JP2017014493A - イオン伝導性フィルム、イオン伝導性複合フィルム、および電極複合体 - Google Patents

イオン伝導性フィルム、イオン伝導性複合フィルム、および電極複合体 Download PDF

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敦司 沢本
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Abstract

【課題】高い耐熱性と強度を持ち、かつ実用的なイオン伝導性を有するイオン伝導性フィルムおよびそれを用いた電極複合体を提供すること。
【解決手段】耐熱ポリマーと非水電解液とを含有し、非水電解液の含有量が30〜90質量%であり、突き刺し強度が0.3〜3.0N/μmであるイオン伝導性フィルムとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、イオン伝導性フィルムに関するものであり、特に電池用電解質膜として好適に使用できるイオン伝導性フィルムに関するものである。
一般的に非水電解液系電池においては、正負極間のイオン伝導を可能とする一方で正負極の接触による短絡を防ぐため、孔径数十nm〜数μm程度の貫通空孔を有する多孔質膜や不織布からなるセパレータが用いられている。しかし、空孔を有するセパレータを用いた場合、デンドライト(樹枝状晶)の成長や混入異物による短絡、曲げや圧縮などの変形に対する脆弱性、薄膜化と強度維持の両立が困難などの課題がある。
これらを解決するものとして固体電解質が挙げられ、無機系と有機系とに大別される。さらに有機系は高分子ゲル電解質と高分子固体電解質(真性高分子電解質)とに分けられる。
無機固体電解質はアニオン性を有する格子点と金属イオンから構成されており、実用的なイオン伝導度を持つものが多数報告されている(例えば特許文献1)。これらは不燃性で安全性が高く、電位窓が広いことも特長である。その反面、無機固体ゆえに、脆性破壊を起こしやすく電極の体積変化に追随できない点、粒子の集合体である電極と良好な界面を形成できない点などが実用化への障害となっている。
有機系のうち、電解液をポリマーで半固体化させた高分子ゲル電解質の電池への適用は1975年のFeuilladeらの報告(非特許文献1)に端を発する。その後、現在までに様々な報告(例えば特許文献2)がされており、リチウムポリマー電池として小型携帯機器用途に実用化されている。しかし、これらのゲル電解質は電池内での実質的な強度が不足するため、ほとんどの場合、正負極間の接触を避けるために多孔質膜を補強材として併用しているのが現状である。
一方、高分子固体電解質(真性高分子電解質)の研究は1973年に発表されたWrightの論文(非特許文献2)に端を発し、現在までポリエーテル系などで多くの成果が報告されている(例えば特許文献3)。しかしながら、依然として電解液系と比較してイオン伝導度が低く、実用化には更なる改良が必要である。また、比較的高いイオン伝導度を示すポリマーは、弾性率や耐熱性の低いものが多く、ゲル電解質同様、正負極間の接触抑制機能が損なわれることにつながる。
以上のように、高い弾性率、強度、耐熱性を持つポリマーは一般的に剛直なポリマー構造を有するため、高いイオン伝導度が期待できないと考えられており、これまでのところ多くは検討されてこなかった。
芳香族ポリアミド(アラミド)や芳香族ポリイミドなどに代表される芳香族系含窒素ポリマーからなるフィルムは、弾性率や強度などの機械特性と耐熱性に優れることから、磁気記録媒体や回路基板などの多様な用途で活用されている。
芳香族ポリアミドを用いたイオン伝導性フィルムについては、特許文献4に開示されており、フィルム化した後では電解質溶液が浸透しないような剛直ポリマーを用いながら、フィルムの製造工程で含溶媒(または含洗浄水)と電解質溶液を置換する方法により電解液との複合膜を得ている。一方、特許文献5には、芳香族ポリアミド多孔質膜の空隙中に高分子固体電解質を充填してなる複合膜が開示されている。
特開2014−13772号公報 特開2008−159496号公報 特開2007−103145号公報 国際公開WO95/31499号パンフレット 特開平9−302115号公報
G.Feuillade,Ph.Perche,J.Appl.Electrochem.,5,63(1975). P.V.Wright,Br.Polm.J.,7.319(1975).
