JP2017145505A - 電気亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

電気亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板に接触するコンダクタロールが腐食して製品の外観を損なうことを、簡易な方法で容易に抑制することができる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】本発明は、コンダクタロールに接触した鋼板を硫酸酸性の亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板に対向した陽極との間に通電して鋼板表面に亜鉛めっきを形成する電気亜鉛めっき鋼板連続製造設備において、電気亜鉛めっき処理中における前記コンダクタロールの表面電位を、活性態領域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態領域が存在する場合には、活性態領域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、前記鋼板の表面に亜鉛めっきを施すことを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、水平型めっきセルを用い、コンダクタロールに接触する帯状の鋼板を硫酸酸性の亜鉛めっき浴に連続的に浸漬して、前記鋼板と対向する不溶性電極の間に電流を流すことで前記鋼板の表面に亜鉛めっきを施す電気亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
電気亜鉛めっき鋼板は、優れた耐食性と塗装性を備えていることから、電化製品等の幅広い用途で用いられている。
一般的に、工場の生産ラインで帯状の鋼板に電気めっき法を用いて連続的に亜鉛皮膜を形成する場合には、被めっき鋼板を適切な前処理によって洗浄した後、亜鉛イオンを含有した水溶液(以下、亜鉛めっき浴と記載する。)に浸漬し、鋼板と対向する電極との間に電流を流すことによって鋼板表面で亜鉛イオンの還元反応を発生させて鋼板表面に亜鉛皮膜を形成する方法が採用されている。
電気亜鉛めっき浴の成分としては、シアン浴、塩化物浴、硫酸浴等が存在するが、帯状の鋼板表面へのめっき処理としては、硫酸酸性の亜鉛めっき浴を用いることが一般的である。
亜鉛めっき浴中の亜鉛イオン濃度は、めっき処理の進行に従って低下するため、減少した亜鉛イオンを亜鉛めっき浴に供給する必要がある。鋼板に対向するアノード(陽極)に金属亜鉛を使用した場合には、めっきの進行とともにアノードの金属亜鉛が溶解することで、亜鉛めっき浴中の亜鉛濃度が一定に保たれる。
一方、アノードとして酸化イリジウム(IrO)等の不溶性アノード(不溶性陽極)を使用した場合には、亜鉛イオン供給のために亜鉛めっき浴中に金属亜鉛と硫酸を反応させながら添加することで、亜鉛めっき浴中の亜鉛濃度を制御する。不溶性アノードを使用する際には、硫酸亜鉛化合物を添加することによっても亜鉛濃度を制御することができる。
不溶性アノードを使用した場合には、亜鉛めっき浴中には、硫酸、金属亜鉛(または硫酸亜鉛化合物)の他に、硫酸ナトリウムが添加され、亜鉛めっき浴の電気伝導度を調整する支持電解質の役割を果たす。また、亜鉛めっき浴中には、他に浸漬する鋼板から溶出したFeイオンが不純物として存在していることが多い。さらに、亜鉛めっき浴の電気伝導度と反応速度を向上させる目的で、亜鉛めっき浴は通常60℃前後に加熱して使用される。
鋼板をめっき浴に浸漬する方法としては、大まかに、水平型、縦型、ラジアル型の3種類のセルを用いた方法が存在するが、水平型セルを用いた方法においては、例えば、図5に示すように、水平に張った鋼板2の上側(表面側)からコンダクタロール1、下側からバックアップロール6を接触させることによって鋼板2を保持し、鋼板2とその鋼板2に対向する電極板(不溶性アノード)4との間に、亜鉛めっき浴3を流動させて電流を流すことによってめっき反応を起させることで、鋼板2の表面に亜鉛めっきを施している。
コンダクタロール1は、亜鉛めっきを施す鋼板2に直接接触して電子の伝導を担うロールである。コンダクタロール1の表面形状は電気亜鉛めっき鋼板の最終の表面形状に転写されるため、コンダクタロール1の表面を平滑に保つことは良好な製品を得る上で重要であり、定期的な研削が必要となる。
実際の電気亜鉛めっき鋼板製造ラインでは、コンダクタロールを最低1か月は連続して使用し、定修等を利用してロール交換を行うことが通常である。しかし、電気亜鉛めっき鋼板製造ラインのコンダクタロールの表面は、硫酸酸性の亜鉛めっき浴に触れた状態で、鋼板と接触しながら大きな電流を受けることが原因で腐食が促進され、僅か数日間の使用で表面に肌荒れ模様が生じることがある。
