JP2016206076A - 化粧の仕上がり感の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 パール粉体のような光輝性材料を含む化粧料を肌に塗布した際における仕上がり感をマクロな質感とミクロな質感を用いて客観的に評価する方法を提供する。【解決手段】 化粧料を塗布した対象物から取得されるBRDFの正反射幅及び/又は正反射値を指標として仕上がり感を評価する工程と、化粧料を塗布した対象物から取得される表面反射強度を指標として仕上がり感を評価する工程とから化粧の仕上がり感を評価する。このとき、BRDFの正反射幅として、正反射角における反射強度に対して98%の強度を示す低角度側の反射角と正反射角の差を用いる。【選択図】図7

Description

本発明は化粧の仕上がり感の評価方法に関する。
真珠様の輝きを表現するための画像シミュレーション装置が特許文献1に開示されている。この画像シミュレーション装置は、真珠の輝きが有するにじみ成分と干渉光成分と散乱光成分を利用することで、バイオスキンドールなどの描写対象物上に真珠様の輝き(真珠様模様)を表現している。
ところで、ヒトの肌やバイオスキンドールにおける化粧の仕上がり感は、離れて観察する場合や近づいて観察する場合もあり、巨視的(マクロ)な視点で観察することで知覚される質感であるマクロな質感と、微視的(ミクロ)な視点で観察することで知覚されるミクロな質感とで評価する必要がある。
ヒトの肌はマクロ的にはなめらかな曲面のように観察されるが、実際には細かな凹凸形状を有しており、光沢感や平滑感はその表面の性状に起因している。そして、粉体を含む化粧料を塗布した場合、その表面の性状による粉体の付着様式(凹部への凝集、板状粒子の傾き等)の違いによってその仕上がりは大きく異なる。特に、真珠様の輝きを模したパール粉体などの光輝性材料が配合された化粧料においては、マクロな質感とミクロな質感とで大きく異なる。例えば、マクロな質感では肌全体が明るく輝いているような印象を受けても、ミクロな質感ではパール粉体のキラキラ感や粒子感が不自然に目立つことが起こり得る。また、ミクロな質感として取得される凹凸感や粒子感などの情報はマクロな質感からでは取得できない。
こうしたマクロな質感とミクロな質感の双方で評価する方法が例えば特許文献2に開示されている。特許文献2では、自動車塗装に使用される光輝性材料を含むメタリック塗料について、色票と顕微鏡写真を備えた、ミクロな質感を観察できる色見本が作成されており、変角測色値によるマクロ質感と組み合わせて評価している。ここでは、ミクロな質感とは、目を近づけて見たときに感じる質感であり、例えば色票を手に取って動かしながら観察されるキラキラ感や粒子感であるとされている。また、マクロな質感とは、遠目で見て感じる質感で、例えば壁に色票を貼って2〜3m離れて観察される質感であるとされている。
しかしながら、特許文献2の方法は、紙や金属板上にメタリック塗料を塗布した色票を利用する方法であって、表面の性状による粉体の付着様式が十分に反映されているとは言えず、ヒトの肌などに施した化粧の仕上がり感をミクロな質感やマクロな質感として評価できるとは言えない。
一方、特許文献3には、マクロな視点からの観察表現である顔全体の見え方と、ミクロな視点からの観察表現である皮膚の表面状態の双方を同時に取得できる撮影装置が開示されている。
この撮影装置は、被験者Pの撮影時の位置を中心とする球面上に配設された複数の撮影装置と、当該球面上に配設された複数の照明手段と、これらを制御する制御手段を備え、任意方向から照明した被験者を複数の撮影装置で同時に撮影することができる。複数の視点から撮影した被験者の画像を観察することで、顔全体の見え方と皮膚の表面状態について多面的な解析を行うことができる。
しかしながら、特許文献3では、角度を変えた照明と角度を変えた視点における被験者の画像を目視で観察することで、マクロな視点における評価とミクロな視点における評価を加えているに過ぎず、数値化された指標による客観的な評価は検討されていない。
さらに非特許文献1(美崎栄一郎ら、J. Soc. Powder Technol., Japan 45. 642-647, 2008)には、特許文献3に開示された撮影装置を用いて、視点を変えた際の肌の色(明るさL、赤さa、黄みb)を定量的に評価している。
しかしながら、ここでも肌の色にのみ着目したものであって、粉体を配合した化粧料を塗布した場合における化粧の仕上がり感をマクロな質感やミクロな質感として評価できているとは言えない。
特開2015−38726号公報 特開2004−53260号公報 特開2007−180866号公報
