JP2017122070A - 歯科用フレーム、該フレームを使用した歯科用補綴物、ならびに歯科用補綴物の作製方法 - Google Patents

歯科用フレーム、該フレームを使用した歯科用補綴物、ならびに歯科用補綴物の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 支台模型に対して形状適合性の良好な歯科フレーム材を提供する。【解決手段】 本発明は、複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合されている構造物からなる歯科用フレームである。前記樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、連続繊維はガラス繊維、炭素繊維、又はセラミックス繊維であることが好ましく、柱状物の断面積は、0.005mm2〜3.0mm2であることが好ましい。本発明の歯科用フレームは、さらに歯科用修復材料を積層することで歯科用補綴物とすることができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科用フレームに関する。詳しくは、高強度の歯科用補綴物に用いられる歯科用フレーム、ならびにその簡便な作製方法に関する。
従来、歯科用金属として金銀パラジウム合金等が使用されてきたが、貴金属価格の高騰、審美性、金属アレルギーの観点から、代替材料の開発が求められている。レジン系の材料は、対合歯への摩損性が低く、口腔内での修復が容易などの理由から、近年その用途が拡大しているが、機械的強度の観点からは、金属代替できるまでに至っていない。
レジン系材料でガラス繊維による機械的強度の向上が試みられている。
例えば特許文献1では、以下の技術が開示されている。
複数の無機繊維束よりなる連続無機繊維基材(A)及び水素結合部位を有する結晶性熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂複合シートからなる歯科用補綴物作製用フレーム材。
この特許は、あらかじめ成形された繊維強化樹脂複合シートをプリプレグとして使用し歯科用補綴物用フレーム材を作製するもので、水素結合部位を有する結晶性熱可塑性樹脂を用いることを特徴とする。これにより、高強度、高剛性の歯科用補綴物が簡便な方法で作製でき、該複合シートを加熱成形により羽状構造や箱状構造などの立体構造を示すように成形してフレーム材として使用することで、更に高い強度を得ることができるとある。
しかし、同公報に記載の繊維強化樹脂複合シートを成形して得られるフレーム材は、強度の向上の観点からは有効かもしれないが、個々人の治療対象の支台歯(あるいは支台歯の模型)の屈曲部においてたわみが発生しやすいなど立体構造に成形した際の各支台歯に対する形状追随性が不十分であった。歯科用フレーム材の設計においては、応力が集中するなどの位置に繊維を一構成要素とするフレーム材を適切に配置させることが耐久性の観点から重要である。すわわち、歯科用フレーム材を支台歯の表面形状にすきまを極力低減させるよう適合させることにより、さらなる強度・耐久性の向上が達され得る。従来の歯科用フレーム材は支台歯に対する適合性が十分ではなかったり、応力が集中する部位に繊維を適切に配置できなかったりするという問題があった。
特開2015−98450号公報
本発明は、高い強度と剛性を有し、支台に対する形状適合性が良好であることにより耐久性に優れる歯科用フレーム、該フレームを使用した歯科用補綴物、ならびに歯科用補綴物の作製方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、連続繊維と樹脂を複合化して構成される柱状物を基本構成単位として、これを複数接合して得られる構造物をフレーム材として使用することによって、高い強度と剛性が得られ、形状再現性が良好な歯科用フレームを簡便な方法で作製することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合されている構造物からなる歯科用フレームである。
本発明においては、前記樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明においては、前記連続繊維がガラス繊維、炭素繊維またはセラミックス繊維であることが好ましい。
本発明においては、前記柱状物が断面積0.005mm〜3.0mmの円柱状もしくは楕円柱状であることが好ましい。
