JP2017008044A - ドーパミンシグナル伝達の抑制剤 - Google Patents

ドーパミンシグナル伝達の抑制剤 Download PDF

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謙 上松
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Abstract

【課題】神経伝達物質であるドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状、例えば薬物依存、特にコカインによる薬物依存の処置または予防のための薬剤を提供することを目的とする。【解決手段】2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための医薬を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状、例えば薬物依存を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(フィンゴリモド) もしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む医薬に関する。
薬物乱用による薬物依存に関わる諸問題は、医学上の問題に留まらず大きな社会的問題でもある。薬物依存は、特定の薬物に対する渇望による精神依存ならびに、服用を中断することにより禁断症状が現れる、身体依存に分けられる。薬物の乱用に関して問題とされるのは、薬物の離脱症状による依存と薬物耐性である。離脱症状は、物質が分解や排出により、体内で不十分な量になった場合に生じる、精神的不安定をはじめとする不快な症状である。この離脱症状を回避するために、薬物を繰り返し摂取することにより、薬物に対する依存がもたらされる。薬物耐性は、薬物を連用することにより、その効果が弱くなることを指し、薬物が効きにくくなることにより、次第に使用量が増加し、薬物依存が引き起こされる。
コカインおよび覚醒剤(例えば、アンフェタミンおよびメタンフェタミンなどのアンフェタミン類)は、神経伝達物質であるドーパミンのシグナル伝達、例えばドーパミンD1受容体を介する伝達を亢進させることにより、ドーパミンの過剰なシグナル伝達を引き起こすことが知られている。神経細胞におけるシグナル伝達時には、通常、神経伝達物質は、神経細胞末端の小胞体からシナプス間隙へと放出される。これらの伝達物質は、通常、シグナル伝達後には、再取り込みポンプを介して細胞内へ再び取り込まれ、分解またはリサイクルされる。上記の薬物は、この放出−取り込み機構を阻害することによって、シナプス間隙におけるドーパミンの濃度を上昇させる。具体的には、コカインは、ドーパミンの再取り込みを阻害することにより、アンフェタミン類は、ドーパミンの放出を亢進することにより、シナプス間隙におけるドーパミンの濃度を上昇させる。その結果として、これらの薬物は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達による興奮を引き起こす。
上述のような薬物依存の治療は、該薬物との接触を断つこと(脱離)から開始され、ほとんどは、治療共同体でのリハビリテーションが主体となっている。薬物依存治療剤の開発も行われているが、十分な効果を示す治療剤は存在せず、有効な薬物依存の治療剤の早急な開発が求められている。
一方、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(フィンゴリモド)は、冬虫夏草の1種であるツクツクホウシタケ(Isaria sinclarii)に含まれる、免疫抑制効果を示す成分であるミリオシン(Myriocin、ISP-1)の構造に基づいて合成された化合物であり、以下の構造式:
によって表される。フィンゴリモドは、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P:sphingosine-1-phosphate)受容体の作動薬であることがわかっており、フィンゴリモド塩酸塩(FTY720)は、多発性硬化症治療薬として、商品名イムセラ(登録商標)(田辺三菱製薬)およびジレニア(登録商標)(ノバルティスファーマ)として販売されている。
多発性硬化症は、中枢神経系に多数の病巣が形成される神経学的な疾患であり、手足のしびれ、力の入りにくさ、ふらつき、見えづらさなどの症状を伴う。該疾患は、リンパ球をはじめとする免疫細胞が、神経の軸索を覆う髄鞘を破壊する脱髄が原因となっていると考えられている。リンパ節のような二次リンパ組織から末梢血中へリンパ球の移出は、リン脂質であるS1Pにより制御されている。S1P受容体作動薬であるフィンゴリモドは、リンパ球上のS1P受容体に結合して、内在化および分解を引き起こすことにより、リンパ球上のS1P受容体を失わせる。フィンゴリモドは、この作用機序により、リンパ球の二次リンパ組織からの移出および中枢神経系への移行を阻害し、中枢神経系における炎症や脱髄を抑制していると考えられている。
さらに、フィンゴリモドは、カンビナイド受容体の阻害剤(Paugh SW et al., Mol Pharmacol. 2006 Jul;70(1):41-50)、ホスホリパーゼA2(cPLA2)阻害剤(Payne SG et al., Blood. 2007 Feb 1;109(3):1077-85)、またはセラミド合成阻害剤(Berdyshev EV et al., J Biol Chem. 2009 Feb 27;284(9):5467-77)としても作用することが報告されている。また、フィンゴリモドは、その免疫抑制作用により脳梗塞の治療に有用であること(Shichita T et al., Nature Medicine,2009 Aug;15(8):946-50)、HDAC阻害作用により嫌悪記憶の消去の促進に有用であること(Hait NC et al., Nature Neuroscience, 2014 Jul;17(7):971-80)が報告されている。
