近年、通信システムにおける周波数帯域の利用効率を向上させるために、送信側においてシングルキャリア変調信号を周波数領域で複数のサブスペクトラムに分割して、中継器の未使用帯域に分散配置する帯域分散伝送方式が考えられている。ところが、帯域分散伝送方式は、スペクトラムを分割して分散配置するため、送信信号のピーク対平均電力比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が増大するという問題があり、PAPRを低減する技術が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。以下は、帯域分散伝送方式を用いる通信においてPAPRを低減する技術の一例である。
図9は、帯域分散伝送方式を用いる送信装置150の一例を示す。図9において、送信装置150は、変調器101、波形整形フィルタ102、DFT(Discrete Fourier Transform)103、分割フィルタ104−1〜104−ND、位相器105−2−1〜105−C−ND、周波数シフタ106−1−1〜106−C−ND、加算器107−1〜107−C、IDFT(Inverse DFT)108−1〜108−C、PAPR算出器109−1〜109−Cおよび最小PAPR選択器110を備える。ここで、NDおよびCは正の整数である。なお、送信装置150は、各部の動作を制御する制御部151と、複数の位相系列を記憶する記憶部152とを有する。
変調器101は、送信するデータ信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)などの変調方式で変調する。
波形整形フィルタ102は、変調器101が出力する変調信号の帯域を制限するためのフィルタである。
DFT103は、波形整形フィルタ102から出力される変調信号を周波数領域(スペクトラム)に変換する。
分割フィルタ104−k(1≦k≦ND)は、DFT103が周波数領域に変換した変調信号の帯域をND個に分割するためのフィルタである。分割フィルタ104−1〜104−NDは、各分割フィルタにおいて、予め設定されたフィルタ係数を変調信号に乗算することで、ND個のサブ変調信号(サブスペクトラム)を生成する。ここで、分割フィルタ104−k(kは1≦k≦NDを満たす正の整数)は、各出力信号をC個に分岐させ、C個のうち1番目の分岐信号を周波数シフタ106−1−k(1≦k≦ND)、C個のうち2番目からC番目までの分岐信号を位相器105−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)に入力する。ここで、qは正の整数である。
位相器105−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)は、分割フィルタ104−kのそれぞれの出力信号を分岐した信号に予め決められた位相を加算する。そして、位相器105−q−kのそれぞれの出力信号は、周波数シフタ106−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)に入力される。
ここで、位相器105−q−kの処理について説明する。位相器105−q−kでは、式(1)で示す位相系列Θ2,Θ3,…,Θq,…,ΘCを用いて、位相器105−q−kに入力された各サブスペクトラムに各位相系列の位相を加算する。なお、式(1)で与えられる位相系列は、例えば記憶部152に記憶されており、制御部151により読み出される。
ここで、式(1)において、θq1は0とする。これにより、例えば、図11に示す受信装置160は、k=1のサブスペクトラムを基準にして位相差を推定できる。また、位相器105−q−kに入力されるサブスペクトラムをSSqkとする。そして、位相器105−q−kは、式(2)で示す位相系列Θqの位相を同じq番目のk=1からNDまでのND個のサブスペクトラムSSqkに加算する。
位相乗算後の位相器105−q−kの出力信号Sθ qは式(3)となる。
周波数シフタ106−q−k(1≦q≦C、1≦k≦ND)は、分割フィルタ104−kまたは位相器105−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)のそれぞれのサブスペクトラムを周波数軸上の予め決められた所望の帯域にシフトする。例えば、周波数シフタ106−q−kは、衛星中継器の未使用帯域にサブスペクトラムをシフトして、送信信号の信号帯域を分散する。なお、周波数シフタ106−q−kは、1からCまでのそれぞれについて処理を行う。例えばq=1の場合、周波数シフタ106−1−k(1≦k≦ND)の各サブスペクトラムを周波数軸上の所望の帯域に分散配置する。同様に、周波数シフタ106−2−kの各サブスペクトラム、周波数シフタ106−3−kの各サブスペクトラム、…、周波数シフタ106−C−kの各サブスペクトラムを周波数シフタ106−1−kの1からNDまでの各サブスペクトラムのシフト量と同じシフト量でシフトさせる。なお、各サブスペクトラムのシフト量は、例えば制御部151により制御される。
加算器107−q(1≦q≦C)は、周波数シフタ106−q−k(1≦q≦C、1≦k≦ND)が各組毎(同じq毎)に出力する1からNDまでのND個のサブスペクトラムを加算する。例えば図9の場合、加算器107−1は、周波数シフタ106−1−1から周波数シフタ106−1−NDが出力するND個のサブスペクトラムを加算する。同様に、加算器107−Cは、周波数シフタ106−C−1から周波数シフタ106−C−NDが出力するND個のサブスペクトラムを加算する。
IDFT108−q(1≦q≦C)は、加算器107−qの出力信号を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する。例えば、IDFT108−1は、加算器107−1の出力信号を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する。
PAPR算出器109−q(1≦q≦C)は、IDFT108−qで時間領域の信号に変換された信号についてPAPRを算出する。例えば、PAPR算出器109−1は、IDFT108−1で時間領域の信号に変換された信号についてPAPRを算出する。なお、PAPRの算出は、周知技術を用いるが、例えばPAPR算出器109−1〜109−Cのそれぞれに入力された信号に対し、2乗した値の最大値と平均値を算出する。そして、PAPR算出器109−qは、最大値/平均値(最大値を平均値で割った値)をPAPRとして出力する。
