JP2017004868A - 混合電極を用いたリバーシブル燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】。エネルギー密度が高く、負荷追従性に優れ、かつ、寿命特性に優れたリバーシブル燃料電池を提供する。【解決手段】二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合した材料を含む正極11と、負極活物質を含む負極12と、正極11と負極12との間に介在して、イオンは通すが電子は通さないセパレータ14と、電解液15とを有し、電解液15が電気分解することのより、負極12で発生する水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵室23と、電解液15が電気分解することのより、正極11で発生する酸素ガスを貯蔵する酸素ガス貯蔵室24とを有するリバーシブル燃料電池。【選択図】図2

Description

本発明は、充電時に供給される電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵し、貯蔵した化学エネルギーを、電気エネルギーに再変換して利用することができるリバーシブル燃料電池に関する。
二次電池および燃料電池は、高効率でクリーンなエネルギー源である。近年、世界的にこのような二次電池および燃料電池を電源とする電気自動車、燃料電池自動車、電車の開発が進んでいる。
燃料電池は、高いエネルギー変換効率を有する環境負荷の少ない電源として注目されている。燃料電池は蓄電することはできないが、燃料電池と水の電気分解による水素製造装置とを組み合わせることによって、一種の電力貯蔵システムを構築することは可能である。このような電力貯蔵システムは、リバーシブル燃料電池と呼ばれている(特許文献1および特許文献2を参照)。燃料電池と水の電気分解を組合わせたこのようなリバーシブル燃料電池は、発電を停止している間に、自然エネルギーや夜間電力を使って水の電気分解を行い、自らの燃料となる水素ガスおよび酸素ガスを製造することができる発電システムといえる。
一方、二次電池は、電動工具等の大電流放電を必要とする電気および電子機器用の電源として用いられている。特に最近では、エンジンおよび電池で駆動されるハイブリッド自動車用の電池として、ニッケル水素二次電池およびリチウムイオン二次電池が注目されている。
通常の二次電池は、電気エネルギーの供給を受けることにより充電され、電気を蓄えることができる。特許文献3には、ガスを用いて充電ができる二次電池が開示されている。また、特許文献4には、正極活物質に二酸化マンガンを使用し、負極活物質に水素吸蔵合金を使用した、燃料電池と二次電池を組み合わせた新たなタイプの燃料電池が開示されている。
二酸化マンガンは低価格で高い放電容量を持つなど、特有の電気化学的及び化学的な特性を持ち、電池及び燃料電池のカソードの電極材料として幅広く利用されている物質である。特許文献4に記載のリバーシブル燃料電池には電気化学的な充電、及び、酸素による化学的な充電を確認し、カソードの活物質として二酸化マンガンの有用性が開示されている。
特開2002−348694号公報 特開2005−65398号公報 特開2010−15729号公報 WO2013/145468号公報
二次電池は、蓄電することが可能である。しかし、負極及び正極の活物質の量は、電池の容積に依存する。このため、電池に蓄えることのできる電気容量には限界があるので、二次電池は、エネルギー密度を大幅に高めることは困難である。
一方、燃料電池は、外部から供給される水素ガスあるいは酸素ガスを用いて発電(放電)する。このため、燃料電池は、二次電池が有するような、エネルギー密度の限界に関する問題は生じない。一般に、燃料電池を使用するためには、電極部分に、水素ガスおよび酸素ガスを供給するための装置あるいは部材を必要とする。また、負荷変動に対する燃料電池の追従性は、二次電池に劣る。このため、鉄道車両のような負荷変動の大きい装置の電源として、燃料電池単独で用いることは、困難である。
さらに、水素製造装置(例えば特許文献1)から取り出されるガスは、水素と酸素との比率が2:1となる酸水素ガスである。このため、安全性の確保に注意が必要となる。
特許文献4に開示されている「燃料電池蓄電池」は、正極活物質に二酸化マンガンを使用している。二酸化マンガンは過充電を行うとデルタ型の二酸化マンガンが生成され、放電反応時にこれが反応性の低い四三酸化マンガン(Mn)に変わる。充放電を繰り返すと、四三酸化マンガンの増加により正極活物質が劣化してサイクル特性の低下が見られる。また、二酸化マンガンは、電気導電率が低く、瞬間的な出力が必要なときには対応できず、出力特性が劣るという課題を有している。
二酸化マンガンを正極とする水溶液系電池として、亜鉛マンガン電池が広く知られているが一次電池として使用されており、二次電池として使用されていない。それは、二酸化マンガンは2電子以上の反応まで充電を行うと、二酸化マンガンがδ型化して、次の放電過程において充電できない四三酸化マンガンが生成されるからである。
四三酸化マンガンは、導電性が低く、充電に時間がかかり、十分に充電することが難しい。したがって、四三酸化マンガンが増加すると、電池性能が劣化して、遂には使用できなくなる。このため、二酸化マンガンは、専ら一次電池に用いられており、現時点では、二次電池の正極活物質として利用されていない。
二酸化マンガンのサイクル特性の改善、抵抗の低減のための様々な研究が行われてきた。その方法として大きく2種類ある。一つは電極に添加剤として他の物質を混合する方法であり、他の一つは二酸化マンガンの結晶構造へのカチオンのドーピングである。添加剤としてはBi2O3、Ba(OH)2 、TiO2などがあり、ドーピングするカチオンとしてはBi3+、Pb2+、Ti4+、Ba2+ などが挙げられる。これらの方法はいずれもMn3+の溶出を抑制し、δ型二酸化マンガンの生成を抑制することによってサイクル特性を向上させるのである。しかし、添加剤等を加えればその分重量が増加して、重量当たりの放電容量が低下する。重量当たりの放電容量の低下は、瞬間的に出力を取り出すことを阻害する。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、エネルギー密度が高く、負荷追従性に優れ、かつ、寿命特性に優れたリバーシブル燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合した材料を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在して、イオンは通すが電子は通さないセパレータと、電解液とを有し、前記電解液が電気分解することのより、前記負極で発生する水素ガスを貯蔵する水素貯蔵室と、前記電解液が電気分解することのより、前記正極で発生する酸素ガスを貯蔵する酸素貯蔵室とを有する。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合した材料を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在して、イオンは通すが電子は通さないセパレータと、電解液と、前記正極と、前記負極と、前記セパレータと、前記電解液とを収納する密閉容器とを有し、前記電解液が電気分解することのより、前記負極で発生する水素をガス状態で前記密閉容器から取出し、前記電解液が電気分解することのより、前記正極で発生する酸素を前記電解液に溶存させた状態で前記密閉容器から取出す。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記負極が水素吸蔵合金を含む。