しかしながら、フィンゴリモドとドーパミンシグナル伝達経路との関連については知られていない。
Paugh SW et al., Mol Pharmacol. 2006 Jul;70(1):41-50 Payne SG et al., Blood. 2007 Feb 1;109(3):1077-85 Berdyshev EV et al., J Biol Chem. 2009 Feb 27;284(9):5467-77 Shichita T et al., Nature Medicine,2009 Aug;15(8):946-50 Hait NC et al., Nature Neuroscience, 2014 Jul;17(7):971-80
本発明は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状、例えば薬物依存およびドーパミン補充療法により誘発される症状の処置または予防に用い得る医薬、処置または予防方法等を提供することを課題とする。
本発明は、以下を含む:
[1] ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む医薬。
[2] 誘導体がリン酸エステルである、[1]記載の医薬。
[3] 薬学的に許容される塩が塩酸塩である、[1]または[2]記載の医薬。
[4] ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状が、薬物依存およびそれに伴う離脱症状および精神的および/または身体的症状ならびに、ドーパミン補充療法により誘発される症状から選択される1以上の症状である、[1]〜[3]のいずれか記載の医薬。
[5] ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状が、薬物依存およびそれに伴う離脱症状および精神的および/または身体的症状から選択される1以上の症状である、[4]記載の医薬。
[6] 薬物依存が、コカイン、アンフェタミン類、ナルコレプシー治療用薬剤またはADHD治療用薬剤により引き起こされる、[5]記載の医薬。
[7] 薬物依存がコカインにより引き起こされる、[6]記載の医薬。
[8] ドーパミン補充療法により誘発される症状が、ジスキネジア、オンオフ現象、ウェアリングオフ現象、低血圧、不整脈、悪心、呼吸障害、睡眠障害、ドーパミン調節不全症候群、幻覚、衝動性障害、不安、失見当識、錯乱および精神病から選択される1以上の症状である、[4]記載の医薬。
[9] ドーパミン補充療法により誘発される症状がジスキネジアである、[8]記載の医薬。
[10] ドーパミン補充療法を受ける対象が、ドーパミン反応性疾患に罹患している、[8]または[9]記載の医薬。
[11] ドーパミン反応性疾患が、パーキンソン病、パーキンソン症、四肢静止不能症候群およびドーパミン反応性ジストニアから選択される、[10]記載の医薬。
[12] ドーパミン反応性疾患が、パーキンソン病またはパーキンソン症である、[11]記載の医薬。
[13] ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を1以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む、医薬組成物。
[14] ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物と他の1以上の薬剤の組合せ剤。
マウス線条体のドーパミンD1細胞およびD2細胞における2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール塩酸塩(FTY720)投与時のDARPP−32の第34番目のスレオニン残基(T34)のリン酸化レベルの解析を示す。図1Aに免疫ブロッティングの結果、図1Bにその定量結果を示す。 FTY720Pを前投与した線条体スライスにおけるコカイン投与時のDARPP−32 T34リン酸化レベルの解析を示す。図2Aに免疫ブロッティングの結果、図2Bにその定量結果を示す。 FTY720前投与による、コカイン腹腔内投与による自発運動への影響を示す。図3Aに経時的な自発運動量、図3B、3Cにそれぞれ、FTY720投与から30分間積算の自発運動量、コカイン投与から50分間積算の自発運動量を示す。 FTY720Pを前投与した線条体スライスにおけるドーパミンD1作動薬、SKF81297投与時のDARPP−32 T34リン酸化レベルの定量結果を示す。 FTY720前投与による、ドーパミンD1作動薬、R(+)−SKF81297腹腔内投与による自発運動への影響を示す。図5Aに経時的な自発運動量、図5B、5Cにそれぞれ、FTY720投与から30分間積算の自発運動量、R(+)−SKF81297投与から90分間積算の自発運動量を示す。
本発明は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(フィンゴリモド)もしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む医薬を提供する。