しかしながら、特許文献4に記載の製造方法では熱処理が施されないため、高温での寸法安定性が高いフィルムを得ることは困難である。加えて、リチウムイオン電池などの非水電解液系電池では、部材中および組立工程において徹底的な水分管理により電池内部の水分含有量を抑える必要があることから、本方法を非水電解液系電池に適用することは困難である。
また、特許文献5でも、十分な機械強度と実用的なイオン伝導度は得られていない。さらに、多孔質膜を基材に用いるため、薄膜化に限界がある。
以上のように、高い耐熱性と強度を持ち、かつ実用的なイオン伝導性を有するフィルムは報告されておらず、依然として多孔質膜や不織布からなるセパレータが用いられている。
本発明は上記事情に鑑み、耐熱性、強度、イオン伝導性に優れるイオン伝導性フィルムおよび電極複合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を特徴とする。
耐熱ポリマーと非水電解液とを含有し、非水電解液の含有量が30〜90質量%であり、突き刺し強度が0.3〜3.0N/μmであるイオン伝導性フィルム。
本発明のイオン伝導性フィルムは、高い耐熱性と強度を持ち、かつ実用的なイオン伝導性を有するため、電池用電解質膜として好適に用いることができる。本発明のイオン伝導性フィルムを電池用電解質膜に用いた場合、耐熱、耐変形・衝撃、耐デンドライト起因短絡などの点で安全性に優れ、かつ低抵抗で薄膜化可能なため、電池として高い特性が得られる。
本発明のイオン伝導性フィルムは、母材となるポリマーフィルムに非水電解液が含浸された形態のフィルムであり、該ポリマーフィルム中に耐熱ポリマーを含有するものである。
ここで、本発明においてイオン伝導性を有するとは、膜内にイオン透過路(本発明のイオン伝導性フィルムの場合は、ポリマー分子鎖間の間隙である自由体積)を有することによりイオンが膜の厚み方向に通り抜けることができることを意味する。イオン伝導性の尺度としては膜抵抗が挙げられる。本発明のイオン伝導性フィルムは、25℃における膜抵抗が後述の範囲内であることが好ましい。伝導性を有するイオン種としては例えば、第1族あるいは第2族に属する金属元素からなるイオンが挙げられ、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどである。
本発明において耐熱ポリマーとは、JIS−K7191−2(2007)にて規定された荷重たわみ温度が100℃以上のポリマーを意味する。上記のようなポリマーとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。本発明のイオン伝導性フィルムの母材を構成するポリマーとして、これらの耐熱ポリマー以外のポリマーが含まれていてもよいが、これらの耐熱ポリマーの割合が構成ポリマー中で40〜100質量%であることが好ましい。中でも耐熱性に優れ、含液状態かつ薄膜化した際に高強度を維持しやすいことから、芳香族ポリアミド(芳香族ポリイミド前駆体である芳香族ポリアミド酸を含む)または芳香族ポリイミドもしくは芳香族ポリアミドイミドを耐熱ポリマーとして用いることがより好ましい。
本発明において用いる芳香族ポリアミドとしては次の化学式(I)、芳香族ポリイミドとしては次の化学式(II)、芳香族ポリアミドイミドとしては次の化学式(III)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
化学式(I):
Figure 2017014493
化学式(II):
Figure 2017014493
化学式(III)
Figure 2017014493
ここで、化学式(I)〜(III)中のArおよびArは芳香族基であり、それぞれ単一の基であってもよいし、複数の基で、多成分の共重合体であってもよい。また、芳香環上で主鎖を構成する結合手はメタ配向、パラ配向のいずれであってもよい。さらに、芳香環上の水素原子の一部が任意の基で置換されていてもよい。
本発明のイオン伝導性フィルムにおける非水電解液の含有量および突き刺し強度を本発明の範囲内とするため、本発明において用いる芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、および芳香族ポリアミドイミドとしては、化学式(I)〜(III)中のArおよびArのすべての基の合計の25〜100モル%が、フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基およびフルオレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基(置換基)を有する芳香族基であることが好ましい。フッ素基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、シアネート基などの電子求引性の強い置換基を有することで、クーロン反発力によりポリマー鎖間に自由体積が形成され、非水電解液が入り込みやすくなる。また、フルオレン基などの嵩高い基を有することで、ポリマー鎖間の距離を離すことも効果的である。これにより芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、および芳香族ポリアミドイミド特有の優れた強度と耐熱性を維持しつつ、非水電解液を含有することができるため、イオン伝導性フィルムとして優れた特性を発現する。
さらに好ましくは、化学式(I)〜(III)中のArおよびArのすべての基の合計の25〜100モル%が、次の化学式(IV)〜(VIII)で表される基から選ばれた少なくとも1つの基であることであり、その割合は50〜100モル%であることがより好ましい。
化学式(IV)〜(VIII):
Figure 2017014493
ここで、化学式(IV)〜(VIII)の芳香環上の水素原子の一部が、さらにフッ素、臭素、塩素などのハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;メチル、エチル、プロピルなどのアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのアルコキシ基、カルボン酸基等の任意の基で置換されていてもよい。
本発明において用いる非水電解液としては、電解質塩を非水系溶媒に溶解させたものを用いることができる。電解質塩として、四級アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられ、例えばリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SOなどが挙げられる。非水系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、バレロラクトンなどのラクトン類、メチルアセテート、エチルアセテートなどの酢酸エステル類、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、スルホラン、アセトニトリル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられ、通常はビニレンカーボネートなどの各種添加剤とともに、これらのうちの2種以上を混合したものが用いられる。また、この他に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)アミドアミドアニオンからなるEMIFSA系などのイオン液体(常温溶融塩)も用いられる。