以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。本実施例の中には複数の発明が含まれている。本実施例では、複数の発明を低圧鋳造装置に適用した例を説明する。低圧鋳造装置は、溶融金属を比較的低い圧力(0.5atm前後)で鋳型(金型)の中に充填し、成型を行う装置である。本発明は、低圧鋳造装置以外の装置にも、適用可能である。例えば、鋳型に溶融金属を500乃至1000atmの圧力で圧入して成形を行うダイカスト装置にも適用可能である。
図1及び図2を参照して、本発明を適用した低圧鋳造装置の一実施例の構成を説明する。図1は、本発明を適用した低圧鋳造装置の一実施例に係る正面図であり、一部を断面で示す図である。図2は、本発明を適用した低圧鋳造装置の一実施例に係る側面図であり、一部を断面で示す図である。
低圧鋳造装置100は鋳造部200と溶融金属給湯部300とを備える。
鋳造部200は、下型201aと上型201bとを有する鋳型201と、上下方向に伸縮するアクチュエータ202とを備える。
鋳型201の下型201aは台板203の上面に載置され、台板203に固定されている。上型201bは連結部材204によりアクチュエータ202の先端部に連結されている。下型201a及び上型201bには両者に形成された窪みによりキャビティ201cが形成されている。また、鋳型201には押しピンユニット205が設けられている。押しピンユニット205には一つ又は複数の押しピン205aが設けられている。押しピンユニット205は上型201bに対して上下方向にスライド可能に取り付けられている。下型201aと上型201bとが組み合わされてキャビティ201cが形成された状態では、押しピンユニット205の支持部205bの下端部が下型201aに当接し、押しピン205aはその先端がキャビティ201c内に突出しない位置で、押しピンユニット205に支持されている。
アクチュエータ202は台板206の上面に載置され、下端部が台板206に固定されている。アクチュエータ202は直動アクチュエータであり、伸縮することにより、上端部の位置が上下方向(高さ方向)に移動する。アクチュエータ202の上端部は連結部材204に連結されている。
連結部材204は、上部連結板204aと、連結支柱204bと、下部連結板204cとで構成される。連結支柱204bは上部連結板204aから下方に向かって延設されている。下部連結板204cは連結支柱204bの下端部に取り付けられている。鋳型201の上型201bは下部連結板204cに固定されている。アクチュエータ202が駆動されてその先端部が上方に移動することにより、上型201bは連結部材204により持ち上げられて下型201aから分離し、上方に移動する。
アクチュエータ202が載置される台板206は、複数の支柱207により、台板203の上側に支持されている。支柱207は床面Fから台板206の取り付け部まで延設されている。支柱207の中間部にストッパ207aが設けられている。台板203は、支柱207に設けられたストッパ207aよりも上側に配置されており、支柱207の長手方向(延設方向)に沿ってスライド可能な状態で支柱207に連結されている。すなわち、台板203は上下方向にスライド可能なスライド板で構成される。ストッパ207aは台板203のスライド可能な下方範囲を規制する。支柱207のストッパ207aから上側の部分は台板203のスライドガイドを構成する。
台板206の下面側には、押しピンユニット205が当接する当接部材208が設けられている。押しピンユニット205は鋳造品を上型201bから外すためのユニットである。上型201bがアクチュエータ202により持ち上げられると、押しピンユニット205の上端部が当接部材208の下面に当接する。この状態からさらに上型201bがアクチュエータ202により持ち上げられると、押しピンユニット205の押しピン205aの下端部が上型201bから突出し、鋳造品を上型201bから押し出す。