本明細書において、「薬学的に許容される塩」は、投与後に薬学的に有効な成分またはその活性代謝物を放出することのできる、薬学的な見地から許容できる任意の塩を指す。本明細書において、薬学的に許容される塩は、無機酸または有機酸との塩、または無機塩基または有機塩基との塩を含む。無機酸より得られる塩の例としては、リン酸塩、二リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、および硫酸塩が挙げられ、有機酸より得られる塩の例としては、マレイン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。無機塩基より得られる塩としては、適当な金属との塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウムおよびアルミニウム塩、有機塩基より得られる塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、例えばトリエチルアミンおよび塩基性アミノ酸、例えばリジンとの塩が挙げられる。本明細書において、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールおよびその塩は、誘導体、水和物または溶媒和物の形態であってもよい。
本明細書において、「誘導体」は、当業者にとって通常の方法で、化学的に改変された化合物を指す。誘導体の例としては、エステル、例えばリン酸エステル、アミドおよびエーテルが挙げられる。
本明細書において、「溶媒和物」は、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールまたはその薬学的に許容される塩と、1以上の溶媒分子により形成される複合体または凝集体を指す。「水和物」は、溶媒が水である、溶媒和物を指す。溶媒和物を形成し得る溶媒としては、例えば、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
本発明で用い得る、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールの薬学的に許容される塩の例としては、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール塩酸塩(FTY720)、が挙げられ、誘導体の例としては、リン酸エステル、例えばFTY720のリン酸化代謝物である、FTY720リン酸エステル(FTY720P)が挙げられる。
本明細書において、「ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状」は、ドーパミンのシグナル伝達、例えばドーパミンD1受容体を介したシグナル伝達の過剰な活性化に伴う症状を指す。例えば、薬物依存およびその離脱症状および精神的または身体的症状、ドーパミン補充療法により誘発される症状、統合失調症および双極性障害が挙げられる。ドーパミンシグナル伝達の活性化は、該シグナル伝達経路で機能する因子であるDARPP−32(dopamine- and cAMP-regulated phosphoprotein of 32 kDa)およびERK(extracellular signal-regulated kinase)のリン酸化またはドーパミン受容体の発現上昇により検出し得る。DARPP−32のリン酸化レベルは、例えば、第34番目のスレオニン残基(T34)におけるリン酸化の検出により測定し得る。
本明細書において、特定の薬物に対する「薬物依存」は、精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(Diagnostic and statistical Manual of Mental Disorders, 4th Ed. Text revision (2000))(DSM−IV TR)に記載された基準を参照し定義することができる。薬物依存の症状とは、以下の群から選択される少なくとも3つの症状を12ヶ月の期間内に同時に引き起こす、臨床的に著しい障害および苦痛をもたらす薬物の使用パターンと定義できる。該症状は、(1)(a)望ましい効果を得るために実質的に薬物の量が増加したことによる;または(b)等量の薬物の継続的使用により実質的に効果が減少したことによる;耐性(2)(a)特定の薬物による特徴的な離脱症状;または(b)離脱症状を和らげるか、または避けるための、摂取したのと同一の、または密接に関連のある薬物による離脱症状;(3)乱用薬物が、しばしば想定よりも大用量で、または長期間にわたって摂取されること;(4)乱用薬物の制御への継続的な望みまたは成功しない努力があること;(5)乱用薬物の取得活動、薬物の使用、またはその影響からの回復に多大な時間が費やされること;(6)乱用薬物の使用のために、重要な社会的、職業的または娯楽の活動を諦め、または減らすこと;および(7)乱用薬物の使用は、身体的または精神的問題を発生させるまたは悪化させること、または再発し得ることを知っていながら、続けてしまうことである。該薬物依存は、耐性または離脱が起こる身体的依存であっても、耐性または離脱が起こらない非身体的な依存であってもよい。
本明細書において、薬物依存を引き起こす薬物は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達を引き起こす薬物であれば特に限定されないが、例えば、コカイン、覚醒剤(例えば、アンフェタミン、メタンフェタミン、D−(デキストロ)アンフェタミンおよび3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)などのアンフェタミン類)、ニコチン、メチルフェニデート、ナルコレプシー治療用薬剤(例えばペモリン(例えばベタナミン(登録商標)))およびADHD治療用薬剤(例えばリスデキサンフェタミン)が挙げられる。これらの薬物には、上記薬物と構造または性質の類似している成分を含む薬物である、危険ドラッグ(例えばフルオロアンフェタミンおよびフルオロメタンフェタミン)も含まれる。
該薬物は、特に、コカインおよびアンフェタミン類の薬物(例えばアンフェタミン、メタンフェタミン、D−(デキストロ)アンフェタミンおよびMDMA)である。これらの薬物の反復投与は、行動感作と呼ばれる自発運動を顕著に増加する傾向にあり、自発運動は、薬物依存の指標として使用し得る。
