JP2017145493A - 金属粉末製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末を製造可能な金属粉末製造装置を提供すること。【解決手段】金属粉末製造装置1(本発明の金属粉末製造装置)は、溶融金属Qを流下させる溶融金属供給部2と、軸線A1と鉛直線とのなす角度θ1が0°以上20°以下である上部31と、軸線A2と鉛直線とのなす角度θ2が角度θ1よりも大きくなっている下部32と、を含む筒状体3と、溶融金属Qに向けて気体G(流体)を噴射する流体噴射部5と、上部31の内周面に沿って冷却液Sを流出させる冷却液流出部4と、を有し、溶融金属Qが気体Gと衝突して形成される液滴Q1の鉛直方向に沿った飛行距離が、上部31の内径d1の1.5倍以上20倍以下の距離であることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、金属粉末製造装置に関するものである。
従来、いわゆる水アトマイズ法を用いて金属粉末を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されている金属粉末の製造方法では、溶融金属粒に対し液体流を吹き付けて噴霧する液体噴霧法として、水アトマイズ法が用いられている。水アトマイズ法では、噴霧後の冷却速度が速いため、溶融金属が表面張力によって球形化する前に固化させることができる。このため、得られた粉末は不規則形状になり易い。
このような課題に対し、特許文献1に記載の発明では、形成された粉末を、融点以上に加熱させた領域を通過させ球形化させるという工程を付加することで解決を試みている。融点以上に加熱された領域とは、プラズマ領域や燃焼ガス領域のことである。
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、プラズマ領域や燃焼ガス領域を設ける必要があり、装置の大型化や高コスト化が避けられない。また、この方法では、一旦固化した金属粉末を再び溶融するため、意図しない組成変化を招くおそれがある他、例えばアモルファス金属の粉末を製造する場合、意図しない結晶化を招くおそれがある。
本発明の目的は、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末を製造可能な金属粉末製造装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の金属粉末製造装置は、溶融金属を流下させる溶融金属供給部と、
前記溶融金属供給部の下方に設置され、軸線と鉛直線とのなす角度が0°以上20°以下である上部と、前記上部の下端に連続して設けられる下部であってその軸線と鉛直線とのなす角度が前記上部の軸線と鉛直線とのなす角度よりも大きくなるように傾けられている下部と、を含む筒状体と、
前記溶融金属供給部から供給される溶融金属に向けて流体を噴射する流体噴射部と、
前記筒状体の前記上部の内周面に沿って冷却液を流出させる冷却液流出部と、
を有し、
前記溶融金属が前記流体と衝突して形成される液滴の鉛直方向に沿った飛行距離が、前記筒状体内において前記上部の内径の1.5倍以上20倍以下の距離であることを特徴とする。
本発明の金属粉末製造装置は、溶融金属を流下させる溶融金属供給部と、
前記溶融金属供給部の下方に設置され、軸線と鉛直線とのなす角度が0°以上20°以下である上部と、前記上部の下端に連続して設けられる下部であってその軸線と鉛直線とのなす角度が前記上部の軸線と鉛直線とのなす角度よりも大きくなるように傾けられている下部と、を含む筒状体と、
前記溶融金属供給部から供給される溶融金属に向けて流体を噴射する流体噴射部と、
前記筒状体の前記上部の内周面に沿って冷却液を流出させる冷却液流出部と、
を有し、
前記溶融金属が前記流体と衝突して形成される液滴の鉛直方向に沿った飛行距離が、前記筒状体内において前記上部の内径の1.5倍以上20倍以下の距離であることを特徴とする。
これにより、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末を製造可能な金属粉末製造装置が得られる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記下部の軸線と鉛直線とのなす角度は、前記上部の軸線と鉛直線とのなす角度よりも5°以上90°以下大きいことが好ましい。
これにより、上部と下部との接続部において冷却液がより滞留し易くなり、上部の内部空間の底面に十分な厚さの冷却液層をより確実に形成することができる。その結果、液滴をより短時間で均一に冷却することができ、液滴の意図しない組成変化をより確実に抑えることができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記下部の内径は、前記上部の内径よりも小さいことが好ましい。