これら構成によれば、満充電の状態からさらに電流を供給して充電(過充電)を行った場合に、電気分解によって負極で発生する水素ガスおよび正極で発生する酸素ガスを、互いに接触・反応させることなく、水素貯蔵室および酸素貯蔵室に、それぞれ直接かつ独立に貯蔵することができる。したがって、本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池によれば、追加のガス供給源や供給通路、昇圧装置などを要することなく、水素ガスおよび酸素ガスを各貯蔵室に貯蔵し、貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスを、リバーシブル燃料電池の放電時に電気エネルギーに変換して再利用することができる。リバーシブル燃料電池の放電時には、正負極間において、二次電池としての通常の放電反応が起こって負荷に電流が流れる。つまり、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーが出力されるので、優れた負荷追従性を得ることができる。
放電時には、負極および正極のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素貯蔵室および酸素貯蔵室にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。具体的には、負極においては、放電反応を表す反応式(1)に示すように、充電状態の水素吸蔵合金(MH)からプロトンが放出されるが、反応式(2)に示すように、放出された分のプロトンが、水素ガスによって補われ、負極の充電状態が維持される。
MH + OH → M + HO + e (1)
M + 1/2H → MH (2)
一方正極においては、放電反応を表す反応式(3)に示すように、充電状態の二酸化マンガン(MnO)から還元されたオキシ水酸化マンガン(MnOOH)が、反応式(4)に示すように酸素ガスによって再び酸化され、正極の充電状態が維持される。
MnO + HO + e → MnOOH + OH (3)
MnOOH + 1/4O → MnO + 1/2HO (4)
各貯蔵室の水素ガスおよび酸素ガスが消費された後は、通常の二次電池として作動して放電がなされる。
すなわち、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、放電電流として取り出すことのできる電気エネルギーを、正負極の各活物質量によって規定される二次電池としての容量に加えて、各貯蔵室にガスとして蓄えることが可能である。この場合、各貯蔵室およびこれを含む電池の耐圧性能および密閉性能を高めることにより、体積あたりのガス貯蔵量を増加させることが可能となり、電池の体積エネルギー密度を向上させることが可能となる。本発明に係るリバーシブル燃料電池の上記のような作用は、負極および正極を、それぞれ、電気化学反応を利用せず、水素ガスおよび酸素ガスによって直接充電することにより得られるものである。なお、本明細書において、「正極を充電」、「負極を充電」とは、通常の電気化学反応によって当該電池を充電した場合の正極における酸化反応および負極における還元反応を、正負極それぞれにおいて独立に起こさせることを含む。
本発明では二酸化マンガン電極の性能向上のために、簡単で実用性が高い方法として、二酸化マンガンに水酸化ニッケルを混合した電極を提案する。このとき正極の反応式は、放電のときが(5)式であり、充電のときが(6)式である。
γ−MnO+HO +e → MnOOH+OH (5)
MnOOH+OH→ γ−MnO+HO +e (6)
二酸化マンガンの標準酸化還元電位は0.150 V (vs NHE)であり、充電を行うと電位は徐々に上昇し、酸素発生電位(約0.41V vs NHE)以上まで上昇する。この時、二酸化マンガン結晶内に電解液からカリウムイオンまたは水分子などのインターカレーションが起こり、γ型からδ型への結晶構造の変化をもたらす。この結晶構造の変化は電極性能の低下につながる。そこで、二酸化マンガン電極に水酸化ニッケルを少量(例えば、5〜15wt%)添加することを考えた。水酸化ニッケルは二酸化マンガンより高い標準酸化還元電位(0.480 V vs NHE)および高い電気導電率(10-1〜10-2 S/cm)を持っているため、二酸化マンガンの過充電による結晶構造変化の抑制及び電極内の導電構造の向上などが期待できる。なお、水酸化ニッケルの放電のときの反応式が(7)式であり、充電のときの反応式が(8)式である。
NiOOH + HO + e → Ni(OH) + OH(7)
Ni(OH) + OH → NiOOH + HO + e(8)
水素貯蔵室に貯蔵された水素ガスおよび酸素貯蔵室に貯蔵された酸素ガスは、放電時に電気エネルギーに再変換して利用することができる。放電時には、二次電池として電気エネルギーを取り出すことができるので、本発明のリバーシブル燃料電池は急速放電が可能となり、負荷追従性を向上させることができる。
前述した通り、二次電池の電気容量は、電極に含まれる活物質の量で定まる。このため、二次電池を高エネルギー密度化することは困難である。しかし、本リバーシブル燃料電池は、外部に取り出すことができる電気エネルギーは、各貯蔵室に化学エネルギーとして蓄えることができる。
この結果、体積あたりの化学エネルギーの貯蔵量を増加させること、および、当該燃料電池の体積エネルギー密度を向上させることが可能となる。各貯蔵室およびこれを含む電池の耐圧性能および密閉性能を高めることにより、更に体積エネルギー密度を高めることができる。
この構成によれば、放電時には、負極および正極のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素貯蔵室に貯蔵された水素ガス、および、酸素貯蔵室に貯蔵された酸素による充電によって補われる。具体的には前述したように、反応式(2)により負極の充電状態が維持され、反応式(4)により正極の充電状態が維持される。
