本発明の軸受装置は、円環状の小径部と、小径部より大きい半径を有する円環状の大径部と、を含む。小径部の外周面に第1の軌道面が形成された内輪部材と、第1の軌道面と対向する第2の軌道面が内周面に形成され、内輪部材の小径部を覆うように設けられた外輪と、第1の軌道面と第2の軌道面との間の空間に配置される複数の転動体と、内輪部材の小径部と大径部との接続部に形成され、軸方向に垂直な方向に延びる段差面、及び、小径部の外周面に接して設けられ、内輪部材と外輪との間の空間を封止する環状の封止部材と、を備える。封止部材は、内輪部材の小径部に嵌め合わされたスリンガーと、外輪に嵌め合わされたシール部材と、を含む。スリンガーは、段差面に接触しながら軸方向に垂直な方向に延びる円環状の第1部と、第1部の径方向内方の端部と連続し、軸方向で大径部から遠ざかる方向に延びる円筒状の第2部と、第2部の軸方向で大径部とは反対側の端部と連続し、軸方向に垂直な方向に延びる円環状の第3部と、を含む。
上記の構成によれば、スリンガーとシール部材によって、内輪部材と外輪との間の転動体が保持された空間が封止される。スリンガーが軸方向に垂直な方向に延びる第3部を有するので、第3部を圧入面としてスリンガーを内輪部材に圧入することができる。第3部は、第1部よりも径方向内方に位置しているので、スリンガーを内輪部材に圧入するとき、第3部に圧入力を加えると、第1部に圧入力を加える場合に比べて、圧入力によるスリンガーの変形を抑制することができる。スリンガーの変形が抑制される結果、内輪部材と外輪との間の空間の良好な密封性を得ることができる。
本発明の軸受装置の第3部は、第2部の端部から径方向で内方に向かって延びている。スリンガーは、第3部の径方向内方の端部と連続し、内輪部材の小径部の外周面に接触しながら、軸方向で大径部に近づく方向に延びる円筒状の第4部、を含むことが好ましい。
上記の構成によれば、内輪部材の小径部の外周面と接触する第4部が、スリンガーの内輪部材に対する嵌め合い面となる。スリンガーを内輪部材に圧入するときに圧入面となる第3部は、径方向内方の端部がスリンガーの嵌め合い面である第4部と連続しているので、第3部は、圧入力に対して優れた強度を得ることができる。したがって、より良好に圧入力によるスリンガーの変形を抑制することができる。
本発明の軸受装置の封止部材は、第4部の軸方向で大径部側の端部を覆う環状の第1弾性部材、を含んでいてもよい。
軸受装置が設けられた車両等において、カーブ走行時等に車輪が傾くことにより、スリンガーに対して内輪部材が傾斜することがある。このとき、スリンガーの嵌め合い面である第4部と内輪部材との間に隙間が生じ、その隙間を介して、スリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間から、内輪部材と外輪との間の転動体が保持された空間に水分等が浸入することがある。しかしながら、上記の構成によれば、第4部の軸方向で大径部側の端部を覆う環状の第1弾性部材が設けられているので、スリンガーの嵌め合い面である第4部と内輪部材との間に隙間が生じた場合でも、内輪部材と外輪との間の転動体が保持された空間への水分等の浸入を抑制することができる。
本発明の軸受装置のスリンガーは、さらに、第1部の大径部側の表面に設けられた第2弾性部材、を有する。スリンガーは、第2弾性部材が第1部と段差面との間で弾性圧縮された状態となるように、内輪部材に嵌め合わされていてもよい。
軸受装置が設けられた車両等において、カーブ走行時等に車輪が傾くことにより、スリンガーに対して内輪部材が傾斜することがある。このとき、スリンガーの第1部と内輪部材との間に隙間が生じ、その隙間を介して、外部からスリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間に水分等が浸入することがある。しかしながら、上記の構成によれば、スリンガーが第1部の大径部側の表面に設けられた第2弾性部材を有し、第2弾性部材が第1部と段差面との間で弾性圧縮された状態となるようにスリンガーが内輪部材に嵌め合わされている。そのため、スリンガーの第1部と内輪部材との間に隙間が生じた場合でも、第2弾性部材の弾性圧縮が解除されて第2弾性部材の軸方向の大きさが大きくなることにより、スリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間への水分等の浸入を抑制することができる。