これにより、下部における冷却液の最大流量が上部における冷却液の最大流量よりも小さくなり、上部と下部との接続部において冷却液が貯留され易くなる。このため、筒状体の内部空間の底面において、より十分な厚さの冷却液層を形成することができる。その結果、液滴をより短時間で均一に冷却することができ、液滴の意図しない組成変化をより確実に抑えることができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記冷却液は、前記下部の内部に充填されていることが好ましい。
これにより、液滴が冷却液層に突入した後、継続して冷却液に触れ続ける状態を作り出すことができる。その結果、液滴をより長時間にわたって冷却し続けることができ、液滴において意図しない組成変化が生じるのを抑制することができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記流体は、不活性ガスであることが好ましい。
これにより、比較的熱容量の小さい流体によって溶融金属を分断することができるので、粉末化を図りつつ、その最中に金属が酸化するのを抑制することができる。その結果、液滴の酸化や著しい変形を抑えつつ、溶融金属を分断することができるので、意図しない組成変化がより少なく抑えられ、かつ、球形化が十分に図られた金属粉末を製造することができる。
これにより、比較的熱容量の小さい流体によって溶融金属を分断することができるので、粉末化を図りつつ、その最中に金属が酸化するのを抑制することができる。その結果、液滴の酸化や著しい変形を抑えつつ、溶融金属を分断することができるので、意図しない組成変化がより少なく抑えられ、かつ、球形化が十分に図られた金属粉末を製造することができる。
本発明の金属粉末製造装置では、前記上部の内部に設けられ、前記冷却液で構成される冷却液層によって側方および下方が取り囲まれている空間を含むことが好ましい。
これにより、上方を除いて気密的に閉じた空間が形成されるので、空間内で蒸気が発生したとしてもその蒸気が上昇するのを抑制することができ、液滴と蒸気とが長時間接触することによって冷却速度が低下したり、上昇気流の発生によって液滴の降下が妨げられたりするのを抑制することができる。
以下、本発明の金属粉末製造装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、それぞれ本発明の金属粉末製造装置の実施形態を示す模式図(縦断面図)である。なお、図2では、装置の構成を一部簡略化して図示している。
図1に示す金属粉末製造装置1は、それぞれ溶融金属Qをアトマイズ法により粉末化した後、冷却固化させ、金属粉末Rを得るための装置である。この金属粉末製造装置1は、溶融金属Qを供給する溶融金属供給部2(タンディシュ)と、溶融金属供給部2の下方に設けられた筒状体3(冷却容器)と、筒状体3内に冷却液Sを流出させる冷却液流出部4と、流下する溶融金属Qに向けて気体G(流体)を噴射する流体噴射部5(ノズル)と、を有している。以下、各部の構成について詳述する。
図1に示すように、溶融金属供給部2は、有底筒状をなす部分を有している。この溶融金属供給部2内には、製造すべき金属粉末の原材料を溶融した溶融金属Qが一時的に収容される。このような溶融金属供給部2は、例えば、黒鉛や窒化ケイ素等の耐火性材料で構成されている。また、溶融金属供給部2の外周には、溶融金属Qを加熱し保温するための誘導コイル6が設けられている。
溶融金属Qは、いかなる元素を含んでいてもよく、例えばTiおよびAlの少なくとも一方を含んでいるものも用いることができる。これらの元素は活性が高いため、溶融金属Qがこれらの元素を含む場合、空気との接触が短時間であっても容易に酸化してしまい、微細化することが難しくなる。これに対し、金属粉末製造装置1を用いることにより、このような元素を含む溶融金属Qであっても、容易に粉末化することができ、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末を製造することができる。
また、溶融金属供給部2の底部の中央部には、吐出口21が設けられている。この吐出口21からは、溶融金属供給部2内の溶融金属Qが下方に向かって自然落下により吐出される。
このような溶融金属供給部2の下方には、内部空間30を含む筒状体3が設けられている。
筒状体3は、円筒状をなしている。そして、筒状体3の軸線の長さは、内径よりも長くなっている。このため、筒状体3は、鉛直方向に細長い円筒状をなしている。
この筒状体3の内部空間30には、後述するように、流体噴射部5からの気体Gにより溶融金属Qを分断(飛散)させて形成された多数の液滴Q1が供給されるとともに、冷却液流出部4から供給された冷却液Sにより冷却液層S1が形成されている。液滴Q1が冷却液層S1に接触すると、液滴Q1が冷却され、固化に至る。
