JP2016199146A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Kensuke Ito
健介 伊藤
直志 西橋
Tadashi Nishibashi
直志 西橋
祐樹 関川
Yuki Sekikawa
祐樹 関川
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Abstract

【課題】前輪への荷重移動が生じても安定したヨーモーメントを付与可能な車両の制御装置を提供すること。【解決手段】本発明では、前後輪のうち少なくともいずれか一方の左右輪のトルク差を制御することで車両にヨーモーメントを発生させるにあたり、ヨーレイト目標値を達成するヨーモーメントを演算するとき、前後輪コーナリングパワー変動量推定部600において、前輪への荷重移動量が大きいほど、前輪では増大し、後輪では減少するコーナリングパワーの変動量を算出し、各DYC制御部601乃至604に出力して、ヨーモーメントを小さくすることとした。【選択図】図2

Description

本発明は、左右輪のトルクを独立して制御する車両の制御装置に関する。
左右輪のトルクを独立して制御する技術として特許文献1に記載の技術が知られている。この公報によれば、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの偏差に基づいて車両に付与するヨーモーメントを算出し、このヨーモーメントの達成に必要な駆動輪トルク指令値を決定している。
特開2013−28329号公報
本発明者らが鋭意検討した結果、前輪への荷重移動量によって必要なヨーモーメントを達成するのに必要な駆動輪トルク左右差が変化することを見出した。例えば、前輪への荷重移動量が増加するほど必要なヨーモーメントを達成する駆動輪トルク左右差は小さくなる。よって、目標ヨーレイトと実ヨーレイトとの偏差にのみ着目して駆動輪トルク指令値を決定した場合、前輪荷重移動量が増大するほど、過剰にヨーモーメントが発生するおそれがあった。
本発明は上記課題に着目し、前輪への荷重移動が生じても安定したヨーモーメントを付与可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
この目的のため、本発明では、前後輪のうち少なくともいずれか一方の左右輪のトルク差を制御することで車両にヨーモーメントを発生させるにあたり、ヨーレイト目標値を達成するヨーモーメントを演算するとき、前輪への荷重移動量が大きいほど、ヨーモーメントを小さくすることとした。
よって、荷重移動が発生しても、ヨーレイト目標値を達成すべきヨーモーメントを安定的に発生できる。
実施例1の電動車両における制駆動系の構成図である。 実施例1の駆動力制御部内における制御構成を表す制御ブロック図である。 実施例1のコーナリングパワー変動量推定を表すブロック図である。 実施例1の加減速DYC制御部の構成を表す図である。 実施例1の操舵応答DYC制御部の構成を表す図である。 実施例1のアンダーステア抑制DYC制御部の構成を表す図である。 実施例1の外乱抑制DYC制御部の構成を表す図である。 実施例1の加減速DYCを行う際、前後荷重移動量によるコーナリングパワー変動を補正した場合のタイムチャートである。
〔実施例1〕
図1は、実施例1の電動車両における制駆動系の構成図である。
[駆動系の構成]
電動車両1は、後輪駆動方式の車両であり、駆動輪である左右後輪2RL,2RRを独立に駆動する左右電動モータ3L,3Rを有する。左右電動モータ3L,3Rは、三相交流モータである。実施例1では、左右電動モータ3L,3Rをばね下側(車輪側)に配置した、いわゆるインホイールモータ方式を採用している。左右電動モータ3L,3Rには左右インバータ4L,4Rが接続されている。左右インバータ4L,4RはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を各相2組ずつ用いた三相出力インバータである。左右インバータ4L,4Rには、高電圧バッテリ5が接続されている。左右インバータ4L,4Rは、駆動力制御部6からのゲート信号に応じて動作し、左右電動モータ3L,3Rを力行または回生運転させる。