溶解する電解質塩の濃度としては、一般的に0.2〜3.0M(mol/l)の範囲である。非水電解液中の水分量は0〜300ppm(質量基準、以下同様)であることが好ましく、0〜100ppmであることがより好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、フィルム中の非水電解液の含有量が30〜90質量%であり、好ましくは、40〜80質量%である。非水電解液の含有量が30質量%未満であると、電池用電解質膜として使用したときに、イオン伝導性が低く、電池の出力特性の低下が起きたり、繰り返し使用した際に容量劣化が大きくなることがある。非水電解液の含有量が90質量%を超えると、強度や耐短絡性などが低下することがある。本発明のイオン伝導性フィルム中の非水電解液の含有量を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、後述のアニール処理を施して、イオン伝導性フィルムを得ることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムの厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。さらに好ましくは、2〜5μmである。厚みが0.1μm未満であると、強度や耐短絡性などが低下することがある。厚みが10μmを超えると、イオン伝導性が低く、電池用電解質膜として使用した際に、抵抗の上昇により電池の出力特性の低下が起きたり、繰り返し使用した際に容量劣化が大きくなることがある。イオン伝導性フィルムの厚みは母材となるポリマーフィルムの厚みと非水電解液の含有量にて制御でき、ポリマーフィルムの厚みは、製膜原液濃度、製膜原液粘度、製膜原液中の添加物、流延厚み、熱処理温度および延伸条件など種々の条件により制御することができる。
本発明のイオン伝導性フィルムの突き刺し強度は0.3〜3.0N/μmである。突き刺し強度が0.3N/μm未満であると、電極表面の凹凸、混入異物、析出した金属デンドライトなどによる正負極の短絡が生じることがある。突き刺し強度は0.8〜3.0N/μmであることがより好ましく、1.2〜3.0N/μmであることがさらに好ましい。突き刺し強度を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、フィルムの製造方法および製造条件を後述の範囲内として、母材となるポリマーフィルムを得ることが好ましい。特に後述のとおり、母材となるポリマーフィルムを実質的に空孔を有さないフィルムとすることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムのガーレ透気度は10,000秒/100ml以上であることが好ましい。ガーレ透気度が10,000秒/100mlより小さいと、物理的な貫通孔を有することが多く、金属デンドライトなどの貫入を遮断する効果が得られないことがある。また、強度も本発明の範囲内とならないことがある。ガーレ透気度を上記範囲内とするため、フィルムの製造方法および条件を後述の範囲内とすることが好ましい。特にフィルムの製造方法および製造条件を後述の範囲内とすることにより、母材となるポリマーフィルムを実質的に空孔を有さないフィルムとすることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、25℃における膜抵抗が3.0〜100.0Ω・cmであることが好ましい。より好ましくは3.0〜50.0Ω・cm、さらに好ましくは3.0〜20.0Ω・cmである。膜抵抗が100.0Ω・cmを超えると、電池用電解質膜として使用したときに、イオン伝導性が低く、出力特性の低下が起きたり、繰り返し使用した際に容量劣化が大きくなることがある。膜抵抗を上記範囲内とするため、フィルム中の非水電解液の含有量を本発明の範囲内とすることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、フィルム中の水分量が質量基準(以下同じ)で0〜1,000ppmであることが好ましい。より好ましくは0〜500ppm、さらに好ましくは0〜300ppmである。フィルム中の水分量が1,000ppmを超えると、電池用電解質膜として使用したときに、水分と電解質塩などとの副反応により特性劣化が起きることがある。フィルム中の水分量を上記範囲内とするため、非水電解液を母材となるポリマーフィルム中に含浸する操作は、露点−30℃以下のドライルームやドライチャンバー内、あるいは不活性ガス(アルゴン、窒素など)を充填したグローブボックス内などの低湿度環境下で実施することが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、長手方向(MD)および幅方向(TD)の5%伸長時応力(F5値)がいずれも50〜1,000MPaであることが好ましい。ここで、MDとは膜(フィルム)の製膜方向であり、TDとはフィルム面上で製膜方向と直交する方向である。5%伸長時応力が50MPa未満であると、薄膜化した際、フィルムにコシがなく取扱性が悪化することがある。また、電池用電解質膜として使用した際に、電池に圧縮力や曲げ応力、衝撃などが加わったときに正負極間の絶縁性が保たれないことがある。5%伸長時応力は、いずれもが100〜1,000MPaであることがより好ましく、いずれもが200〜1,000MPaであることがさらに好ましい。5%伸長時応力を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、フィルムの製造方法および製造条件を後述の範囲内とすることが好ましい。特に後述のとおり、母材となるポリマーフィルムを実質的に空孔を有さないフィルムとすることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、長手方向(MD)および幅方向(TD)の破断点伸度がいずれも5〜200%であることが好ましい。破断点伸度が5%未満であると、電池用電解質膜として使用した際に、電池に圧縮力や曲げ応力、衝撃などが加わったときに正負極間の絶縁性が保たれないことがある。破断点伸度はいずれもが10〜200%であることがより好ましく、いずれもが20〜200%であることがさらに好ましい。破断点伸度を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、フィルムの製造方法および製造条件を後述の範囲内とすることが好ましい。特に後述のとおり、母材となるポリマーフィルムを実質的に空孔を有さないフィルムとすることが好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、力学的耐熱温度が100〜500℃であることが好ましい。より好ましくは200〜500℃、さらに好ましくは300〜500℃である。力学的耐熱温度が100℃未満であると、電池用電解質膜として使用し、電池が何らかの原因で異常発熱した際に、正負極間の絶縁を保持できず短絡が起こることがある。力学的耐熱温度を上記範囲内とするため、前述の分子構造を有するポリマーを用い、フィルムの製造方法および製造条件を後述の範囲内とすることが好ましい。
次に、本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムの製造方法について、以下に説明する。
