JP2017106742A - レーザ式ガス分析計 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガス濃度の圧力依存性を最小化して測定精度を高めつつ、かつ信号ノイズ比を高めて測定の安定性をも高めることにより、測定対象ガスのガス濃度を、高精度、高安定に測定するレーザ式ガス分析計を提供する。
【解決手段】予め補正情報を登録し、波長変調振幅に各々対応するロックイン検出された複数の波形の振幅、および、補正情報に基づいてガス濃度の圧力依存性を補正することで、正確なガス濃度を算出するレーザ式ガス分析計とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、測定対象空間内における測定対象ガスの有無や濃度を分析するレーザ式ガス分析計に関する。
気体状のガス分子は、それぞれ固有の光吸収波長および吸収強度を表す吸収線スペクトルを有する。また、レーザ光は、特定の波長でスペクトル線幅が狭い光である。レーザ式ガス分析計は、レーザ素子が、気体状のガス分子である測定対象ガスが吸収する光吸収波長のレーザ光を発光し、測定対象ガスにレーザ光を吸収させ、その光吸収波長におけるレーザ光の吸収量に基づいて測定対象ガスの有無を検出する。加えて、レーザ式ガス分析計は、光吸収波長におけるレーザ光の吸収量が測定対象ガスの濃度に比例するため濃度を検出することもできる。
なお、測定対象空間に多数存在するガスの中から特定の測定対象ガスのみ選択して分析する必要がある。そこで、測定対象空間中の測定対象ガスおよびその他のガスの光吸収波長のうち、測定対象ガスのみ吸収するがその他のガスが吸収しない光吸収波長が選択される。
この測定対象ガスの光吸収波長における吸収線スペクトルは、仮にガスの圧力が低いとスペクトル線幅の狭い理想的な吸収線スペクトルとなる。しかしながら、実際はガスの圧力が高く、圧力広がりが起きた吸収線スペクトルとなる。
この圧力広がりは、ガス分子同士の衝突に起因するものであり、圧力広がりが生じた吸収線スペクトルは、スペクトル線幅が広がるとともに吸収強度が低くなる。換言すれば、ガスの圧力が変化したとき、測定対象ガスの吸収量の変化により、検出するレーザ光の光量も変動し、ガス濃度に誤差を生じるおそれがあった。
このような圧力広がりを考慮してガス分析を行うレーザ式ガス分析計の従来技術が、例えば特許文献1(特開2012−233900号公報)により開示されている。この従来技術は、特許文献1の図1で示すように、対象ガスの吸収線スペクトルのスペクトル線幅にわたって走査可能であって半導体レーザに代表される波長可変レーザ光源10と、ガスの間を通過するレーザ光線の強度をDCおよび変調周波数の倍数で検出する光検出器12と、ロックイン増幅器24およびマイクロプロセッサ26を含む制御装置16と、を備える。
特許文献1のレーザ式ガス分析計は、波長変調分光法により検出を行う。駆動電流によって波長を掃引し、かつ特定の周波数で変調したレーザ光を波長可変レーザ光源10が出射し、そのレーザ光を光検出器12が検出し、ロックイン増幅器24が信号を変調周波数の逓倍でロックイン検出し、このロックイン検波波形の振幅からガス濃度を算出する。ロックイン検出により信号ノイズ比が向上するために微量ガスの計測に適している。
測定対象空間に存在する複数ガスの組成が定まっている場合には、測定対象ガスの吸光によって得られるロックイン検波波長の振幅は波長変調振幅の関数であり、極大値が存在する。したがって、標準ガスを校正する際には、ロックイン検波波形の振幅が極大となるように波長変調振幅を調節して、信号ノイズ比を最大化することができる。そして、測定対象ガスのガス濃度とロックイン検波波形の振幅の対応関係(比例関係など)に基づき、ガス濃度を演算することができる。
ところが、実際の測定対象空間には、例えば高温の燃焼排ガスのように、分析したガス組成と異なることがあり、さらにガス濃度(あるいは分圧)も変動して圧力広がりも変化する場合には、スペクトル線幅が変動し、これら影響がロックイン検波波形の振幅に現れるため、ガス濃度測定の誤差となる。このような場合に、スペクトル線幅の変動の影響を補正しなければ、ガス濃度測定が不確定となる。
