以下では、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
以下では「キャリア濃度」という言葉と「ドーピング濃度」という言葉とを用いているが、その関係については後述する。
また、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。さらに、本発明の図面において、長さ、幅、および厚さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
図1および図2は、それぞれ、本発明の実施形態に係る窒化物半導体発光素子1の概略断面図および概略平面図である。図2に示すI−I線における断面図が図1に相当する。また、図3は、図1に示された窒化物半導体発光素子1における多層膜11からp型窒化物半導体層16までにおけるバンドギャップEgの大きさを模式的に示すエネルギー図である。図3の縦軸方向は図1に示す層の上下方向であり、図3の横軸のEgは各組成におけるバンドギャップの大きさを模式的に表している。また、図3では、n型ドーピングを行なう層には斜線を塗っている。
<窒化物半導体発光素子>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1は、基板3の上面上に、バッファ層5と、下地層7と、n型窒化物半導体層9,10と、多層膜11と、第2発光層13と、第1発光層15と、p型窒化物半導体層16,17,18とがこの順に積層されてメサ部30(図2参照)が構成されている。メサ部30の外側においては、n型窒化物半導体層10の上面の一部分が多層膜11に覆われずに露出しており、その露出部分の上には、n側電極21が設けられている。p型窒化物半導体層18の上には、透明電極23を介してp側電極25が設けられている。窒化物半導体発光素子1のほぼ上面全体には、p側電極25およびn側電極21が露出するように、透明保護膜27が設けられている。
<基板>
基板3は、たとえば、サファイアのような絶縁性基板であっても良いし、GaN、SiC、またはZnOなどのような導電性基板であっても良い。基板3の厚さは120μmとしたが、特に限定されず、例えば50μm以上300μm以下であれば良い。基板3の上面は、平坦であっても良いし、図1に示すように凸部3Aおよび凹部3Bからなる凹凸形状を有していても良い。凸部3Aの間隔は、典型的には2μm以上5μm以下であるが、1μm以上10μm以下であっても良い。
<バッファ層>
バッファ層5は、たとえばAls0Gat0N(0≦s0≦1、0≦t0≦1、s0+t0≠0)層であれば良く、好ましくはAlN層またはGaN層である。ただし、Nのごく一部(0.5〜2%)を酸素に置き換えても良い。これにより、基板3の成長面の法線方向に伸長するようにバッファ層5が形成されるので、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなるバッファ層5が得られる。
バッファ層5の厚さは、特に限定されないが、3nm以上100nm以下であれば良く、好ましくは5nm以上50nm以下である。バッファ層は、MOCVD法によって形成してもよく、スパッタ法によって形成してもよい。
<下地層>
下地層7は、たとえばAls1Gat1Inu1N(0≦s1≦1、0≦t1≦1、0≦u1≦1、s1+t1+u1≠0)層であれば良く、好ましくはAls1Gat1N(0≦s1≦1、0≦t1≦1、s1+t1≠0)層であり、より好ましくはGaN層である。これにより、バッファ層5中に存在する結晶欠陥(たとえば転位など)がバッファ層5と下地層7との界面付近でループされ易くなり、よって、その結晶欠陥がバッファ層5から下地層7へ引き継がれることを防止できる。
下地層7は、n型不純物を含んでいても良い。しかし、下地層7がn型不純物を含んでいなければ、下地層7の良好な結晶性を維持することができる。よって、下地層7はn型不純物を含んでいないことが好ましい。
下地層7の厚みを厚くすることにより下地層7中の欠陥は減少するが、下地層7の厚みをある程度以上厚くしても下地層7における欠陥減少効果が飽和する。このことより、下地層7の厚さは、特に限定されないが、1μm以上8μm以下であれば良い。
<n型窒化物半導体層>
n型窒化物半導体層9及び10は、たとえばAls2Gat2Inu2N(0≦s2≦1、0≦t2≦1、0≦u2≦1、s2+t2+u2≒1)層にn型不純物がドーピングされた層であれば良く、好ましくはAls2Ga1−s2N(0≦s2≦1、好ましくは0≦s2≦0.5、より好ましくは0≦s2≦0.1)層にn型不純物がドーピングされた層である。
n型ドーパントは、特に限定されないが、Si、P、AsまたはSbなどであれば良く、好ましくはSiである。このことは、後述の各層においても言える。
n型窒化物半導体層9及び10におけるn型ドーピング濃度は、特に限定されないが、1×1017cm−3以上であれば良い。
n型窒化物半導体層9及び10の厚みが厚い方が、その抵抗が減少する。そのため、n型窒化物半導体層9及び10の厚みは厚い方が好ましい。しかし、n型窒化物半導体層9及び10の厚みを厚くすると、コストアップになる。そのため、実用的には、n型窒化物半導体層9及び10の厚みは薄い方が好ましい。n型窒化物半導体層9及び10の厚さは、特に限定されないが、実用上1μm以上10μm以下であれば良い。
なお、n型窒化物半導体層9及び10は、後述する実施例1においては同じn型GaN層を一旦中断して2つの成長工程によって形成したものであるが、n型窒化物半導体層9とn型窒化物半導体層10とを連続して単層としても良いし、3層以上の積層構造を有していても良い。各層は、同一の組成からなっても良いし、異なる組成からなっても良い。また、各層は、同一の膜厚を有していても良いし、異なる膜厚を有していても良い。