本発明においては、前記歯科用フレームを含む歯科補綴物であることが好ましい。
本発明の好ましい一実施態様は、支台模型の表面形状に適合する上記した複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合されている構造物からなる歯科用フレームを作成する工程、及び該歯科用フレーム上に歯科修復材料を積層する工程を含む歯科用補綴物の製造方法である。
本発明によって、最適な位置に繊維が配置され、高強度、高剛性で適合性に優れた歯科用補綴物が、簡便な方法で作製できる。
複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合された本発明の歯科用フレームの一部分を示した模式図。 支台の表面上に本発明の歯科用フレームを適合させた状態の模式図。 中央部が円弧状に屈曲した形状の歯科用フレームの模式図
1 連続繊維
2 柱状物
3 接合部
4 柱状物
5 歯科用フレーム
6 支台
本発明の歯科用フレームは、複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合されている構造物からなる。
本発明の歯科用フレーム(以下、本発明のフレームとも略す)とは、主として歯科用補綴物に使用される材料であって、機械的強度や耐久性を補強することを目的として補綴物構造体の一部を構成する強化部材を表す。補綴物全体の強度を補強するために、応力が集中しやすいなど特に強度が要求される箇所、例えば支台の直上の支台の形状に適合する位置に配置されることが好ましい。
本発明における歯科用補綴物とは、歯や歯に関連する組織の欠損によって生じる顎口腔系の機能障害、審美性を回復することを目的として用いられる人工物である。具体的には、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジ、義歯(全床、部分床)、人工歯、インプラント上部構造体、インプラントアバットメントを指す。本発明は特に高い機械的強度が必要とされるブリッジに好適である。
本発明における柱状物とは、複数の連続繊維と樹脂からなる複合材が、断面と長さを有する一方向の指向性を持つ柱状に形成されたものである。連続繊維はこの柱状の長さ方向に配向している。この柱状物を複数接合することによって歯科用フレームが作製される。
本発明で用いる繊維は、複数の連続繊維からなる。ここで、連続とは繊維が柱状物の一端から他端まで切れ目なく存在することである。複数とは連続繊維の糸が少なくとも2本以上であることを意味する。
本発明に用いる繊維の材質としては特に制限はなく、炭素繊維、ガラス繊維、樹脂繊維、セラミック繊維、等が使用可能である。高強度、高剛性の歯科用フレームが得られることから、炭素繊維、ガラス繊維、またはセラミック繊維が好ましい。審美性が高いことから、ガラス繊維、またはセラミック繊維が好ましい。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維など、ガラス繊維としてはEガラス、Cガラス、Sガラス、Rガラス、Dガラス、ARガラス、Tガラス、NCRガラス、NEガラス、S2ガラスなど、樹脂繊維としては、ナイロン樹脂、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維など、セラミック繊維としては、ジルコニア繊維、シリカ繊維などが挙げられる。
本発明の連続繊維としてガラス繊維やセラミック繊維を用いる場合、樹脂とのなじみを改善したり強度を向上させたりするために表面処理を行うのが好ましい。樹脂とのなじみが良くなると、柱状物中の気泡が少なくなるなどのメリットがある。また、連続繊維と樹脂の密着性が増し水などの低分子化合物の侵入を抑制することができるため長期耐久性の向上に貢献する。表面処理方法としては、コーティング処理、エッチング処理、コンディショニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、加熱処理、サンドブラスト等の機械的処理、プライマー処理、カップリング処理等が適用でき、これらを組み合わせてもよい。使用する表面処理剤は、繊維及び樹脂の相性の観点から適宜選択すればよい。繊維がシリカ繊維、ガラス繊維の場合はシランカップリング剤による表面処理が好ましい。表面処理剤は単体で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