なお、本発明の軸受装置では、上記説明したように、スリンガーが第3部を有する結果、スリンガーを内輪部材に圧入するときの圧入力によるスリンガーの変形が抑制される。したがって、スリンガーの第1部と内輪部材の大径部との間の距離を、意図した通りに設計することが容易となる。そのため、上記の第2弾性部材によるスリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間への水分等の浸入の抑制を効果的に行うことができる。
また、本発明の軸受装置のスリンガーは、さらに、第1部の大径部側の表面に設けられたシリコンシート、を有する。スリンガーは、シリコンシートが第1部と段差面との両方に接触するように、内輪部材に嵌め合わされていてもよい。
軸受装置が設けられた車両等において、カーブ走行時等に車輪が傾くことにより、スリンガーに対して内輪部材が傾斜することがある。このとき、スリンガーの第1部と内輪部材との間に隙間が生じ、その隙間を介して、外部からスリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間に水分等が浸入することがある。しかしながら、上記の構成によれば、スリンガーが第1部の大径部側の表面に設けられたシリコンシートを有し、シリコンシートがスリンガーの第1部と内輪部材の段差面との両方に接触するようにスリンガーが内輪部材に嵌め合わされている。そのため、スリンガーの第1部と内輪部材との間に隙間が生じた場合でも、シリコンシートがスリンガーの第1部と内輪部材の段差面との両方に接触した状態を維持することにより、スリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間への水分等の浸入を抑制することができる。
なお、本発明の軸受装置では、上記説明したように、スリンガーが第3部を有する結果、スリンガーを内輪部材に圧入するときの圧入力によるスリンガーの変形が抑制される。したがって、スリンガーの第1部と内輪部材の大径部との間の距離を、意図した通りに設計することが容易となる。そのため、上記のシリコンシートによるスリンガーの第2部、第3部及び第4部並びに内輪部材の間の空間への水分等の浸入の抑制を効果的に行うことができる。
本発明の軸受装置のスリンガーの第3部は、第2部の端部から径方向で外方に向かって延びていてもよい。この場合、スリンガーは、さらに、第3部の径方向外方の端部に連続すると共に、第3部の径方向外方の端部から径方向内方に向かって延び、軸方向に対して垂直な円環状の第5部と、第5部の径方向内方の端部と連続し、内輪部材の小径部の外周面に接触しながら、軸方向で大径部に近づく方向に延びる円筒状の第6部、を含み、第3部及び第5部の連続部分と、シール部材との間には、ラビリンス隙間が形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、第3部及び第5部の連続部分と、シール部材との間に形成されたラビリンス隙間によって、内輪部材と外輪との間の転動体が保持された空間から外部へのグリースの漏れを抑制することができる。ラビリンス隙間によってグリースの漏れを抑制できるので、シール部材にグリースリップを設ける必要がない。したがって、グリースリップの分、シール部材とスリンガーとの接触部分を減らすことができ、結果として、軸受装置が回転するときのトルクを低減することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る車輪用軸受装置1について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、車輪用軸受装置1を示す。車輪用軸受装置1は、内輪部材100と、外輪20と、複数の転動体30と、保持器40と、封止部材50及び60と、を有する。内輪部材100、外輪20、保持器40、封止部材50及び60は、軸心L1を中心とする環状部材である。図1に示すように、車輪用軸受装置1は、軸方向の外方に取付部111が形成され、車輪に接続される。なお、図1において、紙面の左方が車両の外部方向(以下、アウター側、とする。)であり、紙面の右方が車両の内部方向(以下、インナー側、とする。)である。