図7は特許文献1からの引用であり、上記の現象を示すものである。縦軸の2f信号はロックイン検波波形の振幅であり、横軸は波長変調振幅である。圧力が異なると、圧力広がりの影響により関数の形が変化するため、単に2f信号からガス濃度を算出すると誤差を含む値となる。
特許文献1では上記の課題を解決するために、図7に示される「圧力に対する作用点」と呼ばれる、圧力の変動に対して2f信号の変動が最小となるような波長変調振幅に設定することにより、ガス濃度の圧力依存性を低減させている。
特開2012−233900号公報(段落[0030]、図7)
さて、上記の特許文献1の2f信号の「圧力に対する作用点」は、圧力変動に対して必ずしも不変ではないため、ガス濃度の測定誤差が残留するおそれがある。また、2f信号が極大値となる動作点ではなく、信号ノイズ比が極大値と比べて劣る場合がある。これらの課題が新たに知見された。
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガス濃度の圧力依存性を最小化して測定精度を高めつつ、かつ信号ノイズ比を高めて測定の安定性をも高めることにより、測定対象ガスのガス濃度を、高精度、高安定に測定するレーザ式ガス分析計を提供することにある。
本発明の請求項1に係るレーザ式ガス分析計は、
波長可変レーザ分光法及び波長変調光分光法により、測定対象空間に存在する測定対象ガスのガス濃度を測定するレーザ式ガス分析計であって、
前記測定対象ガスの吸収線スペクトルの光吸収波長を含む波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子と、
前記測定対象ガスの吸収線スペクトルの光吸収波長を含む波長帯域で波長が掃引され、かつ変調されるように駆動電流を前記レーザ素子に供給する変調光生成部と、
を有する発光部と、
前記測定対象空間を通過した前記レーザ光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力された検出信号に対し、前記変調周波数の2倍の周波数でロックイン検出して得た波形の振幅に基づいてガス分析を行う受光信号処理部と、
を有する受光部と、
を備え、
前記変調光生成部は、複数の波長変調振幅による波長掃引を行うように駆動電流を出力し、
前記受光信号処理部は、予め補正情報を登録し、前記複数の波長変調振幅に各々対応するロックイン検出により得た複数の波形の振幅、および、補正情報に基づいてガス濃度の圧力依存性を補正することを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
また、本発明の請求項2に係るレーザ式ガス分析計は、
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計であって、
前記複数の波形の振幅の圧力依存性は、あらかじめ既知の濃度の前記測定対象ガスを含み、かつ、その他のガスの組成や濃度が異なるように構成された複数の校正ガスによって得られる補正情報に基づきそれぞれ補正されることを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
また、本発明の請求項3に係るレーザ式ガス分析計は、
請求項1に記載のレーザ式ガス分析計であって、
前記複数の波形の振幅の圧力依存性は、あらかじめ計算機によって求められた補正情報に基づきそれぞれ補正されることを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
また、本発明の請求項4に係るレーザ式ガス分析計は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ式ガス分析計であって、
前記複数の波長変調振幅は、前記複数の校正ガスにおけるロックイン検出検波波形の最大振幅となるように調整されることを特徴とするレーザ式ガス分析計とした。