駆動力制御部6は、アクセル開度と左右電動モータ3L,3Rの回転数(モータ回転数)に基づき、あらかじめ設定されたトルクマップを参照して要求モータトルクを演算し、演算された右輪最終トルク指令値及び左輪最終トルク指令値に各輪における左右電動モータ3L,3Rのモータ回転数を乗じて左右電動モータ3L,3Rに供給すべき左右の目標電力を算出する。駆動力制御部6は、左右電動モータ3L,3Rに供給されている実電力(例えば、実電圧と実電流とから求まる。)と対応する目標電力との差分をゼロとするゲート信号を生成し、左右インバータ4L,4Rを駆動する。
[制動系の構成]
電動車両1の各車輪(左前輪2FL,右前輪2FR,左後輪2RL,右後輪2RR)には、ホイルシリンダ7FL,7FR,7RL,7RR(以下、総称してホイルシリンダ7と記載する。)が設けられている。各ホイルシリンダ7は、液圧制御ユニット8から供給されるブレーキ液により、対応する車輪に摩擦制動トルクを付与する。液圧制御ユニット8は、複数の電磁弁やモータポンプを有する。液圧制御ユニット8は、制動力制御部9からの液圧制御指令に基づいて電磁弁の開閉動作やモータポンプの回転数を制御し、各ホイルシリンダ7にブレーキ液を供給する。各ホイルシリンダ7に供給するブレーキ液は、独立して調整可能である。
制動力制御部9は、ドライバの制動操作を表すブレーキペダルのストロークを検出するブレーキストロークセンサ10と、車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ12と、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRの車輪速度を検出する車輪速センサ13と、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRの車輪速度から車体速度を検出する車速センサ14と、ドライバのステアリングホイール操舵操作を表す操舵角を検出する操舵角センサ15と、マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ16と、を有する。ブレーキストロークセンサ10によりストロークが検出されると、ドライバの制動操作に応じた要求減速度を演算し、要求減速度を達成するための目標制動トルクを求める。
制動力制御部9は、目標制動トルクに対して左右電動モータ3L,3Rによる回生制動トルクを優先して出力し、回生制動トルクのみでは不足する場合、その不足分を摩擦制動トルクで補う、いわゆる回生協調制御を行う。制動力制御部9は、モータ回転数(≒車速)や高電圧バッテリ5のバッテリSOCで決まる回生限界トルクを上限として目標回生制動トルクを演算し、駆動力制御部6に出力する。回生協調制御時、駆動力制御部6は、左右電動モータ3L,3Rの回生制動トルクが共に目標回生制動トルクの半分の値となるような左右インバータ4L,4Rのゲート信号をそれぞれ生成し、左右インバータ4L,4Rを駆動する。また、回生協調制御時、制動力制御部9は、目標制動トルクから目標回生制動トルクを減じて目標摩擦制動トルクを演算し、目標摩擦制動トルクが得られるような液圧制御指令を求め、液圧制御ユニット8に出力する。
尚、液圧制御指令を求めるにあたっては、前輪へのブレーキ配分量を所望の値に制御することで、適正な車両挙動を達成する。例えば、目標制動トルクが所定値未満の場合には、目標回生制動トルクを最大値まで発生させ、残りの制動トルクは全て前輪側の目標摩擦制動トルクを設定することとしてもよい。この場合、回生エネルギを最大限回収しつつ、後輪側での摩擦制動トルクと回生制動トルクとの掛け替え制御を実施する必要が無いため、制御が容易であり、運転者に違和感を与えることが無い。一方、目標制動トルクが所定値以上の場合には、理想制動力配分となるように前輪へのブレーキ配分量を決め、後輪側では回生トルクと摩擦制動トルクとの両方を用いて制動してもよい。このように、前輪へのブレーキ配分量は、走行状態や要求制動トルクに応じて適宜変更される。制動力制御部9と駆動力制御部6は、CAN(Controller Area Network)により通信を行っている。