美崎栄一郎ら、粉体工学会誌, 642-647, 2008
本発明は、化粧料、特にパール粉体のような光輝性材料を含む化粧料を肌に塗布した際における仕上がり感をマクロな質感とミクロな質感を用いて客観的に評価する方法を提供することを課題とする。
本発明に係る評価方法は、ミクロな質感として、化粧料を塗布した評価対象物から取得されるBRDFの正反射幅及び/又は正反射値を基準にして仕上がり感を評価する工程を含む方法である。
本発明に係る評価方法によると、化粧における仕上がり感について、ミクロな質感を客観的に評価することができる。そして、表面反射強度を指標として評価することでマクロな質感と併せて化粧における仕上がり感を客観的に評価できる。この方法はヒトの顔に塗布した場合の仕上がり感だけでなく、例えば、パール粉体などの光輝性粉体を含む化粧料の評価法としても用いられる。
図1は正反射幅(98%基準)についての説明図である。 図2は各化粧例から得られた表面反射強度を示すマトリックス画像である。 図3は図2の続図である。 図4は真珠肌画像(CG画像)から取得したBRDFを示す図である。 図5は真珠肌画像(CG画像)から取得したBRDFの正反射幅(98%基準)と光源入射角(θi)の関係を示すグラフである。 図6は真珠肌画像(CG画像)から取得したBDRFの正反射値(θi=1°の正反射値を100%とした時の割合)の軌跡を示すグラフである。 図7は各化粧例から取得したBDRFの正反射幅(98%基準)の軌跡を示すグラフである。 図8は各化粧例から取得したBDRFの正反射値(θi=1°の正反射値を100%とした時の割合)の軌跡を示すグラフである。
本発明に係る評価方法は、化粧の仕上がり感を評価する方法であって、化粧料を塗布した対象物から取得されるBRDFの正反射幅及び/又は正反射値を基準として仕上がり感を評価する工程と、さらに好ましくは当該対象物から取得される表面反射強度を基準として仕上がり感を評価する工程を含む方法である。本発明において、化粧の仕上がり感とは化粧料を塗布した対象物から感じられる美しさであって、本発明に係る評価方法はその仕上がり感を数値化して客観的に評価する方法である。
本発明に係る方法には、BRDFの正反射幅及び/又は正反射値と、表面反射強度の2つ又は3つの指標が用いられる。BRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)は、真珠のにじみ現象に代表されるように、入射方向と反射方向を変数とする反射率分布係数を計算して求められる反射光強度分布を言う。真珠のにじみ現象は、界面下光が反射・透過過程を繰り返すうちに正反射方向からのずれが生じた結果生み出される光の広がりであって、例えば、土橋らの方法(T.IEE Japan、Vol117-c、No.10、1997、p1370)によって求められる。すなわち、ある角度で入射した光の、内部での反射・透過過程を確率的にたどり、最終的に表面から出射される光の強度をそれぞれの方向につき積分することによって、入射角に対するすべての反射方向の反射光強度分布を求める。そしてこれをすべての入射方向(入射仰角)に対して求めることで真珠のBRDFが求められる。真珠のBRDFは例えばモンテカルロシミュレーションなどのシミュレーションによって求められる。
本発明の評価方法では、化粧料を塗布した対象物から取得したBRDFが用いられる。対象物において、ある角度における入射仰角(光源入射角(θi):1〜90°)に対してすべての反射方向のBRDFを測定する。これを測定すべきすべての光源入射角(θi)について測定する。こうして対象物のBRDFが求められる。BRDFは、BRDF測定装置(例えばS-OGM、デジタルファッション社製)を用いて測定される。もっとも、このようなBRDF測定用の専用装置ではなく、その他の光学装置を用いて求めることもできる。例えばゴニオフォトメーターのように、配光、すなわち、ある方向から対象物に光が照射された時の各方向への反射光の強度分布を測定できる装置を用いて反射光強度分布を測定し、BRDFを算出することでもよい。
化粧料を塗布する対象物は、例えばバイオスキンドールであり、ヒトの顔や手などの肌であり得る。また、ガラス板などの平板状の基材にヒトの皮膚やバイオスキンドールとして用いられる素材を貼り合わせた対象物でもあり得る。また、基材を用いることなく平面状を維持できる場合には、バイオスキンドールとして用いられる素材に化粧料を塗布してもよい。BRDFを測定する際の対象物は、ミクロな質感を評価するものであるので、後述する表面反射強度を測定する際の対象物と異なり、マクロな立体形状を有する必要はなく、平面状の対象物でも差し支えない。また、BRDFを測定する際の対象物の素材は、表面反射強度を測定する際の対象物の素材と同じものが好ましい。
