JP2017009704A - 多層膜を用いた光学素子、光学系および光学機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】特殊な製造方法を必要とすることなく、ルゲートフィルタと同様の光学性能が得られる光学素子を提供する。【解決手段】光学素子100は、互いに屈折率が異なる2つの材料のうち屈折率が高い方の材料により形成された膜をH膜とし、屈折率が低い方の材料により形成された膜をM膜とするとき、複数のH膜および複数のM膜が積層された多層膜を基板102上に有する。H膜およびM膜のうち一方を第1膜とし、多層膜に入射媒質を通って入射する光の波長を使用波長λとするとき、基板側から入射媒質側に向かって第1膜の光学膜厚が増減を繰り返すとともにその増減量が変化し、増減量の最大値がλ/10以上で、最小値がλ/15以下であり、H膜およびM膜の全ての総膜数が30以上1000以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、多層膜を用いた光学フィルタ等の光学素子に関する。
光学フィルタには、入射する光の強度を減衰させるNDフィルタや入射する偏光によって反射と透過を選択的に行う偏光フィルタ等がある。このような光学フィルタは、カメラや光学測定装置等の光学機器に組み込まれる。
光学フィルタの1つとして、特許文献1にルゲートフィルタが開示されている。ルゲートフィルタは、光の波長に応じて反射と透過を選択的に行う光学フィルタである。ルゲートフィルタには、同様の機能を有するダイクロイックフィルタとは異なり、透過する波長帯域で特性変動(リップル)が発生しないという特徴がある。このため、蛍光顕微鏡や光通信用途等、複数の波長の光を精度良く取得する光学機器に利用されている。このようなルゲートフィルタは、光学薄膜を複数層積層することで得られる。
特開2009−294662号公報
しかしながら、特許文献1にて開示されたルゲートフィルタは、光学薄膜を積層方向に屈折率を連続的かつ周期的に変化させながら積層するという特殊な方法で製造され、特殊な製造装置が必要となる。
本発明は、特殊な製造方法や製造装置を必要とすることなく、ルゲートフィルタと同様の光学性能が得られる光学素子を提供する。
本発明の一側面としての光学素子は、互いに屈折率が異なる2つの材料のうち屈折率が高い方の材料により形成された膜をH膜とし、屈折率が低い方の材料により形成された膜をM膜とするとき、複数のH膜および複数のM膜が積層された多層膜を基板上に有する。H膜およびM膜のうち一方を第1膜とし、多層膜に入射媒質を通って入射する光の波長を使用波長λとするとき、基板側から入射媒質側に向かって第1膜の光学膜厚が増減を繰り返すとともにその増減量が変化し、増減量の最大値がλ/10以上で、最小値がλ/15以下であり、H膜およびM膜の全ての総膜数が30以上1000以下であることを特徴とする。
なお、上記光学素子を有する光学系および光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
本発明によれば、特殊な製造方法や製造装置を必要とすることなく、2つの材料によりそれぞれ形成された2種類の膜を光学膜厚を調整しつつ積層するだけで、ルゲートフィルタと同様な良好な光学性能が得られる光学素子を実現することができる。
本発明の実施例の多層膜光学素子の断面図。 実施例1の光学素子の膜構成を示す図。 実施例1の光学素子の反射率特性を示す図。 膜厚変動の考え方を示す図。 等価膜理論を説明する図。 等価膜の屈折率分散例を示す図。 等価膜の物理膜厚の分散例を示す図。 実施例1の1層ごとの等価膜変換を示す図。 実施例2の光学素子の膜構成を示す図。 実施例2の光学素子の反射率特性を示す図。 本発明の実施例3の光学素子の膜構成を示す図。 実施例3の光学素子の反射率特性を示す図。 実施例4の光学素子の膜構成を示す図。 実施例4の光学素子の反射率特性を示す図。 実施例の光学素子を用いた蛍光顕微鏡を示す図。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
まず、後述する具体的な実施例1〜4に共通する事項について説明する。図1には、本発明の実施例の光学素子に共通する構成を示している。