本発明によれば、ガス濃度の圧力依存性を最小化して測定精度を高めつつ、かつ信号ノイズ比を高めて測定の安定性をも高めることにより、測定対象ガスのガス濃度を、高精度、高安定に測定するレーザ式ガス分析計を提供することができる。
本発明を実施するための形態のレーザ式ガス分析計の構成図である。 ガス分析の圧力依存性の説明図であり、図2(a)は理想状態の波長−吸収線スペクトルの特性図、図2(b)は理想状態の波長−ロックイン検波波形の特性図、図2(c)は圧力変動状態の波長−吸収線スペクトルの特性図、図2(d)は圧力変動状態の波長−ロックイン検波波形の特性図である。 ロックイン検波波形の振幅と波長変調振幅の関係がスペクトル線幅によって変化することを示す説明図である。 ロックイン検波波形の振幅とスペクトル線幅の関係を示す説明図である。 ロックイン検波波形の振幅および振幅比によって振幅が補正できることを示す説明図である。 波長変調振幅の決定方法の一例を示す説明図である。 従来技術の2f信号と変調振幅の関係及びそれらの圧力依存性を示す図である。
続いて、本発明を実施するための形態に係るレーザ式ガス分析計について図を参照しつつ以下に説明する。図1は、本形態のレーザ式ガス分析計の全体構成図である。
本形態のレーザ式ガス分析計1は、壁50aと壁50bの内部にある測定対象空間中を通流するガスに含まれる測定対象ガスのガス濃度を測定する。また、ガス濃度が0や所定値以下であるならばガスが無いと判別できるため、ガスの有無も検出できる。
レーザ式ガス分析計1は、発光部10、受光部20、通信線30を備えている。通信線30は発光部10と受光部20との間で電気信号により通信する。また、通信線に代えて無線や光通信のような通信部を採用しても良い。これら通信線、無線、光通信による通信部を採用できる。
このようなレーザ式ガス分析計1では、発光部10が、検出光40を出射する。そして、検出光40は壁50aと壁50bの内部の測定対象空間に投光される。
このとき、検出光40の一部は、測定対象ガスによって吸収される。吸収されなかった残りの光、すなわち透過光が、受光部20に入射し、その光量が検出される。検出された光量に応じた検出信号から測定対象ガスのガス濃度が求められる。
続いて各部の詳細について説明する。
発光部10は、変調光生成部11、レーザ素子12、コリメートレンズ13、発光部窓板14、発光部容器15を少なくとも備える。
受光部20は、受光信号処理部21、受光素子22、集光レンズ23、受光部窓板24、受光部容器25を少なくとも備える。
まず、構造について説明する。
図1に示すように、測定対象ガスを含むガスが流通する配管等の壁50a,50bにそれぞれ穴が開けられている。フランジ51a,51bは、溶接等によりそれらの穴に固定されている。光軸調整フランジ52a,52bは、これらフランジ51a,51bに対して機械的に移動可能に取り付けられる。発光部10、受光部20は光軸調整フランジ52a,52bにより位置調整することができる。
したがって、光軸調整フランジ52aは、検出光40の出射角を調整し、また、光軸調整フランジ52bは、検出光40の入射角を調整する。光軸調整フランジ52a,52bにより、発光部10から出射される検出光40が受光部20において最大の光量で受光される。
発光部容器15および受光部容器25は、それぞれの内部にレーザ素子、光学部品、および、電気電子回路を内蔵し、それらを外気から隔絶して風雨、塵埃、および、汚れ等から保護する。
発光部窓板14および受光部窓板24は、発光部容器15および受光部容器25の一部に穴を開けてそれを塞ぐように設けられている。発光部窓板14および受光部窓板24は、検出光40の光路内にあり、検出光40を透過させつつ、測定対象空間におけるガスが発光部10や受光部20の内部に進入しないようにする。これにより、レーザ素子、光学部品、および、電気電子回路が直接ガスに触れないことになり、内部が保護される。機械的構造はこのようなものである。
次に、発光部10および受光部20の光学的機能について説明する。測定対象ガスが吸収する特定の吸収線スペクトルの中心波長をλとする。
レーザ素子12は中心波長λ及びその周辺の波長で発光する。