<多層膜>
本明細書における多層膜とは、薄い結晶層を交互に積層した層を意味する。図3に示すように、多層膜11では、例えば厚さ10nm以上のワイドバンドギャップ層11Bと厚さ10nm以上のナローバンドギャップ層11Wとが交互に積層されている。ここでワイドバンドギャップ層11Bとナローバンドギャップ層11Wは交互に積層されるが、その始まりの層、および終わりの層として11Wと11Bのどちらが構成されていてもよい。なお、多層膜11の各層厚が薄い場合、例えば10nm以下の場合には超格子層と呼ばれることもあり、多層膜はそのような超格子層であってもよい。また、多層膜を省略あるいは単一組成の膜などに置き換えてもよい。
各ワイドバンドギャップ層11Bは、たとえばAlaGabIn(1−a−b)N(0≦a<1、0<b≦1)であれば良く、好ましくはGaN層である。
各ナローバンドギャップ層11Wの組成は、たとえばワイドバンドギャップ層11Bよりもバンドギャップが小さく、且つ下記第2井戸層13Wおよび第1井戸層15Wの各バンドギャップより大きいAlaGabIn(1−a−b)N(0≦a<1、0<b≦1)であれば良く、好ましくはGabIn1−bN(0<b≦1)である。
各ワイドバンドギャップ層11B及び各ナローバンドギャップ層11Wの少なくとも一方は、n型ドーパントを含んでいることが好ましい。ワイドバンドギャップ層11Bとナローバンドギャップ層11Wとの両方がアンドープであると、駆動電圧が上昇するためである。
なお、ワイドバンドギャップ層11Bおよびナローバンドギャップ層11Wの各層数は、図3では5としたが、例えば1から50であればよい(ナローバンドギャップ層11Wが1層の場合は、ワイドバンドギャップ層11Bの数はゼロになる)。
多層膜11の各層厚が10nm以上40nm以下で構成された場合、n型窒化物半導体層9及び10に存在する貫通転位(threading dislocation)などの結晶欠陥を効果的に低減し、第2発光層13及び第1発光層15における結晶欠陥を減少させることができて好ましい。特に第1発光層の発光波長が460nmを超える場合には、波長が長くなるほど貫通転位密度による発光効率の低下が顕著となるため、各層厚が10nm以上40nm以下で構成される多層膜構造を用いることが好ましい。
<第2発光層>
第2発光層13は、図3に示すように、第2井戸層13Wと第2バリア層13Bとが交互に位置するように構成された積層膜である。積層方向において隣り合う第2井戸層13Wの間には、第2バリア層13Bが配置される。第2発光層13は、複数の第2井戸層13Wと互いに隣り合う該第2井戸層13Wの間に挟まれた第2バリア層13Bとを含む積層膜を備える。
第2発光層13は、多層膜11の上に設けられている。具体的には、第2発光層13のうち最も下層に位置する最初の第2バリア層13BFが多層膜11上に設けられている。第2発光層13のうち最も上層に位置する最後の第2バリア層13BLは、第1発光層の第1井戸層15Wにも接している。最後の第2バリア層13BLは、第2発光層13と第1発光層15の間のバリア層ともいえる。なお、上最初の第2バリア層13BFおよび最後の第2バリア層13BLは、第2発光層13に含まれる複数の第2バリア層13Bの一部である。
第2バリア層13Bのバンドギャップは、第2井戸層13Wのバンドギャップより大きい。なお、第2発光層13は、多層膜11と同じく、第2バリア層13Bおよび第2井戸層13Wとは異なる1層以上の半導体層と、第2バリア層13Bと、第2井戸層13Wと、が順に積層されていても良い。また、第2発光層13の一周期の長さ(第2バリア層13Bと第2井戸層13Wの合計の厚さ)は、例えば5nm以上100nm以下である。
各第2井戸層13Wの組成は、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子に求められる発光波長に合わせて調整されるが、たとえばAlaGabIn(1−a−b)N(0≦a<1、0<b≦1)であれば良く、好ましくはAlを含まないIncGa1−cN(0<c≦1)層である。ただし例えば375nm以下の紫外発光を行なう場合には、一般にはバンドギャップを広くするため適宜Alを含ませることとなる。
各第2バリア層13B(最後の第2バリア層13BLを含む)は、たとえばAlaGabIn(1−a−b)N(0≦a<1、0<b≦1)層であれば良く、好ましくはGaN層である。ただし、第2バリア層13Bは第2井戸層13Wよりバンドギャップを大きくする必要があるため、適宜In、Alあるいはその両方を導入してバンドギャップを調整する。
第2発光層13はアンドープであってもよいが、n型ドーピングを行っても良い。n型ドーピングを行うと第2発光層13からの発光が減少するが、本願では主として第1発光層15を発光させることを目的としているため、大きな不都合はない。第2発光層13の平均n型ドーピング濃度は、後述の第1発光層15の平均n型ドーピング濃度よりも高いことが好ましい。これにより、窒化物半導体発光素子1を大電流で駆動しても、その駆動電圧の上昇が抑えられるため、電力効率の低下を防止できる。
駆動電圧の上昇を抑えるという観点からは、各第2井戸層13Wと、最後の第2バリア層13BLを除く各第2バリア層13Bおよび最後の第2バリア層13BLの少なくとも一方のバリア層とは、n型ドーパントを含むことが好ましい。また、各第2バリア層13Bのn型ドーピング濃度が各第2井戸層13Wのn型ドーピング濃度より高いことがより好ましい。
