JP2017032550A - 胃粘膜萎縮の有無を判定する方法 - Google Patents

胃粘膜萎縮の有無を判定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、非侵襲的に胃粘膜萎縮の有無を判定できる方法を提供することを目的とする。【解決手段】哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法であって、(1)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料として、該呼気中に排出される13CO2の挙動を測定する工程、(2)前記工程(1)で得られた13CO2の挙動(測定13CO2挙動)を、対照とする哺乳動物(対照哺乳動物)について得られた前記に対応する13CO2の挙動(基準13CO2挙動)と対比する工程、及び(3)前記測定13CO2挙動と前記基準13CO2挙動との差異に基づいて被験哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を決定する工程を有する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、胃粘膜萎縮の有無を判定する方法に関する。
慢性胃炎は、胃粘膜に長期に亘り炎症等が生じている場合をいい、例えば表在性胃炎と萎縮性胃炎とに大別できる。表在性胃炎では、リンパ球等の炎症細胞の胃粘膜表層部への浸潤が認められ、萎縮性胃炎では、炎症の進行により胃粘膜の正常腺が縮小して胃粘膜が薄くなる等の現象が認められる。粘膜の萎縮性変化が進むと胃癌になるリスクが高まることが知られていることから、胃粘膜萎縮の有無を知ることは胃癌リスクの低減において非常に重要である(非特許文献1)。
胃粘膜萎縮の主な検査方法として、内視鏡検査やペプシノーゲン法が挙げられる。内視鏡検査は非常に良く知られた検査方法であるが、管を挿入して胃内を観察することから身体的にも精神的にも苦痛を伴うことが多い。また、ペプシノーゲン法は血液に存在するペプシノーゲンI及びIIの比(PGI/PGII)により胃粘膜萎縮の有無等を判定できる方法であるが、該方法では採血が必要となる(非特許文献2)。このように、これらの方法はいずれも侵襲的である。
患者の身体的または精神的な苦痛を軽減する観点から、非侵襲的に胃粘膜萎縮の有無を判定できる方法の提供は重要である。
熊倉泰久ら、「人間ドック内視鏡検診における胃粘膜萎縮と胃癌の高危険群」、日本消化器がん検診学会雑誌、Vol. 46、N0.6、pp.713-722、2008 M. Kabuto1, Correlation between Atrophic Gastritis Prevalence and Gastric Cancer Mortality among Middle-aged Men in 5 Areas in Japan, J. Epidemiol, 1993, Vol. 3, No. 1, pp. 35-39.
本発明は、非侵襲的に胃粘膜萎縮の有無を判定できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねていたところ、13C標識炭酸化合物が経口投与された後に排出される呼気中の13COの挙動により、胃粘膜萎縮の有無を知ることができることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法であって、
(1)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料として、該呼気中に排出される13COの挙動を測定する工程、
(2)前記工程(1)で得られた13COの挙動(測定13CO挙動)を、対照とする哺乳動物(対照哺乳動物)について得られた前記に対応する13COの挙動(基準13CO挙動)と対比する工程、及び
(3)前記測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて被験哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を決定する工程
を有する方法。
項2.前記被験試料が、13C標識炭酸化合物の経口投与後60分以内の任意の時点で1回採取された呼気である、項1に記載の判定方法。
項3.前記13COの挙動が、13C標識炭酸化合物の経口投与後60分以内の任意の時点で採取された呼気から求められるΔ13C(‰)またはΔ13C(‰)−時間曲線下面積(AUC:Area under the curve)である、項1または2に記載の判定方法。
項4.前記13COの挙動が、13C標識炭酸化合物の経口投与後60分以内の任意の時点で採取された呼気から求められるΔ13C(‰)である、項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
項5.前記測定13CO挙動及び前記基準13CO挙動がそれぞれ、空腹時の被験哺乳動物及び対照哺乳動物に13C標識炭酸化合物を投与して得た呼気に由来するものである、項1〜4のいずれかに記載の判定方法。
項6.前記所定投与量が10mg〜5gである、項1〜5のいずれかに記載の判定方法。
