以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における微小光学構造体の構成を示す斜視図である。
この微小光学構造体は、下部金属層101と、下部金属層101の上に形成されて平面視略矩形とされたパターン102とを備える。パターン102は、下部金属層101の上に接して形成された中間層103と、中間層103の上に接して形成された上部金属層104とから構成されている。中間層103は、対象とする光が透過する材料から構成されていれば良い。下部金属層101は、平面視でパターン102より大きい面積とされている。下部金属層101および上部金属層104は、例えばAuから構成されている。中間層103は、例えば、SiO2から構成されている。
この微小光学構造体は、光アンテナとして機能し、中間層103が配置されている下部金属層101と上部金属層104との間を光が伝搬する。平面視矩形のパターン102の短い方の辺の長さ(以下幅とする)を対象とする光の1/2波長とすることで、中間層103に取り込まれた光が定在波となる。この場合、平面視矩形のパターン102の長い方の2つの側面が、光の開放端となる。
このようにして形成された定在波は、下部金属層101と上部金属層104との間において一部が吸収され、下部金属層101の表面へ向かう。また、下部金属層101の上面と上部金属層104の下面との間隔を、対象とする光の波長の1/n(nは偶数)とすることで、下部金属層101と上部金属層104との間で更に定在波が形成される。
以上のように定在波を形成する光(吸収される光)の波長、あるいは反射される光の波長は、パターン102の幅によって規定される。このような特徴を持つ微小光学構造体によれば、所望とする特定の波長の光の吸収あるいは反射を大きくすることができ、この制御が、パターン102の幅を変えることにより実現できる。
また、図2Aの平面図に示すように、下部金属層101の上に、複数のパターン102を配列すると良い。各パターン102は、中間層103の厚さおよび上部金属層104の厚さが等しい。また、複数のパターン102は、平面視の矩形の短い辺が延在する方向に等しい間隔で配列されている。例えば、幅wのパターン102を、間隔4wで配列させれば良い。例えば、幅300nm程度または700nm程度とすれば良い。また、パターン102の長さlは、600μm程度とすれば良い。
例えば、図2Bの断面図に示すように、シリコン基板201の上に酸化シリコン層202を形成し、この上に下部金属層101を形成し、形成した下部金属層101の上に、複数のパターン102を形成すれば良い。例えば、酸化シリコン層202は、層厚280nm、下部金属層101は、層厚100nm、中間層103は、層厚80nm、上部金属層104は、層厚40nmとすれば良い。
次に、上述した実施の形態における微小光学構造体の製造方法について図3A〜図3Dを用いて説明する。図3A〜図3Dは、実施の形態における微小光学構造体の製造方法を説明する各工程における状態を示す構成図である。ここでは、各工程における微小光学構造体の断面を模式的に示している。
まず、図3Aに示すように、シリコン基板201の上に酸化シリコン層202を形成し、この上に、下部金属層101,酸化シリコン層203,金属層204を順次に形成する。例えば、下部金属層101および金属層204は、Auから構成すれば良い。
下部金属層101は、真空蒸着法によりAuを堆積することで形成する。また、酸化シリコン層203は、スパッタリング法によりSiO2を堆積することで形成する。また、金属層204は、スパッタリング法によりAuを堆積することで形成する。なお、下部金属層101は、上面をCr層とし、金属層204は、下面をCr層とし、酸化シリコン層203との間の密着性(接着力)を向上させる。Auに続いてCrを堆積することで下部金属層101とすれば良い。また、酸化シリコン層203を形成した後、Crを堆積した後Auを堆積することで金属層204とすれば良い。各Cr層は、厚さ7nm程度とすれば良い。
また、金属層204の上に、レジスト層205を形成する。レジスト層205は、電子線レジストであるNEB−22A2(住友化学工業株式会社製)を用いれば良い。このレジストを、1000rpm・1分の条件でスピンコートし、この後、ホットプレート上で110℃・2分の条件で加熱処理し、レジスト層205とすれば良い。
以上にようにして形成したレジスト層205を、公知の電子線リソグラフィー技術によりパターニングし、図3Bに示すように、レジストパターン206を形成する。例えば、露光は、加速電圧50kV,ビーム電流100pAの電子ビームを用い、露光ドーズは、9μC/cm2とすれば良い。この露光によりレジスト層205に所定のパターンの潜像を形成した後、ホットプレートで100℃・2分間の条件で加熱して反応を促進させた後、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)2.38%溶液を用いて現像し、レジストパターン206を形成する。