制動力制御部9は、ドライバの制動操作に依らず各ホイルシリンダ7のホイルシリンダ液圧を調整するブレーキ制御として、アンチスキッド制御、トラクション制御、横滑り防止制御、車間制御等を行う。アンチスキッド制御では、制動スリップが発生した車輪のホイルシリンダ液圧を減圧してロック傾向を抑制する。具体的には、車速センサ14により検出された車体速度と各輪の車輪速度とが所定の関係となるように増減圧制御を行う。トラクション制御では、駆動スリップが発生した左右後輪2RL,2RRのホイルシリンダ液圧を増圧してホイルスピンを抑制する。横滑り防止制御では、各車輪2FL,2FR,2RL,2RRの制動力を独立に制御し、実際のヨーレイトを目標ヨーレイトに近づけ、車両の横滑りを低減させる。
図2は実施例1の駆動力制御部内における制御構成を表す制御ブロック図である。駆動力制御部6は、右輪トルク指令値演算部6aと、左輪トルク指令値演算部6bと、走行状態に応じて車両のヨーモーメントを制御するDYC制御部6cとを有する。DYC制御部6cは、前後輪のコーナリングパワーKf,Krの変動量δKf,δKrを推定する前後輪コーナリングパワー変動量推定部600を有する。また、車両の走行状態や運転者の操舵状態に基づいてヨーモーメントを付与する各種DYC制御部601〜604を有する。
加減速DYC制御部601では、車両の加減速状態において車両挙動を安定化させるヨーモーメントを付与するための加減速DYCトルク差ΔT1を演算する。操舵応答DYC制御部602では、運転者の操舵に対し、目標とする車両のヨーレイト過渡特性を達成するようにヨーモーメントを付与するための操舵応答DYCトルク差ΔT2を演算する。アンダーステア抑制DYC制御部603では、加減速が無いと仮定した場合における操舵角と車速によって発生する定常ヨーレイトを目標とし、車両の定常ヨーレイトを達成するようにヨーモーメントを付与するためのアンダーステア抑制DYCトルク差ΔT3を演算する。外乱抑制DYC制御部604では、操舵角、車体速度等に基づいて外乱が無い場合のヨーレイトを推定し、ヨーレイトセンサ12により検出された実ヨーレイトとの偏差を解消するようにヨーモーメントを付与するための外乱抑制DYCトルク差ΔT4を演算する。
トルク制限値演算部605では、高電圧バッテリ5からの充放電制限や、定格トルク等の制限に基づいてトルク制限値を演算する。DYCモーメント調整部605では、演算された各種トルク差ΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4のうち、加速要求度合い、各種トルク差の優先度合い、及びトルク制限値に基づいて、達成可能な調整後トルク差を演算する。右輪最終トルク演算部607aでは、右輪トルク指令値から調整後トルク差を加減算して右輪最終トルク指令値Trightを出力する。左輪最終トルク演算部607bでは、左輪トルク指令値Tleftから調整後トルク差を加減算して左輪最終トルク指令値を出力する。
図3は実施例1のコーナリングパワー変動量推定を表すブロック図である。図3(a)はコーナリングパワー変動量推定部600の制御構成を表し、図3(b)はコーナリング抵抗演算マップを表し、図3(c)は荷重移動とコーナリングパワーとの関係を表す。図3(a)に示すように、走行抵抗推定部600aでは、操舵角と車輪速度及び車体速度に基づいて走行抵抗トルクを演算する。走行抵抗トルクは下記の関係を有する。
(走行抵抗)=(転がり抵抗)+(空気抵抗)+(コーナリング抵抗)
ここで、転がり抵抗は、転がり抵抗係数μと輪荷重Wの積で演算できる。空気抵抗は、車両前面投影面積と空気密度と空気抵抗係数と車体速度の二乗との積の半分として演算できる。コーナリング抵抗は、例えば図3(b)に示すコーナリング抵抗演算マップに基づいて算出する。車体速度が大きい程コーナリング抵抗は大きく、また、操舵角が大きい程コーナリング抵抗は大きい。
トルク指令値加算部600bでは、右輪トルク指令値演算部6aで演算された右輪トルク指令値と、左輪トルク指令値演算部6bで演算された左輪トルク指令値とを加算し、トルク指令値の和を算出する。ブレーキトルク演算部600cでは、マスタシリンダ圧センサ16により検出されたマスタシリンダ圧に基づいて摩擦制動トルクであるブレーキトルクを演算する。