内輪部材100は、ハブ輪110及び内輪120で構成されている。ハブ輪110及び内輪120は、軸心L1を中心とする環状部材である。内輪120は、ハブ輪110の外周面のうち、軸方向インナー側に固定されている。内輪部材100の外周面101には、2列の軌道面31、32が形成されている。これらのうちのアウター側の軌道面31は、ハブ輪110の外周面に形成されている。インナー側の軌道面32は、内輪120の外周面に形成されている。
図1に示すように、ハブ輪110は、外周面から径方向に広がったつば部112(本発明の「大径部」)を有する。つば部112は、ハブ輪110の全周に亘って連続して設けられたフランジ状の部材である。つば部112は、軸心L1を中心とする環状部材である。つば部112は、軸方向において、軌道面31のアウター側に設けられている。なお、ハブ輪110のうちつば部112以外の部分、及び内輪120が、本発明の「小径部」に相当する。
つば部112のうちの一部は、車輪用軸受装置1を車輪に取り付けるための取付部111となっている。取付部111は、ボルト113等を用いて車輪(不図示)に固定される。なお、取付部111は、例えば、周方向に間隔を空けて、複数個設けられている。
外輪20は、内輪部材100の外周面の一部を覆うように設けられている。具体的には、外輪20は、内輪部材100の外周面のうちハブ輪110のつば部112よりインナー側を覆うように設けられている。図1に示すように、外輪20の内周面には、2列の軌道面33,34が形成されている。2列の軌道面33,34のそれぞれは、ハブ輪110に形成された軌道面31及び内輪に形成された軌道面32のそれぞれに対向するように位置づけられている。軌道面33,34は、軸心L1を中心とする環状の領域である。
複数の転動体30は、軌道面31と軌道面33の間の空間、及び軌道面32と軌道面34の間の空間に配置されている。複数の転動体30は、玉転動体である。複数の転動体30は、保持器40で保持されている。転動体30は、玉転動体の他、ころ転動体等であってもよい。
保持器40は、複数のポケットを備える。保持器40は、複数のポケットのそれぞれに複数の転動体30のそれぞれを収容する。
次に、図2を参照して封止部材50について説明する。封止部材50は、ハブ輪110の外周面101、つば部112,及び外輪20のアウター側の端部に接して設けられている。封止部材50は、スリンガー510と、シール部材520とを含む。封止部材50は、内輪部材100と外輪20との間の空間S1を外部から封止している。
スリンガー510は、第1部511,第2部512,第3部513,及び第4部514を含む。第1部511及び第3部513は、軸心L1に垂直に配置され、軸心L1を中心とする円環状の部材である。また、第2部512及び第4部514は、内輪部材100の周方向に平行な面を有し、軸心L1を中心とする円筒状の部材である。第1部511,第2部512,第3部513,及び第4部514は、一体に形成されている。スリンガー510は、例えば、ステンレス等の金属で形成されている。
第1部511の径方向内方の端部と、第2部512のアウター側の端部とは、連続して形成されている。第2部512のインナー側の端部と、第3部513の径方向外方の端部とは、連続して形成されている。第3部513の径方向内方の端部と、第4部514のインナー側の端部とは、連続して形成されている。
第1部511は、アウター側の表面5113がハブ輪110のつば部112の表面1121aに接して形成されている。
第4部514は、径方向内方の表面がハブ輪110の外周面101に接するように配置されている。第4部514は、ハブ輪110に対するスリンガー510の嵌め合い面となっている。つまり、第4部514がハブ輪110の外周面101と嵌まり合うことにより、スリンガー510がハブ輪110に固定される。
シール部材520は、芯金530と、ゴム部材540とを含む。芯金530の外周はゴム部材540で覆われている。
芯金530は、例えばステンレス等の金属板で形成されている。芯金530は、第1部531及び第2部532を含む。第1部531のアウター側の端面と、第2部532の径方向外方の端面とは、連続して形成されている。
第1部531は、外輪20の周方向に沿った面を有する円筒状の部材である。第1部531は、外輪20の外周面21に接触している。第1部531は、外輪20に対する芯金530の嵌め合い面となっている。つまり、第1部531が外輪20の外周面21と嵌まり合うことにより、芯金530が外輪20に固定される。