本明細書において、薬物依存の「離脱症状」は、例えば特定の物質の投与を軽減、遅延または中止した場合に、体内の該物質の量が分解や排出により不十分な量になった場合に生じる、不快な症状の集合を指す。離脱症状の例としては、無気力、無謀、興奮、判断力の低下、衝動脅迫、攻撃性、怒り、該物質に対する渇望、不安、気分障害および睡眠障害が挙げられる。例えば、コカインの離脱症状としては、疲労、抑鬱、興奮、睡眠障害、食欲増加、精神運動遅延、動揺、コカインに対する渇望が挙げられる。また、覚醒剤の1種であるメタンフェタミンの離脱症状としては、例えば、不安、睡眠障害、疲労、食欲増進、精神運動の興奮もしくは遅延、不快な夢が挙げられる。
本明細書において、「薬物依存に伴う精神的または身体的症状」としては、典型的には、多幸感、無気力、無謀、判断力の低下、衝動脅迫、攻撃性、怒り、薬物に対する渇望および気分障害が挙げられる。例えば、コカインによる依存に伴う精神的または身体的症状としては、注意欠陥、多動性障害および多幸感、活力、興奮、社会性の増加、空腹感および疲労の減少、感受性の増加、情動不安、痛みの減少、コカインに対する渇望、気管支炎、息切れ、胸痛、動悸、不整脈、心筋症、心臓発作、瞳孔散大、悪心、嘔吐、頭痛、回転性めまい、不安、動揺性めまい、精神障害、錯乱、鼻粘膜症、鼻粘膜痂皮、反復性鼻血、鼻づまりおよび顔面痛が挙げられる。
本明細書において、「ドーパミン補充療法」は、ドーパミンの不足により引き起こされる症状、例えばパーキンソン病のようなドーパミン反応性疾患に罹患している対象において、ドーパミンを補充することにより行う処置方法を指す。本明細書中において、「ドーパミン反応性疾患」は、ドーパミン補充療法により、予防、治療または改善し得る疾患を指す。該疾患としては、例えば、パーキンソン病、パーキンソン症、四肢静止不能症候群およびドーパミン反応性ジストニアが挙げられる。
ドーパミン補充療法に用いられる薬剤としては、ドーパミンの前駆体である、L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA、レボドパ)が挙げられる。L−DOPA製剤としては、例えばドパゾール(登録商標)およびドパストン(登録商標)が知られている。L−DOPAと併用される薬剤としては、ドーパミン脱炭酸酵素阻害剤(例えば、カルビドパ(例えばネオドパストン(登録商標)、メネシット(登録商標))およびベンセラジド(例えば、イーシードパール(登録商標)、ネオドパゾール(登録商標)およびマドパー(登録商標)))が挙げられる。ドーパミン補充療法に用いてよい他の薬剤として、ドーパミン遊離促進剤(例えば塩酸アマンタジン(シンメトレル(登録商標)))およびモノアミン酸化酵素(MAO)−B阻害剤(例えばセレギリンおよびラサギリン)が挙げられる。また、ドーパミン作動薬(例えばロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリペジル、カベルゴリン、アポモルヒネ、リスリド、SKF81297、およびR(+)−SKF81297)およびカテコールアミン−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばエンタカポンおよびトルカポン)のような他の薬剤をドーパミン補充療法に用いてもよい。
本明細書において、「ドーパミン補充療法により誘発される症状」は、上述のドーパミン補充療法により、該療法を受けた対象、例えばドーパミン反応性疾患に罹患している対象において誘発される症状を指す。これらの症状は、長期間にわたるドーパミン補充療法によるドーパミンの過剰なシグナル伝達により引き起こされる。該症状としては、例えば、ジスキネジア、オンオフ現象、ウェアリングオフ現象、低血圧、不整脈、悪心、呼吸障害、睡眠障害、ドーパミン調節不全症候群、幻覚、衝動性障害、不安、失見当識、錯乱および精神病が挙げられ、特に、該症状はジスキネジアである。
本明細書において、症状の「処置」は、一つの態様において、該症状の原因および/または作用を軽減または抑制することを指す。他の態様において、「処置」は、測定可能な身体的パラメーターの少なくとも一つを改善させることを指す。また、他の態様において、「処置」は、症状を、身体的に(例えば認識可能な徴候の安定化)、生理学的に(例えば身体的パラメーターの安定化)またはその両方で調節することを指す。
本明細書において、症状の「予防」は、症状のいずれの徴候があらわれるよりも前に、対象に本発明の化合物を投与することを指す。
本発明の医薬は、慣用される任意の剤形で、慣用される任意の経路によって、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤などの形態で、例えば経口、経鼻または吸入によって、または非経腸経路、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、舌下、経直腸、経膣、経皮、皮下投与によって、例えば注射用液剤または懸濁剤の形態で投与してよい。例えば、本発明の医薬は、経口用の内服薬、例えばカプセル剤の形態で投与してよい。
本発明はまた、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を対象に有効量投与することを含む、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状の処置または予防方法を提供する。本明細書において、有効量とは、投与を受けた対象の健康状態に悪影響を及ぼさずに、該対象において本発明の効果を発揮する投与量を指す。有効量は、対象の年齢、体重、性別、処置する症状および重症度によって適宜調整する場合がある。2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールは、例えば、0.1ng/kg(体重)/日〜100mg/kg/日の量で投与してよい。1回の投与あたりの投与量は、例えば0.01ng/kg(体重)〜100mg/kgであってよい。
