本発明の一形態によれば、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成され、リチウムニッケル系複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を含む正極活物質層と、を有し、前記スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が0超過0.75m2/g未満であり、前記リチウムニッケル系複合酸化物の質量に対する前記スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の質量の比(スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の質量/リチウムニッケル系複合酸化物の質量)で表される混合比をAとし、かつ、前記リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積に対する前記スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の前記比表面積の比(スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積/リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積)で表される比表面積比をBとしたときに、前記Aが0超過3.00未満であり、前記Bに対する前記Aの比(混合比A/比表面積比B)であるA/Bが、0.40超過である、非水電解質二次電池用正極が提供される。
本発明者らは、本発明の一形態にかかる非水電解質二次電池用正極により、これを含む非水電解質二次電池の容量維持率が改善するメカニズムについて、以下のように推測している。
非水電解質二次電池用正極活物質として、マンガンの溶出を抑制するために、比表面積が一定の値未満であるスピネル系リチウムマンガン複合酸化物を使用する。そして、非水電解質二次電池用正極活物質として、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物と共に、さらにリチウムニッケル系複合酸化物を使用する。このとき、混合比Aの値を一定の値未満とすることで、正極活物質中のスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の含有量が相対的に小さくなり、マンガンの溶出による電池容量の劣化が減少する。
さらに、かようなリチウムニッケル系複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物を含む正極活物質を用いた非水電解質二次電池において、過放電による正極活物質の劣化を抑制することで、さらなる容量維持率の改善が可能となる。
過放電は、リチウムニッケル系複合酸化物と、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物との、放電時のリチウムイオンの受け入れ性の違いに起因して発生する。一般的に、リチウムニッケル系複合酸化物は、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物よりも、充電時にリチウムイオンを放出し易く、放電時にリチウムイオンを受け入れ難い。これより、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、放電時に、充電時に自身が放出したリチウムイオンに加え、リチウムニッケル系複合酸化物が放出したリチウムイオンも受け入れることとなる。そして、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、過剰に受け入れたリチウムイオンとの間で不可逆反応が生じることで、容量維持率が低下する。
ここで、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極は、比表面積比Bに対する混合比Aの比(混合比A/比表面積比B)であるA/Bが所定の値よりも大きい。ここで、混合比Aの値が大きくなること、および/または比表面積比Bの値が小さくなることで、A/Bの値は大きくなる。ここで、混合比Aの値が大きくなるとき、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の含有量が相対的に大きくなる。そして、充電時に正極活物質から放出される過剰なリチウムイオンが減少して、過放電の発生が抑制される。また、比表面積比Bの値が小さくなるとき、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が相対的に小さくなる。そして、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物が受け入れるリチウムイオンの量が減少して、過放電の発生が抑制される。これより、A/Bを一定の値よりも大きくすることで、充電時に放出されるリチウムイオンの量、および放電時にスピネル系リチウムマンガン複合酸化物が受け入れるリチウムイオンの量の関係が最適となる。その結果、かような正極活物質は、過放電の発生を抑制することができ、非水電解質二次電池の容量維持率が改善する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本形態の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を含む非水電解質二次電池の好ましい実施形態として、主に非水電解質二次電池の一種である非水電解質リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を含む非水電解質二次電池の構成としては、例えば、正極活物質層と正極集電体からなる正極と、負極活物質層と負極集電体からなる負極と、電解質とを含むものを挙げることができる。ここで、電解質は、セパレータに含まれる形であってもよい。しかしながら、本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極は、この構成に限定されず、他の公知の構成の非水電解質二次電池にも好ましく適用することができる。