光学素子100は、支持基板102と、該支持基板102上に複数の薄膜が積層されることで構成された多層膜部103と、該多層膜部103における支持基板102とは反対側の面(光入射面)を覆う入射基板101とにより構成されている。なお、入射基板101は必ずしも設けなくてもよい。また、実施例において、薄膜とは、光学干渉を利用した膜を意味し、さらに言えば、入射する波長に対して数倍以下の光学膜厚を有する膜を意味する。
多層膜部103は、入射した光の波長に応じて反射と透過を選択的に行う。多層膜を利用した反射は、多層膜ミラーのように、反射させたい波長λに対して反射率の増減を繰り返しながら各薄膜の光学膜厚をλ/4に設定することで実現できる。
一般的なルゲートフィルタでは、透過させる波長帯域に発生する大きなリップルを抑制するために、各薄膜の屈折率を変調しながら(連続的かつ周期的に変化させながら)多層膜を成膜する。ただし、このようなルゲートフィルタは、リップルの発生を抑制できるが、反射効率が下がるために多くの薄膜数(総膜数)が必要である。また、薄膜の屈折率を変調するには、所定の材料を選択したり、多元蒸着法を利用したりする等のいくつかの方法があるが、選択できる薄膜材料は限定的であり、しかも所望の屈折率を有するとは限らない。このため、従来のルゲートフィルタは多元蒸着法を用いて製造されることが一般的である。多元蒸着法とは、複数の蒸着材料を同時に成膜し、その成膜時に蒸着材料の配合比を調整することで任意の屈折率の膜を得る手法である。得られた膜の屈折率は、蒸着材料同士の内挿関係にある。しかし、多元蒸着法では、真空中での薄膜製造の際に配合比を変更するというように非常に煩雑な製造工程が必要となる。また、配合比を変更する機構や屈折率をモニタリングする機構等を備えた特殊な製造装置が必要となる。このように、多元蒸着法を用いた従来のルゲートフィルタの製造は困難である。
これに対して実施例では、2つの材料によりそれぞれ形成された2種類の薄膜を膜厚方向(層厚方向)に光学膜厚を調整しつつ積層するだけでルゲートフィルタと同様の特性が得られる多層膜を提供する。2つの材料の膜厚調整を行うだけであれば、屈折率を調整するよりもはるかに容易に製造することができる。
実施例において、多層膜部103は、互いに屈折率が異なる2つの材料のうち屈折率が高い方の材料により形成されたH膜と屈折率が低い方の材料により形成されたM膜とがそれぞれ複数層ずつ基板上(支持基板102上)に積層されて構成されている。多層膜部103に入射媒質である入射基板101を通って入射する光の波長を使用波長(設計波長)とする。
また、実施例において、2種類の薄膜であるH膜およびM膜のうち一方を第1膜とする。このとき、第1膜は、支持基板102側(基板側)から入射基板101側(入射媒質側)に向かって光学膜厚が増減を繰り返すとともにその増減量が変化し、増減量の最大値がλ/10以上で、最小値がλ/15以下であることを特徴とする。以下、この特徴を有することを条件1という。さらに、多層膜部103におけるH膜およびM膜の全ての総膜数が30以上1000以下であることを特徴とする。以下、この特徴を有することを条件2という。なお、以下の説明では、膜を層ともいう。
以下、具体的な実施例1の光学素子100について説明しながら、実施例1〜4に共通する事項についても説明する。
実施例1の光学素子100における多層膜部103の膜構成を図2に示し、反射率特性を図3に示す。使用波長の中心波長(以下、使用中心波長ともいう)λは600nmであり、多層膜部103のH膜(H層)の材料としてTaを使用し、M膜(M層)の材料としてMgFを使用した。H膜およびM膜のλに対する屈折率はそれぞれ2.194および1.380である。また、入射基板101および支持基板102には屈折率1.80のガラスを使用した。
図2において、横軸は支持基板102から入射基板101に向かって薄膜ごとに付した膜番号を示し、縦軸はそれぞれの薄膜の光学膜厚を示している。白抜きの菱形のプロット点はH膜(Ta)の光学膜厚を、黒い正方形のプロット点はM膜(MgF)の光学膜厚を示している。入射基板101および支持基板102に光学的に隣接する面はH膜であり、膜厚方向にH膜とM膜が交互に積層されている。
図3に示すように、本実施例の多層膜部103は、520〜700nmを反射波長帯域とし、それ以外の波長帯域を透過するフィルタ特性を有する。透過波長帯域のリップルは10%以下に抑制されており、ルゲートフィルタと同様の機能を有する。
