JP2016204591A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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昭等 森戸
Akitomo Morito
昭等 森戸
小林 正典
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正典 小林
隆志 上田
Takashi Ueda
隆志 上田
内藤 祉康
Shiko Naito
祉康 内藤
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Abstract

【課題】流動性が高く、耐衝撃性および塗膜平滑性に優れ、層状剥離やワキ現象が抑制された成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】ゴム強化スチレン系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(B)と、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)ならびにビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)を有するグラフト共重合体(C)と、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記グラフト共重合体(C)1〜10質量部および前記エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)0.05〜1質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(B)と、グラフト共重合体(C)と、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイは、耐熱性、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂とともに、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂に代表されるゴム強化スチレン系樹脂を用いることにより、低コスト化、成形加工性の改良、耐衝撃性における厚み依存性の改善が達成できることから、車両分野、家電分野、建材分野など広範な分野において、各種構成部材の成形材料として使用されている。例えば、近年車両分野においては、耐熱性および材料破壊時のシャープエッジ対策を目的として、四輪内装部材などへの展開が図られている。
一方、市場の要求として、成形品の塗装不良の低減(耐塗装性)が強く求められている。ポリカーボネート樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイは、ゴム強化スチレン樹脂を含有しているために塗装をしやすい素材ではあるが、樹脂組成物の特性や成形条件、塗装方法、塗装環境などの因子の影響を受け、塗装不良を生じる場合がある。この塗装不良の中でも、塗料に含まれるシンナーなどの溶媒成分が成形品に作用して発生する吸込み現象(塗装表面に微細な凹凸が形成され、光の乱反射によって光沢むらとなって観察される現象)および射出成形品のエッジ部分に特に多く見られるワキ現象(塗装表面に噴火口のような形態の小さな穴が発生する現象)は、代表的な塗装不良に挙げられ、最終製品の商品価値を大きく損なうものである。
これまでに、ポリカーボネート樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイの表面外観を改良する技術として、例えば、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ基含有オレフィン系重合体セグメントとビニル系重合体セグメントからなり多相構造グラフト共重合体が配合された耐熱ABS樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかしながら、かかる樹脂組成物は、多相構造グラフト共重合体がポリカーボネートと反応するため、流動性が低い課題があった。
一方、ゴム強化スチレン系樹脂組成物の流動性や塗装性を改良する技術としては、例えば、スチレン系重合体、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体およびグラフト共重合体を含有するスチレン系重合体組成物(例えば、特許文献2参照)や、ゴム強化樹脂と、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・一酸化炭素共重合体と、ポリテトラフルオロエチレンとを含有する組成物(例えば、特許文献3参照)や、グラフト共重合体、耐熱ビニル系共重合体、高シアン化ビニル系共重合体、ビニル系共重合体およびエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体を含有する耐熱・耐塗装性熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、特許文献2〜4に記載される樹脂組成物は耐衝撃性が不十分である課題があった。また、特許文献3および4に記載される熱可塑性樹脂組成物により吸込み現象やワキ現象などの塗装不良は改善されるものの、ポリカーボネート樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイにこれらの技術を適用しても、ワキ現象の解消には至らず、また、流動性・耐衝撃性が低下する課題があった。
特開平7−18153号公報 特開平11−12415号公報 特開2008−56904号公報 特開2012−36384号公報
さらに、本発明者らの検討により、特許文献2〜4に記載の樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ組成物に対してエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体を特定量以上配合した場合、射出成形品のゲート部分の切断時に層状剥離の不具合が発生する課題が明らかとなった。また、特許文献2に記載の樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ組成物に対してグラフト共重合体を特定量以上配合した場合、成形品塗装時に塗膜平滑性が低下する課題が明らかとなった。そこで本発明は、流動性が高く、耐衝撃性および塗膜平滑性に優れ、層状剥離やワキ現象が抑制された成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、主として以下の(1)〜(4)の構成を有する。