第2部532は、軸方向に対して垂直方向に伸びる円環状の部材である。また、第2部532は、外輪20のアウター側の端面22に接触している。第1部531の径方向外方の表面5311及び第2部532のアウター側の表面5321は、ゴム部材540で覆われている。
ゴム部材540は、第1部分541と、第2部分542と、第3部分543と、を含む。第1部分541、第2部分542、及び第3部分543のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。
第1部分541は、芯金530の第1部531の径方向外方の表面5311を覆っている。
第2部分542は、芯金530の第2部532のアウター側の表面5321を覆っている。第2部分542は、第1アキシャルリップ544と、第2アキシャルリップ545と、グリースリップ546と、を含む。第1アキシャルリップ544、第2アキシャルリップ545、及びグリースリップ546のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。
第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545は、ゴム部材540の第2部分542のアウター側表面からアウター側に向かって突出している。
グリースリップ546は、ゴム部材540の第2部分542の径方向内方の端部からインナー側に向かって突出している。
第3部分543は、第1部分541から第2部分542に切り替わる部分からアウター側且つ径方向外方に向かって突出するように形成されている。第3部分543の突端5431は、ハブ輪110のつば部112の表面1121bとラビリンス隙間LB1を構成するように位置づけられている。また、第3部分543の径方向内方の表面5432とスリンガー510の第1部511の径方向外方の先端5111間には、ラビリンス隙間LB2が構成される。このように、第3部分543の突端5431とハブ輪110のつば部112の表面1121bとの隙間、及び、第3部分543の径方向内方の表面5432とスリンガー510の第1部511の径方向外方の先端5111との隙間がラビリンス隙間LB1,LB2となっているので、第1部511とゴム部材540の第2部分542との間への外部からの水分や塵埃の浸入を抑制することができる。
第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545の先端は、第1部511のインナー側表面5112に接触している。また、第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545の先端は、それぞれ、径方向外方を向いている。これにより、スリンガー510の第1部511とゴム部材540の第2部分542との間を経路とする、空間S1内への外部からの水分や塵埃の浸入を効果的に抑制することができる。
グリースリップ546の先端は、第2部512の径方向外方の表面5121に接触している。また、グリースリップ546の先端は、インナー側を向いている。これにより、空間S1内に充填されたグリースの外部への漏出を抑制することができる。
封止部材60は、図1に示すように、外輪20のインナー側の端部と内輪120の端部の間に設けられる、環状の部材である。封止部材60は、一例として図1に示すように、スリンガー61及びシール部材62を備えている。
図3は、ハブ輪110及びスリンガー510を示す断面図である。以下、スリンガー510をハブ輪110に嵌めるときの状態について説明する。なお、図3において、一点鎖線で示すスリンガー510prは、ハブ輪110に嵌める前の状態のスリンガー510を示す。
スリンガー510は、インナー側からアウター側に向かって軸方向にスリンガー510を移動させることにより、ハブ輪110に嵌め込まれる。このとき、作業者は、図3の矢印A1で示すように軸方向に対して垂直な第3部513にアウター側に向かって圧入力を加えて、スリンガー510を軸方向に移動させる。第1部511がハブ輪110のつば部112の表面1121aに接触したところでスリンガー510のアウター側への移動を停止し、スリンガー510の嵌め合い完了とする。