本発明で用いられる指標の1つであるBRDFの正反射幅とは、ある角度の光源入射角(θi)において、正反射角、すなわち光源入射角(θi)と反射角(θr)が等しい角度における反射強度に対して一定割合の反射強度を示す反射幅を意味する。図1は正反射幅(98%基準)の説明図であるが、本発明では、図1のY(deg)で示されるように、正反射角θs(θi=θr)よりも低角度側の反射幅を正反射幅として用いるのが好ましい。つまり、光源入射角(θi)と等しい反射角(θr)(正反射角θs)における反射強度に対して98%の強度を示す低角度側の反射角(θlow)と、正反射角(θs)との差(反射幅Y(deg))が用いられる。後述するように、好ましい化粧の仕上がり感として、シミュレーションした真珠肌画像を基準としてこれとの対比で評価する場合、真珠肌画像から取得されるBRDFは光源入射角(θi)に依存することなく、ある角度の受光角(θr)にピークを有するなだらかな山形の形状を示す。そこで、この特徴的な形状を分析したところ、正反射角における反射強度が98%となる正反射角よりも低角度側の反射幅(正反射幅(98%基準))は、図5に示すように光源入射角(θi)との間に良好な比例関係が見いだされた。そして、この正反射幅を指標とした場合に、化粧をした際の仕上がり感と概ね相関することが示された(実施例参照)。このことは、化粧の仕上がり感として、パール粉体が持つ粒子感のあるキラっとした反射が観察された場合、化粧した対象物から得られるBRDFには尖った正反射ピークが観察されることが多くなる結果、BRDFの正反射幅が狭くなって、光源入射角(θi)と正反射幅の関係が比例関係を示さなくなることとも合致する。従って、BRDFにおける正反射幅がミクロ的な質感を表す指標となり得ることを示す。言い換えると、狭いBRDFの正反射幅が観察されると、図5に示すような相関関係が得られない場合や、相関関係があったとしても、化粧の仕上がり感が優れた場合における相関関係とは全く異なる傾向を示す。真珠肌画像を基準とする場合、上記のように、指標となる正反射幅に採用される反射強度の割合は98%に設定されたが、望ましいとされる化粧の仕上がり感によって反射強度の割合は適宜選択することができ、望ましいとされる化粧の仕上がり感から得られるBRDFにおいて、光源入射角(θi)との間に良好な比例関係が見いだされるような反射強度が選択される。その割合は、例えば50%であり、60%であり、70%であり、80%であり、90%であり、93%であり、95%であり、96%であり、97%であり、98%であり、99%でもあり得る。また、正反射幅を指標とすることには、正反射角よりも低角度側の反射幅を指標とすることだけでなく、正反射角よりも高角度側の反射幅を指標とすることや、正反射角の両側に広がる反射幅(高角度側における反射角と低角度側における反射角の差)を指標とすることもあり得る。
正反射幅を指標とする場合、例えば、特定角度の光源入射角(θi)における正反射幅を指標とすることができる。また、正反射幅の軌跡、つまり、所定の角度範囲内で光源入射角(θi)を変化させた場合に取得された正反射幅の変化を指標として評価することもできる。そして、真珠肌画像のように美しさの基準となる対象物のBRDFから判定基準となる正反射幅や正反射幅の軌跡を設定し、設定した判定基準と取得された正反射幅やその軌跡を対比できる。また、判定基準を設定することなく、取得された正反射幅やその軌跡を比較する仕上がり感の間で対比することもできる。正反射幅を指標とする場合において、正反射幅のみを指標とする場合、正反射幅の軌跡(変化)のみを指標とする場合のいずれでもよく、またその双方を指標としてもよい。
判定基準と対比する方法には、正反射幅を指標とする場合、例えば、任意に設定した1つの光源入射角(θi)又は複数の光源入射角(θi)における正反射幅が、判定基準として設定された正反射幅の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。また、正反射幅の軌跡を指標とする場合、例えば、任意に設定した光源入射角(θi)の範囲で光源入射角(θi)を変化させ、そのときの正反射幅の軌跡(変化)が、判定基準として設定された正反射幅の軌跡(変化)の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。正反射幅を指標とすることには、BRDFから得られた値をそのまま用いることだけでなく、特定角度の光源入射角(θi)における正反射幅を基準にして、それと対比される角度における光源入射角(θi)における正反射幅の割合など、BRDFから得られた値を元にして数値処理して得られる値を指標にすることも含まれる。