図1は、扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、セパレータ17と、負極とを積層した構成を有している。なお、セパレータ17は、非水電解質(例えば、液体電解質)を内蔵している。正極は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された構造を有する。負極は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、セパレータ17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)27および負極集電板(タブ)25がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
なお、図1では、扁平型(積層型)の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。
以下、各部材について、さらに詳細に説明する。
[非水電解質二次電池用正極]
非水電解質二次電池用正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に形成された正極活物質層とを有するものである。
(正極集電体)
正極集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
また、後述の負極において、負極集電体を用いる場合も、上記と同様のものを用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層は、正極活物質を含む。本形態において、正極活物質は、リチウムニッケル系複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物を必須に含む。
ここで、正極活物質は、リチウムニッケル系複合酸化物の質量に対するスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の質量の比(スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の質量/リチウムニッケル系複合酸化物の質量)で表される混合比Aが0超過3.00未満である。
混合比Aが0であるとき、正極活物質は、リチウムニッケル系複合酸化物のみからなる。かような正極活物質を用いた非水電解質リチウムイオン二次電池は、低SOC(State Of Charge)側での出力特性が低いという問題がある。また、混合比Aが3.00以上であるとき、正極活物質は、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物を相対的に多く含むことになる。かような正極活物質を用いた非水電解質リチウムイオン二次電池は、マンガンの溶出による正極活物質の劣化の程度が大きくなることから、十分な容量維持率が得られない。
さらに、混合比Aが3.00未満の範囲で、混合比Aの値が大きくなることで、容量維持率がさらに改善する。混合比Aの値が大きくなると、正極活物質中において、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物よりも単位質量あたりの充電時のリチウムイオンの放出量が多いリチウムニッケル系複合酸化物の含有量が、相対的に減少する。これより、容量維持率のさらなる改善は、充電時に正極活物質から放出される過剰なリチウムイオンが減少することにより、過放電の発生がさらに抑制されたことに起因すると考えられる。かような容量維持率の観点から、混合比Aは0.25以上3.00未満であることが好ましい。
よって、本発明の好ましい他の態様は、混合比Aが0.25超過3.00未満である、非水電解質二次電池用正極である。
同様の観点から、混合比Aは、0.25以上2.00以下であることがより好ましく、0.25以上1.50以下がさらに好ましい。
また、正極活物質において、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積に対するスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積の比(スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積/リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積)を比表面積比Bとする。
ここで、正極活物質は、比表面積比Bに対する混合比Aの比(混合比A/比表面積比B)であるA/Bが、0.40超過である。
A/Bが、0.40以下であると、非水電解質リチウムイオン二次電池は、十分な容量維持率が得られない。ここで、A/Bの減少は、混合比Aの値が減少すること、比表面積比Bの値が増加すること、またはその両方によって生じる。
ここで、混合比Aの値が減少することは、正極活物質に含有されるスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の質量が相対的に減少し、リチウムニッケル系複合酸化物の質量が相対的に増加することを表す。かような場合、前述のように、リチウムニッケル系複合酸化物は、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物よりも、単位質量あたりの充電時のリチウムイオンの放出量が多いことから、充電時に正極活物質から過剰なリチウムイオンの放出量が増加すると考えられる。そして、過剰なリチウムイオンの増加により、充電時の過放電の発生が顕著となり、十分な容量維持率が得られなくなると考えられる。
ここで、比表面積比Bの値が増加することは、正極活物質に含有されるスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が相対的に増加し、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積が相対的に減少することを表す。ここで、前述のように、リチウムニッケル系複合酸化物は、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物よりも、放電時にリチウムイオンを受け入れ難い。これより、かような場合、放電時のスピネル系リチウムマンガン複合酸化物のリチウムイオンの受け入れ量が増加すると考えられる。そして、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物が受け入れるリチウムイオンの量が過剰となることで、過放電の発生が顕著となり、十分な容量維持率が得られなくなると考えられる。
