JP2017012019A - 細胞構造体の製造方法、細胞構造体 - Google Patents

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泰秀 中山
良輔 岩井
Ryosuke Iwai
良輔 岩井
根本 泰
Yasushi Nemoto
泰 根本
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Abstract

【課題】本発明は、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む細胞構造体を製造することを目的とする。
【解決手段】温度応答性ポリマー組成物を調製する、調製工程と、温度応答性ポリマー組成物で、細胞培養器の第一の培養面及び第二の培養面を被覆して、それぞれ、表面ゼータ電位が0〜50mVである、第一被覆領域及び第二被覆領域を準備する、準備工程と、第一の細胞を第一被覆領域上に播種する第一播種工程と、第二の細胞を第二被覆領域上に播種する第二播種工程とからなる播種工程と、播種した第一の細胞を培養して、管腔状の細胞構造体を調製する第一培養工程と、播種した第二の細胞を培養して、シート状の細胞構造体を調製する第二培養工程とからなる前培養工程と、管腔状の細胞構造体をシート状の細胞構造体上に貼付して、複合細胞構造体を調製する、貼付工程と、複合細胞構造体を培養する、後培養工程とを備えることを特徴とする、細胞構造体の製造方法、及び該製造方法により製造される細胞構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む細胞構造体の製造方法、及び該製造方法により製造された細胞構造体に関する。
近年、患者のQOLの向上を目的として、オーダーメイド医療の実現が望まれている。オーダーメイド医療では、患者自身の細胞を用いて機能障害や機能欠損に陥った組織や臓器の再生を図る、再生医療が主要な役割を担う。
再生医療は、患者の組織から採取した細胞を、細胞培養器中で培養し、組織を形成させ、その後、その組織を患者に移植するというオペレーションを必要とする。そのため、細胞を培養して、組織等の細胞構造体を形成させる技術や、細胞構造体をそのままの状態で回収する技術が所望されている。
組織の構造を模倣した立体的構造を有する細胞構造体を形成する方法としては、例えば、細胞培養器の培養面を、特定の細胞培養用組成物で被覆した、被覆細胞培養器を用いて塊状(ペレット状)や管腔状(チューブ状)の細胞構造体を得る方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2014−027919号公報
特許文献1に記載の方法は、簡便に肉眼で視認できるほどのサイズの、塊状(ペレット状)や管腔状(チューブ状)の細胞構造体を製造することができる優れた方法であるものの、複数の準組織状の構造を有する細胞構造体を含む複合的な細胞構造体の形成を実現するために改良の余地を有していた。
そこで、本発明は、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む細胞構造体を製造することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の細胞構造体の製造方法は、
温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する、調製工程と、
前記温度応答性ポリマー組成物で、細胞培養器の第一の培養面及び第二の培養面を被覆して、それぞれ、表面ゼータ電位が0〜50mVである、第一被覆領域及び第二被覆領域を準備する、準備工程と、
第一の細胞を前記第一被覆領域上に播種する第一播種工程と、第二の細胞を前記第二被覆領域上に播種する第二播種工程とからなる播種工程と、
前記播種した第一の細胞を培養して、管腔状の細胞構造体を調製する第一培養工程と、前記播種した第二の細胞を培養して、シート状の細胞構造体を調製する第二培養工程とからなる前培養工程と、
前記管腔状の細胞構造体を前記シート状の細胞構造体上に貼付して、複合細胞構造体を調製する、貼付工程と、
前記複合細胞構造体を培養する、後培養工程と
を備えることを特徴とする。
また、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一被覆領域及び第二被覆領域に対する水の接触角が、50〜90°であることが好ましい。
更に、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一播種工程における前記第一の細胞の細胞密度を100〜300個/mm2とし、前記第二播種工程における前記第二の細胞の細胞密度を400〜1,200個/mm2とすることが好ましい。
更に、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一の細胞を血管内皮細胞とし、前記第二の細胞を平滑筋細胞とすることが好ましい。
更に、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物が、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー;N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー;2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性物質とを含む温度応答性ポリマー組成物;からなる群から選択される少なくとも1種の温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物であることが好ましい。
更に、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記アニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
更に、本発明の細胞構造体の製造方法では、前記カチオン性モノマーは、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−メタ(ア)クリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−メタ(ア)クリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタ(ア)クリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタ(ア)クリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の細胞構造体は、上記の本発明の細胞構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
本発明の細胞構造体は、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含むことを特徴とする。
また、本発明の細胞構造体は、前記管腔状の細胞構造体は、血管内皮細胞を含み、前記塊状の細胞構造体は、平滑筋細胞を含むことが好ましい。
本発明によれば、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む細胞構造体を製造することができる。
(i)〜(ix)は、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法の概要について示す図である。 本発明の実施例において調製した、平滑筋細胞の内部に網目状に延びる血管内皮細胞を含む複合細胞構造体を観察したときの写真である。(a)は、複合細胞構造体を実体顕微鏡により観察したときの写真であり、(b)に、複合細胞構造体を蛍光位相差顕微鏡により観察したときの写真である。(b)では、血管内皮細胞は緑色の蛍光を発し、平滑筋細胞は赤色の蛍光を発している。
以下、図面を参照して、本発明の細胞構造体の製造方法、及び本発明の細胞構造体の実施形態について詳細に例示説明する。
(細胞構造体の製造方法)
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法は、
温度応答性ポリマー組成物又は温度応答性ポリマー組成物を調製する、調製工程と、
前記温度応答性ポリマー組成物で、細胞培養器の第一の培養面及び第二の培養面を被覆して、それぞれ、表面ゼータ電位が0〜50mVである、第一被覆領域及び第二被覆領域を準備する、準備工程と、
第一の細胞を前記第一被覆領域上に播種する第一播種工程と、第二の細胞を前記第二被覆領域上に播種する第二播種工程とからなる播種工程と、
前記播種した第一の細胞を培養して、管腔状の細胞構造体を調製する第一培養工程と、前記播種した第二の細胞を培養して、シート状の細胞構造体を調製する第二培養工程とからなる前培養工程と、
前記管腔状の細胞構造体を前記シート状の細胞構造体上に貼付して、複合細胞構造体を調製する、貼付工程と、
前記複合細胞構造体を培養する、後培養工程と
を備える。
図1(i)〜(ix)に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法の概要について示す。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、培養面上において増殖しながら伸展するという経過を経たうえで形成された、極めてバイアビリティ(活性)の高い複数の準組織状の構造を有する細胞構造体を用いることができる。そのため、製造される複合的な細胞構造体もまた極めてバイアビリティ(活性)が高く、組織に対する各種アッセイに準ずる試験を行うことが可能になる。