最小PAPR選択器110は、PAPR算出器109−qが算出したPAPRが最も小さい系列のIDFT108−qの出力信号を選択して送信する。例えば、最小PAPR選択器110は、C=2のPAPR算出器109−2が算出したPAPRが最も小さい場合、同じ系列(C=2)のIDFT108−2の出力信号を選択して送信する。
ここで、分割フィルタ104−kの入出力信号のスペクトラムと、位相器105−q−kの出力信号のスペクトラムと、加算器107−qの出力信号のスペクトラムとについて説明する。
図10は、送信装置150の各部の周波数波形の一例を示す。なお、図10は、ND=4の場合を示す。図10(a)は、分割フィルタ104−1〜104−4の入力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図10(a)において、(a−1)の振幅特性は、横軸は周波数f、縦軸は振幅Aを示し、分割フィルタ104−1〜104−4のサブスペクトラムと、サブスペクトラムに分割前の変調信号のスペクトラム141とが示されている。ここで、図10(a−1)において、隣接する分割フィルタ104−1と分割フィルタ104−2とは、それぞれの周波数帯域が重畳している。同様に、隣接している分割フィルタ104−2および分割フィルタ104−3、分割フィルタ104−3および分割フィルタ104−4についても、それぞれの周波数帯域が重畳している。図10(a)において、(a−2)の位相特性は、横軸は周波数f、縦軸は位相θを示し、変調信号の位相特性142は周波数fに比例している。
図10(b)は、分割フィルタ104−1〜104−4の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図10(b)の(b−1)は、分割フィルタ104−1の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。同様に、図10(b)において、(b−2)は分割フィルタ104−2、(b−3)は分割フィルタ104−3、(b−4)は分割フィルタ104−4のそれぞれの出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図10(b)に示すように、分割フィルタ104−1〜104−4は、各分割フィルタの出力信号の振幅特性および位相特性が隣接するフィルタ間で重複するように分割する。
図10(c)は、位相器105−q−kの出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図10(c)の(c−1)は、位相器105−q−1の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。なお、位相器105−q−1で加算する位相θ21は0なので、図10(b)の(b−1)に示した分割フィルタ104−1と位相特性は同じである。また、図10(c)において、(c−2)は位相器105−q−2の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。位相器105−q−2は、分割フィルタ104−2の出力信号に位相θ22を加算するので、図10(c)の(c−2)に示した位相特性は、図10(b)の(b−2)に示した分割フィルタ104−2の位相が紙面上方にθ22だけシフトしている。同様に、図10(c)において、(c−3)は位相器105−q−3の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。位相器105−q−3は、分割フィルタ104−3の出力信号に位相θ23を加算するので、図10(c)の(c−3)に示した位相特性は、図10(b)の(b−3)に示した分割フィルタ104−3の位相が紙面上方にθ23だけシフトしている。また、図10(c)において、(c−4)は位相器105−q−4の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。位相器105−q−4は、分割フィルタ104−4の出力信号に位相θ24を加算するので、図10(c)の(c−4)に示した位相特性は、図10(b)の(b−4)に示した分割フィルタ104−4の位相が紙面上方にθ24だけシフトしている。
図10(d)は、加算器107−qの出力信号の振幅特性の一例を示す。図10(d)において、横軸は周波数f、縦軸は振幅Aを示す。例えば図9に示した加算器107−1は、q=4の場合、周波数シフタ106−1−1、周波数シフタ106−1−2、周波数シフタ106−1−3および周波数シフタ106−1−4の出力信号を加算する。この場合、加算器107−1の出力信号のスペクトラムは、図10(d)に示すように、周波数シフタ106−1−1の出力信号のサブスペクトラムSS1、周波数シフタ106−1−2の出力信号のサブスペクトラムSS2、周波数シフタ106−1−3の出力信号のサブスペクトラムSS3および周波数シフタ106−1−4の出力信号のサブスペクトラムSS4の4個のサブスペクトラムが加算されている。
図11は、帯域分散伝送方式を用いる受信装置160の一例を示す。図11において、受信装置160は、DFT111、抽出フィルタ112−1〜112−ND、周波数シフタ113−1〜113−ND、位相推定器114−2〜114−ND、位相器115−2〜115−ND、加算器116、IDFT117および復調器118を備える。なお、受信装置160は、各部の動作を制御する制御部161を有する。
DFT111は、受信信号を周波数領域信号に変換する。
抽出フィルタ112−k(1≦k≦ND)は、ND個に分岐されたDFT111の出力信号をそれぞれ入力し、ND個のサブスペクトラムを抽出する。
周波数シフタ113−k(1≦k≦ND)は、抽出フィルタ112−1〜112−NDが出力する各サブスペクトラムを、送信装置150の周波数シフタ106−1〜106−NDで周波数シフトする前の帯域へそれぞれシフトする。
