本発明の1つの実施形態を図1〜14にしたがって説明する。図1に示すように丸鋸刃1は、円盤状の台金2と、台金2の外周に装着された複数のチップ3を有する。丸鋸刃1の外径は、例えば250mm〜460mmである。台金2は、例えば鋼製であって、厚さが例えば0.8mm〜2.5mmである。台金2は、円盤状の本体部2aと、本体部2aの外周から径方向外方に突出する刃体2bを一体に有する。
刃体2bは、図1,2に示すように本体部2aの外周に所定間隔で形成される。刃体2bの間には歯室2dが形成される。歯室2dは、径方向外方から中心に向けて幅が狭くなり、歯底2eを有する。刃体2bの一側部には、側方および径方向外方に開口する凹部2cが形成され、凹部2cにチップ3が取付けられる。
台金2には図1に示すように例えば40個〜100個のチップ3がろう付けなどにより取付けられる。チップ3は、台金2に等間隔で設けられ、例えば構成の異なるチップ4とチップ5が交互に設けられる。チップ3は、超硬合金製で、例えば炭化タングステンと結合剤であるコバルトを混合し、焼結することで得られる。チップ3は、TiN、TiC、TiCNなどのサーメットでも良い。チップ3の表面には、耐摩耗性を向上させるコーティングを施しても良い。
図2〜5に示すようにチップ3(4,5)は、略直方体であって、径方向外方に向く逃げ面4a,5aを有する。逃げ面4a,5aは、長方形であって、台金2の厚みよりも広い長辺を有する。長辺の1つが切刃4dである。切刃4dの長さ(刃厚)は、例えば1mm〜10mmである。切刃4dにおける周方向接線と逃げ面4a,5aの間の逃げ角3bは、例えば5°〜15°である。逃げ面4a,5aは、刃体2bの先端から径方向外方に延出し、刃体2bよりも径方向外方に突出する。逃げ面4a,5aの先端に切刃4d,5dが位置する。
図2に示すようにチップ3は、切刃4d,5dから台金2の中心に向けて延出するすくい面4e,5eを有する。すくい面4e,5eの台金2の直径線に対するすくい角3aは、0°〜−30°である。すくい面4e,5eよりも径方向内側の所定領域において凹部4p,5pを有する。凹部4p,5pは、側面視においてすくい面4e,5eからチップ4,5の中央に向けて凹んでいる。
図2〜5に示すようにチップ3は、逃げ面4a,5aの厚み方向両端に側面4b,5bを有する。側面4b,5bは、逃げ面4a,5aに対してほぼ直交し、台金2の表面とほぼ平行である。逃げ面4a,5aと側面4b,5bの間には、面取り4c,5cが形成される。面取り4c,5cは、逃げ面4a,5aに対して面取り角度θ(図5参照)を有する。チップ4,5は、それぞれ一対の面取り4c,5cを有し、一対の面取り4c,5cは、同じ角度になるように設定される。
丸鋸刃1は、被削材を切断する際に摩擦熱を生じるため、切断を繰り返すことでチップ3に熱が繰返し加わる。そのため角度が小さい角部は、熱が原因で欠ける場合がある(熱クラック)。これに対して逃げ面4a,5aの端縁には、面取り4c,5cが形成される。そのため逃げ面4a,5aと側面4b,5bの間に形成される角部の角度が面取り4c,5cによって大きくなる。そのため逃げ面4a,5aと側面4b,5bの間に熱クラックが発生することが面取り4c,5cによって少なくなる。
面取り4c,5cは、図3に示すように平面状であって、逃げ面4a,5aの端縁において全長に渡って形成される。面取り4c,5cの厚み方向幅は、例えば0.05mm〜0.1mmであって、全長に渡って略同じ幅を有する。
