによって、インクジェット式記録装置Iの各種特性(耐久性やインク噴射特性等)の低下を回避できる。
次に、液体噴射ヘッドの一例である、インクジェット式記録ヘッドについて説明する。図2は、インクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。図3(a)は、インクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す平面図(圧電素子側から流路形成基板を見た平面図)である。図3(b)は、図3(a)をA−A′線に沿って切断したときの断面図である。
流路形成基板10(以下、「基板10」と称する)には、複数の隔壁11が形成されている。隔壁11によって、複数の圧力発生室12が区画されている。すなわち、基板10には、X方向(同じ色のインクを吐出するノズル開口21が並設される方向)に沿って圧力発生室12が並設されている。このような基板10としては、例えば、シリコン単結晶基板を用いることができる。
基板10のうち、圧力発生室12のY方向の一端部側には、インク供給路13と連通路14とが形成されている。インク供給路13は、圧力発生室12の片側をX方向から絞ることで、その開口面積が小さくなるように構成されている。また、連通路14は、X方向において圧力発生室12と略同じ幅を有している。連通路14の外側(+Y方向側)には、連通部15が形成されている。連通部15は、マニホールド100の一部を構成する。マニホールド100は、各圧力発生室12の共通のインク室となる。このように、基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が形成されている。
基板10の一方の面(−Z方向側の面)上には、例えばSUS製のノズルプレート20が接合されている。ノズルプレート20には、X方向に沿ってノズル開口21が並設されている。ノズル開口21は、各圧力発生室12に連通している。ノズルプレート20は、接着剤や熱溶着フィルム等によって基板10に接合することができる。
基板10の他方の面(+Z方向側の面)上には、振動板50が形成されている。振動板50は、例えば、基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された酸化ジルコニウム層52と、により構成されている。弾性膜51は、例えば二酸化シリコン(SiO)からなり、酸化ジルコニウム層52は、酸化ジルコニウム(ZrO)からなる。弾性膜51は、基板10とは別部材でなくてもよい。基板10の一部を薄く加工し、これを弾性膜として使用してもよい。
酸化ジルコニウム層52上には、密着層56を介して、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、を含む圧電素子300が形成されている。密着層56は、例えば、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層等からなり、圧電体層70と振動板50との密着性を向上させる機能を有する。密着層56は省略可能である。
本実施形態では、電気機械変換特性を有する圧電体層70の変位によって、振動板50及び第1電極60が変位する。すなわち、本実施形態では、振動板50及び第1電極60が、実質的に振動板としての機能を有している。弾性膜51及び酸化ジルコニウム層52を省略して、第1電極60のみが振動板として機能するようにしてもよい。基板10上に第1電極60を直接設ける場合には、第1電極60にインクが接触しないように、第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護することが好ましい。
第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられている、つまり、第1電極60は、圧力発生室12毎に独立する個別電極として構成されている。第1電極60は、X方向において、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。また、第1電極60は、Y方向において、圧力発生室12よりも広い幅で形成されている。すなわち、Y方向において、第1電極60の両端部は、圧力発生室12に対向する領域より外側まで形成されている。Y方向において、第1電極60の一端部側(連通路14とは反対側)には、リード電極90が接続されている。
圧電体層70は、第1電極60と第2電極80との間に設けられている。圧電体層70は、X方向において、第1電極60の幅よりも広い幅で形成されている。また、圧電体層70は、Y方向において、圧力発生室12のY方向の長さよりも広い幅で形成されている。Y方向において、圧電体層70のインク供給路13側の端部(+Y方向側の端部)は、第1電極60の端部よりも外側まで形成されている。つまり、第1電極60の他方の端部(+Y方向側の端部)は、圧電体層70によって覆われている。一方、圧電体層70の一方の端部(−Y方向側の端部)は、第1電極60の一方の端部(−Y方向側の端部)よりも内側にある。つまり、第1電極60の一方の端部(−Y方向側の端部)は、圧電体層70によって覆われていない。
