JP2017006028A - 細胞工学用支持体、及び細胞工学用支持体の製造方法 - Google Patents

細胞工学用支持体、及び細胞工学用支持体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞培養時の長期間の構造安定性と、分化能とを両立できる細胞工学用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体と、
前記骨格構造体の表面に形成された乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層と、を有する細胞工学用支持体を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞工学用支持体、及び細胞工学用支持体の製造方法に関する。
従来から、手術、外傷等によって喪失した生体組織を体細胞、幹細胞等によって再構築し、それを患者に移植することにより喪失した生体組織を再生する治療方法が行われている。その治療において生体組織を再生するためには、播種する細胞が生体組織を再建するまでの足場となる支持体(マトリックス)が重要となる。
例えば特許文献1には、生体吸収性高分子材料から成り、孔径が5〜50μmの小孔構造を有する立体的な網目構造中に断面積中の20〜80%を占める不定形な連続孔を有し、その弾性係数が0.1〜2.5MPaで、水中に24時間浸漬した際の体積変化率が95〜105%であることを特徴とするブロック状細胞工学用支持体が開示されている。また、ブロック状細胞工学用支持体に用いる生体吸収性高分子材料として、ポリグリコール酸や、ポリ乳酸等が例示されている。
特許文献1に開示されたブロック状細胞工学用支持体は、従来のスポンジ状の細胞工学用支持体と比較して弾性係数が高いので形状安定性に優れ且つ水分を吸収してもその体積変化の少ない優れた特性を有している。
特開2006−136673号公報
ところで、近年は細胞を長期間に渡って、培養、分化させた場合においても構造を維持でき、細胞の分化能にも優れた細胞工学用支持体が求められている。
そして本発明の発明者らの検討によれば、特許文献1に開示されたブロック状細胞工学用支持体を作製する際、生体吸収性高分子材料としてポリ乳酸を用いることで、長期間に渡って細胞を培養した場合でも細胞工学用支持体は構造を維持できる。
しかしながら、生体吸収性高分子材料としてポリ乳酸を用いた場合、細胞の分化能が十分ではない場合があった。
本発明は上記従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであって、本発明の一側面では、細胞培養時の長期間の構造安定性と、分化能とを両立できる細胞工学用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体と、
前記骨格構造体の表面に形成された乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層と、を有する細胞支持体を提供する。
本発明の一態様によれば、細胞培養時の長期間の構造安定性と、分化能とを両立できる細胞工学用支持体を提供することができる。
本発明の実施形態に係る細胞工学用支持体の断面模式図。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[細胞工学用支持体]
本実施形態では細胞工学用支持体の一構成例について説明する。
本実施形態の細胞工学用支持体は、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体と、骨格構造体の表面に形成された乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層と、を有することができる。
以下に本実施形態の細胞工学用支持体に含まれる要素について説明する。
本実施形態の細胞工学用支持体は上述のように、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体を有することができる。
骨格構造体は、小孔構造を有する立体的な網目構造を有しており、さらに不定形な連続孔を含むことができる。そして、本発明の発明者らの検討によれば、該骨格構造体がポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含むことで、該骨格構造体の強度を高め、細胞培養時の長期間の構造安定性を発揮することができる。
なお、ポリ乳酸としては、D体と、L体との両方を分子鎖中に同時に含むポリ−DL−乳酸も知られている。しかしながら、骨格構造体がポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む場合と比較して、係るポリ−DL−乳酸を用いた場合、細胞培養時の長期間の構造安定性が十分ではない場合がある。このため、上述のように骨格構造体はポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含むことが好ましい。特に、骨格構造体は、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸からなることが好ましい。
次に、コート層について説明する。
コート層は乳酸−グリコール酸共重合体を含むことができる。本発明の発明者らの検討によれば乳酸−グリコール酸共重合体は、骨格構造体に用いた場合、細胞培養時の長期間の構造安定性はポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸には劣っている。しかしながら、培養する細胞の保持性には優れており、骨格構造体の表面を覆うコート層が乳酸−グリコール酸共重合体を含むことで、分化能を高めることができる。