以下、各工程の詳細を記載する。
本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、まず、温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する(調製工程)。
本発明の実施形態の細胞培養器に用いられる温度応答性ポリマー及び温度応答性ポリマー組成物としては、(A)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー、(B)N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー、(C)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性物質とを含む温度応答性ポリマー組成物等が挙げられる。
ここで、上記(A)としては、例えば、(A−1)DMAEMAを水存在下で重合する方法により得られる温度応答性ポリマー、(A−2)主としてDMAEMAを含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてDMAEMAとアニオン性モノマー(重合鎖ω末端)とを含む温度応答性ポリマー等が挙げられる。
本発明の実施形態において、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(A−1)、(A−2)、(B)の温度応答性ポリマーの詳細については後述する。
次いで、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、前記温度応答性ポリマー組成物で、細胞培養器の第一の培養面及び第二の培養面を被覆して、それぞれ第一被覆領域及び第二被覆領域を準備する(準備工程)。ここで、第一の培養面及び第二の培養面の表面ゼータ電位は、0〜50mVである。
図1に示す例では、後述の貼付工程における便宜のため、塊状の細胞構造体を調製するために用いる細胞培養器に、細胞培養器の底面と比較して小さい底面を有する基板と、該基板上に設けられ、頂面と側面とを有する突起とを有する治具を、用い(図1(i)、(ii)参照)、一方、シート状の細胞構造体を調製するために用いる細胞培養器にはこの治具を用いていない。
そして、この例では、図1(ii)に示す治具の頂面を第一の培養面とし、また図1(v)に示す細胞培養器の培養面を第二の培養面として、これらに温度応答性ポリマー組成物を被覆して、それぞれ、第一被覆領域及び第二被覆領域としている。
細胞培養器の材質としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、精密な成形加工が容易であり、種々の滅菌法を適用することが可能であり、透明性があるため顕微鏡観察に向いているという観点から、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
上記治具のうち温度応答性ポリマー組成物で被覆する突起の頂面以外の部分、すなわち基板及び突起の側面は、細胞非接着性とすることが好ましい。
なお、「細胞非接着性」とは、付着細胞(例えば、線維芽細胞、肝細胞、血管内皮細胞等)が、通常の培養条件下で、接着しない又は接着しにくい性質をいう。
かかる構成によれば、培養面のうちの被覆領域以外の非被覆領域に、播種された細胞が接着することを抑制することができる。接着しなかった細胞は、培地交換等の簡便な操作により、細胞培養器から除去することができ、これらの細胞によるアポトーシスやヒートショックプロテインの産生等の、接着した細胞の生育に対する悪い影響を抑制することが可能となる。
第一被覆領域及び第二被覆領域の表面ゼータ電位を、0〜50mVとする。表面ゼータ電位を0mV以上とすれば、負に帯電する細胞を接着させることができ、また、50mV以下とすれば、細胞毒性を軽減することができる。
上記と同様の理由から、表面ゼータ電位は、好適には0〜35mVであり、更に好適には10〜25mVである。
上記第一被覆領域を備える細胞培養器、及び上記第二被覆領域を備える細胞培養器によれば、一般的な37℃のインキュベーター中で細胞を培養して、組織を形成させた後、曇点以下の条件にすることにより、トリプシン処理等の細胞剥離操作を行うことなく、例えば、細胞シート状の構造を有する細胞を回収することができる。
そのため、この細胞培養器を用いて細胞を培養すれば、室温程度の条件下での細胞培養の操作が可能となる。
更に、上記特定の範囲の表面ゼータ電位を有する、第一被覆領域及び第二被覆領域によれば、細胞を適切な培養条件で培養するだけで、塊状(ペレット状)の構造や管腔状(チューブ状)の構造を有する細胞構造体を簡便に形成させることができる。
これは、上記特定の範囲の表面ゼータ電位が、細胞に格別な刺激を与えていると推定される。例えば、後述の側鎖にカチオン性基及びアニオン性基を有する温度応答性ポリマーを用いた場合、これらの側鎖官能基が、何らかの相互作用をしながら、細胞に刺激を与えていると推定される。また、上記特定の範囲の表面ゼータ電位を有する温度応答性ポリマーは、正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、細胞傷害性を抑制し(哺乳類細胞の細胞膜の表面は負電荷を帯びているため、カチオン性物質は細胞傷害性を有することが多い)、且つ、上記温度応答性ポリマーの電荷のバランスを好適にして、細胞の遊走や配向を可能にしているものと推定される。
第一被覆領域及び第二被覆領域で作製された細胞構造体は、培養面上において増殖しながら伸展するという経過を経たうえで形成されるものであるため、細胞間に産生された細胞外マトリックスが豊富に存在する。そのため、細胞構造体自体のバイアビリティ(活性)が極めて高い。
第一被覆領域及び第二被覆領域では、単位面積当たりに有する、温度応答性ポリマーの量が、5.0〜50ng/mm2であることが好ましく、15〜40ng/mm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、細胞構造体を形成させやすくするという効果が得られやすい。
第一被覆領域及び第二被覆領域では、温度応答性ポリマーは、水溶液の状態からの沈殿、溶液の塗布及び溶媒の乾燥、放射線照射、低温プラズマ照射、コロナ放電、グロー放電、紫外線、ラジカル発生剤を使用したグラフト重合等の手法により細胞培養器の培養面に被覆されていてよい。
また、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、本発明の効果を高める観点から、第一被覆領域及び第二被覆領域に対する水の接触角が、50〜90°であることが好ましく、60〜80°であることが更に好ましく、62〜78°であることが特に好ましい。
なお、被覆領域に対する水の接触角とは、被覆領域内の任意の数点において、JIS R3257に準拠して、測定される接触角の平均値を指す。
続いて、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、細胞を前述の培養面に播種する(播種工程)。詳細には、第一の細胞を前記第一被覆領域上に播種し(第一播種工程)、また、第二の細胞を前記第二被覆領域上に播種する(第二播種工程)。
この工程は、例えば、37℃のインキュベーター中に静置しておいた、第一の培養面を備える細胞培養器、及び第二の培養面を備える細胞培養器を、室温のクリーンベンチに取り出し、それぞれに細胞及び細胞培養用培地を加えることによって、行うことができる(図1参照)。
第一播種工程における第一の細胞の細胞密度は、100〜300個/mm2であることが好ましく、120〜300個/mm2であることが更に好ましく、150〜300個/mm2であることが特に好ましい。
第二播種工程における第一の細胞の細胞密度は、400〜1,200個/mm2であることが好ましく、800個〜1,200個/mm2であることが更に好ましく、1,000個〜1,200個/mm2であることが特に好ましい。
ここで、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法において細胞構造体の内側に導入され得る第一の細胞としては、血管内皮細胞、血管間質細胞、Flk−1陽性幹細胞、CD31陽性細胞等が挙げられ、特に、成長ホルモン、サイトカイン等の添加物を加えることなく、自己組織化様に管腔網を形成させる観点から、血管内皮細胞、血管間質細胞が好ましい。第一の細胞は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、主として細胞構造体の外側に位置し得る第二の細胞としては、平滑筋細胞、線維芽細胞、間葉系幹細胞等が挙げられ、特に、凝集力が強い細胞を用いることで、生体の血管構造の模倣を容易にする観点から、間葉系幹細胞、平滑筋細胞が好ましい。第二の細胞は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、培地やこれに含める添加物等は、細胞種や実験目的に基づいて、当業者は適切に定めることができる。
そして、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、播種した細胞を培養する(前培養工程)。播種した第一の細胞を培養して、管腔状の細胞構造体を調製し(第一培養工程)、また、播種した第二の細胞を培養して、シート状の細胞構造体を調製する(第二培養工程)。
この工程は、例えば、一般的な37℃の細胞インキュベーターを用いて行うことができる(図1参照)。
前培養工程(第一培養工程及び第二培養工程)では、播種した細胞は静置培養することが好ましい。