項7.前記13C標識炭酸化合物が、炭酸のアルカリ金属塩、炭酸のアルカリ土類金属塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素のアルカリ金属塩、炭酸水素のアルカリ土類金属塩及び炭酸水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つの炭酸化合物である、項1〜6のいずれかに記載の判定方法。
項8.前記工程(1)において経口投与される13C標識炭酸化合物が、経口投与可能であり且つ13C標識炭酸化合物に悪影響を及ぼさない液体に13C標識炭酸化合物を懸濁した200mlの溶液である、項1〜7のいずれかに記載の判定方法。
項9.前記液体が水である、項8に記載の判定方法。
項10.前記工程(3)が、前記測定13CO挙動が、胃粘膜萎縮の無い対照哺乳動物から得られた基準13CO挙動と同じか高い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該基準13CO挙動より低い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定する工程である、項1〜9のいずれかに記載の判定方法。
項11.前記工程(3)が、測定13CO挙動が、予め設定したカットオフ値より高い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が、該カットオフ値と同じか低い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定する工程である、項1〜10のいずれかに記載の判定方法。
本発明によれば、非侵襲的に胃粘膜萎縮の有無を判定できる。また、本発明によれば、非侵襲的且つ簡便に胃粘膜萎縮の有無を判定できる。
図1は、本発明の方法による胃粘膜萎縮の有無の判定結果と、従来用いられているペプシノーゲン法による判定結果の相関関係を示す。 図2は、製剤投与後5〜120分における呼気の13C(‰)値を示す。 図3は、本発明の方法による胃粘膜萎縮の有無の判定結果と、従来用いられているペプシノーゲン法による判定結果の相関関係を示す。 図4は、本発明の方法による胃粘膜萎縮の有無の判定結果と、従来用いられているペプシノーゲン法による判定結果の相関関係を示す。 図5は、本発明の方法による胃粘膜萎縮の有無の判定結果と、従来用いられているペプシノーゲン法による判定結果の相関関係を示す。
本発明は、哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法を提供し、該方法は、
(1)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料として、該呼気中に排出される13COの挙動を測定する工程、
(2)前記(1)で得られた13COの挙動(測定13CO挙動)を、対照とする哺乳動物(対照哺乳動物)について得られた前記に対応する13COの挙動(基準13CO挙動)と対比する工程、及び
(3)前記測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて被験哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を決定する工程、を有する。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
1.胃粘膜萎縮の判定に使用する 13 C標識炭酸化合物
本発明の方法は、13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料とする。
13C標識炭酸化合物は、経口投与後に被験者の胃内で胃酸と反応し、場合によってはその後分解または代謝されて、呼気中に13C標識炭酸ガス(13CO)として排出されるものであれば特に制限されない。
胃内で胃酸と反応後、速やかに呼気中に13C標識炭酸ガスとして現れる化合物としては、溶解して分子内に13C標識炭酸イオン(13CO −2)又は13C標識重炭酸イオン(H13CO −1)を生じる13C標識炭酸化合物を広く例示できる。このような13Cで標識された炭酸化合物として、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等といった炭酸のアルカリ金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等といった炭酸のアルカリ土類金属塩、炭酸アンモニウムなどの狭義の炭酸化合物の他、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等といった炭酸水素のアルカリ金属塩、炭酸水素のアルカリ土類金属塩、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素化合物等が挙げられる。13C標識炭酸化合物として、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
同位元素(13C)による標識方法は、特に制限されず、通常使用される方法が広く採用される。また、該同位元素で標識された13C標識炭酸化合物として、公知のものや商業的に入手可能なものが広く用いられる(佐々木、「5.1安定同位体の臨床診断への応用」:化学の領域107「安定同位体の医・薬学、生物学への応用」pp.149-163(1975)南江堂;梶原、RADIOISOTOPES, 41, 45-48(1992)等)。