溶融金属給湯部300は、溶融金属を溜める溶融金属槽本体310と、溶融金属槽本体310から溶融金属を吸い上げる電磁ポンプ320と、アルミ合金のインゴットを溶解する電気炉340とを備えている。本実施例の低圧鋳造装置100は溶融金属としてアルミ合金を使用する装置を対象としている。このため、溶融金属槽本体310、電磁ポンプ320及び電気炉340においては、溶解したアルミ合金に触れる部分及びその近傍に、600℃を超える高温に対する耐熱性が要求される。
溶融金属槽本体310は溶融金属301の貯留槽(溶融金属槽)311を有する。電磁ポンプ320及び電気炉340は貯留槽311の内側に配置されている。
電磁ポンプ320は、溶融金属301の流路となるダクト321と、ダクト321の外周側に巻回されたコイル322とを有する。電磁ポンプ320は少なくとも下端部が溶融金属301に浸漬される浸漬型の電磁ポンプであり、ダクト321の下端部(吸い込み口)321aが貯留槽311の底面311aと対向している。ダクト321はSi3N4で製造されている。電磁ポンプ320は、コイル322に三相交流電流を通電することにより発生する電磁力を利用して溶融金属を吸い上げる。
ダクト321の上端部の外周には溶融金属301の液面を検知するレベル計323が配設されている。レベル計323は励磁コイル(誘導コイル)と検出コイルとを有する誘導式のレベル計で構成されている。レベル計323が検出する液面の高さを所定の範囲に維持しておき、鋳造時に一定量の溶融金属301をキャビティ201cに給湯する。誘導式レベル計では、励磁コイルと検出コイルとの構成において、種々の形態のものがある。本実施例では、誘導式レベル計はいずれの形態であってもよい。
ダクト321の上端にはベルマウス324が設けられている。ベルマウス324には、下端側から上端側に向かって縮径するベルマウスが形成されている。ベルマウス324の外周部には、ヒータ325が設けられており、溶融金属301の凝固を防止する。
ベルマウス324に形成されたベルマウスは、ダクト321が構成する溶融金属の給湯通路と、下型201aに形成された連通孔201dとを連通するように設けられている。連通孔201dは、下型201aを貫通しており、キャビティ201cと下型201aの外部とを連通するように形成されている。ダクト321、ベルマウス324及び連通孔201dは、キャビティ201cへの溶融金属の給湯通路を構成する。
電気炉340は溶解坩堝341と複数の電気炉ヒータ342と開閉部材(蓋部)343とを備える。溶解坩堝341には、金属材料収容室341aが形成されている。本実施例では、溶解する金属材料としてアルミ合金のインゴットを用いる。従って、金属材料収容室341aにはアルミ合金のインゴット302を収容する。電気炉340については、後でさらに詳細に説明する。
ここで溶融金属槽310の説明に戻る。溶融金属301の貯留槽311の底面311aは、図1に示すように、電気炉340が配置された側から電磁ポンプ320が配置された側に向かって次第に低くなるように傾斜している。底面311aの傾斜は、溶融金属或いは酸化物を傾斜面に沿って流下させるために形成される。底面311aの水平面に対する傾斜角度θは、3°よりも大きく13°よりも小さい角度に設定される。本実施例では、7°に設定している。θが3°以下の場合は、溶融金属或いは酸化物が傾斜面に沿って流れ下らなくなる。θが13°以上の場合は、流れの下流端で乱れが生じ、流下した酸化物が乱れた流れによって巻き上げられる可能性がある。
傾斜した底面311aの最深部には、凹部311bが形成されている。凹部311bは、電気炉340が配置された側から見て、電磁ポンプ320のダクト321の入り口321aを越えた位置に設けられている。すなわち、凹部311bは、ダクト321に対して、電気炉340とは反対側に配置されている。
凹部311bは、傾斜した底面311aを流れ下った酸化物等を貯留する。傾斜した底面311aに接続される凹部311bの側面は、水平面に対して45°の角度に設定されている。また、凹部311bに接続される貯留槽311の側面311cは、水平面又は鉛直面に対して傾斜した傾斜面として構成される。本実施例では、側面311cの傾斜角度は水平面に対して60°に設定されている。側面311cが傾斜していることにより、凹部311bに溜まった酸化物を側面311cに沿って容易に掻き出すことができる。貯留槽311の側面311cの上部には、酸化物を掻き出すための開閉部材(蓋部)314が設けられている。貯留槽311の上面は蓋体(天井部材)315で覆われており、蓋体(天井部材)315の一部が開閉部材314で構成されている。開閉部材314を開けることで、酸化物の掻き出し用具を貯留槽311の内側に挿入することができる。