コリメートレンズ13は中心波長λ及びその周辺の波長において透過率が高い材料で構成する。コリメートレンズ13により、検出光40は略平行光に変換され、拡散による損失を抑えながら受光部20まで伝送することができる。
受光素子22には、中心波長λ及びその周辺の波長において、感度を有する受光素子を選択することができる。
集光レンズ23は、中心波長λ及びその周辺の波長において、透過率が高い材料で構成する。集光レンズ23により、検出光40は受光素子22に集光されるため、高い信号強度を得ることができる。
次に、発光部10および受光部20による光学系処理および信号処理について説明する。まず、発光部10について説明する。
変調光生成部11は、信号処理・電流駆動回路である。測定対象ガスの吸光特性に応じたレーザ光を照射する必要がある。加えて、レーザ光は周波数変調された変調光とする必要がある。そこで、変調光生成部11は、これらのようなレーザ光を発光するための駆動電流信号を、レーザ素子12に供給する。このレーザ素子12は、例えば、DFBレーザ(Distributed Feedback Laser Diode)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser Diode)、または、DBRレーザダイオード(Distributed Bragg Reflector Laser Diode)である。
レーザ素子12は、駆動電流と温度により、発光波長を可変制御可能である。そこで、レーザ素子12が発光するレーザ光の中心波長が、測定対象ガスの吸収線スペクトルの中心波長となるように温度制御される。また、レーザ光の中心波長の周辺の波長が時間的に掃引されるように、駆動電流が制御される。さらに、波長変調分光法により高感度にて測定できるように、適切な波長変調振幅および周波数を有する正弦波が駆動電流に重畳される。
レーザ素子12の発光点は、コリメートレンズ13の焦点付近に配置されている。レーザ素子12からの出射光は、拡散しつつコリメートレンズ13に入射して、略平行光である検出光40に変換される。なお、本形態ではコリメートレンズ13を用いるものとして説明するが、コリメートレンズに限定する趣旨ではない。例えば、コリメートレンズの代わりに放物面鏡を用いることもできる。
略平行光である検出光40は、発光部窓板14を透過し、壁50a,50bの内部、すなわち測定対象ガスを含むガスが流通する空間に伝播する。
次に、受光部20について説明する。受光部20は、受光部窓板24を透過した検出光40を受光し、測定対象ガスにより吸収された光量について分析する。検出光40は、集光レンズ23の焦点付近に受光面が配置された受光素子22に入射する。なお、本形態では集光レンズ23を用いているが、集光レンズ23に代えて、放物面鏡、ダブレットレンズや回折レンズなどを採用することもできる。
受光素子22からの受光信号は、受光信号処理部21に検出信号として送られる。受光信号処理部21では、この検出信号を処理して、ガス濃度を算出する。
次いで、測定対象ガスのガス濃度測定について述べる。まず、本発明の特徴をなすガス濃度の補正原理について説明する。ここに測定対象空間には測定対象ガスおよびその他のガスを含むものと想定する。
まず、測定対象空間内において測定対象ガスのガス濃度が一定であり、かつ他のガスのガス濃度も一定であるという理想状態でガス分析を行ったときの、測定対象ガスの吸収線スペクトルの形状とロックイン検波波形について説明する。
図2(a)は、理想状態の吸収線スペクトルを示しており、横軸は波長を、縦軸は吸収強度を示している。図2(a)の破線は、測定対象ガスのガス濃度がcのときにピークの高さがAを示す吸収線スペクトルを示し、また、図2(a)の実線は、測定対象ガスのガス濃度が0.5cのときにピークの高さが0.5Aを示す吸収線スペクトルを示している。ただし、吸収が線形である、すなわち、吸収が飽和しておらず、ランベルト−ベールの法則が1次近似で表現できる条件を前提としている。以下も同様である。