よって、充電時に正極活物質から放出されるリチウムイオン量、および放電時にスピネル系リチウムマンガン複合酸化物に受け入れられるリチウムイオン量のバランスから、A/Bが0.4以下であると、非水電解質リチウムイオン二次電池は、十分な容量維持率が得られないと考えられる。
同様の観点から、A/Bは、0.40超過6.00以下であることがより好ましく、0.40超過2.50以下がさらに好ましい。
ここで、正極活物質において、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積に対するスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積の比(スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積/リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積)で表される比表面積比Bは、0.33以上1.50以下であることが好ましい。
比表面積比Bが0.33以上であると、正極活物質に含有されるスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が相対的に増加し、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積が相対的に減少する。その結果、充電時に正極活物質から過剰なリチウムイオンの放出量が減少することから、リチウムニッケル系複合酸化物のリチウムの受け入れ性が十分に確保されるため、容量維持率のさらなる向上が得られる。
また、比表面積比Bが1.50以下であると、正極活物質に含有されるスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が相対的に減少し、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積が相対的に増加する。その結果、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の電池容量への寄与が小さくなるため、溶出による容量維持率の低下が減少する。
同様の観点から、0.33以上1.00以下であることがより好ましく、0.60以上1.00以下であることがさらに好ましい。
なお、正極活物質層に含まれる正極活物質の全量100質量%に占めるリチウムニッケル系複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の合計量の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
正極活物質層の厚さについては特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さ(集電体の片面の活物質層の厚さ)は、2〜100μm程度であり、好ましくは5〜100μmである。
・リチウムニッケル系複合酸化物
リチウムニッケル系複合酸化物は、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物である限り、その組成は具体的に限定されない。リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物の典型的な例としては、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)が挙げられる。ただし、リチウムニッケル複合酸化物のニッケル原子の一部が他の金属原子で置換された複合酸化物がより好ましく、好ましい例として、ニッケル、マンガン、コバルトを含有する層状結晶構造のリチウム遷移金属複合酸化物(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。加えて、LiNiO2より高い熱安定性を有しているため、正極活物質として用いられるニッケル系複合酸化物の中でも特に有利である。
本明細書において、NMC複合酸化物は、遷移金属元素の一部が他の元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、特に制限されないが、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられる。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiaNibMncCodMxO2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Feから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。ここで、一般式(1)において、0.3≦b≦0.9であることがより好ましい。bが0.3以上であると、さらに容量を増加することができる。かような容量の増加は、単位質量あたりの反応に寄与するリチウム数が増加することに起因すると推測している。また、bが0.9以下であると、さらに安全性を向上できるとともに、容量維持率のさらなる向上効果も得られる。かような容量維持率の向上は、単位質量あたりのリチウム数が減少することで、正極活物質層に出入りするリチウム数が減少することに起因すると推測している。
これより、本発明の好ましい一形態は、リチウムニッケル系複合酸化物が、一般式(1):LiaNibMncCodMxO2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0.3≦b≦0.9、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Feから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する、非水電解質二次電池用正極である。
また、上記観点より、0.3≦b≦0.8以下であることがより好ましく、0.4≦b≦0.6であることがさらに好ましい。
ここで、上記式(1)において、0<d≦0.2であることが好ましい。
なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。NMC複合酸化物の他の元素(一般式(1)中のM元素)であるTi等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の元素により置換されていてもよく、一般式(1)において0≦x≦0.2であることがさらに好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、CrおよびFeからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れた容量維持率が実現し得ると考えられる。他の元素はAl、Cr、Feから選ばれる元素で少なくとも1種類であることが好ましい。