本発明で用いられるもう1つの指標であるBRDFの正反射値とは、ある角度の光源入射角(θi)におけるBRDFの正反射角、すなわち光源入射角(θi)に対して反射角(θr)が等しい(θi=θr)ときにおけるBRDFの反射値である。後述するように、好ましい化粧の仕上がり感として、シミュレーションした真珠肌画像を基準としてこれとの対比で評価する場合、真珠肌画像から取得されるBRDFは、光源入射角(θi)が大きくなるに従い次第に上昇するが、光源入射角(θi)がある角度よりも大きくなるとそれまでの上昇傾向よりも大きく上昇する傾向が見られる。そこで、この傾向を分析したところ、光源入射角(θi)=1°の時の値を100%とした時、光源入射角(θi)40°付近から大きくなるにつれて、BRDFの正反射値の割合が急に上昇することが見いだされた(図6参照)。そして、光源入射角(θi)が45°付近から67°付近における正反射値の割合を指標とした場合に、化粧をした際の仕上がり感と概ね相関することが示された(実施例参照)。このことは、化粧の仕上がり感として、液状成分や、皮膜成分が持つテカリ感のある反射が観察された場合、化粧した対象物から得られるBRDFでは高い入射角(θi)での著しい反射値の上昇が観察されることが多く、BRDFにおける正反射値がミクロ的な質感を表す指標となり得ることを示す。
正反射値を指標とする場合、特定の光源入射角(θi)における正反射値に対する割合(正反射値割合)で評価することが好ましい。基準となる光源入射角(θi)は任意に設定できるが、真珠肌画像との対比においては、光源入射角(θi)=1°における正反射値を基準するのがよい。また、正反射値割合の軌跡、つまり、所定の角度範囲内で光源入射角(θi)を変化させた場合に取得された正反射値割合の変化を指標として評価することもできる。そして、真珠肌画像のように美しさの基準となる対象物のBRDFから判定基準となる正反射値割合の軌跡を設定し、設定した判定基準と取得された正反射値割合やその軌跡を対比できる。また、判定基準を設定することなく、取得された正反射値割合やその軌跡を比較する仕上がり感の間で対比することもできる。正反射値を指標とする場合において、正反射値割合のみを指標とする場合、正反射値割合の軌跡(変化)のみを指標とする場合のいずれでもよく、またその双方を指標としてもよい。
判定基準と対比する方法には、正反射値割合を指標とする場合、例えば、任意に設定した1つの光源入射角(θi)又は複数の光源入射角(θi)における正反射値割合が、判定基準として設定された正反射値割合の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。また、正反射値割合の軌跡を指標とする場合、例えば、任意に設定した光源入射角(θi)の範囲で光源入射角(θi)を変化させ、そのときの正反射値割合の軌跡(変化)が、判定基準として設定された正反射値割合の軌跡(変化)の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。正反射値を指標とすることには、前記のように特定の光源入射角(θi)における正反射値に対する割合を指標とすることだけでなく、BRDFから得られた正反射値をそのまま用いることも含まれる。また、前記正反射値割合の他にもBRDFから得られた正反射値を元にして数値処理して得られる値を指標にすることも含まれる。
本発明においては、化粧料を塗布した対象物から得られたBRDFの正反射幅又は正反射値、あるいはその両者に加えて、化粧料を塗布した対象物から得られた表面反射強度が指標として用いられる。その対象物は、例えばバイオスキンドールであり、ヒトの頭部(顔)であり、ヒトの手でもあり得る。表面反射強度は、対象物にある角度の光源入射角(θi)で入射した光が対象物で反射した表面反射光の強度を意味する。反射強度は受光角(θr)によって異なり、ある角度の光源入射角(θi)に対してある角度の受光角(θr)における反射強度として取得される。本発明においては、表面反射強度は対象物の面画像から求められ、例えば化粧が施された対象物の撮影画像をソフトウェアで画像処理することで求められる。つまり、本発明においては、立体的な化粧の仕上がり感を、顔や手をパッと見た際の全体像から把握することでマクロな質感として評価する。