また、本発明は、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物と、薬学的に許容される1以上の賦形剤とを含む、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための医薬組成物を提供する。該組成物に用い得る賦形剤の例としては、崩壊剤、崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤、溶解補助剤、等張化剤、pH調整剤、安定化剤、噴射剤および増粘剤が挙げられる。
また、本発明は、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物と、1以上の他の薬剤を含む組合せ剤を提供する。
本発明において、組合せ剤に用い得る他の薬剤の例としては、例えば、薬物依存および、パーキンソン病のようなドーパミン反応性疾患の処置に用いられる薬剤が挙げられる。具体的な薬剤としては、例えば以下のようなものが挙げられる:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えば、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラムおよびフルオキセチン)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)(例えば、デュロキセチン、ミルタザピンおよびベンラファキシン)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)(例えばブプロピオンおよびアトモキセチン)、ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害剤(NDRI)(例えばブプロピオン)、セロトニン5−ヒドロキシトリプタミン1A(5HT1A)受容体拮抗薬、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばジスルフィラム)、アデノシン受容体阻害剤(例えばイストラデフィリン)、ナトリウムチャネルブロッカー(例えばラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピンおよびバルプロ酸)、カルシウムチャンネルブロッカー(例えばニモジピン、ラモトリジンおよびカルバマゼピン)、中枢および末梢αアドレナリン受容体拮抗薬(例えばプラゾシン)、中枢αアドレナリン受容体作動薬(例えばクロニジン)、中枢または末梢βアドレナリン受容体拮抗薬(例えばプロプラノール)、NK−1受容体拮抗薬、コルチコトロピン放出因子(CRF)拮抗薬、非定型/定型抗精神病剤(例えばブプロピオン、オランゼピン、リスペリドン、クエチアピン、およびハロペリドール)、三環系抗うつ剤(例えばアミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリンおよびトリミプラミン)、四環系抗うつ剤(例えば、マプロチリン、ミアンセリンおよびセチプチリン)、抗けいれん剤(例えばフェニトイン、ラモトリジン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、バルプロ酸、トピラメート、チアガピン、ビバガトリンおよびレベチラセタム)、グルタミン酸拮抗薬(例えばトピラメート)、γ−アミノ酪酸(GABA)作動薬(例えば、バクロフェン、バルプロ酸およびトピラメート)、GABA代謝酵素阻害剤、GABA合成賦活薬、部分ドーパミンD2受容体作動薬(例えばアリピプラゾール)、ドーパミン前駆体(例えばL−ドーパおよびカルビドパ)、ドーパミン作動薬(例えば、ドーパミン、ブロモクリプチン、メチルフェニデート、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリペジル、カベルゴリン、アポモルヒネおよびリスリド)、ドーパミン代謝酵素阻害剤(例えばカルビドパ)、カテコールアミン−O−メチル−トランスフェラーゼ阻害剤(例えばエンタカポンおよびトルカポン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(例えばセレギリンおよびラサギリン)、オピオイド受容体阻害剤(例えばナルトレキソンおよびナロキソン)、気分安定剤(例えばカルバマゼピンおよびリチウム)、5HT1受容体作動薬(例えばゲピロン)、セロトニン5HT2受容体阻害剤(例えばリタンセリン)、オピオイド(例えばメタドン)、カルボキシラーゼ阻害剤、オピオイド受容体部分作動薬(例えばブプレノルフィン)、ニコチン受容体部分作動薬(例えばチャンピックス)、吸入剤(例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、フルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1,3,5−ペンタフルオロベンゼンおよびペルフルオロベンゼン)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬(例えば、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、オキサゾラム、メダゼパム、クロキサゾラム、ロラゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、プラゼパム、ブロマゼパム、フルジアゼパム、メキサゾラム、アルプラゾラム、フルトプラゼパム、フルタゾラムおよびロフラゼプ酸エチル)、ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤(例えば、ブロチゾラン、ニトラゼパム、エスタゾラム、塩酸フルラゼパム、ニメタゼパム、フルラゼパム、ハロキサゾラム、フルニトラゼパム、塩酸リルマザポン、ロルメタゼパムおよびトリアゾラム)、非ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤(例えば、ゾルピデムおよびゾピクロム)、メラトニン受容体作動薬(例えば、ラメルテオン、5−メトキシカルボニルアミノ−N−アセチルトリプタミンおよびアゴメラチン)、抗てんかん薬(例えば、バルプロ酸ナトリウムフェニトインおよびカルバマゼピン)およびオレキシン受容体拮抗薬(例えば、スボレキサント)が挙げられる。