NMC複合酸化物としては、特に限定されないが、例えば、LiNi0.30Mn0.35Co0.35O2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi0.50Mn0.30Co0.20O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.90Mn0.05Co0.05O2等が挙げられる。
リチウムニッケル系複合酸化物もまた、一次粒子が凝集してなる二次粒子の構成を有している。そして、当該一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は好ましくは0.9μm以下であり、より好ましくは0.2〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。また、二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)は、好ましくは2〜20μm、より好ましくは5〜20μmであり、さらに好ましくは5〜15μmである。さらに、これらの比の値(平均二次粒子径/平均一次粒子径)は、11より大きいことが好ましく、より好ましくは15〜50であり、さらに好ましくは25〜40である。なお、リチウムニッケル系複合酸化物を構成する一次粒子は通常、層状構造を有する六方晶系の結晶構造を有しているが、その結晶子径の大小は平均一次粒子径の大小と相関性を有している。ここで「結晶子」とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味し、粉末X線回折測定などにより得られた回折強度から、結晶の構造パラメータを精密化する方法により測定が可能である。結晶子径の具体的な値について特に制限はないが、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.55μm以下であり、さらに好ましくは0.4μm以下である。かような構成とすることで、活物質の膨張収縮時の変位量をよりいっそう低減することが可能となり、充放電の繰り返しに伴う二次粒子の微細化(割れ)の発生が抑制され、サイクル特性のよりいっそうの向上に寄与しうる。なお、結晶子径の値の下限値について特に制限はないが、通常は0.02μm以上である。ここで、本明細書において、正極活物質粒子における結晶子径の値は、粉末X線回折測定により得られる回折ピーク強度から結晶子径を算出する、リートベルト法により測定するものとする。
リチウムニッケル系複合酸化物のタップ密度は、好ましくは2.3g/cm3であり、より好ましくは2.4〜2.9g/cm3である。かような構成とすることで、正極活物質の二次粒子を構成する一次粒子の高い緻密性が十分に確保され、サイクル特性の改善効果も維持されうる。
また、リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積(BET比表面積)は、好ましくは0超過1.00m2/g以下であり、より好ましくは0.10以上1.00m2/g以下であり、さらに好ましくは0.30以上1.00m2/g以下であり、特に好ましくは0.30以上0.90m2/g以下である。比表面積がかような範囲にあることで、反応面積が確保され、電池の内部抵抗が小さくなることから、電極反応時の分極発生を最小限に抑えることができる。
BET比表面積は、株式会社堀場製作所製のBET比表面積測定装置(型式:SA−9601)により測定することができる(BET一点法)。
リチウムニッケル系複合酸化物の比表面積は、特に制限されないが、例えば一次粒子および/または二次粒子の粒子径を調整することにより制御することができる。具体的には、比表面積を大きくする方法としては、粒子径を小さくすることが挙げられる。また、比表面積を小さくする方法としては、粒子径を大きくすることが挙げられる。また、比表面積の制御方法としては、公知の手段を用いることができ、原料、組成、焼成条件、粉砕条件、篩別条件などによって制御されうる。
さらに、リチウムニッケル系複合酸化物について、粉末X線回折測定により得られる(104)面の回折ピークと(003)面の回折ピークとが、回折ピーク強度比((003)/(104))として1.28以上であることが好ましく、より好ましくは1.35〜2.1である。また、回折ピーク積分強度比((003)/(104))としては1.08以上であることが好ましく、より好ましくは1.10〜1.45である。これらの規定が好ましいのは以下の理由による。すなわち、リチウムニッケル系複合酸化物は、酸素層の間にLi+層、Ni3+層が存在する層状岩塩構造を有している。しかしながら、Ni3+はNi2+に還元されやすく、またNi2+のイオン半径(0.83Å)はLi+のイオン半径(0.90Å)とほぼ等しいため、活物質合成時に生じるLi+欠損部にNi2+が混入しやすくなる。Li+サイトにNi2+が混入すると、局所的に電気化学的に不活性な構造ができるとともに、Li+の拡散を妨げるようになる。このため、結晶性の低い活物質を用いた場合には、電池充放電容量の減少や耐久性が低下する可能性がある。この結晶性の高さの指標として、上記の規定が用いられるのである。ここでは、結晶性を定量化する方法として、上述したようにX線回折を用いた結晶構造解析による(003)面と(104)面の回折ピークの強度の比と回折ピークの積分強度の比を用いた。これらのパラメータが上記の規定を満たすことで、結晶内の欠陥が少なくなり、電池充放電容量の減少や耐久性の低下を抑えることができる。なお、このような結晶性のパラメータは、原料、組成や焼成条件などによって制御されうる。
NMC複合酸化物などのリチウムニッケル系複合酸化物は、共沈法、スプレードライ法など、種々公知の方法を選択して調製することができる。本形態に係る複合酸化物の調製が容易であることから、共沈法を用いることが好ましい。具体的に、NMC複合酸化物の合成方法としては、例えば、特開2011−105588号に記載の方法のように、共沈法によりニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物を製造した後、ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物と、リチウム化合物とを混合して焼成することにより得ることができる。以下、具体的に説明する。