つまり、本リバーシブル燃料電池は、水素ガスおよび酸素ガスが供給される限り、放電によって失われた電気が、すぐに水素ガスおよび酸素ガスにより充電される。すなわち、負極は、水素吸蔵状態をほぼ常に維持しているので、充放電による負極体積の膨張および収縮が抑えられる。この結果、負極は、優れた寿命特性を有することになる。更に、活物質の量が少なくても、負極は上述した作用を有するので、重くて高価な水素吸蔵合金の量を減らすことが可能である。この結果、電池の軽量化およびコスト低減が可能となる。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記二酸化マンガンと前記水酸化ニッケルの合計を100%重量とするとき、前記水酸化ニッケルの重量比が5〜30%である。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、粒子径を走査電子顕微鏡による画像における粒子径の中央値で表すとき、前記二酸化マンガンの粒子径が、5〜15μmであり、前記水酸化ニッケルの粒子径が、15〜25μmであり、前記二酸化マンガンと前記水酸化ニッケルの粒子径の比が、1.5〜2.5である。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、真円度を粒子の粒子径に対する粒子を外接する円と内接する円の差の比で表すとき、前記二酸化マンガン粒子および前記水酸化ニッケル粒子の真円度が1/5以下である。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記正極が、前記二酸化マンガの造粒粒子と前記水酸化ニッケルの造粒粒子を含んでいる。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記造粒粒子は造粒助剤を含んでおり、前記二酸化マンガンと、前記水酸化ニッケルと、前記造粒助剤との合計を100質量%とした場合に、前記造粒助剤が、0.1〜20質量%である。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記正極が、集電体の上に前記水酸化ニッケルを含んだ層があり、その上に前記二酸化マンガンを含んだ層がある。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記負極の電極容量が、前記正極の電極容量よりも小さい。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記水素貯蔵室の前記水素ガスを前記負極に供給し、前記酸素貯蔵室の前記酸素ガスを前記正極に供給することにより発電を行う。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記密閉容器内の前記電解液がバッファータンクに流入可能になっていて、前記バッファータンクの圧力を減圧することにより、前記電解液から前記酸素ガスを前記バッファータンクから取り出し可能となっている。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記密閉容器には前記電解液の流入口と流出口が設けられていて、前記流出口から流出した前記電解液が前記バッファータンクを経由して、前記流入口に流入可能になっている。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記密閉容器から取り出した前記水素ガスを前記負極に供給し、前記バッファータンクから取り出した前記酸素ガスを前記正極に供給することにより発電を行う。
本発明の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池は、前記二酸化マンガンが前記正極における充電反応の触媒として機能し、前記水素吸蔵材料が前記負極における充電反応の触媒として機能する。
本発明のリバーシブル燃料電池は、エネルギー密度が高く、負荷追従性に優れ、かつ、寿命特性に優れたことを特徴とする。
二酸化マンガンと水酸化ニッケルの電子顕微鏡写真の例である。 本発明の実施形態に係るリバーシブル燃料電池の構造を模式的に示す断面図であり、酸素が電解液に溶存した例である。 放電特性試験における放電容量と維持率を示す図である。 放電特性試験の各Cレートにおける充放電曲線を示す図である。 各Cレートにおける水酸化ニッケルと二酸化マンガンの放電容量を示す図である。 充電後の正極のX線回折試験結果(XRD)を示す図である。 充電後の正極の交流インピーダンス試験結果を示す図である。 Cレート試験前の充電と放電における正極の内部抵抗を示す図である。 Cレート試験後の充電と放電における正極の内部抵抗を示す図である。 リバーシブル燃料電池を用いた発電プロセスを説明するための構成図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。
リバーシブル燃料電池の詳細な説明の前に、リバーシブル燃料電池の主要な材質および構成要素について説明する。
<正極材料>
二酸化マンガンと水酸化ニッケルとを混合して正極材料とした。なお、これら正極活物質は、高容量化を達成しやすいことから、嵩密度が大きなもの、例えば球状のものが好ましい。
図1に二酸化マンガン粒子と水酸化ニッケル粒子の電子顕微鏡写真(SEM像)を示す。図1の左側の2つが二酸化マンガンであり、右側の2つが水酸化ニッケルである。下側の写真はそれぞれの拡大図である。二酸化マンガンの粒径は概略10μmであり、水酸化ニッケルの粒径は概略20μmである。SEM像をみると二酸化マンガンは微粒子分が多く、球状に近い形ではあるが角がまだ取れてない部分が多く存在する。一方、水酸化ニッケルは二酸化マンガンより粒子のサイズが大きく、また角が良く取れた球状になっている。
水酸化ニッケルの粒子と二酸化マンガンの粒子を混合することにより、電池性能の向上が期待できる。具体的には、電気導電率の高い水酸化ニッケル(10−2〜10−1S/cm)が電気導電率の低い二酸化マンガン(10−7〜10−2S/cm)の欠点を補い出力特性に優れた正極となる。更に、充放電電圧が水酸化ニッケルにより規制されるので、正極の寿命特性が改善される。すなわち、二酸化マンガンの充電電圧が水酸化ニッケルにより抑制されて、結晶構造がδ化されにくくなる。また、二酸化マンガンの放電電圧が水酸化ニッケルにより抑制されて、不可逆物質である四三酸化マンガンが生成されにくくなる。充電速度が飛躍的に向上し、電池の出力特性と寿命特性が向上する。
二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルは造粒したものを用いることができる。造粒することにより、粒子間の空間が少なく塗布性に優れるとともに組成均一性に優れた正極を得ることができるという効果が期待できる。