第一培養工程及び第二培養工程における培養温度としては、特に限定されないが、例えば、30℃以上であることが好ましく、35℃以上であることが更に好ましく、また、38℃以下であることが好ましく、37℃であることが特に好ましい。
第一培養工程及び第二培養工程における培養時間としては、細胞種により増殖速度が異なり、同種の細胞でもその状態や継代回数により増殖速度は変動するため、特に限定されないが、細胞群が当業者により判断されるコンフェルトの状態を超えない程度の時間であることが好ましく、例えば、通常、3〜168時間程度とすることが好ましい。
第一培養工程では、第一被覆領域に接着した第一の細胞が、所々で収縮し、この収縮に伴って第一被覆領域から剥離し、第一被覆領域上において管腔状構造を有する網目状の細胞構造体からなるネットワークを形成する(図1(iii)参照)。
第二培養工程では、第二被覆領域に接着した第二の細胞が、第二被覆領域の一面に伸展・増殖し、ときに単層のシート状の細胞構造体を形成する(図1(vi)参照)。
特に、第二培養工程における培養は、後述の貼付工程においてシート状の細胞構造体が凝集する現象が生じないうちに、完了させることが好ましい。通常3〜21時間程度以内に、完了させることが好ましい。
次いで、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、管腔状の細胞構造体をシート状の細胞構造体上に貼付して、複合細胞構造体を調製する(貼付工程)。
この工程は、例えば、第一被覆領域において培養した管腔状の細胞構造体を備える治具を、その頂面が底面となるように、逆さにして、管腔状の細胞構造体を、第二被覆領域において培養したシート状の細胞構造体上に、貼付する(図1(vii)、(viii)参照)。
ここで、管腔状の細胞構造体をシート状の細胞構造体に貼付するとき、管腔状の細胞構造体をシート状の細胞構造体に、接触させてよく、押し当ててよく、必要に応じてスパチュラ等を用いて、移してもよい。
図1に示す例では、治具の頂面の面積は第二の細胞を培養するための細胞培養器の培養面の面積と比較して小さいものとなっているが、本発明の実施形態では、得られる複合細胞構造体において包埋させる血管網を細胞構造体に全体に行き渡らせるため、治具の頂面の面積を第二の細胞を培養するための細胞培養器の培養面の面積とほぼ同じとすることが好ましい。そして、この場合、管腔状の細胞構造体を、シート状の細胞構造体の全体に貼付することが好ましい。
最後に、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法では、複合細胞構造体を培養する(後培養工程)。
この工程は、例えば、一般的な37℃の細胞インキュベーターを用いて行うことができる。
後培養工程では、第二被覆領域に接着していた第二の細胞が、治具の頂面の端縁から中心に向かって丸まりながら収縮していき、この収縮に伴って第二の細胞が第二被覆領域から剥離していく。そして、第二の細胞は、貼付工程において貼付された管腔状の細胞構造体を巻き込みながら、第二被覆領域の中心部において凝集する。そして、互いに集まった細胞が、あたかも何らかの組織を形成するかのように自発的に集合し、管腔状の細胞構造体が張り巡らされた立体的な塊状の細胞構造体を形成する(図1(ix)参照)。
以下、本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法において用いられる温度応答性ポリマー組成物について詳述する。
以下、上記(A−1)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
(温度応答性ポリマーの製造方法)
(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む混合物を調製する(調製工程)。ここで、混合物は、重合禁止剤及び水を更に含む。
2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)としては、市販品を用いることができる。重合禁止剤としては、メチルヒドロキノン(MEHQ)、ヒドロキノン、p−ベンゾキノリン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N−nitroso−N−phenylhydroxylamine(Cupferron)、t−ブチルハイドロキノン、等が挙げられる。また、市販のDMAEMAに含まれるMEHQ等をそのまま用いてもよい。水としては、超純水が挙げられる。
重合禁止剤の混合物に対する重量割合は、0.01%〜1.5%であることが好ましく、0.1%〜0.5%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、ラジカル重合反応の暴走を抑制して、制御できない架橋を低減することができ、製造される温度応答性ポリマーの溶媒に対する溶解性を確保することができる。
水の混合物に対する重量割合は、1.0%〜50%であることが好ましく、9.0%〜33%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、側鎖の加水分解反応の反応速度と、重合するポリマー鎖の成長反応の反応速度とを、バランスよく調和させることができる。これにより、側鎖が加水分解されたDMAEMAに対する、側鎖が加水分解されていないDMAEMAの割合(共重合割合)が1.0〜20程度の温度応答性ポリマーを得ることができる。
次いで、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、混合物に紫外線を照射する(照射工程)。ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射される。DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマーとなる。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210nm〜600nmであることが好ましく、360nm〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応条件に関して、温度条件としては、15℃〜50℃であることが好ましく、20℃〜30℃であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、熱による開始反応を抑制し、光照射による開始反応を優先的に進行させることができる。また、加水分解反応の反応速度をポリマー鎖の成長反応の反応速度に対してバランスのよいものにすることができる。
反応時間としては、7時間〜24時間であることが好ましく、17時間〜21時間であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、温度応答性ポリマーを高収率で得ることができ、また、光分解反応や不要な架橋反応を抑制しながらラジカル重合を行うことができる。
なお、調製工程において混合物が調製され終えてから、照射工程において紫外線の照射が開始されるまでの時間は、10分〜1時間であることが好ましい。
混合物を加えたバイアルの内部の気体を置換して、バイアル内を不活性雰囲気とする際には、10分程度の時間を要する。そのため、上記時間を10分未満とすると、ラジカル重合に必要となる不活性雰囲気が得られない虞がある。また、混合物中では、DMAEMAの加水分解反応が、紫外線の照射が開始される前に開始される。そのため、上記時間を1時間超とすると、ラジカル重合反応に不活性なメタクリル酸が混合物中に多数生じてしまう。
(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法では、混合物に水が含まれるため、DMAEMAのラジカル重合反応と、ポリ2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(PDMAEMA)の側鎖のエステル結合の加水分解反応とを、拮抗させることができる。
この拮抗により、得られる生成物は、式(I)で表される繰り返し単位(A)
、及び式(II)で表される繰り返し単位(B)
を含むポリマーとなる。
そのため、ポリマーが有するカチオン性官能基、すなわち、ジメチルアミノ基と、ポリマーが有するアニオン性官能基、すなわち、側鎖のエステル結合が加水分解されてできたカルボキシル基の両方を、バランスよく備えることができる。そして、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
なお、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法と同一の製造方法ではなくとも、DMAEMA、重合禁止剤、及び水が、紫外線照射時に反応系中に共存していれば、本発明の温度応答性ポリマーの製造方法の上記効果と同様の効果を得ることができる。
例えば、DMAEMA及び重合禁止剤を含む混合物と、水とを別々に準備し、次いで、混合物と水とに不活性ガスをバブリングし、その後、混合物と水とを不活性雰囲気下で混合すると同時に紫外線を照射するという、温度応答性ポリマーの製造方法も、(A−1)の温度応答性ポリマーに含めることができる。
(温度応答性ポリマー)
(A−1)の温度応答性ポリマーは、上記(A−1)の製造方法により製造される。
ここで、(A−1)の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10kDa〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記(A−1)の温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