本実施例におけるH膜、M膜、入射基板101および支持基板102はいずれも正の分散を有する。それぞれの分散値を表1に示す。また、それぞれの係数は、以下のハルトマンの分散式(1)で計算される。
ここで、使用波長λはnmを単位とする。任意の波長に対する屈折率n(λ)は、式(1)で表わされるが、λはRLVより大きいことが必要である。
本実施例での条件1について説明する。条件1にいう光学膜厚の増減は、同じ屈折率を有する材料(薄膜)同士を比較して判定する。このため、図2に示すように、支持基板102側から同じ屈折率の材料の光学膜厚の変化をプロットしたグラフを比較する必要がある。この比較では、材料が異なってもいても、屈折率が同一であれば(または同一として扱える程度の微差しかなければ)、同じ材料とみなす。同じ材料とみなす条件は、例えば使用中心波長λに対して屈折率の差が0.02以下とすることができる。
本実施例では、第1膜はM膜(MgF)である。M膜の光学膜厚の増減量は、支持基板102に近い膜番号2から入射基板101に近い膜番号94まで、漸次増加した後に減少する。図4には、同じ材料の連続した3層の薄膜(膜番号n−2,n,n+2で表され、n−1,n+1は異なる材料の膜番号を表す)間の光学膜厚401,402,403の増減を示している。光学膜厚が増減するとは、光学膜厚401,402,403のように、光学膜厚が大小大または小大小と変化することを意味する。
そして、光学膜厚の増減量は、図4に示すように、同じ材料の連続した3層の薄膜間の光学膜厚の差の平均とする。具体的には、1層目(n−2)と2層目(n)の光学膜厚401,402の差(d1−d2)と、2層目と3層目(n+2)の光学膜厚402,403の差(d3−d2)との平均を光学膜厚の増減量とする。なお、本実施例では、同じ材料の薄膜間に異なる材料の薄膜が1層のみ形成されているが、異なる材料の薄膜が2層以上形成されていてもよい。
図2に示すM膜(MgF)の光学膜厚の増減量は、膜番号88,90,92間での6.7nmが最小値であり、膜番号36,38,40間での122.8nmが最大値である。使用中心波長λは600nmであるため、上記最小値はλ/15以下であり、かつ上記最大値はλ/10以上である。すなわち、条件1を満足する。
また、本実施例の総膜数は95であり、30以上1000以下という条件2を満足する。本実施例のようなフィルタ用途において反射波長帯域に対する反射率を上げるためには、総膜数を増やすことが効果的である。また、透過波長帯域のリップルを低減するために、反射波長帯域の積層効率が低くなっている。積層効率が低いとは、仮想的に積層されている多層膜の屈折率差が小さいことを意味する。つまり、積層による反射率の増大効果が少ないことを意味する。このため、総膜数が30未満では所望の特性が得られない。逆に総膜数が1000を上回ると、反射波長帯域に対する反射率が100%に飽和した状態での積層となるため、リップルが多くなってしまい、好ましくない。このため、総膜数に関する条件2を満足する必要がある。なお、より望ましくは総膜数を50以上とするとよく、さらに望ましくは60以上とするとよりよい。
実施例が目標とする特性を得るための基本的な概念を示す。一般的なルゲートフィルタには大きく2つの特徴がある。一つは屈折率が少しずつ変化していること、もう一つは光学膜厚がそれぞれの膜でλ/4であることである。前者は透過波長帯域のリップルを抑制するため、後者は反射波長帯域の反射率を上げるためである。
実施例では、この思想を基に等価膜理論を拡張して多層膜部103を考案した。等価膜理論について図5を用いて説明する。500,510は光学素子であり、501,511は基板である。502,503,504,512は薄膜である。光学素子500は、3層の薄膜502,503,504により形成された多層膜を有する。一方、光学素子510は、1層の薄膜512のみを有する。
光学素子500の薄膜502と薄膜504が互いに同じ屈折率を有し、かつ同じ膜厚を有する場合、光学素子500と光学素子510は同じ特性を示すことが知られている。このことを波長および伝搬角度に対して拡張することで、以下の式(2)〜(6)が得られる。