なお、筒状体3の軸線に直交する方向で切断したときの内径側の断面形状は、例えば真円、楕円、長円等の円形とされるが、好ましくは真円とされる。
このような筒状体3の上側(上端部付近)には、環状の蓋部材7が設けられている。この蓋部材7上には、蓋部材7の中央部の開口を通じて筒状体3の内部空間30に気体Gを噴射し得るように流体噴射部5が設けられている。
また、筒状体3の上端部付近には、その周方向に沿って冷却液流出部4が設けられている。冷却液流出部4は、蓋部材7の周方向に沿ってほぼ等間隔で並設された複数の冷却液流出口41で構成されている。
各冷却液流出口41は、筒状体3の内周面の接線方向に向けて冷却液Sを流出させることにより、冷却液Sを筒状体3の周方向に旋回させることができる。これにより、冷却液Sは筒状体3の内壁面に冷却液層S1を形成する。
このように各冷却液流出口41を構成することで、筒状体3内での冷却液Sの流れを安定化させることができる。その結果、筒状体3内において十分な厚さの冷却液層S1を形成することができ、液滴Q1を効率よく冷却することができる。
なお、冷却液流出口41から流出する冷却液Sの流出方向は、筒状体3の内周面の接線方向に限定されず、鉛直線と平行な方向(鉛直方向)であってもよく、接線方向と鉛直方向の双方に傾斜した方向であってもよい。また、冷却液流出口41の設置数も、特に限定されず、3個以上であってもよい。
また、冷却液Sには、水や油等が用いられ、必要に応じて、還元剤等の添加剤が添加されていてもよい。
なお、図示しないが、各冷却液流出口41は、冷却液供給管を介して冷却液タンクと接続されており、冷却液供給管の途中にはポンプが設けられている。これにより、ポンプを作動させることで、冷却液タンク内の冷却液Sを冷却液供給管を介して各冷却液流出口41に供給することができ、加圧された冷却液Sを各冷却液流出口41から流出(噴射)させることができる。
冷却液流出部4の上方には、流体噴射部5(ガスジェットノズル)が設けられている。
流体噴射部5から噴射される流体としては、気体または液体が挙げられる。気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス、アンモニア分解ガスのような還元性ガス、空気等が挙げられる。一方、液体としては、例えば水や水に添加剤を添加したもの等が挙げられる。
流体噴射部5から噴射される流体としては、気体または液体が挙げられる。気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス、アンモニア分解ガスのような還元性ガス、空気等が挙げられる。一方、液体としては、例えば水や水に添加剤を添加したもの等が挙げられる。
このうち、流体としては、気体を用いるのが好ましく、特に不活性ガスを用いるのがより好ましい。これにより、比較的熱容量の小さい流体によって溶融金属Qを分断することができるので、流体として液体を用いる場合に比べて冷却速度を適度に抑えつつ、粉末化を図ることができるとともに、その最中に金属が酸化するのを抑制することができる。その結果、液滴Q1の酸化や著しい変形を抑えつつ、溶融金属Qを分断することができるので、意図しない組成変化がより少なく抑えられ、かつ、球形化が十分に図られた金属粉末を製造することができる。
流体噴射部5は、図1に示すように、前述した溶融金属供給部2の吐出口21と同軸上に設けられた溶湯ノズル51と、溶湯ノズル51の外周に沿って設けられたガス室52と、ガス室52に連通する複数の流体噴射口53と、を備えている。
溶湯ノズル51は、鉛直方向に沿って貫通するように形成された溶湯ノズル孔511を有している。また、溶湯ノズル51は、耐火材で構成されている。
このような溶湯ノズル51は、前述した溶融金属供給部2の吐出口21から流下した溶融金属Qを一旦受け止め、その後、溶湯ノズル孔511を通じて筒状体3内へ流下させる。溶湯ノズル孔511を通過した溶融金属Qの横断面形状および横断面積は、溶湯ノズル孔511の横断面積および横断面形状に応じたものとなる。
このような溶湯ノズル51の外周側には、その周方向に沿って環状をなすガス室52が設けられている。このガス室52には、外部から図示しないガス供給管を介して、高圧の気体Gが供給されるようになっている。
また、ガス室52の下側には、その周方向に沿って並設された複数の流体噴射口53が設けられている。各流体噴射口53は、前述したガス室52に連通しており、気体Gを噴射するようになっている。
本実施形態に係る複数の流体噴射口53は、後に詳述するが、溶湯ノズル51の軸線を中心とする同一円周上に設けられている。このような複数の流体噴射口53は、いずれも、これらの下方における溶湯ノズル51の軸線上のほぼ同位置に向けて気体Gを噴射するように形成されている。