また、この(A−1)の温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製することができる。
更に、(A−1)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
(温度応答性ポリマーの製造方法)
(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、まず、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
DMAEMAとしては、市販品としてよい。
第一混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、イオンバランスの調整を安定的に行うことを可能にする観点から、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミドが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル数)は、0.001〜1とすることが好ましく、0.01〜0.5とすることが更に好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、メタノール、エタノール等が挙げられ、特に、DMAEMAのエステル結合に対して不活性であるため、トルエン、ベンゼンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01m〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1m〜5mW/cm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、無用な化学結合の切断等による分解を抑制しつつ、安定的に、適切な速度(時間)で重合反応を進行させることができる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において反応を行うことができ、また、光とは別の手段(加熱等)により反応を抑制することが可能となる。
反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、DMAEMAは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA))となり、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程における重合物(具体的には、ポリマー化した2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)の数平均分子量が所定値以上となった時点で、第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、前述の第一混合物に含まれ得る溶媒(トルエン、ベンゼン、メタノール等)等を含んでよい。
また、アニオン性モノマーは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体等が挙げられ、特に、化学的安定性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、電気的に中性であり、且つ親水性である、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル)は、0.01〜10とすることが好ましく、0.1〜5とすることが更に好ましい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記第二混合物を添加する。
数平均分子量の所定値は、曇点低減の効果を十分に得る観点から、好適には5,000であり、更に好適には20,000であり、特に好適には100,000である。
なお、第一重合工程後の第一混合物中におけるポリマー化したPDMAEMAの数平均分子量は、所定の時点で重合系から少量の反応混合物を採取して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や光散乱法(SLS)等の当業者に周知の方法により、測定することができる。
この工程において、重合中のDMAEMAを含むホモポリマーに加えて、アニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、DMAEMAの単独重合系から、DMAEMAとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、第二混合物を添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
第二重合工程における、紫外線の波長、紫外線の照射強度、用いる不活性ガス、反応温度、反応時間等の諸条件は、第一重合工程における条件と同様としてよい。
この工程において、DMAEMAとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したDMAEMAを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、DMAEMAとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、DMAEMAとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、(A−2)の製造方法では、当業者に理解される通り、種々の分子量及び分子構造を有するポリマーの混合物が生成するところ、DMAEMAを含むホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーを主成分として得る観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って、同一の条件下で重合を行うことが好ましい。
(温度応答性ポリマー)
(A−2)の温度応答性ポリマーは、上記(A−2)の製造方法により製造される。
(A−2)の温度応答性ポリマーは、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを含み、任意選択的にジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の親水性モノマー等の他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主として2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートとアニオン性モノマー(重合鎖ω末端)とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。
好適には、(A−2)の温度応答性ポリマーは、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、更に好適には、これらブロックからなる。
ここで、(A−2)の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、DMAEMAのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
(A−2)の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(A−2)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記(A−2)の温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、(A−2)の温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量(例えば、5000Da以上)を有するDMAEMAのホモポリマーブロックを備えるため、DMAEMAの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製することができる。
更に、(A−2)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(A−2)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基(2−N,N−ジメチルアミノ基)の官能基数と、アニオン性官能基(カルボキシル基)の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
(温度応答性ポリマーの製造方法)
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)と、カチオン性モノマー(以下、「モノマー(B)」ともいう。)と、アニオン性モノマー(以下、「モノマー(C)」ともいう。)とを重合させるものである。任意選択的に、上記3種類のモノマーにこれら以外の他のモノマーを加えて重合させてよい。
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)としては、市販品としてよい。
カチオン性モノマーとしては、カチオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、カチオン性官能基としては、第1級〜第4級アミノ基等のアミノ基、グアニジン基等が挙げられ、特に、化学的安定性、低細胞傷害性、滅菌安定性、強陽電荷性の観点から、第3級アミノ基が好ましい。