(1)ゴム強化スチレン系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(B)と、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)ならびにビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)を有するグラフト共重合体(C)と、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記グラフト共重合体(C)1〜10質量部および前記エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)0.05〜1質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)が、エチレンおよびエチルアクリレートからなる共重合体セグメントであり、前記ビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)が、アクリロニトリルおよびスチレンからなる共重合体セグメントである(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、ゴム強化スチレン系樹脂(A)を20〜70質量部およびポリカーボネート系樹脂(B)を30〜80質量部含有する(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れる。本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性および塗膜平滑性に優れ、層状剥離やワキ現象が抑制された成形品を得ることができるため、塗装成形品の大型化や形状の複雑化に対応することができる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、具体的に説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(B)と、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)ならびにビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)を有するグラフト共重合体(C)(以下、「グラフト共重合体(C)」と記載する場合がある。)と、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を含有する。ゴム強化スチレン系樹脂(A)を含有することにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができ、ポリカーボネート系樹脂(B)を含有することにより、成形品の耐衝撃性を向上させることができる。そして、ゴム強化スチレン系樹脂(A)およびポリカーボネート系樹脂(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物において、さらにグラフト共重合体(C)およびエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を特定量含有することにより、成形品の塗膜平滑性を向上させ、層状剥離やワキ現象を抑制することができる。以下、各成分について説明する。
ゴム強化スチレン系樹脂(A)としては、ジエン系ゴム質重合体(a1)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含有するビニル系単量体混合物をグラフト共重合して得られるジエン系グラフト共重合体(A1)と、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含有するビニル系単量体混合物を共重合して得られるビニル系共重合体(A2)を含むものが好ましい。
ジエン系ゴム質重合体(a1)としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、ポリブタジエンが好ましく用いられる。
ジエン系ゴム質重合体(a1)は、ガラス転移温度が0℃以下のものが好ましく、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、ガラス転移温度の下限値は、実用上−80℃程度である。なお、ジエン系ゴム質重合体(a1)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)によって求めることができる。
ジエン系ゴム質重合体(a1)は、乳化剤によって水中に分散したラテックスとして用いられることが一般的である。本発明におけるジエン系ゴム質重合体(a1)の粒子径分布には特に制限はないが、耐衝撃性をより向上させる観点から、重量基準の粒子径頻度分布において、少なくとも200〜400nmの範囲と450nm以上の範囲のそれぞれに極大値を有することが好ましい。粒子径200〜400nmの粒子は、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。ジエン系ゴム質重合体(a1)の特性を活かして成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、300〜400nmがより好ましい。また、粒子径450nm以上の粒子により、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。600nm以上がより好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、1200nm以下がより好ましい。本発明においては、これら両方の数値範囲に極大値を有する粒子径頻度分布を有するジエン系ゴム質重合体(a1)を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性を保ちながら、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。
かかる粒子径頻度分布を有するジエン系ゴム質重合体(a1)は、例えば、重量平均粒子径が200〜400nmであるジエン系ゴム質重合体と、重量平均粒子径が450nm以上であるジエン系ゴム質重合体とを配合することにより得ることができる。熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させる観点から、重量平均粒子径が200〜400nmであるジエン系ゴム質重合体と重量平均粒子径が450nm以上であるジエン系ゴム質重合体との配合比(200〜400nm/450nm以上)は、9/1(重量比)以下が好ましい。一方、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、配合比(200〜400nm/450nm以上)は、5/5以上が好ましく、6/4以上がより好ましい。
ここで、本発明におけるジエン系ゴム質重合体(a1)の重量基準の粒子径頻度分布および重量平均粒子径は、ジエン系ゴム質重合体(a1)のラテックスを純水にて300〜500倍に希釈し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定することができる。