これらのような吸収線スペクトルは、一般的に、圧力広がりなどの効果によりスペクトル線幅が広がっている。その関数形は、圧力広がりが支配的である場合はローレンツ関数でよく近似される。
図2(b)は、図2(a)で表された吸収線スペクトルを波長変調の周波数の2倍の周波数でロックイン検出した際のロックイン検波波形信号を示しており、横軸は波長を、縦軸はロックイン検波波形の信号レベルを示している。ロックイン検波波形は吸収線スペクトルの2階微分で近似される形状をしている。
図2(b)の破線で示すように、測定対象ガスのガス濃度がcのときのピークの高さをA2fとすると、図2(b)の実線で示すように、ガス濃度が0.5cのときにはピークの高さは0.5A2fとなり、その振幅はガス濃度に比例する。このことから、測定対象ガス以外の他のガスによる圧力広がりの変化が無ければ、ロックイン検波波形の振幅からガス濃度が演算できることが分かる。
続いて、測定対象空間内において、測定対象ガスの濃度は一定であるが、他のガスの濃度や圧力が変化するような実際の測定状態でガス分析を行ったときの測定対象ガスの吸収線スペクトルの形状とロックイン検波波形について説明する。
図2(c)は、図2(a)の理想状態と比較すると、実際の測定状態の吸収線スペクトルを示しており、横軸は波長を、縦軸は吸収強度を示している。図2(c)の破線は、測定対象ガスのガス濃度がcでスペクトル線幅がγのときにピークの高さがAを示す吸収線スペクトルを示し、また、図2(c)の実線は、測定対象ガスのガス濃度が同じくcでスペクトル線幅が2γのときにピークの高さが0.5Aを示す吸収線スペクトルを示している。
スペクトル線幅は、測定対象ガスの濃度及びそれ以外のガスのガス濃度と、それぞれの圧力広がり係数の線形和によって決まる。吸収線スペクトルの関数形はローレンツ関数のまま、線幅とピーク高さが変化するものと近似できる。図2(c)の場合は、濃度が同じでも、スペクトル線幅が倍(γから2γへ)になると、ピーク高さが半分(Aから0.5Aへ)になることを示している。
図2(d)は、図2(c)で表された吸収線スペクトルを波長変調の周波数の2倍の周波数でロックイン検出した際のロックイン検波波形信号を示しており、横軸は波長を、縦軸はロックイン検波波形の信号レベルを示している。
図2(d)の破線で示すように、吸収線スペクトルを波長変調の周波数でロックイン検出した波形であり、測定対象ガスのガス濃度がcでスペクトル線幅がγのときのピークの高さをA2fとすると、図2(d)の実線で示すように、吸収線スペクトルを波長変調の周波数でロックイン検出した波形を測定対象ガスのガス濃度がcでスペクトル線幅が2γのときのピークの高さはaA2fとなり、検波波形の高さの変化は僅かであり、かつ検波線幅の変化はほとんど見られない。
つまり、線幅が2倍になった場合に、ロックイン検波波形の振幅が非線形にふるまうことを示している。また、その結果、測定対象ガスのガス濃度が変動し、かつ他ガスの濃度も変動するような測定状態では、測定対象ガスにおいては、いずれのガスのガス濃度が変動したかを分離できないため、ロックイン検波波形の振幅変化の原因が特定できず、ガス濃度測定に誤差を生じることとなる。
そこで、上記のスペクトル線幅の変動によるガス濃度測定の誤差を低減するために、異なる複数の波長変調振幅におけるロックイン検波波形の振幅を取得することを考える。変調光生成部11では、波長変調振幅を複数(本形態ではaとa’)に変えられるようにしておく。
図3には、測定対象ガスや他のガスによるガス組成や濃度によって、スペクトル振幅がγ、γ、γの範囲で変動する場合における、ロックイン検波波形の振幅と波長変調振幅の関数が示されている。図3の縦軸・横軸ともに数値の絶対性には意味がなく、相対値の比較で議論するため任意に決めた任意単位 arbitrary unit (a.u.)により表す。
スペクトル線幅γは、工場での製造時や設置場所での校正時などで調整する際に用いる標準ガス、例えば測定対象ガスとその他のガスを含み、その他のガスが窒素で構成されるようなガスを用いた際に得られる。このスペクトル線幅γが得られる状態は、測定対象空間内において、測定対象ガスのガス濃度が一定であり、かつ他のガスのガス濃度も一定であるという理想状態となる。また、測定現場でのスペクトル線幅は、他のガスの濃度や圧力、温度変動によってγからγまで変動すると仮定する。このスペクトル線幅が変動する状態は、測定対象空間内において、測定対象ガスの濃度は一定であるが、他のガスの濃度や圧力が変化するような実際の測定状態となる。
