JP2017014538A - 耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特に優れた表面平滑性が要求される耐熱部品の素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.005〜0.20%、Si:0.1〜4.0%、Mn:0.1〜4.0%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.010%、Ni:5〜25%、Cr:15〜30%、N:0.01〜0.30%、Al:0.005〜1.0%、Cu:0.1〜3.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、介在物清浄度が0.025%以下、結晶粒度番号が6以上、表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.06μm以下であることを特徴とする耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性に加え表面平滑性が要求される耐熱部品の素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関するものである。
自動車の排気マニホールド、フロントパイプ、センターパイプ、マフラーおよび排気ガス浄化のための環境対応部品は、高温の排気ガスを安定的に通気させるために、耐酸化性、高温強度、熱疲労特性等の耐熱性に優れた材料が使用される。また、凝縮水腐食環境でもあることから耐食性に優れることも要求される。排気ガス規制の強化、エンジン性能の向上、車体軽量化等の観点からも、これらの部品にはステンレス鋼が多く使用されている。また、近年では、排気ガス規制の強化が更に強まる他、燃費性能の向上、ダウンサイジング等の動きから、特にエンジン直下のエキゾーストマニホールドを通気する排気ガス温度は上昇傾向にある。加えて、ターボチャージャーのような過給機を搭載するケースも多くなっており、エキゾーストマニホールドやターボチャージャーに使用されるステンレス鋼には耐熱性の一層の向上が求められる。排気ガス温度の上昇に関しては、従来900℃程度であった排気ガス温度が1000℃程度まで上昇することも見込まれている。一方、ターボチャージャーの内部構造は複雑で、過給効率を高めるとともに、耐熱信頼性の確保が重要であり、主として耐熱オーステナイト系ステンレス鋼の使用が開示されている。代表的な耐熱オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS310S(25%Cr−20%Ni)やSUSXM15J1(19%Cr−13%Ni−3%Si)やNi基合金等の使用が特許文献1および2に開示されている。また、ターボチャージャーにおいてノズルベーン式ターボチャージャーの排気部品に使用される鋼が特許文献3に開示されている。ここでは、良好な耐酸化性および高温強度を有することを目的として鋼成分が調整されているが、これらだけではターボチャージャーを構成する数多い部品に要求される特性として十分でない場合があった。
具体的には、ターボチャージャーにおけるバックプレートやオイルディフレクターと呼ばれる部品には耐酸化性や高温強度の他に表面平滑性が重要となる。ターボチャージャーは、排気ガスを集めてタービンを回すタービン部分、空気を集めてエンジンのシリンダーに押し込むコンプレッサー部分、回転軸を保持するセンターコアの3つの部分に分けられる。バックプレートやオイルディフレクターのような部品は、タービン部分およびコンプレッサー部分とセンターコアの間に位置し、各部のシール性を保ちつつタービンおよびコンプレッサーホイールを安定的に回転させる部品である。これらのターボ内部の部品は表面の平滑性が悪いと気密性が悪くなり、過給効率の劣化に繋がる。また、高温強度が不足すると過度な熱変形(クリープ)が生じてしまい、各ホイールの回転に支障をきたす。更に、耐酸化性が不足しスケール剥離が生じてしまうと各ホイールの損傷に至ってしまう。従来、これらの部品は、鋳鋼を素材として製造され、切削や研削により表面の平滑性および板厚精度を確保した上で使用されているが、素材および部品加工のコストが高くなる欠点があった。この他、ノズルマウントやノズルプレートと呼ばれる排気ガスを可変的に導入および排出する部品も同様である。
国際公開2014−24905号 特開2002−332862号公報 特許第4937277号公報