ジエン系グラフト共重合体(A1)を構成する原料におけるジエン系ゴム質重合体(a1)の質量分率は、ジエン系ゴム質重合体(a1)およびビニル系単量体混合物の合計100質量%中、40〜65質量%が好ましい。ジエン系ゴム質重合体(a1)の質量分率が40質量%以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。43質量%以上がより好ましい。一方、ジエン系ゴム質重合体(a1)の質量分率が65質量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させ、成形品のワキ現象をより抑制することができる。60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
ジエン系グラフト共重合体(A1)の原料として用いられるビニル系単量体混合物は、芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含有する。さらに、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能なビニル系単量体を含有してもよい。
芳香族ビニル系単量体(a2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(a3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
他の共重合可能な単量体としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、それぞれの目的に応じて選択することができる。これらを2種以上用いてもよい。耐熱性や難燃性を向上させるためには、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、硬度や透明性を向上させるためには、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
ジエン系グラフト共重合体(A1)を構成する原料におけるビニル系単量体混合物の質量分率は、ジエン系ゴム質重合体(a1)およびビニル系単量体混合物の合計100質量%中、35〜60質量%である。ビニル系単量体混合物の質量分率が35重量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させ、成形品のワキ現象をより抑制することができる。40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル系単量体混合物の質量分率が60質量%以下であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。57質量%以下が好ましい。
また、ジエン系グラフト共重合体(A1)を構成する原料における芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)の質量分率は、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させる観点から、芳香族ビニル系単量体(a2)35〜45質量%、シアン化ビニル系単量体(a3)10〜20質量%が好ましい。
ジエン系グラフト共重合体(A1)のグラフト率は特に制限がないが、機械的強度を向上させる観点から、10〜100質量%であることが好ましく、特に20〜70質量%であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(質量%)=[<ジエン系共重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量(質量)>/<グラフト共重合体のジエン系共重合体量(質量)>]×100。
ビニル系共重合体(A2)とは、少なくとも芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含有するビニル系単量体混合物を共重合して得られるものである。さらに、ビニル系単量体混合物には、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を含有してもよい。
芳香族ビニル系単量体(a2)としては、前述のジエン系グラフト共重合体(A1)において芳香族ビニル系単量体(a2)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(a3)としては、前述のジエン系グラフト共重合体(A1)においてシアン化ビニル系単量体(a3)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
他の共重合可能な単量体としては、前述のジエン系グラフト共重合体(A1)において他の共重合可能な単量体として例示したものが挙げられ、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
ビニル系共重合体(A2)を構成する原料における芳香族ビニル系単量体(a2)の質量分率は、ビニル系単量体混合物の合計100質量%中、60質量%以上が好ましい。芳香族ビニル系単量体(a2)の質量分率が60質量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。70質量%以上がより好ましい。また、シアン化ビニル系単量体(a3)の質量分率は、18質量%以上が好ましい。シアン化ビニル系単量体(a3)の質量分率が18質量%以上であれば、成形品の耐薬品性を向上させ、ワキ現象をより抑制することができる。19質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
ビニル系共重合体(A2)の30℃における固有粘度は、0.3〜0.8dl/gが好ましい。30℃における固有粘度が0.3dl/g以上であると、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。一方、30℃における固有粘度が0.7dl/g以下であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。ここで、ビニル系共重合体(A2)の30℃における固有粘度は、ビニル系共重合体(A2)をメチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、30℃において、ウベローデ粘度計で測定した粘度から算出することができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(A)に含有されるジエン系グラフト共重合体(A1)およびビニル系共重合体(A2)の比率に特に制限はなく、任意の比率で含有することができる。