本発明の方法において13C標識炭酸化合物は、前記13C標識炭酸化合物そのもの(単体)として経口投与されてもよく、13C標識炭酸化合物と他の成分を含有する組成物中に含まれた状態で経口投与されてもよく、被験哺乳動物に13C標識炭酸化合物を経口投与できる限り制限されない。該他の成分として、薬学的に許容可能な成分、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;その他の添加剤(例えば矯臭剤、矯味剤、安定化剤等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
13C標識炭酸化合物及び該組成物の形態は固形状、半固形状、液状のいずれであってもよく、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、液剤等の種々の形態に調製することができる。但し、本発明では13C標識炭酸化合物が胃内で速やかに溶解することが好ましく、この観点からカプセル基材に封入されたカプセル剤の形態はあまり好ましくない。また、同様に即溶性の観点から、顆粒、錠剤、丸剤等は、pH依存溶解性の皮膜や溶解しにくい糖衣等で被覆されていないものが好ましい。
13C標識炭酸化合物の所定投与量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、1個体(1body)あたり、通常10mg〜5g、好ましくは10mg〜4g、より好ましくは20mg〜2gの範囲から適宜選択することができる。該投与量は、被験哺乳動物の種類や個体の体重に応じて適宜調整することができる。該所定投与量を充足する範囲において、13C標識炭酸化合物及び前記組成物は、服用のしやすさの観点から、通常、単位投与あたり10mg〜20g、好ましくは10mg〜10gの範囲とすることができる。投与も、後述の呼気採取時間に基づいて適宜選択すればよいが、呼気を採取する60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内に行われ、投与回数は、通常1〜2回、好ましくは1回である。
2.哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法
前述の通り本発明は哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法に関し、前記工程(1)〜(3)を含有する。
本発明は、13C標識炭酸化合物が経口投与された哺乳動物から排出される呼気を被験試料として、非侵襲的に行なわれる。
本発明が対象とする哺乳動物は、ヒトの呼吸器系および消化器系と同様の働きをする呼吸器系および消化器系(特に胃粘膜萎縮の観点から)を有する哺乳動物であれば特に制限されず、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス等が例示される。哺乳動物として好ましくはヒトであり、実験動物を用いる場合は、入手や取り扱いの簡便性からイヌ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスが好ましい。
3.呼気中に排出される 13 CO の挙動を測定する工程
工程(1)は、所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料として、該呼気中に排出される13COの挙動を測定する工程である。
被験哺乳動物に対する13C標識炭酸化合物の経口投与方法は特に制限はされない。
例えば、前記13C標識炭酸化合物または該組成物をそのまま経口投与してもよく、水や緩衝液といった経口投与可能であり且つ13C標識炭酸化合物に悪影響を及ぼさない液体に、13C標識炭酸化合物または該組成物を懸濁した後に経口投与してもよい。該液体として好ましくは水(例えば温度0〜60℃程度)が例示される。
また、より好ましくは、前記13C標識炭酸化合物または該組成物を該液体に懸濁した後に経口投与される。また、このように液体に懸濁させる場合、13C標識炭酸化合物または該組成物が懸濁可能である限り制限されないが、簡便に経口投与できる観点から、前記13C標識炭酸化合物10mg〜5gを懸濁して5〜1000mlの溶液として経口投与することが例示され、より好ましくは50〜500mlの溶液、更に好ましくは50〜500mlが例示され、一層簡便に経口投与できる観点から、特に好ましくは200mlが例示される。
また、食事の影響を受けにくいという観点からは空腹時に投与することが好ましい。この場合、より好ましくは絶食開始から少なくとも4時間以上経過後、更に好ましくは8時間以上経過後に13C標識炭酸化合物を経口投与することが望ましい。
但し、個体間での測定値のバラツキを抑制しながら呼気中に排出される13COの挙動を測定するためには、胃を刺激した後に13COの挙動を測定することが好ましい。この場合は、試験飲食料(例えば、水、カフェイン入り飲料、アルコール飲料、コンソメスープ、例えばカロリーメイト(登録商標)等の固形または液状の食品等)を服用させるか、または胃刺激剤(例えば、塩酸ヒスタミン、塩酸ベタゾール、ガストリン、インスリン等)を注射して胃を刺激した後、1時間以内に13C標識炭酸化合物を経口投与することが好ましい。
また、本発明はこの限りにおいて制限されないが、個体差を一層軽減し、一層正確に決定する観点から、起床後の一定時間や激しい運動を避けて13C標識炭酸化合物を経口投与することが好ましく例示される。