まず、本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムに用いることができるポリマーを得る方法を芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドを例に説明する。もちろん、本発明に用いることができるポリマーおよびその重合方法はこれに限定されるものではない。
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であるが、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として低温溶液重合法を用いる場合には、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。溶液重合の場合、分子量の高いポリマーを得るために、重合に使用する溶媒の水分率を500ppm以下(質量基準、以下同様)とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。さらに、ポリマーの溶解を促進する目的で金属塩を添加してもよい。この金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。使用する酸ジクロライドおよびジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の95.0〜99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、芳香族ポリアミドの重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、副反応が起きて重合度が十分に上がらないことがあるため、重合中の溶液の温度を40℃以下に冷却することが好ましい。さらに、酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
一方、本発明において用いることができる芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸を、例えば、テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンを原料として重合する場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法などをとることができる。原料のテトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の90.0〜99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、イミド化反応により析出が起こることがあるため、重合中の溶液の温度は70℃以下とすることが好ましい。このようにして合成した芳香族ポリアミド酸をイミド化して芳香族ポリイミドを得る方法としては、熱処理や化学処理、およびその併用などが用いられる。熱処理法は、一般的にポリアミド酸を100〜500℃程度で加熱処理することでイミド化する方法である。一方、化学処理は、トリエチルアミンなどの第三級アミンを触媒として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物などの脱水剤を用いる方法や、ピリジンなどのイミド化剤を用いる方法がある。
芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸の対数粘度(ηinh)は、1.0〜7.0dl/gであることが好ましい。対数粘度が1.0dl/g未満であると、ポリマー分子鎖の絡み合いによる鎖間の結合力が減少するため、靭性や強度などの機械特性が低下したり、熱収縮率が大きくなることがある。対数粘度が7.0dl/gを超えると、イオン伝導性が低下することがある。
次に、本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを製造する工程に用いる製膜原液(以下、単に製膜原液ということがある。)について、説明する。
製膜原液には重合後のポリマー溶液をそのまま使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒や硫酸などの無機溶剤に再溶解して使用してもよい。ポリマーを単離する方法としては、特に限定しないが、重合後のポリマー溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出したポリマーのみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。また、再溶解時に溶解助剤として金属塩を添加してもよい。この金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。
製膜原液中のポリマーの濃度は、3〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。製膜原液には、得られるイオン伝導性フィルムの強度、耐熱性、イオン伝導性の向上、静摩擦係数の低減などを目的に、無機粒子または有機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム及びフッ化カルシウム等が挙げられる。有機粒子としては、例えば、高分子化合物を架橋剤を用いて架橋した粒子が挙げられる。このような架橋粒子として、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッ素系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
次に本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを製膜する方法について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法により製膜を行うことができる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、いずれの方法で製膜しても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。なお、本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムは、空孔を有する基材上や電極上に直接製膜することで積層複合体(イオン伝導性複合フィルムや電極複合体)を形成してもよいが、ここでは、単独のフィルムとして製膜する方法を説明する。
乾湿式法で製膜する場合は製膜原液を口金からドラム、エンドレスベルト、フィルム等の支持体上に押し出して膜状物とし、次いでかかる膜状物が自己保持性を持つまで乾燥する。乾燥条件は例えば、60〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。ただし、ポリアミド酸ポリマーを使用し、イミド化させずにポリアミド酸からなる膜を得たい場合、乾燥温度は60〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは60〜120℃である。乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれる。