図3〜5に示すようにチップ4,5の逃げ面4a,5aには、切屑を分断するための溝4f,5fが形成される。溝4f,5fは、逃げ面4a,5aの一端である切刃4d,5dから逃げ面4a,5aの他端まで延出する。溝4f,5fは、正面視でV字条であって、逃げ面4a,5aに対して傾斜する一対の傾斜面4j,4kを有する。溝4f,5fは、傾斜面4j,4kの交差する領域に底4mを有する。溝4f,5fの幅は、例えば0.1〜0.5mmであり、深さは、例えば0.1〜0.3mmである。
溝4fは、図4,5に示すように切刃4d,5dにおいて溝端4h,4iを有する。溝端4h,4iの傾斜面は、直線状であって、逃げ面4aに対して溝端角度φ(図5参照)を有する。溝端4h,4iの溝端角度φは、それぞれ同じ角度になるように設定される。傾斜面4j,4kも逃げ面4aに対して同じ角度を有する。溝4fは、切刃4dから周接線方向に延出し、切刃4dから離れるほど溝深さが浅くなる。
溝端角度φは、40°以上かつ60°以下であることが好ましい。溝端角度φが60°を越える場合は、溝4fと逃げ面4aの間に形成される角部の角度が小さくなる。そのため溝端角度φが60°を越える場合には、熱クラック等によって欠けやすくなる。したがって耐久性の観点から溝端角度φは、60°以下であることが好ましい。溝端角度φが40°未満の場合は、溝4fの幅が一定であるとすると、溝4fが浅くなる。そのため溝4fの底が被削材に接し、溝4fの底も被削材を切断してしまう。これにより切屑が溝4fにおいて分離されなくなる。したがって切屑を分離する観点から溝端角度φは、40°以上であることが好ましい。
チップ4,5は、図3に示すように溝4f,5fを有する。溝4fは、チップ4の厚み方向中心線2gから外れており、中心線2gよりもチップ4の厚み方向の第1端に寄っている。一方、チップ5の溝5fは、中心線2gよりもチップ5の厚み方向の第2端に寄っている。チップ4,5は、台金2の外周縁に交互に配設される。
図1に示すように台金2は、中心に取付穴2fを有する。取付穴2fに丸鋸盤の回転軸が挿入される。丸鋸盤は、例えば各種金属を切断するために用いられ、例えば被削材を常温で切断する際に用いられる。丸鋸盤は、被削材を切断する場合、丸鋸刃1をA方向に回転させつつB方向に進行させる。図6に示すように丸鋸刃1がB方向(上方)に移動しつつ、チップ4,5が交互に被削材に到達する。
チップ4は、図4,5に示すように逃げ面4aの厚み方向の一端に第1面取り4c1を有し、他端に第2面取り4c2を有する。第1面取り4c1と第2面取り4c2は、厚み方向中心線2gに対して対称の形状を有する。溝4fは、厚み方向中心線2gよりも第1面取り4c1に近い領域に位置する。溝4fは、底4mを中心として対称形状を有する。
図3に示すように台金2の外周には、チップ4とチップ5が交互に装着される。チップ5は、チップ4に対して厚み方向中心線2gに対して対称形状を有する。したがってチップ4の溝4fとチップ5の溝5fが交互に被削材に向かう。これにより丸鋸刃1は、被削材から厚み方向中心線2gに対して均等の力を受ける。
図7に示すようにチップ4によって被削材から削られた切屑は、溝4f(図6参照)によって切屑6,7に分断される。切屑6,7は、切屑本体6a,7aと面取り対応部6b,7bと溝対応部6d,7dを有する。切屑本体6a,7aは、断面長方形であって、2つのチップ4,5の切刃4d,5dによって形成される。切屑本体6aの下縁中央には、台形状の凸部6fが形成される。凸部6fの側面は、チップ4の前に被削材を切断したチップ5の溝5fによって形成される。凸部6fの先端辺は、該チップ5の前に被削材を切断したチップ4の切刃4dによって形成される。
図7に示すように面取り対応部6b,7bは、平行四辺形であって、2つのチップ4,5の面取り4c,5cによって形成される。溝対応部6d,7dは、三角形であってチップ4の溝4fによって形成される。