より具体的には、カチオン性モノマーとしては、生理活性物質を担持したり、アルカリ性条件下においたりしても、安定性が高いものが好ましく、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、特に、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にするため、好ましい。
また、アミノスチレンは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にすると共に、分子内の芳香環が水溶液中において他の物質の疎水性構造と相互作用することから、担持可能なアニオン性物質のバリエーションを広げるため、好ましい。
更に、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタクリルアミドは、中性域のpHで微弱な陽電荷を有し、且つ、水への溶解性が温度に影響されないことから、一度担持したアニオン性物質の放出を容易にするため、好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アニオン性モノマーとしては、アニオン性官能基を有するモノマーが挙げられ、アニオン性官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ボロン酸基等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性、高い精製度の観点から、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が好ましい。
より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性の観点から、メタクリル酸、ビニル安息香酸が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸等の中性の親水性モノマー等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーは、電荷以外の親水性・疎水性のバランスの調整に使用可能であり、バリエーションを広げることが可能となる。
ここで、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法におけるNIPAMの使用量、カチオン性モノマーの使用量、他のモノマーの使用量それぞれの、モノマー(A)〜(C)の合計の使用量に対する割合(モル)は、モノマーの重合反応における反応性を考慮して、所望のモノマー成分の割合を得られるよう、当業者が適宜調整することができる。
ここで、重合方法としては、ラジカル重合、イオン重合等が挙げられる。
ラジカル重合としては、リビングラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、イニファーター重合等が挙げられ、イニファーター重合が好ましい。
イオン重合としては、リビングアニオン重合が好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法の一例は、ラジカル重合を用いる方法である。
この製造方法の一例では、まず、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する(第一重合工程)。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、メタノール、水等が挙げられ、特に、溶解力の点、及び重合に不活性である点から、ベンゼン、トルエンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記第一混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において重合反応を行うことを可能とすることができ、また、光照射という手段とは別の加熱という手段での反応制御を可能とすることもできる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、NIPAMは、紫外線の照射により、ラジカル重合して、ポリマー(ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM))となり、N−イソプロピルアクリルアミドを含むホモポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロックが形成される。
次いで、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第一重合工程後の第一混合物にカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する(添加工程)。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、カチオン性モノマー、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
この工程では、例えば、バイアルに不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、上記カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加する。
この工程において、重合中のNIPAMを含むホモポリマーに加えて、カチオン性モノマー及びアニオン性モノマーも重合系に含められることとなり、バイアル内の重合系が、NIPAMの単独重合系から、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合系に、変わることとなる。
そして、(B)の温度応答性ポリマーの製造方法では、第二混合物に紫外線を照射する(第二重合工程)。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
この工程では、例えば、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加した後のバイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
紫外線の波長としては、210〜600nmであることが好ましく、360〜380nmであることが更に好ましい。上記範囲とすれば、効率よく重合反応を進行させることができ、所期の共重合割合を有する高分子材料を安定的に得ることができる。また、製造したポリマー材料が着色することを防ぐこともできる。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
温度条件としては、10〜40℃あることが好ましく、20〜30℃あることが更に好ましい。上記範囲とすれば、通常の実験室の室温において重合反応を行うことを可能とすることができ、また、光照射という手段とは別の加熱という手段での反応制御を可能とすることもできる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
この工程において、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとが、紫外線の照射により、ラジカル重合して、第一重合工程において形成したNIPAMを含むホモポリマーブロックの重合鎖α末端に連続する形態で、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。他のモノマーも用いた場合には、NIPAMと他のモノマーとを含むポリマーブロック、及び/又は、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーと他のモノマーとを含むコポリマーブロックが形成される。
上記の通り、NIPAMを含むホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含む温度応答性ポリマーが得られる。
なお、この一例の製造方法では、効率的な反応を実現する観点から、第一重合工程、添加工程、及び第二重合工程に亘って紫外線を照射することが好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法の別の例は、ラジカル重合を用いる方法であり、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、カチオン性モノマーと、アニオン性モノマーと、任意選択的に他のモノマーを含む混合物に紫外線を照射する。
ここで、上記混合物は、例えば、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
他の条件については、前述の一例の製造方法と同様としてよい。
(温度応答性ポリマー)
(B)の温度応答性ポリマーは、上記(B)の製造方法により製造される。
(B)の温度応答性ポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に、他のモノマー単位を含む。本ポリマーは、前述の一例、別の例の製造方法により製造することができる。
好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、主としてN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位を含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてカチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。更に好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、NIPAMのホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、特に好適には、これらブロックからなる。本ポリマーは、前述の一例の製造方法により製造することができる。