(実施形態1の効果)
実施形態1の構成の車輪用軸受装置1によれば、スリンガー510とシール部材520によって、内輪部材100と外輪20との間の転動体30が保持された空間S1が封止される。スリンガー510は、嵌め合い面となる第4部514に隣接して、軸方向に対して垂直な第3部513を有しているので、作業者は、第3部513をアウター側に押しながらスリンガー510を軸方向に移動させる。つまり、このとき、スリンガー510を内輪部材100に嵌め込むときの圧入力を、図3の矢印で示すように、第3部513に加えることができる。
第3部513は、第1部511よりも径方向内方に位置し、且つ、スリンガー510の内輪部材100に対する嵌め合い面である第4部514と連続している。そのため、スリンガー510を内輪部材100に圧入するとき、第1部511に圧入力を加える場合と比較して、第3部513に圧入力を加えた場合には、圧入力によるスリンガー510の変形を抑制することができる。スリンガー510の変形が抑制される結果、内輪部材100と外輪20との間の空間S1の良好な密封性を得ることができる。
<実施形態2>
以下、実施形態2の車輪用軸受装置1Aについて説明する。図4は、実施形態2の車輪用軸受装置1Aの封止部材50A周辺を拡大して示す断面図である。
実施形態2の車輪用軸受装置1Aは、封止部材50Aの構成が実施形態1と異なる。封止部材50Aは、実施形態1の封止部材50に加え、さらに、環状の弾性部材560(第1弾性部材)を備える。弾性部材560は、スリンガー510の第4部514の軸方向のアウター側の端部を覆うように設けられている。弾性部材560の一部は、第4部514と内輪部材100とに挟まれて弾性圧縮された状態となっている。弾性部材560は、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴムで形成されている。
実施形態2の車輪用軸受装置1Aのその他の構成については、実施形態1の車輪用軸受装置1と同一である。
(実施形態2の効果)
実施形態2の車輪用軸受装置1Aによれば、実施形態1の車輪用軸受装置1と同様に、スリンガー510の変形を抑制することができ、結果として、内輪部材100と外輪20との間の空間S1の良好な密封性を得ることができる。
さらに、実施形態2の車輪用軸受装置1Aによれば、以下の効果を得ることができる。車両等において、カーブ走行時等に車輪が傾くことにより、車輪用軸受装置1Aにおいては、スリンガー510に対して内輪部材100が傾斜することがある。このとき、スリンガー510の嵌め合い面である第4部514と内輪部材100との間に隙間が生じ、その隙間を介して、スリンガー510の第2部512、第3部513及び第4部514並びに内輪部材100の間の空間S2から、内輪部材100と外輪20との間の転動体30が保持された空間S1に水分等が浸入することがある。しかしながら、実施形態2のスリンガー510は、第4部514の軸方向のつば部112側の端部を覆うように環状の弾性部材560が設けられている。そのため、スリンガー510の嵌め合い面である第4部514と内輪部材100との間に隙間が生じた場合でも、弾性部材560の弾性圧縮された状態が解除されて弾性部材560の径方向の大きさが大きくなることにより、弾性部材560が当該隙間を埋めることができる。その結果、内輪部材100と外輪20との間の転動体30が保持された空間への水分等の浸入を抑制することができる。
<実施形態3>
以下、実施形態3の車輪用軸受装置1Bについて説明する。図5は、実施形態3の車輪用軸受装置1Bの封止部材50B周辺を拡大して示す断面図である。
実施形態3の車輪用軸受装置1Bは、封止部材50Bの構成が実施形態1と異なる。スリンガー510は、さらに、環状の弾性部材570(第2環状部材)を備える。弾性部材570は、スリンガー510の第1部511のつば部112側の表面5113に設けられている。弾性部材570は、径方向に離間して、複数列(図5では、2列)設けられている。弾性部材570は、第1部511とつば部112とに挟まれて弾性圧縮された状態となっている。弾性部材570は、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴムで形成されている。なお、弾性部材570の数は、複数列ではなく1列であってもよい。