この場合、製造ラインを停止してロールを交換することが必要となり、生産性に多大な影響を与える。また、肌荒れが生じたロールを再使用するためには表面を多量に研削して粗度を改善する必要があることから、ロールの廃却径に達するまでの時間が短くなり、短期間の使用でまた新しいロールと交換しなければならないという問題も存在する。
このため、コンダクタロールに接触する帯状の鋼板を硫酸酸性の亜鉛めっき浴に連続的に浸漬して、鋼板とその鋼板に対向する不溶性電極の間に流動する前記亜鉛めっき浴に電流を流すことで前記鋼板の表面に亜鉛めっきを施す電気亜鉛めっき鋼板の製造方法においては、コンダクタロールの腐食を抑制することが非常に重要であると言える。
このような問題に対し、コンダクタロールの腐食を抑制する技術が多々提案されている。特許文献1に記載された提案は、ロール表面に炭化物サーメット粉末とC含有ニッケルクロム合金粉末とからなる混合粉末の溶射皮膜中に、再析出させた炭化物を分散させてなる溶射皮膜を形成させることで、優れた皮膜特性と長期にわたって安定した表面状態を維持できる電気めっき用コンダクタロールを提供しようというものである。
また、特許文献2に記載された提案は、ロール材の表面にNi系マトリックスまたはCo系マトリックスメッキ皮膜を形成し、その上に、耐摩耗、耐食溶射皮膜を被覆させることで、著しく激しい条件下においても、耐摩耗性、耐食性に優れた電気メッキ用コンダクタロールを提供しようというものである。更に、特許文献3では、導電系セラミックス層を表面に形成した電気メッキ用高耐食性通電ロールが提案されている。
これらの提案は全てコンダクタロールの表面に皮膜を形成することでコンダクタロールの腐食を抑制しようというものであるが、皮膜の剥離などは検討されていない。また、特に導電系セラミックスなどの皮膜を形成するものは、皮膜の電気伝導率が金属材料よりも低いため、大電流を用いてめっき処理を行う電気亜鉛めっき鋼板製造設備においては、これら皮膜における抵抗が電流ロスの原因となることが懸念される。
特開平5−295592号公報 特開平4−346693号公報 特開昭61−48594号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、鋼板に接触するコンダクタロールが腐食して製品の外観を損なうことを、簡易な方法で容易に抑制することができる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法は、コンダクタロールに接触した鋼板を硫酸酸性の亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板に対向する陽極との間に通電して鋼板表面に亜鉛めっきを形成する電気亜鉛めっき鋼板連続製造設備において、電気亜鉛めっき処理中における前記コンダクタロールの表面電位を、活性態域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態域が存在する場合には、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、前記鋼板の表面に亜鉛めっきを施すことを特徴とする。
本発明の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法によると、コンダクタロールの表面に特別な皮膜を形成しなくても、めっき処理中におけるコンダクタロールの表面電位を一定の範囲内に制御するだけで鋼板に接触するコンダクタロールが腐食して製品の外観を損なうことを容易に抑制することができ、また、それに伴いコンダクタロールの交換回数も減らすことができる。
本発明の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いて電気亜鉛めっき鋼板を製造している状況の一実施形態を示す模式図である。 ハステロイC系合金(ハステロイは米国ヘインズ社の登録商標:28Cr−48Ni系合金)製のコンダクタロールを用い、模擬亜鉛めっき浴中で電気化学測定を行った結果を示すグラフ図である。 純Ni製のコンダクタロールを用い、模擬亜鉛めっき浴中で電気化学測定を行った結果を示すグラフ図である。 亜鉛めっき浴中にFeイオンが溶出すると浸漬電位が貴にシフトすることを示すグラフ図である。 従来の電気亜鉛めっき装置を用いて電気亜鉛めっき鋼板を製造している状況を示す模式図である。
電気亜鉛めっき鋼板の製造においては、コンダクタロールの腐食が以前より問題となっており、定性的にはpHが低い(めっき浴中の硫酸濃度が高い)ほど腐食が発生しやすいこと、コンダクタロールへの通電量が多いほど腐食が発生しやすい傾向等が従来から知られている。しかしながら、その発生メカニズムは明確になっていなかったことから、コンダクタロールの腐食を完全には抑制できず、場合によれば突発的な腐食の発生によるライン停止が発生していた。