複合酸化物の原料化合物、例えば、Ni化合物、Mn化合物およびCo化合物を、所望の活物質材料の組成となるように水などの適当な溶媒に溶解させる。Ni化合物、Mn化合物およびCo化合物としては、例えば、当該金属元素の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物などが挙げられる。Ni化合物、Mn化合物およびCo化合物として具体的には、例えば、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸マンガンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。この過程で、必要に応じて、さらに所望の活物質の組成になるように、活物質を構成する層状のリチウム金属複合酸化物の一部を置換する金属元素を含む化合物をさらに混入させてもよい。例えば、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、CrおよびFe等の少なくとも1種の金属元素を含む化合物をさらに混入させてもよい。
上記原料化合物とアルカリ溶液とを用いた中和、沈殿反応により共沈反応を行うことができる。これにより、上記原料化合物に含まれる金属を含有する金属複合水酸化物、金属複合炭酸塩が得られる。アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができるが、中和反応用に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又はそれらの混合溶液を用いることが好ましい。加えて、錯体反応用にアンモニア水溶液やアンモニウム塩を用いることが好ましい。
中和反応に用いるアルカリ溶液の添加量は、含有する全金属塩の中和分に対して当量比1.0でよいが、pH調整のためにアルカリ過剰分を合わせて添加することが好ましい。
錯体反応に用いるアンモニア水溶液やアンモニウム塩の添加量は、反応液中のアンモニア濃度が0.01〜2.00mol/Lの範囲で添加することが好ましい。反応溶液のpHは10.0〜13.0の範囲に制御することが好適である。また、反応温度は30℃以上が好ましく、より好ましくは30〜60℃である。
共沈反応で得られた複合水酸化物は、その後、吸引ろ過し、水洗して、乾燥することが好ましい。次いで、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物をリチウム化合物と混合して焼成することによりNMC複合酸化物を得ることができる。Li化合物としては、例えば、水酸化リチウムまたはその水和物、過酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム等がある。
焼成処理は、1段階であってもよいが、2段階(仮焼成および本焼成)で行うことが好ましい。2段階の焼成により、効率よく複合酸化物を得ることができる。仮焼成条件としては、特に限定されるものではなく、リチウム原料によっても異なるため一義的に規定することは困難である。なお、昇温速度は室温から1〜20℃/分であることが好ましい。また、雰囲気は、空気中ないし酸素雰囲気下であることが好ましい。ここで、Li原料に炭酸リチウムを用いて、NMC複合酸化物を合成する場合において、仮焼成温度は、好ましくは500〜900℃であり、より好ましくは600〜800℃であり、さらに好ましくは650〜750℃である。さらに、仮焼成時間は、好ましくは0.5〜10時間であり、より好ましくは4〜6時間である。一方、本焼成の条件についても特に限定されるものではないが、昇温速度は室温から1〜20℃/分であることが好ましい。また、雰囲気は、空気中ないし酸素雰囲気下であることが好ましい。また、Li原料に炭酸リチウムを用いて、NMC複合酸化物を合成する場合において、焼成温度は、好ましくは800〜1200℃であり、より好ましくは850〜1100℃であり、さらに好ましくは900〜1050℃である。さらに、仮焼成時間は、好ましくは1〜20時間であり、より好ましくは8〜12時間である。
必要に応じて、活物質材料を構成する層状のリチウム金属複合酸化物の一部を置換する金属元素を微量添加する場合、該方法としては、あらかじめニッケル、コバルト、マンガン酸塩と混合する方法、ニッケル、コバルト、マンガン酸塩と同時に添加する方法、反応途中で反応溶液に添加する方法、Li化合物とともにニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物に添加する方法などいずれの手段を用いても構わない。
リチウムニッケル系複合酸化物は、反応溶液のpH、反応温度、反応濃度、添加速度、攪拌時間などの反応条件を適宜調整することにより製造することができる。
・スピネル系リチウムマンガン複合酸化物
スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、典型的にはLiMn2O4の組成を有し、スピネル構造を有する、リチウムおよびマンガンを必須に含有する複合酸化物であり、その具体的な構成や製造方法については、特開2000−77071号公報等の従来公知の知見が適宜参照されうる。
また、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、マンガンの一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、例えば、Li、Mg、Al、Ti、V、Cr、およびFe等が挙げられる。
スピネル系リチウムマンガン複合酸化物もまた、一次粒子が凝集してなる二次粒子の構成を有している。そして、二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)は、好ましくは2〜50μmであり、より好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは7〜20μmである。
また、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積(BET比表面積)は、0超過0.75m2/g未満である。比表面積が0.75m2/g以上であると、マンガンの溶出による正極活物質の劣化の程度が大きくなることから、十分な容量維持率が得られない。同様の観点、および活物質の反応抵抗の上昇を抑制するという観点から、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積は、好ましくは0.10以上0.75m2/g未満であり、であり、より好ましくは0.10以上0.70m2/g以下であり、さらに好ましくは0.30以上0.60m2/g以下である。