(ブレーキトルク)=(マスタシリンダ圧)×(変換係数)
変換係数とは、マスタシリンダ圧からブレーキトルクへ変換する所定の値である。尚、マスタシリンダ圧の発生からブレーキトルクを発生するまでの応答遅れを考慮することが望ましい。例えば、マスタシリンダ圧を、ブレーキ液の応答遅れを考慮した所定の時定数を有するフィルタによってフィルタリングし、フィルタ値を用いることでブレーキトルクの推定精度を向上できる。
タイヤ発生トルク推定部600dでは、トルク指令値の和とブレーキトルクから、タイヤに働くトルクを推定する。
(タイヤ発生トルク)=(トルク指令値の和)−(ブレーキトルク)
加速トルク算出部600eでは、タイヤ発生トルクから走行抵抗を差し引いて、最終的に路面に伝達される加速トルクを算出する。
(加速トルク)=(タイヤ発生トルク)−(走行抵抗)
前後加速度演算部600fでは、加速トルクに基づいて車両の前後加速度を演算する。
(車両前後加速度)=(加速トルク)÷(タイヤ動半径)÷(車両重量)
車両荷重移動量演算部600gでは、車両前後加速度に基づいて前後輪荷重移動量を演算する。
(前後荷重移動量)=(車両前後加速度)×(車両重量)×(重心高)×(ホイルベース)
前後輪コーナリングパワー変動量演算部600hでは、前後荷重移動量に基づいて前後輪のコーナリングパワー変動量δKf,δKrを算出する。図3(c)は、前輪コーナリングパワーと荷重との関係及び後輪コーナリングパワーと荷重との関係を表す特性図である。初期荷重から減速により前輪側に荷重が移動すると、初期前輪コーナリングパワーKfは増大し、初期後輪コーナリングパワーKrは減少する。この増大分及び減少分をコーナリングパワー変動量δKf,δKrとして算出し、各DYC制御部に出力する。
〔加減速DYCについて〕
図4は実施例1の加減速DYC制御部の構成を表す図である。操舵ヨーレイト推定部601aでは、以下の関係式に基づいて加減速が無い場合の操舵によって発生するヨーレイト(以下、操舵ヨーレイトr1と記載する。)を推定する。
m×V(dβ/dt+r1)=-2Kf[β+(Lf/V)r1-δf]-2Kr[β-(Lr/V)r1]
IZ(dr1/dt)=-2Kf[β+(Lf/V)r1−δf]Lf+2Kr[β-(Lr/V)r1]Lr
ここで、
m:車両重量
V:車体速度
δf:操舵角
β:車体滑り角
r1:操舵ヨーレイト
Lf:車両重心から前輪までの距離
Lr:車両重心から後輪までの距離
IZ:車両回転慣性
である。車体滑り角βは、操舵角δf,車体速度V,ヨーレイトセンサ値等から演算により算出してもよい、別途横加速度センサ等を備えた場合は、各種センサ値に基づいて算出すればよく、特に限定しない。
加減速ヨーレイト推定部601bでは、コーナリングパワー変動量δKf,δKrに基づいて加減速時におけるヨーレイト(以下、加減速ヨーレイトr2と記載する。)を推定する。尚、加減速時の前後輪コーナリングパワーをKf*,Kr*とすると、下記の関係を有する。
m×V(dβ/dt+r2)=-2Kf*[β+(Lf/V) r2-δf]-2Kr[β-(Lr/V)r2]
IZ(dr2/dt)=-2Kf*[β+(Lf/V)r2−δf]Lf+2Kr*[β-(Lr/V)r2]Lr
Kf*=Kf+δKf
Kr*=Kr+δKr
加減速時操舵ヨーレイト補正量算出部601cでは、操舵ヨーレイトr1と加減速ヨーレイトr2との偏差を演算し、ヨーレイト補正量δr*を算出する。
δr*=r1−r2
ブレーキ配分対応ヨーレイト補正部601dでは、前輪へのブレーキ配分量に応じてヨーレイト補正量δr*を小さく補正し、補正後ヨーレイト補正量δrを算出する。図4(b)は、前輪ブレーキ配分に対する補正ゲインx1の関係を表すゲインマップである。前輪ブレーキ配分が増加すると、前輪の前後方向タイヤ力が増大するため、荷重移動により摩擦円が増大してもコーナリングパワーは減少する。そこで、ヨーレイト補正量δr*を小さく補正することで、前輪へのブレーキ配分状態によらず適正な補正量を算出できる。
δr=δr*×x1