溶湯ノズル51の溶湯ノズル孔511から流下した溶融金属Qは、複数の気体Gが集中(集束)している位置において、気体Gと衝突し、分断されて複数の液滴Q1となる。複数の液滴Q1は、落下して冷却液層S1に衝突し、さらに分断されて微細化されるとともに冷却固化し、金属粉末R(複数の金属粒子の集合体)が得られる。
ここで、本実施形態では、筒状体3が、蓋部材7の下方に位置する上部31と、上部31の下端に連続して設けられた下部32と、を含んでいる。すなわち、上部31と下部32とは接続部33を介して連続しており、これにより全体としては、途中で軸が屈曲した筒状体3が構成されている。したがって、上部31および下部32もそれぞれ円筒状をなしている。なお、本明細書における接続部33とは、上部31と下部32との境界面のことを指す。
このうち、上部31は、その軸線A1が、鉛直方向に沿うように構成されている。具体的には、軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1が0°以上20°以下になるように、上部31が配置されている。なお、図1では、一例として、軸線A1と鉛直線VLとのなす角度が0°である金属粉末製造装置1について図示している。
また、図2では、別の例として、軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1が0°超(ただし20°以下)である金属粉末製造装置1について図示している。すなわち、図2は、角度θ1が異なる以外、図1に示す金属粉末製造装置1と同様である。
なお、本明細書における軸線A1は、円筒状をなす上部31の軸を含む直線のことをいい、鉛直線VLは、重力の方向を示す直線のことをいう。また、以下の説明では、軸線A1と鉛直線VLとのなす角度を「傾斜角度」ともいう。
また、下部32は、その軸線A2が、上部31の軸線A1よりも鉛直方向に対してより大きく傾いている。すなわち、下部32の軸線A2と鉛直線VLとのなす角度θ2は、上部31の軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1よりも大きくなっている。なお、本明細書における軸線A2は、円筒状をなす下部32の軸を含む直線のことをいう。また、以下の説明では、軸線A2と鉛直線VLとのなす角度を「傾斜角度」ともいう。
さらに、溶融金属Qが気体Gに衝突して形成された液滴Q1は、筒状体3の内部空間30を飛行し、冷却液層S1に突入することによって冷却固化するが、このとき、本実施形態では、液滴Q1の鉛直方向に沿った飛行距離が、上部31の内径d1の1.5倍以上20倍以下の距離になっている。
以上のような上部31および下部32を備える筒状体3が設けられた金属粉末製造装置1によれば、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末Rを製造することができる。
また、上部31の軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1が前記範囲内であることにより、液滴Q1の飛行距離を前記範囲内にすることができる。これは、軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1が前記範囲内であれば、軸線A1が鉛直方向と平行に近い状態で上部31が配置されることとなる。このような状態では、液滴Q1の自然落下による飛行方向が、軸線A1と平行になるため、筒状体3の上下方向に沿って十分な飛行距離を確保することができる。換言すれば、筒状体3の内壁のうち、側面には冷却液層S1が形成されているので、その分、水平方向の飛行距離が短くなる。これに対し、筒状体3の上下方向では、鉛直方向に細長い形状を最大限に利用することができるので、十分な飛行距離が確保される。その結果、液滴Q1は、前述した範囲内で規定される十分に長い飛行距離を飛行することとなり、それによって十分に長い飛行時間が確保される。このため、飛行の間に、表面張力による液滴Q1の球形化が進行し、最終的に十分な球形化が図られた金属粉末Rが得られる。
なお、軸線A1と鉛直線VLとがなす角度θ1は、0°以上20°以下とされるが、好ましくは0°以上10°以下とされる。軸線A1と鉛直線VLとがなす角度θ1が前記上限値を上回ると、軸線A1が鉛直線VLに対して比較的大きく傾いた状態となる。このため、溶融金属Qが気体Gに衝突して飛散するときの広がり方を考慮すれば、液滴Q1の多くが上部31の内壁のうち、側面に形成された冷却液層S1に突入する確率が高くなるおそれがある。その結果、十分に長い飛行距離を確保することができなくなり、液滴Q1の球形化が不十分になるため、最終的に得られる金属粉末Rの球形化が不十分になるおそれがある。