繊維に対する表面処理剤の量は、繊維の比表面積や物性の予備試験等の結果から適宜決定すればよいが、一般には繊維100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲から選択される。表面処理の方法も、繊維に表面処理剤の水溶液やアルコール溶液を噴霧し撹拌後加熱乾燥する方法(乾式処理法)、水やアルコール等に繊維を浸漬したものに表面処理剤を添加し所定時間後に繊維を回収して加熱乾燥する方法(湿式処理法)、インテグラルブレンド法等の、公知の方法を制限なく使用することができる。
本発明の連続繊維の直径は1〜100ミクロンが好ましく、4〜25ミクロンがより好ましい。直径が大きすぎると、任意の形状にたわませることが困難となる。直径が小さすぎると、樹脂の含浸性が低下する。
本発明の連続繊維の製造方法は、公知の方法が制限なく使用できる。
本発明に記載の樹脂は、複数の連続繊維が柱状物中に分散するマトリックスの役割を果たしている。樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれも使用可能であるが、柱状物の取り扱いが容易であること、歯科用フレームの生産性が高いことから熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂を具体的に例示すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ尿酸、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー、などが挙げられる。歯科用フレームとして生体安全性が高いことから、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトンが好ましい。高強度、高剛性を得られることから、ポリアリールエーテルケトンが特に好ましい。ポリアリールエーテルケトンを例示すれば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
本発明の樹脂の分子量について特に制限はなく、本発明の効果が得られるような分子量の樹脂を適宜選択して使用すればよいが、口腔内における高い耐久性を得るために、重量平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。なお、樹脂の分子量の測定にはゲル浸透クロマトグラフィーが用いられる。測定条件は、対象となる樹脂の性質によりカラム、溶媒、温度等を適宜選択すればよいが、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用い、ポリメチルメタクリレートを分子量標準物質として相当する重量平均分子量を算出する方法が使用できる。
本発明に用いる樹脂の製造方法は公知の方法が制限なく使用できる。 本発明の柱状物は長手方向の両端が長手方向に対して略垂直に切断された断面となっており、その断面形状は、円形、楕円形、矩形、多角形、または任意の形状でよい。その中でも、本発明の柱状物は、円形の断面を有する円柱状もしくは楕円形の断面を有する楕円柱状であることが好ましい。図1には、本発明の歯科用フレームの一部分を模式的に示しており、3つの円柱状の構造体のそれぞれが柱状物であり、該柱状物は、複数の連続繊維(図1中、記号1として紙面手前に黒点として表示されている)と該連続繊維間に存在している樹脂(図示せず)とから構成されている。本発明の柱状物の断面積は、0.005mm〜3.0mmであることが好ましい。さらに好ましい断面積は0.01mm〜1.5mmである。断面積が大きすぎると形状追随性が低下する。断面積が小さすぎると歯科用フレームの作製時間が長くなる。
本発明の柱状物における繊維と樹脂の割合は、柱状物全体を100体積%とした場合に、樹脂が10〜90体積%であることが好ましく、30〜60体積%であることがより好ましい。樹脂の割合が少なすぎると、繊維の隙間への樹脂の含浸が不十分となり内部にボイドが発生したり加工時に十分な形態保持性や適合精度が得られなくなったりする虞があり、樹脂の配合割合が多すぎると、十分な補強効果が得られず機械的強度が低くなる虞がある。
本発明の1本の柱状物に含まれる複数の連続繊維(糸)の本数は10〜100000本であることが好ましく、100〜10000本であることがより好ましい。
本発明の柱状物の長手方向の長さは特に制限されず、たとえばリールに収納した柱状物を適宜所望の長さに切断して使用することができる。また、切断せずに折り返した柱状物同士を接合しながらこれを繰り返して歯科用フレームを作製した場合、長さは極めて長いものとなる。好適な長さを例示すれば、5mm〜1000mmである。