モーメント演算部601eでは、補正後ヨーレイト補正量δrと、操舵角δfと、車体速度Vと、前後輪コーナリングパワーKf,Krとに基づいて、補正後ヨーレイト補正量Δr*を実現する車両モーメントMZを逆演算により算出する。ここで、加減速ヨーレイト推定部601bにおいて使用した関係式に、操舵角δfとして0を、ヨーレイトrとして補正後ヨーレイト補正量δrを代入すると下記の関係式が得られる。尚、下記式からも明らかなように、モーメント演算部601eでは、コーナリングパワー変動量δKf,δKrを考慮した前後輪コーナリングパワーKf*,Kr*を使用するため、前後荷重移動量に応じて変化するコーナリングパワーを考慮した車両モーメントMZが算出される。
MZ={[1+(2ζ/ωn)×s+(1/ωn 2)×s2]/[AG(1+TG×s)]}δr
AG=(1/ωn 2)×[2(Kf*+Kr*)/(m×V×IZ)]
TG=m×V/[2(Kf*+Kr*)]
ωn={[(4l2×Kf*×Kr*)/(m×V2×IZ)]−2(Lf×Kf*−Lr×Kr*)/IZ}1/2
ζ={[m(Lf2×Kf*+Lr2×Kr*)+IZ(Kf*+Kr*)]/(m×V×IZ)}/{(4l2×Kf*×Kr*)/(m×V2×IZ)−2(Lf×Kf*−Lr×Kr*)/IZ}1/2
s:ラプラス演算子
前輪ブレーキ配分対応補正部601fでは、前輪へのブレーキ配分量に応じて車両モーメントMZを大きく補正し、補正後車両モーメントMZを算出する。図4(c)は、前輪ブレーキ配分に対する補正ゲインx2の関係を表すゲインマップである。前輪ブレーキ配分が増加すると、後輪側の前後方向タイヤ力が減少し、後輪コーナリングパワーKrが増大するため、車両モーメントMZが大きくなるように補正することで、適正なヨーモーメントを発生できる。
左右駆動力差演算部601gでは、演算された補正後車両モーメントMZに基づいて加減速DYC左右トルク差ΔT1を演算する。例えば、右旋回方向にモーメントを付与する場合、右輪トルク指令値Trightから1/2(ΔT1)を減算し、左輪トルク指令値Tleftに1/2(ΔT1)を加算する。これにより、全体としてのトルクを変えることなく、右旋回モーメントを付与できる。
〔操舵応答DYCについて〕
図5は実施例1の操舵応答DYC制御部の構成を表す図である。602d〜602gは実質的に加減速DYCの601d〜601gと同一であるため、異なる点についてのみ説明する。操舵目標ヨーレイト推定部602aでは、操舵に対して目標とする車両のヨーレイト過渡特性を演算する。例えば、複数の次数を有するローパスフィルタ等で表すこともできる。また、その時定数はドライバの違和感を軽減可能な特性として決定する。
操舵ヨーレイト推定部602bでは、加減速が無い場合の操舵によって発生するヨーレイトを推定する。
m×V(dβ/dt+r1)=-2Kf[β+(Lf/V)r1-δf]-2Kr[β-(Lr/V)r1]
IZ(dr1/dt)=-2Kf[β+(Lf/V)r1−δf]Lf+2Kr[β-(Lr/V)r1]Lr
操舵応答ヨーレイト補正量算出部602cでは、操舵目標ヨーレイトr3と操舵ヨーレイトr4との偏差を演算し、ヨーレイト補正量δr*を算出する。
δr*=r3−r4
これにより、操舵に対して目標とする車両のヨーレイト過渡特性と実際の操舵ヨーレイトとを一致させるのに必要なヨーレイト補正量δr*が算出できる。このヨーレイト補正量δr*に前輪ブレーキ配分対応ヨーレイト補正、モーメントの逆演算、前輪ブレーキ配分対応補正を行い、操舵応答DYC左右トルク差ΔT2を演算する。
〔アンダーステア抑制DYCについて〕
図6は実施例1のアンダーステア抑制DYC制御部の構成を表す図である。603d〜603gは実質的に加減速DYCの601d〜601gと同一であるため、異なる点についてのみ説明する。定常目標ヨーレイト演算部602aでは、以下の関係式に基づいて加減速が無い場合の操舵によって発生するヨーレイト(以下、操舵ヨーレイトr1と記載する。)を演算する。
m×V×r1=-2Kf[β+(Lf/V)r1-δf]-2Kr[β-(Lr/V)r1]
2Kf[β+(Lf/V)r1-δf]Lf=2Kr[β-(Lr/V)r1]Lr