本発明の目的は、既知技術の問題点を解決し、特に自動車排気部品の中でターボ部品用として適合する耐熱性に加え表面平滑性が要求される耐熱部品の素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らはオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関して、鋼成分、表面性状、金属組織、高温特性の見地から詳細な研究を行った。その結果、例えばターボチャージャーのような極めて過酷な熱環境に曝される部品の中で耐熱性と表面平滑性が要求される素材に対して、鋼成分に加えて、介在物分布、結晶粒径、表面粗さを制御することにより、優れた耐熱性と表面平滑度を有し、ステンレス鋼板を素材とした部品において熱および形状信頼性を確保出来ることを知見した。特許文献1〜3では、鋳造品の切削処理や研削処理、あるいは冷延焼鈍後に研磨処理することが示されているが、本発明では冷延焼鈍後の酸洗処理によって表面平滑性を確保するとともに、切削や研削工程の省略あるいは負荷低減に寄与する。
上記課題を解決する本発明の要旨は、
(1)質量%で、C:0.005〜0.20%、Si:0.1〜4.0%、Mn:0.1〜4.0%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.010%、Ni:5〜25%、Cr:15〜30%、N:0.01〜0.30%、Al:0.005〜1.0%、Cu:0.1〜3.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、介在物清浄度が0.025%以下、結晶粒度番号が6以上、表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.06μm以下であることを特徴とする耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
(2)前記鋼板が、更に、質量%で、Mo:0.01〜3.0%、V:0.05〜0.5%、Ti:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.010%、の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
(3)前記鋼板が、更に、質量%で、W:0.10〜3.00%、Zr:0.05〜0.30%、Sn:0.01〜0.50%、Co:0.03〜0.30%、Mg:0.0002〜0.010%、Sb:0.005〜0.50%、REM:0.001〜0.2%、Ga:0.0002〜0.3%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
(4)請求項1〜3のいずれか1項に記載されたステンレス鋼板を製造する際、冷延後の焼鈍工程において、1000〜1200℃に加熱後、500℃までの冷却速度を10℃/sec以上とし、400〜500℃に保持された溶融アルカリ塩に5〜20sec浸漬された後に、100℃以下まで10℃/sec以上の冷却速度で冷却されることを特徴とする耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐熱部品の素材となるオーステナイト系ステンレス鋼板に研削処理や研磨処理をすることなく、冷延焼鈍後の酸洗処理によって表面平滑性を確保できる。耐熱性と表面平滑性が要求される自動車排気部品用(特にターボ部品用)として、オーステナイト系ステンレス鋼を提供できる。併せて、切削や研削工程の省略あるいは負荷低減に寄与する。
以下に本発明の限定理由について説明する。耐熱用途として使用されるオーステナイト系ステンレス鋼板の特性として重要なのは高温強度であり、本発明は、1000℃での0.2%耐力が20MPa以上の高温強度を具備することを目標とする。一方、特に上記のようなターボ部品の場合、表面性状も極めて重要である。先述したように、製品の表面平滑性に劣ると気密性が悪くなる他、他部品との摩耗特性も劣り、高温での部品性能の信頼性低下に繋がる。ここで表面平滑性とは、素材表面および部品加工後の表面性状のことであり、高温使用環境を考慮して、詳細な検討を行った結果、素材介在物清浄度、結晶粒径、表面粗度が強く関与していることが判明した。