側面311cには、ポーラスプラグ312が設けられている。ポーラスプラグ312は、その一面が貯留槽311内に露出するように配設されている。ポーラスプラグ312は直径が50μm程度の気孔を有するセラミック製の部材で、裏面側から圧力をかけたアルゴンガスを供給することにより、貯留槽311内の溶融金属301にアルゴンガスを供給する。このために、ポーラスプラグ312の裏面側にはガス管313が配設され、ポーラスプラグ312にアルゴンガス(Arガス)を供給する。ガス管313は窒化ケイ素(Si3N4)製の部材で構成する。アルゴンガスはポーラスプラグ312を通して貯留槽311内に吹き込まれ、溶融金属301と接触することで、溶融金属301に含まれる水素ガスを取り除く。ポーラスプラグ312は傾斜した側面311cに設けられているため、貯留槽311の中央寄りにアルゴンガスを供給することができると共に、広い範囲にアルゴンガスを噴出させることができる。このため、アルゴンガスのバブリングによる撹拌効果が高まり、有効な溶湯処理を行うことができる。
貯留槽311の上面を覆う蓋体315の下面側(貯留槽311に面する内面側)には、貯留槽311内を加熱するための貯留槽ヒータ316が設けられている。貯留槽ヒータ316は、電磁ポンプ320の位置と電気炉340の位置とを結ぶ方向に対して直交する方向に、貯留槽311を横断するように、配設されている。貯留槽ヒータ316は電気ヒータであり、金属シースの中に発熱体を保持したシースヒータで構成される。貯留槽ヒータ316は貯留槽311に対して着脱自在に配設されたカートリッジ式のヒータ(カートリッジヒータ)である。
貯留槽311の蓋体315の表面側には、図2に示すように、コネクタ317aとセラミックターミナル317bとが配設されている。貯留槽ヒータ316は、コネクタ317aとセラミックターミナル317bとを通じて、電力の供給を受ける。
蓋体315の表面側にはブロワ318が配置され、溶融金属槽310が発生する高熱の影響を受けない位置に操作箱109が設けられている。操作箱109には、低圧鋳造装置100を制御するコントローラが内蔵されている。コントローラはアクチュエータ202や電磁ポンプ320等を制御する。
貯留槽311の底面311aには、防護壁311dが設けられている。ここで、図3を参照して、防護壁311dの構成について説明する。図3は、溶融金属槽310の貯留槽311の底面311aに設けられた防護壁311dの形状を示す側面図である。
防護壁311dは、電気炉340で溶解された溶融金属301が流下する方向において、上流側から下流側に向かって末広がりに形成されている。電磁ポンプ320の吸い込み口321aは、防護壁311dの内側に対向して開口するに配置されている。電気炉340でアルミ合金のインゴットが溶解される際に発生した酸化物は、防護壁311dの外側を底面311aに沿って流下する。
防護壁311dは、貯留槽311の底面311aから立ち上がるように形成された壁部である。防護壁311dは、電磁ポンプ320の吸い込み口321aに対して、電気炉340の側から吸い込み口321aを越える位置まで延設されている。電磁ポンプ320の吸い込み口321aが防護壁311dの内側に対向して開口していることにより、底面311aに沿って流下する酸化物の吸い込みを防止或いは抑制する。
また、使用を開始した初期の段階では貯留槽311の底面311aや周壁311eに含まれていた水分が貯留槽311内に出てくる。この水分が溶融金属と反応して貯留槽311内に酸化物が発生する。このような酸化物の吸い込みを避けるため、電磁ポンプ320の吸い込み口321aは、貯留槽311の底面311aや周壁311eから50mm以上の間隔を設けて配置する。また、防護壁311dの高さは、貯留槽311の底面311aから50mm以上に設定されることが望ましい。