次に、形成したレジストパターン206をマスクとしたエッチングにより、図3Cに示すように、上部金属層104,中間層103を形成する。例えば、Arガスを用いたドライエッチングにより、金属層204をエッチングして上部金属層104を形成する。例えば、一般的な反応性イオンエッチング装置を用い、Arガス流量は、20sccmとし、エッチング処理室内の圧力は0.6Paとし、プラズマ生成のためのバイアスRF出力は、50Wとすればよい。また、エッチング時間は、40秒とすれば良い。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm3流れることを示す。
また、CHF3ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、酸化シリコン層203をエッチングして中間層103を形成する。例えば、一般的な反応性イオンエッチング装置を用い、CHF3ガス流量は、20sccmとし、エッチング処理室内の圧力は0.5Paとし、プラズマ生成のためのバイアスRF出力は、38Wとすればよい。また、エッチング時間は、65秒とすれば良い。
次に、レジストパターン206を除去し、図3Dに示すように、下部金属層101の上に、複数のパターン102が配列された状態とする。例えば、O2とArとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、レジストパターン206を除去すれば良い。例えば、上記同様の反応性イオンエッチング装置を用い、流量は、O2:30sccm/Ar:20sccmとし、エッチング処理室内の圧力は0.9Paとし、プラズマ生成のためのバイアスRF出力は、100Wとすればよい。これらのことにより、実施の形態における微小光学構造体が得られる。
次に、上述したことにより製造した実施の形態における複数のパターン102が配列された微小光学構造体について説明する。まず、作製した微小光学構造体を走査型電子顕微鏡により観察した結果について図4A,図4Bを用いて説明する。図4Aは、設計値幅300nmとして作製したパターン102の状態を示す電子顕微鏡写真であり、図4Bは、設計値幅700nmとして作製したパターン102の状態を示す電子顕微鏡写真である。なお、図4A,図4Bの(a)は、上面より撮影した状態を示し、図4A,図4Bの(b)は、試料台を60°傾斜させて斜め上より撮影した状態を示す。
設計値幅300nmとして作製したパターン102の幅は、347nmであり、設計値幅700nmとして作製したパターン102の幅は、746nmであった。これらの寸法は、走査型電子顕微鏡の観察により決定した。なお、実際に作製した微小光学構造体は、配列方向に600μmの長さの中に複数のパターン102を形成しており、数百個のパターン102を備えるものとなっている。
次に、分光エリプソメータを用いて微小光学構造体の光学特性評価を行った結果について説明する。この評価では、図5に示すように、TM偏光の偏光方向をパターン102の配列方向とした状態で、TM偏光の光が斜め45度から照射される状態とし、−45°の位置に配置した受光部で反射光を受光し、微小光学構造体の光反射率を測定した。なお、図5において、y軸方向が配列方向である。下部金属層101などの構造の厚さが十分であると考えて透過光の影響を除外し、光反射率から微小光学構造体のTM偏光における光吸収率を算出した。算出結果を図6に示す。
図6に示すように、吸収を示す明瞭なピークが観察された。図6において、実線が幅347nmのパターン102による微小光学構造体の結果を示し、点線が、幅746nmのパターン102による微小光学構造体の結果を示している。図6に示すように、吸収ピーク波長は、幅347nmのパターン102による微小光学構造体では、吸収ピーク波長が1085nmとなり、幅746nmのパターン102による微小光学構造体では、吸収ピーク波長が1307nmとなった。このように、実施の形態における微小光学構造体により、特定の波長位置で吸収を起こすことできることが分かった。また、上述した結果からも明らかなように、パターン102の幅を変えることにより、吸収ピーク波長を制御(変更)することが可能である。
次に、幅347nmのパターン102による微小光学構造体について、下部金属層101の平面の法線方向から光を照射した(垂直照射した)場合の光学特性を評価した結果について説明する。この評価では、紫外可視近赤外顕微鏡を用いた。この評価では、図7に示すように、TM偏光の偏光方向をパターン102の配列方向とした状態で、TM偏光の光が垂直照射される状態として微小光学構造体の光反射率を測定した。なお、図7において、y軸方向が配列方向であり、z軸方向が垂直方向である。