被験哺乳動物に経口投与された13C標識炭酸化合物は、胃内に入ると胃酸と反応することによって13C標識炭酸ガス(13CO)が生成し、これが順次呼気中に排出される。13C標識炭酸化合物として13C標識炭酸カルシウム(Ca13CO)を用いた場合を例として、13C標識炭酸ガス(13CO)が生成する反応式を下記に示す。
なお、本発明で測定する「13COの挙動」としては、下記(a)〜(d)を例示できる。
(a)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後、60分以内の任意の時点で呼気中に排出される13CO量;
(b)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後、60分以内の任意の時点で呼気中に排出される12CO量に対する13CO量の割合(13CO12CO濃度比:δ13C値);
(c)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後、60分以内の任意の時点(呼気採取時(t))における呼気に含まれる「12CO量に対する13CO量の割合」(以下、これを「δ13」という)と、13C標識炭酸化合物の経口投与前の呼気に含まれる「12CO量に対する13CO量の割合」(以下、これを「δ13」という)との差[Δ13C(‰)=δ13−δ13](以下、これを「Δ13C(‰)」または「Δ13C(‰)」という);
(d)所定投与量の13C標識炭酸化合物の投与から呼気採取までの時間を横軸に、Δ13C(‰)を縦軸にしてグラフを描くことで算出される「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC:Area under the curve)。
好ましくは「Δ13C(‰)」及び「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)であり、より好ましくは「Δ13C(‰)」である。これらの13COの挙動は、具体的には下記のように、また、下記に準じて測定できる。
所定投与量の13C標識炭酸化合物を被験哺乳動物に経口投与した後、常法の13C呼気検査法(梶原、RADIOISOTOPESM,41,45−48(1992);梶原ら、RADIOISOTOPS,41,331−334(1992)など)に従って、呼気を採取し、呼気採取時(t)における「13CO12CO濃度比(δ13C)」(「δ13」は呼気中に排出される炭酸ガス12CO量に対する13CO量の割合を、「t」は13C標識炭酸化合物投与後の経過時間であって、13C標識炭酸化合物投与から60分以内における呼気採取時間を意味する)を測定する。
次いで、「δ13」と、13C標識炭酸化合物の経口投与前にあらかじめ測定した基準の「13CO12CO濃度比(δ13C)」(「δ13」)との差から、「Δ13C(‰)」〔Δ13C(‰)=δ13−δ13〕を算出する。
このようにして、13C標識炭酸化合物投与後60分以内の任意の時点(t)で呼気中に排出される13COの挙動を、前記式Δ13C(‰)=δ13−δ13から求めることができる。
また、呼気に排出される13COの経時的挙動は、前記Δ13C(‰)の経時的推移を追跡することで求めることができる。具体的には、13C標識炭酸化合物投与後の経過時間を横軸に、Δ13C(‰)を縦軸にしてグラフを描くことで求めることができる。
なお、採取呼気中に含まれる標識物(13CO)の測定、分析は、液体シンチレーションカウンター法、質量分析法、赤外線分析法、発光分析法、磁気共鳴スペクトル法等といった一般に使用される分析手法を用いて行うことができる。好ましくは測定精度の点から赤外分光分析法及び質量分析法である。
更に、「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)は、前述のようにして得られる13C標識炭酸化合物投与後の経過時間(呼気採取時間:t)(分)を横軸に、Δ13C(‰)を縦軸にしたグラフから、その曲線下面積を算出することにより求めることができる。
なお、呼気採取時間は、13C標識炭酸化合物の経口投与から、通常10秒以上経過した後であることが好ましく、より好ましくは1分以上経過した後が例示される。また、呼気採取時間は、13C標識炭酸化合物の経口投与から、好ましくは60分以内、より好ましくは30分以内、更に好ましくは15分以内が例示される。例えば13C標識炭酸化合物を経口投与してから、10秒以上60分以内、好ましくは1分以上30分以内、より好ましくは1分以上15分以内の時間内で1回または2回呼気を採取したものを被験試料とし、より好ましくは同時間内で1回呼気を採取したものを被験試料とする。
4.測定 13 CO 挙動と基準 13 CO 挙動とを対比する工程
工程(2)は、前記工程(1)で得られた13COの挙動(測定13CO挙動)を、対照とする哺乳動物(対照哺乳動物)について得られた前記に対応する13COの挙動(基準13CO挙動)と対比する工程である。
本工程において「13CO挙動」は前述の通りであり、好ましくは「Δ13C(‰)」及び「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)であり、より好ましくは「Δ13C(‰)」である。
「測定13CO挙動」は、前記工程(1)得た13COの挙動を意味する。