実施形態3の車輪用軸受装置1Bのその他の構成については、実施形態1の車輪用軸受装置1と同一である。
(実施形態3の効果)
実施形態3の車輪用軸受装置1Bによれば、実施形態1の車輪用軸受装置1と同様に、スリンガー510の変形を抑制することができ、結果として、内輪部材100と外輪20との間の空間S1の良好な密封性を得ることができる。
さらに、実施形態2の車輪用軸受装置1Aによれば、以下の効果を得ることができる。車両等において、カーブ走行時等に車輪が傾くことにより、スリンガー510に対して内輪部材100が傾斜することがある。このとき、スリンガー510の第1部511と内輪部材100との間に隙間が生じ、その隙間を介して、ゴム部材540の第3部分543とつば部112との間の空間S3からスリンガー510の第2部512、第3部513及び第4部514並びに内輪部材100の間の空間S2に水分等が浸入することがある。しかしながら、実施形態3のスリンガー510は、第1部511のつば部112側の表面5113に設けられた環状の弾性部材570を有し、弾性部材570が弾性圧縮された状態となるようにスリンガー510が内輪部材100に嵌め合わされている。そのため、スリンガー510の第1部511と内輪部材100との間に隙間が生じた場合でも、弾性部材570の弾性圧縮が解除されて弾性部材570の軸方向の大きさが大きくなることにより、弾性部材570が当該隙間を埋めることができる。その結果、空間S2への水分等の浸入を抑制することができる。
なお、実施形態3の車輪用軸受装置1Bでは、実施形態1で説明したように、スリンガー510が第3部513を有する結果、スリンガー510を内輪部材100に圧入するときの圧入力によるスリンガー510の変形が抑制される。したがって、スリンガー510の第1部511と内輪部材100のつば部112との間の距離を、意図した通りに設計することが容易となる。そのため、上記の弾性部材570による空間S2への水分等の浸入の抑制を効果的に行うことができる。
(変形例1)
実施形態3では、スリンガー510の第1部511のつば部112側の表面5113に弾性部材570が設けられている実施形態について説明したが、弾性部材570の代わりに、スリンガー510の第1部511の表面5113に、シリコンシート580が設けられていてもよい。以下、実施形態3の変形例(変形例1)について説明する。図6は、変形例1の封止部材50B周辺を拡大して示す断面図である。
シリコンシート580は、スリンガー510の第1部511とハブ輪110のつば部112との両方に接触している。シリコンシート580は、例えば、円輪状の材料で形成されている。シリコンシート580は、第1部511とつば部112のそれぞれからシリコンシート580に対し軸方向に作用する反力によって、第1部511とつば部112の両方に接触した状態を維持している。シリコンシート580は、シリコンで形成されている。
変形例1においては、スリンガー510の第1部511と内輪部材100との間に隙間が生じた場合、シリコンシート580が第1部511とつば部112の両方に接触した状態を維持したまま、軸方向の大きさが大きくなるように弾性変形する。そのため、スリンガー510の第1部511と内輪部材100との間に隙間が生じた場合でも、弾性変形したシリコンシート580が当該隙間を埋めることができる。その結果、空間S2への水分等の浸入を抑制することができる。
<実施形態4>
以下、実施形態4の車輪用軸受装置1Cについて説明する。図7は、実施形態4の車輪用軸受装置1Cの封止部材50C周辺を拡大して示す断面図である。
実施形態4の車輪用軸受装置1Cは、封止部材50Cの構成が実施形態1と異なる。封止部材50Cは、スリンガー510Cと、シール部材520Cとを備える。
スリンガー510Cは、第1部511,第2部512,第3部513C,第5部515及び第6部516を含む。第1部511、第3部513C及び第5部515は、軸心L1に垂直に配置され、軸心L1を中心とする円環状の部材である。また、第2部512及び第6部516は、内輪部材100の周方向に平行な面を有し、軸心L1を中心とする円筒状の部材である。第1部511,第2部512,第3部513C、第5部515,及び第6部516は、一体に形成されている。スリンガー510Cは、例えば、ステンレス等の金属で形成されている。