上記式(2)〜(6)において、nは屈折率、dは物理膜厚、θは光が膜内を伝搬する角度(伝搬角度)であり、スネルの法則と光の入射角度から求めることができる。入射角は光学素子100の多層膜部103の最表面の薄膜に入射する際の角度であり、入射光の中心入射角である。式(6)はそれぞれの薄膜の位相膜厚と呼ばれる量である。また、それぞれの変数の下部に記された数字は膜を表し、「1」は薄膜502,504を、「2」は薄膜503を表す。「T」は薄膜512を表す。これらの式を展開することで、互いに屈折率が異なる2つの材料によりそれぞれ形成された2種類の薄膜を3層積層することで、1層の膜と同じ特性が得られることを表す。なお、式(5),(6)によって、それぞれの薄膜の屈折率n,n、物理膜厚d,dをU1,2,Δ1,2に変換して式(2)〜(4)に代入することでUおよびΔを求め、それらから等価屈折率nと等価物理膜厚dとを求めることができる。
式(2)〜(6)を用いて等価屈折率(以下、単に屈折率という)nを求めた膜構成例を表2および表3に示し、図6にそれらの屈折率nを、図7にそれらの等価物理膜厚(以下、単に物理膜厚という)dをそれぞれ示す。図6および図7において、実線は表2に示す膜構成の屈折率nと物理膜厚dを示し、破線は表3に示す膜構成の屈折率nと物理膜厚dを示している。表2,3の膜構成は、使用波長(中心波長)を600nmとし、入射角0°の入射光に対する屈折率nが1.840、物理膜厚dが81.5nmとなるように設計されたものである。また、表2,3の膜構成は、薄膜502,504と薄膜503の材料を相互に入れ替えたものである。
図6から、表2の構成のような材料(薄膜)の配置によって屈折率nの分散が非常に大きくなっていることが分かる。また、通常の薄膜では物理膜厚は変化しないが、表2,3の膜構成では変化している。これは物理的に膜厚が変化しているというわけではなく、光にとっての膜厚が変化する、すなわち位相変調量が変化していることを意味している。光にとっては位相量を算出する指標の1つとなる光学膜厚(=屈折率×物理膜厚)が重要であり、表2,3の膜構成のいずれも光学膜厚としてはほぼ同じ値を有する。この等価膜理論を利用して、一般的なルゲートフィルタを構成する各膜を等価膜(屈折率n)とし、これを任意の2つの材料の膜(屈折率n,n)で置換することによって、ルゲートフィルタと同様な特性が得られる。
また、第1膜の光学膜厚の増減量は、図2にも示したように、支持基板102側から入射基板101側に向かって増加した後に減少する(小−大−小と変化する)ことが望ましい。等価膜の置換前のルゲートフィルタでは、支持基板102側から入射基板101側に向かって屈折率の変化量が少しずつ大きくなり、かつ収束していく。これは前述したリップルを抑制するために必要な屈折率の変化である。このことは、式(2)〜(6)を用いた等価膜変換によれば、薄膜502,503,504の光学膜厚の比率を変えながらこれらを積層することと等価である。
式(2)〜(6)を用いて各膜を等価膜に変換したときの光学膜厚を図8に示す。ここでは、薄膜502,504の材料はTaであり、薄膜503の材料はMgFである。Taの光学膜厚は、薄膜502,504のそれぞれの光学膜厚である。発明者は、このように、ルゲートフィルタで屈折率を変調させることは、等価膜としては光学膜厚を変調させることとほぼ等価であることを見出した。
このように等価膜を積層する場合には、連続して積層された等価膜のうちHMH−HMHの中間にあるH−H膜の光学膜厚は合算することができる。図8に示す膜構成においてこの合算を行った結果が図2である。つまり、図5に示した3層の薄膜502〜504が繰り返し積層されている場合、薄膜503の光学膜厚はそのまま残り、薄膜502,504の光学膜厚はこれらに隣接する薄膜と合算される。合算の結果、薄膜502,504の光学膜厚は似たような膜厚となり、光学膜厚の増減量は小さくなる。
そこで、実施例では、H膜およびM膜のうち第1膜ではない方(他方)の膜を第2膜とする。第2膜も、支持基板102側から入射基板101側に向かって増減を繰り返すが、該第2膜の光学膜厚の増減量は第1膜の光学膜厚の増減量の半分以下であることを特徴とする。以下、この特徴を条件3とする。
実施例1では、図2に示すように。第1膜であるM膜に対して、第2膜であるH膜の光学膜厚の増減量は非常に小さい。図4に示した方法で算出すると、H膜の光学膜厚の増減量の最大値は膜番号23,25,27間での6.5nmであり、M膜の光学膜厚の増減量の最大値(122.8nm)に比べて半分以下である。すなわち、条件3を満足する。