各第2井戸層13W及び各第2バリア層13Bにおけるn型ドーピング濃度は、特に限定されないが、1×1017cm−3以上であれば良く、好ましくは3×1017cm−3以上8×1018cm−3以下である。第2発光層13の平均キャリア濃度(ドーパントがSiの場合ほぼn型ドーピング濃度に等しい)が1×1017cm−3未満であれば、窒化物半導体発光素子1の駆動電圧が上昇する傾向にある。
各第2井戸層13Wの厚さは、特に限定されないが、1.5nm以上5.5nm以下であることが好ましい。各第2井戸層13Wの厚さがこの範囲外であると、発光効率が低下する場合がある。
各第2バリア層13B(最後の第2バリア層13BLを含む)の厚さは、特に限定されないが、3nm以上であることが好ましく、4nm以上20nm以下であればさらに好ましい。各第2バリア層13B(最後の第2バリア層13BLを含む)の厚さは一定である必要はない。
一般に、窒化物半導体発光素子では、発光層を構成する井戸層とn型窒化物半導体層とで格子定数などが異なることに起因して歪みが発生するが、第2発光層13はこの歪みに起因する結晶の欠陥を低減する働きがある。
<第1発光層>
第1発光層15は、図3に示すように、第1井戸層15Wと第1バリア層15Bとが交互に位置するように構成された積層膜である。積層方向において隣り合う第1井戸層15Wの間には、第1バリア層15Bが配置される。第1発光層15は、複数の第1井戸層15Wと隣り合う該第1井戸層15Wの間に挟まれた第1バリア層15Bを含む積層膜を備える。
第1発光層15は、第2発光層13の上に設けられている。具体的には、第1発光層15のうち最も下層に位置する第1井戸層15Wが第2発光層13上に設けられている。第1発光層15のうち最もp型窒化物半導体層16側に位置する第1井戸層15Wの上には、最後の第1バリア層15BLが設けられている。
第1井戸層15Wのバンドギャップより、第1バリア層15Bおよび最後の第1バリア層15BLのバンドギャップの方が大きい。なお、第1発光層15は、第1バリア層15Bおよび第1井戸層15Wとは異なる1層以上の半導体層と、第1バリア層15Bと、第1井戸層15Wと、が順に積層されていても良い。また、第1発光層15の一周期(第1バリア層15Bの厚さと第1井戸層15Wの厚さの和)の長さは、例えば5nm以上100nm以下である。
本発明は、第1発光層15の発光波長が第2発光層13の発光波長より若干長いことを特徴としている(第2発光層からの発光が弱くて第2発光層の発光波長の誤差が大きいなどの場合には、第1発光層15の発光波長は、後述する第2発光層の設計発光波長よりも若干長い)。
第1発光層15の発光波長は第2発光層13の発光波長より波長換算で+80nm以下であることが好ましく、+60nm以下であることがより好ましく、+40nm以下であることが更に好ましい。また第1発光層15の発光波長は第2発光層13の発光波長より+5nm以上であることが好ましく、+10nm以上であることがより好ましく、+15nm以上であることが更に好ましい。好ましい範囲の理由のひとつとしては、後述する比較例1の結果を踏まえた考察において言及している。
発光層の発光波長は多重井戸層の量子準位によって定まるが、これは井戸層のバンドギャップより若干大きい。しかし、第1井戸層15Wの発光波長と第2井戸層13Wの発光波長の差は、ほぼ第1井戸層15Wのバンドギャップと第2井戸層13Wのバンドギャップの差と考えることができる。
ここで、バンドギャップ(eV)=波長(nm)/1240の関係がある。実際の発光波長は電流依存性等があるが、設計発光波長は近似的に井戸層の組成によって決まるバンドギャップの値によってほぼ決まり、厳密には井戸層の厚さから計算によって求められる量子効果を合わせた値と考えてよい。
各第1バリア層15Bの厚さは、特に限定されないが、2.5nm以上であることが好ましく、3nm以上20nm以下であればさらに好ましい。各第1バリア層15Bの厚さは一定である必要はなく、特に図3に示す最後の第1バリア層15BLの厚さは各第1バリア層15Bの厚さと異なっていてもよい。最後の第1バリア層15BLの厚さは、1nm以上40nm以下が好ましい。
各第1井戸層15Wの厚さは、1nm以上9nm以下であることが好ましい。各第1井戸層15Wの厚さがこの範囲外であれば、発光効率が低下する傾向にある。さらに好ましくは、第1井戸層15Wの厚さは、発光波長によって変化させることで発光効率を改善できる。
具体的には、電流注入時における第1発光層15のEL(electroluminescence)発光波長が450nmの場合には、第1井戸層15Wの厚さは、2.5nm以上7.3nm以下であることが好ましい。電流注入時における第1発光層15のEL発光波長が470nmの時は、第1井戸層15Wの厚さは、2.0nm以上6.2nm以下であることが好ましい。電流注入時における第1発光層15のEL発光波長が520nmの時は、第1井戸層15Wの厚さは、1.2nm以上4.3nm以下であることが好ましい。
図4は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子を構成する窒化物半導体層における第1発光層のEL発光波長と好ましい第1井戸層の厚さとの関係を示す図である。縦軸を第1井戸層15Wの膜厚とし、横軸をEL発光波長としている。