図1に示すように丸鋸刃1をA方向に回転させつつB方向に送り、丸鋸刃1によって被削材を切断する。被削材は、例えば棒状であって、所定の長さに切断される。切断された被削材は、鍛造等によって製品として加工される。例えば切断された被削材から冷間鍛造によってギヤ等が形成される。
丸鋸刃1は、被削材を切断することで、対向する2つの切断面を形成し、2つの切断面の間を通過する。丸鋸刃1および切断時に生じる切屑6,7によって切断面に傷が付く場合がある。切断面の傷は、冷間鍛造等を施した製品の表面の粗さにも現れる。例えば切断面の傷に応じてギヤの歯に傷が生じ、傷によって歯の表面粗さが粗くなる。そのためギヤの噛み合いが悪くなり、ギヤの噛み合わせ部分において異音が発生する場合がある。本形態では、切屑6,7の排出方向を制御することで、被削材の切断面が切屑6,7によって傷付けられることを少なくする。
図6,7を参照するように切屑6,7は、被削材から切断される際にチップ4から力を受ける。これにより切屑6,7は、厚み方向(図の左右方向)に所定の角度で排出される。切屑6,7が切断面と平行に、すなわち厚み方向に対して角度を有さずに排出される場合、理論上では切屑6,7が切断面を傷付けない。しかし実際は、諸条件によって切屑6,7が厚み方向に振れて切断面を傷付けるおそれがある。
そこで本発明者は、切屑6,7を切断面とほぼ平行で、かつわずかに内向き(幅中心方向)に排出することを考慮した。しかも切屑6,7が2つの切断面の間を通ることから、切屑6,7が反対側の切断面に到達しないようにも考慮した。すなわち切屑6,7が反対側の切断面に到達して、反対側の切断面を傷付けないようにすることにも配慮した。以下にその構成を説明する。
図7に示すように切屑6は、左右対称の切屑本体6aと左右対称の凸部6fを有する。さらに切屑6は、厚み方向外側に面取り対応部6bを有し、厚み方向中心側に溝対応部6dを有する。したがって切屑6は、面取り対応部6bがチップ4から受ける力と溝対応部6dがチップ4から受ける力の差によって厚み方向に所定の角度を有して排出される。
図7に示すように面取り対応部6bが受ける厚み方向の力F1は、下記の式(1)のように求められる。すなわちF1は、厚さに長さを掛けて面取り対応部6bの面積を求め、かつ力の方向成分を掛けることで得られる。溝対応部6dが受ける厚み方向の力F2は、下記の式(2)のように求められる。すなわちF2は、厚さに長さを掛け、かつ三角形であるために2で割ることで溝対応部6dの面積を求め、かつ力の方向成分を掛けることで得られる。
(式1)F1=Sz×cosθ×C/cosθ×Fsinθ=F・C・Sz・sinθ
(式2)F2=Sz×cosφ×Sz/sinφ/2×Fsinφ=F・Sz2/2・cosφ
Szは、丸鋸刃1の送り量である。詳しくはチップ当たりの送り量である。
θは、面取り4cの逃げ面4aに対する面取り角度である。
φは、溝端4iの逃げ面4aに対する溝端角度である。
Fは、単位面積当たりのチップ4から受ける力である。
発明者は、切屑6の厚み方向に力を受ける度合いとして下記の式(3)で示す切屑ねじれ度Bを定義した。
(式3)切屑ねじれ度B=面取りにおける厚み方向力F1/溝における厚み方向力F2
B=F1/F2=2Cs・cosθ/Sz・cosφ≒2cosθ/cosφ
(Cs≒Sz)
切屑ねじれ度Bが大きいほど切屑6が厚み方向中心側へ向かう角度が大きくなる。切屑ねじれ度Bが1よりも小さい場合には厚み方向外側へ向かうことを意味する。なお式1、式2、式3は、切屑6のみならず、切屑7にも適応され得る。すなわち切屑7の面取り対応部7bが受ける厚み方向の力も式(1)のように求められる。溝対応部7dが受ける厚み方向の力も式(2)のように求められる。さらにチップ4によって被削材から削り出される切屑6,7のみならず、チップ5によって被削材から削り出される切屑にも上記考えが適用され得る。