第2電極80は、X方向に亘って、圧電体層70、第1電極60及び振動板50上に連続して設けられている。つまり、第2電極80は、複数の圧電体層70に共通する共通電極として構成されている。第2電極80ではなく、第1電極60を共通電極としてもよい。
圧電素子300が形成された基板10上には、保護基板30が接着剤35により接合されている。保護基板30は、マニホールド部32を有している。マニホールド部32により、マニホールド100の少なくとも一部が構成されている。本実施形態に係るマニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向(Z方向)に貫通しており、更に圧力発生室12の幅方向(X方向)に亘って形成されている。そして、マニホールド部32は、上記のように、基板10の連通部15と連通している。これらの構成により、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100が構成されている。
保護基板30には、圧電素子300を含む領域に、圧電素子保持部31が形成されている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有している。この空間は、密封されていても密封されていなくてもよい。保護基板30には、保護基板30を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔33が設けられている。貫通孔33内には、リード電極90の端部が露出している。
保護基板30上には、信号処理部として機能する駆動回路120が固定されている。駆動回路120は、例えば回路基板や半導体集積回路(IC)を用いることができる。駆動回路120及びリード電極90は、接続配線121を介して電気的に接続されている。駆動回路120は、プリンターコントローラー200に電気的に接続可能である。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合されている。固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向(Z方向)に完全に除去された開口部43となっている。マニホールド100の一方の面(+Z方向側の面)は、可撓性を有する封止膜41で封止されている。マニホールド100の他方の面(−Z方向側の面)には、上記のノズルプレート20が位置している。
次に、圧電素子300の詳細について、図4(a)〜(b)を用いて説明する。図4(a)は、図3(b)をB−B′線に沿って切断したときの圧電素子近傍の断面図であり、図4(b)は、図4(a)の拡大図である。図4(b)には、圧電体層70由来のKやNaの挙動も模式的に示してある。
圧電素子300は、酸化ジルコニウム層52と、密着層56と、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とを含む。酸化ジルコニウム層52の厚さは、約20nmである。密着層56の厚さは、約10nmである。第1電極の厚さは約0.2μmである。圧電体層70は、厚さが約3.0μm以下、好ましくは0.3μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.5μm以下の、いわゆる薄膜の圧電体である。第2電極80の厚さは約0.05μmである。ここに挙げた各要素の厚さは何れも一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲内で変更可能である。密着層56は省略しても構わない。
第1電極60及び第2電極80の材料は、白金(Pt)やイリジウム(Ir)等の貴金属が好適である。第1電極60の材料や第2電極80の材料は、導電性を有する材料であればよい。第1電極60の材料と第2電極80の材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
本実施形態では、圧電体層70の作製過程において、圧電材料に含まれるKやNaが、上記の第1電極60中に拡散することがある。しかし、後述のように、第1電極60と基板10との間に設けられる酸化ジルコニウム層52が、KやNaのストッパー機能を果たす。このため、アルカリ金属が基板10に到達することを抑制できる。
このような圧電素子300では、一般的に、何れか一方の電極が共通電極として構成され、他方の電極が個別電極として構成される。上記のように、本実施形態では、第1電極60が個別電極として構成され、第2電極80が共通電極として構成されている。ただし、駆動回路や配線の都合で、第1電極を共通電極として構成し、第2電極を個別電極として構成しても支障はない。