第1井戸層15Wの膜厚をTとし、第1発光層15のEL発光波長をXとした場合には、上述のように、第1発光層15の各EL発光波長における第1井戸層15Wの上限値を結んだ曲線は、T=0.0002X2−0.2784X+83.414の式にて近似される。一方、第1発光層15の各EL発光波長における第1井戸層15Wの下限値を結んだ曲線は、T=0.0001X2−0.1433X+40.943の式にて近似される。
つまり、第1発光層15のEL発光波長が430nmから550nmの範囲において、第1発光層15の第1井戸層15Wの厚みTとEL発光波長Xとの関係が下記式(1)を充足する場合に、良好な発光効率が得られる。
0.0001X2−0.1433X+40.943≦T≦0.0002X2−0.2784X+83.414・・・式(1)。
これはEL発光波長が長くなるに従い、Inの組成が高くなるが、このIn組成の上昇に応じて井戸層の結晶性が悪化すると考えられており、したがってEL発光波長が長くなるに従い井戸層の最適値は薄いほうにずれる。
一方、EL発光波長が短くなるほど結晶性は改善するため、井戸層厚を厚くし、全井戸層厚である発光体積を増やすほうに最適値がずれる。各第1井戸層15Wの厚さは、各第2井戸層13Wの厚さと同じであってもよい。さらに、第1発光層15および第2発光層13の各井戸層(第1井戸層、第2井戸層)の膜厚を同じにするとともに、各バリア層(第1バリア層、第2バリア層)の膜厚も同じにすることで(ここでウェルとバリアの膜厚は異なっていてもよい)、例えばX線検査等により膜厚を容易に測定することができ、生産管理が容易となる。
各第1井戸層15Wの組成は、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子に求められる発光波長に合わせて調整されるが、たとえばAlaGabIn(1−a−b)N(0≦a<1、0<b≦1)であれば良く、好ましくはAlを含まないIncGa1−cN(0<c≦1)層である。ただし例えば375nm以下の紫外発光を行なう場合には、一般にはバンドギャップを広くするため適宜Alを含ませることとなる。
また、各第1井戸層15Wはドーパントを極力含まない(成長時にドーパント原料を導入しない)ことが好ましい。具体的には5×1017cm−3以下、さらに好ましくは1×1017cm−3以下とするとよい。各第1井戸層15Wがn型ドーパントを含んでいなければ、各第1井戸層15Wにおける非発光再結合が起こりにくく、発光効率が良好となる。なお、各第1井戸層15Wは、n型ドーパントを含んでいても良く、それにより発光素子の駆動電圧が低下する傾向にある。
また、第1発光層15の各第1バリア層15B(第1バリア層15BLを除く)は、ドーパントを極力含まないことが好ましい。具体的には5×1017cm−3以下、さらに好ましくは1×1017cm−3以下とするとよい。
ドーパントを含んでいなければ、バリア層における非発光再結合が起こりにくく、かつホールキャリアの活性層中への広がりが増えて発光効率が良好となる。また第1発光層15、および第2発光層13のすべてにおいて、ドーパントを極力含まない、具体的には7×1017cm−3以下、さらに好ましくは1×1017cm−3のドーパント濃度となる構造とすると、発光層全体の歪を緩和でき、発光効率を改善できるため好ましい。
<p型窒化物半導体層>
図1に示した構成では、p型窒化物半導体層をp型AlGaN層16、p型GaN層17、および高濃度p型GaN層18の3層構造としているが、この構成は一例であって、一般にp型窒化物半導体層16,17,18は、たとえばAls4Gat4Inu4N(0≦s4≦1、0≦t4≦1、0≦u4≦1、s4+t4+u4≠0)層にp型ドーパントがドーピングされた層であれば良く、好ましくはAls4Ga1−S4N(0<s4≦0.4、好ましくは0.1≦s4≦0.3)層にp型ドーパントをドーピングした層である。
p型ドーパントは、特に限定されないが、たとえばマグネシウムである。
p型窒化物半導体層17,18におけるキャリア濃度は、1×1017cm−3以上であることが好ましい。ここで、p型ドーパントの活性率は0.01程度であることから、p型窒化物半導体層17,18におけるp型ドーピング濃度(キャリア濃度とは異なる)は1×1019cm−3以上であることが好ましい。ただし第1発光層15に近いp型窒化物半導体層16におけるp型ドーピング濃度はこれより低くてもよい。
p型窒化物半導体層16,17,18の合計の厚さは、特に限定されないが、10nm以上300nm以下であれば良い。
<n側電極、透明電極、p側電極>
n側電極21およびp側電極25は、窒化物半導体発光素子1に駆動電力を供給するための電極である。平面図である図2を参照して、n側電極21は、n側パッド電極21Aおよびn側枝電極21Bよりなる。p側電極25は、p側パッド電極25Aおよびp側枝電極25Bよりなる。
n側枝電極21B及びp側枝電極25Bは、電流拡散を促進するためのものだが、チップサイズが小さいなど電流拡散の必要性が少ない場合には、省略してもよい。また、p側電極25の下部において電流の注入を止めるための絶縁層を設けても良く、それによりp側電極25に遮蔽される発光の量が減少する。
n側電極21は、たとえば、チタン層、アルミニウム層および金層がこの順序で積層されて構成されていれば良く、ワイヤボンドを行なう場合の強度を想定すると1μm程度の厚さを有していれば良い。
p側電極25は、たとえばニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層がこの順序で積層されて構成されていれば良く、1μm程度の厚さを有していれば良い。n側電極21とp側電極25は同一の組成であってもよい。
透明電極23は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなれば良く、20nm以上200nm以下の厚さを有していれば良い。