位相推定器114−k(2≦k≦ND)は、周波数シフタ113−1〜113−NDのうち隣接するサブスペクトラムの信号の位相差を推定する。図11において、例えば、位相推定器114−2は、周波数シフタ113−1と周波数シフタ113−2とのそれぞれの出力信号が入力され、送信装置150の位相器105−q−2で加算した位相差を推定する。位相推定器114−kは、周波数領域で隣接するサブスペクトラム(SSk−1とSSk)の信号が入力され、SSk−1とSSkの遷移域における位相差Rk_abを計算する。なお、位相差Rk_abをラジアンに変換すると、位相差(^θqk)=atan(Rk_ab)となる。ここで、図10(a)の(a−1)に示すように、送信装置150において、各サブスペクトラムの遷移域同士は重畳しているため、隣接するサブスペクトラムの遷移域は同一の信号成分を持っている。そこで、受信装置160は、この重畳している遷移域の信号成分から位相差Rk_abを推定する。ここで、kは1からNDまでのサブスペクトラムの番号を示す。なお、式(1)で説明したように、θq1は0にしている。つまり、SS1は、θ21が0なので、送信装置150で位相は加算されていないため、位相推定器114−2は、周波数シフタ113−1と113−2とに入力されたSS1とSS2から、SS2に加算された位相R2_12を推定することができる。そして、位相推定器114−2は、(^θq2)=atan(R2_ab)を位相器115−2に出力する。以下、位相推定器114−3から114−NDについても、位相推定器114−2と同様に位相差Rk_abを推定する。そして、位相推定器114−kは、位相差(^θqk)=atan(Rk_ab)を位相器115−kに出力する。
位相器115−k(2≦k≦ND)は、位相推定器114−2〜114−NDからそれぞれ出力される位相差(^θqk)が入力され、周波数シフタ113−1〜113−NDが出力する信号にexp(−j(^θqk))を乗算して、位相を補償する。例えば、位相器115−2は、位相推定器114−2から出力される位相差(^θq2)が入力され、周波数シフタ113−2が出力する信号にexp(−j(^θq2))を乗算して、位相を補償する。同様に、位相器115−2で位相補償された信号SS2と周波数シフタ113−3の出力信号SS3から位相推定器114−3にて位相差R3_abが算出され、位相器115−3に(^θq3)=atan(R3_ab)が出力される。位相器115−3は、位相推定器114−3の出力(^θq3)を用いて周波数シフタ113−3から出力されたSS3にexp(−j(^θq3))を乗算し、位相を補償する。
加算器116は、周波数シフタ113−1および位相器115−2〜位相器115−NDの出力信号を加算し、送信装置150で複数のサブスペクトラムに分割する前の信号波形に戻す。
IDFT117は、加算器116の出力信号を時間領域の信号に変換する。
復調器118は、IDFT117が出力する変調信号を復調する。例えば、送信装置150の変調器101がQPSKで変調した場合は、同じQPSKで受信データを復調する。
ここで、位相器115−kの入出力信号のスペクトラムと、位相推定器114−kでの相関演算とについて説明する。
図12は、受信装置160の各部の周波数波形の一例を示す。なお、図12は、k=2〜5の場合を示す。図12(a)は、位相器115−2〜115−5の入力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図12(a)において、(a−1)から(a−4)までの各振幅特性は、横軸は周波数f、縦軸は振幅Aを示し、周波数シフタ113−2〜113−5のそれぞれのサブスペクトラムSS1〜SS4が示されている。ここで、図12(a)の(a−1)において、周波数シフタ113−2の位相146−2は、シフト量が0なので、シフト前の位相145と同じである。一方、図12(a)の(a−2)に示す周波数シフタ113−3の位相146−3は、シフト前の位相145との間に位相差を有する。同様に、図12(a)の(a−3)に示す周波数シフタ113−4の位相146−4と、(a−4)に示す周波数シフタ113−5の位相146−5とのいずれも、シフト前の位相145との間に位相差を有する。
図12(b)は、位相器115−2〜115−5の出力信号の振幅特性および位相特性の一例を示す。図12(b)において、(b−1)から(b−4)までの各振幅特性は、図12(a)の(a−1)から(a−4)までと同じである。図12(b)の(b−1)に示す例では、位相器115−2は、周波数シフタ113−2の位相146−2とシフト前の位相145との位相差(^θ21)が0なので位相シフトは行わない。一方、図12(b)の(b−2)に示す例では、位相器115−3は、周波数シフタ113−3の位相146−3とシフト前の位相145との位相差(^θ22)を付加して位相が等しくなるように補償する。同様に、図12(b)の(b−3)に示す例では、位相器115−4は、周波数シフタ113−4の位相146−4とシフト前の位相145との位相差(^θ23)を付加して位相が等しくなるように補償する。また、図12(b)の(b−4)に示す例では、位相器115−5は、周波数シフタ113−5の位相146−5とシフト前の位相145との位相差(^θ24)を付加して位相が等しくなるように補償する。
図12(c)は、位相推定器114−kでの相関演算の一例を示す。ここで、各サブスペクトラムの信号成分は、周波数軸上で離散化されている。図12(c)において、(c−1)は、隣接する低周波数側のサブスペクトラムSSk−1を示し、(c−2)は、隣接する高周波数側のサブスペクトラムSSkを示す。図12(c)の(c−1)に示したサブスペクトラムSSk−1において、低周波数側の遷移域において離散化された信号成分を低周波数側からa(k−1)1,a(k−1)2,…,a(k−1)p、高周波数側の遷移域において離散化された信号成分を低周波数側からb(k−1)1,b(k−1)2,…,b(k−1)p、とする。また、図12(c)の(c−2)に示したサブスペクトラムSSkにおいて、低周波数側の遷移域において離散化された信号成分を低周波数側からak1,ak2,…,akp、高周波数側の遷移域において離散化された信号成分を低周波数側からbk1,bk2,…,bkp、とする。ここで、pはDFTにより周波数領域に生成される離散化された信号点の内、遷移域の帯域に含まれる信号成分の数とする。なお、図12(c)は、p=3の例を示している。例えば、DFT111の周波数分解能がr、遷移域の帯域幅がBtのとき、p=[Bt/r]となる。ただし、記号[x]はxを超えない最大の整数とする。
位相差Rk_abは、式(4)に示すように、隣接するサブスペクトラムSSk−1とSSkの高周波数側の信号成分b(k−1)と低周波数側の信号成分a* kiの複素共役を乗算し、周波数軸方向に平滑化することにより得られる。
ここで、図12(c)に示したp=3の例の場合、位相差Rk_abは、式(5)で表される。