また、下部32の軸線A2と鉛直線VLとのなす角度θ2が上部31の軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1よりも大きいことにより、上部31と下部32との接続部33において軸線が不連続になる。このため、上部31に供給された冷却液Sは、上部31の内壁に沿って流下した後、上部31と下部32との接続部33において流下速度が低下する。その結果、上部31と下部32との接続部33では冷却液Sが滞留した状態が継続することとなる。このため、筒状体3の内部空間30では、側面に加え底面にも十分な厚さの冷却液層S1が形成されることとなる。したがって、内部空間30に飛散する液滴Q1は、高い確率で十分な体積の冷却液Sに突入することができ、短時間で均一に冷却されるため、液滴Q1の意図しない組成変化が抑えられる。すなわち、例えば酸化量(酸素含有率)等の組成や結晶性のバラツキを最小限に留めることができる。
なお、角度θ1とは、軸線A1と鉛直線VLとがなす角度のうち、鋭角側の角度のことを指す。同様に、角度θ2とは、軸線A2と鉛直線VLとがなす角度のうち、鋭角側の角度のことを指す。
一方、角度θ2が角度θ1よりも小さい場合には、下部32の軸線A2は、より鉛直方向と平行に近い状態となる。このため、冷却液Sが特に流下し易い状態となってしまい、上部31と下部32との接続部33において冷却液Sが滞留し難くなる。その結果、上部31の底面には十分な厚さの冷却液層S1を形成することができず、冷却速度が低下したり十分に冷却されなかったりするため、液滴Q1において意図しない組成変化が生じるおそれがある。
さらに、液滴Q1の鉛直方向に沿った飛行距離が前記範囲内であることにより、溶融金属Qが気体Gに衝突して飛散するときの広がり方を考慮すれば、多くの液滴Q1において球形化に必要十分な飛行時間を確保することができる。このため、十分な球形化が図られた金属粉末Rが得られる。
なお、「液滴Q1の鉛直方向に沿った飛行距離」とは、鉛直線VL上において、溶融金属Qと気体Gとの衝突位置と冷却液層S1との間の距離のことをいう。以下、かかる飛行距離を単に「液滴Q1の飛行距離」ともいう。
液滴Q1の飛行距離は、上部31の内径d1の1.5倍以上20倍以下の距離とされるが、好ましくは内径d1の2倍以上15倍以下の距離とされる。液滴Q1の飛行距離が前記下限値を下回ると、内径d1によっては飛行距離が十分ではないため、飛行時間も短くなり、液滴Q1が十分に球形化する前に冷却液層S1に衝突してしまうおそれがある。一方、液滴Q1の飛行距離が前記上限値を上回ると、内径d1によっては飛行距離が長くなり過ぎるため、球形化は十分に進む一方、冷却が不十分になるおそれがある。このため、冷却速度が低下することとなり、液滴Q1において意図しない組成変化、例えば酸化量の増大や非晶質性(アモルファス化度)の悪化を招くおそれがある。
以上のことから、上記の個別の条件を独立して満たすのみでは効果を得ることはできず、角度θ1が前記範囲内であること、角度θ1および角度θ2が前記関係を満たすこと、および、液滴Q1の飛行距離が前記範囲内であること、の全てを満足することにより、金属粉末製造装置1は、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末Rを製造し得るという効果を奏する。
また、角度θ2は、角度θ1より大きければ、両者の角度差は特に限定されないものの、角度θ2が角度θ1よりも5°以上90°以下大きいのが好ましく、20°以上90°以下大きいのがより好ましく、45°以上90°以下大きいのがさらに好ましく、60°以上90°以下大きいのが特に好ましい。角度θ2と角度θ1との角度差が前記範囲内であれば、上部31や下部32の内径が比較的大きい場合であっても、上部31と下部32との接続部33において冷却液Sがより滞留し易くなり、上部31の内部空間の底面に十分な厚さの冷却液層S1をより確実に形成することができるようになる。このため、内部空間30に飛散する液滴Q1は、より短時間で均一に冷却され、液滴Q1の意図しない組成変化がより確実に抑えられる。
また、下部32の内径は、上部31の内径より大きくても同じでもよいが、好ましくは上部31の内径より小さいことが好ましい。これにより、下部32における冷却液Sの最大流量は、上部31における冷却液Sの最大流量よりも小さくなり、上部31と下部32との接続部33において冷却液Sが貯留され易くなる。このため、筒状体3の内部空間30では、底面において、より十分な厚さの冷却液層S1が形成されることとなる。このため、内部空間30に飛散する液滴Q1は、より短時間で均一に冷却され、液滴Q1の意図しない組成変化がより確実に抑えられる。