ここで、キャリア濃度は、電子または正孔の濃度を意味し、n型ドーパントの量またはp型ドーパントの量だけで決まらない。つまり、第2発光層13のキャリア濃度は第2発光層13にドープされたn型ドーパントの量だけで決まらず、第1発光層15のキャリア濃度は第1発光層15にドープされたn型ドーパントの量だけで決まらない。
このようなキャリア濃度は、窒化物半導体発光素子1の電圧対容量特性の結果に基づいて算出されるものであり、電流が注入されていない状態のキャリア濃度のことを指しており、イオン化した不純物、ドナー化した結晶欠陥、またはアクセプター化した結晶欠陥から発生したキャリアの合計である。
しかしながら、n型キャリア濃度は、n型ドーパントであるSi等の活性化率が高いことから、n型ドーピング濃度と同じと考えることができる。また、n型ドーピング濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)にて深さ方向の濃度分布を測定することにより、容易に求まる。
さらに、ドーピング濃度の相対関係(比率)は、キャリア濃度の相対関係(比率)とほぼ同じである。ドーピング濃度は、容易に測定することができる。そして、測定により得られたn型ドーピング濃度を平均すれば、平均n型ドーピング濃度を得ることができる。
以下の実施例において、各層のMOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)成長における原料ガスとしては、Gaの原料ガスはTMG(トリメチルガリウム)、Inの原料ガスはTMI(トリメチルインジウム)、Alの原料ガスはTMA(トリメチルアルミニウム)、Nの原料ガスはNH3、n型ドーパントの原料ガスはSiH4、p型ドーパントの原料ガスはCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用いた。
以下では、本発明の具体的な実施例を示す。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されない。図5は、電流値を120mAとし、環境温度を25℃とした場合における実施例1−3に係る窒化物半導体発光素子の発光スペクトルを示すグラフである。図6は、電流値を120mAとし、環境温度を80℃とした場合における実施例1−3に係る窒化物半導体発光素子の発光スペクトルを示すグラフである。図7は、実施例1に係る窒化物半導体発光素子の発光スペクトルの電流依存性を示すグラフである。
<実施例1>
まず、凹凸加工が上面に施された150mm径のサファイア基板3からなるウエハを準備し、その上面上に、AlNからなるバッファ層5をスパッタ法により形成した。
次に、ウエハをMOCVD装置に入れ、MOCVD法により、アンドープGaNからなる下地層7、n型GaNからなるn型窒化物半導体層9を結晶成長させた。このとき、下地層7の厚さは4.5μm、n型窒化物半導体層9の厚さは4.5μmであり、n型窒化物半導体層9におけるn型ドーピング濃度は1×1019cm−3であった。
引き続き、多層膜11を結晶成長させた。多層膜11は、SiドープGaNからなる厚さ12nmのワイドバンドギャップ層11BとSiドープIn0.04Ga0.96Nからなる厚さ12nmのナローバンドギャップ層11Wとを交互に4周期、結晶成長させたものである。ここで、ワイドバンドギャップ層11Bとナローバンドギャップ層11Wのn型ドーピング濃度は7.4×1018cm−3とした。
次に、ウエハの温度を下げて第2発光層13を結晶成長させた。具体的には、アンドープGaNからなる第2バリア層13BとアンドープInGaNからなる第2井戸層13Wとを交互に4層づつ、結晶成長させた。この際、4層目の第2井戸層13Wの上に、最後の第2バリア層13BLを成長させた。
第2バリア層13BはアンドープGaN層であり、各第2バリア層13Bの厚さを4.0nmとした。
第2井戸層13Wは、アンドープInxGa1−xN層(x=0.20)を結晶成長させた。第2井戸層13Wの厚さは3.08nmであった。また、Inの組成xは、第2井戸層13Wがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が443nmとなるようにTMIの流量を調整して設定した。
次に、第1発光層15を結晶成長させた。具体的には、アンドープInGaNからなる第1井戸層15WとアンドープGaNからなる第1バリア層15Bとを交互に4層づつ、結晶成長させた。この際、最上層の第1井戸層15Wの上に、アンドープのGaN層からなる最後の第1バリア層15BLを成長した。
第1バリア層15Bは、厚さを4.0nmとした。
第1井戸層15Wは、アンドープInxGa1−xN層(x=0.25)を結晶成長させた。各第1井戸層15Wの厚さを3.08nmとし、各第2井戸層13Wの厚さと設計上同じ厚さとした。また、Inの組成xは、25℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の第1井戸層15Wの発光波長が470nmとなるようにTMIの流量を調整して設定した。
次に、ウエハの温度を上げて、最後の第1バリア層15BLの上面上に、p型Al0.18Ga0.82N層16、p型GaN層17およびp型コンタクト層18を結晶成長させた。