延伸は延伸倍率として面倍率で1.1〜8.0(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.2〜5.0である。面倍率が1.1未満であると、ポリマー鎖の配向が進まず、非水電解液を含有した際にイオン伝導性フィルムの強度が低下するため、突き刺し強度が本発明の範囲内とならないことがある。面倍率が8.0を超えると、膜内部の自由体積が小さくなるため、イオン伝導性フィルム中の非水電解液の含有量が本発明の範囲内とならないことがある。
また、熱処理としては80℃〜500℃、好ましくは150℃〜400℃の温度で数秒から数10分間熱処理が実施される。ただし、ポリアミド酸ポリマーを使用し、イミド化させずにポリアミド酸からなる膜を得たい場合、熱処理温度は80〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは減圧下で80〜120℃とすることである。一般的に、熱処理温度が高いほど、イオン伝導性フィルムの耐熱温度は向上するが、フィルム中の非水電解液の含有量は低下する。
以上の製造方法により得られた本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムは実質的に空孔を有していない。ここで、実質的に空孔を有さないとは、構成ポリマーの真比重d、膜の嵩密度dから(1−d/d)×100により計算した空孔率が0〜10%であることを意味する。より好ましくは0〜5%であり、さらに好ましくは0〜2%である。実質的に空孔を有さないことで、多孔膜では実現が困難な強度を有し、かつ金属デンドライトなどの貫入を遮断するため、電池用電解質膜に用いた場合、薄膜化しても耐変形・衝撃、耐デンドライト起因短絡などの効果が得られる。上記で規定する空孔率が10%を超えると、強度や耐短絡性などが低下することがある。
以上の製造方法により得られた本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムに前述の非水電解液を含浸する操作は、露点−30℃以下のドライルームやドライチャンバー内、あるいは不活性ガス(アルゴン、窒素など)を充填したグローブボックス内などの低湿度環境下で実施することが好ましい。このとき、非水電解液の含浸前に、母材となるポリマーフィルムに対して、コロナ処理やプラズマ処理など公知の方法による表面親液処理を施してもよい。
本発明のイオン伝導性フィルムを電池用電解質膜として使用する場合、イオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを電池に組み込んだ後、電池の注液口から非水電解液を注液することにより含浸してもよいし、あらかじめ非水電解液を含浸した後に電池に組み込んでもよい。フィルム中の水分量を本発明の範囲内とするため、電池に組み込んだ後、非水電解液を注液することにより含浸することが、より好ましい。
さらに、このとき、イオン伝導性フィルム中の非水電解液の含有量を本発明の範囲内とするため、非水電解液とイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムの共存下において、40〜100℃で10分〜24時間程度アニール処理を施すことが好ましい。アニール処理を施すことにより、母材となるポリマーフィルム中の自由体積部分へ非水電解液分子が配位し、非水電解液の含有量を本発明の範囲内とすることができる。アニール処理の条件は、50〜80℃で4〜24時間とすることがより好ましい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、単独で電池用電解質膜として用いてもよいし、多孔質基材上に形成してイオン伝導性複合フィルムとして用いてもよい。多孔質基材としては、一般的に電池用セパレータとして用いられるポリマー多孔質膜や不織布などが挙げられる。多孔質基材上に形成する方法としては、電池を組み立てる際に多孔質基材と本発明のイオン伝導性フィルム(あるいはその母材となるポリマーフィルム)を順に積層してもよいし、あらかじめ本発明のイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを、多孔質基材上に製膜して一体化したものを用いてもよい。また、本発明のイオン伝導性フィルムは、電池用電極上に直接塗布により製膜することで、一体化した電極複合体としてもよい。
本発明のイオン伝導性フィルムは、高い耐熱性と強度を持ち、かつ実用的なイオン伝導性を有するため、電池用電解質膜として好適に用いることができる。本発明のイオン伝導性フィルムを電池用電解質膜に用いた場合、耐熱、耐変形・衝撃、耐デンドライト起因短絡などの点で安全性に優れ、かつ低抵抗で薄膜化可能なため、電池として高い特性が得られる。
本発明のイオン伝導性フィルムが適用される電池の例として、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムやカルシウムなどの多価イオン二次電池などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明のイオン伝導性フィルムを電解質膜として用いた電池は、小型の電子機器を始め、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの交通機関、産業用クレーンなどの大型の産業機器の動力源などとして好適に用いることができる。また、太陽電池、風力発電装置などにおける電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても好適に用いることができる。さらには、宇宙用などの特殊環境下で使用する電池にも好適に用いることができる。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
実施例における物性の測定方法は次の方法に従って行った。
(1)膜抵抗
測定用電極1として、厚み20μmのアルミシートを長辺50mm×短辺40mmに切り出した。このうち、短辺40mm×長辺の端10mmはタブを接続するためののりしろであり、有効測定面積は40mm×40mm(1,600mm=16cm)である。切り出したアルミシートののりしろ部の任意の位置に幅5mm、長さ30mm、厚み100μmのアルミ製タブを超音波溶接した後、溶接部を含むのりしろ部全体をカプトン(登録商標)テープで覆うことで絶縁処理を行った。
測定用電極2として、同上のアルミシートを長辺55mm×短辺45mmに切り出した。このうち、短辺45mm×長辺の端10mmはタブを接続するためののりしろである。切り出したアルミシートののりしろ部の任意の位置に幅5mm、長さ30mm、厚み100μmのアルミ製タブを超音波溶接した後、溶接部を含むのりしろ部全体をカプトン(登録商標)テープで覆うことで絶縁処理を行った。
試料の母材となるポリマーフィルムを55mm×55mmに切り出した。
以降の作業は、露点−30℃以下のドライルーム内で実施した。
切り出した測定用電極1、測定用電極2、および母材となるポリマーフィルムを乾燥器(減圧度0.09MPa、120℃)にて12時間減圧乾燥させた後、測定用電極1/ポリマーフィルム/測定用電極2の順に重ねた。このとき、測定用電極1の40mm×40mmの有効測定領域の全てが試料膜を隔てて測定用電極2と対向するように配置した。次に、アルミラミネートフィルムに上記の(電極/ポリマーフィルム/電極)積層体を挟み込み、アルミラミネートフィルムの1辺を残して熱融着し、袋状とした。
袋状にしたアルミラミネートフィルムに、所定の非水電解液を1.5g注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネートセルを作製した。アニール処理を施す場合は、作製したセルについて、標準条件として50℃の雰囲気下で12時間静置した。このようなセルを、電極間の試料膜を2枚、4枚として2種類作製した。