組み合わせに際しては、併用する薬剤の投与時期は限定されず、本発明の医薬または医薬組成物と併用する薬剤または医薬組成物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用する薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量およびに準ずればよく、対象、投与経路、処置する症状、組み合わせ等により適宜選択してよい。併用薬剤は、例えば0.1ng/kg(体重)/日〜1g/kg/日であってよい。
また、組合せ剤において、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオール(フィンゴリモド)と、併用する薬剤の投与量の比率(フィンゴリモドの投与量/組み合わせる薬剤の投与量)は、典型的には、1/0.001〜1/100,000であってよく、これらの値は、投与ごとについての比率であっても、1日当たりの用量についての割合であってもよい。
本発明はさらに、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を提供する。
本発明はさらに、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物の使用を提供する。
本発明はさらに、ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状の処置または予防用の医薬の製造のための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物の使用を提供する。
本発明はさらに、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む医薬または医薬組成物、ならびに当該医薬または医薬組成物をドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状の処置または予防の用途に使用することができる、あるいは使用すべきであることを記載した当該医薬または医薬組成物に関する記載物を含む、商業パッケージを提供する。
本発明はさらに、ドーパミンのシグナル伝達経路の調節剤または阻害剤としての、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を提供する。
本明細書において、「ドーパミンのシグナル伝達経路の調節」は、ドーパミンのシグナル伝達経路において機能する1以上の蛋白質の活性および/または発現を増大または抑制することを指す。
本明細書において、「ドーパミンのシグナル伝達経路の阻害」は、ドーパミンのシグナル伝達経路において機能する1以上の蛋白質の活性および/または発現を低下させることを指す。
実施例1 マウス線条体のドーパミンD1細胞およびD2細胞におけるフィンゴリモド塩酸塩(FTY720)投与時のDARPP−32 T34リン酸化レベルの解析
実験手法
1.マウス線条体スライスの作製およびFTY720Pによる処理
ドーパミン受容体D1(D1R)−DARPP−32/FlagタグおよびD2R−DARPP−32/Mycタグを、それぞれドーパミンD1およびD2受容体プロモーターの制御下にて発現するトランスジェニックマウスである、D1R/D2R−DARPPマウス(Bateup H et al. Nat Neurosci. 2008 Aug;11(8):932-9, Kuroiwa M et al. J Neurochem. 2008 Nov;107(4):1014-26)を断頭し、線条体スライス(350μm)を作製した(マウス1匹から6つの線条体スライスを作製し3群に分ける。該線条体スライスをポリプロピレンインキュベーションチューブ中、アデノシンデアミナーゼ(10μg/mL)を含有するKrebs−HCO 緩衝液(和光純薬より、以下試薬を購入し要事調整した。組成:124mM NaCl、4mM KCl、26mM NaHCO、1.5mM CaCl、1.25mM KHPO、1.5 mM MgSOおよび10mM D-グルコース、pH7.4)2ml中に入れ、30℃、95%O/5%CO条件下で1時間プレインキュベートした。その後、溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク社より購入)を陰性対照として、該スライスにFTY720P (Cayman Chemicalより購入) (100nM)を投与し、投与後30秒および30分後にそれぞれエッペンドルフチューブに移し、解析を行うまで−80℃で凍結保存した。
2.免疫沈降によるドーパミンD1発現細胞とD2発現細胞の分離
上記マウス3匹分の線条体スライスを1セットとして、それに1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS: sodium dodecyl sulfate) と50mM フッ化ナトリウム (NaF)を添加し、免疫沈降用溶解バッファー(組成: 50mM Tris−HCl (pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、1% Triton X-100、1%SDS、100nM オカダ酸、Phosphatase Inhibitor Cocktail (ロッシュ社より入手))720mL中で超音波破砕を行い、冷却遠心機を用いて、15Krpm、4℃で、20分間遠心分離を行い、上清を保存した。EZViewTM Red 抗Flag(登録商標)M2抗体アフィニティーゲル50μl (Sigma-Aldrich社より購入)およびマグネットビーズ 50μl(Life Technoligies社より購入、カタログ番号14203、Dynabeads(登録商標)M-280 Tosylactivated)に結合させた抗Myc抗体(Novus Biologicals社より入手) (1μg/μl) 30μlを同時に破砕サンプル中に混和し、回転ローターを用いて、4℃で24時間ゆっくり撹拌した後、1.5mlチューブ用マグネットを用いて、抗Myc抗体−マグネットビーズ結合体を沈降させた。上清を回収して遠心分離により沈降させ、抗Flag抗体を回収した。