圧電体層70は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。本実施形態では、圧電材料として、K、Na及びNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物を用いた。かかる複合酸化物としては、例えば、下記式(2)で表されるKNN系の複合酸化物が挙げられる。
(K,Na1−X)NbO ・・・ (2)
(0.1≦x≦0.9)
一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物では、Aサイトには酸素が12配位しており、Bサイトには酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。KNN系の複合酸化物では、AサイトにK及びNaが位置し、BサイトにNbが位置している。
上記式(2)で表される複合酸化物は、いわゆるKNN系の複合酸化物である。KNN系の複合酸化物は、鉛(Pb)を含有しない非鉛系圧電材料であるため、生体適合性に優れ、また環境負荷も少ない。しかも、KNN系の複合酸化物は、非鉛系圧電材料の中でも圧電特性に優れているため、各種の特性向上に有利である。その上、KNN系の複合酸化物は、他の非鉛系圧電材料(例えば、BNT−BKT−BT;[(Bi,Na)TiO]−[(Bi,K)TiO]−[BaTiO])に比べてキュリー温度が比較的高く、また温度上昇による脱分極も生じ難い。ゆえに、KNN系の複合酸化物は、高温での使用が可能である。
上記式(2)において、Kの含有量は、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下である(言い換えると、Naの含有量が、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下である)ことが好ましい。すなわち、上記式(2)において、0.3≦x≦0.7であることが好ましい。これによれば、圧電特性に有利な組成を有する複合酸化物となる。また、Kの含有量は、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して35モル%以上55モル%以下である(言い換えると、Naの含有量が、Aサイトを構成する金属元素の総量に対して45モル%以上65モル%以下である)ことが、より好ましい。すなわち、上記式(2)において、0.35≦x≦0.55であることが、より好ましい。これによれば、より圧電特性に有利な組成を有する複合酸化物となる。
ただし、KNN系の複合酸化物は、上記式(2)で表される組成に限定されない。例えば、AサイトやBサイトに他の元素(添加物)が含まれていてもよい。添加物の例としては、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)及び銅(Cu)等が挙げられる。
この種の添加物は、1つ以上含んでいてもよい。一般的に、添加物の量は、主成分となる元素の総量に対して20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。添加物を利用することにより、各種特性を向上させて構成や機能の多様化を図りやすくなる。これら他の元素を含む複合酸化物である場合も、ABO型ペロブスカイト構造を有するように構成されることが好ましい。
Aサイトのアルカリ金属は化学量論の組成に対して過剰に加えられてもよい。また、Aサイトのアルカリ金属は、化学量論の組成に対して不足していても良い。従って、本実施形態の複合酸化物は、下記式(3)でも表すことができる。下記式(3)において、Aは、過剰に加えられてもよいK及びNaの量、又は不足していてもよいK及びNaの量を表している。K及びNaの量が過剰である場合は1.0<Aである。K及びNaの量が不足している場合は、A<1.0である。例えば、A=1.1であれば、化学量論の組成におけるK及びNaの量を100モル%としたときに、110モル%のK及びNaが含まれていることを表す。A=0.9であれば、化学量論の組成におけるK及びNaの量を100モル%としたときに、90モル%のK及びNaが含まれていることを表す。尚、Aサイトのアルカリ金属が化学量論の組成に対して過剰でなく不足もしていない場合は、A=1である。特性向上の観点から、0.85≦A≦1.15、好ましくは0.90≦1.10、より好ましくは0.95≦A≦1.05である。
(KAX,Na1−X))NbO ・・・ (3)
(0.1≦x≦0.9,好ましくは0.3≦x≦0.7,より好ましくは0.35≦x≦0.55)
圧電材料には、元素の一部欠損した組成を有する材料、元素の一部が過剰である組成を有する材料、及び元素の一部が他の元素に置換された組成を有する材料も含まれる。圧電体層70の基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれた材料や、元素の一部が他の元素に置換された材料も、本実施形態に係る圧電材料に含まれる。