例えば、特許文献1に記載の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるDMAEMAが、同時に、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーであり、また、温度応答性に関わるDMAEMAはポリマーブロックとして重合鎖α末端に含まれている。
かかる温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずカチオン性モノマーが存在することから、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置の調整の自由度が高くはなく、また、カチオン性モノマーが主としてDMAEMAに限られることから、カチオン性サイトの陽電荷強度の調整や、温度応答性ポリマー水溶液のpHの調整も必ずしも容易とは言えなかった。
例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。DDSの手法としては、例えば、細胞培養器に薬剤を担持させた温度応答性ポリマーを塗布して、塗布後の細胞培養器で細胞や組織を培養することによって、被覆物から細胞・組織に対して薬剤を徐放するといった手法等が挙げられる。ここで、上記特許文献1の温度応答性ポリマーでは、陽電荷強度が小さいDMAEMAを含むため、アニオン性物質の薬剤の担持は必ずしも容易とは言えず、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。
一方、本発明の実施形態の温度応答性ポリマーでは、ポリマーに温度応答性を与えるNIPAMは中性のモノマーであり、(アニオン性モノマーと共に)細胞構造体の形成に必要となるカチオン性モノマーはNIPAMとは異なるモノマーである。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずしもカチオン性モノマーが存在する必要はなく、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置を自由に調整することが可能であり、また、広範なカチオン性モノマーを用いることができるため、カチオン性サイトの陽電荷強度や温度応答性ポリマー水溶液のpHを容易に調整することが可能である。
本発明の実施形態の温度応答性ポリマーによれば、例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類を拡大しつつ、その量を増加させることが可能となり、ひいては、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
(B)の温度応答性ポリマーでは、NIPAM単位の、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する割合(モル)が、0.6〜0.9であることが好ましく、0.7〜0.9であることが更に好ましく、0.9であることが特に好ましい。
他のモノマーも用いた場合には、他のモノマー単位の、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する割合(モル)が、0.001〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーとしては、重合鎖α末端のポリマーブロック(例えば、NIPAMのホモポリマーブロック)の数平均分子量が5000Da以上であることが好ましく、20000Da以上であることが更に好ましい。
(B)の温度応答性ポリマーとしては、数平均分子量(Mn)が、10〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜10.0である分子が好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、重合条件により、適宜調整することができる。
(B)の温度応答性ポリマーによれば、曇点を、例えば室温(25℃)以下に、低下させることができる。
上記温度応答性ポリマーでは、曇点以上の温度で形成された温度応答性ポリマーの不溶化物が、室温(約25℃)条件下で再溶解するまでの時間が顕著に遅延する。これは、得られた温度応答性ポリマーは、分子内にカチオン性官能基とアニオン性官能基とが存在するため、高い自己凝集性を有するためであると推定される。
特に、前述の(B)の好適な温度応答性ポリマーは、重合鎖α末端に、高分子量を有するNIPAMのホモポリマーブロックを備えるため、NIPAMの側鎖の温度依存的なグロビュール転移が生じやすく、曇点を効果的に低減することが可能となると考えられる。
また、この温度応答性ポリマーを用いて、後述するように、培養面にこの温度応答性ポリマーを被覆してなる細胞培養器を調製することができる。
更に、(B)の温度応答性ポリマーによれば、後述するように、細胞を適切な培養条件で培養することにより、管腔状(チューブ状)や塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を形成させることができる。
(B)の温度応答性ポリマーが有する、カチオン性官能基の官能基数と、アニオン性官能基の官能基数との比(C/A比)は、0.5〜32であることが好ましく、4〜16であることが更に好ましい。
C/A比を上記範囲とすれば、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。上記C/A比を有する温度応答性ポリマーでは、上記温度応答性ポリマー中でカチオン性官能基とアニオン性官能基とが、イオン結合的に分子間及び/又は分子内の凝集に作用して、温度応答性ポリマーの凝集力が強くなった結果であると推測される。
また、C/A比を上記範囲とすれば、上記温度応答性ポリマー中の正電荷と負電荷とのバランスを特に好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができ、また、上記温度応答性ポリマーの親水性と疎水性とのバランスを特に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができるものと推定される。
以下、上記(C)の温度応答性ポリマー及びその製造方法について記載する。
(温度応答性ポリマー組成物の製造方法)
(C)の温度応答性ポリマー組成物の製造方法は、まず、混合型温度応答性ポリマー組成物を調製する(混合物調製工程)。具体的には、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、(3)核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを混合する((2)トリスは任意選択的に含む。)。
(1)のDMAEMA及び/又はその誘導体の重合体は、温度応答性ポリマーであり、その曇点は32℃である。(2)のトリスは、曇点の若干の低下、及び/又は曇点よりも高温で形成されたポリマーが、曇点以下に冷却された際に再溶解する速度を低減させる役割を果たし、また、疎水化されたポリマー層中でも親水性を維持しながら、アミノ基に由来する陽電荷により細胞に刺激を与える役割を果たすと推定される。(3)のアニオン性物質は、培養する細胞の遊走や配向を可能にする役割や細胞傷害性を抑制する役割を果たすと推定される。
この混合型温度応答性ポリマー組成物によれば、曇点を室温(25℃)以下に低減させることができる。
上記組成物では、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体の側鎖とトリスとが、互いに相互作用(例えば、架橋する作用)して、上記重合体が凝集しやすくなっていると推定される。
ここで、上記(1)について、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体としては、数平均分子量(Mn)が、10kDa〜500kDaである分子が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.1〜6.0である分子が好ましい。
また、(1)のDMAEMAの誘導体としては、例えば、メタクリレートのメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、メタクリレートのメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基の水素原子をハロゲン置換した誘導体、ジメチルアミノ基のメチル基を低級アルキル基で置換した誘導体が挙げられる。
上記(2)について、トリスは、純度99.9%以上の純物質であるか、又は、トリス水溶液を、アルカリ性物質の添加などにより、使用時に中性又は塩基性とすることが好ましい。トリスは、塩酸塩の状態で市販されているところ、これを用いた場合には、トリス水溶液のpHが下がるため、組成物の曇点が70℃程度にまで上昇してしまう。そのため、トリス塩酸塩は好ましくない。
上記(3)に列挙したアニオン性物質のうち、核酸は、DNA、RNA、その他1本鎖、2本鎖、オリゴ体、ヘアピンなどの人工核酸などが挙げられる。
また、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、ある程度の大きさ、例えば1kDa〜5,000kDaの分子量(M)を有していることが好ましい。