以上により作製した各セルについて、25℃雰囲気下、電圧振幅10mV、周波数10Hz〜5,000kHzの条件で交流インピーダンスを測定し、Cole−Coleプロットから交流抵抗(Ω)を求めた。得られた交流抵抗を試料膜の枚数に対してプロットし、このプロットを直線で結んだときの傾きから試料膜1枚あたりの交流抵抗を算出した。得られた交流抵抗に有効測定面積16cmを乗ずることで、規格化した膜抵抗(Ω・cm)を算出した。なお、上記したプロットに供する交流抵抗値は、試料膜の枚数が異なる2種類の評価用セルについて、各5個づつ作成し、交流抵抗値の最大値、最小値を除いた3個の測定値を平均した値をそれぞれ用いた。
(2)非水電解液含有量
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料の質量(W)を計測した。
次に試料を過剰量のジメチルカーボネートにて洗浄することで、含有する非水系溶媒を置換するとともに、電解質塩や添加剤を除去した。その後、純水にてジメチルカーボネートを置換し、乾燥器(減圧度0.09MPa、80℃)にて12時間減圧乾燥させた。減圧したまま乾燥器内で23℃まで冷却した後、試料の母材であるポリマーフィルムを取り出し、その質量(W)を計測した。
得られたWおよびWから、非水電解液含有量を次式により計算した。
非水電解液含有量(質量%)=((W−W)/W)×100
(3)厚み
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料を得た。
定圧厚み測定器FFA−2(尾崎製作所社製)を用いて上記試料の厚み(μm)を測定した。測定子径は5mm、測定荷重は0.8N以下である。
(4)突き刺し強度
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料を得た。
圧縮試験機KES−G5(カトーテック社製)を用いて、針進入速度を2mm/秒とし、それ以外はJIS−Z1707(1997)に準じて23℃で測定した。試料が破膜したときの最大荷重を読み取り、試験前の試料の厚みで除した値を突刺強度(N/μm)とした。
(5)ガーレ透気度
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料を得た。
B型ガーレデンソメーター(安田精機製作所社製)を使用し、JIS−P8117(1998)に規定された方法に従って、試料のガーレ透気度(秒/100ml)の測定を行った。試料を直径28.6mm、面積642mmの円孔に締め付け、内筒により(内筒質量567g)、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させ、空気100mlが通過する時間を測定することでガーレ透気度とした。
本発明においては、ガーレ透気度が10,000秒/100ml以上の場合、実質的に透気性なしと判断した。
(6)水分量
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料を得た。
試料中の水分量を水分気化カールフィッシャー法にて定量分析した。分析条件は以下の通りである。
装置:水分気化装置VA−100(三菱化学社製)
水分測定装置CA−100(三菱化学社製)
電極液:陽極液:クーロマットAG−Oven、陰極液:クーロマットCG
キャリアガス:窒素(五酸化リン脱水)
試料加熱温度:250±4℃
キャリアガス流量:200±20ml/分
(7)力学的耐熱温度
測定方法(1)に記載の方法にてセルを用意した。23℃、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、用意したセルのアルミラミネートフィルムの4辺を切開することで、試料膜1枚を取り出した。試料の1角を把持した状態で1分間自然液切りし、余剰液を除去した試料を得た。
熱・応力・歪み測定装置TMA/SS6000および熱分析レオロジーシステムEXSTAR6000(ともにセイコーインスツルメンツ社製)を用いて以下の条件で測定し、膜が破断するか、10%伸長する温度を力学的耐熱温度とした。
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
測定温度範囲:25〜350℃
昇温速度:5℃/分
荷重:2.5Pa
(実施例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)に、ジアミンとして2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)を窒素気流下で溶解させ、30℃以下に冷却した。そこへ、系内を窒素気流下、30℃以下に保った状態で、ジアミン全量に対して99モル%に相当する2−クロロテレフタロイルクロライド(日本軽金属社製)を30分かけて添加し、全量添加後、約2時間の撹拌を行うことで、芳香族ポリアミド(A)を重合した。得られた重合溶液を、酸クロライド全量に対して97モル%の炭酸リチウム(本荘ケミカル社製)および6モル%のジエタノールアミン(東京化成社製)により中和することで芳香族ポリアミド(A)の溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度ηinhは4.0dl/gであった。
得られた芳香族ポリアミド溶液を支持体であるステンレス(SUS316)ベルト上に膜状に塗布し、熱風温度120℃でフィルムが自己支持性を持つまで乾燥させた後、フィルムを支持体から剥離した。次いで、60℃の水浴に導入することで、溶媒および中和塩などの抽出を行った。なお、剥離から水浴後までの延伸は、フィルムのMDに1.1倍、TDは無把持である。続いて、得られた含水状態のフィルムを、温度280℃のテンター室内にて、定長でTDに1.15倍の延伸を施しながら、2分間の熱処理を施し、MDに連続で巻き取ることで、イオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを得た。
得られたポリマーフィルムを用いて測定方法(1)に記載の方法にてセルを作製した。このときの非水電解液として、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(体積比)の混合溶媒に電解質塩としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させたもの(三井化学社製)を用いた。作製したセルについて50℃の雰囲気下で12時間アニール処理を施した後、イオン伝導性フィルム試料の膜抵抗を測定した。また、膜抵抗を測定後のセルについて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、アルミラミネートフィルムの4辺を切開することでイオン伝導性フィルム試料1枚を取り出し、各物性を測定した。得られた評価結果を表1に示す。
(実施例2)
芳香族ポリアミド(B)を得るための酸クロライドを、ジアミン全量に対して99モル%に相当する2−フルオロテレフタロイルクロライド(イハラニッケイ化学工業社製)とすること以外は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