定常操舵ヨーレイト推定部603bでは、横加速度と車体速度とから現在の定常ヨーレイトr5を推定する。主に高横加速度域でのアンダーステア特性を図8(b)に示す定常ヨーレイトマップに基づいて演算する。尚、横加速度は、操舵角δfと車体速度Vから推定してもよいし、横加速度センサを別途設けてもよく特に限定しない。
定常操舵ヨーレイト補正量算出部602cでは、定常目標ヨーレイトr1と定常操舵ヨーレイトr5との偏差を演算し、ヨーレイト補正量δr*を算出する。
δr*=r1−r5
これにより、操舵に対して目標とする車両の定常ヨーレイト特性と実際の定常操舵ヨーレイトとを一致させるのに必要なヨーレイト補正量δr*が算出できる。このヨーレイト補正量δr*に前輪ブレーキ配分対応ヨーレイト補正、モーメントの逆演算、前輪ブレーキ配分対応補正を行い、アンダーステア抑制DYC左右トルク差ΔT3を演算する。
〔外乱抑制DYCについて〕
図7は実施例1の外乱抑制DYC制御部の構成を表す図である。604d〜604gは実質的に加減速DYCの601d〜601gと同一であるため、異なる点についてのみ説明する。ヨーレイト推定部604aでは、操舵角δf、車体速度V、コーナリングパワー変動量δKf,δKr、車両モーメントMZから、外乱が無い場合のヨーレイトr6を推定する。
m×V(dβ/dt+r6)=-2Kf*[β+(Lf/V) r6-δf]-2Kr*[β-(Lr/V)r6]
IZ(dr6/dt)=-2Kf*[β+(Lf/V)r6−δf]Lf+2Kr*[β-(Lr/V)r6]Lr+MZ(n-1)
Kf*=Kf+δKf
Kr*=Kr+δKr
ここで、MZ(n-1)は、前回の制御周期において算出された車両モーメントMZである。
外乱抑制ヨーレイト補正量算出部604cでは、推定ヨーレイトr6とヨーレイトセンサ12により検出された実ヨーレイトrとの偏差を演算し、ヨーレイト補正量δr*を算出する。
δr*=r6−r
(前後荷重移動量によるコーナリングパワー変動補正作用)
図8は実施例1の加減速DYCを行う際、前後荷重移動量によるコーナリングパワー変動を補正した場合のタイムチャートである。図8(a)は加速側でのタイムチャートを示し、図8(b)は減速側でのタイムチャートを示す。また、図8中の点線は、コーナリングパワー変動に伴う補正を行わなかった場合(以下、比較例と記載する。)のタイムチャートを表す。尚、図8中の操舵角が正方向に増加する側を右操舵とし、ヨーレイトが正方向に増加する側を右旋回とする。
(加速側における作用)
時刻t1において、車両が低速走行状態から運転者が操舵を開始し、ヨーレイトが発生する。このとき、左右輪のモータトルク指令値は0となっており、惰性走行状態である。
時刻t2において、操舵角δfが定常状態となり、定常的なヨーレイトが発生する。
時刻t3において、運転者がアクセルペダルを踏み込み、加速要求がなされると、左右電動モータ3L,3Rに左右輪トルク指令値が出力される。このとき、加速に伴って後輪側に荷重移動が生じ、前輪側のコーナリングパワーは低下し、後輪側のコーナリングパワーは上昇するため、車両としては安定方向に作用する。よって、図8(a)の点線に示すように、所望のヨーレイトを発生できなくなる。言い換えると、運転者の操舵意図に比べて旋回し難い車両となる。そこで、加速に伴う荷重移動量によって変動するコーナリングパワー変動量δKf,δKrに応じた加減速DYC左右トルク差ΔT1を付与し、車両に旋回方向のヨーモーメントを発生させる。このとき、ΔT1の半分が左輪トルク指令値に上乗せされ、ΔT1の半分が右輪トルク指令値から差し引かれる。よって、左右輪トルク指令値の合計値に変化はない。これにより、加速が発生し、荷重移動により前後輪コーナリングパワーが変動したとしても、安定した旋回状態を達成できる。
(減速側における作用)
時刻t11において、車両が定速走行状態から運転者が操舵を開始し、ヨーレイトが発生する。
時刻t12において、操舵角δfが定常状態となり、定常的なヨーレイトが発生する。