なお、下部32の内径が小さ過ぎると、今度は下部32における冷却液Sの最大流量、すなわち排出能力が小さくなり過ぎるため、上部31の内部に冷却液Sが溜まり過ぎるおそれがある。したがって、下部32の内径は、上部31の内径よりも小さいものの、所定の割合に収まっているのが好ましい。具体的には、下部32の内径d2は、上部31の内径d1の0.1倍以上0.9倍以下であるのが好ましく、0.2倍以上0.8倍以下であるのがより好ましく、0.3倍以上0.7倍以下であるのがさらに好ましい。これにより、内部空間30は、液滴Q1が球形化しつつ飛行するのに必要かつ十分な大きさを有するものとなる。
さらに、下部32には、空気や気体Gが充填されている空間が含まれていてもよいが、冷却液Sによって充填されているのが好ましい。これにより、液滴Q1が冷却液層S1に突入した後、継続して冷却液Sに触れ続ける状態をより確実に作り出すことができる。その結果、液滴Q1をより長時間にわたって冷却し続けることができ、液滴Q1において意図しない組成変化が生じるのを抑制することができる。
また、図1に示す上部31の内部では、側面(側方)と底面(下方)とにそれぞれ冷却液層S1が形成されている。すなわち、上部31と下部32との接続部33において冷却液Sが滞留した場合、上部31の内部、すなわち内部空間30は、上方を除いて冷却液層S1で囲まれた空間となる。かかる空間は、上方を除いて気密的に閉じた空間であるといえる。
一方、内部空間30の上方からは、気体G(流体)が噴射し続けられている。このため、内部空間30の側方や下方から気体が侵入してくることはなく、内部空間30には、常時、鉛直下方に向かう気体の流れが形成されることとなる。そして、噴射された気体Gは冷却液Sに巻き込まれて下部32側へ排出されるため、内部空間30では気体Gで充填された状態が良好に維持される。その結果、例えば非常に高温の液滴Q1と冷却液Sとが接触して冷却液Sが蒸発し、蒸気(例えば水蒸気等)が発生したとしても、その蒸気が上昇することを抑制することができる。このため、液滴Q1と蒸気とが長時間接触することによって冷却速度が低下したり、上昇気流の発生によって液滴Q1の降下が妨げられたりするのを抑制することができる。
特に、角度θ1が前記上限値を上回る(軸線A1が鉛直線VLに対して前記上限値を上回る角度で傾斜している)と、上部31における冷却液Sの流下速度が低下し、内部空間30内の気体が下部32側へ排出される速度が低下するおそれがある。この場合、内部空間30に酸素や蒸気等が滞留し易くなり、金属酸化のような意図しない組成変化を生じるおそれがある。
ここで、図3は、図1に示す金属粉末製造装置1のうち、流体噴射口53近傍を拡大して示す斜視図である。
前述したように、本実施形態では、複数の流体噴射口53が、溶湯ノズル51の軸線A3を中心とする同一円周上に設けられている(図3参照)。加えて、複数の流体噴射口53は、その開口面積が互いに異なっていてもよいが、本実施形態では互いに同じになっている。複数の流体噴射口53は、それぞれ同一のガス室52に連通しているため、本実施形態に係る複数の流体噴射口53からは互いに同じ流速および流量で気体Gが噴射される。そして、複数の流体噴射口53からそれぞれ噴射された気体Gは、溶湯ノズル51の軸線A3上に位置する同一の位置に集束している。このため、気体Gは、溶湯ノズル51の軸線A3と同一の軸線を有する円錐状に広がることとなる。
その上で、気体Gの集束位置に溶融金属Qが衝突すると、形成された液滴Q1は、気体Gとともに円錐状に広がる。
一方、前述したように、筒状体3の上部31の軸線A1と鉛直線VLとのなす角度θ1は、比較的小さい角度範囲に収まっている。このため、気体Gとともに円錐状に広がった液滴Q1が自然落下するとき、内部空間30の形状を利用して適度な飛行距離(飛行時間)が確保される。その結果、液滴Q1の多くについて十分な球形化を図ることができる。
なお、図1では、円筒状をなす上部31の側壁に下部32が接続されている形態が図示されているが、筒状体3の形態はこれに限定されず、例えば上部31の底部に下部32が接続されている形態であってもよい。
また、流体噴射口53の構成も、図3に示すものに限定されない。
また、流体噴射口53の構成も、図3に示すものに限定されない。
また、下部32の下流側、すなわち上部31とは反対側には、金属粉末Rを冷却液Sとともに排出するための排出管(図示せず)が接続されていてもよい。この排出管は、図示しない回収タンクに接続される。
そして、回収タンクに回収された金属粉末Rと冷却液Sとの混合物は、脱液装置等に供されることにより、金属粉末Rを分離することができる。分離された金属粉末Rは、乾燥装置等で乾燥される。
以上説明したような金属粉末製造装置1によれば、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末Rを得ることができる。