そして、n型窒化物半導体層9の一部分が露出するように、p型コンタクト層18、p型GaN層17、p型AlGaN層16、第1発光層15、第2発光層13、多層膜11、n型窒化物半導体層10の一部をエッチングした。このエッチングにより露出したn型窒化物半導体層10の上面上にAuからなるn側電極21を形成した。また、p型コンタクト層18の上面上に、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極23とAuからなるp側電極25とを順に形成した。また、主として透明電極23及び上記エッチングによって露出した各層の側面を覆うように、SiO2からなる透明保護膜27を形成した。
ウエハを620×680μmサイズのチップに分割して、実施例1に係る窒化物半導体発光素子1が得られた。
実施例1に係る窒化物半導体発光素子1について、発光強度及びスペクトルを測定した。標準駆動電流値120mA、環境温度25℃における光出力は122mWであった。なお、駆動電流値は最大定格値を超えない範囲であれば任意の値とすることができる。また、仕様書において推奨される動作電流値があり、これを駆動電流値とすることもできる。駆動電流値は、一般的に、上記620×680μmサイズのチップであれば、20mAから700mAの範囲で設定される。なお、駆動電流値はチップサイズに比例して変化し、チップサイズが上記サイズから半分になれば、駆動電流値も半分の10mAから350mAに変化する。
図5に示すように、25℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例1に係る窒化物半導体発光素子1の発光スペクトルにおいては、ピーク波長が471nmであり、半値幅は、27nmであった。また、発光スペクトルの対称性を、図5におけるスペクトル強度の最大値の80%の線Hを波長ピークの値で分割したときの短波長側の長さWaと長波長側の長さWbとの比で定義すると、Wb/Wa=86%であった。
すなわち、ピーク波長をλpとし、当該ピーク波長よりも短波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ1とし、ピーク波長よりも長波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ2とした場合に、(λ2−λp)/(λp−λ1)の値が0.86であった。
上記発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、第1発光層15だけの設計発光ピーク波長(470nm)とほぼ一致する。
図6に示すように、80℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例1に係る窒化物半導体発光素子1の発光スペクトルにおいては、ピーク波長が473nmであり、半値幅が30nmであった。
図7に示すように、互いに異なる電流値が印加された際に得られる発光スペクトルを比較すると、発光ピーク波長は、電流値が5mAの場合に476nmであり、電流値が12mAの場合に475nmであり、電流値が20mAの場合に、474nmであり、電流値が100mAの場合に471nmであり、電流値が120mAの場合に、471nmである。電流値を5mAから120mAまで変更させた場合の波長変化は5nm以内に収まっている。
ここで、変形例1における構成・結果と、特許文献5記載のA形態(以下「従来例」と記す。)の構成・結果を比較する。従来例は、上部発光層が長波長発光層、下部発光層が短波長発光層という点で、実施例1の構成と共通する。
しかし、従来例の発光スペクトル図(特許文献5の図3(a)を参照すると、電流値が5mAの場合には、上部発光層である緑色(ピーク波長約540nm)の発光を示すのに対し、電流値が100mAの場合には、青緑色(ピーク波長約510nm)の発光となっており、上部発光層からの発光が支配的ではなくなっている。そのためピーク波長の電流値依存性が非常に大きく、その波長差は30nmにも達する。また、電流値100mAにおける半値幅は約45nmと広がっている。
一方、実施例1においては標準駆動電流においても長波長である第1発光層15の発光が支配的であり、電流値に対する波長変化はわずか5nmにすぎない。その結果、従来例が「短波長と合わせて長波長も発光させるという観点で好ましくない形態」であったのに対し、本願実施例1が「短波長側の発光を抑制しつつ、長波長を発光させるという観点で好ましい形態」であるという大きな差異が生じている。
このように、電流値に対する変化を小さくすることによっても、第2発光層13からの短波長側の発光を抑制し、第1発光層15からの長波側の発光を支配的にすることが可能となる。これにより、駆動流値における発光スペクトルの半値幅が40nm以下に減少させることができ、指向性を向上させることができる。
<実施例2>
実施例1の構成に対し、第2発光層13および第1発光層15の井戸層数だけを変更した。つまり、第2バリア層13BとアンドープInGaNからなる第2井戸層13Wとを交互に2層づつ、アンドープGaNからなる第1バリア層15BとアンドープInGaNからなる第1井戸層15Wとを交互に6層づつ形成した。
その結果得られた実施例2に係る窒化物半導体発光素子1Aについて、発光強度及びスペクトルを測定した。駆動電流値120mA,25℃における光出力は112mWであった。
図5に示すように、25℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例2に係る窒化物半導体発光素子1Aの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が471nmであり、半値幅は、31nmであった。