図3に示すように、波長変調振幅を変化させると異なるロックイン検波波形の振幅が得られることがわかる。このうち波長変調振幅をa及びa’を選択する。それぞれa及びa’は、信号ノイズ比を大きくとるために特許文献1に記載されている「圧力に対する作用点」よりも大きなロックイン検波波形の振幅を得られるように選ぶことができる。
このような波長変調振幅の選択方法について説明する。図6は複数の波長変調振幅の選び方を説明している。波長変調振幅aとa’は、複数の異なるガスにより組成された校正ガスのいずれかに対して、ロックイン検波波形の振幅が最大となるように調整されている。すなわち、波長変調振幅aは、圧力広がりによるスペクトル線幅γを有する校正ガスにおいてロックイン検波波形の振幅Aが最大のAmaxとなるように調整されている。また、波長変調振幅a’は、圧力が高いときの圧力広がりによるスペクトル線幅γを有する校正ガスにおいてロックイン検波波形の振幅A’が最大のAmax’となるように調整されている。
このような波長変調振幅aとa’を選択する利点は二つある。ひとつは、校正ガスの複数ガスの組成を定めておけば、波長変調振幅が一意に定められるため、波長変調振幅設定の曖昧さを排除できることである。
もうひとつは、校正ガスの複数ガスの組成が、測定対象空間内のガスの圧力広がりの変動範囲(標準圧力から圧力が高くなるような変動)を模擬するようになっていれば、たとえ測定対象空間内のガスの圧力広がりが変動しても、いずれか一方のロックイン検波波形の振幅は最大またはそれに近い値をとるため、ガス濃度測定の信号ノイズ比の劣化が最小限に抑えられることである。ここではガス圧は高くなることが前提となっている。ただし、これは波長変調振幅の一例を示すものであり、必ずしもガス圧は高くなることに限定するものではない。複数の波長変調振幅による測定によって、圧力広がり補正の目的は達せられる。
続いて濃度補正原理について述べる。波長変調振幅をaのみで測定した場合、ロックイン検波波形の振幅はA,Aの間で変動するため、これが見かけ上の濃度変動、すなわち誤差となる。そこで、異なる波長変調振幅a’でロックイン検波波形の振幅をも取得し、見かけ上の濃度変動を補正することを考える。このことを説明するために図4、図5を用いる。
図4は図3の見方を変えたグラフであり、横軸はスペクトル線幅、縦軸はロックイン検波波形の振幅である。異なる波長変調振幅でロックイン検波波形の振幅を取得すれば、異なるスペクトル線幅依存性が得られることがわかる。
そこで、同じスペクトル線幅に対する、異なる波長変調振幅におけるロックイン検波波形の振幅の比をR=A’/A(ただし、n=0,1,2)としてグラフを描くと図5のようになる。図5のグラフより、Rはスペクトル線幅に対して変化することがわかる。そこで、RとRとの差分を演算し、適当な係数をかけてAに加算することにより、見かけ上の誤差を補正することができる。ΔR=R−R、補正係数をα(γ)とすれば、A”=A+α(γ)×ΔRを表すことができる。ここで、補正係数α(γ)はγの関数である。
例えば、低圧時の圧力広がりによりスペクトル線幅が狭いγである場合、n=1を選択し、図5に示すようにΔR=R−R=A’/A−A’/A、補正係数をα(γ)とすれば、A”=A+α(γ)×ΔRと表すことができる。したがって、補正係数α(γ)、および、スペクトル線幅がγのときのA、A’がすでに知られていて、例えば受光信号処理部21の記憶部に保存されていれば、スペクトル線幅がγの場合であって波長変調振幅aのときのAと波長変調振幅a’のときのA’を測定し、補正係数α(γ)にγを代入してα(γ)を算出し、前記の補正式に値を代入することで見かけ上の濃度変動を補正した濃度A”を算出することができる。