分子量を上記範囲とすれば、アニオン性物質は、カチオン性物質とイオン結合して、カチオン性物質を、長時間捕捉する役割を果たすことができ、安定したイオン複合体微粒子を形成させることがでる。また、一般的にカチオン性物質が有する、細胞の細胞膜表面に対する静電的相互作用に起因する細胞傷害性を緩和することもできる。
(3)に列挙したアニオン性物質の他にも、例えば、カチオン性ポリマーであるポリ(4−アミノスチレン)の4−位のアミノ基に対してシュウ酸などのジカルボン酸を脱水縮合させることによって、アニオン性官能基を導入した、実質的にアニオン性物質として機能するポリマー誘導体も、用いることができる。
なお、上記(3)に列挙したアニオン性物質は、二種以上含まれていてもよい。
ここで、(1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体に対する、(2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)の割合((2)/(1))が、1.0以下とした混合型温度応答性ポリマー組成物を用いることが好ましい。
なお、割合((2)/(1))は、重量割合であるものとする。
上記割合の混合型温度応答性ポリマー組成物を用いた場合、培養時に、細胞構造体を形成しやすくすることができる。
この組成物によれば、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にすることができる。そして、この好適なバランスが、培養面への細胞の接着性を好適に調整し、細胞の遊走や配向を活性化していると推定される。
また、上記割合((2)/(1))は、0.1以上あることが好ましい。
上記割合を0.1以上とすることにより、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。また、細胞構造体を形成しやすくするという上記効果が得られやすい。
上記と同様の理由により、上記割合((2)/(1))は、0.1〜0.5であることが更に好ましい。
ここで、温度応答性ポリマー組成物中のC/A比(正電荷/負電荷)が、0.5〜16であることが好ましい。
なお、本願明細書では、C/A比とは、組成物中に含まれる物質が有する正電荷の、組成物中に含まれる物質が有する負電荷に対する割合を指す。具体的には、C/A比は、(1)DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体のモル数をN1、(3)アニオン性物質のモル数をN3としたときに、{(重合体1分子当たりの正電荷)×N1}/{(アニオン性物質1分子当たりの負電荷)×N3}という式で表される。
またなお、本願明細書では、アニオン性物質をDNAとした場合、アニオン性物質1分子当たりの負電荷数は、DNAの塩基対の数(bp数)×2で計算し、分子量(Da)は、bp数×660(ATペア及びCGペアの平均分子量)で計算するものとする。
C/A比を0.5〜16とすることにより、管状細胞構造体を形成させやすくするという上記効果が得られやすくなる。
上記組成物中の正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができると推定される。また、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができると推定される。
上記と同様の理由により、上記C/A比は、2〜10とすることが更に好ましく、特にC/A比は8付近であることが最も好ましい。
(細胞構造体)
本発明の実施形態の細胞構造体は、上記本発明の実施形態の細胞構造体の製造方法により製造することができる。
本発明の実施形態の細胞構造体は、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む。
ここで、管腔状の細胞構造体は、血管内皮細胞を含むことが好ましく、血管内皮細胞からなることが更に好ましく、塊状の細胞構造体は、平滑筋細胞を含むことが好ましく、平滑筋細胞からなることが更に好ましい。この場合、得られる細胞構造体は、毛細血管が包埋されたスフェロイド様のものとなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
下記の試験において、市販の試薬は、特に断りのない限り更に精製することなく用いた。
(試験1)ポリマーの製造
分子内イオン複合体型温度応答性ポリマーの製造(実施例製法1)
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10.0gを加えて、磁気撹拌器を用いて撹拌した。
そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。
その後、この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて5時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。
ここで、反応物の一部を採取して、ポリマー化したDMAEMAの数平均分子量を測定したところ、97,0000(分散=4.1)あった。
数平均分子量が5,000以上であることを確認した直後に、バイアル瓶に不活性ガスをフローさせることによってバイアル内を不活性雰囲気に保ちながら、メタクリル酸1.4gを加えて、再度磁気撹拌器を用いて撹拌した。なお、ここで加えるメタクリル酸に対しては予め不活性ガスでバブリングを行なった。
この混合物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、16時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。反応物は、混合直後に粘性を帯び、1時間後に固化して、重合体が反応生成物として得られた。この反応生成物を2−プロパノールに溶解させ、溶液を透析チューブに移した。そして、透析を72時間行い、反応生成物を精製した。
反応生成物を含む溶液を、セルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることにより、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとメタクリル酸とのコポリマーブロックとからなる温度応答性ポリマーが得られた(収量:6.8g、転化率60%)。
このポリマーの数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=450,0000(Mw/Mn=2.2)と決定した(実施例ポリマー1)。
実施例ポリマー1の核磁気共鳴スペクトル(NMR)を、核磁気共鳴装置(Varian社製、型番:Gemini300)を用いて、重水(D2O)を標準物質として測定した。下記には、実施例ポリマー1に共通する代表的なピークを示す。
1H-NMR (in D2O) δ 0.8-1.2 (br, 3H, -CH2-C(CH3)-), 1.6-2.0 (br, 2H, -CH2-C(CH3)-), 2.2-2.4 (br, 6H, -N(CH3)2), 2.5-2.7 (br, 1.9H,-CH2-N(CH3)2), 4.0-4.2 (br, 1.9H, -O-CH2-).
ここで、α位に結合したメチル基(δ 0.8-1.2)のプロトン数(DMAEMAユニットの場合もメタクリル酸ユニットの場合も3個)Aと、側鎖のエステル結合の酸素に結合しているエチル基(δ 4.0-4.2)のメチルプロトン数(DMAEMAユニットの場合は2個で、メタクリル酸ユニットの場合は0個)Bとから、DMAEMAの側鎖が有するアミノ基の官能基数と、メタアクリル酸の側鎖のカルボキシル基の官能基数との比を算出した。
その結果、実施例ポリマー1の場合94:6となった。これは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含む2成分混合系におけるイオン複合体で言うC/A比に換算すると、C/A比=15.6となる。
(試験2)ポリマーの曇点の測定
実施例ポリマー1の3%水溶液を調製し、この水溶液の660nmにおける吸光度を、20℃〜40℃の間で測定した。
その結果、20℃〜30℃では、水溶液は透明であり、吸光度がほぼ0であったが、31℃付近から水溶液中に白濁が見られるようになり、32℃で吸光度が急激に上昇した。これにより、上記ポリマーは、約32℃の曇点を有することを確認した。
なお、実施例ポリマーを37℃まで昇温させると、ポリマー水溶液は、良好な応答性で、懸濁し、その後、水溶液全体が固化した。この固化物を室温(25℃)で維持したところ、数十時間の間、固化した状態のままであった。その後、固化物が徐々に溶解して、均質な水溶液に変化した。固化したポリマーは4℃まで冷却すると、速やかに溶解した。そして、上記昇温及び降温の操作を繰り返し行なっても、応答性に変化は生じなかったことから、ポリマーが可逆的に相転移を生じさせることが確認された。
(試験3)ポリマーの凝集体の粒子径測定
実施例ポリマー1を20℃の液体とし、静的光散乱装置(シスメックス社製、型番:ゼーターセイザー・ナノ)を用いて、光散乱により、ポリマー分子の凝集体の粒子径を測定したところ、250nmであった。曇点未満の温度である20℃においても、比較的粒子径の大きい凝集体、すなわち、沈殿しやすく、沈殿後に拡散しにくい凝集体を形成していることが示唆された。実施例ポリマー1は、細胞培養器に容易に被覆することができる可能性が示唆された。
(試験4)細胞培養器及び治具の準備
細胞培養器として、ポチスチレン製の35mm細胞培養プレート(イワキ社製、型番:3000−035−MYP、1ウェル当たりの底面積:9cm2)を用いた。
第一播種工程及び第一培養工程に用いる治具として、図1に示すものを用いた。基板の径は59mm、突起部の径は34mm、突起部の高さは10mmであった。