また、発光スペクトルの対称性は87%であった。すなわち、実施例2における発光スペクトルにおいて、ピーク波長をλpとし、当該ピーク波長よりも短波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ1とし、ピーク波長よりも長波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ2とした場合に、(λ2−λp)/(λp−λ1)の値が0.87であった。
この場合においても、発光ピーク波長は、第1発光層15だけの設計発光ピーク波長(470nm)とほぼ一致する。
図6に示すように、80℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例2に係る窒化物半導体発光素子1Aの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が472nmであり、半値幅が33nmであった。
また、互いに異なる電流値が印加された際に得られる発光スペクトルを比較すると、発光ピーク波長は、電流値が12mAの場合に475nmであり、電流値が120mAの場合に上述のように472nmであった。電流値を12mAから120mAまで変更させた場合の波長変化は3nm以内に収まっている。
<実施例3>
実施例1の構成に対し、第2発光層及び第1発光層の井戸層数だけを変更した。つまり、第2バリア層13BとアンドープInGaNからなる第2井戸層13Wとを交互に6層づつ、アンドープGaNからなる第1バリア層15BとアンドープInGaNからなる第1井戸層15Wとを交互に2層づつ形成した。
その結果得られた実施例3に係る窒化物半導体発光素子1Bについて、発光強度及びスペクトルを測定した。駆動電流値120mA,25℃における光出力は130mWであった。
図5に示すように、25℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例3に係る窒化物半導体発光素子1Bの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が460nmであり、半値幅は、32nmであった。
また、発光スペクトルの対称性は50%であった。すなわち、実施例2における発光スペクトルにおいて、ピーク波長をλpとし、当該ピーク波長よりも短波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ1とし、ピーク波長よりも長波長側に位置し、ピーク波長における発光強度の80%の発光強度を有する波長をλ2とした場合に、(λ2−λp)/(λp−λ1)の値が0.50であった。
この場合、発光ピーク波長は第1発光層15だけの設計発光ピーク波長(470nm)より10nm短波長である。すなわち、駆動電流値における発光スペクトルのピーク波長と第1発光層15の発光波長との差が10nm以下に収まっている。
なお、スペクトル形状も対称ではなくなっていることより、第2発光層13からの発光の影響も若干受けていると考えられるが、第2発光層の発光波長と、第1発光層15の発光波長と、上記ピーク波長とを考慮すると、第2発光層13からの発光は抑制されていると言える。
図6に示すように、80℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の実施例3に係る窒化物半導体発光素子1Bの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が461nmであり、半値幅が37nmであった。
また、互いに異なる電流値が印加された際に得られる発光スペクトルを比較すると、発光ピーク波長は、電流値が12mAの場合に467nmであり、電流値が120mAの場合に上述のように460nmであった。電流値を12mAから120mAまで変更させた場合の波長変化は7nm以内に収まっている。
なお、本実施例では、波長スペクトル形状が対称ではないため、特に蛍光体を用いた照明器具の用途においては、発光スペクトルの制御がやや困難となるが、適用することは十分に可能である。
<比較例1>
実施例1の構成に対し、第2発光層がなく第1発光層だけからなる構造を作成した。つまり、アンドープGaNからなる第1バリア層15BとアンドープInGaNからなる第1井戸層15Wとを交互に8層づつ形成した。
その結果得られた比較例1に係る窒化物半導体発光素子1Xについて、発光強度及びスペクトルを測定した。駆動電流値120mA,25℃における発光強度は54mWであった。
25℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の比較例1に係る窒化物半導体発光素子1Xの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が469nmであり、半値幅は、28nmであった。
80℃の環境温度にて、駆動電流値120mAを印加した際の比較例1に係る窒化物半導体発光素子1Xの発光スペクトルにおいては、ピーク波長が470nmであり、半値幅が30nmであった。
比較例1においては、光出力が、第2発光層を備える実施例1−3の約半分であり、劣っているという結果になった。これは意外な結果であったので、実験ミスでないことを確認した。従来の考え方では、n型窒化物半導体層においてInGaN層を含む多層膜11(超格子層でもよい)を設けることにより、結晶品質が改善され、良好な発光効率が得られるものと考えられている。現に、第2発光層を設けず、第1発光層のみを設け、第1発光層の発光波長を450nmとする構成(従来の構成)のLEDが製造されている。