BET比表面積は、株式会社堀場製作所製のBET比表面積測定装置(型式:SA−9601)により測定することができる(BET一点法)。
スピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積の制御方法は、特に制限されないが、例えば一次粒子および/または二次粒子の粒子径を調整することにより制御することができる。具体的には、比表面積を大きくする方法としては、粒子径を小さくすることが挙げられる。また、比表面積を小さくする方法としては、粒子径を大きくすることが挙げられる。また、比表面積の制御方法としては、公知の手段を用いることができ、原料、組成、焼成条件、粉砕条件、篩別条件などによって制御されうる。
・その他の成分
正極活物質層は上述した正極活物質の他、必要に応じて、上述以外の正極活物質、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含むことができる。
導電助剤とは、正極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極活物質層中、活物質として機能しうる材料の含有量は、特に限定はなく、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより調整されうるが、85〜99.5質量%であることが好ましい。
正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水電解質二次電池用正極は、正極集電体上に正極活物質層を形成することにより作製することができる。正極活物質層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、少なくとも正極活物質およびスラリー粘度調整溶媒を含む正極活物質スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥後、ロールプレス機等で圧縮成型する方法が挙げられる。スラリー粘度調整溶媒としては、特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を使用することができる。
[負極活物質層]
負極活物質層は活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
負極活物質層の厚さについては特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さ(集電体の片面の活物質層の厚さ)は、2〜100μm程度である。
負極活物質層中、活物質として機能しうる材料の含有量は、前記正極活性物質中の活物質として機能しうる材料の含有量として述べたものと同様である。
また、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤については、上記正極活物質層の欄で述べたものと同様である。
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質の平均粒子径(D50)は、レーザ回折式粒度分布計により測定され、初期充電容量を向上させる(取扱い)という観点から、10〜30μmであることが好ましい。下限値以上の値であれば、かさ密度の低下による塗工性の低下の虞や、比表面積の増大に伴う充放電特性の悪化の虞がより低減される。一方、上限値以下の値であれば、コーターのヘッドでの詰まりや筋引きに起因する塗工性の悪化による電極の外観不良の虞がより低減される。同様の観点から、15〜25μmであることがより好ましい。
負極活物質層においては、少なくとも水系バインダーを含むことが好ましい。水系バインダーは、結着力が高い。また、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。
水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、ならびにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロース(塩)とを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.5〜2であることがより好ましい。
負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。
負極活物質のBET比表面積は特に制限されないが、0.5〜10m2/gであることが好ましい。負極活物質の比表面積が下限値以上の値であれば、内部抵抗の増大に伴う低温特性の悪化の虞がより低減される。一方、上限値以下の値であれば、電解液との接触面積の増大に伴う副反応の進行をより効果的に防止することが可能となる。特に、比表面積が大きすぎると初回充電(電解液添加剤による被膜が固定化されていない)時に発生するガスが原因で、電極面内に局所的に過電流が流れて電極の面内に被膜の不均一が生じてしまい、寿命特性が悪くなることがあるが、上記上限値以下の値であれば、その虞もより低減できる。同様の観点から、1.0〜6.0m2/gであることがより好ましく、1.5〜4.2m2/gであることがさらに好ましい。
負極は、負極集電体上に負極活物質層を形成することにより作製することができる。負極活物質層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、少なくとも負極活物質およびスラリー粘度調整溶媒を含む負極活物質スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥後、ロールプレス機等で圧縮成型する方法が挙げられる。スラリー粘度調整溶媒としては、特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、イオン交換水等を使用することができる。
[セパレータ(電解質層)]
セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。一例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
また、上述したように、セパレータは、電解質を含む。電解質としては、かような機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、液体電解質またはゲルポリマー電解質が用いられる。ゲルポリマー電解質を用いることにより、電極間距離の安定化が図られ、分極の発生が抑制され、耐久性(サイクル特性)が向上する。