実験の結果、上記考えを裏付けることができるとともに、2つの切断面のいずれをも傷付けることの少ない条件を見出すことができた。以下に実験結果の一例を記載する。
実験のために各種チップ4,5を有する丸鋸刃1を準備した。丸鋸刃1の外径は285mmであり、台金2の厚さは1.5mmであり、チップ4,5の刃厚は2.0mmであり、刃数は72個である。チップ4,5として図8に示す溝端角度φと面取り角度θを有する各種チップを準備した。被削材としてSCM420(クロムモリブデン鋼)製の直径40mmの丸棒を準備した。加工条件として回転数を130rpm、送り速度Szを0.06mm/刃に設定した。
切削面を目視で確認し、A〜Dにランク分けした。各ランクのサンプルを準備し、各サンプルを図9〜12に示す。図9の切断面は、ランクAであって、きれいな状態である。詳しくは、切断面にはいわゆるナイフマークと言われるチップ3による浅い傷のみが現れており、深い傷が見られない。したがってランクAでは、切屑が切断面を傷付けていない状態であると考えられる。
図10の切断面は、ランクBであって、許容できる状態である。詳しくは切断面には深い傷が少ない。したがって切屑によって切断面がほとんど傷付けられていない状態であると考えられる。図11の切断面は、ランクCであって、許容できない状態である。詳しくは切断面には深い傷が例えば切断面の下領域に部分的に見られる。図12の切断面は、ランクDであって、傷が多い状態である。詳しくは切断面には深い傷が右下から中央における広い範囲で見られる。
図8に示すように溝端角度φが90°で、面取り角度θが30〜45°であるチップ4,5を準備した。溝端角度φが90°であるチップとして溝の形状がU字状であるものを準備した。実験の結果、丸鋸刃1で被削材を切断した際に生じる2面の評価は、それぞれランクDまたはランクCであった。切屑ねじれ度Bは、いずれも無限大になる。そのため切屑は、近接する切断面から大きく離れる角度で排出されると考慮される。そして実験結果から切屑が反対側の切断面に到達して、反対側の切断面を傷付けたと考えられる。
図8に示すように溝端角度φが45°で、面取り角度θが25〜45°であるチップ4,5も準備した。溝端角度φが45°であるチップとして溝の形状が図6に示すV字状であるものを準備した。実験の結果、面取り角度θが45°の場合、丸鋸刃1で被削材を切断した際に生じる2面の評価のうちの1つがランクCであった。面取り角度θが45°の場合、切屑ねじれ度Bは、1より大きい。そのため切屑は近接する切断面から離れる。しかし切屑が近接する切断面から離れる角度が十分でないため、切屑が近接する切断面を傷付けたと思慮される。
図8に示すように溝端角度φが45°で、面取り角度θが25°の場合、2つの切断面のうちの1つがランクCであった。切屑ねじれ度Bは、1より大きいため、切屑は近接する切断面から離れる。しかし切屑が近接する切断面から離れる角度が大きいために、切屑が反対側の切断面を傷付けたと思慮される。
図8に示すように溝端角度φが45°で、面取り角度θが30°以上で40°以下の場合、切断面の2面がいずれもランクAまたはBであった。切屑ねじれ度Bは、1より大きいため、切屑は近接する切断面から離れる。しかも切屑が近接する切断面から離れる角度は比較的小さい。そのため切屑が反対側の切断面に到達し、反対側の切断面を傷付けることも避け得たと思慮される。
図13は、溝端角度φが45°の場合における図8の実験結果を模式的に表した図である。図13に示すように溝端角度φと面取り角度θの大きさの差(φ―θ)が0°よりも大きく、15°以下の場合において、面評価がランクAまたはランクAとBの中間になる。溝端角度φと面取り角度θの大きさの差が0°あるいは15°よりも大きい場合には切断面の面評価がランクCまたはランクDになる。