芳香族ポリアミド(C)を得るためのジアミンを、9,9’−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン(和歌山精化工業社製)とし、酸クロライドをジアミン全量に対して100モル%に相当するイソフタロイルクロライド(東京化成工業社製)とすること以外は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
脱水したNMPに、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(東京化成工業社製)を室温にて溶解させた。そこへ、ジアミン全量に対して100モル%に相当する4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(東京化成工業社製)を30分かけて添加し、全量添加後、約2時間の撹拌を行うことで、芳香族ポリアミド酸(A)を重合した。得られた芳香族ポリアミド酸の対数粘度ηinhは2.0dl/gであった。
得られた芳香族ポリアミド酸溶液を支持体であるステンレス(SUS316)板上に膜状に塗布し、120℃の熱風オーブンでフィルムが自己支持性を持つまで乾燥させた後、フィルムを支持体から剥離した。次いで、剥離したフィルムを金属枠に固定し、60℃の水浴に導入することで溶媒の抽出を行った。続いて、水浴から出した含水状態のフィルムに温度350℃の熱風オーブンにて2分間の熱処理を施すことでイミド化させ、芳香族ポリイミド(A)からなるイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを得た。
以降は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド(A)を含む溶液を得た。
次に、得られた芳香族ポリアミド溶液中にポリビニルピロリドン(PVP)K120(BASF社製)および希釈用のNMPを加え、製膜原液中の芳香族ポリアミドおよびPVPの含有量が、それぞれ8質量%、8質量%となるように製膜原液を調製した。製膜原液は60℃で2時間撹拌を行うことで均一透明な溶液とした。
以降は実施例1と同様にして製膜およびセル作製を行うことで試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例6)
非水電解液として、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/3(体積比)の混合溶媒に電解質塩としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させたもの(三井化学社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例7)
非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に電解質塩としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させたもの(三井化学社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド(A)を含む溶液を得た。次に、得られた芳香族ポリアミド溶液中にアルミナ粒子Alu C(日本アエロジル社製)および希釈用のNMPを加え、製膜原液中の芳香族ポリアミドおよびアルミナ粒子の含有量が、それぞれ5質量%、5質量%となるように製膜原液を調製した。
得られた製膜原液を、厚み25μmのセルロース紙MW−25(三木特殊製紙社製)上に膜状に塗布し、120℃の熱風オーブンで乾燥させ、複合膜を得た。次いで、複合膜を金属枠に固定し、60℃の水浴に導入することで溶媒の抽出を行った。続いて、水浴から出した含水状態の複合膜に温度230℃の熱風オーブンにて2分間の熱処理を施すことで、イオン伝導性複合フィルムの母材となる複合フィルムを得た。
以降は実施例1と同様にして多孔質基材上にイオン伝導性フィルムを形成してなるイオン伝導性複合フィルムの試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。なお、表1に示した非水電解液含有量、水分量、厚み、および突き刺し強度は、同様の条件にて含液状態のセルロース紙単体とイオン伝導性複合フィルムの試料を測定することにより、イオン伝導性フィルム層の値を算出したものである。また、ガーレ透気度および膜抵抗はイオン伝導性複合フィルムについて測定した参考値である。
(実施例9)
実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド(A)を含む溶液を得た。
得られた芳香族ポリアミド溶液を、厚み50μmの黒鉛を活物質として用いた負極シート(宝泉社製)の活物質面上に膜状に塗布し、80℃の熱風オーブンで乾燥させた。次いで、負極シートごと60℃の水浴に導入することで溶媒の抽出を行った後、温度80℃の真空オーブンにて15分間の熱処理を施し、負極上にイオン伝導性フィルムの母材となるポリマーフィルムを形成してなる電極複合体を得た。
得られた電極複合体を55mm×45mmに切り出した。このうち、短辺45mm×10mmはタブを接続するための未塗工部であって、活物質塗布部は45mm×45mmである。幅5mm、長さ30mm、厚み0.1mmの銅製タブを未塗布部に超音波溶接した。
正極として、厚み40μmのコバルト酸リチウム(LiCoO)を活物質として用いた正極シート(宝泉社製)を50mm×40mmに切り出した。このうち、短辺40mm×長辺の一部10mmはタブを接続するための未塗布部であって、活物質塗布部は40mm×40mmである。負極タブと同サイズのアルミ製タブを未塗布部に超音波溶接した。
以降の作業は、露点−30℃以下のドライルーム内で実施した。
切り出した電極複合体と正極シートを乾燥器(減圧度0.09MPa、120℃)にて12時間減圧乾燥させた後、電極複合体のポリマーフィルム側を正極シートの活物質面と対向するように配置して積層体を得た。次に、アルミラミネートフィルムに上記の積層体を挟み込み、アルミラミネートフィルムの1辺を残して熱融着し、袋状とした。
袋状にしたアルミラミネートフィルムに、EC/DEC=3/7(体積比)の混合溶媒に電解質塩としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させた非水電解液を1.5g注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネートセルを作製した。
作製したラミネートセルについて、50℃の雰囲気下で12時間静置してアニール処理を施した後、25℃の雰囲気下で以下の電池試験を行った。
まず、0.5Cの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行い、4.2Vの電圧で電流値が50μAになるまで定電圧充電を行った。続いて、0.5Cの電流値で2.7Vの電圧まで定電流放電を行った。充電及び放電が交互となるように、上記充電・放電を合計4回行うことで仕上げ充放電を実施した。
仕上げ充放電を終えたセルについて、0.5Cの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行った。続いて、0.5Cの電流値で2.7Vの電圧まで定電流放電を行い、0.5Cにおける放電容量を得た。1C、3Cにおいても、充電はともに0.5Cの定電流充電とし、1C、3Cの定電流放電を行うことでそれぞれのCレートにおける放電容量を得た。設計容量に対するそれぞれのCレートにおける放電容量の発現率はそれぞれ、0.5Cで94%、1Cで91%、3Cで75%であった。