そのため、従来の構成に対して第1発光層の発光波長を20nmだけ長波長にした発光波長470nmのLEDにおいて、従来の構成のLEDと異なり、光出力が低下するとは予想できなかった。
この原因については明らかではないが、一つの考え方として、多層膜11を構成するナローバンドギャップ層11Wのバンドギャップと第1発光層15を構成する第1井戸層15Wのバンドギャップ差が大きいのに対し、第2発光層13の第2井戸層13Wと第1発光層15を構成する第1井戸層15Wのバンドギャップ差が小さいことが寄与している可能性がある。そのような考察より、先述の第2発光層13の発光波長と第1発光層15の発光波長との間の好ましい関係が得られる。
以上のように、比較例1と実施例1−3との結果を考察することにより、駆動電流値における発光スペクトルのピーク波長と第1発光層の発光波長との差が10nm以下であることが好ましいと言える。あるいは駆動電流値における発光スペクトルのピーク波長と駆動電流値の1/10の電流値における発光スペクトルのピーク波長との差が10nm以下であることが好ましいと言える。このような構成とすることにより、第1発光層よりも短い発光波長を有する第2発光層を設けることで、第2発光層から発光を抑制しつつ、第1発光層からの発光が支配的となることが実験的にも確認されたと言える。
また、発光スペクトル形状がおおよそ対称であることが好ましく、具体的には対称性の指標となるWb/Waが45%以上155%以下であることが好ましく、75%以上125%以下であることがより好ましいと言える。すなわち、上記(λ2−λp)/(λp−λ1)の値が0.45以上1.55以下となることが好ましいと言える。なお、この範囲は、上述の実施例においては、(λ2−λp)が(λp−λ1)よりも小さくなる場合を例示して説明したが、この逆の関係にあってもよく、(λ2−λp)が(λp−λ1)よりも大きくなる場合を考慮したものである。
また、第1井戸層数としては2以上7以下が好ましく、3以上6以下がより好ましいと言える。
<実施例4>
第2発光層13からの波長450nmの発光を抑えるため、実施例3をベースに、最後の第2バリア層13BL(第1発光層15の第1井戸層15Wに接する第2バリア層13B)の厚さを他の第2バリア層13Bの2倍の厚さである8.0nmとした。
得られた実施例4に係る窒化物半導体発光素子1Cの光出力自体は、実施例3と同等だが、第1発光層15からの長波長の成分が増え、発光スペクトルの半値幅が減少した。波長470nm近傍では波長が長くなると視感度が高くなるため、470nm近傍の波長を有する光の割合が増加する実施例4に係る窒化物半導体発光素子1Cにおいては、視感度を考慮した全光束(単位lm)の向上が見られた。
このように、第1発光層15および第2発光層13が、第1井戸層15Wと第2バリア層13Bとが積層方向に隣接するように設けられる場合には、第1井戸層15Wに隣接する第2バリア層13Bは、第2発光層13に含まれる他の第2バリア層13Bよりも厚いことが好ましい。
<実施例5>
第2発光層13からの波長450nmの発光を抑えるため、実施例3をベースに、最後の第2バリア層13BLにn型ドーパントであるSiを7.0×1017cm−3ドープした。
得られた実施例5に係る窒化物半導体発光素子1Dの光出力自体は、実施例3と同等だが、駆動電流値において第1発光層15からの長波長の成分が増え、光スペクトル半値幅が減少した。
波長470nm近傍では波長が長くなると視感度が高くなるため、470nm近傍の波長を有する光の割合が増加する実施例5に係る窒化物半導体発光素子1Dにおいては、視感度を考慮した全光束(単位lm)の向上が見られた。なお、ここでは最後の第2バリア層13BL全体にSiドープを行ったが、その一部のみにドーピングを行ってもよく、例えばアンドープ層・ドープ層・アンドープ層の3層構造としてその中央のみにドーピングを行ってもよい。また最後の第2バリア層BLにn型ドーピングを行うとともに、厚さを厚くしてもよい。
<実施例6>
第2発光層13からの450nmの発光を抑えるため、実施例3をベースに、第2発光層13の各層にn型ドーパントであるSiを7.0×1017cm−3ドープした。
得られた実施例6に係る窒化物半導体発光素子1Eの光出力自体は、実施例3と同等だが、駆動電流値において第1発光層15からの長波長の成分が増え、光スペクトル半値幅が減少した。波長470nm近傍では波長が長くなると視感度が高くなるため、470nm近傍の波長を有する光の割合が増加する実施例6に係る窒化物半導体発光素子1Eにおいては、視感度を考慮した全光束(単位lm)の向上が見られた。
<実施例7>
発光波長450nmの第2発光層を設けることにより、発光波長470nmの第1発光層の光出力が増大するという知見に基づき、例えば4つの井戸層を備え、発光波長が430nmの第2発光層と、例えば4つの井戸層を備え、発光波長が450nmの第1発光層とを設けた発光素子とすることができる。また、例えば発光波長405nmの第1発光層と、発光波長385nmの第2発光層とを設ける、あるいは、発光波長520nmの第1発光素子と発光波長500nmの第2発光層とを設けることができる。なお、第1発光層と第2発光層の波長差は20nmに限られるものではなく、駆動電流域において第1発光層からの発光波長が支配的となる範囲内で適宜変更することができる。第1発光層の波長も、窒化物半導体発光素子が実現可能な波長範囲、例えば200nmから600nmの範囲内において、適宜設定可能である。
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。