先ず、介在物清浄度について説明する。オーステナイト系ステンレス鋼板の主な介在物はSi系あるいはAl系酸化物の他、MnS等が挙げられる。本発明では冷間圧延後の焼鈍・酸洗工程における冷却速度に起因する、Cr炭窒化物やσ相などの炭窒化物、金属間化合物を介在物に含む。介在物組成によらず、介在物清浄度が悪くなる、即ち介在物の存在比率が高くなると、高温使用中でクリープボイドが発生し熱変形が生じやすくなることを知見した。熱変形が大きくなるとターボ部品の寸法精度が悪くなり、他部品との接触等によって破損に至る場合がある。また、介在物の清浄度は高温変形のみならず、表面平滑性にも影響し、介在物が多くなると特に部品加工後の表面微細凹凸が生じやすくなることも明らかとなった。介在物清浄度は、例えば鋼板断面(圧延方向と直角方向の断面)を研磨したサンプルを用いて、JIS G 0555によって測定される。上記、高温変形と表面平滑性を十分保つための清浄度として0.025%以下とする。更に、耐酸化性を考慮すると0.020%以下が望ましい。高温強度と、介在物清浄度が本発明範囲であれば、クリープ熱変形の問題は生じない。
次に結晶粒径について説明する。各種耐熱部品は素材を加工して使用されるが、加工後に生じる肌荒れ(オレンジピール)が顕著に生じると、シール面に凹凸が生じるため、気密性が低下する。従来の鋳鋼を素材とした場合は表面を研削処理するため、このような課題は無かったが、鋼板を素材として各種プレス加工する場合には、微小な凹凸が問題となることを本発明の検討過程で知見した。結晶粒径については、例えば鋼板断面(圧延方向と平行方向の断面)を研磨したサンプルを用いて、JIS G 0551によって結晶粒度番号が測定される。結晶粒径と加工後の凹凸高さの相関を調べた結果、結晶粒度番号で6.0以上として細粒にすることによりバックプレート等のターボ部品の精度を満足する加工後凹凸高さが得られることを知見したため、結晶粒度番号を6.0以上とする。尚、過度に細粒化すると精密打ち抜き性が劣化するため、上限は10.5が望ましい。更に、強度、延性および製造性を考慮すると6.5〜10.0が望ましい。
上記の他、素材の表面粗さも表面平滑性には重要であり、素材の表面粗さが粗いと部品間のシール性が不良となり排気ガスのリーク等に繋がる。これも、従来の鋳鋼は部品を切削処理されるため課題とならなかったが、鋼板を素材とする場合に素材の微小な表面粗さが信頼性確保に極めて重要であることを知見した。表面粗さ測定については、JIS B 0601に従い、鋼板表面に対して圧延方向と平行方向あるいは直角方向に表面粗さが測定される。素材の表面粗さと他部品との接触性を種々検討した結果、圧延方向と直角方向の中心平均粗さ(Ra)が0.06μm以下であれば、各部のシール性を保ちつつタービンおよびコンプレッサーホイールを安定的に回転させるための信頼性を満足することが明らかとなった。更に、生産性や加工によって増加する粗さを考慮すると0.005〜0.05μmが望ましい。
次に鋼の成分範囲について説明する。
以下の含有量の数値はすべて質量%での数値である。
Cは、オーステナイト組織形成と高温強度の確保のために0.005%を下限とする。一方、Cr炭化物形成により耐食性、特に溶接部の粒界腐食性が著しく劣化するため、上限を0.20%とする。更に、製造コストとスケール剥離性を考慮すると0.01〜0.15%が望ましい。
Siは、脱酸元素として添加される場合がある他、耐酸化性と高温強度の向上をもたらすため、0.1%以上添加する。一方、4.0%を超える添加により粗大なSi系酸化物が生成し、介在物の清浄度が著しく低下するため、上限を4.0%とする。更に、製造コスト、鋼板製造時の酸洗性、溶接時の凝固割れ性を考慮すると、0.4〜3.3%が望ましい。
Mnは、脱酸元素として利用する他、オーステナイト組織形成およびスケール密着性を確保するために0.1%以上添加する。一方、4.0%超の添加により介在物清浄度が著しく劣化する他、酸化増量が著しく増加し、異常酸化限界温度が低下してしまうため、上限を4.0%とする。更に、製造コスト、鋼板製造時の酸洗性を考慮すると、0.2〜2.0%が望ましい。
Pは、製造時の熱間加工性や凝固割れを助長する元素である他、介在物清浄度や1000℃における耐酸化性が劣化するため、その含有量は少ないほど良いが、精錬コストを考慮して上限を0.05%、下限を0.01%とする。更に、製造コストを考慮すると、0.02〜0.04%が望ましい。
Sは、製造時の熱間加工性を低下させる他、耐食性を劣化させる元素である。また、粗大な硫化物が形成されると清浄度が著しく悪くなるため、上限を0.010%とする。一方、過度な低減は精錬コストの増加に繋がることから、下限を0.0001%とする。更に、製造コストや耐酸化性を考慮すると、0.0005〜0.0050%が望ましい。