本発明の柱状物には、使用目的に応じてその他の成分を適宜添加することができる。たとえば、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、重金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、X線像影剤、顔料、蛍光剤、光輝顔料、充填剤等を使用目的に応じた添加量で添加することができる。
本発明の柱状物の製造方法については特に制限されず、任意の方法が使用可能である。柱状物の製造方法においては、柱状物の形状を規定する工程、樹脂を繊維に含浸させる工程、に分類することができる。これらは別々に行ってもよく、同時に行ってもよく、順序が前後してもよく、各工程を繰り返し行ってもよい。樹脂の含浸方法としては、樹脂を溶融状態で複数の連続繊維からなる束へ含浸させる工程を経て製造されてもよいし、樹脂の原料となる液状の化合物と、必要に応じて触媒を連続繊維からなる束へ含浸させた後に重合硬化することで含浸させてもよい。含浸の際は、常圧、加圧、減圧のいずれの環境下で行ってもよい。連続繊維を樹脂に浸漬する前に予備加熱してもよい。
たとえば、複数の連続繊維を柱状物の幅に束ねておいて柱状物の略形状を形成させておき、これに樹脂を含浸させることで柱状物を作製することができる。このとき、溶融した樹脂中に連続繊維を浸漬して引き上げることで含浸させてもよい。また、所定の配合比となるように調整された溶融した線状の樹脂流中に連続繊維を導入することで含浸させてもよい。この場合、余剰の樹脂を用いることなく所望の配合比の柱状物を調製することができる。また、連続繊維と樹脂の複合体を作製したのちに、これを長さ方向に裁断することで柱状物を作製することもできる。
本発明のフレームは、連続繊維と樹脂からなる柱状物を接合した構造体からなる。接合とは柱状物同士が溶着もしくは接着した状態であり、柱状物間に接合面による共有層を有している。接合の様式としては、熱溶融による溶着でもよいし、接着剤を介した接着でもよい。均一な歯科用フレームを形成しやすいことから溶着によるものであることが好ましい。また、接合面の接合強度は樹脂単体の強度と同等以上であることが好ましい。このように、柱状物同士は互いに接合されており、該接合されて作成された歯科用フレーム材は巨視的にみれば、種々の立体形状(後述する、L字状、コの字状など)のシートであるが、微視的にみれば、通常の表面粗さの小さいシートとは異なり、表面が一定の凹凸構造を有している。表面の凹凸構造は、複数の柱状物が接合されている構造に起因しており、例えば、柱状物が円柱状や楕円柱状である場合は、凹凸構造は(楕)円周形状に基づく角のない凹凸構造である。このような独特な表面構造を有することにより、歯の支台の形状が部分的に凹凸であったり、角が丸みを帯びていたりなど、複雑な構造をしていても、形状適合性のよい歯科用フレームとすることが可能となる。
本発明のフレームを形成するための柱状物の本数は、柱状物の幅やフレームの大きさによるため一概に規定できないが、1本の柱状物を折り返しながら接合した構造体、もしくは2〜500の柱状物が接合した構造体であることが好ましい。
本発明のフレームの大きさは特に制限されないが、幅が1〜100mm、長さが5〜100mm、厚みが0.1〜20mmの範囲から選択されるのが好ましい。本発明のフレームの形状は、歯科用補綴物の用途や患者の個人差の影響で異なる。
本発明のフレームは歯科用補綴物用として好適である。本発明のフレーム単体で補綴物を作製することは、外観や繊維の露出の観点から好ましくなく、積層材や被覆材等のその他の材料と組み合わせて使用されることが好ましい。本発明のフレームは歯科用補綴物の補綴物全体の10%〜70%の体積を占める事が好ましい。特に好ましい範囲は、20〜50%の体積範囲である。前記の積層材や被覆材を具体的に例示すれば、次に示すような歯科修復材料が挙げられ、例えば、常温重合レジン、裏層材、表面光沢材、コンポジットレジン、硬質レジン、ハイブリッド型硬質レジン、ガラスセラミックス、ポリアミドやポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ジルコニアやアルミナなどの酸化物セラミックス等が挙げられるが、接着性が良好で弾性係数が近似していることから、コンポジットレジン、硬質レジン、ハイブリッド型硬質レジンが好ましい。また、これら積層材や被覆材をフレーム材に接着させる場合は適当な接着性組成物を使用することが好ましく、公知の歯科用接着性組成物が使用できる。フレーム材は良好な外観を得るために、またガラス繊維の補綴物表面での毛羽立ちによる外観低下や皮膚などへの刺激を抑制するために、表層に表れないように使用されるのが好ましい。