表面反射強度の算出方法も適宜な方法で算出される。例えば、面画像から取得されたビットマップ画像から各ピクセルの輝度を求めて画像全体の輝度平均値を表面反射強度とする方法、面画像から特徴的な画像部分のみを取り出して表面反射強度を求める方法、面画像における特徴的な画像部分には所定の係数を掛けて重み付けを行い、画像全体の輝度平均値を表面反射強度とする方法が例示される。表面反射強度は化粧の仕上がり感を全体の輝きとして把握するものであり、表面反射強度はマクロな質感を表す指標となり得る。
表面反射強度を指標とする場合、特定角度の光源入射角(θi)と特定角度の受光角(θr)における表面反射強度を指標とすることができる。表面反射強度を指標とする場合、表面反射強度の軌跡、つまり、特定の受光角(θr)に固定して光源入射角(θi)を変化させた場合における表面反射強度の変化や、特定の光源入射角(θi)に固定して受光角(θr)を変化させた場合における表面反射強度の変化を指標とすることもできる。また、光源入射角(θi)と受光角(θr)の双方を変化させた場合の表面反射強度の軌跡(変化)を指標とすることもできる。そして、真珠肌画像のように美しさの基準となる対象物の表面反射強度やその軌跡から判定基準となる表面反射強度やその軌跡を設定して、設定した判定基準と取得された表面反射強度やその軌跡を対比できる。また、判定基準を設定することなく、取得された表面反射強度やその軌跡を比較する仕上がり感の間で対比することもできる。表面反射強度を指標とする場合においても、表面反射強度の数値のみを指標とする場合、表面反射強度の軌跡(変化)のみを指標とする場合のいずれでもよく、またその双方を指標としてもよい。
判定基準と対比する方法として、例えば、表面反射強度として輝度平均値を指標とする場合、任意に設定した1つの光源入射角(θi)又は複数の光源入射角(θi)における輝度平均値が、判定基準として設定された輝度平均値の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。また、輝度平均値の軌跡を指標とする場合、任意に受光角(θr)を設定した上で、任意に設定した光源入射角(θi)の範囲で光源入射角(θi)を変化させた際の輝度平均値の軌跡(変化)が、判定基準として設定された輝度平均値の軌跡(変化)の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。また任意に光源入射角(θi)を設定した上で、任意に設定した受光角(θr)の範囲で受光角(θr)を変化させた際の輝度平均値の軌跡(変化)と、判定基準として設定された輝度平均値の軌跡(変化)の範囲内にあるかどうかで判断する方法が示される。さらに、光源入射角(θi)と受光角(θr)の双方を変化させた場合の輝度平均値の軌跡(変化)と、判定基準として設定された輝度平均値の軌跡(変化)の範囲内にあるかどうかで判断する方法が例示される。表面反射強度を指標とすることには、画像から得られた輝度平均値をそのまま用いることだけでなく、特定角度の光源入射角(θi)及び特定角度の受光角(θr)における輝度平均値を基準にして、それに対する輝度平均値の割合など、画像から得られた値を元にして数値処理して得られる値を指標とすることも含まれる。
このように本発明に係る方法では、化粧料を塗布した対象物から取得したBRDFの正反射幅及び/又は正反射値を指標としているので、化粧の仕上がり感についてミクロな質感を客観的に評価できる。そして、化粧料を塗布した対象物から取得した表面反射強度を指標とすることで、化粧の仕上がり感についてマクロな質感も併せて客観的に評価できる。
本発明における化粧料の塗布には1つの化粧料を対象物に塗布することだけでなく、2種以上の化粧料を重ね塗りすることも含む。また、本発明の評価方法は、化粧の仕上がり感を評価する方法ではあるが、化粧料の評価方法としても使用し得る。
塗布される化粧料は、1つの化粧料が評価対象となる場合には、好ましくはパール粉体のような光輝性粉体を含むメークアップ化粧料である。化粧の仕上がり感が評価対象となる場合には、1つ又は2つ以上の化粧料が塗布され、塗布される化粧料は光輝性粉体を含む化粧料でもあり、光輝性粉体を含まない化粧料でもあり得る。塗布される化粧料は、基礎化粧料、メークアップ化粧料を問わず、例えば、化粧水であり、乳液であり、クリームであり、ファンデーションであり、口紅であり、おしろいであり、マスカラであり、アイライナーであり、マニュキュアであり、ペニキュアであり得る。また、化粧料に配合される光輝性粉体の種類も特に限定されないが、好ましくは真珠の輝きを模した素材であるいわゆるパール粉体である。パール粉体の構成、すなわち粉体基材の材質やそれを被覆する素材、被覆構造、粒子径等は限定されるものではない。それは例えば、雲母粉体の表面が酸化チタンで被覆された複合材料の表面に、水酸化アルミニウムが固着した複合粉体であり得る。