グラフト共重合体(A1)およびビニル系共重合体(A2)の製造方法に関しては特に制限はなく、例えば、塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合などの方法が挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。単量体の仕込み方法に関しても特に制限はなく、初期に一括添加してもよいし、共重合体の組成分布を付けるため、あるいは防止するために、数回に分けて添加して段階的に重合してもよい。
なお、上記の方法によって、ジエン系ゴム質重合体(a1)に、芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含む単量体混合物がグラフト共重合されるが、単量体混合物の全てが、ジエン系ゴム質重合体(a1)にグラフト共重合されないことがある。そのため、本発明におけるジエン系グラフト共重合体(A1)は、ジエン系ゴム質重合体(a1)にグラフト共重合されていない、芳香族ビニル系単量体(a2)およびシアン化ビニル系単量体(a3)を含む単量体混合物からなる共重合体を含みうる。
ジエン系グラフト共重合体(A1)、ビニル系共重合体(A2)の重合に際して、開始剤を添加することが好ましい。開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが好適に用いられる。
過酸化物の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましく用いられる。
アゾ系化合物の具体例としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、アゾビスイソブチロニトリルが好ましく用いられる。
ジエン系グラフト共重合体(A1)、ビニル系共重合体(A2)の重合に際して、重合度調節を目的として、メルカプタンやテルペンなどの連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、テルピノレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるゴム強化スチレン系樹脂(A)の含有量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、20〜70質量部が好ましい。ゴム強化スチレン系樹脂(A)の含有量を20質量部以上とすることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。一方、ゴム強化スチレン系樹脂(A)の含有量を70質量部以下とすることにより、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。60質量部以下が好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(B)は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2’−プロパン(通称ビスフェノール)などの芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンなどのカーボネート前駆体との反応によって得られる。例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2’−プロパンを用いたポリカーボネートの製造方法としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2’−プロパンに、苛性アルカリ水溶液および溶剤存在下にホスゲンを吹き込む方法や、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2’−プロパンと炭酸ジエステルとを触媒存在下でエステル交換させる方法などを例示することができる。
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(B)のメルトボリュームレートは、特に制限はないが、ISO 1133に準拠して、温度300℃、荷重1.2kgの条件で測定したメルトボリュームレートが、8〜13cm/10分の範囲にあることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリカーボネート系樹脂(B)の含有量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、30〜80質量部が好ましい。ポリカーボネート系樹脂(B)の含有量を30質量部以上とすることにより、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。40質量部以上が好ましい。一方、ポリカーボネート系樹脂(B)の含有量を80質量部以下とすることにより、流動性をより向上させることができる。70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましい。
本発明において、グラフト共重合体(C)は、共重合体セグメント(I)およびビニル系重合体セグメント(II)を有する。
共重合体セグメント(I)とは、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメントである。ここで、α−オレフィン単量体とは炭素−炭素二重結合を分子末端に有するアルケンを指し、例えば、メチレン、エチレン、1−プロピレン、1−ブチレンなどが挙げられる。また、アクリル酸アルキルエステル単量体とは、アクリル酸と1級アルコールのカルボン酸エステルを指し、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチルなどが挙げられる。共重合体セグメント(I)の具体例としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体からなるセグメント、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体からなるセグメント、プロピレン−アクリル酸エチル共重合体からなるセグメント、プロピレン−アクリル酸n−ブチル共重合体からなるセグメントなどが挙げられる。これらのセグメントを2種以上含有してもよい。これらの中でも、エチレン−アクリル酸エチル共重合体からなるセグメントが好ましい。なお、本発明において、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体は、エポキシ基などの他の官能基を有しないものであり、共重合体セグメント(I)には、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体以外の単量体を共重合したセグメントは含まない。
ビニル系重合体セグメント(II)とは、ビニル系単量体からなる重合体セグメントであり、共重合体セグメント(I)より硬質の重合体からなるセグメントが好ましい。例えば、ポリスチレンからなるセグメント、ポリメチルメタクリレートからなるセグメント、スチレン−アクリロニトリル共重合体からなるセグメントなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、成形品の耐衝撃性をより向上させる観点から、スチレン−アクリロニトリル共重合体からなるセグメントが好ましい。なお、本発明において、ビニル系単量体は、エポキシ基などの官能基を有しないものであり、ビニル系重合体セグメント(II)には、ビニル系単量体以外の単量体を共重合したセグメントは含まない。