特にコート層は、乳酸−グリコール酸共重合体からなることが好ましい。ただし、後述のようにコート層は、例えば乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液に骨格構造体を浸漬後、凍結乾燥することで形成することができる。このため、この場合でも例えば乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液に含まれていた溶媒等の不可避成分が含有されていてもよい。
次に、本実施形態の細胞工学用支持体の構造について模式的に示す。図1は、本実施形態の細胞工学用支持体の任意の面における断面構造を模式的に示したものである。
なお、既述のように、本実施形態の細胞工学用支持体は、小孔構造を有する立体的な網目構造を有しており、さらに不定形な連続孔を含む。図1においては、係る不定形な連続孔が分かりやすいように断面のサイズに対して非常に大きく記載している。実際には非常に小さい孔サイズの連続孔となっている。
図1に示したように、本実施形態の細胞工学用支持体10は、骨格構造体11と、骨格構造体11の表面に形成されたコート層12とを有している。そして、骨格構造体11はその内部に不定形な連続孔13を有している。
図1に示したようにコート層12は、骨格構造体11の外形を形成する表面部分に形成された表面コート層121のみではなく、骨格構造体11内部の連続孔13の表面に形成された内部コート層122も含むことができる。
特にコート層12は、骨格構造体11の外形を形成する表面部分全体に表面コート層121が形成され、且つ骨格構造体11内部に形成された連続孔13の表面全体にも内部コート層122が形成されていることがより好ましい。
コート層12の構造は特に限定されるものではないが、培養する細胞の保持性がより高くなるように、多孔質の層、すなわちスポンジ状の層となっていることが好ましい。
細胞工学用支持体10に占めるコート層12の割合は特に限定されるものではなく、培養する細胞の種類や、用途等に応じて任意に選択することができる。ただし、細胞を培養する際に分化能を特に高める観点から、細胞工学用支持体は、コート層を0.01質量%以上含有することが好ましく、0.1質量%以上含有することがより好ましい。
なお、細胞工学用支持体が含有するコート層の割合の上限値は特に限定されるものではないが、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
以上に説明した本実施形態の細胞工学用支持体においては、細胞培養時においても長期間の構造安定性を有する骨格構造体と、骨格構造体の表面に形成され細胞の分化能を促進することができるコート層とを含んでいる。このため、細胞培養時の長期間の構造安定性と、分化能とを両立できる細胞工学用支持体とすることができる。
[細胞工学用支持体の製造方法]
次に、本実施形態の細胞工学用支持体の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の細胞工学用支持体の製造方法は以下の工程を有することができる。
ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体を準備する骨格構造体準備工程。
骨格構造体を、乳酸−グリコ−ル酸共重合体含有溶液に浸漬する浸漬工程。
浸漬工程後、乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液から骨格構造体を取り出し、凍結乾燥する凍結乾燥工程。
以下に各工程について説明する。
(骨格構造体準備工程)
まず、骨格構造体準備工程について説明する。骨格構造体準備工程では、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体を準備することができる。
ここで準備する骨格構造体については特に限定されるものではないが、既述のように小孔構造を有する立体的な網目構造を有しており、さらに不定形な連続孔を含むことが好ましい。
係る骨格構造体は例えば以下の手順により製造することもできる。
まず、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を有機溶媒中に溶解する(溶解工程)。この際用いる有機溶媒としては特に限定されるものではなく、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解できる有機溶媒を用いることができる。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトン、ジオキサン、テトラハイドロフランから選ばれる少なくとも一種を好ましく使用できる。
ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を有機溶媒中に溶解する際、熱処理や超音波処理を併用してもよい。また、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液中の、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸の濃度は特に限定されるものではなく、例えば有機溶媒中に均一に分散できるように選択することが好ましい。具体的には例えば、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸は、有機溶媒中に1質量%以上20質量%以下となるように溶解することが好ましい。