治具を第一播種工程及び第二培養工程に用いる細胞培養器に入れた。
曇点以下に冷却した温度応答性ポリマーの水溶液(濃度:15ng/mL)を調製し、750μLを第二の培養面である細胞培養器の底面に塗布した。また、上記水溶液750μLを第一の培養面である治具の頂面に塗布した。そして、治具及び細胞培養器をクリーンベンチ内にて放置することによって、塗布した温度応答性ポリマーの水溶液を乾燥させた。
また、治具のうち基板及び突起の側面を、非イオン性界面活性剤(旭電化社製、プルロニックF−68)でコーティングして、細胞非接着性とした。
(試験5)ゼータ電位の測定
治具の小片及び細胞培養プレートの小片に(試験4)の手順と同様の手順に従って設けた被覆領域の表面ゼータ電位を、ゼータ電位計(大塚電子社製、型番:ELSZ)及び平板試料用セルユニットを用いて測定した。
具体的には、石英セルの下面に小片の試料を密着させ、セル内部にモニター粒子懸濁液を注入した。ここで、標準のモニター粒子として、ポリスチレンラテックス(粒子径:約500nm)をヒドロキシプロピルセルロース(Mw=30,000)で被覆した粒子(ゼータ電位:−5mV〜+5mV)を用いた。また、溶媒として、10mMの塩化ナトリウム水溶液をpH=7、37℃の条件下で用いた。そして、ゼータ電位は、Smoluchowski式を用いて算出した。
非被覆の治具の小片及び非被覆の細胞培養プレートの小片の表面のゼータ電位は、いずれも−68mVであり、一般的な熱可塑性樹脂の固体表面のゼータ電位として当業者に周知の値であった。
一方、温度応答性ポリマーにより被覆された治具の小片の表面のゼータ電位は、+20mVであった。また、温度応答性ポリマーにより被覆された細胞培養プレートの小片の表面のゼータ電位は、+20mVであった。
なお、当業者に周知の通り、現在の技術では、固体表面のゼータ電位の測定値は、±10%程度のバラツキを有するものであり、また、試料の調製工程においても、コーティング操作自体にバラツキが存在するものであるため、上記ゼータ電位の測定値はある程度の誤差を有し得る。
(試験6)接触角の測定
治具の被覆領域である第二被覆領域に対する水の接触角、及び細胞培養プレートの被覆領域である第一被覆領域に対する水の接触角を、JIS R3257に準拠して、接触角計(商品名:DMs−400、協和界面科学社製)を用いて測定したところ、それぞれ、70°±10°、72°±10°であった。
ここで、治具の頂面に、恒久的にGFPを発現するよう改変したラット皮下脂肪由来の血管間質細胞を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FBS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番:11995−065、FCS:インビロトジェン社製、ロット番号:928696)中に浮遊させ、細胞密度が3.0×105個/プレート(310個/mm2)となるように播種した。
この播種した血管間質細胞を、37℃、5%CO2雰囲気の細胞培養インキュベーター中で120時間培養した。
培養72時間後に、管腔状の細胞構造体が形成した。
また、細胞培養器の培養面に、セルリンカーキットにより蛍光標識(赤色)を付したラット皮下脂肪由来の間葉系幹細胞を、完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FBS)溶液、DMEM:ギブコ社製、型番:11995−065、FCS:インビロトジェン社製、ロット番号:928696)中に浮遊させ、細胞密度が5.0×105個/プレート(520個/mm2)となるように播種した。
この播種した間葉系幹細胞を、37℃、5%CO2雰囲気の細胞培養インキュベーター中で8時間培養した。
培養3時間後に、単層のシート状の細胞構造体が形成した。
ここで、被覆された頂面に管腔状の細胞構造体が形成している治具を、ピンセットを用いて取り出し、これを上下逆さにした。そして、管腔状の細胞構造体をシート状の細胞構造体に押し当てたところ、管腔状の細胞構造体がシート状の細胞構造体に貼り付いた。
管腔状の細胞構造体が貼り付いたシート状の細胞構造体を、37℃、5%CO2雰囲気の細胞培養インキュベーター中で16時間培養した。
シート状の細胞構造体をなす細胞が、培養面の外縁部から全ての細胞が一度に剥離して、まるでシートが丸まりながら収縮して行くような動作で、管腔状の細胞構造体を巻き込みながら、培養面の中心部に凝集する現象が生じた。上記現象は、肉眼で十分に視認可能であった。
互いに集まった細胞は、網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む1個の立体的な塊状(ペレット状)の構造を形成した。
上記の通り形成した細胞構造体は、その後、自発的に第二被覆領域から剥離した。
細胞構造体を、蛍光位相差顕微鏡を用いて観察したところ、細胞塊のほぼ全体に、血管内皮細胞由来の緑色の蛍光を確認すると共に、細胞塊の内部に網目状に、平滑筋細胞由来の赤色の蛍光を確認することができた(図2)。
図2に、本発明の実施例において調製した、平滑筋細胞の内部に網目状に延びる血管内皮細胞を含む複合細胞構造体を観察したときの写真を示し、(a)に、複合細胞構造体を実体顕微鏡により観察したときの写真を示し、(b)に、複合細胞構造体を蛍光位相差顕微鏡により観察したときの写真を示す。ここで、血管内皮細胞は緑色の蛍光を発し、平滑筋細胞は赤色の蛍光を発している。
本発明によれば、塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含む細胞構造体、例えば、毛細血管を包埋させたスフェロイドを製造することができる。

Claims (10)

  1. 温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物を調製する、調製工程と、
    前記温度応答性ポリマー組成物で、細胞培養器の第一の培養面及び第二の培養面を被覆して、それぞれ、表面ゼータ電位が0〜50mVである、第一被覆領域及び第二被覆領域を準備する、準備工程と、
    第一の細胞を前記第一被覆領域上に播種する第一播種工程と、第二の細胞を前記第二被覆領域上に播種する第二播種工程とからなる播種工程と、
    前記播種した第一の細胞を培養して、管腔状の細胞構造体を調製する第一培養工程と、前記播種した第二の細胞を培養して、シート状の細胞構造体を調製する第二培養工程とからなる前培養工程と、
    前記管腔状の細胞構造体を前記シート状の細胞構造体上に貼付して、複合細胞構造体を調製する、貼付工程と、
    前記複合細胞構造体を培養する、後培養工程と
    を備えることを特徴とする、細胞構造体の製造方法。
  2. 前記第一被覆領域及び第二被覆領域に対する水の接触角が、50〜90°である、請求項1に記載の細胞構造体の製造方法。
  3. 前記第一播種工程における前記第一の細胞の細胞密度を100〜300個/mm2とし、
    前記第二播種工程における前記第二の細胞の細胞密度を400〜1,200個/mm2とする、
    請求項1又は2に記載の細胞構造体の製造方法。
  4. 前記第一の細胞を血管内皮細胞とし、
    前記第二の細胞を平滑筋細胞とする、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法。
  5. 前記温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物が、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー;N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位と、カチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含む温度応答性ポリマー;2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上のアニオン性物質とを含む温度応答性ポリマー組成物;からなる群から選択される少なくとも1種の温度応答性ポリマー又は温度応答性ポリマー組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法。
  6. 前記アニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の細胞構造体の製造方法。
  7. 前記カチオン性モノマーは、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−メタ(ア)クリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−メタ(ア)クリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタ(ア)クリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタ(ア)クリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5又は6に記載の細胞構造体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする、細胞構造体。
  9. 塊状の細胞構造体の内部に網目状に延びる管腔状の細胞構造体を含むことを特徴とする、細胞構造体。
  10. 前記管腔状の細胞構造体は、血管内皮細胞を含み、
    前記塊状の細胞構造体は、平滑筋細胞を含む、
    請求項9に記載の細胞構造体。
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