この場合においても、下部金属層101などの構造の厚さが十分であると考えて透過光の影響を除外し、光反射率から微小光学構造体のTM偏光およびTE偏光における光吸収率を求めた。算出結果を図8に示す。図8において、実線がTM偏光に対する微小光学構造体の結果を示し、点線が、TE偏光に対する微小光学構造体の結果を示している。
図8に実線に示すように、TM偏光の光を照射した場合は、およそ1650nmから1850nmの位置に明瞭の吸収ピークが確認された。また、図8の点線に示すように、TE偏光の光を照射した場合は、短波長側から吸収率は緩やかに低下し、TM偏光の光照射により明瞭な吸収ピークが観察された1650nmから1850nmの波長範囲において吸収率は5%ほどであり、ほぼ光を吸収しない特性を示す結果となった。
以上の結果より、実施の形態における微小光学構造体によれば、TM偏光の光を微小光学構造体に対して垂直照射することでも、特定の波長位置に吸収を起こすことでき、吸光特性は偏光に強く依存し、更にはTM偏光の光に対し吸収が起こった波長範囲においてもTE偏光の光に対してはほとんど光の吸収を起こさせない光学特性を達成できることが分かる。
以上に説明したように、本発明では、下部金属層の上に形成した平面視矩形のパターンを、対象とする光が透過する材料から構成されて下部金属層の上に接して形成された中間層と、中間層の上に接して形成された上部金属層とから構成して微小光学構造体とした。
この結果、本発明によれば、まず、特定の光波長に対して吸収あるいは反射特性を有する微小光学構造体が実現できるようになる。また、パターンの厚さを変えることなく、パターンの幅を変え、また、配列した複数のパターンの間隔(周期)を偏光することで、吸収あるいは反射する光の波長が制御できるようになる。
また、吸収あるいは反射の特性が、光の偏光に対して強く依存する微小光学構造体が実現できる。また、本発明によれば、パターンの厚さを変えることなく、パターンの幅や配列した複数のパターンの間隔を変更すれば、吸収あるいは反射する光の波長が変更できるので、各々異なる光学特性を有する複数の微小光構造体を、一般的な半導体製造プロセス技術により1つのチップ上に集積化して製造することが可能になる。これらのように、本発明によれば、様々な光学特性をもつ光学構造体をより容易に1チップに集積化できる。
ところで、前述した実施の形態では、主にパターンを構成する中間層の厚さを80nmとした場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、酸化シリコンから構成した中間層の厚さを120nmとしても、同様の作用効果が得られる。このように、パターンの厚さを変更しても、パターン厚さを固定した状態で、パターンの幅や配列した複数のパターンの間隔を変更することで、微小光学構造体における吸収あるは反射する光の波長が制御できる。
また、照射する光の偏光方向に吸光特性は強く依存する。例えば、図9(a)に示すように、TM偏光に対しては、パターンの幅に対応して吸収する比係の波長が変化する。また、図9の(b)に示すように、TE偏光に対しては、パターンの幅を変化させても、ほぼ吸収が起きない光学特性が得られる。また、図9の(c)に示すように、TM偏光に対しては、酸化シリコンから構成した中間層の厚さ変えることで、特定の吸収波長位置において吸収波長範囲が選択できる。
なお、図9の(a),(b),(c)は、前述した実施の形態と同様に、Auから構成した下部金属層の上に、酸化シリコンから構成した中間層およびAuから構成した上部金属層による複数のパターン(間隔は幅の4倍)を備える微小光学構造体を対象とし、パターン周囲の媒質を無限の空気空間として、厳密結合波解析法による数値解析により算出した結果である。
上述した本発明の微小光学構造体は、波長フィルタや偏光素子,レンズの要素構造として利用可能である。また、本発明の微小光学構造体は、波長フィルタや偏光素子などの光学素子としての応用の他に、波長フィルタの広帯域化など新しい機能を有する光学素子などの実現に貢献するものと考えられる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
例えば、上述では、ラインアンドスペース構造を例示したが、正方平板構造や丸形の平板構造、その多層構造での実施も可能である。また、上述では、金属をAuとし、対象とする光が透過する材料をSiO2とした場合を例示したが、金属は、AgやCuとし、対象とする光が透過する材料は、CaF2やSi、Al2O3単結晶、ZnSeなどとしても良い。
また、上述した実施の形態では、光の照射を0°(垂直),および45°の角度とした場合を例示したが、光の入射角度についてもこれに限定されることなく任意に選択することが可能である。
更に、微小光学構造体の製造は、電子ビーム露光技術,フォトリソグラフィー,ナノインプリント技術,ドライ・ウエットエッチング技術,蒸着・スパッタリング・化学気相成長法等製膜技術などの、既存の超微小加工技術を組み合わせるようにすれば良い。また、パターンを構成する各層の厚さ、パターンの幅,周期は、上述した値に限定されるものではない。