グラフト共重合体(C)における共重合体セグメント(I)とビニル系重合体セグメント(II)の質量分率は、共重合体セグメント(I)と重合体セグメント(II)の合計100質量%に対して、共重合体セグメント(I)20〜90質量%、ビニル系重合体セグメント(II)10〜80質量%が好ましい。共重合体セグメント(I)を20質量%以上、ビニル系重合体セグメント(II)を80質量%以下含有することにより、成形品のワキ現象をより抑制することができる。共重合体セグメント(I)を60質量%以上、ビニル系重合体セグメント(II)を40質量%以下含有することがより好ましい。一方、共重合体セグメント(I)を90質量%以下、ビニル系重合体セグメント(II)を10質量%以上含有することにより、成形品の層状剥離をより抑制することができる。
グラフト共重合体(C)において、ビニル系重合体セグメント(II)は、共重合体セグメントにグラフトしていることが好ましく、成形品のワキ現象をより抑制することができる。ただし、ビニル系重合体セグメント(II)の全てが共重合体セグメント(I)にグラフトしていなくてもよく、一部は遊離していてもよい。
グラフト共重合体の製造方法としては、例えば、共重合体セグメント(I)を構成するα−オレフィン/アクリル酸アルキルエステル共重合体中に、ベンゾイルペルオキシドに代表されるラジカル重合開始剤およびt−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネートなどのラジカル重合性有機過酸化物およびビニル系単量体を含浸させ、ビニル系単量体を重合させたのち、溶融条件下でグラフト共重合を行う方法などを例示することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(C)の含有量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)およびポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、1〜10質量部である。グラフト共重合体(C)の含有量が1質量部未満であると、成形品の塗装ワキが発生しやすい。2質量部以上が好ましい。一方、グラフト共重合体(C)の含有量が10質量部を超えると、成形品の塗膜平滑性が低下する。5質量部以下が好ましい。
本発明において、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)とは、少なくともエチレン、(メタ)アクリル酸エステルおよび一酸化炭素を共重合して得られる共重合体であって、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、好ましくはランダム共重合体である。これらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜8のアルコールのエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましい。
エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)の共重合比は、エチレン10〜85質量%、(メタ)アクリル酸エステル10〜50質量%、一酸化炭素5〜40質量%が好ましく、エチレン40〜80質量%、(メタ)アクリル酸エステル15〜40質量%、一酸化炭素5〜20質量%がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)の含有量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)およびポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部である。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)の含有量が0.1質量部未満であると、成形品のワキ現象が発生しやすい。0.5質量部以上が好ましい。一方、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)の含有量が1質量部を超えると、成形品の層状剥離が発生しやすい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、さらに酸性化合物を含有してもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ジエン系グラフト共重合体(A1)が弱アルカリ性を呈することがあるが、酸性化合物を含有することにより、ポリカーボネート系樹脂(B)のアルカリ分解や熱分解を抑制することができる。酸性化合物は、ジエン系グラフト共重合体(A1)製造時に添加してもよいし、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、各成分を溶融混錬する時に添加してもよい。
酸性化合物としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、イタコン酸、安息香酸、安息香酸メチル、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、無水マレイン酸、無水コハク酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウムが好ましく、無水マレイン酸、リン酸がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、前記(A)〜(D)以外の樹脂を含有してもよい。前記(A)〜(D)以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリカプロラクトン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン4,6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン11などのポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、結晶性スチレン、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄化合物系酸化防止剤、含リン有機化合物系酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、塩素化ポリエチレン、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネート、三酸化アンチモン、縮合リン酸エステルなどの難燃剤・難燃助剤、銀系抗菌剤などの抗菌剤、抗カビ剤、カーボンブラック、酸化チタン、離型剤、潤滑剤、顔料および染料などを含有してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、構成する各成分を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練方法に関しては、特に制限はないが、加熱装置およびベントを有するシリンダーで単軸または二軸のスクリューを使用して溶融混練する方法などが挙げられる。