本実施例の低圧鋳造装置100では、溶融金属槽310の下部に台車303が設けられている。すなわち、溶融金属槽310は台車303に載置されている。台車303は、溶融金属槽310の高さを調整するリフト機構と、溶融金属槽310を床面Fに沿って移動する移動機構(車輪)を有する。
本実施例では、電磁ポンプ320は台板103に吊り下げられており、溶融金属槽310から分離可能な状態で配設されている。図4及び図5を参照して、電磁ポンプ320を溶融金属槽310から分離する構成について説明する。図4は、本発明を適用した低圧鋳造装置100において電磁ポンプ320を上方に移動させた状態を示す正面図である。図5は、本発明を適用した低圧鋳造装置100において、電磁ポンプ320を上方に持ち上げ、溶融金属槽310を下方に移動させた状態を示す正面図である。
電磁ポンプ320は、吊設部110により、台板203に吊設されている。吊設部110は、台板側支持部材110aと、電磁ポンプ側支持部材110cと、コイルばね110bとで構成される。コイルばね110bは、台板側支持部材110aの下端部と電磁ポンプ側支持部材110cの上端部との間に設けられており、電磁ポンプ側支持部材110cの上端部に上向きの力を作用させている。これにより、電磁ポンプ320は台板203に対して上下方向に変位可能な状態で支持されている。すなわち、吊設部110は電磁ポンプ320を緩衝可能な状態で台板203に対して支持している。
電磁ポンプ320を溶融金属槽310から分離する場合は、下型201aと上型201bとを固定具209で固定(連結)する。下型201aと上型201bとを固定した状態でアクチュエータ202を駆動すると、連結部材204に連結された上型201bと上型201bに固定された下型201aとが持ち上げられる。下型201aは台板203に固定されているため、台板203も下型201aと一緒に持ち上げられる。電磁ポンプ320は、吊設部110により台板203に支持されているため、上型201b、下型201a及び台板203と共に持ち上げられる。
図4に示すように、アクチュエータ202が上型201b、下型201a、台板203及び電磁ポンプ320を持ち上げると、押しピンユニット205の上端部が当接部材208の下面に当接する。このとき、下型201aと上型201bとが固定されているため、押しピンユニット205は支持部205bの下端部が下型201aに当接しており、下型201a及び上型201bに対して相対変位することができない。このため、上型201b、下型201a、台板203及び電磁ポンプ320の上昇位置は、押しピンユニット205の上端部が当接部材208の下面に当接する位置で制限される。図4は、上型201b、下型201a、台板203及び電磁ポンプ320が低圧鋳造装置100の稼働状態における設定高さからh1だけ持ち上げられた状態を示している。
次に、台車303のリフト機構を用いて、図4に示す状態から、溶融金属槽310をh2だけ下降させる。図5は、溶融金属槽310をh2だけ下降させた状態を示す。この状態で、電磁ポンプ320の下端部は蓋体315の上面から完全に露出している。台車303の移動機構を利用して溶融金属槽310を移動することにより、溶融金属槽310を他の場所に移動することができる。
電磁ポンプ320を溶融金属槽310に組み付ける場合は、溶融金属槽310を電磁ポンプ320の下に移動し、アクチュエータ202を駆動して電磁ポンプ320を下降させる。次に、台車303のリフト機構で溶融金属槽310を上昇させる。この組み付け作業においては、溶融金属槽310の蓋体315の上面が電磁ポンプ320の上部に設けられたフランジ部326の下面に軽く当接する位置で、高さ方向の位置合わせを行う。蓋体315の上面とフランジ部326の下面とは当接している必要はない。しかし、蓋体315の上面とフランジ部326の下面とを当接させることにより、溶融金属槽310からの熱の流出を防止又は抑制することができる。
本実施例では、溶融金属槽310を他の場所に移動することにより、溶融金属槽310のメンテナンスが行い易くなる。また、電磁ポンプ320のメンテナンスや交換も容易に行うことができる。