また、本明細書において「K、Na及びNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物」は、K、Na及びNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物のみに限定されない。すなわち、本明細書において「K、Na及びNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物」は、K、Na及びNbを含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物(例えば、上記に例示したKNN系の複合酸化物)と、ABO型ペロブスカイト構造を有する他の複合酸化物と、を含む混晶として表される圧電材料を含む。
他の複合酸化物は、本発明の範囲で限定されないが、鉛(Pb)を含有しない非鉛系圧電材料であることが好ましい。また、他の複合酸化物は、鉛(Pb)及びビスマス(Bi)を含有しない非鉛系圧電材料であることがより好ましい。これらによれば、生体適合性に優れ、また環境負荷も少ない圧電素子300となる。
以上のような複合酸化物からなる圧電体層70は、本実施形態では、所定の結晶面に対して優先配向している。例えば、KNN系の複合酸化物からなる圧電体層70は、(100)面に自然配向しやすい。この他、必要に応じて設けられる所定の配向制御層によっては、圧電体層70は、(110)面や(111)面に優先配向する場合もある。所定の結晶面に優先配向した圧電体層70は、ランダム配向した圧電体層に比べて、各種の特性の向上を図りやすい。尚、本明細書において、優先配向とは、50%以上、好ましくは80%以上の結晶が、所定の結晶面に配向していることを示すものとする。例えば「(100)面に優先配向している」とは、圧電体層70の全ての結晶が(100)面に配向している場合と、半分以上の結晶(50%以上、好ましくは80%以上)が(100)面に配向している場合を含む。
圧電材料にNaやKが含まれている場合、それらが、圧電体層70の作製過程で第1電極60中に拡散することがある。そして、第1電極60を通り越し、第1電極60と基板10との間に配される密着層56、更には基板10に至ることもある。
密着層56は、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層によって構成されることが一般的である。しかし、これらの層は、何れも第1電極60を通り越したKやNaをその内部に拡散させ、更には基板10側に至らしめてしまう可能性がある。仮に、アルカリ金属が第1電極60及び密着層56を通り越して基板10に達すると、基板10と反応を起こしてしまい、耐久性等の各種特性に悪影響が生じ得る。
これに対し、本実施形態では、圧電体層70と基板10との間に酸化ジルコニウム層52を具備している。酸化ジルコニウム層52は、KやNaのストッパーとして機能する。すなわち、圧電体層70の作製過程でKやNaが第1電極60中や密着層56中に拡散し、基板10側に向かったとしても、基板10に至る手前の酸化ジルコニウム層52によって、KやNaの拡散が抑制される。従って、KやNaが基板10に到達することを抑制することができる。酸化ジルコニウム層52によってKやNaの拡散が抑制される場合、酸化ジルコニウム層52の第1電極60側の界面fを跨ぐ領域Rf(界面fを挟んで±Z方向の所定範囲を含む領域)において、K及びNaの量の変化をみたとき、K及びNaの量は、界面fの第1電極60側(+Z方向側)よりも界面fの基板10側(−Z方向側)の方が小さくなる。
すなわち、酸化ジルコニウム層52がアルカリ金属のストッパー機能を果たすことで、界面fの第1電極60側(+Z方向側)のK及びNaの量よりも、界面fの基板10側(−Z方向側)のK及びNaの量の方が小さくなる。このことは、例えば二次イオン質量分析による測定結果に基づいて判断が可能である。界面fを跨ぐ領域Rfを二次イオン質量分析により測定したとき、第1電極60側のK及びNaの検出強度よりも、基板10側のK及びNaの検出強度が小さくなっていれば、酸化ジルコニウム層52がKやNaのストッパーとして機能していると判断できる。
「界面f」は、第1電極60と酸化ジルコニウム層52との界面に限定されない。第1電極60と酸化ジルコニウム層52との間に密着層56が配される場合は、「界面f」は、密着層56と酸化ジルコニウム層52との界面となる。第1電極60と酸化ジルコニウム層52との間に密着層56が配されない場合は、「界面f」は、第1電極60と、酸化ジルコニウム層52との界面となる。第1電極60と酸化ジルコニウム層52との間に他の層が配される場合は、酸化ジルコニウム層52と、第1電極60側で酸化ジルコニウム層52に接している他の層と、の界面が、「界面f」となる。すなわち、「界面f」は、酸化ジルコニウム層52の第1電極側(+Z方向側)の面と同義である。尚、図4(b)で図示された領域Rf,領域Rfa及び領域Rfbの大きさは、あくまで一例である。
また、本実施形態において「界面fを跨ぐ領域」は、界面fを中心として、第1電極60側(+Z方向側)へ約50μmの領域Rfa、及び基板10側(−Z方向側)へ約50μmの領域Rfbの合計をいう。勿論、これらの領域Rfa及び領域Rfbの大きさは、圧電素子のサイズや圧電素子応用デバイスの用途によって異なる場合がある。