〔真珠肌のシミュレーション画像評価〕
特許文献1に記載された方法により、バイオスキンドール(ビューラックス社製)の3DCG画像に真珠の光学特性をシミュレーションして、パネラーによって最も真珠肌らしいと評価された画像(CG画像)を選定した。
(1)表面反射強度
前記選定された画像を元に、3DCGソフトウェア(Maya,Autodesk社製)を用いて真珠肌画像の表面反射成分のみを反映させた画像をレンダリングした。光源入射角(θi)を0°,22°,45°,67°に設定して、各入射角(θi)において受光角(θr)を0°,22°,45°,67°に設定し(但し、光源入射角(θi)を0°、受光角(θr)を0°の場合を除く)、化粧料を塗布したバイオスキンドールを撮影した状態と同じ状態の擬似画像を得た。表面反射成分の取得の際におけるROI(region of interest)は、額の上部分、顎の下部分、側面部分を削除した化粧料塗布領域とした。このROI設定後の擬似画像を、画像解析ソフトウェア(WinROOF,三谷商事社製)に取り込み、輝度値ヒストグラムの度数分布データを得た。輝度値ヒストグラムより、各輝度階調(0〜255)の画素数を求め、輝度平均値を算出した。輝度平均値は、画像全体における平均輝度階調、すなわち、(輝度階調0×画素数f0+輝度階調1×画素数f1+・・・+輝度階調255×画素数f255)/総画素数で求めた。
(2)BRDF
真珠肌画像は曲面をもつ3次元画像であるので、真珠肌画像から平面画像をシミュレーションした。真珠肌画像平面は、3次元形状をモデリングできる装置(例えばMaya)を用いてシミュレーションした。得られた平面画像に対して、光源入射角(θi)が1°〜90°の範囲で、反射角(θr)を受光角−90°(真珠肌画像平面真横)から受光角+90°(反対方向真横)まで1°毎に変化させてレンダリング画像を取得した。各レンダリング画像について、各画像の中央点の値のRGBをグレースケール化した256階調値から反射強度を求め、それを1/cosθiを乗じることでBRDFとした。また、このBRDFから、図1に示す各光源入射角(θi)における正反射幅(98%基準)の軌跡(変化)を求めた。
〔化粧の評価〕
(1)パール粉体の製造
化粧料の作製に先立ち、下記のようにしてパール粉体を作製した。粉体基材と水酸化アルミニウムの合計量に対して水酸化アルミニウムの固着量が2.0%となるように硫酸アルミニウム(約8.1gの硫酸アルミニウム)を1Lの精製水に溶解し、この溶解液に粉体基材100gを添加した。得られた混合液を攪拌分散しながら加熱した後、水酸化ナトリウムの水溶液を加えて中和し、室温まで冷却した。冷却後3時間熟成した後、水洗、乾燥した。得られた塊を粉砕して、水酸化アルミニウムが粉体基材の表面に固着した複合粉体100gを得た。粉体基材には、合成雲母70質量部に対して酸化チタン29質量部及び微量の酸化スズを被覆した複合材料を用いた。当該粉体の粒子径はメジアン径(D50)で21μmであった。
(2)化粧料の作製
上記パール粉体を用いて、表1又は2に示す処方例に従って化粧料を作製した。
(3)化粧仕上がり感の評価
(a)表面反射強度
作製した各種化粧料を用いて、表3に示すように、バイオスキンドール(ビューラックス社製)の顔面部位にファンデーション又はファンデーションとおしろいを重ね塗りして化粧を施した。化粧が施されたバイオスキンドールの画像を撮影し、被写体であるバイオスキンドールにおける表面反射成分を取得し、被写体部分の表面反射強度である輝度平均値を算出した。偏光板を装着した面光源(LED光源、5400k:CN‐600HS サンテック社製)を一方向から被写体に照射し、偏光板が装着されたデジタルカメラ(Nikon D70,Nikon社製)にて被写体を撮影した。光源から被写体までの距離、被写体からカメラまでの距離はそれぞれ1mである。光源入射角(θi)を0°,22°,45°,67°に設定し、各入射角(θi)において受光角(θr)を0°,22°,45°,67°に設定して(但し、光源入射角(θi)を0°、受光角(θr)を0°の場合を除く)、被写体の画像(全15画角)を撮影した。画像処理ソフトウェア(Photoshop,Adobe社製)を用いて、各画像のIss,Isp,Ips,Ippの画像を取得して、下記の式1を用いて、表面反射成分(表面反射画像)Isを取得した。表面反射画像の取得の際におけるROI(region of interest)は、真珠肌画像と同様に、額の上部分、顎の下部分、側面部分を削除した化粧料塗布領域とした。これを真珠肌画像から輝度平均値を求めたのと同様にして、化粧の仕上がり感を示す輝度平均値を算出した。なお、前記4つの画像の添え字のs,pはそれぞれ入射光側及び受光側の偏光フィルターを示し、例えばIspは入射光側にs偏光フィルターを、受光側にp偏光フィルターを入れたことを表す。