第1部511の径方向内方の端部と、第2部512のアウター側の端部とは、連続して形成されている。第2部512のインナー側の端部と、第3部513Cの径方向内方の端部とは、連続して形成されている。第5部515は、第3部513Cのインナー側に位置している。第3部513Cの径方向外方の端部と、第5部515の径方向外方の端部とは、連続して形成されている。第5部515の径方向内方の端部と、第6部516のインナー側の端部とは、連続して形成されている。
第1部511は、アウター側の表面がハブ輪110のつば部112の表面1121aに接して形成されている。
第6部516は、径方向内方の表面がハブ輪110の外周面101に接するように配置されている。第6部516は、ハブ輪110に対するスリンガー510Cの嵌め合い面となっている。つまり、第6部516がハブ輪110の外周面101と嵌まり合うことにより、スリンガー510Cがハブ輪110に固定される。
シール部材520Cは、芯金530と、ゴム部材540Cとを含む。芯金530の外周はゴム部材540Cで覆われている。
芯金530は、第1部531及び第2部532を含む。芯金530は、実施形態1と同一の構成を有する。
ゴム部材540Cは、第1部分541と、第2部分542Cと、第3部分543と、を含む。第1部分541、第2部分542C、及び第3部分543のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。第1部分541及び第3部分543は、実施形態1のゴム部材540を構成する第1部分541及び第3部分543と同一の構成を有する。
第2部分542Cは、芯金530の第2部532のアウター側の表面5321を覆っている。第2部分542Cは、第1アキシャルリップ544と、第2アキシャルリップ545と、を含む。第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。第2部分542Cは、グリースリップを有しない点を除いて、実施形態1のゴム部材540の第2部分542と同一である。つまり、第2部分542Cの第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545のそれぞれは、実施形態1のゴム部材540を構成する第2部分542の第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545と同一の構成を有する。
スリンガー510Cにおいて第3部513C及び第5部515が接続される環状の部分P1と、シール部材520Cにゴム部材540Cの径方向内方の環状の端部P2とは、2〜10mm程度の隙間をあけて対向している。これにより、スリンガー510Cの部分P1とシール部材520Cの端部P2との間に、環状のラビリンス隙間LB3が形成されている。ラビリンス隙間LB3が構成されていることにより、空間S1に充填されたグリースの、スリンガー510Cの第2部512と第2アキシャルリップ545の間の空間S4への漏出が抑制される。
スリンガー510Cをハブ輪110に挿入する場合、スリンガー510Cの第3部513Cに加え、第5部515に対して圧入力を加える。これにより、スリンガー510Cの変形を抑制しつつスリンガー510Cをハブ輪110に圧入することができる。
実施形態4の車輪用軸受装置1Cのその他の構成については、実施形態1の車輪用軸受装置1と同一である。
(実施形態4の効果)
実施形態4の車輪用軸受装置1Cによれば、実施形態1の車輪用軸受装置1と同様に、スリンガー510Cの変形を抑制することができ、結果として、内輪部材100と外輪20との間の空間S1の良好な密封性を得ることができる。
さらに、実施形態4の構成の車輪用軸受装置1Cによれば、スリンガー510Cの部分P1と、ゴム部材540Cの端部P2との間に形成されたラビリンス隙間LB3によって、空間S1から空間S4へのグリースの漏れを抑制することができる。ラビリンス隙間LB3によってグリースの漏れを抑制できるので、シール部材520Cにグリースリップを設ける必要がない。したがって、グリースリップの分、シール部材520Cとスリンガー510Cとの接触部分を減らすことができ、結果として、車輪用軸受装置1Cが回転するときのトルクを低減することができる。
(変形例2)