次に、図6乃至図8を参照して、電気炉340の構成を詳細に説明する。図6は、図1の低圧鋳造装置に用いられる溶解坩堝341の横断面図である。図7は、図6に示す溶解坩堝341のVII−VII矢指断面図である。図8は、図6に示す溶解坩堝341のVIII−VIII矢指図である。
電気炉340は、電気炉340の本体となる溶解坩堝341と、複数の電気炉ヒータ342と、開閉部材343とを備える。さらに電気炉340は、貯留槽311の外部に開口する開口341cを有すると共に、開口341cを開閉する開閉部材343を有する。開閉部材343は複数の電気炉ヒータ342の内周側に構成されている。開閉部材343の外周側には断熱材で形成されたリング状部材344が取り付けられている。
リング状部材344の上面には内側断熱材345が配設されている。内側断熱材345の上面側及び外周側、さらにリング状部材344の外周上部を覆うように外側断熱材346を配設している。開閉部材343は、溶解坩堝341側に配設された下側断熱材347と、下側断熱材347の上側に配設された上側断熱材348とで構成される。内側断熱材345と下側断熱材347とは同じ断熱材で構成されている。また、外側断熱材346と上側断熱材348とは同じ断熱材で構成されている。
溶解坩堝341は窒化ホウ素(BN)又は黒鉛で製造される。溶解坩堝341は中心部に形成された金属材料収容室341aを有する。金属材料収容室341aは、中心軸方向に沿って、溶解坩堝341の上端部から下端側に向かって形成されている。
溶解坩堝341は、金属材料収容室341aの外周部に、金属材料収容室341aを囲むように形成された有底の孔342aを複数有する。孔342aには電気炉ヒータ342が配置される。本実施例では、18本の電気炉ヒータ342を周方向に均等な間隔で配置している。電気炉ヒータ342は電気ヒータであり、金属シースの中に発熱体を保持したシースヒータで構成される。電気炉ヒータ342は溶解坩堝341に対して着脱自在に配設されたカートリッジ式のヒータ(カートリッジヒータ)である。
また、金属材料収容室341aの下端部には、外部に連通する貫通孔341bが形成されている。電気炉340が溶融金属槽310に組み付けられた状態では、貫通孔341bは金属材料収容室341aと貯留槽311とを連通させる。金属材料収容室341aはアルミ合金のインゴット302を収容する。このため、貫通孔341bの直径は、アルミ合金のインゴット302が抜け落ちない程度の大きさに形成されている。
開閉部材343には、取手343aが設けられている。開閉部材343は溶解坩堝341に対して取り外し可能な状態で配設されている。開閉部材343を溶解坩堝341から取り外して、金属材料収容室341aにアルミ合金のインゴット302を供給することができる。
本実施例において、溶融金属槽310の上面を覆う蓋体315は、貯留槽311側に設けられた断熱材315aと、断熱材315aの表面側に設けられた外郭部材315bとで構成される。蓋体315には、電気炉340を配置する開口部315cが形成されている。
電気炉340は、溶融金属槽310に対して、溶解坩堝341、リング状部材344、内側断熱材345、外側断熱材346、下側断熱材347及び上側断熱材348を一体で着脱できるように、組み付けられている。すなわち、電気炉340は溶融金属槽310に対して着脱自在に組み付けられている。このため、電気炉340を溶融金属槽310が取り外すことによって、電気炉340のメンテナンスを容易に行うことができる。或いは、電気炉340に不具合が生じた場合に、電気炉340を他の電気炉に交換することによって鋳造を継続することができる。
次に、本実施例の低圧鋳造装置100による鋳造工程について説明する。
貯留槽311に溶融金属301が入っていない状態から、電気炉340にアルミ合金のインゴット302を供給し、電気炉ヒータ342に通電してインゴット302を加熱する。溶融したインゴットは溶解坩堝341の下部に形成された貫通孔341bから貯留槽311に流下する。この時、貯留槽311は貯留槽ヒータ316によってアルミ合金の融点以上の温度に加熱されている。