時刻t13において、運転者がブレーキペダルを踏み込み、減速要求がなされると、左右電動モータ3L,3Rに回生制動トルクである左右輪トルク指令値が出力されると共に、状況に応じてホイルシリンダ7にブレーキ液が供給され、摩擦制動トルクが発生する。このとき、減速に伴って前輪側に荷重移動が生じ、後輪側のコーナリングパワーは低下し、前輪側のコーナリングパワーは上昇するため、車両としては旋回し易くなる。よって、図8(b)の点線に示すように、所望のヨーレイト以上にヨーレイトが発生してしまう。言い換えると、運転者の操舵意図に比べて旋回し易い車両となる。そこで、減速に伴う荷重移動量によって変動するコーナリングパワー変動量δKf,δKrに応じた加減速DYC左右トルク差ΔT1を付与し、車両に非旋回方向のヨーモーメントを発生させる。このとき、ΔT1の半分が右輪トルク指令値に上乗せされ、ΔT1の半分が左輪トルク指令値から差し引かれる。これにより、減速が発生し、荷重移動により前後輪コーナリングパワーが変動したとしても、安定した旋回状態を達成できる。
上記加減速DYCと同様に、操舵応答DYC、アンダーステア抑制DYC及び外乱抑制DYCについても、前後荷重移動量に応じて発生するヨーモーメントを補正することで、適正なヨーモーメントを発生することができる。
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果が得られる。
(1)左右後輪(前後輪のうち少なくともいずれか一方の左右輪)のトルク差を制御することで車両にヨーモーメントを発生させるDYC制御部6c(ヨーレイト制御手段)を備えた車両の制御装置において、DYC制御部6cは、ヨーレイト目標値を達成するヨーモーメントを演算するとき、前輪への荷重移動量が大きいほど、ヨーモーメントを小さくする。
よって、荷重移動が発生しても、ヨーレイト目標値を達成すべきヨーモーメントを安定的に発生できる。
(2)前後輪コーナリングパワー変動量推定部600は、各輪への加減速トルク指令値に基づいて前輪への荷重移動量を演算し、該前輪への荷重移動量に基づいて前後輪のコーナリングパワー(タイヤ横力特性)を演算し、モーメント演算部601e,602e,603e及び605eでは、該コーナリングパワーに基づいてヨーモーメントを演算する。
よって、ヨーモーメント演算時にコーナリングパワーの変化に伴う演算誤差を排除できるため、安定したヨーモーメントを発生できる。
(3)DYC制御部6cは、加減速DYC制御部601において車両の加減速状態における車両挙動を安定化させるためのヨーレイト補正量δr*(ヨーレイト目標値)を演算し、操舵応答DYC制御部602において運転者の操舵に対し目標とする車両のヨーレイト過渡特性を達成するためのヨーレイト補正量δr*を演算し、アンダーステア抑制DYC制御部603において加減速が無いと仮定した場合における操舵角と車速によって発生する定常ヨーレイトを目標とし車両の定常ヨーレイトを達成するためのヨーレイト補正量δr*を演算し、外乱抑制DYC制御部604において外乱が無い場合のヨーレイトを推定し実ヨーレイトとの偏差を解消するためのヨーレイト補正量δr*を演算し、モーメント演算部601e,602e,603e,604eでは、各ヨーレイト補正量δr*からの逆演算により各ヨーレイト補正量δr*を達成する車両モーメントMZ(ヨーモーメント)を演算し、各ヨーモーメントに基づいて左右輪のトルク差を制御する。
よって、種々の制御においてヨーモーメントを算出する際、荷重移動量の影響を考慮し、各ヨーモーメントに基づいて左右輪のトルク差を制御するため、直接的に電動モータのトルク制限をかけることができる。
(4)ヨーレイト補正量δr*を、前輪へのブレーキ配分が大きい程小さくする。すなわち、前輪ブレーキ配分が増加すると、前輪の前後方向タイヤ力が増大するため、荷重移動により摩擦円が増大してもコーナリングパワーは減少する。そこで、荷重移動量が増大するほどヨーレイト補正量δr*を小さくすることで、ブレーキ配分によらず適正な補正量を算出できる。
(5)ヨーレイト補正量δr*から演算された車両モーメントMZを、前輪へのブレーキ配分が大きい程小さくする。前輪ブレーキ配分が増加すると、後輪側の前後方向タイヤ力が減少し、後輪コーナリングパワーKrが増大するため、車両モーメントMZが大きくなるように補正することで、ブレーキ配分によらず適正なヨーモーメントを発生できる。