図14は、式(3)の考えと実験結果が対応することを示す。図14に示すように各ねじれ度Bにおける溝端角度φと面取り角度θの大きさの差(φ―θ)と溝端角度φとの関係を示す。上述するように溝端角度φは、熱耐久性の観点から60°以下であることが好ましい。一方、切屑を分離するために十分に溝深さを得るとの観点から溝端角度φは、40°以上であることが好ましい。実験結果から角度の差は、2つの切断面を傷付けない観点から0°より大きく15°以下であることが好ましい。より好ましくは角度差が5°以上10°以下である。
図14からねじれ度Bが2より大きく、2.5より小さい場合に切断面を傷付け難いことがわかる。ねじれ度Bが2.2以上かつ2.4以下の場合に切断面をより傷付けないことがわかる。したがって切屑が排出される角度を所定範囲内にすることで切断面が切屑によって傷付けられ難いことがわかる。
図1に示すように丸鋸刃1は、台金2とチップ4,5を有する。図2,3に示すようにチップ4,5は、逃げ面4a,5aと第1側面4b1,5b1と第2側面4b2,5b2を有する。逃げ面4a,5aと第1側面4b1,5b1の間には、逃げ面4a,5aに対して面取り角度θ(図7参照)を有する第1面取り4c1,5c1が形成される。逃げ面4a,5aと第2側面4b2,5b2の間には、逃げ面4a,5aに対して面取り角度θ(図7参照)を有する第2面取り4c2,5c2が形成される。逃げ面4a,5aの周方向の一端には、被削材を切断する切刃4d,5dが位置する。
図3に示すように逃げ面4a,5aには、切刃4d,5dから周方向に延出するように溝4f,5fが形成される。図4に示すように溝4fは、切刃4dに位置する第1溝端4hと、切刃4dに位置しかつ第1溝端4hよりも第1面取り4c1から遠くに位置する第2溝端4iを有する。第1溝端4hが逃げ面4aに対して40°以上かつ60°以下の溝端角度φを有する。さらに溝端角度φが面取り角度θよりも大きくかつ溝端角度φと面取り角度θの大きさの差が15°以下である。
丸鋸刃1で切断する被削材は、例えば棒状であって、丸鋸刃1で切断することで丸鋸刃1の両側に第1と第2の切断面が形成される。丸鋸刃1の厚さは、例えば1.5mm程度であって薄いため、第1と第2の切断面の間隔は比較的狭い。その狭い第1と第2の切断面の間にチップ4,5によって被削材から削り出される切屑6,7が排出される。そして切屑6,7は、チップ4,5の溝4f,5fによって切刃4d,5dの幅方向に分割される。
切屑6,7の排出角度は、面取り4c,5cと溝4f、5fの形状に影響を受ける。上述のように溝端角度φが面取り角度θよりも大きい。しかも溝端角度φと面取り角度θの大きさの差が15°以下である。そのため切屑が切断面と平行ではなく、面取り4c,5cに近い切断面から離れるように幅方向中心側に排出される。これにより切断面が切屑によって傷付けられることが少なくなる。しかも切屑の排出角度は、幅方向に大きな角度を有しない。そのため切屑6,7が反対側の切断面に接触することも避けられ得る。これにより反対側の切断面が切屑6,7によって傷付けられることが少なくなる。
したがって本形態では、切屑6,7を切断面に対して平行ではなく、比較的小さな傾斜角度で切刃4d,5dの幅中心方向に排出する。かくして2つの切断面が切屑6,7によって傷付けられることが少なくなる。このように切断時に切断面がきれいに仕上げられる。かくして後工程において切断面を磨く工程等を避けることができる。