このような問題の発生を解消するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、コンダクタロールへの通電と回転に着目し、コンダクタロールが回転するたびに、その表面は通電状態と非通電状態が繰り返されており、この過程でコンダクタロールの表面において不動態皮膜の形成と破壊が繰り返されることが腐食発生の原因になっていることを明らかにした。
コンダクタロールが通電されながら回転している間に、アノードに近接した部分のコンダクタロール表面(通電部)はカソード(陰極)側に分極を受けている。一方で、コンダクタロールのアノードに対向していない部分(非通電部)の表面においては、カソード電流が流れないために分極を受けておらず、めっき浴への単純浸漬と同等の状態(浸漬電位)にあると考えられる。
コンダクタロールの表面がカソード分極状態にある時、万が一ロール表面で亜鉛の析出反応が起こってしまうと、ロールの表面粗度が変化したり、析出した亜鉛の粒が鋼板に押し込まれるなどの原因によって製品外観不良を招く虞があることから、通常の操業条件では表面において水素の発生反応が生じている。この際、たとえコンダクタロール表面に不動態等の被膜が形成されていたとしてもカソード分極によって破壊されるため、ロールの表面は活性な状態に変化する。
一方で、コンダクタロールの表面が浸漬状態にある時の挙動は、コンダクタロール部材のアノード分極挙動と、ロール材質・めっき液組成によって決定される浸漬電位によって決定される。コンダクタロールの浸漬電位が、活性態または不動態域よりも卑な状態にあるときには、ロール表面には特に変化は生じない。
コンダクタロールの浸漬電位が活性態または過不動態域にある場合には、単純浸漬の状態でも著しい腐食が発生する場合がある。この際の腐食反応は、電気亜鉛めっき設備の稼働や通電に関係せず、設備停止時に亜鉛めっき浴に浸漬しているだけで腐食が発生することになるため、浸漬状態で活性態・過不動態域にあるようなロール素材・めっき浴組成の組み合わせは選択されない。
しかしながら、コンダクタロールの浸漬電位が不動態域にあるときには、単純浸漬状態においてロール表面に不動態皮膜が形成される。この場合、電気亜鉛めっき設備の停止時には腐食反応は起こらないため、見かけ上は安定に使用可能として認識される場合がある。しかしながら、設備稼働時にはコンダクタロールが通電されながら回転を受けることにより、ロール表面において前述のような非通電(浸漬)状態での不動態皮膜形成と通電(カソード分極)状態での不動態皮膜が高速に繰り返されることによって腐食が進行してしまう場合がある。
上述のように、本発明者らは、電気亜鉛めっき鋼板製造設備の稼働時に発生するコンダクタロールの腐食反応について、コンダクタロールの通電・回転状態と不動態化挙動に着目した評価を行うことにより、そのメカニズムを明確化するに至った。
その結果、通電量がたとえ多くても、常時通電し、コンダクタロールの表面電位を、活性態域が存在しない場合には、不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態域が存在する場合には、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、その状態を維持することで、腐食の発生を抑制できることを明らかにした。
コンダクタロールが回転し、通電時の電位から浸漬電位に変化した際、めっき浴中成分とコンダクタロール材質との関係によっては不動態化電位となっており、ロール表面は不動態化するが、再度通電電位(カソード分極)に変化した際にはこの不動態皮膜が破壊される。このため、通電状態と浸漬状態を繰り返すと、不動態化と溶解が繰り返されることになるので、ロール表面には肌荒れが発生してしまう。尚、図5に示すコンダクタロール1の表面のうち、細線で示す部位が通電状態、太線で示す部位が浸漬状態である。
しかし、本発明では、常時ロールの表面電位を制御することによって不動態の形成・破壊が繰り返されることを抑制し、腐食の抑制が可能となる。
このように、コンダクタロール表面が通電状態と浸漬状態を繰り返す際の電位を、不動態化と破壊が繰り返されないように制御することにより、コンダクタロールの腐食を抑制することができる。コンダクタロールの腐食を抑制できるため、研削や交換の費用を抑えつつ、電気亜鉛めっき鋼板を製造することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を示す図面に基づいて更に詳細に説明する。
(電気亜鉛めっき鋼板の製造装置)
本発明を実施可能な電気亜鉛めっき鋼板の製造装置は、例えば、図5に示すように、水平に張った鋼板2の上側(表面側)からコンダクタロール1、下側からバックアップロール6を接触させることによって鋼板2を保持し、鋼板2とその鋼板2に対向するIrOアノードなどの不溶性アノード4の間に、硫酸酸性の亜鉛めっき浴3を流動させて電流を流すことによってめっき反応を起させることで、鋼板2の表面に亜鉛めっきを施すために用いられる。
(電気亜鉛めっき鋼板の製造方法)