二酸化マンガンの粒子径は5〜15μmであることが好ましい。また水酸化ニッケルの粒子径は10〜30μmであることが好ましい。これは、粒子径が小さすぎると、正極材料を集電体に塗布する工程でエネルギー密度が低くなる傾向がある。逆に大きすぎると、スラリー塗布の工程で、集電体に正極材料を均一に塗布又は充填できない、もしくは正極材料が集電体から剥離・脱落したりする。
なお、二酸化マンガンおよび水酸化ニッケルの粒子径は、レーザー式粒度分布測定機を用いて、湿式レーザー法により測定してもよい。
造粒された正極活物質は、球状の造粒体であることが好ましい。球状の造粒体であることで、粉としての流動性が向上し、混合・混練の工程で正極材料の分散性を改善し、均一性にすぐれた正極材料となりうる。
真円度を粒子の粒子径に対する粒子を外接する円と内接する円の差の比で表すとき、二酸化マンガン粒子および水酸化マンガン粒子の真円度が1/5以下である。ここに、走査電子顕微鏡による画像で粒子を平面的に捉えた場合、粒子を外接する円の直径をD1とし、その粒子に内包され粒子を内接する円の直径をD2とし、粒子径をD3とするとき、真円度Sは(D1−D2)/D3で表される。
正極材料は、さらに造粒助剤を含んでいることが好ましい。造粒助剤は、造粒効率を高めるための材料である。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル系樹脂、イソブチレンと無水マレイン酸との共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリデン、ハイドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、コーンスターチ、ゼラチン、リグニンなどが挙げられる。このうち、造粒効率が高く、耐アルカリ性、耐還元性、負極の寿命特性の観点から、EVAが好ましい。
造粒助剤の添加方法は、粉末状態で添加するよりも、水もしくはアルコール、アセトン、キシレン、トルエン等の有機溶媒に溶解させて噴霧するなどの方法で添加して造粒することが好ましい。造粒助剤の添加量としては、二酸化マンガンと、水酸化ニッケルと造粒助剤の合計を100質量%とした場合に、造粒助剤が、0.1〜20質量%であることが好ましい。
造粒助剤には、さらに導電剤を添加することが好ましい。造粒助剤に導電性が付与されれば、造粒体の電子の導電性がよくなり、電池の出力特性が向上する。
導電剤の添加量としては、導電剤の種類にもよるが、例えば、導電剤がカーボン系材料である場合、造粒助剤と、導電剤の合計を100質量%とした際に、導電剤が、40〜70質量%であることが好ましい。導電剤が少なすぎると、造粒体の電子の導電性の付与が充分でない。逆に多すぎると、造粒助剤の効果を充分に引き出せない。
造粒方法は、造粒体を得ることができれば、特に限定されない。例えば、スプレードライ法、転動造粒法、凝集粉砕法などにより造粒体を得てもよい。
スプレードライ法とは、二酸化マンガンと、水酸化ニッケルと、必要に応じて添加される造粒助剤と、導電剤が分散した溶液とから成る原液をドライヤー本体内のノズルまたは高速回転円盤で微粒化して、単位体積あたりの表面積を増加させて、連続的に熱風に接触させて、瞬間的に乾燥させて二次粒子である造粒粒子を得る方法である。
正極材料の説明の最後に、二酸化マンガンと水酸化ニッケルの混合割合について考察してみる。
二酸化マンガンは、放電と共に体積が増える。それは二酸化マンガンの結晶内のイオン半径の変化によるものである。4価から3価のマンガンイオンに変わることによってイオン半径が大きくなり、二酸化マンガンは放電と共に膨張する。二酸化マンガンの充電状態の体積を100とした場合、放電状態では105と体積の膨張が起こる。
一方、水酸化ニッケルは、二酸化マンガンとは逆に充電反応と共に体積が膨張する。これは、層状構造である水酸化ニッケルが充電と共に層間距離が増えるからである。水酸化ニッケルの放電状態の体積を100とした場合、充電状態では105と増える。水酸化ニッケルは過充電状態になると、酸素発生と共に電解液に存在するイオンのインターカレーションが起こり、β型のオキシ水酸化ニッケルからγ型のオキシ水酸化ニッケルに変わる。そのときの体積は150と増える。
そこで、二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合するとき、体積変化を考慮すると二酸化マンガンと水酸化ニッケルの混合割合は重量比で9:1が適切であると考えられる。これは、抵抗が大きい二酸化マンガンが抵抗の小さい水酸化ニッケルと同時に充電をされるとき、オキシ水酸化ニッケルがβからγ型に変わる反応が同時に起こる。したがって二酸化マンガンが重量比9である場合の相対的な体積変化量は9(重量比)×5(体積変化分)=45で、水酸化ニッケルの体積変化は1(重量比)×45(体積変化分)=45で、充電反応を想定すると二酸化マンガンの体積が45に減り、水酸化ニッケルは45に増えるので体積変化のバランスが取れることになり、電極全体の体積変化を抑制することが可能となる。
<負極材料>
負極材料に含まれる水素吸蔵合金は、水素の吸蔵・放出が行えるものであれば特に限定されない。例えば、希土類系合金であるAB5型、ラーベス相合金であるAB2型、チタン−ジルコニウム系合金であるAB型、マグネシウム系合金であるA2B型などの合金系が挙げられる。
このうち、水素貯蔵容量、充放電特性、自己放電特性およびサイクル寿命特性の観点から、AB5型の希土類−ニッケル合金である、MmNiCoMnAlのミッシュメタルを含んだ5元系合金であることが好ましい。
<結着剤>
結着剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)を含む。活物質、結着剤および導電助剤等の電極材料の合計を100重量%とした場合、各電極に配合される結着剤の重量比は、0.1〜10重量%で配合されていることが好ましい。
<導電助剤>
導電助剤は、導電性を有する粉末であればよい。この導電助剤は、例えば、黒鉛粉末、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどの、カーボン粉末であってもよい。活物質、結着剤および導電助剤等の電極材料の合計を100重量%とした場合、各電極に配合される導電助剤の重量比は、0.1〜10重量%の範囲で配合されていることが好ましい。
[正極]
二酸化マンガンと水酸化ニッケルの造粒粒子を混合して正極材料とした。なお造粒は、造粒助剤に倍量のキシレン(100℃)と導電剤とを加え、振動を与えながら混合を行ったものを用いた。