以上、本発明の金属粉末製造装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の金属粉末製造装置では、前記実施形態に係る各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.金属粉末の製造
(実施例1)
<1>まず、図1に示す金属粉末製造装置を用意した。なお、金属粉末製造装置の構成については表1に示す通りである。また、流体噴射部から噴射する流体には窒素ガスを用い、冷却液流出部から流出させる冷却液には水道水を使用した。
1.金属粉末の製造
(実施例1)
<1>まず、図1に示す金属粉末製造装置を用意した。なお、金属粉末製造装置の構成については表1に示す通りである。また、流体噴射部から噴射する流体には窒素ガスを用い、冷却液流出部から流出させる冷却液には水道水を使用した。
<2>次に、溶融金属供給部に原材料としてSUS316Lのインゴットを投入し、溶解させて溶融金属を作製した。
<3>次に、金属粉末製造装置の作動により、金属粉末を製造した。なお、金属粉末の製造中、筒状体の下部の内部は金属粉末を含む冷却液で充填された状態が維持されていた。すなわち、筒状体の上部の内部では、側方および下方が冷却液層によって囲まれた状態になっていた。
(実施例2〜12)
金属粉末製造装置の構成を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして金属粉末を得た。
金属粉末製造装置の構成を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして金属粉末を得た。
(比較例1〜4)
金属粉末製造装置の構成を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして金属粉末を得た。なお、各比較例では、筒状体の上部の傾斜角度θ1、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2との角度差、および、液滴の飛行距離の3要素のうち、少なくとも1要素が所定の条件を満たしていない。
金属粉末製造装置の構成を表1に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして金属粉末を得た。なお、各比較例では、筒状体の上部の傾斜角度θ1、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2との角度差、および、液滴の飛行距離の3要素のうち、少なくとも1要素が所定の条件を満たしていない。
2.金属粉末の評価
2.1 球形度の評価
各実施例および各比較例で製造した金属粉末に分級処理を施した。
2.1 球形度の評価
各実施例および各比較例で製造した金属粉末に分級処理を施した。
次いで、分級した金属粉末について、レーザー回折式粒度分布測定装置により、質量基準の粒度分布を得た。そして、粒度分布の小径側から累積50%における粒径を平均粒径として求めたところ、各実施例および各比較例のいずれも7.5〜8.5μmの範囲内であった。
次いで、分級した金属粉末について、タップ密度を測定した。なお、金属粉末のタップ密度は、JIS Z 2512(2012)に規定された金属粉のタップ密度測定方法に準拠する方法により測定した。また、タップ密度は、金属粉末の粒子の球形度と相関があるといえるため、タップ密度を評価することによって球形度を間接的に評価することができる。
測定したタップ密度を表1に示す。
測定したタップ密度を表1に示す。
なお、図4は、実施例1で製造した金属粉末の走査型電子顕微鏡像である。また、図5は、比較例1で製造した金属粉末の走査型電子顕微鏡像である。
このうち、図5から明らかなように、比較例1で製造した金属粉末には、細長い粒子が多数含まれていることが認められる。
一方、図4から明らかなように、実施例1で製造された金属粉末には、細長い粒子がほとんど認められず、真球に近い形状の粒子が多数を占めていることが認められる。
2.2 酸素濃度の評価
各実施例および各比較例で製造した金属粉末の酸素濃度を、LECO社製酸素・窒素分析装置TC−300/EF−300により測定した。なお、この分析装置は、JIS Z 2613:2006に規定された金属材料の酸素定量方法通則に準拠する方法により測定するものである。
各実施例および各比較例で製造した金属粉末の酸素濃度を、LECO社製酸素・窒素分析装置TC−300/EF−300により測定した。なお、この分析装置は、JIS Z 2613:2006に規定された金属材料の酸素定量方法通則に準拠する方法により測定するものである。
測定した酸素濃度を表1に示す。なお、表1では、実施例3で製造した金属粉末の酸素濃度を1とし、それ以外の実施例および各比較例で製造した金属粉末の酸素濃度を相対値で示している。