ここでは、簡単に光学膜厚の増減量としたが、本発明の実施例として本質は、ルゲートフィルタが式(2)〜(6)に示される等価膜で表現できることである。このため、光学薄膜として機能を持たない膜を付与したり削除したりすることによって本発明の実施例から除外されることはない。例えば、使用波長がλであるときに、光学膜厚がλ/10以下の膜がその周辺の膜の周期性から外れて単独または独立に複数層成膜されている場合や各基板(101,102)に近接して配置されている場合にこれらを含めて上記増減量を算出することは意味がない。多層膜部103での光学膜厚の増減量を評価するためには、ある程度の周期性を持つ多層膜を観察することが必要である。逆に、多層膜部103に反射防止や位相調整等のルゲートフィルタとしての機能とは別の機能を有する多層膜を近接させて設けることは有効である。この場合は、ルゲートフィルタとしての機能を有する多層膜部分での光学膜厚の増減量に換算する必要がある。機能の有無に関しては、図2に示すように膜番号に対して光学膜厚の増減が最低でも5周期以上、3000周期以内で連続しているか否かで判定できる。
また、第1膜としてはM膜を用いることが望ましい。図6にも示したように、第1膜の屈折率によって式(2)〜(6)で得られる薄膜(等価膜)512の屈折率の分散が変化する。使用中心波長λ(=600nm)では同じ屈折率および同じ物理膜厚であるが、第1膜をM膜とした場合は波長が短くなるにしたがって屈折率が減少する負の分散が生じ、第1膜をH膜にした場合は波長が短くなるにしたがって屈折率が増加する正の分散が生じる。等価膜512を構成する薄膜502,503,504はそれぞれ表1に示すように正の分散を有する。
一方、式(2)〜(6)に示した拡張した等価膜理論では、基本となる膜構成が表2に示すHMHである場合は負の分散を有し、表3に示すMHMである場合は正の分散を有する。正の分散を有する材料を式(2)〜(6)に示す理論で等価膜に変換した場合は、膜構成による分散(以下、膜構成分散という)と材料による分散(以下、材料分散という)とを掛け合わせた形で等価膜の分散が求められる。表3に示すMHMの膜構成は、膜構成分散としては正の分散を有し、材料分散も正の分散であるため、非常に強い正分散を示す。これに対して、表2に示すHMHの膜構成は、膜構成分散としては負の分散を有する一方、材料分散は正の分散であるため、これらが互いに相殺されて比較的低分散を有することになる。
ルゲートフィルタのように多層化が必要な膜では、波長に対する屈折率分散はできるだけ抑えたほうがよい。図6および表2,3に示すように、求めたい屈折率nによっては表2,3に示した各膜の物理膜厚が変化し、それによって膜構成分散が非常に大きくなってしまう。このため、分散が相殺関係にあるHMHの膜構成を第1膜として選択する方が望ましい。
この理論を適用すると、M膜の光学膜厚はλ/3以下となり、H膜の光学膜厚はλ/4以下となる場合が多い。このため、M膜を第1膜とした場合に、M膜の光学膜厚をλ/3以下とし、H膜の光学膜厚をλ/4以下とすることが望ましい。以下、この条件を条件4とする。
また、実施例では、M膜の光学膜厚の増減量の増加に伴ってH膜の物理膜厚は減少することが望ましい。以下、この条件を条件5とする。光学膜厚の増減量が増加するということは、ルゲートフィルタでいう屈折率の変化量が大きく変化することに相当する。式(2)〜(6)によると、屈折率nの変化に対して薄膜503の光学膜厚を表すn×dに比べて、薄膜502,504の光学膜厚を表すn×dの変化は小さい。このことは、図8にも表れている。また、図8において、薄膜502,504の光学膜厚の増減においては、光学膜厚の増加量よりも減少量の方が小さい。そして、図2のように光学的に隣接する薄膜502,504を合算すると、光学膜厚は上下の増減の両者を加算した値となる。これは、例えば図8における等価膜番号5の薄膜502と等価膜番号5の薄膜504とを加算することを意味する。このため、薄膜502,504の物理膜厚は減少する。
実施例1では、第1膜であるM膜はMgFにより形成され、M膜の光学膜厚は膜番号36間で最大値125.6nmを有する。この光学膜厚の最大値は使用中心波長λ=600nmであるときのλ/3以下であり、条件4を満足している。また、第2膜であるH膜はTaにより形成され、H膜の光学膜厚は膜番号91で最大値107.1nmを有する。この光学膜厚の最大値は使用中心波長λ=600nmであるときのλ/4以下であり、条件5を満足している。