「基準13CO挙動」は、前記工程(1)において「被験哺乳動物」を「対照哺乳動物」に代えた以外は同様にして得た13COの挙動を意味する。すなわち、本工程では、被験哺乳動物で測定した13COの挙動(測定13CO挙動)と同種の13CO挙動を基準13CO挙動として採用し、被験哺乳動物がヒトであれば対象哺乳動物もヒトであり、また、測定13CO挙動がΔ13C(‰)である場合は、基準13CO挙動もΔ13C(‰)である。
また、例えば、測定13CO挙動が、被験哺乳動物の空腹時に13C標識炭酸化合物が投与され採取された呼気に由来する場合には、基準13CO挙動も、対照哺乳動物の空腹時に13C標識炭酸化合物が投与され採取された呼気に由来することが好ましい。
また、基準13CO挙動は、測定13CO挙動の測定時と同時または測定13CO挙動の測定後に、対照哺乳動物を用いて得られた13CO挙動であってもよく、あるいは、対照哺乳動物について予め得られた13CO挙動でもよい。
このようにして得られた測定13CO挙動と基準13CO挙動とを対比すればよい。
5.胃粘膜萎縮の有無を決定する工程
工程(3)は、前記測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて被験哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を決定する工程である。
測定13CO挙動と基準13CO挙動は、前述の通りである。
本工程では、前記測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて、胃粘膜萎縮の有無を決定できる。
例えば、対照哺乳動物は胃粘膜萎縮を有していなくてもよく有していてもよい。対照哺乳動物が胃粘膜萎縮を有していない場合、測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて、前記測定13CO挙動が前記基準13CO挙動と同じか高い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該基準13CO挙動より低い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定できる。また、対照哺乳動物が胃粘膜萎縮を有している場合、測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて、前記測定13CO挙動が前記基準13CO挙動より高い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該基準13CO挙動と同じか低い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定できる。
より正確に胃粘膜萎縮の有無を決定する観点から、対照哺乳動物は胃粘膜萎縮を有していないものである。すなわち、工程(3)において、好ましくは、前記測定13CO挙動が、胃粘膜萎縮の無い対照哺乳動物から得られた基準13CO挙動と同じか高い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該基準13CO挙動より低い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定する。
また、前述のように13C標識炭酸化合物は、経口投与後に被験哺乳動物の胃内で胃酸と反応して、呼気中に13C標識炭酸ガスとして排出される。このため、対照哺乳動物として好ましくは胃酸の分泌に関連する疾患を有していないものや胃酸分泌抑制・促進剤といった製剤の影響を受けていないものがより好ましく例示される。
これらには、胃粘膜萎縮を有していない対照哺乳動物及び/または胃粘膜萎縮を有している対照哺乳動物により得られる13CO挙動についてのデータを蓄積し、これにより得られた複数の13CO挙動データに基づいて設けたカットオフ値(胃粘膜萎縮を有しているか、有していないかについて境界となる値)を基準として、該カットオフ値と前記測定13CO挙動との差異に基づいて、前記測定13CO挙動が該カットオフ値より高い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該カットオフ値と同じか低い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定することが包含され、好ましい例として挙げられる。
本発明によれば、このようにして胃粘膜萎縮の有無を決定できる。また、本発明は測定13CO挙動に基づいて胃粘膜萎縮の有無を決定できることから、萎縮性胃炎の診断にも有用であり、すなわち、本発明は、前記工程(1)〜(3)を有する、萎縮性胃炎の有無の診断方法を提供するともいえる。また、このことから、測定13CO挙動は前癌マーカーとしても有用である。
また、本発明によればこのようにして胃粘膜萎縮の有無を決定できることから、胃粘膜萎縮に対する治療を行い同様にして測定13CO挙動を求めることにより、治療効果を判断することができる。例えば、胃粘膜萎縮を有する患者において、治療後の測定13CO挙動が治療前の測定13CO挙動より高くなった場合、治療効果があったといえる。このことから、本発明はまた、前記工程(1)〜(3)を有する、胃粘膜萎縮に対する治療効果の評価方法を提供するともいえる。胃粘膜萎縮を有する哺乳動物への治療手段としては、Helicobacter pylori陽性では除菌が例示され、H.pylori陰性では前癌状態であることから経過観察ののち癌化部分の切除が例示される。