本実施例では、電気炉340が貯留槽ヒータ316内に配設されているため、電気炉340に設けた電気炉ヒータ342と貯留槽311内を加熱する貯留槽ヒータ316とが電気炉340内のインゴット302と貯留槽311内の溶融金属301とを相互に加熱する。このため、電気炉ヒータ342と貯留槽ヒータ316とが発生する熱を有効利用して、インゴット302及び溶融金属301を効率よく加熱することができる。
電気炉ヒータ342で溶解した溶融金属301は、貯留槽311の底面311aを流下して、凹部311bに溜まる。このとき、アルミ合金が溶解する過程で生じた酸化物も凹部311bに溜まる。溶融金属301は、液面が所定の高さになるまで溜められる。
溶融金属槽本体310は、使用を開始した初期段階において、水分が貯留槽311の壁面から貯留槽311内に出てくる。水分は溶融金属と反応して酸化物と水素とが発生する。これにより、溶融金属301には多くの水素ガスが含まれることになる。このため、使用を開始した初期段階においては、ガス管313からポーラスプラグ312にアルゴンガスを供給し、溶融金属301から水素ガスを除去する。水分の貯留槽311内への流出が収まった後は、ポーラスプラグ312へのアルゴンガスの供給は停止してよい。
貯留槽311内において溶融金属301が所定の液面高さまで溜められると、鋳造が開始される。鋳造工程においては、レベル計323が検出する溶融金属301の液面の高さを所定の範囲に維持しておき、鋳造時に一定量の溶融金属301をキャビティ201cに給湯する。このとき、鋳型201は、下型201aの上に上型201bが重ね合わされ、組み立てられた状態である。
溶融金属301の液面の高さの維持とキャビティ201c内への充填とは、電磁ポンプ320を駆動することにより実行される。鋳造工程を開始するためには、電磁ポンプ320による鋳型201への給湯が必要である。電磁ポンプ320を確実に動作させるためには、溶融金属301の液面の高さは、ダクト321の外周において下側に配設された2つのコイル322を越える高さであることが望ましい。溶融金属給湯部300には、貯留槽311の液面を検知する、図示しないレベル計が設けられている。
鋳造物が成型されると、アクチュエータ202を駆動して上型201bを上昇させる。上型201bを上昇させると、上型201bが下型201aから離れ、鋳型201のキャビティ201cが開く。さらに上型201bを上昇させると、押しピンユニット205の上端部が当接部材208の下面に当接し、押しピンユニット205が上型201bに対して押し下げられる。これにより、押しピン205aの下端部が上型201bから突出する。押しピン205aの突出により、鋳造品は上型201bから押し出される。上型201bから押し出された鋳造品は、図示しない受け部材で受ける。1回の鋳造工程が完了すると、再び下型201aの上に上型201bを重ね合わせ、鋳型201を組み立て、成型を繰り返す。
成型を繰り返すことにより、貯留槽311内の溶融金属301のレベルが下がる。溶融金属301の減少量に応じて、溶解坩堝341の金属材料収容室341aにインゴット302を少しずつ供給(1個から2個)する。鋳造を開始する時の溶融金属301の液面高さは、金属材料収容室341aに収容する1個から2個のインゴット302の高さよりも高い。このため、貯留槽311内の溶融金属301は、貫通孔341bを通じて金属材料収容室341aに入り込み、インゴット302に触れる。インゴット302は電気炉ヒータ342によって加熱されるだけでなく、溶融金属301からも加熱される。これにより、インゴット302を速やかに溶解し、貯留槽311内に供給することができる。また、貯留槽311内に溶融金属301が少しずつ、静かに供給されることにより、貯留槽311が傷むのを防止又は抑制することができる。
本実施例では、貯留槽311内に設けた電気炉340でアルミ合金のインゴット302を溶解する。このため、外部の溶解炉で溶解した溶融金属をラドル(柄杓)で貯留槽に供給する構成に比べ、酸化物が発生しにくい。本実施例においては、わずかに発生する酸化物を、貯留槽311の傾斜した底面311aに沿って流下させ、凹部311bに溜める。凹部311bに溜まった酸化物は、開閉部材314を開くことで蓋体315に形成された開口から掻き出し用具を貯留槽311内に挿入し、掻き出す。