3.免疫ブロッティング
上記の免疫沈降により分離したそれぞれの試料を用いて、SDS−PAGEによる電気泳動を行った後、ニトロセルロースメンブレン(0.2μm)(Amersham Protran 0.2μm;GE ヘルスケア ジャパン株式会社より購入) への転写を行った。転写後のメンブレン上で、一次抗体として、抗DARPP−32抗体(Cell Signalling社より購入、マウスモノクローナル抗体、希釈条件1:50,000)および抗リン酸化DARPP−32(T34)抗体(Cell Signalling社より購入、ウサギポリクローナル抗体、希釈条件1:1000) を用いて抗体反応を行った。ブロッキングは、Can Get Signal(登録商標)試薬(東洋紡株式会社より購入)を用いて、プロトコール条件にしたがって行った。二次抗体として、抗マウスIgG抗体(Rockland社より購入、カタログ番号610-132-121、Anti-mouse IgG(H and L),IRDye800 conjugated antibody pre-absorbed)および抗ウサギIgG抗体(Life technologies社より購入、カタログ番号A21109、Goat anti-rabbit IgG (H+L) Secondary antibody, Alexa-Fluor 680 conjugate)を使用し、蛍光シグナルをOdyssey infrared imaging system(エムエステクノシステムズ)を用いて検出し、その強度を定量した。同じ実験を4回行い、統計解析を行った。統計解析は、未処理のスライスと比較して、一元配置分散分析法(One-way ANOVA)およびニューマンケウルス法を用いて行った(**p<0.01、p<0.05)。
結果
ドーパミンD1細胞では、FTY720Pの投与30分後にはDARPP−32 T34のリン酸化レベルは有意に低下していた(図1AおよびB)。この結果より、FTY720Pは、D1受容体を介するドーパミンシグナル伝達の活性化を抑制する作用があることが示される。
実施例2 FTY720Pを前投与した線条体スライスにおけるコカイン投与時のDARPP−32 T34リン酸化レベルの解析
オスのC57BL/6NCrマウス(6〜8週齢)(日本エスエルシー株式会社より入手)を用いて、実施例1と同様の方法により、マウス線条体スライスを作製し、FTY720P(100nM)を30分間投与した後、生理食塩水投与群を陰性対照としてコカイン塩酸塩(武田薬品株式会社より購入)を100μMの濃度で1分または2分間投与した。凍結保存したスライスに、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) と50mMフッ化ナトリウム(NaF)を加え、超音波破粋機で破粋を行い、直ちに100℃で10分間静置して蛋白質を抽出した。該抽出試料を用いて、実施例1と同様の方法で免疫ブロッティングを行い、DARPP−32 T34リン酸化シグナルの検出および定量を行った(図2AおよびB)。同じ実験を6回繰り返し、統計解析を行った。統計解析は、対照スライスと比較して、一元配置分散分析法(One-way ANOVA)およびニューマンケウルス法によって(**p<0.01)、ジメチルスルホキシド(DMSO)30分間処置後(陰性対象)コカイン塩酸塩 2分処理のスライス、およびFTY720P 30分間処理後コカイン塩酸塩2分間処理のスライスと比較して、二元配置分散分析法(two-way ANOVA)およびボンフェローニ法を用いて行った(p<0.01)。
結果
FTY720Pを前投与した線条体スライスにおいて、コカインにより誘発されるDARPP−32 T34リン酸化が有意に抑制された(図2AおよびB)。この結果より、FTY720Pは、コカインにより誘発されるドーパミンシグナル伝達の活性化を抑制することが示される。
実施例3 FTY720前投与による、コカイン腹腔内投与による自発運動への影響
実験手法
1日目および2日目
測定用ケージにマウスを入れ、1時間慣らした後、生理食塩水を投与して、1時間測定用ケージに入れ、赤外線検出型自発運動測定装置(ニューロサイエンス)を用いて自発運動量を自動測定した。
3日目
測定ケージにマウスを入れ、1時間慣らした後、FTY720(Cayman Chemicalより購入)(1mg/kg)または、陰性対照として生理食塩水を腹腔内投与し、さらに30分後にコカイン塩酸塩(20mg/kg)を腹腔内投与した。自発運動量を、FTY720または生理食塩水の投与10分後から、コカイン投与50分後まで経時的に測定した(図3A)(n=12)。統計解析は、生理食塩水で前処理したマウスと比較して、二元配置分散分析法(two-way ANOVA)およびボンフェローニ法を用いて行った(**p<0.01、p<0.05)。FTY720投与後30分間の自発運動量積算値を、生理食塩水を投与したマウスとFTY720を投与したマウスの間で比較し(図3B)、コカイン投与後50分間の自発運動量積算値を、生理食塩水を前投与したマウスとFTY720を前投与したマウスの間で比較した(図3C)。統計解析は、食塩水で前処理したマウスと比較して、独立t検定を用いて行った(**p<0.01)。