Is =(Iss+Ipp)−(Isp+Ips)・・・式1
なお、表面反射強度の取得に際してはシミュレーション画像との整合性を図るための修正を行った。修正は、化粧料を塗布していないバイオスキンドール(ビューラックス社製)から得られる輝度平均値と、真珠肌をシミュレーションしていないバイオスキンドール画像から得られる輝度平均値を求め、これら2つの輝度平均値が一致するように真珠肌画像シミュレーション時の光強度を予め設定した。その後、真珠肌シミュレーション画像を取得した。なお、表3に示す無塗布は、化粧を施していないバイオスキンドールを意味する(次の(b)BRDFにおいても同じ)。
(b)BRDF
上記〔化粧料の作製〕の項で得られた化粧料を用いて、上記(a)表面反射強度の評価に用いたバイオスキンドール(ビューラックス社製)の表面素材と同じ素材を持つ平面状の試験板に、表3に示すように、ファンデーション又はファンデーションとおしろいを重ね塗りして化粧を施した。化粧が施された試験板について、BRDF測定装置(S-OGM、デジタルファッション社製)を用いてBRDFを測定した。BRDFは、光源入射角(θi)を1°,22°,45°,67°に設定し、各光源入射角(θi)において受光角(θr)を1°,22°,45°,67°に設定して取得した。
(c)見た目の評価
(a)で得られたバイオスキンドールの仕上がり感について、数名のパネラーによる目視評価を行った。評価は室内用蛍光灯の照明下で行われ、輝きを持った美しい仕上がりであるかどうかを基準にして判断してもらった。パネラー全体によって特に優れていると評価された場合をランクAA、優れていると評価された場合をランクA、やや優れていると評価された場合をランクB、そうでないとした場合をランクCとした。
〔評価結果〕
(1)表面反射強度について
真珠肌画像及び各化粧例についての測定結果を図2及び図3に示した。また、入射角(θi)が22°,45°,67°とした場合について、受光角(θr)が0°の場合における表面反射強度を表3に示した。図2,図3における横軸は光源入射角(θi)を、奥行方向は受光角(θr)を示している。また、高さ方向は輝度平均値(表面反射強度)を示している。
真珠肌画像では、光源入射角(θi)が小さくなるにつれて受光角(θr)の角度によらずその輝度平均値が大きくなる傾向にあり、受光角(θr)が小さいほど光源入射角(θi)によらず輝度平均値が大きくなる。また、入射角(θi)と受光角(θr)がそれぞれ小さくなるにつれ(図の右斜め奥方向)、輝度平均値が高くなる傾向にある。
各化粧例においても同様な傾向が見られるが、見た目における評価において、パール粉体を配合したファンデーションを用いることで(化粧例1、2、3)、全体の輝度が高くなり真珠肌画像のそれに近づくことが確認された。パール粉体を配合した場合には、受光角(θr)が小さいところや受光角(θr)が大きいところでは、いずれも入射角(θi)を変化させた際の輝度平均値は大きくなる傾向にあった。見た目による評価が悪い化粧例(化粧例4や5)においては、受光角(θr)が大きいところでの輝度平均値の軌跡(変化)が小さい傾向にあることが示され、受光角(θr)が小さいところでは輝度平均値の軌跡(変化)に上昇傾向はあるが、輝度平均値が低いことが示された。なお、化粧例3では輝度平均値を評価する限りにおいては、化粧例1や化粧例2に比べて真珠肌画像のそれに近い印象があるが、後述するようにBRDFの評価は、正反射幅やその軌跡の双方において無塗布の場合に近い評価となった。このことからは、好まれる真珠肌画像との対比においては、ミクロな質感よりもマクロな質感が見た目による評価に及ぼす影響が大きいと推測される。
このように、特定角度の光源入射角に対して受光角を変化させた場合の表面反射強度の軌跡及び/又は特定角度の受光角に対して光源入射角を変化させた場合の表面反射強度の軌跡(変化)を基準として、あるいは光源入射角と受光角の双方を変化させた場合の表面反射強度の軌跡(変化)を基準として、化粧の仕上がり感を評価できる。
また、真珠肌画像における特定角度の光源入射角に対して受光角を変化させた場合の輝度平均値の値や、特定角度の光源入射角に対する特定角度の受光角における輝度平均値の値を比較することで、化粧の仕上がり感を評価することもできる。
(2)BRDFについて