液体電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiCF3SO3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。リチウム塩の濃度としては、特に制限はされないが、イオン電導度が高いとの観点から、0.8〜1.2Mであることが好ましく、0.9〜1.1Mであることがより好ましい。
液体電解質は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。かような添加剤の電解質中の濃度は、特に制限はされないが、0.5〜2.0質量%であることが好ましい。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
ゲル電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であることが好ましい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO2)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)を用いることが好ましく、アルミナ(Al2O3)を用いることがより好ましい。
耐熱性微粒子の二次平均粒子径は、分散性の観点から、100nm〜4μmであることが好ましく、300nm〜3μmであることがより好ましく、500nm〜3μmであることがさらに好ましい。
耐熱性粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、さらに良好なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する効果をより高めることができるとの観点から、5〜20g/m2であることが好ましく、9〜13g/m2であることが好ましい。
耐熱絶縁層におけるバインダーは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダーによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
耐熱絶縁層に使用されるバインダーは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダーとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
耐熱絶縁層におけるバインダーの含有量は、耐熱絶縁層100質量%に対して、2〜20質量%であることが好ましい。バインダーの含有量が2質量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダーの含有量が20質量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm2条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、正極発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装体]
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を含む非水電解質二次電池は、電池外装体を含むことができる。電池外装体29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。ラミネートフィルムの厚さとしては、特に制限はされないが、70〜180μmであることが好ましい。
[セルサイズ]
図2は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図2に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、非水電解質二次電池用正極(正極活物質層)15、電解質層17および負極(負極活物質層)13で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図2に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
一般的な電気自動車では、電池格納スペースが170L程度である。このスペースにセルおよび充放電制御機器等の補機を格納するため、通常セルの格納スペース効率は50%程度となる。この空間へのセルの積載効率が電気自動車の航続距離を支配する因子となる。単セルのサイズが小さくなると上記積載効率が損なわれるため、航続距離を確保できなくなる。
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体は大型であることが好ましい。具体的には、ラミネートセル電池の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、ラミネートセル電池の短辺の長さとは、最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常400mm以下である。
[体積エネルギー密度および定格放電容量]
一般的な電気自動車では、一回の充電による走行距離(航続距離)は100kmが市場要求である。かような航続距離を考慮すると、電池の体積エネルギー密度は157Wh/L以上であることが好ましく、かつ定格容量は20Wh以上であることが好ましい。
さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、車両要求性能と搭載スペースを両立できるという利点がある。
[組電池]
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を含む非水電解質二次電池は、組電池として用いることができる。組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池用正極を含む、非水電解質リチウムイオン二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、容量維持率が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質リチウムイオン二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本形態では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