さらに溝端角度φは、40°以上かつ60°以下になっている。溝端角度φが60°を越える場合、溝4f,5fと逃げ面4a,5aの間に形成される角部の角度が小さくなる。そのため溝端角度φが60°を越える場合には、熱クラック等によって欠けやすくなる。したがって本形態では、溝端角度φが60°以下であるためにチップ4,5の耐久性を高く保持できる。溝端角度φが40°未満の場合は、溝4f,5fの幅が一定であるとすると、溝が浅くなる。そのため溝4f,5fの底が被削材に接して溝4f,5fの底においても被削材を削ってしまう。これにより溝4f,5fにおいて切屑が分離されないおそれがある。したがって本形態では、溝端角度φが40°以上であるために切屑が溝4f,5fの底に接することを避けることができる。
溝端角度φと面取り角度θの大きさの差は、5°以上であることが好ましい。これにより切屑6,7は、面取り4c,5cに近い切断面からより確実に離れるように切刃4d,5dの幅方向中心側に排出される。
溝端角度φと面取り角度θの大きさの差は、10°以下であることが好ましい。これにより切屑6,7は、面取り4c,5cに近い切断面の反対側の切断面に向けて大きな角度を有して進出することが避けられる。かくして切屑6,7が反対側の切断面に到達せず、反対側の切断面を傷付けることをより確実に少なくできる。
溝4f,5fは、被削材から削り出される切屑6,7を切刃4d,5dの幅方向に分割するように構成される。溝端角度φと面取り角度θは、面取り4c,5cと溝4f,5fの間で削り出される切屑6,7を切刃4d,5dの幅方向中心に向けて排出するように設定されている。したがって面取り4c、5cに近い切断面が切屑6,7によって傷付けられることが少なくなる。
丸鋸刃1は、被削材を切断することで被削材に相互に対向する第1と第2の切断面を形成する構成である。溝端角度φと面取り角度θは、面取り4c,5cと溝4f,5fの間で削り出される切屑6,7を当該チップ4,5によって被削材を切断する時間において第1と第2の切断面の両方に到達しないように排出するように設定されている。すなわちチップ4の1つが被削材に到達し、被削材から離れるまで時間において、当該チップ4によって被削材から削り出される切屑が第1と第2の切断面の両方に到達しないように排出される。したがって切屑が第1と第2の切断面の両面を傷付けることが少なくなる。
溝4f,5fは、図5,6に示すように周方向視においてV字状である。したがって溝4f,5fは、比較的狭い幅で、比較的深い構成になっている。そのため切刃4d,5dの実質的な長さが溝4f,5fによって短くなることを抑制できる。また溝4f,5fを深くすることで、切屑6,7が溝4f,5fの底4m,5mに当たることを抑制でき、より確実に切屑6,7を分割することができる。
実験の結果、面取り角度θと溝端角度φの大きさの差が0°よりも大きく、15°以下である場合に切屑が切断面を傷付け難いことがわかった。また面取り角度θと溝端角度φの大きさの差が5°以上あるいは/および10°以下であることがより好ましいことがわかった。さらに切屑ねじれ度Bが、2.0より大きく、2.5以下であることが好ましいこともわかった。さらに切屑ねじれ度Bが、2.2以上あるいは/および2.4以下であることがより好ましいことがわかった。
本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
チップ4は、図6に示す溝4fに代えて図15に示す溝8を有していても良い。溝8は、逃げ面4aから延出する平面状の溝端8aを有する。溝端8aの逃げ面4aに対する溝端角度は、上述の実施例と同様の条件に設定される。すなわち溝端角度は、逃げ面4aに対して40°以上60°以下である。溝端角度は、面取り4cの逃げ面4aに対する面取り角度よりも大きい。溝端角度と面取り角度の大きさの差は、15°以下であり、好ましくは、5°以上および/又は10°以下である。