Niはオーステナイト組織形成元素であるとともに、耐食性や耐酸化性を確保する元素である。また、5%未満では結晶粒の粗大化が顕著に生じて高温強度が低下してしまうため5%以上添加する。一方、過度な添加はコストの上昇を招くことから上限を25%とする。更に、製造性、高温強度および耐食性を考慮すると、10〜20%が望ましい。
Crは、耐食性、耐酸化性および高温強度を向上させる元素であり、排気部品環境を考慮すると異常酸化抑制の観点から15%以上が必要である。また、15%未満では焼鈍時に保護性の高いCrリッチなスケールではなく、Feリッチなスケールが生成し、その後のデスケールにおいてFeが優先的に溶解するため、母地の表面粗さが増加し、ターボ部品としての気密性が劣化する。一方過度な添加は、硬質となり成形性を劣化させる他、コストアップに繋がることから上限を30%とした。更に、製造コスト、鋼板製造性ならびに加工性を考慮すると、17〜25.5%が望ましい。
Nは、Cと同様にオーステナイト組織形成と高温強度の確保の有効な元素である。高温強度に関しては固溶強化元素として知られているが、本発明においてはN単独の効果以外にCrとのクラスター形成による高温強度も考慮し、0.01%以上添加する。一方、0.30%超の添加により常温材質が著しく硬質化し、鋼板製造段階の冷間加工性が劣化する他、製品加工時の成形性が悪くなるため、上限を0.30%とする。更に、溶接時のピンホール抑制、溶接部の粒界腐食抑制の観点から、0.02〜0.25が望ましい。
Alは、脱酸元素として添加されて介在物清浄度を向上させる他、酸化スケールの剥離を抑制する効果があり,その作用は0.005%から発現するため、下限を0.005%とした。また、フェライト生成元素であるため、1.0%以上の添加はオーステナイト組織の安定性が低下する他、清浄度の低下や製造性の劣化を招くため上限を1.0%とする。更に、精錬コストと表面疵を考慮すると0.015〜0.5%が望ましい。
Cuは、オーステナイト相の安定化のために有効な元素あり、0.1%以上添加する。一方、3.0%を超える添加により1000℃での酸化試験において異常酸化を引き起こすとともに清浄度の低下や製造性の劣化に繋がるため、上限を3.0%とする。更に、耐食性や製造性を考慮すると、0.3〜1.0%が望ましい。
続いて、選択添加元素について説明する。
Moは、耐食性を向上させる元素であるとともに、高温強度の向上に寄与する。本発明においては、固溶強化の他にMo炭化物による析出強化を活用するために下限を0.01%、上限を3.0%とする。更に、Moは高価な元素であること、上記析出物による強化安定性ならびに介在物清浄度を考慮すると、0.4〜1.6%が望ましい。
Vは、耐食性を向上させる元素であるとともに、V炭化物を形成し高温強度を向上させるため0.05%以上添加する。一方、過度な添加は合金コストの増加や異常酸化限界温度の低下を招くことから、上限を0.5%とする。更に、製造性や介在物清浄度を考慮すると0.1〜0.3%が望ましい。
Tiは、C,Nと結合して耐食性、耐粒界腐食性を向上させるために添加する元素である。C,N固定作用は0.005%から発現するため、下限を0.005%とした。また、0.3%超の添加は鋳造段階でのノズル詰まりが生じ易くなり、製造性を著しく劣化させる他、粗大なTi炭窒化物による清浄度の低下を招くことから、上限を0.3%とする。更に、高温強度、溶接部の粒界腐食性および合金コストを考慮すると、0.01〜0.20%が望ましい。
Nbは、Tiと同様にC,Nと結合して耐食性、耐粒界腐食性を向上させる他、高温強度を向上させる元素である。C,N固定作用は0.005%から発現するため、下限を0.005%とした。また、0.3%超の添加は鋼板製造段階での熱間加工性が著しく劣化する他、粗大なNb炭窒化物による清浄度の低下を招くことから、上限を0.3%とする。更に、高温強度、溶接部の粒界腐食性および合金コストを考慮すると、0.01〜0.20%が望ましい。
Bは、鋼板製造段階での熱間加工性を向上させる元素であり、0.0002%以上とする。但し、過度な添加はホウ炭化物の形成により清浄度の低下、粒界腐食性の劣化をもたらすため、上限を0.0050%とした。更に、精錬コストや延性低下を考慮すると、0.0003〜0.0020%が望ましい。
Caは、脱硫のために必要に応じて添加される。この作用は0.0005%未満では発現しないため、下限を0.0005%とする。また、0.010%超添加すると水溶性の介在物CaSが生成して清浄度の低下および耐食性の著しい低下を招くため、上限を0.010%とする。更に、製造性、表面品質の観点から、0.0010〜0.0030%が望ましい。