また、高圧時の圧力広がりによりスペクトル線幅が広いγである場合、n=2を選択し、図5に示すようにΔR=R−R=A’/A−A’/A、補正係数をα(γ)とすれば、A”=A+α(γ)×ΔRと表すことができる。したがって補正係数α(γ)、および、スペクトル線幅がγのときのA、A’がすでに知られていて、例えば受光信号処理部21の記憶部に保存されていれば、スペクトル線幅がγの場合であって波長変調振幅aのときのAと波長変調振幅a’のときのA’を測定し、補正係数α(γ)にγを代入してα(γ)を算出し、前記の補正式に値を代入することで見かけ上の濃度変動を補正した濃度A”を算出することができる。
補正係数α(γ)は、あらかじめ他ガスの組成や濃度が異なる複数種類の校正ガスによる校正によって取得することができる。あるいは、吸収線スペクトルの関数形をローレンツ関数近似すれば、計算機によるシミュレーションでも近似値を得ることが可能である。これらの手段で得られた補正係数を用いて、測定時には波長変調振幅を切り替えながらロックイン検波波形の振幅を測定すればよい。検出原理はこのようなものである。
続いてレーザ式ガス分析計による分析処理について説明する。まず、受光信号処理部21は、校正ガスのガス分析を行って予め補正情報を登録する。
この補正情報の登録の詳細について説明する。あらかじめ既知の濃度の測定対象ガスを含み、かつ、その他のガスの組成や濃度が異なるように構成された複数の校正ガスを煙道内で流し、この校正ガスに対して上記のガス分析を行って得られる補正情報である。
まず、スペクトル線幅γとなる校正ガスを用いる。発光部10で、測定対象ガスの光吸収波長λであって波長変調振幅がaであるレーザ光を照射する。受光信号処理部21は、ロックイン検波波形からスペクトル線幅γの状態で高さAを取得する。続いて、測定対象ガスの光吸収波長λであって波長変調振幅がa’であるレーザ光を照射する。受光信号処理部21は、スペクトル線幅γの状態でロックイン検波波形から高さA’を取得する。
そして、濃度を調整してスペクトル線幅γとなる校正ガスを用いて、波長変調振幅がaであるレーザ光を照射してロックイン検波波形からスペクトル線幅γの状態で高さAを取得する。同様に波長変調振幅がa’であるレーザ光を照射してロックイン検波波形からスペクトル線幅γの状態で高さA’を取得する。
そして、濃度を調整してスペクトル線幅γとなる校正ガスを用いて、波長変調振幅がaであるレーザ光を照射してロックイン検波波形からスペクトル線幅γの状態で高さAを取得する。同様に波長変調振幅がa’であるレーザ光を照射してロックイン検波波形からスペクトル線幅γの状態で高さA’を取得する。
これら数値と上記の式からスペクトル線幅γを変化させて得た実測による補正係数α(γ)を取得する。また、補正係数α(γ)についてはあらかじめコンピュータ等の計算機によって求められた補正情報としても良い。以上算出したスペクトル線幅がγのときのA、A’およびα(γ)という補正情報を工場出荷時や現場設置時に取得し、予め登録しておく。受光信号処理部21は、このような補正情報を記憶している。
つまり、受光信号処理部21の図示しないメモリには、rと、このrに対応する補正係数α(γ)と、が関連づけられて登録されている。rの値を変えて多数の組み合わせが登録されている。ロックイン検波波形からrが算出されたならば、対応する補正係数α(γ)を読み出すことができる。
また、工場出荷時や現場設置時にAやA’が計測され図示しないメモリに登録されているものとする。
続いて分析を開始する。受光信号処理部21は、複数の波長変調振幅に各々対応するロックイン検出された複数の波形の振幅に基づき、複数の波形の振幅および補正情報に基づいてガス濃度の圧力依存性を補正する。
具体的には以下のようになる。ここに測定対象ガスを含むガスが煙道内を流れ、他のガスの影響で圧力が高いものとする。まず、発光部10のレーザ素子12が、測定対象ガスの光吸収波長λであって波長変調振幅がaであるレーザ光を照射する。 まず、受光信号処理部21は、ロックイン検波波形からスペクトル線幅γと高さAを取得する。