次に、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液に、該溶液の有機溶媒に不溶で、且つ後述するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解しない液で溶解する粒子状物質を添加、混合することができる(粒子状物質添加工程)。
係る粒子状物質としては特に限定されないが、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等の水溶性の有機及び/又は無機塩を好ましく用いることができる。
また、粒子状物質は、粒子径が100μm以上2000μm以下の粒子を用いることが好ましく、200μm以上1000μm以下であることがより好ましい。
そして、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液に対する粒子状物質の添加量は特に限定されず、作製する細胞工学用支持体に要求される密度等に応じて選択することができる。例えば、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液に添加した場合に、粒子状物質の濃度が1.0g/cm以上1.5g/cm以下となるように添加することが好ましく、1.0g/cm以上1.25g/cm以下となるように添加することがより好ましい。
これは、1.0g/cm以上とすることで、後述する粉砕工程において粒子状物質を含有するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸が特に硬質となり、粉砕がし易くなるためである。また、1.5g/cm以下とすることで凍結乾燥工程後に得られる粒子状物質を含有するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸中の、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸の割合を十分に高くすることができるため、収率を高めることができるからである。
粒子状物質をポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液に略均一に混合する方法としては例えば、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液に粒子状物質を投入して必要により攪拌、混合した後に型内に注入する方法が挙げられる。また、粒子状物質が入った型内にポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液を注入する方法や、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液が入った型内に粒子状物質を混入する方法などが挙げられる。
次に、粒子状物質が添加され、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解した溶液を凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことができる(凍結乾燥工程)。
凍結乾燥工程を実施することで、粒子状物質を含有する小孔構造を有するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸とすることができる。なお、この際、粒子状物質は固体の状態でポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸中に含有されていることとなる。
次に、粒子状物質を含有するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を粉砕して一旦顆粒状とすることができる(粉砕工程)。粒子状物質がポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸中に固体(粒子状)で存在するためにポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸が硬質になるので粉砕が容易となり任意の粒子径の顆粒とすることが可能となる。
次に、粒子状物質を含有するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を粉砕した顆粒から、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を溶解しない溶液により粒子状物質を除去することができる(粒子状物質除去工程)。
粒子状物質の除去方法は粒子状物質により異なるが、粒子状物質が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等の水溶性の有機及び/又は無機塩を使用していれば水により粒子状物質のみを溶解して、除去できる。
粒子状物質を除去後、必要に応じて篩にかけて所望の粒径をもつポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸とすることもできる。
例えば後述の加圧、加熱工程供給するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸の粒径は、100μm以上3000μm以下であることが好ましい。
本実施形態の細胞工学用支持体中はその内部に連続孔を有することで、該連続孔内に細胞を留まらせることができ、細胞培養の効率を高めることができる。そして、本発明の発明者らの検討によれば、加圧、加熱工程供給するポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸の粒径を、100μm以上3000μm以下とすることで細胞工学用支持体内に十分な量の連続孔を形成できる。このため、より細胞培養の効率を高めることができるため好ましい。