本実施形態に係る圧電素子300は、上記のように、KNN系の複合酸化物からなる。KNN系の複合酸化物は、鉛(Pb)を含まない非鉛系圧電材料であるため、生体適合性に優れ、また環境負荷も少ない。しかも、KNN系の複合酸化物は、非鉛系圧電材料の中でも圧電特性に優れているため、各種の特性向上に有利である。その上、KNN系の複合酸化物は、他の非鉛系圧電材料に比べてキュリー温度が比較的高く、また温度上昇による脱分極が生じ難いため、高温での使用が可能である。
本態様によれば、このようなKNN系の複合酸化物を用いた場合にも、アルカリ金属が基板10に到達することを抑制できる。そして、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層を密着層として用いた場合にも、アルカリ金属が基板10に到達することを抑制できる。
次に、圧電素子300の製造方法の一例について、インクジェット式記録ヘッド1の製造方法とあわせて説明する。
まず、シリコン基板110を準備する。次に、シリコン基板110を熱酸化することによって、その表面に、二酸化シリコンからなる弾性膜51を形成する。更に、弾性膜51上にスパッタリング法でジルコニウム膜を形成し、これを熱酸化することによって酸化ジルコニウム層52を形成する。このようにして、弾性膜51と酸化ジルコニウム層52とからなる、振動板50を得る。次いで、酸化ジルコニウム層52上に、酸化チタンからなる密着層56を、スパッタリング法やチタン膜の熱酸化等により形成する。そして、図5(a)に示すように、密着層56上に、第1電極60をスパッタリング法や蒸着法等により形成する。
次いで、図5(b)に示すように、第1電極60上に所定形状のレジスト(図示なし)をマスクとして形成し、密着層56及び第1電極60を同時にパターニングする。次に、図5(c)に示すように、密着層56、第1電極60及び振動板50に重なるように圧電体膜74を複数層形成する。圧電体層70は、これら複数層の圧電体膜74によって構成される。圧電体層70は、例えばMOD法やゾル−ゲル法等の化学溶液法により形成することができる。その他、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法等によっても形成することができる。
化学溶液法によって形成された圧電体層70は、前駆体溶液を塗布する工程(塗布工程)から前駆体膜を焼成する工程(焼成工程)までの一連の工程を複数回繰り返すことによって形成される。圧電体層70を化学溶液法で形成する場合の具体的な手順は、例えば次のとおりである。まず、所定の金属錯体を含む前駆体溶液を調整する。前駆体溶液は、焼成によりK、Na及びNbを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を、有機溶媒に溶解又は分散させたものである。このとき、Mn等の添加物を含む金属錯体を更に混合してもよい。
Kを含む金属錯体としては、2−エチルヘキサン酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。Naを含む金属錯体としては、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。Nbを含む金属錯体としては、2−エチルヘキサン酸ニオブ、ペンタエトキシニオブ等が挙げられる。添加物としてMnを加える場合、Mnを含む金属錯体としては、2−エチルヘキサン酸マンガン等が挙げられる。このとき、2種以上の金属錯体を併用してもよい。例えば、Kを含む金属錯体として、炭酸カリウムと酢酸カリウムとを併用してもよい。溶媒としては、2−nブトキシエタノール若しくはn−オクタン又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。前駆体溶液は、K、Na、Nbを含む金属錯体の分散を安定化する添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
そして、振動板50、密着層56、及び第1電極60が形成されたシリコン基板110上に、上記の前駆体溶液を塗布して、前駆体膜を形成する(塗布工程)。次いで、この前駆体膜を所定温度、例えば130℃〜250℃程度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥させた前駆体膜を所定温度、例えば300℃〜450℃に加熱し、この温度で一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。最後に、脱脂した前駆体膜をより高い温度、例えば650〜800℃程度に加熱し、この温度で一定時間保持することによって結晶化させると、圧電体膜74が完成する(焼成工程)。
乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。上記の工程を複数回繰り返して、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。尚、塗布工程から焼成工程までの一連の工程において、塗布工程から脱脂工程までを複数回繰り返した後に、焼成工程を実施してもよい。
本実施形態では、圧電材料にアルカリ金属(KやNa)が含まれる。アルカリ金属は、上記の焼成工程で第1電極60中や密着層56中に拡散しやすい。仮に、アルカリ金属が第1電極60及び密着層56を通り越して基板10に達すると、そのシリコン基板110と反応を起こしてしまう。しかし、本実施形態では、上記の酸化ジルコニウム層52が、KやNaのストッパー機能を果たしている。従って、アルカリ金属がシリコン基板110(基板10)に到達することを抑制できる。
その後、複数の圧電体膜74からなる圧電体層70をパターニングして、図5(d)に示すような形状にする。パターニングは、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングや、エッチング液を用いたウェットエッチングによって行うことができる。その後、圧電体層70上に第2電極80を形成する。第2電極80は、第1電極60と同様の方法により形成できる。以上の工程により、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを備えた圧電素子300が完成する。言い換えると、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが重なり合う部分が圧電素子300となる。
次に、図6(a)に示すように、シリコン基板110の圧電素子300側の面に、接着剤35(図3(b)参照)を介して保護基板用ウェハー130を接合する。その後、保護基板用ウェハー130の表面を削って薄くする。また、保護基板用ウェハー130に、マニホールド部32や貫通孔33(図3(b)参照)を形成する。次いで、図6(b)に示すように、シリコン基板110の圧電素子300とは反対側の面に、マスク膜53を形成し、これを所定形状にパターニングする。そして、図6(c)に示すように、マスク膜53を介して、シリコン基板110に対してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)を実施する。これにより、個々の圧電素子300に対応する圧力発生室12の他、インク供給路13、連通路14、及び連通部15(図3(b)参照)を形成する。
次に、シリコン基板110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分をダイシング等により切断・除去する。更に、シリコン基板110の圧電素子300とは反対側の面に、ノズルプレート20を接合する(図3(b)参照)。また、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合する(図3(b)参照)。ここまでの工程によって、インクジェット式記録ヘッド1のチップの集合体が完成する。この集合体を個々のチップに分割することにより、インクジェット式記録ヘッド1が得られる。
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
6inchシリコン基板の表面を熱酸化することで、基板10上に二酸化シリコン膜からなる弾性膜51を形成した。次に、弾性膜51上にジルコニウム膜をスパッタし、このジルコニウム膜を熱酸化することで400nmの酸化ジルコニウム層52を形成した。更に、酸化ジルコニウム層52上にチタン膜をスパッタして、厚さ40nmの密着層56を作製した。そして、密着層56上に白金をスパッタした後、所定形状にパターニングすることで厚さ50nmの第1電極60を形成した。
次いで、以下の手順で圧電体層70を形成した。まず、酢酸カリウムのn−オクタン溶液、酢酸ナトリウムのn−オクタン溶液、及びペンタエトキシニオブのn−オクタン溶液を混合し、下記式(4)の組成となるように前駆体溶液を調製した。
(K0.4Na0.6)(Nb0.995Mn0.005)O ・・・ (4)
次いで、調製した前駆体溶液を、スピンコート法により、第1電極60が形成された上記の基板10上に塗布した(塗布工程)。次に、ホットプレート上に基板10を載せ、180℃で2分間乾燥させた(乾燥工程)。次いで、ホットプレート上に基板10に対して350℃で2分間の脱脂を行った(脱脂工程)。そして、RTA装置により、700℃で5分間焼成を行った(焼成工程)。上記の塗布工程〜焼成工程を7回繰り返すことで、7層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成した。
作製した圧電体層70上に白金をスパッタすることで、第2電極80を作製した。以上の手順により、実施例1の圧電素子を作製した。
(比較例1)
酸化ジルコニウム層52を設けない以外は、実施例1と同様の手順により、比較例1の圧電素子を作製した。
<二次イオン質量分析>