このような本発明によれば、長時間にわたって被験哺乳動物を拘束することなく数少ない呼気採取(好ましくは1回の呼気採取)によって非侵襲的に胃粘膜萎縮の有無を決定できる点で有用である。また、本発明によれば、このように簡便に胃粘膜萎縮の有無を決定できる点で有用である。従って、本発明によれば、非侵襲的且つ簡便に胃粘膜萎縮の有無を決定できる。
また、本発明によれば13COの挙動を把握できることから、胃粘膜萎縮の程度も判断できる。この場合、前記基準13CO挙動と比較して、前記測定13COの挙動の値が低ければ低いほど胃粘膜萎縮の程度が高い傾向にあるといえる。
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
試験例1
・製剤の製造
13C標識炭酸化合物を含む製剤を次のように製造した。13C標識−炭酸カルシウム(13C−CaCO)(MW:101、Cambridge Isotope Laboratory製)200mgを有効成分として、D−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び軽質無水ケイ酸を含む顆粒剤(実施例1)を定法に従い製造した。製剤中の13C標識−炭酸カルシウムの含有量は50重量%である。
・実験1
被験者の男女合計40人に、前記製剤200mgを空腹時に単回経口投与した。本試験は、試験前日22時以降絶食とし(水のみ服用してもよい)、翌日午前8〜9時に下記試験を開始した。また、前記製剤200mgを水と混合して200ml溶液としたのちに、各被験者に経口投与した。
全被験者について、前記製剤の投与前(13C−CaCO投与前)と投与15分後(13C−CaCO投与後)の時点で呼気を採取し、呼気中のΔ13C(‰)を呼気分析用質量分析計(ABCA:SerCon製)を用いて求めた。Δ13C(‰)は、13C−CaCO投与前と投与後の呼気中の13CO12CO濃度比(δ13C値(投与前をδ13C値、投与後をδ13C値15と示す))をそれぞれ測定し、投与後のδ13C値15と投与前のδ13C値の差(δ13C値15−δ13C値)からΔ13C(‰)を算出して求めた。
・実験2
また、同被験者40人に対して、ペプシノーゲン法に従い、ペプシノーゲンI/ペプシノーゲンIIの比(PGI/PGII比)を求めた。該実験では、PGI/PGII比2.5未満を胃粘膜萎縮あり、PGI/PGII比2.5以上を胃粘膜萎縮なしと判断した。該基準は、M. Kabuto1, J. Epidemiol, 1993, Vol. 3, No. 1, pp. 35-39.に記載される基準に従った。その結果、14例において胃粘膜萎縮あり、残り26例において胃粘膜萎縮なしと判定できた。
・評価
前述の実験1で求めたΔ13C(‰)を図1に示す。図中、縦軸はΔ13C(‰)を示し、横軸に「萎縮なし」、「萎縮あり」を設けた。実験2で胃粘膜萎縮なしと判定された被験者の結果を「萎縮なし」欄に、実験2で胃粘膜萎縮ありと判定された被験者の結果を「萎縮あり」欄にプロットした。その結果、「萎縮なし」欄にはΔ13C(‰)値の高い被験者が、「萎縮あり」欄にはΔ13C(‰)値の低い被験者が局在した。
このことから、前記実験1と実験2には高い相関関係が認められることが分かった。また、このことから、胃粘膜萎縮ありの被験者から得られたΔ13C(‰)値は、胃粘膜萎縮なしの被験者から得られたΔ13C(‰)値よりも低い傾向が認められることが分かった。
これによって、13C標識炭酸化合物を経口投与された後に排出される呼気中の13COの挙動により、胃粘膜萎縮の有無を非侵襲的に判定できることが確認された。また、前述のように13C標識炭酸化合物を経口投与された後に排出される呼気の分析を行うだけで、粘膜萎縮の有無を判定できることから、該方法は簡便に、また、迅速に胃粘膜萎縮の有無を判定できることが確認された。
試験例2
前記試験例1の被験者40人を、萎縮なし(PGI/PGII比2.5以上、萎縮あり(PGI/PGII比2.5未満)に分類し、製剤投与後5、10、15、20、25、30、40、50、60、80、100及び120分に前述と同様にして呼気を採取し、13C(‰)の値を求めた。
結果を図2に示す。図中、縦軸は13C(‰)を示し、横軸に製剤投与後の時間を設けた。萎縮なしと萎縮ありとでは13C(‰)値に差が認められ、特に投与後約60分までの値に大きな差があった。このことから、該方法は、製剤投与後60分以内の1点でも胃粘膜萎縮の有無を判定できることが確認された。
試験例3
前記試験例1において測定したΔ13C(‰)とPGI/PGII比の各プロットを図3に示す。図中、縦軸は製剤投与15分後におけるΔ13C(‰)を示し、横軸にPGI/PGII比を設けた。図3から明らかなように、これらは正の相関を示したことから、呼気により胃粘膜萎縮の有無を評価できることが確認された。
試験例4
前記試験例1において被験者40名を、PGI/PGII比3以上、PGI/PGII比2.5以上3未満、PGI/PGII比2以上2.5未満、PGI/PGII比2未満の4群に分けて、それぞれのΔ13C(‰)をプロットした。結果を図4に示す。図中、縦軸は製剤投与15分後におけるΔ13C(‰)を示し、横軸に前記4群を設けた。図4から明らかなように、Δ13C(‰)の値はPGI/PGII比と相関し、萎縮が進むとΔ13C(‰)の値は低下傾向を示したことから、Δ13C(‰)の値から萎縮の重症度を判定できることが示唆された。
試験例5