Wは、耐食性と高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて0.10%以上添加する。3.0%超の添加により鋼板製造時の靭性劣化やコスト増ならびに酸洗性が著しく劣化して製品表面の粗さが著しく増加するため、上限を3.0%とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、0.1〜2.0%が望ましい。
Zrは、CやNと結合して溶接部の粒界腐食性や耐酸化性を向上させるため、必要に応じて0.05%以上添加する。但し、上限を0.3%とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、0.05〜0.1%が望ましい。
Snは、耐食性と高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて0.01%以上添加する。0.03%以上で効果が顕著になり、さらに0.05%以上でより顕著となる。0.50%超の添加により鋼板製造時のスラブ割れが生じる場合があるため上限を0.50%とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、0.05〜0.30%が望ましい。
Coは、高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて0.03%以上添加する。0.3%超の添加により鋼板製造時の靭性劣化、清浄度の低下およびコスト増につながるため,上限を0.3%とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、0.03〜0.1%が望ましい。
Mgは、脱酸元素として添加させる場合がある他、スラブの組織を酸化物の微細化分散化により介在物清浄度の向上や組織微細化に寄与する元素である。これは、0.0002%以上から発現するため、下限を0.0002%とした。但し、過度な添加は、Mg−Al酸化物の過度な生成による清浄度低下、溶接性や耐食性の劣化につながるため、上限を0.010%とした。精錬コストを考慮すると、0.0003〜0.0050%が望ましい。
Sbは、粒界に偏析して高温強度を上げる作用をなす元素である。添加効果を得るため、0.005%以上とする。但し、0.50%を超えると、1000℃での酸化試験において異常酸化を引き起こすとともに、Sn偏析が生じて溶接時に割れが生じるので、上限を0.50%とする。高温特性と製造コスト及び靭性を考慮すると、0.03〜0.30%が望ましい。更に望ましくは0.05〜0.20%である。
REM(希土類元素)は、耐酸化性の向上に有効であり、必要に応じて0.001%以上で添加する。また、0.2%を超えて添加してもその効果は飽和し、REMの粒化物による耐食性低下を生じるため、0.001〜0.2%で添加する。製品の加工性や製造コストを考慮すると、下限を0.002%とし、上限を0.10%とすることが望ましい。
REM(希土類元素)は、一般的な定義に従う。スカンジウム (Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu) までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で添加しても良いし、混合物であっても良い。
Gaは、耐食性向上や水素脆化抑制のため、0.3%以下で添加しても良いが、0.3%超の添加により粗大硫化物が生成しr値が劣化する。硫化物や水素化物形成の観点から下限は0.0002%とする。更に、製造性やコストの観点から0.0020%以上が更に好ましい。
その他の成分について本発明では特に規定するものではないが、Ta、Hfは高温強度向上のために0.001〜1.0%添加しても良い。また、Biを必要に応じて0.001〜0.02%含有してもかまわない。なお、As、Pb等の一般的な有害な元素や不純物元素はできるだけ低減することが望ましい。