本発明のフレームにおける柱状物の配向方向は、目的とする歯科補綴物の補強設計によって異なるため一概に規定できないが、咬合等の応力負荷方向に対して垂直方向になるように配向されるのが、補強効果が高いことから好ましい。また、本発明のフレームの形状の長さ方向(最も長さが長い方向)に対して平行方向になるように配向されるのが、補強効果が高いことから好ましい。
また、柱状物が特定の立体構造を示すように成形したフレームとすることによって、更に高い強度を得るような設計も可能である。本発明の柱状物はその長さ方向に連続繊維が配向しているため、柱状物の配向を変えることによって、連続繊維の配向を任意に調製し、高強度化することができる利点を有する。例えば、柱状物を長さ方向に円弧状や矩形状に接合させて歯科用フレームとして使用してもよい。歯科用補綴物は咬合力等の応力が負荷された場合に引っ張り方向の応力がかかる部位が破折の起点となる場合が多く、当該部分を補強するように、柱状物を接合させて歯科用フレームとするのは歯科用補綴物の強度を高める上で好ましい。このような応力負荷部位を特定する方法としては、予め同一形状のモデルを作製しておき応力負荷をかけた際の破壊挙動を観察する方法や、有限要素法を用いる方法が挙げられる。好ましい歯科用フレームの形状を例示すれば、歯科用フレームの長さ方向の中央部が略円弧状に屈曲しており、この略円弧の曲率半径が5〜30mmであり、柱状体が歯科用フレームの長さ方向に平行に配向しており、歯科用フレームの幅が2〜5mm、長さが10〜30mmである。
また、柱状物の長さ方向に平行に屈曲した羽状構造を有する事によって側面を補強するような構造になるよう柱状物を接合してもよい。本発明の柱状物からなる歯科用フレームはこの屈曲部における形状追随性が良好であるという特徴を持つ。羽状構造としては、L字状に成形された立体構造、コの字状に成形された立体構造、更には側面全てが囲まれた箱状に成形された立体構造等が挙げられる。最も好ましい形状は、模型などの設計上の形状に追随して形成された歯科用フレームである。更に、山型、谷型、凸型、凹型、山谷構造の繰り返し構造、凹凸構造の繰り返し構造やこれらの一方向、縦横方向の組み合わせによる立体構造パターン、例えばベローズ構造、ダイヤカット構造(吉村パターン、PCCPシェル構造)、ディンプル構造等が例として挙げられる。
本発明の歯科用フレームの作製方法としては、たとえば、作製したい形状の模型、例えば、治療対象の歯の支台の印象を採取し作成した模型を予め準備しておき、その上に熱源や溶媒を用いて溶融させた柱状物を接合させながら積層し、最後に柱状物を切断する方法などが挙げられる。本発明のフレームの作製は手作業で行ってもよいが、精密な構造を簡便に作製することができることから、コンピューター支援設計(CAD)およびコンピューター支援製造(CAM)を使用して作成することが好ましい。この場合、最適な柱状物の配置と配向をあらかじめCADで設計しておき、この三次元モデルデータをもとに、CAMを用いてフレームを作製すればよい。CAMとしては付加製造法(Additive Manufacturing)が好適に使用できる。たとえば、溶融状態の柱状物が規定量排出されるヘッド部と、歯科用フレームを作製するための基台部からなっており、ヘッド部、基台部、もしくはその両方がCADデータに基づいて三次元に移動もしくは回転する。溶融状態の柱状物が基台部上で固化することによって所望の立体構造を作製することができる。
本発明の歯科用フレームはその他の歯科用補綴物作製用材料と組み合わせて使用することで歯科用補綴物とすることが好ましい。具体的態様としては、支台模型の形状に適合するように上記した方法により歯科用フレームを作成し、その後、該歯科用フレーム上に、その他の歯科用補綴物作製用材料を積層し歯科用補綴物を作成することができる。その他の歯科用補綴物作製用材料としては、公知のものを目的に応じて使用することができる。例えば、歯科修復材料として公知の歯科用硬化性組成物(コンポジットレジン、硬質レジン、常温重合レジン等)、歯科用ミルブランク、歯科用切削加工用レジン組成物、歯科用切削加工用セラミック組成物を所望の形状に切削加工したもの、人工歯、義歯床、義歯用の係留部材用の材料、裏層材と組みわせて使用できる。