ここで、受信装置160は、送信装置150の位相器105−q−kで各サブスペクトラムに位相が加算されたか否かを確認するために、予め受信装置160内に実装された値(閾値α)を使用して判断する。例えば、位相差Rk_abが閾値α以上の時、送信装置においてk番目のサブスペクトラムkに位相が加算されたと見なし、受信装置160は、位相推定器114−kから位相差Rk_abを出力し、位相器115で位相差を補償する。ここでb(k−1)pとakpは分割前では同じ信号成分であるため、受信装置でb(k−1)pとakpの間に生じた位相差(^θqk)=atan(Rk_ab)は送信装置150で加算された位相によるものと見なし、サブスペクトラムSSkにexp(−j(^θqk))を乗算することで位相差を補償することができる。位相差Rk_abが閾値α未満の場合、送信装置150で位相を加算していないと判断し、位相推定器114−kは0を出力する。
以上の構成により、受信装置160は、隣接するサブスペクトラムの位相差を逐次推定し、送信装置150で加算された位相を補償することができる。
以下、図面を参照して本発明に係る通信方法、通信システムおよび通信装置の実施形態について説明する。
図1は、帯域分散伝送方式を用いる送信装置50の構成例を示す。図1において、通信システム70は、送信装置50と、受信装置60とで構成され、送信装置50で変調した信号を帯域分散伝送方式により受信装置60へ送信する。ここで、送信装置50または受信装置60は通信装置の一例である。或いは、双方向通信の場合、通信装置は、送信装置50と受信装置60との両方の機能を有する。
送信装置50は、変調器1、波形整形フィルタ2、DFT3、分割フィルタ4−1〜4−ND、位相器5−2−1〜5−C−ND、周波数シフタ6−1−1〜6−C−ND、加算器7−1〜7−C、IDFT8−1〜8−C、PAPR算出器9−1〜9−Cおよび最小PAPR選択器10を備える。ここで、NDおよびCは正の整数である。なお、送信装置50は、各部の動作を制御する制御部51と、予め決められた有限個の位相からなる複数の位相系列、または予め決められた有限個の位相を生成するためのパラメータおよび数式、などを記憶する記憶部52とを有してもよい。或いは、パラメータなどを各ブロックに実装してもよい。ここで、複数の位相系列のうち使用する有限個の位相の情報または有限個の位相を生成するためのパラメータおよび数式などの情報は、送信装置50と受信装置60との間で共有化されている。なお、共有化の方法は、送信装置50から受信装置60に情報を通知するようにしてもよいし、共有するパラメータおよび数式などの情報を予め標準化しておいて、送信装置50および受信装置60に実装しておいてもよい。これにより、送信装置50から受信装置60に情報を通知する必要がなくなる。
変調器1は、送信するデータ信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)などの変調方式で変調する。
波形整形フィルタ2は、変調器1が出力する変調信号の帯域を制限するためのフィルタである。
DFT3は、波形整形フィルタ2から出力される変調信号を周波数領域(スペクトラム)に変換する。
分割フィルタ4−k(1≦k≦ND)は、DFT3が周波数領域に変換した変調信号の帯域をND個に分割するためのフィルタである。分割フィルタ4−1〜4−NDは、各分割フィルタにおいて、予め設定されたフィルタ係数を変調信号に乗算することで、ND個のサブ変調信号(サブスペクトラム)を生成する。ここで、分割フィルタ4−k(kは1≦k≦NDを満たす正の整数)は、各サブスペクトラムの信号をC個に分岐させ、C個のうち1番目の分岐信号を周波数シフタ6−1−k(1≦k≦ND)、C個のうち2番目からC番目までの分岐信号を位相器5−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)に入力する。ここで、qは正の整数である。
位相器5−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)は、分割フィルタ4−kのそれぞれの出力信号を分岐した信号に予め決められた位相を加算する。そして、位相器5−q−kのそれぞれの出力信号は、周波数シフタ6−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)に入力される。
ここで、位相器5−q−kの処理について説明する。位相器5−q−kでは、式(6)で示す位相系列ΘD2,ΘD3,…,ΘDq,…,ΘDCを用いて、位相器5−q−kに入力された各サブスペクトラムに各位相系列の位相を加算する。なお、式(6)で与えられる位相系列は、例えば記憶部52に記憶しておいてもよいし、予め決められたパラメータや数式に基づいて生成してもよい。図1の例では、制御部51が複数の位相系列の位相を位相器5−q−kに与える。
ここで、式(6)において、θDq1は0とする。これにより、受信装置60は、k=1のサブスペクトラムを基準にして隣接するサブスペクトラムとの位相差を推定できる。また、位相器5−q−kに入力されるサブスペクトラムをSSqkとする。そして、位相器5−q−kは、式(7)で示す位相系列ΘDqの位相を同じq番目のk=1からNDまでのND個のサブスペクトラムSSqkに加算する。
[本実施形態に係る送信装置50の特徴部分]
本実施形態に係る送信装置50と従来技術の送信装置150との違いは、位相器5−q−kで加算する位相θDqkが有限個の位相値であり、送信装置50と受信装置60との間で既知の情報として共有化されていることである。なお、送信装置50と受信装置60との間で共有化する情報は、有限個の位相値であってもよいし、有限個の位相値を算出するための数式やパラメータであってもよい。
例えば、有限個の位相値の算出方法として、円を等分割にすることで得られる位相値を使用することができる。この場合、式(8)で算出されるm通りの位相値θDqkのいずれかを位相器5−q−kで使用する。
ここで、mは円を何等分するかを示し、位相分割数と呼ぶ。θoffsetは円を等分割にする場合の初期位相を表す。lは位相分割位置を示す。この場合、送信装置50と受信装置60との間で、パラメータ(位相分割数mの値および初期位相θoffsetの値)と式(8)とを共有化すればよい。