次に製造方法について説明する。本発明の鋼板の製造方法は、製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗−冷間圧延−焼鈍・酸洗の各工程よりなる。製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、電気炉溶製あるいは転炉溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。上記のように本発明が対象となる部品には表面平滑性が要求されるため、冷間圧延工程において所定の表面粗さを確保した製造条件が設定される。通常、表面平滑性が要求される鋼板に対しては、冷間圧延後に光輝焼鈍によって低酸素雰囲気で熱処理され、酸化スケールが生じない熱処理が施される。一般的にはBA製品と呼ばれる表面仕上げがこれに当たるが、BA製品ではコスト増加につながる。本発明では光輝焼鈍では無く、通常の連続焼鈍・酸洗処理プロセスを活用することによって表面平滑性を確保する技術を見出した。具体的には熱処理後の冷却速度を調整し表面の酸化スケールの成長に伴う母材表面の微小凹凸の抑制、その後の溶融アルカリ塩浸漬における温度と時間の調整ならびに溶融アルカリ塩処理後の冷却速度調整による母相浸食の低減が、表面平滑性を確保するうえで極めて効果的である。
本発明では、冷間圧延後の焼鈍・酸洗工程において、結晶粒度番号の調整を行うが、1200℃超に加熱すると結晶粒の粗大化が著しく促進し、結晶粒度番号が6.0未満になる。また、1200℃超の加熱により酸化スケールの厚膜化および内部酸化層が発達するため、後続の酸洗性が劣るとともに、酸洗後の表面に微小な凹凸が多数発生し、表面粗さの規定を満足しなくなる。よって、上限を1200℃とする。一方、1000℃未満の加熱では、再結晶組織が得られず延性が乏しくなるため、下限を1000℃とする。更に、酸洗性や製造コストを考慮すると、1050〜1150℃が望ましい。
上記温度まで加熱された鋼帯は冷却され、酸洗処理によってデスケールされるが、本発明では500℃までの冷却速度を10℃/sec以上とする。冷却速度が10℃/sec未満の場合、Cr炭窒化物やσ相などの炭窒化物、金属間化合物が析出し、鋼の介在物清浄度の劣化に繋がり、高温特性や表面品質が劣化する。更に、生産性や酸洗性を考慮すると15〜50℃/secが望ましい。500℃まで冷却される。ここで、酸洗予備処理は硝酸ナトリウムを主組成とする溶融アルカリ塩でスケール改質が成される。本発明では、溶融アルカリ塩の温度を400〜500℃とし、浸漬時間を5〜20secに規定する。温度が400℃未満の場合、スケール改質が不十分となり酸洗後に酸化スケール残りが生じてしまう。一方、500℃超の場合、溶融塩によって母地の浸食が大きく、酸洗後の表面粗さRaを0.06μm以下にすることが不可能となる。よって、溶融アルカリ塩の温度は400〜500℃とするが、生産性を考慮すると400〜440℃未満が望ましい。浸漬時間に関しては、5sec未満の場合には酸化スケールとの反応が不十分でCr酸化物の溶解が不良となり、スケール残りが生じ易くなる他、後段の酸洗時にデスケールを強くする必要があり、母地溶解が進むため表面粗さが粗くなる。一方、20sec超では母地の浸食が大きく、酸洗後の表面粗さRaを0.06μm以下にすることが不可能となる。よって、溶融アルカリ塩への浸漬時間は5〜20secとするが、生産性や通板性を考慮すると5〜15secが望ましい。
上記の酸洗予備処理である溶融アルカリ塩処理後、表面の酸化スケールを除去するための硝弗酸漬浸、硝酸漬浸あるいは硝酸電解処理までに冷却されるが、本発明では100℃以下になるまでの冷却速度を10℃/sec以上とする。冷却速度が10℃/sec未満の場合、鋼板に残存したソルト溶液によって母地の浸食が局部的に生じ、表面粗さの増加や表面ムラが発生する場合がある。よって、下限を10℃/sec以上とするが、過度に速過ぎると形状不良が生じるため、望ましくは上限を100℃/secとする。
以上説明したように、本発明の排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板は、光輝焼鈍を行っておらず、鋼板表面の研削、切削を行っていない。また、本発明の鋼板は、焼鈍酸洗後に鋼帯として得られる。