また、本実施例では、電磁ポンプ320が底面311aに沿って流下する酸化物を吸い込まないようにするために、ダクト321の吸い込み口321aの周囲に防護壁311dを設けている。これにより、鋳型201に給湯する溶融金属301に酸化物が混入するのを防ぎ、高品質な鋳造品を成型することができる。
本実施例では、電磁ポンプ320、電気炉340及び貯留槽ヒータ316が、溶融金属槽本体310(貯留槽311)に対して着脱自在に構成されている。従って、電磁ポンプ320、電気炉340、貯留槽ヒータ316及び溶融金属槽本体310のメンテナンスが容易である。また、電磁ポンプ320、電気炉340、貯留槽ヒータ316及び溶融金属槽本体310を、個別に代替品と交換することができるため、低圧鋳造装置100における稼働率の低下を防止又は抑制することができる。また、電気炉ヒータ342は溶解坩堝341に対して着脱自在に構成されている。このため、電気炉ヒータ342を容易に交換することができ、電気炉340のメンテナンスが容易である。
本実施例では、鋳造部200は鋳造装置によって構成され、溶融金属給湯部300は溶融金属給湯装置によって構成される。鋳造部200を構成する鋳造装置及び溶融金属給湯部300を構成する溶融金属給湯装置はそれぞれを単独で利用することも可能である。
次に、電磁ポンプ320の構成について説明する。
図9は、図1の低圧鋳造装置100に用いられる電磁ポンプ320の横断面図である。なお、本実施例の溶融金属給湯装置用の電磁ポンプは、溶融金属に浸漬されて溶融金属を吸い上げる浸漬型電磁ポンプである。
電磁ポンプ320の筐体320aの中心部にはダクト321が配設されている。ダクト321の外周部には複数のコイル322が配設されている。本実施例では、コイルに三相交流電流を供給する。このため、ダクト321の軸方向に沿って3の倍数個のコイル322が配置される。ダクト321とコイル322との間にヒータ329が設けられている。ヒータ329は、ダクト321の外周面に接触するようにして、ダクト321に巻回されている。ダクト321の内側には、コア328を収容した保護管327が配設されている。
ダクト321の上部にはフランジ321bが設けられている。フランジ321bを押圧部材319で下方に押圧することにより、ダクト321の下端部がパッキン331を介して筐体320aの内面320bに押し付けられ、ダクト321が筐体320aに固定される。
押圧部材319は、フランジ321bに当接する押圧板319aと、筐体320aの上部に設けられたフランジ部326に固定された支持部材319bと、一端が支持部材319bに支持され、他端が押圧板319aに支持されたコイルばね319cとで構成される。コイルばね319cは押圧板319aを下方に付勢し、押圧板319aはダクト321に対して下方に向かう力を作用させる。
図10は、図9の電磁ポンプ320のダクト321を構成する部品を共通の軸線上に分解して示す分解立体図である。
コア328の上端にはクッション材333bを接着し、コア328の下端部にはクッション材333aが接着されている。コア328は、保護管327の下端側から保護管327の内側に挿入され、保護管327の下端部にねじ部材332が螺合される。保護管327とねじ部材332との間にはパッキン330を介在させ、溶融金属301が保護管327の内側に浸入するのを防ぐ。ねじ部材332はクッション材333a及びクッション材333bを下端側から押圧し、保護管327との間でクッション材333a、クッション材333b及びコア328を挟持する。
コア328を収容した保護管327は、ダクト321の下端側からダクト321の内側に挿入される。このとき、保護管327の下端外周部に形成された突状部327aがダクト321の下端内周面に形成された段付き部321aに当接することで、保護管327はダクト321に対して軸方向に位置決めされる。保護管327の突状部327aは、保護管327の外周面から径方向に突出するように形成されている。またダクト321の段付き部321aは、下端部の内周面に形成された拡径部によって構成される。