実施例1及び比較例1について、アルバック−ファイ社製「ADEPT−1010」を使用し、圧電体層70から厚さ方向に亘って二次イオン質量分析(SIMS;Secondary Ion Mass Spectrometry)を行い、K及びNaの分布状態を測定した。測定結果を図7(a)〜(b)に示す。図7(a)は、実施例1の測定結果であり、図7(b)は、比較例1の測定結果である。
図7(a)〜(b)において、縦軸は93Nb+16Oで規格化した検出強度であり、横軸はスパッター時間である。スパッター時間の経過は、積層体の最表面からの深さ、すなわち−Z方向の距離に対応する。つまり、図7(a)〜(b)では、横軸が右に進むにつれて、圧電体層70から基板10方向(−Z方向)に深い地点でのK及びNaの状態が評価されている。図中、KNNMは圧電体層の領域を表し、Ptは第1電極の領域を表し、TiOxは密着層の領域を表している。図7(a)に示す実施例1では、TiOxの右側はZrOxとされている。ZrOxは、酸化ジルコニウム層を表している。図7(b)に示す比較例1では、酸化ジルコニウム層を設けていないので、TiOxの右側はSiOx/Siとされている。SiOx/Siは、弾性膜及び基板を表している。
図7(a)に示す実施例1について、界面fを跨ぐ領域RfにおけるK及びNaの強度を、圧電体層70側(図中左側)から酸化ジルコニウム層52(図中右側)に向かって観察すると、次のとおりである。K及びNaの強度は、第1電極60における圧電体層70側の領域でいったん小さくなる。その後、K及びNaの強度は、密着層56に近づくにつれて大きくなり、更に、密着層56の領域で大きくなる。一方、K及びNaの強度は、酸化ジルコニウム層52の領域に入ると小さくなる。つまり、界面fの第1電極60側(+Z方向側)におけるK及びNaの検出強度よりも、基板10側(−Z方向側)におけるK及びNaの検出強度が小さくなっている。このことから、圧電体層70の作製工程において、K及びNaが第1電極60を通り越し、密着層56中を拡散するが、基板10に至る手前の酸化ジルコニウム層52によって、K及びNaの拡散が抑制されることが分かる。尚、図7(a)で図示された領域Rfの大きさは、あくまで一例である。
これに対し、図7(b)に示す比較例1について、基板10(厳密には弾性膜51)と密着層56との界面をf’として、当該界面f’を跨ぐ領域Rf’におけるK及びNaの強度を、圧電体層70側(図中左側)から基板10(図中右側)に向かって観察すると、次のとおりである。K及びNaの強度は、第1電極60における圧電体層70側の領域でいったん小さくなる。その後、K及びNaの強度は、密着層56に近づくにつれて小さくなり、一方、密着層56の領域で大きくなる。K及びNaの強度は、基板10の領域に入っても大きいままである。つまり、第1電極60と基板10との間に酸化ジルコニウム層が形成されていない比較例1において、界面f’の第1電極60側(+Z方向側)のK及びNaの検出強度と、基板10側(−Z方向側)のK及びNaの検出強度と、を比べると、両者はほぼ同じであるか、後者の方が大きくなっている。このことから、圧電体層70の作製工程において、K及びNaが第1電極60及び密着層56を通り越し、K及びNaが、基板10中にまで拡散していることが分かる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明した。しかし、本発明の基本的構成は上記の態様に限定されない。上記の実施形態では、流路形成基板としてSi単結晶基板を例示した。しかし、流路形成基板は、SOI基板やガラス等の材料であってもよい。何れの基板であっても、圧電体層由来のアルカリ金属との反応によって劣化が予想されるため、KやNaのストッパー機能を果たす酸化ジルコニウム層を設ける意義がある。
また、上記の実施形態では、圧電素子応用デバイスの一例として、インクジェット式記録ヘッドを挙げて説明した。上記の実施形態に係る圧電素子を具備するインクジェット式記録ヘッドは、アルカリ金属が流路形成基板に到達することを抑制できる。その結果、第1電極と振動板との密着性が低下することを防止でき、また形状不良の発生も防止できる。つまり、第1電極又は密着層と、基板と、の良好な界面を形成できる。従って、耐久性の低下、インク噴射特性の低下、絶縁性の低下、破壊電圧の低下等の各種特性の低下を回避できる。
一方、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としており、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも適用できる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、他の圧電素子応用デバイスに搭載される圧電素子にも適用することができる。圧電素子応用デバイスの一例としては、圧電MEMS素子に代表されるMEMS要素が挙げられる。MEMS要素の作製には、フォトリソグラフィー法によるSiウェハーの形状加工が使用されることが多い。Siはアルカリ金属と反応により、形状不良の原因となるシリケートを形成する場合がある。これに対し、上記の実施形態に係る圧電素子を具備するMEMS要素は、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。その結果、各種特性の低下を回避できる。