二軸のスクリューを使用する場合、スクリューは同一回転方向でも異回転方向でもよい。溶融混練時の際の加熱温度は、通常210〜320℃の範囲から選択される。本発明の目的を損なわない範囲で、温度勾配等を自由に設定することも可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の成形方法により成形することができる。成形方法については特に限定されないが、射出成形が好ましい。射出成形温度は、240〜300℃が一般的である。射出成形時の金型温度は、30〜80℃が一般的である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れ、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。また、ゲート部切断時の層状剥離を抑制することができ、90°未満のエッジを有する射出成形品に塗装した場合にも、吸込みやワキといった塗装不良を抑制することができる。さらに、塗膜の平滑性も良好な成形品を得ることができる。このため、本発明の熱可塑性樹脂組成物および成形品は、自動車内装のセンタークラスター、メータークラスター、ベンチレーターケースなど、流動性、耐衝撃性、耐塗装性、塗膜平滑性、剥離不具合の低減が求められる用途に好適に使用することができる。
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。まず、各参考例、実施例および比較例における評価方法を下記する。
(1)グラフト率
参考例1により得られたジエン系グラフト共重合体(A1)の所定量(m;約1g)にアセトン200mlを加え、70℃の温度の湯浴中で3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。得られたアセトン不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、その質量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。ここでLは、グラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト率(質量%)={[(n)−{(m)×L}]/[(m)×L]}×100。
(2)固有粘度
参考例1により得られたビニル系共重合体(A2)をメチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの溶液を用いて、測定温度30℃で、ウベローデ粘度計により粘度を測定し、固有粘度を算出した。
(3)流動性
各実施例および比較例により得られたペレットについて、ISO1133に準拠して、温度240℃、98N荷重条件でメルトフローレートを測定した。
(4)耐衝撃性
各実施例および比較例により得られたペレットから、シリンダー温度を250℃、金型温度を60℃に設定した射出成形機を用いて、JISK 7139に規定される多目的試験片タイプA1を成形し、これを切り出したタイプB2試験片を用いて、ISO179/1eAに準拠してシャルピー衝撃強度を測定した。
(5)層状剥離
各実施例および比較例により得られたペレットから、シリンダー温度を250℃、金型温度を60℃に設定した射出成形機を用いて、トンネルゲートを有する成形品を射出成形した。自動でカットされたゲート部分の切断面を目視観察し、剥離の程度を以下の基準により3段階で評価を行い、3以上のものを合格とした。
3:切断面に剥離が発生していないか、剥離があっても目立たないレベルである。
2:切断面に部分的に剥離が発生した。
1:切断面の広範囲に剥離が発生した。
なお、ゲートとは、射出成形金型のキャビティ直前の樹脂流路の一番狭くなる部分であって、成形品とランナーとを切り離す部分を指し、トンネルゲートとは、金型開閉時にゲート部分で成形品が自動でランナーから切り離される形状を有するものを指す。
(6)エッジ付成形品の塗装ワキ
各実施例および比較例により得られたペレットから、シリンダー温度を250℃、金型温度を60℃に設定した射出成形機を用いて、長手方向にエッジ部を有する70mm×240mm×2mm厚の角板を射出成形した。エッジ角度θは45°と60°の2種類とした。その角板に、アクリル−ウレタン2液塗料(レタンPG60/ハードナー、関西ペイント(株)製)を、塗装ロボット:川崎重工株式会社製 KE610H、ABB社製 カートリッジベルを用い、塗膜厚み30μmでそれぞれ塗布した後、乾燥温度80℃で30分間乾燥させ、塗装成形品を得た。得られた塗装成形品について、両エッジ部を観察し、以下基準により塗装ワキの有無を評価した。◎と○を合格レベルとし、△と×を不合格レベルとした。
◎:両エッジ部にワキ発生がなく、外観が良好である。
○:45°のエッジ部にワキ発生はなく、60°のエッジ部にワキが発生しているものの、問題とならないレベルである。
△:両エッジ部にワキ発生が目立ち、外観に問題がある。
×:両エッジ部全体にワキが発生している。
(7)塗膜平滑性(ウェブスキャン)
前記(6)記載の方法で得られた塗装成形品の50mm×150mmの平面部分について、マイクロウェーブスキャンT((株)東洋精機製作所)を用いて、W1値およびW4値を測定することにより、塗装成形品表面の平滑性の評価を行った。なお、W1値は塗膜のうねりを評価する指標であり、W4値は塗膜の艶感を評価する指標である。それぞれ3個の塗装成形品について測定し、その数平均値を算出した。それぞれの値が低いほど、塗膜の平滑性が良好であることを示す。なお、W1:<25mm、W4:<20mmを合格レベルとした。
(参考例1)ゴム強化スチレン系樹脂の調製(A)の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径が350nmであるポリブタジエンラテックスと800nmであるポリブタジエンラテックスを、質量比率8:2で混合したもの)45質量%(固形分換算)の存在下で、スチレン40質量%とアクリロニトリル15質量%からなる単量体混合物を、ステアリン酸カリウムを使用して乳化重合してゴム強化スチレン樹脂ラテックスを得た。これを、90℃の0.3質量%希硫酸水溶液中に添加して凝集させた後、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、洗浄・脱水・乾燥工程を経て、ジエン系グラフト共重合体(A1)を調製した。グラフト率は25質量%であった。なお、ポリブタジエンラテックス中のポリブタジエンの重量平均粒子径は、ポリブタジエンラテックスを純水にて300〜500倍に希釈し、レーザー回析・散乱法による粒子径分布測定装置により測定した。また、予熱機および脱モノマ機からなる連続塊状重合装置を用い、スチレン72質量%、アクリロニトリル28質量%からなる単量体混合物を135kg/時で連続塊状重合させた。重合反応混合物は、単軸押出機型脱モノマ機により未反応の単量体をベント口より減圧蒸発回収し、一方脱モノマ機からビニル系共重合体(A2)を得た。得られたビニル系共重合体の固有粘度は0.50dl/gであった。また、シアン化ビニル系単量体(a3)由来の構造単位の平均含有率は26質量%であった。ジエン系グラフト共重合体(A1)30質量部、ビニル系共重合体(A2)70質量部を混合し、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100質量部を得た。