(6)荷重移動量は、タイヤの転がり抵抗と、車両に作用する空気抵抗と、旋回時に生じるコーナリング抵抗とに基づいて走行抵抗を算出し、該走行抵抗に基づいて荷重移動量を算出する。よって、荷重移動量の推定精度を向上できる。
以上、実施例1に基づいて説明したが、上記実施例に限らず他の構成であっても本願発明に含まれる。実施例1では、後輪それぞれにインホイールモータを備えた電動車両について説明したが、前輪それぞれにインホイールモータを備えた構成でもよい。また、電動モータに限らず、左右輪にトルク差を発生可能な構成であればよく、エンジン車両やハイブリッド車両など、他の駆動源を備えた車両でもよい。また、実施例1では加減速DYC制御、操舵応答DYC制御、アンダーステア抑制DYC制御、外乱抑制DYC制御といった複数の制御を並列に処理し、ヨーレイト目標値として、各種目標ヨーレイトと推定ヨーレイトもしくはセンサ検出ヨーレイトとの偏差であるヨーレイト補正量δr*を演算し、これらヨーレイト補正量δr*からヨーモーメントを演算した。これに対し、全ての制御を備えている必要はなく、いずれか一つ以上の制御を備えていればよい。
1 電動車両
2 車輪
3R 右電動モータ
3L 左電動モータ
5 高電圧バッテリ
6 駆動力制御部
7 ホイルシリンダ
8 液圧制御ユニット
9 制動力制御部
600 前後輪コーナリングパワー変動量推定部
606 DYCモーメント調整部

Claims (6)

  1. 前後輪のうち少なくともいずれか一方の左右輪のトルク差を制御することで車両にヨーモーメントを発生させるヨーレイト制御手段を備えた車両の制御装置において、
    前記ヨーレイト制御手段は、ヨーレイト目標値を達成するヨーモーメントを演算するとき、前輪への荷重移動量が大きいほど、前記ヨーモーメントを小さくすることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制御装置において、
    前記ヨーレイト制御手段は、各輪への加減速トルク指令値に基づいて前輪への荷重移動量を演算し、該前輪への荷重移動量に基づいて前後輪のタイヤ横力特性を演算し、該タイヤ横力特性に基づいてヨーモーメントを演算することを特徴とする車両の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の車両の制御装置において、
    前記ヨーレイト制御手段は、
    車両の加減速状態において車両挙動を安定化させるためのヨーレイト目標値と、
    運転者の操舵に対し、目標とする車両のヨーレイト過渡特性を達成するためのヨーレイト目標値と、
    加減速が無いと仮定した場合における操舵角と車速によって発生する定常ヨーレイトを目標とし、車両の定常ヨーレイトを達成するためのヨーレイト目標値と、
    外乱が無い場合のヨーレイトを推定し、実ヨーレイトとの偏差を解消するためのヨーレイト目標値と、
    を演算し、前記各ヨーレイト目標値からの逆演算により前記各ヨーレイト目標値を達成するヨーモーメントを演算し、各ヨーモーメントに基づいて左右輪のトルク差を制御することを特徴とする車両の制御装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか一つに記載の車両の制御装置において、
    前記ヨーレイト目標値を、前輪へのブレーキ配分が大きい程小さくすることを特徴とする車両の制御装置。
  5. 請求項1ないし4いずれか一つに記載の車両の制御装置において、
    前記ヨーレイト目標値から演算されたヨーモーメントを、前輪へのブレーキ配分が大きい程小さくすることを特徴とする車両の制御装置。
  6. 請求項1ないし5いずれか一つに記載の車両の制御装置において、
    前記荷重移動量は、タイヤの転がり抵抗と、車両に作用する空気抵抗と、旋回時に生じるコーナリング抵抗とに基づいて走行抵抗を算出し、該走行抵抗に基づいて荷重移動量を算出することを特徴とする車両の制御装置。
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