前記した電気亜鉛めっき鋼板の製造装置を用いて、鋼板の表面に亜鉛めっきを施す際におけるコンダクタロールの表面電位を、活性態域が存在しない場合には、不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態域が存在する場合には、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、鋼板の表面に亜鉛めっきを施すことで、コンダクタロールの腐食の発生を抑制することができる。
電気亜鉛めっき鋼板製造設備におけるコンダクタロール材質としては、めっき浴の成分や通電量などの設備仕様に応じて、Cu基・Ni基・Fe基(SUS)などの種々の材料を選択することが可能である。これらの材質を選定し、電気亜鉛めっき鋼板の製造過程において腐食なしに操業を行うために、各材料の分極挙動を把握することが必要である。
以下、活性態域が存在しない場合の例としては、ハステロイC系合金(ハステロイは米国ヘインズ社の登録商標:28Cr−48Ni系合金)製のコンダクタロールを用いた時の表面電位について図2をもとに、活性態域が存在する場合の例としては、純Ni製のコンダクタロールを用いた時の表面電位について図3をもとに、それぞれ説明する。尚、例として前記2種類の金属材料を示すが、他の金属材料でも活性態域が存在しない場合、活性態域が存在する場合ごとに、それぞれ同様の傾向が現れる。
図2および図3に示す分極曲線は、ZnSO・7HO換算で350g/L、NaSOは100g/L、HSOにてpH=1.2に調製した代表的な電気亜鉛めっき浴(温度60℃)中でのアノードおよびカソード分極挙動を示したものである。なお、ここで示した電位は、標準水素電極(SHE)に対する電位差である。電流密度が最小になる電位は、各材料を溶液に単純浸漬した場合の浸漬電位と一致する。浸漬電位より貴(アノード側)な電位で電流密度に大きな変化がない領域を不動態域、浸漬電位から不動態域に達するまでに電流密度に大きな変化がある場合には、不動態域の電流密度以上になっている領域を活性態域とする。浸漬電位から活性態域に達する電位までに差が生じるが、電流密度が非常に小さいので材料に大きな影響を与えないと考えられる。また、不動態域の電位より更に貴な電位になる領域を過不動態域とする。
一方、浸漬電位から卑(カソード)側に走査すると水素が発生する。その領域を水素発生領域とする。また、ある電位で水素発生から亜鉛析出に反応が変化するため電流密度が減少する電位が現れる。電流密度が減少する電位から卑な領域では亜鉛が析出するため亜鉛析出領域とする。
図2に示すように、ハステロイC系合金では、−0.1Vから1.05Vまでの電位の領域が不動態域、1.05Vより貴な電位の領域が過不動態域となる。また、−0.9Vから卑な電位の領域が亜鉛析出領域となる。よって、活性態域が存在しないハステロイC系合金における、不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とは、−0.1Vより卑な電位かつ−0.9Vより貴な電位のことである。
図3に示すように、純Niでは、0.0Vから0.55Vまでの電位の領域が活性態域、0.55Vを超え0.95Vまでの電位の領域が不動態化領域、0.95Vより貴な電位の領域が過不動態域となる。また、−0.85Vから卑な電位の領域が亜鉛析出領域となる。よって、活性態が存在する純Niにおける、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とは、0.0Vより卑な電位かつ−0.85Vより貴な電位のことである。
尚、亜鉛めっき浴中に鋼板から溶出した不純物としてのFeイオンが溶出等の理由により、図4に示すように、浸漬電位が貴にシフト(実線→破線)してしまい、浸漬電位が不動態化電位に変化する。その結果、コンダクタロールの回転に伴って、ロール表面での不動態形成と破壊を繰り返すことになり、コンダクタロールの表面に肌荒れが発生する。
上記知見に基づくと、コンダクタロール表面の肌荒れ発生を防ぐためには、電気亜鉛めっき鋼板製造設備の稼働中におけるロール表面電位を、活性態域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態域が存在する場合には、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とすることが効果的である。
その具体的な方法として、以下の3つの手段を取ることができる。
(1)コンダクタロール表面電位を、外部電源を用いて動的に制御する
(2)コンダクタロールの表面電位を一定の範囲に維持できるよう、めっき浴組成の管理を行う
(3)電気亜鉛めっき設備のめっき浴組成に対し、浸漬状態で不動態皮膜を形成しないコンダクタロール素材を選定する
(コンダクタロール表面電位の測定方法)