前記試験例1において、Δ13C(‰)に代えて、呼気中の「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)を求めた以外は同様にして試験行った。より具体的には、13C−CaCO投与前と投与後の呼気中の13CO12CO濃度比(δ13C値(投与前をδ13C値、投与後をδ13C値15と示す)をそれぞれ測定し、投与0〜15分における「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC15-0)を算出した。
結果を図5に示す。図中、縦軸は「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC15-0)を示し、図1と同様に、横軸に「萎縮なし」、「萎縮あり」を設けた。前記実験2で胃粘膜萎縮なしと判定された被験者の結果を「萎縮なし」欄に、胃粘膜萎縮ありと判定された被験者の結果を「萎縮あり」欄にプロットした。その結果、「萎縮なし」欄には「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC15-0)値の高い被験者が、「萎縮あり」欄には「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC15-0)値の低い被験者が局在した。
このことから、「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)を基準にした場合であっても、ペプシノーゲン法と高い相関関係が認められた。また、胃粘膜萎縮ありの被験者から得られた「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)値は、胃粘膜萎縮なしの被験者から得られた「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)値よりも低い傾向が認められることが分かった。
このことから、「Δ13C(‰)−時間曲線下面積」(AUC)を用いた場合であっても、13C標識炭酸化合物を経口投与された後に排出される呼気中の13COの挙動により、胃粘膜萎縮の有無を非侵襲的に判定できることが確認された。
このように、13C標識炭酸化合物を経口投与された後に排出される呼気の分析を行うだけで、粘膜萎縮の有無を判定できることから、該方法は簡便に、また、迅速に胃粘膜萎縮の有無を判定できることが確認された。更に、このような算出された値の高低に基づいて、粘膜萎縮の程度も判定できることが確認された。

Claims (7)

  1. 哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を判定する方法であって、
    (1)所定投与量の13C標識炭酸化合物が経口投与された後60分以内の任意の時点で排出される被験哺乳動物の呼気を被験試料として、該呼気中に排出される13COの挙動を測定する工程、
    (2)前記工程(1)で得られた13COの挙動(測定13CO挙動)を、対照とする哺乳動物(対照哺乳動物)について得られた前記に対応する13COの挙動(基準13CO挙動)と対比する工程、及び
    (3)前記測定13CO挙動と前記基準13CO挙動との差異に基づいて被験哺乳動物の胃粘膜萎縮の有無を決定する工程
    を有する方法。
  2. 前記被験試料が、13C標識炭酸化合物の経口投与後60分以内の任意の時点で1回採取された呼気である、請求項1に記載の判定方法。
  3. 前記13COの挙動が、13C標識炭酸化合物の経口投与後60分以内の任意の時点で採取された呼気から求められるΔ13C(‰)である、請求項1または2に記載の判定方法。
  4. 前記所定投与量が10mg〜5gである、請求項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
  5. 前記13C標識炭酸化合物が、炭酸のアルカリ金属塩、炭酸のアルカリ土類金属塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素のアルカリ金属塩、炭酸水素のアルカリ土類金属塩及び炭酸水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つの炭酸化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の判定方法。
  6. 前記工程(3)が、前記測定13CO挙動が、胃粘膜萎縮の無い対照哺乳動物から得られた基準13CO挙動と同じか高い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が該基準13CO挙動より低い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定する工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の判定方法。
  7. 前記工程(3)が、測定13CO挙動が、カットオフ値より高い場合に被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が無いと決定し、前記測定13CO挙動が、該カットオフ値と同じか低い場合に、被験哺乳動物に胃粘膜萎縮が有ると決定する工程である、請求項1〜6のいずれかに記載の判定方法。
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