その他、各実施例および比較例に用いた原料を以下に示す。
ポリカーボネート系樹脂(B−1);商品名「“ユーピロン”(登録商標)S−2000」、温度300℃、荷重1.2kg条件におけるメルトボリュームレート10cm/10分、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製
グラフト共重合体(C−1);商品名「“モディパー”(登録商標)A5400」、セグメント(I)エチレン−エチルアクリレート/セグメント(II)アクリロニトリル−スチレン共重合体、日油(株)製
グラフト共重合体(C−2);商品名「“モディパー”A5100」、セグメント(I)エチレン−エチルアクリレート共重合体/セグメント(II)ポリスチレン、日油(株)製
エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D−1);商品名「“エルバロイ”(登録商標)HP−4051」、エチレン/アクリル酸n−ブチル/一酸化炭素共重合体、三井・デュポンポリケミカル(株)製
エポキシ基を含有するグラフト共重合体(E−1);商品名「“モディパー”A4400」、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体に、アクリロニトリルおよびスチレンをグラフト共重合させたグラフト共重合体、日油(株)製
ポリエチレン(F−1);商品名「“ペトロセン”(登録商標) 232」、低密度ポリエチレン、東ソー(株)製。
(実施例1〜8、比較例1〜8)
前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)、グラフト共重合体(E)、ポリエチレン(F)を、表1および表2に示した比で配合し、スクリュー径30mmの同方向回転の二軸押出機(温度範囲:240〜260℃)で溶融混練を行い、ペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(成形温度250℃、金型温度60℃)を用いて試験片を作製し、前述の方法により評価を行った。ただし、前記(5)の層状剥離の評価用の成形品、(6)の塗装ワキ評価用の角板および(7)の塗膜平滑性評価用の試験片は、(5)、(6)および(7)に記載の条件で作製した。実施例の結果を表1、比較例の結果を表2に示す。
Figure 2016204591
Figure 2016204591
実施例1〜8、すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物は、いずれも流動性が高く、耐衝撃性、塗膜平滑性に優れ、層状剥離および塗装時のワキ発生量が少ない成形品が得られる。一方、実施例1と比較例1〜3の比較から、グラフト共重合体(C)および/またはエチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)含有量が本発明で規定する範囲よりも少ないと、塗装時のワキが発生しやすいことがわかる。また、実施例1と比較例4との比較から、グラフト共重合体(C)含有量が本発明で規定する範囲よりも多いと、塗膜平滑性が低下することが分かる。実施例1と比較例5との比較から、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)含有量が本発明で規定する範囲よりも多いと、層状剥離が発生しやすいことが分かる。実施例1と比較例6との比較から、グラフト共重合体(C)にかえてエポキシ基を含有するグラフト共重合体(E)を含有すると、流動性が低下することが分かる。実施例1と比較例7との比較から、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)にかえてポリエチレン(F)を含有すると、層状剥離が発生しやすいことが分かる。実施例1と比較例8との比較から、ポリカーボネート系樹脂(B)含有量が本発明で規定する範囲よりも少ないと、耐衝撃性が低下することが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物により、耐衝撃性および塗膜平滑性に優れ、層状剥離やワキ現象が抑制された成形品を得ることができるため、例えば自動車内装用部品であるパワーウインドパネル、センターコンソール、センタークラスター、レバーコントローラー、コンソールボックスなどの、流動性、耐衝撃性、耐塗装性(塗装ワキ現象の低減)を要求される用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. ゴム強化スチレン系樹脂(A)と、ポリカーボネート系樹脂(B)と、α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)ならびにビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)を有するグラフト共重合体(C)と、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記グラフト共重合体(C)1〜10質量部および前記エチレン/(メタ)アクリル酸エステル/一酸化炭素共重合体(D)0.05〜1質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記α−オレフィン単量体およびアクリル酸アルキルエステル単量体からなる共重合体セグメント(I)が、エチレンおよびエチルアクリレートからなる共重合体セグメントであり、前記ビニル系単量体からなるビニル系重合体セグメント(II)が、アクリロニトリルおよびスチレンからなる共重合体セグメントである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(B)の合計100質量部に対して、ゴム強化スチレン系樹脂(A)を20〜70質量部およびポリカーボネート系樹脂(B)を30〜80質量部含有する請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形体。
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