実施例の多層膜部103は、以上の条件1〜5を満足することで、入射角0°の入射光に対する反射率が80%以上となる反射波長帯域が、λ/10以上、λ/2以下の波長帯域幅を有することが望ましい。この条件を条件6とする。実施例1では、使用中心波長λ=600nmに対して、λ/3程度の波長帯域幅を有しており、条件6を満足している。
このように、実施例1(および後述する実施例2〜4)によれば、屈折率が順次変化する膜を利用しなくても、ルゲートフィルタと同様の特性を2つの材料によりそれぞれ形成した2種類の薄膜を積層するだけで得ることができる。
実施例2の光学素子100における多層膜部103の膜構成を図9に、反射率特性を図10に示す。本実施例では、使用中心波長λを600nmとし、多層膜部103のH膜をTaにより形成し、M膜をMgFにより形成した。本実施例は、第1膜としてH膜を用いている点で実施例1と異なる。実施例1で説明したように、第1膜としてH膜を用いると、膜構成分散が正となる。このため、等価膜512の屈折率分散は、膜構成分散も材料分散もともに正であるために非常に大きな正の分散となる。このような膜を用いると、屈折率分散が大きいために、ルゲートフィルタの反射波長帯域の短波長側で大きなリップルが発生する。単純な等価膜を用いるとこのようなリップルが生じるが、本実施例の光学素子100は、波長600nmより大きな波長帯域では十分に利用できる。このため、本実施例のような多層膜部103の膜構成を選択してもよい。
本実施例における第1膜であるH膜の光学膜厚の増減量は、膜番号38,40,42間で最大値136.8nmであり、膜番号88,90,92間で最小値7.4nmである。使用中心波長λの600nmに対して、上記最小値はλ/15以下であり、最大値はλ/10以上である。また、膜総数は95である。したがって、本実施例は、条件1および条件2を満足しており、さらには条件3〜6も満足している。
実施例3の光学素子100における多層膜部103の膜構成を図11に、反射率特性を図12に示す。本実施例では、使用中心波長λを600nmとし、多層膜部103のH膜をTaにより形成し、M膜をMgFにより形成した。本実施例は、実施例1における膜番号38の薄膜の膜厚を0nmとしたものに相当する。実施例1では、ルゲートフィルタの設計に倣って微小な膜厚を有する薄膜もそのまま有効な薄膜として扱ったが、物理膜厚が5nm以下または光学膜厚が10nm以下の薄膜は光学特性に大きな影響を及ぼさない。このため、このような薄膜を排除しても、図12に示すように十分にルゲートフィルタと同様な機能を有するフィルタを得ることができる。
一方、実施例1の膜番号38の薄膜の膜厚が0nmとなったことで、図11に示すように、膜番号37と膜番号39の膜の光学膜厚が合算されて1つだけ突出して厚い光学膜厚を形成している。このように一部に光学膜厚の異常部分が存在する場合でも、全体として図12に示すようなルゲートフィルタと同様な機能を有する限り、本発明の実施例から除外されない。言い換えれば、異常部分を除いた、膜番号1〜30および膜番号60〜95等の正常な周期性を有してルゲートフィルタと同様な機能を得るために寄与する部分を有すれば、本発明の実施例に含まれる。
実施例4の光学素子100における多層膜部103の膜構成を図13に、反射率特性を図14に示す。本実施例では、使用中心波長λを600nmとし、多層膜部103のH膜をTaにより形成し、M膜をMgFにより形成した。本実施例は、膜番号38の薄膜を境として、膜番号が小さい側では第1膜としてM膜を用い、膜番号が大きい側では第1膜としてH膜を用いている。同じ屈折率が実現できればよいため、第1膜を多層膜部103内で膜厚方向(積層方向)で切り替えてもよい。
図14から分かるように、本実施例でも、実施例1,3と同程度に、ルゲートフィルタと同様の機能が実現されている。
以上説明したように、2種類の材料を膜厚方向に積層するだけでルゲートフィルタと同様の特性を有する多層膜を実現することができる。
図15には、実施例1〜4で説明した光学素子100を用いた光学系を有する光学機器の例として、蛍光顕微鏡の構成を示している。1701は被検物(サンプル)であり、1702は対物レンズである。1704,1706は集光レンズであり、1705は光検出素子である。1707は発光素子である。そして、1703は実施例1〜4のいずれかで説明したルゲートフィルタ機能を有する光学素子である。