上記の2種類の活物質、導電助剤としてカーボンブラック、および、結着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を重量比で100:15:10の割合で配合して正極材料とした。粉末状の正極材料を混合してペースト状に混練して、このペーストを集電体の両面に塗布または充填して、乾燥後にローラープレスで集電体を圧延して正極を製作した。電極容量は45mAhとした。なお。集電体として厚さ20μmのニッケル箔を用いたが、ニッケルメタルや白金メタルであってよく、形状も三次元形状もしくは板状であってもよく、電極は両面に形成してもよい。
[負極]
活物質として水素吸蔵合金、導電助剤としてカーボンブラック、および、結着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、その配合割合は重量比で100:5:5とした。粉末状の負極材料を混合してペースト状に混練して、このペーストを集電体の両面に塗布または充填して、乾燥後にローラープレスで集電体を圧延して負極を製作した。電極容量は48mAhとした。なお。集電体としての発泡ニッケルを用いたが、ニッケルメタルや白金メタルであってよく、形状も三次元形状もしくは板状であってもよく、電極は両面に形成してもよい。
[電解質]
本発明で用いられる電解液は、水電解で通常用いられているアルカリ水溶液であれば特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ物質を一種単独もしくは二種以上を水に溶かしたものが好適である。電池の出力特性の観点から、電解液は水酸化カリウム水溶液であることが好ましい。これらの電解液におけるアルカリ物質の濃度は、1〜10mol/Lであることが好ましく、3〜8mol/Lがより好ましい。
[セパレータ]
本発明で用いられるセパレータは、電子は通さずプロトンを透過させる一方、ガスを通過しにくいものが好ましい。セパレータの形状としては、微多孔膜、織布、不織布、圧粉体が挙げられ、このうち、出力特性と製作コストの観点から不織布が好ましい。セパレータの材質としては、特に限定されないが、耐アルカリ性を有し、耐酸化性、耐還元性を有するセパレータであることが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料が挙げられる。
(リバーシブル燃料電池の実施例)
本発明に係るリバーシブル燃料電池の主要構成要素である電池ユニットの構成について図2を用いて説明する。
電池ユニット10は、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して利用する燃料電池に二次電池の反応機構を取り込んだリバーシブル燃料電池を構成したものであり、セパレータ14を介して対向するに正極11と、負極12と、これら電極スタック13を収納する密閉容器16とを主要な構成要素として備えている。
電極11,12はその間にイオンは通すが電子は通さないセパレータ14を配して積層されている。セパレータ14は各電極11、12が電気的に短絡するのを防止すると共に、電解液15を保持する役割を果たす。セパレータ14をその間に配した各電極は積層されて電極スタック13を構成する。電極の枚数を調節することにより、リバーシブル燃料電池の規模を容易に調整することができる。
正極11および負極12はそれぞれ端部に外部機器との接続用の端子11tおよび12tを有している。接続用の端子11t、12tは、それぞれ、電線22a,22bを介して直流電源21のプラス極およびマイナス極に接続されている。
正極11は、正極11の電極面に開口した酸素流通室17を有している。また、負極12は、負極12の電極面に開口した水素流通室18を有している。酸素流通室17は配管25aにより、酸素ガス貯蔵室23に接続されている。水素流通室18は配管25bにより、水素ガス貯蔵室24に接続されている。
図2に示すように、密閉容器16には電解液15が満たされている。電極スタック13は電解液15に浸漬された状態で密閉容器16に収納され、電池ユニット10を構成している。
正極11と負極12とがセパレータ14を介して積層して電極スタックを構成してもよく、積層した状態で蛇腹状に折りたたんで電極スタック13を構成してもよく、また、積層した状態で渦巻き状に捲回して電極スタック13を構成してもよい。また、電解液15はセパレータ14に含浸させてもよく図2に示すように電解液15が満たされた密閉容器16に電極スタック13を浸漬されてもよい。要するにセパレータ14が電解液15を保持している。
上記のように構成された電池ユニット10は、以下のように動作する。電池ユニット10は、一般的な二次電池と同様の材料を用いて構成されているので、満充電の状態まで二次電池と同様に電流による充電を行うことができる。電池ユニット10が満充電状態に達した後、さらに電流を供給し続けると、電解液15の電気分解が起こり、負極12からは水素ガスが、正極11からは酸素ガスがそれぞれ発生するが、これら水素ガスおよび酸素ガスは、互いに接触することなく、水素流通室18および酸素流通室17を経由して、それぞれ、水素ガス貯蔵室24および酸素ガス貯蔵室23に貯蔵される。
電池ユニット10の放電が開始されると、負極12および正極11間では、二次電池としての通常の放電反応が起こって負荷に電流が流れる。このとき、負極12および正極11のそれぞれにおいて、放電によって減少した電気量分が、水素ガス貯蔵室24および酸素ガス貯蔵室23にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。すなわち、負極12においては、充電状態の水素吸蔵合金(MH)から放出された分のプロトンが、水素ガスによって補われ、負極の充電状態が維持される。一方正極11においては、放電状態のオキシ水酸化マンガンが、酸素ガスによって再び酸化され二酸化マンガンとなる。各貯蔵室24,23の水素ガスおよび酸素ガスが消費された後は、通常の二次電池として作動して放電がなされる。
すなわち、本実施形態に係る電池ユニット10は、二次電池として通常の充電により電極に蓄えることのできるエネルギーに加えて、過充電時に供給される電気エネルギーを、各貯蔵室24,23にガスとして蓄え、これを電気エネルギーに再変換して利用することが可能である。この場合、各貯蔵室24,23およびこれを含む電池ユニット10の耐圧性能と密閉性能を高めることにより、体積あたりのガス貯蔵量を増加させて、電池ユニット10のエネルギー密度を従来の二次電池と比較して大幅に、例えば数10倍程度に向上させることが可能となる。しかも、各貯蔵室24,23には、過充電時に負極12で発生した水素ガスおよび正極11で発生した酸素ガスが直接貯蔵されるので、ガスの昇圧装置や連通路を追加で設ける必要がなく、簡単な構造によって、安価に製造・供給することが可能な燃料電池とすることができる。