表1、2に示す成分組成の鋼を溶製しスラブに鋳造し、熱延、熱延板焼鈍・酸洗後、冷延、最終焼鈍・酸洗を施して1.2mmtの製品板を得た。一部の鋼に関しては、熱延板焼鈍後に中間焼鈍・酸洗を施して2回の冷延を行った。各鋼に対して、介在物清浄度、結晶粒度、表面粗さを先述した方法で測定するとともに、JISG0567に準拠した1000℃での連続酸化試験、JISZ2281に準拠した高温引張試験を行った。連続酸化試験は、大気中で200時間の連続試験を行い、異常酸化の有無により合否判定を行った。高温引張試験は、1000℃での0.2%耐力を測定し、20MPa以上の前記耐力を有する鋼を合格とした。また、供試材をバックプレートと呼ばれるタービンとセンターコアの仕切り部品に加工し、ターボに搭載させて高温(1000℃)の排気ガスを流した際に、気密性を調べた。この際、排気ガスの漏れが生じない場合を合格とした。表3〜5に示す製造条件で製造した結果、本発明例の鋼は耐酸化性や高温強度に加え表面平滑性にも優れ、ターボ部品としての気密性に優れていることが確認される。介在物清浄度、結晶粒度および表面粗さのうち1つ以上が本発明範囲外の比較例では、バックプレートの表面平滑性が不良となり、高温の排気ガスがターボ外に漏れる不具合が生じる。また、高温強度や高温酸化特性が不良の場合もクリープ変形や酸化による減肉によってガス漏れが生じてしまう。
Figure 2017014538
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なお、製造工程における他の条件は適宜選択すれば良い。例えば、スラブ厚さ、熱間圧延板厚などは適宜設計すれば良い。冷間圧延においては、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは適宜選択すれば良い。冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れても構わず、バッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも良い。また、酸洗時には中性塩電解処理を併用しても構わず、硝酸、硝酸電解酸洗の他、硫酸や塩酸を用いた酸洗処理を行っても良い。更に、本製品板に潤滑塗装を施して、更にプレス成形を向上させても良く、潤滑膜の種類は適宜選択すれば良い。
本発明によれば、これまで鋳鋼部品であった耐熱性に加えて表面平滑性が要求される排気部品に対してオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することが可能であり、本発明を適用した材料を、特に自動車、二輪用部品の排気部品として使用することによって、排ガス規制、軽量化、燃費向上につなげることが可能となる。また、鋳鋼で必要とする表面加工処理の省略も可能となり、低コスト化にも大きく寄与する。更に、自動車、二輪に限らず、各種ボイラー、燃料電池システム等の高温環境に使用される部品に適用することも可能であり、本発明は産業上極めて有益である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.20%、Si:0.1〜4.0%、Mn:0.1〜4.0%、P:0.01〜0.05%、S:0.0001〜0.010%、Ni:5〜25%、Cr:15〜30%、N:0.01〜0.30%、Al:0.005〜1.0%、Cu:0.1〜3.0%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、介在物清浄度が0.025%以下、結晶粒度番号が6以上、表面粗度が中心線平均粗さ(Ra)で0.06μm以下であることを特徴とする耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
  2. 前記鋼板が、更に、質量%で、Mo:0.01〜3.0%、V:0.05〜0.5%、Ti:0.005〜0.3%、Nb:0.005〜0.3%、B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.010%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 前記鋼板が、更に、質量%で、W:0.10〜3.00%、Zr:0.05〜0.30%、Sn:0.01〜0.50%、Co:0.03〜0.30%、Mg:0.0002〜0.010%、Sb:0.005〜0.50%、REM:0.001〜0.2%、Ga:0.0002〜0.3%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼板を製造する際、冷延後の焼鈍工程において、1000〜1200℃に加熱後、500℃までの冷却速度を10℃/sec以上とし、400〜500℃に保持された溶融アルカリ塩に5〜20sec浸漬された後に、100℃以下まで10℃/sec以上の冷却速度で冷却されることを特徴とする耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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