続いて、受光信号処理部21が発光部側の変調光生成部11へ通信線30を介して波長変調振幅をaからa’へ切り換える切換信号を送り、変調光生成部11を介してレーザ素子12が測定対象ガスの光吸収波長λであって波長変調振幅がa’であるレーザ光を照射する。受光信号処理部21は、ロックイン検波波形からスペクトル線幅γと高さA’を取得する。
受光信号処理部21は、線幅γから係数α(γ)を読み出す。
受光信号処理部21は、既知のR=A’/Aと実測したR=A’/AからΔR=R−Rを算出する。
受光信号処理部21は、A”=A+α(γ)×ΔRを演算してA”を算出する。このA”をロックイン検波波形の振幅とする。
受光信号処理部21は、ロックイン検波波形の振幅A”を用いてガス濃度を算出する。さらに、ガス濃度の値が所定の値以下ならばガスがないと検知できる。このようにしてガス濃度やガスの有無が検出される。なお、圧力が低い場合も同様の分析を行う。
以上、本発明のレーザ式ガス分析計1について説明した。このようなレーザ式ガス分析計では、圧力依存性に配慮したガス分析を行うため、正確なガス濃度を算出することができる。
本発明のレーザ式ガス分析計は、車・船等の内燃機関の排ガス(除テスタ)、防災[爆発性ガス検知、有毒ガス検知、新建築材燃焼ガス分析]、植物育成用、化学用分析[石油精製プラント、石油化学プラント、ガス発生プラント]、環境用[着地濃度、トンネル内濃度、駐車場、ビル管理]、理化学各種実験用などの分析計としても有用である。
1:レーザ式ガス分析計
10:発光部
11:変調光生成部
12:レーザ素子
13:コリメートレンズ
14:発光部窓板
15:発光部容器
20:受光部
21:受光信号処理部
22:受光素子
23:集光レンズ
24:受光部窓板
30:通信線
40: 検出光
50a,50b:壁
51a,51b:フランジ
52a,52b:光軸調整フランジ

Claims (4)

  1. 波長可変レーザ分光法及び波長変調光分光法により、測定対象空間に存在する測定対象ガスのガス濃度を測定するレーザ式ガス分析計であって、
    前記測定対象ガスの吸収線スペクトルの光吸収波長を含む波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子と、
    前記測定対象ガスの吸収線スペクトルの光吸収波長を含む波長帯域で波長が掃引され、かつ変調されるように駆動電流を前記レーザ素子に供給する変調光生成部と、
    を有する発光部と、
    前記測定対象空間を通過した前記レーザ光を受光する受光素子と、
    前記受光素子から出力された検出信号に対し、前記変調周波数の2倍の周波数でロックイン検出して得た波形の振幅に基づいてガス分析を行う受光信号処理部と、
    を有する受光部と、
    を備え、
    前記変調光生成部は、複数の波長変調振幅による波長掃引を行うように駆動電流を出力し、
    前記受光信号処理部は、予め補正情報を登録し、前記複数の波長変調振幅に各々対応するロックイン検出により得た複数の波形の振幅、および、補正情報に基づいてガス濃度の圧力依存性を補正することを特徴とするレーザ式ガス分析計。
  2. 請求項1に記載のレーザ式ガス分析計であって、
    前記複数の波形の振幅の圧力依存性は、あらかじめ既知の濃度の前記測定対象ガスを含み、かつ、その他のガスの組成や濃度が異なるように構成された複数の校正ガスによって得られる補正情報に基づきそれぞれ補正されることを特徴とするレーザ式ガス分析計。
  3. 請求項1に記載のレーザ式ガス分析計であって、
    前記複数の波形の振幅の圧力依存性は、あらかじめ計算機によって求められた補正情報に基づきそれぞれ補正されることを特徴とするレーザ式ガス分析計。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ式ガス分析計であって、
    前記複数の波長変調振幅は、前記複数の校正ガスにおけるロックイン検出検波波形の最大振幅となるように調整されることを特徴とするレーザ式ガス分析計。
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