さらに、上述のように、電池ユニット10の放電時には、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーが出力されるので、従来の燃料電池と比較して、負荷に対する追従性が大幅に向上する。これにより、例えば車両のような、瞬間的に高出力が要求される負荷変動の大きい用途にも、追加の二次電池やキャパシタなどの蓄電装置を伴うことなく、単独で適用することが可能となる。
しかも、本実施形態に係る電池ユニット10において、正極11が、二酸化マンガンと水酸化ニッケルの混合物を含んでいる。二酸化マンガンは正極における反応の触媒として機能し、水酸化ニッケルは耐久性に優れるので、両物質を混合して正極活物質として用いることにより、充電速度および寿命特性をともに向上させることができる。
なお、図2に示すように、電池ユニット10の水素ガス貯蔵室24および酸素ガス貯蔵室23のそれぞれに、水素ガスを供給する水素ガス供給系統(図示せず)、および酸素ガスを供給する酸素ガス供給系統(図示せず)を接続すれば、水素ガスによって負極12を充電し、酸素ガスによって正極11充電することができるので、電気分解によらず、ガス供給のみによって電池ユニット10を充電することが可能になる。
(試験結果)
二酸化マンガンは、電解析出法で集電板に二酸化マンガンを析出させた後、集電板から削り取り、その後粉砕行って製作した。もっとも、このような方法では図1に示す水酸化ニッケルのような球状に製作することは困難である。
表1に示すように三つの電極サンプルを製作して試験を行った。それぞれの電極は表1の組成比で混合したペーストをニッケルフォームに塗布し、プレスすることにより製作した。電極の厚みは約300μmである。電解液には6M KOH水溶液を用い、対極にニッケルフォーム、参照極にAg/AgClを用いてセルを組み立てた。そして、Cレート特性を調べることによって電極の電気化学的な特性を評価した。そのときのCレート条件を表2に示す。
二酸化マンガンは充電状態であるため、最初に0.1CでPre-dischargeを行った。放電の下限電位は-0.5 V (vs. Ag/AgCl)とし、1電子反応((5)式)だけが起こるように設定した。その後、表2に示すように充電レートは0.2Cで行い、放電レートだけを変化させて放電におけるレート特性を調べた(ただし、放電レート0.1Cを除く)。図3に各サイクル(レート)における放電容量及び0.1Cに対する放電容量の維持率を示す。
図3(上)を見ると水酸化ニッケルを添加することによって放電容量が増えており、水酸化ニッケルの添加量が5%(□で示す)よりも10%(△で示す)の方が放電容量が増えていることが分かる。一方、0.1Cレートに対する他レートのおける放電容量の維持率を比べた結果を図3(下)に示す。図3(下)から、水酸化ニッケルを添加することによって維持率が増加しており、レート特性が向上したこと分かる。もっとも、今回の試験に関する限り、維持率は水酸化ニッケルの添加量には影響されないことがわかった。ここに、△で示す曲線(1)はSample#3、□で示す曲線(2)はSample#2、○で示す曲線(3)はSample#1の試験結果を示す。
これをさらに詳しく分析するために、各Cレートにおける充放電特性を調べその結果を図4に示す。図4において、曲線(1)はSample#1(表1参照)の特性であり、曲線(2)はSample#2の特性であり、曲線(3)はSample#3の特性である。
まず、充電曲線をみると、0.3V(vs Ag/AgCl)以下の電位はオキシ水酸化マンガンが二酸化マンガンに酸化される反応範囲であるが、水酸化ニッケルを添加した電極は、添加していない電極より過電圧が下がっていることが分かる。また、過充電領域には水酸化ニッケルの量が多い方が遅く達することが分かる。さらに添加量に関わらず、水酸化ニッケルを添加した電極の過電圧はほぼ一致することが確認できた。この結果から、今回の試験結果から、二酸化マンガン単独の場合よりも、水酸化ニッケルの添加した方が過電圧が抑えられ、その程度は水酸化ニッケルの添加量によらないことが分かる。この事実は、すべてのCレートにおいて共通することは、図4の放電曲線から確認することができる。
Cレートが増えることによってそれぞれの電極内に存在する過電圧により取り出せる放電容量は下がる(図4)。しかし、水酸化ニッケルを添加した電極は放電容量の低下が抑えられることが確認できた。図4の放電曲線には水酸化ニッケルによる放電容量も含まれて現れているので、これを明確にするために検討を行いその結果を図5に示す。図5は、二酸化マンガンによる放電量(0V〜−0.5V vs Ag/AgCl)と水酸化ニッケル(0V以上 vs Ag/AgCl)からの放電量を分けて、各Cレートにおける放電量を示す。
図5の値はぞれぞれのCレートで最後のサイクルの試験結果からまとめたものである。図中、△で示す曲線(1)はSample#3、□で示す曲線(2)はSample#2、○で示す曲線(3)はSample#1の試験結果を示す。
放電容量をみるとCレートが上がることにより放電容量は、すべての電極において低下するが、水酸化ニッケルが添加された電極は放電容量の低下が抑えられていることが分かる。さらに水酸化ニッケルの添加量が多い方(曲線(1)、△で示す)が少ない方(曲線(2)、□で示す)よりも、二酸化マンガンからの放電容量も増えたことがわかる。これは、水酸化ニッケルの添加により電極内の導電構造が改善されたからであると考えられる。水酸化ニッケルは二酸化マンガンに比べて高い電気導電率を持つことや、球状でありながら粒子のサイズは二酸化マンガンより約2倍大きいため、水酸化ニッケルと二酸化マンガン粒子間のバイモーダル効果により、電子導電パスが有利に働いたと思われる。
水酸化ニッケルの添加により充電時におこる二酸化マンガンの結晶構造がγ型からδ型へ変化するのが抑えられることを確認するために、充電後の電極のX線回折試験(XRD分析)を行い、その結果を図6に示す。図6をみると水酸化ニッケルを添加しない二酸化マンガン電極(上の曲線)は、充電後δ型の二酸化マンガンが生成されたことを示す●で示すピークを確認することができた。しかし、水酸化ニッケルを添加した電極(下の曲線)では、そのようなピークが見られない。さらに充電後の電極の交流インピーダンスを調べて電極における反応抵抗を調べ、その結果を図7に示す。交流インピーダンスのグラフを見ると10Hz以上では抵抗値がほぼ一致するが、10Hz以下の低周波では抵抗が増えていることがわかる。この抵抗はXRD分析の結果からδ型の生成が影響しているのではないかと推測される。
以上より、水酸化ニッケルを二酸化マンガンに添加することによりδ型二酸化マンガンの生成を抑制することができ、サイクル特性の向上にも貢献できることが分かった。