また、圧電素子応用デバイスの一例としては、超音波センサー等に代表される超音波デバイス等がある。上記の実施形態に係る圧電素子を具備する超音波デバイスでも、アルカリ金属が基板に到達することを抑制できる。その結果、超音波の送信・受信特性等の各種特性の低下を回避できる。
圧電素子応用デバイスの例は、前記の例に限定されない。例えば、圧電アクチュエーター装置、超音波モーター、圧力センサー、IRセンサー等の焦電素子、強誘電体メモリー等の強誘電体素子等も、圧電素子応用デバイスに含まれる。つまり、圧電素子応用デバイスには、上記のような各種の圧電デバイスを利用した完成体も含まれる。上記の液体噴射ヘッドを利用した液体噴射装置、上記の超音波デバイスを利用した超音波センサー、上記のモーターを駆動源として利用したロボット等も、圧電素子応用デバイスに含まれる。勿論、これらもあくまで一例である。
図面において示す構成要素、すなわち層等の厚さ、幅、相対的な位置関係等は、本発明を説明する上で、誇張して示されている場合がある。また、本明細書の「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「基板上の酸化ジルコニウム層」や「酸化ジルコニウム層上の第1電極」という表現は、基板と酸化ジルコニウム層との間や、酸化ジルコニウム層と第1電極との間に、他の構成要素を含むものを除外しない。
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 マニホールド部、 33 貫通孔、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 41 封止膜、 42 固定板、 43 開口部、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 酸化ジルコニウム層、 53 マスク膜、 56 密着層、 60 第1電極、 70 圧電体層、 71 凹部、 74 圧電体膜、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 121 接続配線、 200 プリンターコントローラー

Claims (7)

  1. 基板上に形成される酸化ジルコニウム層と、
    前記酸化ジルコニウム層上に形成された第1電極と、
    前記第1電極上に形成され、カリウム(K)、ナトリウム(Na)及びニオブ(Nb)を含むABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層と、
    前記圧電体層上に形成された第2電極と、を具備する圧電素子であって、
    前記酸化ジルコニウム層の前記第1電極側の界面を跨ぐ領域において、前記カリウム及び前記ナトリウムの量の変化をみたとき、前記界面の前記第1電極側よりも前記界面の前記基板側の方が小さくなること
    を特徴とする圧電素子。
  2. 前記ABO型ペロブスカイト構造の複合酸化物は、下記式(1)で表される組成であることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
    (K,Na1−X)NbO (0.1≦x≦0.9) ・・・ (1)
  3. 前記カリウムの含有量が、前記ABO型ペロブスカイト構造のAサイトを構成する金属元素の総量に対して30モル%以上70モル%以下であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の圧電素子。
  4. 前記界面を跨ぐ領域を二次イオン質量分析により測定したとき、
    前記界面前記第1電極側の前記カリウム及び前記ナトリウムの検出強度よりも、前記基板側の前記カリウム及び前記ナトリウムの検出強度が小さくなること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧電素子。
  5. 前記基板と前記第1電極との間に、密着層を具備すること
    を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電素子。
  6. 前記密着層は、酸化チタン(TiO)層、チタン(Ti)層、又は窒化シリコン(SiN)層の何れかであること
    を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧電素子。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の圧電素子を具備すること
    を特徴とする圧電素子応用デバイス。
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