図2は、位相分割数m=3、初期位相θoffset=0で生成される位相θDqkの一例を示す。位相器5−q−kは、式(8)により生成されるm通りの位相のいずれかを選択して分割フィルタ4−kが出力する各サブスペクトラム信号に加算する。このとき、後段の加算器7−1〜7−Cで同じ信号が出力されないように、位相器5−q−1〜位相器5−q−NDで使用する位相の組合せと、位相器5−s−1〜位相器5−s−ND(2≦q≦C,2≦s≦C,q≠s)で使用する位相の組合せとが異なるように予め設定する。ここで、sは、正の整数である。
図2の例において、k=8の場合、m=3で円等分割するので、生成される3通りの位相(0度,120度および240度)が8個のサブスペクトラムに割り振られる。そして、サブスペクトラムに割り振るパターン(位相系列)に多数の組み合わせ(複数の位相系列に相当)が考えられる。ここで、8個のサブスペクトラムを周波数が低いものから順に「SS1,SS2,・・・,SS8」とすると、一例として、下記のようなパターン1からパターン(C−1)が得られる。なお、パターン1からパターン(C−1)は、それぞれ図1に示した位相器5−2−kから位相器5−C−kにそれぞれ与えられる。
例えば、パターン1(位相器5−2−k)の場合、SS1:120度,SS2:0度,SS3:0度,SS4:0度,SS5:0度,SS6:0度,SS7:0度,SS8:0度のような組み合わせができる。
また、パターン2(位相器5−3−k)の場合、例えば、SS1:0度,SS2:120度,SS3:0度,SS4:0度,SS5:0度,SS6:0度,SS7:0度,SS8:0度のような組み合わせができる。
同様に、パターン3(位相器5−4−k)の場合、例えば、SS1:120度,SS2:120度,SS3:0度,SS4:0度,SS5:0度,SS6:0度,SS7:0度,SS8:0度のような組み合わせができる。
また、パターン4からパターン(C−2)についても同様に、3通りの位相(0度,120度および240度)が他のパターンと異なるように割り振られる。
そして、パターン(C−1)(位相器5−C−k)の場合、例えば、SS1:240度,SS2:240度,SS3:240度,SS4:240度,SS5:240度,SS6:240度,SS7:240度,SS8:240度のような組み合わせができる。
このように、位相器5−2−kから位相器5−C−kまでそれぞれ異なるパターンの位相の組み合わせが与えられ、最小PAPR選択器10は、PAPRが最小となるパターンの送信信号を選択して、受信装置60に送信する。
ここで、上記は円等分割の例であるが、円不等分割する位相を用いてもよい。
図3は、送信装置50の位相器5−q−kで加算する位相の一例を示す。図3は、円を3つに不等分割する例(位相分割数m=3)で、加算する位相は、θDqk_1=2π/9,θDqk_2=17π/36,θDqk_3=10π/9のいずれかである。この場合、送信装置50と受信装置60との間で、3個の位相値:2π/9,17π/36および10π/9の値が使用する1つの位相系列として共有化される。
位相乗算後の位相器5−q−kの出力信号Sθ qは、従来技術の式(3)と同様に、式(9)となる。
周波数シフタ6−q−k(1≦q≦C、1≦k≦ND)は、分割フィルタ4−kまたは位相器5−q−k(2≦q≦C、1≦k≦ND)のそれぞれのサブスペクトラムを周波数軸上の予め決められた所望の帯域にシフトする。例えば、周波数シフタ6−q−kは、衛星中継器の未使用帯域にサブスペクトラムをシフトして、送信信号の信号帯域を分散する。なお、周波数シフタ6−q−kは、1からCまでのそれぞれについて処理を行う。例えばq=1の場合、周波数シフタ6−1−k(1≦k≦ND)の各サブスペクトラムを周波数軸上の所望の帯域に分散配置する。同様に、周波数シフタ6−2−kの各サブスペクトラム、周波数シフタ6−3−kの各サブスペクトラム、…、周波数シフタ6−C−kの各サブスペクトラムを周波数シフタ6−1−kの1からNDまでのそれぞれのシフト量と同じシフト量でシフトさせる。なお、各サブスペクトラムのシフト量は、例えば制御部51により制御される。
加算器7−q(1≦q≦C)は、周波数シフタ6−q−k(1≦q≦C、1≦k≦ND)が各組毎(同じq毎)に出力する1からNDまでのND個のサブスペクトラムを加算する。例えば図1の場合、加算器7−1は、周波数シフタ6−1−1から周波数シフタ6−1−NDが出力するND個のサブスペクトラムを加算する。同様に、加算器7−Cは、周波数シフタ6−C−1から周波数シフタ6−C−NDが出力するND個のサブスペクトラムを加算する。
IDFT8−q(1≦q≦C)は、加算器7−qの出力信号を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する。例えば、IDFT8−1は、加算器7−1の出力信号を周波数領域の信号から時間領域の信号に変換する。
PAPR算出器9−q(1≦q≦C)は、IDFT8−qで時間領域の信号に変換された信号についてPAPRを算出する。例えば、PAPR算出器9−1は、IDFT8−1で時間領域の信号に変換された信号についてPAPRを算出する。なお、PAPRの算出は、周知技術を用いるが、例えばPAPR算出器9−1〜9−Cのそれぞれに入力された信号に対し、2乗した値の最大値と平均値を算出する。そして、PAPR算出器9−qは、最大値/平均値(最大値を平均値で割った値)をPAPRとして出力する。
最小PAPR選択器10は、PAPR算出器9−qが算出したPAPRが最も小さい位相系列のIDFT8−qの出力信号を選択して送信する。例えば、最小PAPR選択器10は、C=2のPAPR算出器9−2が算出したPAPRが最も小さい場合、同じ位相系列(C=2)のIDFT8−2の出力信号を選択して送信する。
なお、分割フィルタ4−kの入出力信号のスペクトラム、位相器5−q−kの出力信号のスペクトラムおよび加算器7−qの出力信号のスペクトラムは、従来技術の図10で説明した場合と同様である。
このようにして、本実施形態に係る送信装置50では、位相器5−q−kで加算する位相系列の位相θDqkが有限個の位相値であって、有限個の位相値または有限個の位相値を生成するためのパラメータや数式は、送信装置50と受信装置60との間で既知の情報として予め共有化されている。そして、送信装置50は、有限個の位相値を有する複数の位相系列のうちPAPRが最小となる位相系列の有限個の位相を用いたサブスペクトラムの和を送信信号として受信装置60に送信することができる。