具体的な例を挙げれば、歯科用硬化性組成物としては、一般的に重合性単量体、充填材(フィラー)、重合開始剤から構成され、これらを混合練和し脱泡したものを歯科用硬化性組成物として供する。これを本発明の歯科用フレーム上に築盛し、光重合や化学重合などによって適宜重合硬化し、歯科用補綴物を作製することができる。このとき、歯科用フレームと歯科用硬化性組成物が強固に接着するように、コーティング処理、エッチング処理、コンディショニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、加熱処理、サンドブラスト等の機械的処理などの前処理を行ったり、プライマーや接着剤を使用したりしてもよい。プライマーや接着剤としては公知の歯科用接着性組成物が使用できる。
歯科用ミルブランク、歯科用切削加工用レジン組成物、歯科用切削加工用セラミック組成物の場合、あらかじめブロック状やディスク状に硬化形成されているのが特徴である。この成形体を、CNCやCADCAM装置等を用いて歯科用フレーム上に適合するようにコンピューター上でデザインされた形状に切削加工し、接着剤やセメントを用いて、歯科用補綴物フレームと切削加工物を接着、合着することで歯科用補綴物を作製することができる。プライマー、接着剤、セメントとしては公知の歯科用接着性組成物が使用できる。このとき、前記した前処理を行ってもよい。また、歯科用ミルブランク、歯科用切削加工用レジン組成物、歯科用切削加工用セラミック組成物中に予め本発明の歯科用フレームをインサート成形などの手法を用いて所望の位置に一体化したものを使用してもよい。このとき、本発明のフレームの最適な配置はソフトウェア上で行うのが好ましい。
熱可塑性樹脂をベースとした歯科用補綴物の場合、熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂には、ガラス短繊維、ウィスカ、無機フィラー、天然鉱物、顔料等があらかじめ充填されていてもよい。これらは通常あらかじめ所望の形状に成形されているか、ペレット、パウダー、フィルム、シート等の形態として入手することが可能であり、これを原料として、圧縮成形、射出成形、真空成形等の方法によって所望の形状に加工成形することができる。このとき本発明の歯科用フレームとの一体化方法としては、成形用の金型にあらかじめ配置されてインサート成形を行う方法や、シートやフィルムを歯科用補綴物フレーム上から被せて圧縮成形を行う方法や、溶融した熱可塑性樹脂を歯科用補綴物フレームの設置された金型内に流しこんで圧縮成形する方法等が挙げられる。
本発明の歯科用フレームをこれら歯科用補綴物作製用材料と組み合わせて使用した場合、本発明のフレームは柱状物が接合した立体構造をとっているため、柱状物の幅を繰り返し単位とした凹凸が表面に形成されていることから、この凹凸に接着性組成物が入り込むことで接着強度が高くなるという利点を有する。
本発明の歯科用フレームの歯科用補綴物における配置箇所は、目的に応じて適宜決定すればよいが、前記した例のように、歯科用補綴物で最も応力が集中する場所が補強されるように配置してなる事が好ましい。例えば、歯列に咬合力がかかるような補綴物の場合、歯列の近心遠心方向に歯科用フレームの長さ方向が一致するように、また咬合面に対して歯科用フレーム面が垂直方向となるように配置されるのが好ましい。また、歯科用補綴物のある箇所で圧縮応力、別の場所で引っ張り応力が負荷されるような場合、引っ張り応力が負荷される場所に歯科用フレーム材が配置されるのが好ましい。例えば、歯科用補綴物のブリッジに咬合力によって曲げ応力が負荷された場合、中心のポンティック部分に応力が集中し、特に引っ張り応力のかかるポンティック下部から連結部にかけて破折しやすいため、ポンティックの下部を通すようにフレームが配置されるほうが高い耐久性が得られやすい。このような応力負荷部位を特定する方法としては、予め同一形状のモデルを作製しておき応力負荷をかけた際の破壊挙動を観察する方法や、有限要素法を用いる方法が挙げられる。 また、前記した歯科用フレームの作製方法と同様、歯科用補綴物をコンピューター支援設計(CAD)およびコンピューター支援製造(CAM)を使用して作製してもよい。歯科用フレームの設計および作製とその他の歯科用補綴物作製用材料の設計および作製を同時に行ってもよい。CAMとしては付加製造法(Additive Manufacturing)が好適に使用できる。たとえば、歯科用フレームに使用している樹脂を主成分とする連続繊維以外の成分とその他の歯科用補綴物作製用材料に使用している樹脂を主成分とする成分として同一のものを使用し、歯科用フレームの作製ののち、連続繊維の供給を止めることで、連続して一体の歯科用補綴物を作製してもよい。付加製造法の製造装置としては連続繊維の供給が容易であることから熱溶解積層法方式による装置を用いることが好ましい。熱溶解積層法では、溶解した樹脂に連続繊維を直接導入することで本発明の柱状物を得ることができる。