結果
生理食塩水を前投与した対照のマウスと比較して、FTY720を前投与したマウスでは、コカイン投与により誘発される自発運動が有意に減少した(図3C)。この結果より、FTY720は、コカインにより誘発される自発運動を抑制することが示される。
実施例4 FTY720Pを前投与した線条体スライスにおける、ドーパミンD1作動薬、SKF81297によるDARPP−32 T34リン酸化レベルの解析
実施例2と同様の方法により、マウス線条体スライスに、FTY720P(100nM)を30分間投与した後、生理食塩水投与群を陰性対照としてドーパミンD1作動薬であるSKF81297(Sigma Aldrichより購入)を1μMの濃度で10分間投与し、DARPP−32 T34リン酸化シグナルの検出および定量を行った(図4)。
結果
FTY720Pを前投与した線条体スライスにおいて、ドーパミンD1作動薬、SKF81297により誘発されるDARPP−32 T34リン酸化が有意に抑制された(図4)。この結果より、FTY720Pは、ドーパミンD1作動薬により誘発されるドーパミンシグナル伝達の活性化を抑制することが示される。
実施例5 FTY720前投与による、ドーパミンD1作動薬、R(+)−SKF81297(Sigma Aldrichより購入)腹腔内投与による自発運動への影響
実験手法
1日目および2日目
測定用ケージにマウスを入れ、1時間慣らした後、生理食塩水を投与して、1時間測定用ケージに入れ、赤外線検出型自発運動測定装置(ニューロサイエンス)を用いて自発運動量を自動測定した。
3日目
測定ケージにマウスを入れ、1時間慣らした後、FTY720(Cayman Chemicalより購入)(1mg/kg)または、陰性対照として生理食塩水を腹腔内投与し、さらに30分後にR(+)−SKF81297(0.7mg/kg)を腹腔内投与した。自発運動量を、FTY720または生理食塩水の投与10分後から、R(+)−SKF81297投与90分後まで経時的に測定した(図5A)(n=12)。統計解析は、生理食塩水で前処理したマウスと比較して、二元配置分散分析法(two-way ANOVA)およびボンフェローニ法を用いて行った(**p<0.01、p<0.05)。FTY720投与後30分間の自発運動量積算値を、生理食塩水を投与したマウスとFTY720を投与したマウスの間で比較し(図5B)、R(+)−SKF81297投与後90分間の自発運動量積算値を、生理食塩水を前投与したマウスとFTY720を前投与したマウスの間で比較した(図5C)。統計解析は、食塩水で前処理したマウスと比較して、独立t検定を用いて行った(p<0.05)。
結果
生理食塩水を前投与した対照のマウスと比較して、FTY720を前投与したマウスでは、ドーパミンD1作動薬投与により誘発される自発運動が有意に減少した(図5C)。この結果より、FTY720は、ドーパミンD1作動薬により誘発される自発運動を抑制することが示される。

Claims (14)

  1. ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む医薬。
  2. 誘導体がリン酸エステルである、請求項1記載の医薬。
  3. 薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項1または2記載の医薬。
  4. ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状が、薬物依存およびそれに伴う離脱症状および精神的および/または身体的症状ならびに、ドーパミン補充療法により誘発される症状から選択される1以上の症状である、請求項1〜3のいずれか記載の医薬。
  5. ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状が、薬物依存およびそれに伴う離脱症状および精神的および/または身体的症状から選択される1以上の症状である、請求項4記載の医薬。
  6. 薬物依存が、コカイン、アンフェタミン類、ナルコレプシー治療用薬剤またはADHD治療用薬剤により引き起こされる、請求項5記載の医薬。
  7. 薬物依存がコカインにより引き起こされる、請求項6記載の医薬。
  8. ドーパミン補充療法により誘発される症状が、ジスキネジア、オンオフ現象、ウェアリングオフ現象、低血圧、不整脈、悪心、呼吸障害、睡眠障害、ドーパミン調節不全症候群、幻覚、衝動性障害、不安、失見当識、錯乱および精神病から選択される1以上の症状である、請求項4記載の医薬。
  9. ドーパミン補充療法により誘発される症状がジスキネジアである、請求項8記載の医薬。
  10. ドーパミン補充療法を受ける対象が、ドーパミン反応性疾患に罹患している、請求項8または9記載の医薬。
  11. ドーパミン反応性疾患が、パーキンソン病、パーキンソン症、四肢静止不能症候群およびドーパミン反応性ジストニアから選択される、請求項10記載の医薬。
  12. ドーパミン反応性疾患が、パーキンソン病またはパーキンソン症である、請求項11記載の医薬。
  13. ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を1以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む、医薬組成物。
  14. ドーパミンの過剰なシグナル伝達に伴う症状を処置または予防するための、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]−1,3−プロパンジオールもしくはその誘導体、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物と他の1以上の薬剤の組み合わせ剤。
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