図4は、帯域分散伝送方式を用いる受信装置60の構成例を示す。図4において、受信装置60は、DFT11、抽出フィルタ12−1〜12−ND、周波数シフタ13−1〜13−ND、位相推定器14−2〜14−ND、位相補正器15−2〜15−ND、位相器16−2〜16−ND、加算器17、IDFT18および復調器19を備える。なお、受信装置60は、各部の動作を制御する制御部61と、パラメータなどを記憶する記憶部62とを有してもよい。
DFT11は、受信信号を周波数領域信号に変換する。
抽出フィルタ12−k(1≦k≦ND)は、ND個に分岐されたDFT11の出力信号をそれぞれ入力し、ND個のサブスペクトラムを抽出する。
周波数シフタ13−k(1≦k≦ND)は、抽出フィルタ12−1〜12−NDが出力する各サブスペクトラムを、送信装置50の周波数シフタ6−q−1〜6−q−NDで周波数シフトする前の帯域へそれぞれシフトする。
位相推定器14−k(2≦k≦ND)は、周波数シフタ13−1〜13−NDのうち隣接する周波数シフタが出力するサブスペクトラムの信号の位相差を推定する。なお位相差の推定方法は、従来技術の図12で説明したように、隣接するサブスペクトラムの帯域が重畳する遷移域で相関を計算して位相差を推定する。ここで、推定される位相差は、送信装置50の位相器5−q−2で加算された位相差に相当する。図4において、例えば位相推定器14−2は、周波数シフタ13−1と周波数シフタ13−2とのそれぞれの出力信号が入力され、送信装置50の位相器5−q−2で加算した位相差を推定する。位相推定器14−kは、周波数領域で隣接するサブスペクトラム(SSk−1とSSk)が入力され、SSk−1とSSkの遷移域における位相差Rk_abを計算する。なお、位相差Rk_abをラジアンに変換すると、位相差(^θDqk)=atan(Rk_ab)となる。ここで、従来技術の図10(a)の(a−1)に示すように、送信装置50において、各サブスペクトラムの遷移域同士は重畳しているため、隣接するサブスペクトラムの遷移域は同一の信号成分を持っている。そこで、受信装置60は、この重畳している遷移域の信号成分から位相差Rk_abを推定する。ここで、kは1からNDまでのサブスペクトラムの番号を示す。なお、式(6)で説明したように、θDq1は0にしている。つまり、SS1は、θDq1が0なので、送信装置50で位相が加算されていないため、位相推定器14−2は、周波数シフタ13−1と13−2とに入力されたSS1およびSS2から、SS2に加算された位相R2_12を推定することができる。そして、位相推定器14−2は、位相差(^θDq2)=atan(R2_ab)を位相補正器15−2に出力する。以下、位相推定器14−3から14−NDについても、位相推定器14−2と同様に位相差Rk_abを推定する。そして、位相推定器14−kは、位相差(^θDqk)=atan(Rk_ab)を位相補正器15−2に出力する。
位相補正器15−k(2≦k≦ND)は、位相推定器14−2〜14−NDがそれぞれ出力する推定位相差(^θDqk)の補正を行う。例えば、位相補正器15−2は、送信装置50と共有する有限個の位相を用いて推定位相差の丸め込みを行う。送信装置50では、式(8)に示すm通りの位相θDqkのいずれかが加算され、この位相θDqkまたは位相θDqkを生成するためのパラメータや数式は、送信装置50と受信装置60とで予め共有されている。そこで、位相補正器15−qは、送信装置50で加算されたm通りの位相θDqkの中で、位相補正器15−qに入力される位相差(^θDqk)に最も近い位相を選択し出力する。
位相差(^θDqk)に最も近い点の選択方法として、例えば、複素平面上のユークリッド距離が最も近い点を選択する方法などが考えられる。ここで、m通りの位相θDqk(θDqk>0)を、位相が0(rad)に近い順にθDqk_1,θDqk_2,…,θDqk_p,…,θDqk_mの有限個とする。この場合、式(10)に示すように、評価関数rpを最小化するθDqk_pを選択し位相補正器15−qから出力すればよい。
例えば、円を等分割する例で、位相分割数m=3、初期位相θoffset=0の場合、図2で説明したように、送信装置50の位相器5−q−kで加算される位相はθDqk=0,2π/3,4π/3のいずれかである。この場合、受信装置60は、次のように処理を行う。
図5は、受信装置60の位相補正器15−qの処理の一例を示す。なお、図5(a)は、位相補正器15−qの入力(位相推定器14−qで推定された位相差)の一例を示し、図5(b)は、位相補正器15−qの出力の一例を示す。また、図5(a)および図5(b)の例は、図2の場合に対応し、受信装置60は、位相分割数m=3、初期位相θoffset=0であることの情報、または加算される位相がθDqk=0,2π/3,4π/3のいずれかであることの情報を予め送信装置50との間で共有している。
図5(a)において、受信装置60の位相推定器14−qで推定された位相差(^θDqk)=π/6である場合(図5(a)の黒丸印)、上述の式(10)より、各ユークリッド距離は、r1=0.51,r2=1.4,r3=1.9となる。この場合、位相補正器15−qは、r1が最小であると判断し、図5(a)の黒丸印を図5(b)の黒丸印の位相θDqk_1=0に置き換えて、位相補正器15−2は0を出力する。
ここで、円を不等分割する例で、位相分割数m=3の場合、図3で説明したように、送信装置50の位相器5−q−kで加算される位相は、θDqk_1=2π/9,θDqk_2=17π/36,θDqk_3=10π/9のいずれかである。
図6は、受信装置60の位相補正器15−qの処理の一例を示す。なお、図6(a)は、位相補正器15−qの入力(位相推定器14−qで推定された位相差)の一例を示し、図6(b)は、位相補正器15−qの出力の一例を示す。また、図6(a)および図6(b)の例は、図3の例に対応し、受信装置60は、位相分割数m=3で、加算される位相がθDqk_1=2π/9,θDqk_2=17π/36,θDqk_3=10π/9のいずれかであることの情報を予め送信装置50との間で共有している。
図6(a)において、受信装置60の位相推定器14−qで推定された位相差(^θDqk_3)=17π/18である場合(図6(a)の黒丸印)、上述の式(10)より、各ユークリッド距離は、r1=1.8,r2=1.4,r3=0.52となる。この場合、位相補正器15−qは、r3が最小であると判断し、図6(a)の黒丸印を図6(b)の黒丸印の位相θDqk_3=10π/9に置き換えて、位相補正器15−2から10π/9を位相器16−2に出力する。