そして、製造した多孔性のポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を所望の型内に入れ、加圧・加熱することによって骨格構造体を製造することができる(加圧、加熱工程)。
この際の加圧の条件は製造する骨格構造体の形状や大きさ等により異なるが、例えば500g/cm以上3000g/cm以下であることが好ましく、1000g/cm以上2000g/cm以下であることがより好ましい。
これは、500g/cm以上とすることで骨格構造体の形状安定性を特に高めることができるためであり、3000g/cm以下とすることで、細胞が増殖可能な孔を十分に確保することができるためである。
加熱の条件も骨格構造体の形状や大きさによって異なるが、上述の加圧条件で体積を保って加熱するのであれば60℃以上200℃以下であることが好ましい。60℃以上とすることで、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸同士の結合を十分に高めることができ、形状安定性を特に高めることができる。また、200℃以下とすることで、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸が変性することを確実に防ぐことができる。
(浸漬工程)
浸漬工程では、上記骨格構造体準備工程で準備した骨格構造体を乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液に浸漬することができる。
骨格構造体を乳酸−グリコール酸共重合体溶液に浸漬することで、骨格構造体の表面に乳酸−グリコール酸共重合体溶液を略均一に付着させることが可能になる。
なお、骨格構造体は既述のように小孔構造を有する立体的な網目構造を有しており、さらに不定形な連続孔を含む。このため、骨格構造体を乳酸−グリコール酸共重合体溶液に浸漬することで、骨格構造体の外形を形成する表面部分のみではなく、骨格構造体内部に形成された連続孔の表面にも乳酸−グリコール酸共重合体溶液を付着させることが可能になる。
本工程で用いる、乳酸−グリコール酸共重合体溶液の溶媒としては特に限定されるものではなく、例えば乳酸−グリコール酸共重合体溶液を溶解できる溶媒であれば良い。ただし、浸漬する骨格構造体に含まれるポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸については溶解しにくい溶媒であることが好ましい。
乳酸−グリコール酸共重合体溶液に用いる溶媒としては、乳酸−グリコール酸共重合体を溶解することができるが、ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸については溶解しにくい、溶媒を好ましく用いることができる。すなわち、乳酸−グリコール酸共重合体溶液は、溶媒としてアセトン、ジオキサン、テトラハイドロフランから選択された1種類以上を含有することが好ましい。特に、乳酸−グリコール酸共重合体溶液の、溶媒は1,4−ジオキサンから構成されていることが好ましい。
乳酸−グリコール酸共重合体溶液の濃度は特に限定されるものではなく、形成するコート層の厚さや、操作性等を考慮して任意に選択することができる。例えば、乳酸−グリコール酸共重合体溶液の濃度は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。これは0.01質量%以上とすることで、骨格構造体の表面全体にコート層をより確実に形成することができるためである。また、10質量%以下であれば乳酸−グリコール酸共重合体の粘度が低く、浸漬工程における操作性に優れるからである。
浸漬工程において、骨格構造体を乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液に浸漬する際の時間は骨格構造体の大きさ等により異なるため特に限定されるものではない。ただし、骨格構造体の表面を乳酸−グリコール酸共重合体溶液により必要以上に溶解させず、骨格構造体の表面と、乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液とが十分に接触できるように時間を選択することが好ましい。また、このときの温度も溶媒によって適宜選択され、例えば1,4−ジオキサンの場合であれば15〜20℃の範囲が好ましい。
(凍結乾燥工程)
凍結乾燥工程では、上記浸漬工程後、乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液から骨格構造体を取り出し、凍結乾燥することができる。
凍結乾燥工程では、乳酸−グリコール酸共重合体溶液に浸漬した骨格構造体を凍結することで、乳酸−グリコール酸共重合体溶液に含まれていた溶媒により骨格構造体が溶解されることを抑制しつつ、該溶媒を乾燥により除去できる。また、浸漬工程において骨格構造体の表面に塗布した乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液から、溶媒のみが除去され、乳酸−グリコール酸共重合体がコート層として残るため、コート層を多孔質の層とすることができる。コート層を多孔質の層とすることで、細胞を培養する際に、細胞と、細胞工学用支持体の保持性を高めることができる。
凍結乾燥工程における凍結の条件は特に限定されるものではないが、例えば−20℃以下に凍結して乾燥することが好ましく、−30℃以下に凍結して乾燥することがより好ましい。なお、生産性等の観点から凍結する温度は−100℃以上であることが好ましい。