なお、上記実施形態では、非水電解質二次電池の一種である非水電解質リチウムイオン二次電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの非水電解質二次電池にも適用できる。
以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
(実施例1)
1.電解液の作製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF6をリチウム塩とした。さらに上記溶媒と上記リチウム塩との合計100質量%に対して2質量%のビニレンカーボネートを添加して電解液を調製した。なお、「1.0MのLiPF6」とは、当該混合溶媒およびリチウム塩の混合物におけるリチウム塩(LiPF6)濃度が1.0Mであるという意味である。
2.非水電解質二次電池用正極の作製
正極活物質として、NMC複合酸化物である比表面積0.67m2/gのLiNi0.50Mn0.30Co0.20O2と、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物である比表面積0.42m2/gのLiMnO2を用意した。次いで、正極活物質全体を100質量%としたときに、それぞれNMC複合酸化物が70質量%、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物が30質量%となるように混合した。そして、正極活物質層中の全質量に占める割合として、正極活物質が90質量%、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量%、およびバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF) 5質量%の固形分となる混合物を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(20μm)の両面に塗布し乾燥・プレスを行い、正極活物質層の片面塗工量19.7mg/cm2、両面厚み146μm(箔込み)の非水電解質二次電池用正極を作製した。
3.負極の作製
被覆天然黒鉛(平均粒子径(D50):20.0μm、BET比表面積:2.0m2/g) 95質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを2質量%、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR) 2質量%およびカルボキシメチルセルロース(CMC) 1質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるイオン交換水を適量添加して、負極スラリーを作製した。次に、負極スラリーを、集電体である銅箔(15μm)の両面に塗布し乾燥・プレスを行い、片面塗工量9.1mg/cm2,両面厚み136μm(箔込み)の負極を作製した。
4.単電池の完成工程
上記で作製した非水電解質二次電池用正極を210×184mmの長方形状に切断し、負極を215×188mmの長方形状に切断した(正極15枚、負極16枚)。この非水電解質二次電池用正極と負極とを230×210mmの耐熱絶縁層付きセパレータを介して交互に積層した。この際、耐熱絶縁層が負極活物質層と隣接するように積層した。耐熱絶縁層付きセパレータは以下のように作製した。無機粒子であるアルミナ粒子(BET比表面積:5m2/g、二次平均粒子径2μm) 95質量%およびバインダーであるカルボキシメチルセルロース(バインダー重量あたりの含有水分量:9.12質量%) 5重量部を水に均一に分散させた水溶液を作製した。該水溶液をグラビアコーターを用いてポリエチレン(PE)微多孔膜(膜厚:20μm、空隙率:55%)の両面に塗工した。次いで、60℃にて乾燥して水を除去し、多孔膜の片面に3.5μmずつ耐熱絶縁層が形成された、総膜厚25μmの多層多孔膜である耐熱絶縁層付セパレータを作製した。この時の耐熱絶縁層の目付は15g/m2である。
これらの非水電解質二次電池用正極と負極それぞれにタブを溶接し、アルミラミネートフィルムからなる外装体中に電解液とともに密封してリチウムイオン二次電池を完成させた。
(実施例2〜9、比較例1、2)
上述した実施例1における正極活物質の比表面積と混合比を下記の表1に記載の通り混合したこと以外は、当該実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
なお、下記表1において、NMC複合酸化物をNMC、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物をLMOとして表す。
ここで、各実施例および比較例で用いた、各比表面積を有するMMC複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物は、粒子径により調製した。 また、各MMC複合酸化物およびスピネル系リチウムマンガン複合酸化物の比表面積(BET比表面積)は、株式会社堀場製作所製のBET比表面積測定装置(型式:SA−9601)により測定した(BET一点法)。
そして、得られた電池について、以下の手法により、容量維持率を求めた。結果を下記の表1に示す。
[容量維持率]
電池の充放電の電圧範囲2.5V−4.15Vとして容量維持率を測定した。具体的には、25℃に保持した恒温槽において、電池温度を25℃とした後、充電は1Cの電流レートで4.15Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、あわせて2.5時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとして充放電試験を実施した。初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率とした。測定結果を表1に示す。
[初期容量]
初充放電後に0.2Cで4.15V CCCVで6.5時間充電後、2.5VまでCC放電を行い、初期容量を測定した。
[容量維持率]
初期容量と同等の測定方法で300サイクル後の容量を測定し、300サイクル後の容量/初期容量×100で容量維持率を求めた。
表1に示す結果から、実施例1〜9および比較例1、2の比較より、非水電解質二次電池用を本発明の構成とすることにより、リチウムイオン二次電池が高い容量維持率を有することが確認された。