位相器16−k(2≦k≦ND)は、位相補正器15−2〜15−NDからそれぞれ出力される位相(θDqk)が入力され、周波数シフタ13−1〜13−NDが出力する信号にexp(−j(θDqk))を乗算して、位相を補償する。例えば、位相器16−2は、位相補正器15−2が出力するθDq3を用いて、周波数シフタ13−2の出力信号にexp(−j(θDq3))を乗算して、位相を補償する。同様に、位相器16−2で位相補償された信号SS2と周波数シフタ13−3の出力信号SS3から位相推定器14−3にて位相差R3_abが算出され、位相補正器15−3が位相補正を行った位相θDq3が位相器16−3に出力される。位相器16−3は、位相補正器15−3が出力する位相θDq3を用いて、周波数シフタ15−3から出力されたSS3にexp(−jθDq3)を乗算し、位相を補償する。以降、位相推定器14−k(4≦k≦ND)は、位相器16−(k−1)から出力されたSSk−1と周波数シフタ13−kから出力されたSSkから位相差Rk_abを推定する。そして、位相補正器15−kが位相補正を行った位相θDqkは位相器16−kに出力され、位相器16−kは、周波数シフタ13−kから出力されたSSkにexp(−jθDqk))を乗算して、位相補償を行う。
加算器17は、周波数シフタ13−1および位相器16−2〜位相器16−NDの出力信号をそれぞれ加算し、送信装置50で複数のサブスペクトラムに分割する前の信号波形を復元する。
IDFT18は、加算器17の出力信号を入力して時間領域の信号に変換する。
復調器19は、IDFT18が出力する変調信号を復調する。例えば、送信装置50の変調器1がQPSKで変調した場合は、同じQPSKで受信データを復調する。
なお、位相器16−kの入出力信号のスペクトラムと、位相推定器14−kでの相関演算については、従来技術の図12で説明した場合と同様である。
以上説明したように、本実施形態に係る受信装置60は、送信装置50で送信時に分割されたサブスペクトラムを抽出し、周波数シフト処理により送信装置50で分散配置されたサブスペクトラムを分散配置前の帯域に戻す。そして、受信装置60は、分散配置前の帯域に戻したサブスペクトラムに対して、隣接する遷移域で位相差を推定する。このとき、受信装置60は、送信装置50が加算したm通りの位相の情報またはm通りの位相を生成するためのパラメータや数式などの情報を送信装置50と予め共有しているので、m通りの位相の中から受信側の位相推定値に最も近い位相値を選択し、位相推定値を置き換える補正を行う。そして、受信装置60は、補正後の位相推定値により各サブスペクトラムの位相を補償した後、全サブスペクトラムを加算してサブスペクトラムの和を算出し、復調処理を行う。
このように、本実施形態では、受信装置60は、送信装置50が加算したm通りの位相の情報またはm通りの位相を生成するためのパラメータや数式などに関する情報を送信装置50と予め共有しておく。そして、受信装置60は、受信信号の隣接するサブスペクトラム間の推定位相差に最も近い値を有限個の位相の中から選択し、推定位相差を置き換えるので、従来例に比べて推定位相差の精度を高めることができる。特に、低S/N環境下や、サブスペクトラムの遷移域に存在する離散化された信号成分の数pが周波数軸方向の平滑化数として十分ではない場合、位相差Rk_abは、式(11)に示すように、隣接するサブスペクトラムSSk−1とSSkの高周波数側の信号成分b(k−1)iと、低周波数側の信号成分a* kiの複素共役を乗算し、周波数軸方向に平滑化することにより得られる。
ここで、図12(c)はp=3のときの例を示す。このとき、位相差Rk_abは、式(12)で表される。
なお、受信装置60は、送信装置50の位相器5−q−kでサブスペクトラムに位相が加算されたか否かを確認するために、予め受信装置60内に実装された値(閾値α)を使用して判断する。例えば、位相差Rk_abが閾値α以上の時、送信装置50においてk番目のサブスペクトラムkに位相が加算されたと見なし、位相推定器14−kから位相差(^θDqk)=atan(Rk_ab)を出力し、位相器16でサブスペクトラムkの位相差を補償する。ここでb(k−1)pとakpは分割前では同じ信号成分であるため、受信装置60でb(k−1)pとakpの間に生じた位相差(^θDqk)=atan(Rk_ab)は送信装置50で加算された位相によるものと見なす。そして、受信装置60は、位相差(^θDqk)を補正した位相(θDqk)を用いて、サブスペクトラムSSkにexp(−j(θDqk))を乗算することで位相を補償する。一方、位相差Rk_abが閾値α未満の場合、送信装置50で位相を加算していないと判断し、位相推定器14−kは位相差(^θDqk)=0を出力する。この場合、位相補正器15−kの出力も0となる。
以上の構成により、受信装置60は、隣接するサブスペクトラムの位相差を逐次推定し、送信装置50で加算された位相を補償することができる。特に、本実施形態では、受信装置60は、送信装置50が加算したm通りの位相の情報またはm通りの位相を生成するためのパラメータや数式に関する情報を送信装置50と予め共有しておき、有限個の位相の中から受信側の位相推定値に最も近い位相値を選択し、位相推定値を選択した位相値で置き換えるので、従来例に比べて位相推定値の精度を高めることができる。
(送信処理)
図7は、本実施形態における送信処理の一例を示す。なお、図7の処理は、図1に示した送信装置50により実行される。
ステップS101において、変調器1は、送信するデータ信号をQPSKなどの変調方式で変調する。
ステップS102において、波形整形フィルタ2は、変調器1が出力する変調信号に予め決められたフィルタ係数を乗算することにより、変調信号の帯域を制限する。
ステップS103において、波形整形フィルタ2が出力する変調信号は、DFT3により周波数領域に変換され、分割フィルタ4−kは、変調信号のスペクトラムをND個に分割する。
ステップS104において、分割フィルタ4−kは、ND個に分割した変調信号のスペクトラムを内部のバッファに格納する。なお、ND個のサブスペクトラムは、C個の組に分割して各組毎に異なる位相系列の位相が加算される。図7では、カウンタi(iは正の整数)を用いて、i=1からCまでのループ処理で順番に行うものとして説明するが、C個の組の位相加算を並列に行うようにしてもよい。ここで、カウンタをi=1に初期化する。また、カウンタiは、図1で説明した各ブロックの符号qに対応する。例えば、位相器5−q−kは位相器5−i−k、周波数シフタ6−q−kは周波数シフタ6−i−k、加算器7−qは加算器7−iのように書き換えることができる。以降で説明する他のブロックについても同様にqがカウンタiに対応する。