また、電池試験後のセルについて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて、アルミラミネートフィルムの4辺を切開することで電極複合体試料を取り出し、イオン伝導性フィルム層の非水電解液含有量、水分量、厚み、突き刺し強度を測定した。評価結果を表1に示す。なお、表1に示した値は、同様の条件にて負極シート単体と電極複合体の試料を測定することにより、イオン伝導性フィルム層の値を算出したものである。
(実施例10)
実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド(A)を含む溶液を得た。次に、得られた芳香族ポリアミド溶液中にアルミナ粒子Alu C(日本アエロジル社製)および希釈用のNMPを加え、製膜原液中の芳香族ポリアミドおよびアルミナ粒子の含有量が、それぞれ2.5質量%、7.5質量%となるように製膜原液を調製した。
得られた製膜原液を、厚み20μmのポリエチレン製セパレータ F20BHE(東レバッテリーセパレータフィルム社製)上に膜状に塗布し、60℃の熱風オーブンで乾燥させ、複合膜を得た。次いで、複合膜を金属枠に固定し、60℃の水浴に導入することで溶媒の抽出を行った。続いて、水浴から出した含水状態の複合膜に温度80℃の真空オーブンにて15分間の熱処理を施し、イオン伝導性複合フィルムの母材となる複合フィルムを得た。
以降は実施例1と同様にして多孔質基材上にイオン伝導性フィルムを形成してなるイオン伝導性複合フィルムの試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。なお、表1に示した非水電解液含有量、水分量、厚み、および突き刺し強度は、同様の条件にて含液状態のポリエチレン製セパレータ単体とイオン伝導性複合フィルムの試料を測定することにより、イオン伝導性フィルム層の値を算出したものである。また、ガーレ透気度および膜抵抗はイオン伝導性複合フィルムについて測定した参考値である。
(実施例11)
作製したセルについて、アニール処理条件を50℃/2時間とすること以外は、実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
芳香族ポリアミド(D)を得るためのジアミンを、1,3−フェニレンジアミンとし、酸クロライドをジアミン全量に対して100モル%に相当するイソフタロイルクロライドとすること以外は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
芳香族ポリアミド(E)を得るためのジアミンを、ジアミン全量に対して40モル%に相当する2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルと60モル%に相当する1,3−フェニレンジアミンとし、酸クロライドをジアミン全量に対して99モル%に相当するテレフタロイルクロライドとすること以外は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(比較例3)
芳香族ポリアミド(F)を得るための酸クロライドを、ジアミン全量に対して90モル%に相当するイソフタロイルクロライドとすること以外は実施例1と同様にして試料を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度ηinhは0.9dl/gであった。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(比較例4)
ジアミンを、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン(日本化薬社製)とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド(G)を含む溶液を得た。
得られた芳香族ポリアミド溶液を支持体であるステンレス(SUS316)板上に膜状に塗布し、熱風温度120℃でフィルムが自己支持性を持つまで乾燥させた後、フィルムを支持体から剥離した。次いで、剥離したフィルムを金属枠に固定し、60℃の水浴に導入することで溶媒および中和塩の抽出を行った。続いて、水浴から出した含水状態のフィルムを、過剰量の非水電解液中に浸漬することでフィルム中の水と非水電解液とを置換し、試料を得た。ここで非水電解液としては、EC/DEC=3/7(体積比)の混合溶媒に電解質塩としてLiPFを濃度1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。得られた試料の評価結果を表1に示す。
(比較例5)
脱水したNMPに、ポリフッ化ビニリデンW#7300(クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン社製)を濃度10質量%にて溶解させた。
得られたPVDF溶液を支持体であるステンレス(SUS316)板上に膜状に塗布し、120℃の熱風オーブンでフィルムが自己支持性を持つまで乾燥させた後、フィルムを支持体から剥離した。次いで、剥離したフィルムを金属枠に固定し、60℃の水浴に導入することで溶媒の抽出を行った。続いて、水浴から出した含水状態のフィルムを温度120℃の熱風オーブンにて10分間乾燥させることで、PVDFからなるポリマーフィルムを得た。
以降は実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。ただし、取り出した試料の自己支持性が低く、突き刺し強度、ガーレ透気度、および力学的耐熱温度は測定不可であった。
(比較例6)
作製したセルについて、50℃/12時間のアニール処理を施さない(25℃/12時間静置)こと以外は、実施例1と同様にして試料を得た。得られた試料の評価結果を表1に示す。
Figure 2017014493
本発明のイオン伝導性フィルムは、高い耐熱性と強度を持ち、かつ実用的なイオン伝導性を有するため、電池用電解質膜として好適に用いることができる。本発明のイオン伝導性フィルムを電池用電解質膜に用いた場合、耐熱、耐変形・衝撃、耐デンドライト起因短絡などの点で安全性に優れ、かつ低抵抗で薄膜化可能なため、電池として高い特性が得られる。

Claims (6)

  1. 耐熱ポリマーと非水電解液とを含有し、非水電解液の含有量が30〜90質量%であり、突き刺し強度が0.3〜3.0N/μmであるイオン伝導性フィルム。
  2. 25℃における膜抵抗が3.0〜100.0Ω・cmである、請求項1に記載のイオン伝導性フィルム。
  3. 耐熱ポリマーとして、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドまたは芳香族ポリアミドイミドを含む、請求項1または2に記載のイオン伝導性フィルム。
  4. フィルム中の水分量が質量基準で0〜1,000ppmである、請求項1〜3のいずれかに記載のイオン伝導性フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のイオン伝導性フィルムを、多孔質基材上に形成してなるイオン伝導性複合フィルム。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のイオン伝導性フィルムを、電池用電極上に形成してなる電極複合体。
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