真珠肌画像におけるBRDF(真珠肌BRDF)を図4に、そのBRDFの正反射幅(98%基準)と光源入射角(θi)の関係を図5に、光源入射角(θi)=1°の正反射値を100%とした場合の各光源入射角(θi)におけるBRDFの正反射値割合を図6に示した。なお、図4では光源入射角(θi)が約5°毎で表示されている。真珠肌BRDFは図4に示すように光源入射角(θi)を変化させた場合に各光源入射角(θi)において特徴的な両側になだらかに広がった山形の形状を示した(例えば光源入射角が45°の場合には受光角が約45°のあたりに凸を示す部分がある)。また、この特徴的なピークを表す正反射幅(98%基準)は、光源入射角(θi)が70°以下の範囲において、光源入射角(θi)とほぼ比例することが把握された(図5参照)。また、図6に示すように、光源入射角(θi)が1°における正反射値を100%として、正反射値の軌跡を見た場合には、光源入射角(θi)が約40°までは正反射値(98%基準)が徐々に大きくなるが、光源入射角(θi)が40°を越えると次第に大きな変化を示した。
化粧を施した場合のBRDFでは、図7に示されたように、化粧料を塗布しない場合には、光源入射角(θi)が1°以上67°以下では、光源入射角(θi)と正反射幅(98%基準)との間に比例関係が見られるが、その変化(傾斜)が小さいことが分かる。また、評価が高いと判断された化粧例1や2では、正反射幅(98%基準)は真珠肌BRDFの軌跡(変化)に近い軌跡が得られた。このように、化粧を施した際のBRDFの正反射幅(98%基準)の軌跡を基準として評価することで化粧の仕上がり感を評価できる。また、表3における光源入射角(θi)が22°〜45°の間の正反射幅(98%基準)の値を評価した場合にも、見た目評価がよかった化粧例1や化粧例2の正反射幅(98%基準)は、真珠肌BRDFに近づき、見た目評価が悪かった化粧例4や5に比べて小さな値が示された。このように正反射幅(98%基準)を併せて指標とすることで、化粧の仕上がり感を客観的に評価することが可能となった。さらに、光源入射角(θi)が45°以上67°以下の範囲における正反射値割合及びその軌跡を評価した場合にも、見た目評価がよかった化粧例1や化粧例2の正反射値割合やその軌跡は真珠肌BRDFのそれに近づき、見た目評価が悪かった化粧例4や5の正反射値割合やその軌跡は真珠肌BRDFに比べて小さな値が示された。このように正反射値や正反射値割合を併せて指標とすることで、化粧の仕上がり感を客観的に評価することが可能となった。
本発明に係る評価方法を利用することで、化粧における仕上がり感について、ミクロな質感を客観的に評価することができ、マクロな質感と併せて客観的に評価することができる。この方法はヒトの顔に塗布した場合の仕上がり感だけでなく、例えば、パール粉体などの光輝性粉体を含む化粧料の評価法としても用いられる。

Claims (10)

  1. 化粧の仕上がり感の評価方法であって、
    化粧料を塗布した対象物から取得されるBRDFの正反射幅及び/又は正反射値を指標として仕上がり感を評価する工程を含む評価方法。
  2. 化粧料を塗布した対象物から取得される表面反射強度を指標として仕上がり感を評価する工程を含む請求項1に記載の評価方法。
  3. 任意の光源入射角における正反射幅及び/又は一定範囲の光源入射角における正反射幅の軌跡を指標とする請求項1又は2に記載の評価方法。
  4. 前記正反射幅は、正反射角における反射強度に対して98%の強度を示す低角度側の反射角と正反射角の差である請求項1〜3の何れか1項に記載の評価方法。
  5. 任意の光源入射角における正反射値及び/又は一定範囲の光源入射角における正反射値の軌跡を指標とする請求項1〜4の何れか1項に記載の評価方法。
  6. 特定角度の光源入射角に対して受光角を変化させた場合の表面反射強度の軌跡及び/又は特定角度の受光角に対して光源入射角を変化させた場合の表面反射強度の軌跡を指標とする請求項1〜5の何れか1項に記載の評価方法。
  7. 光源入射角と受光角の双方を変化させた場合の表面反射強度の軌跡を指標とする請求項1〜5の何れか1項に記載の評価方法。
  8. 特定角度の光源入射角と特定角度の受光角における表面反射強度を指標とする請求項1〜5の何れか1項に記載の評価方法。
  9. 前記表面反射強度は対象物の輝度平均値である請求項6〜8の何れか1項に記載の評価方法。
  10. 前記化粧料は光輝性粉体を含む請求項1〜9の何れか1項に記載の評価方法。
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