瞬間的に取り出せる出力を調べるためにSOC20〜90%(State of Charge;充電状態)の範囲で2C、10secの条件で放電および充電を行った。図8はCレート試験前の試験結果であり、図9はCレート試験後の試験結果である。図中、○で示す曲線(1)はSample#1、■で示す曲線(2)はSample#3の試験結果である。そして、図8および9において、上のグラフは電極の内部抵抗であって、右側が充電時であり左側が放電時である。そして下のグラフは開路電位(OCP)である。まず、SOC別の開路電位(OCP)を見ると水酸化ニッケルが添加された電極(■で示す)は添加されてない電極(○で示す)と比べてOCPが高いことが見られた。上述したように過電圧の低下による効果であると考えられる。
またCレート試験前では高SOCでは水酸化ニッケルを添加した電極の内部抵抗は低いが、そのほかの範囲では大きく変わらないことが分かる。瞬間的な出力は活物質の表面で起こる反応が反映されるため、二酸化マンガン表面での反応は大きく差がないためであると考えられる。しかしCレート試験後みると低SOCで内部抵抗が急激に増えることが見られた。δ型の二酸化マンガンは抵抗が大きい四三酸化マンガン(Mn)に変化される傾向にあるが、この影響を反映していると考えられる。
以上をまとめると二酸化マンガン電極に水酸化ニッケルを少量添加することにより以下の効果が得られると考えられる。
(1)放電容量の向上/水酸化ニッケルが概略平均径が20μm、二酸化マンガンが概略平均径が10μmと、粒子のサイズの違いによるバイモーダルの効果が出て電極内の導電構造が改善され、二酸化マンガンの利用率が向上する。
(2)レート特性の向上/導電構造の改善及び比較的に高い電気導電率を持つ水酸化ニッケルにより電子移動がより進むようになり、レート特性が向上する。
(3)サイクル特性の向上/δ型二酸化マンガンの生成の抑制により、反応性が乏しい四三酸化マンガンの生成が防がれ、これにより、サイクル特性が向上する。
(4)二酸化マンガンと水酸化ニッケルの合計を100%重量とするとき、水酸化ニッケルの重量割合は、5〜30%であるのが好ましい。水酸化ニッケルの混合量が少なければ寿命特性の向上効果が薄れ、多ければ二酸化マンガンの特性である安価、高い放電容量の効果が阻害される。体積変化の観点から計算により求めた二酸化マンガンと水酸化ニッケルの好ましい混合比は重量比で9:1であること、試験結果から水酸化ニッケルの混合比は5%よりも10%の方が好ましいことから、これらを総合的に判断すると、水酸化ニッケルのより好ましい混合割合は10〜20%であるといえる。
正極の製造について別の実施形態について説明する。
二酸化マンガンと水酸化ニッケルの物性を比べると、結晶状態から密度を算出すると二酸化マンガン粒子の方が水酸化ニッケル粒子より大きいが、実際に使用されている粒子について言えば、二酸化マンガンは粒径が小さく表面積が大きいことからタップ密度が低く、水酸化ニッケルは粒径が大きく表面積が小さくてタップ密度は大きい。また、電気導電率とリバーシブル燃料電池反応(酸素による充電反応)を考えると、集電体の近くには水酸化ニッケルが、外側には二酸化マンガンが配置された方が望ましい。
印刷電極のコーティング方法は種々あるが、いずれも流動性のあるスラリーを作り、それを金属薄膜などに塗布していくものである。具体的な方法として2つあり、一つ目は2つの活物質を混合して1つのスラリーを作り、集電体に塗布する方法である。二つ目はそれぞれの活物質で別々のスラリーを作り、それを順番に塗布していく多層コーティング法である。
一つ目の方法は、スラリーを作るときに集電体側に水酸化ニッケル粒子が配置されるようにするために、スラリーの流動性が大きい方が望ましく、粘度は100~5000cpがまた厚みは片面基準で50〜100μmの方が望ましい。この状態でスラリー印刷をすると乾燥する間にタップ密度が大きい水酸化ニッケルが沈み、集電体側には水酸化ニッケルが配置されるようになる。
2つ目の多層コーティングは、水酸化ニッケルと二酸化マンガンのスラリーをそれぞれ製作した後、まずは水酸化ニッケルを塗布し、乾燥した後に二酸化マンガンのスラリーをコーティングする。この時、水酸化ニッケル層の厚みは5〜10μm、二酸化マンガン層の厚みは45〜90μmが適切と考えられる。
(発電プロセスの実施例)
リバーシブル燃料電池を用いた発電プロセスについて図10を用いて説明する。なお、リバーシブル燃料電池と共通する説明は省略する。電池ユニット30は配管42aを介してバッファータンク46に接続されている。電池ユニット30の電解液流出口40から出た電解液43は配管42aに配した絞り41aを経由してバッファータンク46に流入する。バッファータンク46に流入した電解液43は、バッファータンク46で減圧されて、電解液に溶存していた酸素の一部はガス状態となり、バッファータンク46の頂部の空間に貯まる。バッファータンク46の頂部には、ガス通路52を経由して酸素ガス貯蔵タンク47が接続されていて、ガス状態となった酸素は酸素ガス貯蔵タンク47に貯えられる。酸素ガス貯蔵タンク47は酸素ガス流通路51に設けた遮断弁49を経由して、電池ユニット30の酸素流通口37に接続されている。
バッファータンク46内の電解液43は、配管42b、42cを介して電池ユニット30に戻される。配管42bには絞り41bが設けられている。絞り41a、41bは電池ユニット30内の圧力を高圧に維持する役割を果たす。また、配管42bの途中に補給水系統48が接続されていて、電解液43の電気分解により不足した水分を電池ユニット30に補給する。バッファータンク46を出た電解液43は、ポンプ45にて昇圧されて電解液流入口50から電池ユニット30に戻される。二次電池としての使用により温度が上昇した電解液43は、配管42cに設けた冷却器44で冷却される。
次に発電プロセスの動作について説明する。負極および正極が満充電に達した後、さらに電流を供給し続ければ、電解液43が電気分解されて、負極32からは水素ガスが発生し、正極31からは酸素が発生する。発生した水素ガスは電解液43に溶解しにくく密閉容器36の頂部に貯まる。一方、発生した酸素の一部は電解液43に溶解し、他の一部はガス状態となる。電流を継続して供給することにより、密閉容器36の頂部の水素ガスは増加してその圧力は増大する。圧力の増大した水素ガスは電解液43を圧縮して、電解液43の圧力は増大する。電解液43の圧力が増大すれば、そこに溶存する酸素量は増加するので、正極31から発生した酸素はガス状態にならず電解液43に溶解することとなる。
酸素が溶存した電解液43はバッファータンク46で減圧されて、電解液43に溶存していた酸素のうち飽和点を超えた分がガス状態となり、バッファータンク46の頂部から酸素ガス貯蔵タンク47に貯蔵される。このとき遮断弁49は閉じられている。
密閉容器36の頂部には水素ガス取り出し口60が設けられていて、密閉容器36内の水素ガスは開いている遮断弁63aおよび水素ガス貯蔵通路62を経由して水素ガス貯蔵タンク64に送られる。この動作は、水素ガスおよび酸素ガスの発生および貯蔵するモードである。