例えば、以下の方法で歯科用補綴物を作製することができる。
先ず、歯科医師により、患者の口腔内に支台が形成される。たとえば、歯を削って支台が形成される。次に、歯科医師により支台、隣接歯、対合歯等の印象が採得される。印象の採得は、アルジネート系印象材、シリコーン系印象材、デジタル印象装置などを用いて行われる。その後、歯科技工士または歯科医師により、採得された印象から模型が作製され、スキャニングマシーンを用いて模型の形状がデジタル化される。または、デジタル印象で採得されたデータからデジタル模型が作製される。次いで、計測データをもとに設計用ソフトウェアを用い、歯科用補綴物のデジタルデータが作成される。ここで、柱状物の配置や歯科用フレームの形状が設計される。補綴物のデジタルデータに基づき、積層造形機などの加工機用の加工用データが作成される。その後、柱状物を加工機に設置し、歯科用フレームを作製する。なお、デジタルデータに基づき、歯科用フレームを作製する際には熱溶解積層法が好適に使用できる。次いで得られたフレームに対し、必要に応じてサンドブラストやプライマー等の前処理を行う。歯科用補綴物作製用材料としてたとえば硬質レジンを用いて歯冠形態に築盛し、重合硬化を繰り返すことで積層し、歯冠形態を回復する。これによって、歯科用補綴物が作製される本発明の一様態では、本発明の柱状物が歯科医師や歯科技工士に提供され、この歯科用フレームを用いて歯科用補綴物が作製され、患者の口腔内に接着、合着される。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
連続繊維として直径10ミクロンガラス繊維、樹脂としてABS樹脂を用いて0.2mmの断面積を有する円柱状の柱状体を作製した。下顎6番欠損3本ブリッジ用の支台模型を作製し、この上に加熱で樹脂を溶解させることによって部分的に順次軟化させた柱状物を支台の歯列方向に沿って接合させながら積層し、最後に柱状物を切断することで歯科用フレームを作製した。この歯科用フレームは形状追随性に優れており支台模型に対する適合性が高かった。
比較例1
連続繊維として直径10ミクロンガラス繊維、樹脂としてABS樹脂を用いて厚み0.5mmの繊維強化樹脂複合シートを作製した。該シートの表面は、実施例1のような柱状物を接合したものとは異なり、平滑であった。下顎6番欠損3本ブリッジ用の支台模型を準備し、この支台模型の印象をシリコーン印象材で採得し、過剰なバリやアンダーカットとなる部分をトリミングすることでシリコーンモールドを作製した。前記の繊維強化樹脂複合シートを、歯科用フレームを作製するために適当な大きさに裁断し、加熱で樹脂を溶解させることによって全体的に軟化させた繊維強化樹脂複合シートを支台模型に乗せ、シリコーンモールドで圧接した。これを室温まで冷却して歯科用フレームを作製した。この歯科用フレームは、屈曲部にたわみや折り重なり部分が生じており、支台模型に対する適合性が低かった。

Claims (6)

  1. 複数の連続繊維と樹脂とから構成される柱状物が複数接合されている構造物からなる歯科用フレーム。
  2. 前記樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1に記載の歯科用フレーム。
  3. 前記連続繊維がガラス繊維、炭素繊維又はセラミックス繊維である請求項1又は2に記載の歯科用フレーム。
  4. 前記柱状物が断面積0.005mm〜3.0mmの円柱状もしくは楕円柱状である請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用フレーム。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用フレームを含む歯科用補綴物。
  6. 支台模型の表面形状に適合する請求項1〜4のいずれかの歯科用フレームを作成する工程、及び該歯科用フレーム上に歯科修復材料を積層する工程を含む歯科用補綴物の製造方法。
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