表1から明らかなように、各実施例で製造した金属粉末は、いずれも、各比較例で製造した金属粉末に比べてタップ密度が高い、すなわち球形度が高いことが認められた。また、各実施例で製造した金属粉末は、いずれも、各比較例で製造した金属粉末に比べて酸素濃度が低いことが認められた。
よって、本発明によれば、意図しない組成変化が少なく、かつ、十分な球形化が図られている金属粉末を製造し得ることが認められた。
一方、比較例1、2で製造した金属粉末は、タップ密度および酸素濃度の双方において不良であった。この原因として、比較例1、2で使用した金属粉末製造装置では、上部の軸線A1が大きく傾斜しているため、液滴の飛行距離をあまり長く確保することができず、また、筒状体の内部空間に酸素や蒸気等が残留し易くなっていることが挙げられる。
また、比較例3で製造した金属粉末は、特に酸素濃度が高い点で不良であった。この原因としては、角度θ2と角度θ1との差がゼロである、すなわち、筒状体の上部の軸線と下部の軸線とが同一であるとともに、上部と下部との間に内径差に伴う段差が生じたため、冷却液の流れが滞ったり内部空間の底面に十分な厚さの冷却液層が形成されず、冷却が遅れるとともに、内部空間に酸素が侵入し易くなっていることが挙げられる。
さらに、比較例4で製造した金属粉末も、特に酸素濃度が高い点で不良であった。この原因としては、液滴の飛行距離が長すぎるため、冷却が遅れてしまい、その分、金属の酸化が進行したことが挙げられる。
なお、流体噴射部から噴射する気体をアルゴンガスに変更した以外、各実施例および各比較例と同様にして金属粉末を製造したが、評価結果は上記と同様の傾向を示した。
1…金属粉末製造装置、2…溶融金属供給部、3…筒状体、4…冷却液流出部、5…流体噴射部、6…誘導コイル、7…蓋部材、21…吐出口、30…内部空間、31…上部、32…下部、33…接続部、41…冷却液流出口、51…溶湯ノズル、52…ガス室、53…流体噴射口、511…溶湯ノズル孔、A1…軸線、A2…軸線、A3…軸線、G…気体、Q…溶融金属、Q1…液滴、R…金属粉末、S…冷却液、S1…冷却液層、VL…鉛直線、d1…内径、d2…内径、θ1…角度、θ2…角度
Claims (6)
- 溶融金属を流下させる溶融金属供給部と、
前記溶融金属供給部の下方に設置され、軸線と鉛直線とのなす角度が0°以上20°以下である上部と、前記上部の下端に連続して設けられる下部であってその軸線と鉛直線とのなす角度が前記上部の軸線と鉛直線とのなす角度よりも大きくなるように傾けられている下部と、を含む筒状体と、
前記溶融金属供給部から供給される溶融金属に向けて流体を噴射する流体噴射部と、
前記筒状体の前記上部の内周面に沿って冷却液を流出させる冷却液流出部と、
を有し、
前記溶融金属が前記流体と衝突して形成される液滴の鉛直方向に沿った飛行距離が、前記筒状体内において前記上部の内径の1.5倍以上20倍以下の距離であることを特徴とする金属粉末製造装置。 - 前記下部の軸線と鉛直線とのなす角度は、前記上部の軸線と鉛直線とのなす角度よりも5°以上90°以下大きい請求項1に記載の金属粉末製造装置。
- 前記下部の内径は、前記上部の内径よりも小さい請求項1または2に記載の金属粉末製造装置。
- 前記冷却液は、前記下部の内部に充填されている請求項3に記載の金属粉末製造装置。
- 前記流体は、不活性ガスである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属粉末製造装置。
- 前記上部の内部に設けられ、前記冷却液で構成される冷却液層によって側方および下方が取り囲まれている空間を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の金属粉末製造装置。
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|---|---|---|---|---|
| US20210237154A1 (en) * | 2020-02-04 | 2021-08-05 | Seiko Epson Corporation | Metal powder production method and metal powder production apparatus |
| CN115971501A (zh) * | 2023-03-21 | 2023-04-18 | 山西盛世多乐信息技术有限公司 | 一种金属粉末的智能化生产设备 |
| CN117884643A (zh) * | 2024-03-11 | 2024-04-16 | 四川力泓电子科技有限公司 | 铜粉、铜粉制备方法及其应用 |
-
2016
- 2016-02-19 JP JP2016030402A patent/JP2017145493A/ja active Pending
Cited By (6)
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