以上に説明した本実施形態の細胞工学用支持体の製造方法により得られた細胞工学用支持体によれば、細胞培養時においても長期間の構造安定性を有する骨格構造体と、骨格構造体の表面に形成され細胞の分化能を促進することができるコート層とを含んでいる。このため、細胞培養時の長期間の構造安定性と、分化能とを両立できる細胞工学用支持体とすることができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により細胞工学用支持体を作製した。
細胞工学用支持体の作製手順について説明する。
(骨格構造体準備工程)
まず、以下の手順により、ポリ−L−乳酸を含有する骨格構造体を準備する骨格構造体準備工程を実施した。
1,4−ジオキサン中にポリ−L−乳酸(重量平均分子量約250,000)を6質量%の濃度となるように入れ、70℃にて攪拌機で攪拌し溶解した(溶解工程)。
次いで、ポリ−L−乳酸が溶解された1,4−ジオキサン溶液にクエン酸三ナトリウム粉末(粒子径200μm〜500μm)を濃度が約1.02g/cmとなるように略均一に混合し(粒子状物質添加工程)、型内に入れた。
その後、フリーザー(三洋電機社製 商品名:MDF−0281AT)にて−30℃の条件で凍結させた。次いで真空乾燥機(ヤマト科学社製 商品名:DP43)にて減圧下で48時間乾燥させることによって1,4−ジオキサンを取り除いてクエン酸三ナトリウム粉末を略均一に含有したポリ−L−乳酸である高分子体を得た(凍結乾燥工程)。
この高分子体を小片に切断し、遊星回転用のポットミルで20分間粉砕した(粉砕工程)。
粉砕した高分子体をフラスコに入れ蒸留水を加え攪拌させてクエン酸三ナトリウムを取り除いた(粒子状物質除去工程)。次いで、シャーレに移して真空乾燥機で48時間乾燥させ、篩にかけて粒子径700μm〜1400μm,平均孔径約5μmのポリ−L−乳酸の顆粒状多孔質物質を得た。
得られたポリ−L−乳酸の顆粒状多孔質物質を内径9mm×高さ10mmのガラス容器内に高さが約7mmとなるように入れた。そして、直径9mmのチタン棒で1500g/cmで加圧した状態の体積を保って180℃で30分間加熱して、直径9mm×高さ約7mmの円柱形状をした骨格構造体を得た(加圧、加熱工程)。
なお、得られた骨格構造体を電子顕微鏡で観察したところ、隔壁に小孔構造を有する立体的な網目構造中に不定形な連続孔を有する構造であることが確認できた。
(浸漬工程)
次に得られた骨格構造体を、乳酸−グリコ−ル酸共重合体含有溶液に浸漬する浸漬工程を実施した。
乳酸−グリコール酸共重合体溶液の溶媒としては、1,4−ジオキサンを用い、乳酸−グリコール酸共重合体を0.2質量%含有する溶液を調製した。
そして、調製した乳酸−グリコール酸共重合体溶液に、骨格構造体全体を18℃で20秒間浸漬させた。
(凍結乾燥工程)
次に、骨格構造体を乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液から骨格構造体を取り出し、凍結乾燥する凍結乾燥工程を実施した。
凍結乾燥工程では、まず骨格構造体をフリーザー(三洋電機社製 商品名:MDF−0281AT)にて−30℃の条件で凍結させた。次いで真空乾燥機(ヤマト科学社製 商品名:DP43)にて減圧下で48時間乾燥させることによって1,4−ジオキサンを取り除いて細胞工学用支持体を得た。
浸漬前の骨格構造体の重さと凍結乾燥後の細胞工学用支持体の重さから乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層の含有量を求めたところ0.75質量%であった。
[実施例2]
浸漬工程で、乳酸−グリコール酸共重合体溶液の溶媒として、1,4−ジオキサンを用い、乳酸−グリコール酸共重合体を0.07質量%含有させた点以外は、実施例1の場合と同様にして作製した。
実施例1と同様に、乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層の含有量を求めたところ0.29質量%であった。
[実施例3]
ポリ−D−乳酸を含有する骨格構造体を用いた点以外は実施例1と同様にして、細胞工学用支持体を作製した。
ポリ−D−乳酸を含有する骨格構造体は、骨格構造体準備工程の溶解工程において、1,4−ジオキサン中にポリ−D−乳酸(重量平均分子量約250,000)を10質量%の濃度となるように入れ、攪拌機で攪拌し溶解した点以外は、実施例1の場合と同様にして作製した。
実施例1と同様に、乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層の含有量を求めたところ0.63質量%であった。
10 細胞工学用支持体
11 骨格構造体
12 コート層

Claims (4)

  1. ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体と、
    前記骨格構造体の表面に形成された乳酸−グリコール酸共重合体を含むコート層と、を有する細胞工学用支持体。
  2. 前記コート層を0.01質量%以上2質量%以下含有する請求項1に記載の細胞工学用支持体。
  3. ポリ−D−乳酸、またはポリ−L−乳酸を含む骨格構造体を準備する骨格構造体準備工程と、
    前記骨格構造体を、乳酸−グリコ−ル酸共重合体含有溶液に浸漬する浸漬工程と、
    前記浸漬工程後、前記乳酸−グリコール酸共重合体含有溶液から前記骨格構造体を取り出し、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、を有する細胞工学用支持体の製造方法。
  4. 前記乳酸−グリコール酸共重合体溶液が、溶媒としてアセトン、ジオキサン、テトラハイドロフランから選択された1種類以上を含有する請求項3に記載の細胞工学用支持体の製造方法。
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