ステップS105において、カウンタiが1ではない場合、ステップS106の処理に進み、カウンタiが1である場合、ステップS107の処理に進む。
ステップS106において、位相器5−i−kは、分割フィルタ4−kのそれぞれの出力信号に予め決められた位相を加算する。
ステップS107において、周波数シフタ6−i−kは、分割フィルタ4−iまたは位相器5−i−kが出力するそれぞれのサブスペクトラムを周波数軸上の予め決められた帯域にシフトする。
ステップS108において、加算器7−iは、周波数シフタ6−i−kが出力する1からNDまでのND個のサブスペクトラムを加算する。
ステップS109において、PAPR算出器9−iは、IDFT8−iにより周波数領域の信号から時間領域の信号に変換された加算器7−iの出力信号のPAPRを算出する。なお、算出したPAPRは、最小PAPR選択器10が比較するまで保持される。
ステップS110において、カウンタiがCではない場合、ステップS111の処理に進み、カウンタiがCである場合、ステップS112の処理に進む。
ステップS111において、カウンタiを1増加させてステップS105の処理に戻り、次の組の位相系列に対して同様の処理を実行する。このようにして、位相系列の個数分だけ同様の処理を行う。
ステップS112において、最小PAPR選択器10は、カウンタiが1からCまでのそれぞれについて算出したPAPRを比較して、PAPRが最小値の組の信号を送信する。例えば、最小PAPR選択器10は、カウンタiが3のPAPRが最小である場合、加算器7−3の周波数領域の出力信号をIDFT8−3で時間領域の信号に変換された信号を送信する。
このようにして、本実施形態に係る送信装置50は、受信装置60との間で共有する有限個の位相を組み合わせた互いに異なる複数の位相系列のうちPAPRが最小となる位相系列の位相がサブスペクトラムに加算された信号を送信する。
(受信処理)
図8は、本実施形態における受信処理の一例を示す。なお、図8の処理は、図4に示した受信装置60により実行される。
ステップS201において、時間領域の受信信号はDFT11により周波数領域信号に変換され、ND個に分岐された信号がND個の抽出フィルタ12−kにそれぞれ入力される。そして、抽出フィルタ12−kは、DFT11の出力信号から送信装置50で分散配置されたサブスペクトラムを抽出する。
ステップS202において、周波数シフタ13−kは、抽出フィルタ12−1〜12−NDが出力する各サブスペクトラムを、送信装置50の周波数シフタ6−1〜6−NDで周波数シフトする前の帯域へシフトする。
ステップS203において、位相推定器14−kは、周波数シフタ13−1〜13−NDが出力するサブスペクトラムのうち隣接するサブスペクトラムの遷移域で相関を計算し、位相差を推定する。
ステップS204において、位相補正器15−kは、送信装置50で加算されたm通りの位相の中で、位相推定器14−kが出力する推定位相差に最も近い位相を選択して推定位相差を補正する。
ステップS205において、位相器16−kは、位相補正器15−kが出力する位相を周波数シフタ13−kが出力するサブスペクトルの信号に加算して位相を補償する。
ステップS206において、加算器17は、周波数シフタ13−1および位相器16−2〜16−NDのそれぞれの出力信号を加算し、送信装置50で複数のサブスペクトラムに分割する前の変調信号に戻す。
ステップS207において、IDFT18により時間領域の信号に変換された加算器17の出力する変調信号は、復調器19により受信データに復調される。
このようにして、本実施形態に係る受信装置60は、分散配置前の帯域に戻したサブスペクトラムに対して、隣接するサブスペクトラムの遷移域で位相差を推定し、送信装置50との間で共有するm通りの位相の中から推定位相値に最も近い位相を選択して推定位相値を補正する。そして、受信装置60は、補正した推定位相値で各サブスペクトラムの位相を補償した後、全サブスペクトラムの和を算出し、受信データを復調する処理を行う。
(変形例について)
上記実施形態で説明した送信装置50および受信装置60の構成は一例であり、様々な変形例が考えられ、変形例においても同様の効果を得ることが可能である。
例えば、上記実施形態の図1に示した送信装置50では、周波数シフタ6を位相器5と加算器7との間に配置したが、周波数シフタ6を分割フィルタ4と位相器5との間に配置してもよい。この場合、周波数シフタ6がサブスペクトラムを目的の帯域に分散配置し、位相器5は、分散配置した各サブスペクトラムに位相を加算する。
また、上記実施形態では、送信装置50の位相器5で加算するm通りの位相の情報は、送信装置50と受信装置60との間で予め共有されているものとしたが、通信開始時に送信装置50がm通りの位相の情報やm通りの位相を生成するパラメータや式の情報を受信装置60に送信するようにしてもよい。或いは、予め決められた固定の位相値の組み合わせを規格化しておき、送信装置50および受信装置60に予め実装しておいてもよい。または、受信装置60がm通りの位相を受信信号から推定するようにしてもよい。例えば、受信装置60は、位相推定値を統計処理する方法などにより、受信信号からm通りの位相を推定することができる。或いは、送信開始前に送信装置50がトレーニング信号を送信するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、受信装置60において、周波数シフタ13を抽出フィルタ12と位相推定器14の間に配置したが、位相器16と加算器17の間に配置してもよい。この場合、受信装置60は、送信装置50で加算された位相差の補償後に周波数シフトを行う。
以上、説明したように、本発明に係る通信システム、通信装置および通信方法は、受信装置60における位相の推定精度を向上し、低S/N環境下や、サブスペクトラムの遷移域に存在する離散化された信号成分の数pの不足などにより劣化する受信信号のBER特性を向上することができる。
なお、周波数選択性の位相変動を有する伝搬路を介して通信する場合であれば、上記の実施形態で説明した方法は適用可能である。つまり、伝搬路で生じる周波数選択性の位相変動を推定するチャネル推定部および位相変動を補償するチャネル補正部を受信装置内に設け、送信側と受信側とで送信信号の位相または位相を求めるパラメータや数式などを共有することにより、受信信号の伝搬路での位相変動を推定および補償することが容易となる。