次に燃料電池としての作動モードについて説明する。水素ガス貯蔵タンク64内の水素ガスは水素ガス供給通路61および開いている遮断弁63bを経由して水素流通口38に送られて、負極32に水素ガスを供給する。酸素ガス貯蔵タンク47内の酸素ガスは酸素ガス流通路51および開いている遮断弁49を経由して酸素流通口37に送られて、正極31に酸素ガスを供給する。負極32および正極31が放電することにより電池ユニット30は燃料電池として動作する。また、放電すると同時に負極32および正極31は、それぞれ、水素ガスおよび酸素ガスにより充電されることとなる。
本リバーシブル燃料電池は、産業用および民生用の燃料電池として、好適に用いることができる。
10 電池ユニット
11 正極
12 負極
13 電極スタック
14 セパレータ
15 電解液
16 密閉容器
17 酸素流通口
18 水素流通口
21 直流電源
22 電線
23 酸素ガス貯蔵室
24 水素ガス貯蔵室
25 配管(ガス通路)
26 補給水系統
30 電池ユニット
31 正極
32 負極
36 密閉容器
37 酸素流通口
38 水素流通口
40 電解液流出口
41 絞り
42 配管
43 電解液
44 冷却器
45 ポンプ
46 バッファータンク
47 酸素ガス貯蔵タンク
48 補給水系統
49 遮断弁
50 電解液流入口
51 酸素ガス流通路
60 水素ガス取り出し口
61 水素ガス供給通路
62 水素ガス貯蔵通路
63 遮断弁
64 水素ガス貯蔵タンク

Claims (15)

  1. 二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合した材料を含む正極と、
    負極活物質を含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在して、イオンは通すが電子は通さないセパレータと、
    電解液とを有し、
    前記電解液が電気分解することのより、前記負極で発生する水素ガスを貯蔵する水素貯蔵室と、
    前記電解液が電気分解することのより、前記正極で発生する酸素ガスを貯蔵する酸素貯蔵室とを有する、混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  2. 二酸化マンガンと水酸化ニッケルを混合した材料を含む正極と、
    負極活物質を含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在して、イオンは通すが電子は通さないセパレータと、
    電解液と、
    前記正極と、前記負極と、前記セパレータと、前記電解液とを収納する密閉容器とを有し、
    前記電解液が電気分解することのより、前記負極で発生する水素をガス状態で前記密閉容器から取出し、
    前記電解液が電気分解することのより、前記正極で発生する酸素を前記電解液に溶存させた状態で前記密閉容器から取出す混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  3. 前記二酸化マンガンと前記水酸化ニッケルの合計を100%重量とするとき、前記水酸化ニッケルの重量比が5〜30%である請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  4. 粒子径を走査電子顕微鏡による画像における粒子径の中央値で表すとき、
    前記二酸化マンガの粒子径が、5〜15μmであり、
    前記水酸化ニッケルの粒子径が、15〜25μmであり、
    前記二酸化マンガンと前記水酸化ニッケルの粒子径の比が、1.5〜2.5である請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  5. 真円度を粒子の粒子径に対する粒子を外接する円と内接する円の差の比で表すとき、前記二酸化マンガン粒子および前記水酸化ニッケル粒子の真円度が1/5以下である請求項4に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  6. 前記正極が、前記二酸化マンガの造粒粒子と前記水酸化ニッケルの造粒粒子を含んでいる請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  7. 前記造粒粒子は造粒助剤を含んでおり、
    前記二酸化マンガンと、前記水酸化ニッケルと、前記造粒助剤との合計を100質量%とした場合に、前記造粒助剤が、0.1〜20質量%である請求項6に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  8. 前記正極が、集電体の上に前記水酸化ニッケルを含んだ層があり、その上に前記二酸化マンガンを含んだ層がある請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  9. 前記負極が水素吸蔵合金を含む請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  10. 前記負極の電極容量が、前記正極の電極容量よりも小さい請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  11. 前記水素貯蔵室の前記水素ガスを前記負極に供給し、前記酸素貯蔵室の前記酸素ガスを前記正極に供給することにより発電を行う請求項1に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  12. 前記密閉容器内の前記電解液がバッファータンクに流入可能になっていて、前記バッファータンクの圧力を減圧することにより、前記電解液から前記酸素ガスを前記バッファータンクから取り出し可能となっている請求項2に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  13. 前記密閉容器には前記電解液の流入口と流出口が設けられていて、前記流出口から流出した前記電解液が前記バッファータンクを経由して、前記流入口に流入可能になっている請求項12に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  14. 前記密閉容器から取り出した前記水素ガスを前記負極に供給し、前記バッファータンクから取り出した前記酸素ガスを前記正極に供給することにより発電を行う請求項12に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。
  15. 前記二酸化マンガンが前記正極における充電反応の触媒として機能し、前記水素吸蔵材料が前記負極における充電反応の触媒として機能する、請求項1または2のいずれか一項に記載の混合電極を用いたリバーシブル燃料電池。

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