実施形態4では、グリースの漏出を抑制するためにラビリンス隙間LB3を形成した車輪用軸受装置1Cについて説明したが、ラビリンス隙間LB3は実施形態4で説明した構成に限定されない。以下、実施形態4の変形例(変形例2)について説明する。図8は、変形例2の封止部材50C周辺を拡大して示す断面図である。
変形例2の車輪用軸受装置1Cでは、スリンガー510Cの部分P1とシール部材520Cの端部P2とが径方向に重なっている点において、実施形態4と異なっている。この場合には、ラビリンス隙間LB3の大きさが実施形態4よりも小さくなり、空間S1から空間S4へのグリースの漏出を抑制する効果が向上する。
<実施形態5>
以下、実施形態5の車輪用軸受装置1Dについて説明する。図9は、実施形態5の車輪用軸受装置1Dの封止部材50D周辺を拡大して示す断面図である。
実施形態5の車輪用軸受装置1Dは、封止部材50Dの構成が実施形態1と異なる。封止部材50Dは、スリンガー510Dと、シール部材520Dとを備える。
スリンガー510Dは、第1部511D,第2部512D,第3部513D,及び第5部515Dを含む。第1部511D、第3部513D及び第5部515Dは、軸心L1に垂直に配置され、軸心L1を中心とする円環状の部材である。また、第2部512Dは、内輪部材100の周方向に平行な面を有し、軸心L1を中心とする円筒状の部材である。第1部511D,第2部512D,第3部513D、及び第5部515Dは、一体に形成されている。スリンガー510Dは、例えば、ステンレス等の金属で形成されている。
第1部511Dの径方向内方の端部と、第2部512Dのアウター側の端部とは、連続して形成されている。第2部512Dのインナー側の端部と、第3部513Dの径方向内方の端部とは、連続して形成されている。第5部515Dは、第3部513Dのインナー側に位置している。第3部513Dの径方向外方の端部と、第5部515Dの径方向外方の端部とは、連続して形成されている。
第1部511Dは、アウター側の表面がハブ輪110のつば部112の表面1121aに接している。
第2部512Dは、径方向内方の表面がハブ輪110の外周面101に接するように配置されている。第2部512Dは、ハブ輪110に対するスリンガー510Dの嵌め合い面となっている。つまり、第2部512Dがハブ輪110の外周面101と嵌まり合うことにより、スリンガー510Dがハブ輪110に固定される。
シール部材520Cは、芯金530と、ゴム部材540Dとを含む。芯金530とゴム部材540Dとは、一体に形成されている。
芯金530は、第1部531及び第2部532を含む。芯金530は、実施形態1と同一の構成を有する。
ゴム部材540Dは、第1部分541と、第2部分542Dと、第3部分543と、を含む。第1部分541、第2部分542D、及び第3部分543のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。第1部分541及び第3部分543は、実施形態1のゴム部材540を構成する第1部分541及び第3部分543と同一の構成を有する。
第2部分542Dは、芯金530の第2部532のアウター側の表面5321を覆っている。第2部分542Dは、第1アキシャルリップ544と、第2アキシャルリップ545と、を含む。第1アキシャルリップ544及び第2アキシャルリップ545のそれぞれは、軸心L1を中心とする環状部材である。
スリンガー510Dをハブ輪110に挿入する場合、スリンガー510Dの第3部513Dに加え、第5部515Dに対して圧入力を加える。これにより、スリンガー510Dの変形を抑制しつつスリンガー510Dをハブ輪110に圧入することができる。
実施形態5の車輪用軸受装置1Dのその他の構成については、実施形態1の車輪用軸受装置1と同一である。
(実施形態5の効果)
実施形態5の車輪用軸受装置1Dによれば、実施形態1の車輪用軸受装置1と同様に、スリンガー510Dの変形を抑制することができ、結果として、内輪部材100と外輪20との間の空間S1の良好な密封性を得ることができる。
また、実施形態5の構成の車輪用軸受装置1Dによれば、スリンガー510Dの第2部512Dにおいてスリンガー510Dをハブ輪110に圧入しているので、実施形態1と比較して、圧入面を大きく確保することができる。
以上、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。