発光素子1707から出射した光は、集光レンズ1706により平行光に変換され、光学素子1703に入射する。光学素子1703は発光素子1707から入射した光を反射する機能を有しており、光学素子1703からの反射光は対物レンズ1702を介してサンプル1701に照射される。
サンプル1701に照射された光によって発生した蛍光は、対物レンズ1702を介して平行光に変換され、光学素子1703に入射する。蛍光は、発光素子1707からの入射光とは波長が異なる光である。ここでは、蛍光の波長が光学素子1703の透過波長帯域となるように光学素子1703の多層膜部の膜構成が設定されている。光学素子1703を透過した蛍光は、集光レンズ1704を通して光検出素子1705に向けて集光され、該光検出素子1705により受光されて検出される。
本実施例では、例として光学素子1703を入射光に対して45度傾けて配置する場合について説明したが、この場合は各薄膜の光学膜厚を45度用に設定すればよく、当然ながら他の角度用に用いる場合でもその角度用に光学膜厚を設定すればよい。
また、各実施例の光学素子の用途は、蛍光顕微鏡に限らず、入射光の波長によって反射と透過を選択的に行うフィルタ機能が必要な様々な光学機器に用いることができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
100 光学素子
101 入射基板
102 支持基板
103 多層膜部

Claims (11)

  1. 互いに屈折率が異なる2つの材料のうち前記屈折率が高い方の材料により形成された膜をH膜とし、前記屈折率が低い方の材料により形成された膜をM膜とするとき、複数の前記H膜および複数の前記M膜が積層された多層膜を基板上に有する光学素子であって、
    前記H膜および前記M膜のうち一方を第1膜とし、前記多層膜に入射媒質を通って入射する光の波長を使用波長λとするとき、
    前記基板側から前記入射媒質側に向かって前記第1膜の光学膜厚が増減を繰り返すとともにその増減量が変化し、前記増減量の最大値がλ/10以上で、最小値がλ/15以下であり、
    前記H膜および前記M膜の総膜数が30以上1000以下であることを特徴とする光学素子。
  2. 前記増減の幅が、前記基板側から前記入射媒質側に向かって、増加した後に減少するように変化することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記H膜および前記M膜のうち他方である第2膜の光学膜厚が増減を繰り返すとともにその増減量が変化し、
    前記第2膜の光学膜厚の前記増減量は、前記第1膜の光学膜厚の前記増減量の半分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記第1膜は前記M膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
  5. 前記M膜である前記第1膜の光学膜厚は、λ/3以下であることを特徴とする請求項4に記載の光学素子。
  6. 前記H膜の光学膜厚は、λ/4以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の光学素子。
  7. 前記M膜である前記第1膜の光学膜厚の前記増減量の増加に伴って前記H膜の物理膜厚が減少することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の光学素子。
  8. 前記多層膜の入射角0°の入射光に対する反射率が80%以上となる反射波長帯域が、λ/10以上、λ/2以下の波長帯域幅を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学素子。
  9. 前記第1膜が前記多層膜の積層方向において前記H膜と前記M膜との間で切り替わることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子。
  10. 複数の光学素子を有し、該複数の光学素子のうち少なくとも1つが請求項1から9のいずれか一項に記載の光学素子であることを特徴とする光学系。
  11. 請求項1から9のいずれか一項に記載の光学素子と、該光学素子からの光を受光する光検出素子とを有することを特徴とする光学機器。
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