図11は、図9の電磁ポンプにおけるダクトの吸い込み口近傍を拡大して示す拡大断面図である。
ダクト321は、筐体320aの上端側から筐体320aの内側に収容される。このとき、ダクト321の下端部と筐体320aとの間にはパッキン331を介在させ、溶融金属301が電磁ポンプ320の内側に浸入するのを防ぐ。
ダクト321が押圧部材319により下方に向けて押圧されると、ダクト321の段付き部321aが保護管327の突状部327aを下方に向けて押圧する。これにより、保護管327の下端部はパッキン331を介して筐体320aの内面320bに押し付けられ、保護管327がダクト321の内側で固定される。すなわち、突状部327aを段付き部321aに当接させた状態で、ダクト321及び保護管327を電磁ポンプ320の筐体320aに向けて押し付けることにより、ダクト321及び保護管327は筐体320aに支持される。なお、保護管327の下端部はパッキン331に当接する必要なく、内面320bに直接当接する構成であってもよい。
保護管327の下端部とダクト321の下端部とがパッキン331を介して押し付けられる筐体320aの内面320bは、電磁ポンプ320の筐体320aの下端面(底面)に形成された吸い込み口321aの外周部の内面(筐体面)である。
図12は、図11に示す電磁ポンプ320のダクト321のXII−XII矢指断面図である。
本実施例では、突状部327aを保護管327の外周面に3個形成している。3個の突状部327aは周方向に間隔を空けて設けられている。本実施例では3個の突状部327aは周方向に等間隔に配置されている。この場合、突状部327aが配置される角度間隔は120°である。
保護管327はダクト321の中心部に傾きなく配設される必要がある。保護管327がダクト321の内側で傾いた状態になると、保護管327の内側に収容されたコア328の位置がコイル322の中心からずれる。すると、溶融金属301に作用する電磁力が不均一になり、電磁ポンプ320の性能低下につながる。
また、保護管327の傾きにより、保護管327の外周面とダクト321の内周面との間に形成される溶融金属の流路の幅が周方向において不均一になる。特に保護管327の上端部はダクト321の内周面に接触部を構成するか、ダクト321の内周面との間に狭小幅の流路部を形成することになる。この場合、接触部又は狭小幅の流路部は、貯留槽311に溜められた溶融金属301の外側に位置する。従って特許文献1と同様に、接触部又は狭小幅の流路部に酸化物が詰まり易くなる。
本実施例では、突状部327aを3個設けていることにより、ダクト321内で保護管327が傾くのを防止することができる。また、突状部327aを4個以上設ける場合と比べて、ダクト321内に形成される溶融金属301の流路の流路抵抗を小さくすることができる。すなわち本実施例では、突状部327aを3個設けていることにより、保護管327の傾きを防止した上で、溶融金属301の流路抵抗を最小にすることができる。
本実施例では、突状部327aが保護管327の支持部を構成している。突状部(支持部)327aは、保護管327の下端部に構成されており、貯留槽311に溜められた溶融金属301に浸漬されている。このため、電磁ポンプ320を駆動して溶融金属301を吸い上げる際に、酸化物が保護管327の突状部(支持部)327aに詰まり難くなる。これにより、電磁ポンプ320のメンテナンス回数を減らすことができ、低圧鋳造装置100の稼働率を高めることができる。
電磁ポンプ320が溶融金属301を吸い上げるためには、溶融金属301の液面は3の倍数個のコイル322のうち下から2つ目のよりも上側にあることが好ましい。従って、突状部(支持部)327aは下から2つ目のコイル322の上面よりも下側に配置されることが好ましい。電磁ポンプ320は、溶融金属301の液面が最も下側に配置されたコイル322の下端から1.5コイル分上側にあれば、溶融金属301を吸い上げることができる。従って、突状部(支持部)327aは、最も下側に配置されたコイル322の下端から1.5コイル分の高さ位置よりも下側に配置されることが、より好ましい。