図15に示すように溝8は、溝端8aから延出し逃げ面4aに対して垂直である垂直面8bと、垂直面8bと底面8dを結ぶ傾斜面8cを有する。底面8dは、逃げ面4aと平行であり、傾斜面8cは、垂直面8bと底面8dに対して傾斜角度を有し、垂直面8bと底面8dを緩やかに連結する。溝8は、垂直面8bを有することで、溝8の幅が狭くても溝8を比較的深くすることができる。これにより切屑6,7が底面8dに接することが抑制され得る。
チップ4は、図6に示す溝4fに代えて図16に示す溝9を有していても良い。溝9は、逃げ面4aから延出する曲面状の溝端9aを有する。溝端9aは、逃げ面4aから徐々に角度が大きくなるように湾曲する。溝端9aは、逃げ面4aに対して傾斜角度を有し、詳しくは逃げ面4aと交差、あるいは近接する部分における接線9dと逃げ面4aの間に溝端角度を有する。
溝端角度は、上述の実施例と同様の条件に設定される。すなわち溝端角度は、逃げ面4aに対して40°以上60°以下である。溝端角度は、面取り4cの逃げ面4aに対する面取り角度よりも大きい。溝端角度と面取り角度の大きさの差は、15°以下であり、好ましくは、5°以上および/又は10°以下である。
図16に示すように溝9は、溝端9aから延出し逃げ面4aに対して垂直である垂直面9bと、逃げ面4aと平行な底面9cを有する。溝端9aは、曲面状であるため逃げ面4aとの間における角度変化を小さくする。これにより溝端9aにおける角度変化が小さく、溝端9aが欠けることが抑制され得る。例えば切削時に生じる熱が繰返し加えられることによる溝端9aの欠けを少なくすることができる。
図6に示すチップ4は、厚み方向中心線2gに対して対象である一対の面取り4cを有する。すなわち一対の面取り4cは、逃げ面4aに対して同じ大きさの面取り角度を有する。これに代えてチップ4は、面取り角度の異なる一対の面取りを有していても良い。
図6に示す溝4fは、底4mを中心に対象である一対の傾斜面4j,4kと溝端4h,4iを有する。すなわち一対の溝端4h,4iは、逃げ面4aに対して同じ大きさの溝端角度を有する。これに代えて溝4fは、異なる溝端角度を有する第1溝端4hと第2溝端4iを有していても良い。なお第1溝端4hは、第2溝端4iよりも第1面取り4c1に近い場所に位置する。第2溝端4iは、第1溝端4hよりも第2面取り4c2に近い場所に位置する。
この場合、第1面取り4c1と第1傾斜面4jが上述の関係を有し、第2面取り4c2と第2傾斜面4kが上述の関係を有するように構成される。すなわち第1溝端4hの第1溝端角度と第2溝端4iの第2溝端角度は、それぞれ逃げ面4aに対して40°以上60°以下である。第1溝端角度は、第1面取り4c1の逃げ面4aに対する第1面取り角度よりも大きい。第1溝端角度と第1面取り角度の大きさの差は、15°以下であり、好ましくは、5°以上および/又は10°以下である。第2溝端角度は、第2面取り4c2の逃げ面4aに対する第2面取り角度よりも大きい。第2溝端角度と第2面取り角度の大きさの差は、15°以下であり、好ましくは、5°以上および/又は10°以下である。
図3に示すように丸鋸刃1は、チップ4,5を交互に1つずつ有する。これに代えて丸鋸刃1は、チップ4とチップ5を所定個ずつ交互に有していても良い。
面取り4c,5cは、図5等に示すように平面であっても良いし、曲面であっても良い。面取り4c,5cが曲面の場合、面取り4c,5cの逃げ面4a,5aに対する面取り角度は、逃げ面4aの近傍部分における接線と逃げ面4aとの間の角度によって決定できる。
チップ3は、図3に示すように逃げ面4a,5aの両端に面取り4c,5cを有していても良いし、あるいは逃げ面4a,5aの一端のみに面取り4c,5cを有していても良い。