コンダクタロール表面の電位測定は、コンダクタロール近傍の亜鉛めっき浴中に参照電極を浸漬し、コンダクタロールと参照電極とが示す電位差を電圧計で測定することによって常時行うことができる。また、対極、参照電極、コンダクタロールの試験片をそれぞれ準備して、電気亜鉛めっき鋼板製造設備から採取しためっき浴への浸漬電位をビーカー内で試験的に測定することによっても同等の結果を得ることができる。
(コンダクタロール表面電位の動的な制御方法)
コンダクタロールの表面電位は、鋼板と対向する不溶性アノードとは別に、コンダクタロール表面に対向する位置にコンダクタロール用不溶性アノードを設け、外部電源を電気的に接続することで制御することが可能である。図1にその模式図を示す。コンダクタロール1表面の亜鉛めっき浴3に浸漬されない部位に対向する位置に、コンダクタロール1の表面電位を制御するためのコンダクタロール用不溶性アノード5を設ける。コンダクタロール用不溶性アノード5は、不溶性アノード4と同様に酸化イリジウム(IrO)などの材料で形成されている。また、コンダクタロール用不溶性アノード5は、図1に示すような断面円弧状の板であって、コンダクタロール1表面との間隔は等間隔であることが好ましいが、必ずしも断面円弧状の板でなくても良く、例えば、断続的に設けられた複数枚の板などであっても良い。また、コンダクタロール用不溶性アノード5とコンダクタロール1表面との間隔は必ずしも等間隔でなくても良い。
(めっき浴組成制御によるコンダクタロール表面電位の制御)
また、コンダクタロールの表面電位は、コンダクタロール部材の材質(組成)とめっき浴組成の関係で決定されるため、コンダクタロールの表面電位を常時測定し、必要に応じてめっき浴組成を制御することによって、コンダクタロールの表面電位を制御することが可能である。
(コンダクタロール部材の選定方法)
さらに、コンダクタロールの腐食に対して、分極曲線の水素発生域、活性帯域、不動態域、過不動態域が及ぼす影響を明らかにすることができたため、この知見を個々の電気亜鉛めっき鋼板製造設備(特に、めっき浴組成)に対して最適なコンダクタロール部材の選定に活用することが可能となる。具体的には、実プロセスのめっき浴を採取し、このめっき液中における種々の候補材料の分極曲線を測定して、設備稼働中のロール表面電位として、活性態域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位に、活性態域が存在する場合には、活性態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位に維持可能であり、操業中に腐食を発生させない部材を選定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
図示しない前処理設備にて、アルカリ脱脂、電解洗浄、酸洗処理を行った後の帯状の鋼板2を、図1に示す水平型めっきセルに通板し、その鋼板2と対向する不溶性アノード4との間に、硫酸酸性の亜鉛めっき浴3を流動させて電流を流すことで、鋼板2の表面でZnイオンの還元反応を発生させることにより、鋼板2の表面に亜鉛めっきを施して電気亜鉛めっき鋼板を製造した。
初期の亜鉛めっき浴3中のZn含有量は、ZnSO・7HO換算で350g/L、NaSOは100g/L、亜鉛めっき浴3の温度は60℃に保ち、コンダクタロール1表面に対向する位置に設けたコンダクタロール用不溶性アノード5の印加電位は、表1に示す各条件となるようにして、鋼板2の表面に亜鉛めっきを施した。
腐食が発生していないコンダクタロールを水平型めっきセルにセットして試験を開始し、ロール腐食による鋼板(製品)の外観不良の発生度合を確認することによって合否の判定を行った。
定修までの30日間の操業の間に、製品への外観不良が発生してコンダクタロールの交換を余儀なくされた場合を×、30日後にコンダクタロールに腐食による僅かな変色が生じていたものの製品への外観不良発生が無かったものを○、30日後にもコンダクタロールの変色が生じていなかったものを◎とし、◎および○を合格とした。
表1には、鋼板と対向する不溶性アノードとは別に、コンダクタロール表面に対向する位置にコンダクタロール用不溶性アノードを設け、外部電源を電気的に接続することでコンダクタロール表面電位を制御した場合の結果を示す。
Figure 2017145505
表1によると、活性態域が存在しないハステロイC系合金をコンダクタロールの材料として用いたNo.1〜5では、印加電位が−0.1Vより卑な電位かつ−0.9Vより貴な電位という条件を満足していたため、30日後にも製品の外観不良を発生させることなく操業を行うことができた。
一方、No.9,10は、印加電位が−0.1Vより卑な電位かつ−0.9Vより貴な電位という条件から外れていたため、No.9では操業中にコンダクタロールに腐食が生じ、No.10では操業中にコンダクタロール表面に亜鉛が析出し、ともに製品に外観不良が発生した。
また、活性態域が存在する純Niコンダクタロールの材料として用いたNo.6〜8では、印加電位が−0.0Vより卑な電位かつ−0.85Vより貴な電位という条件を満足していたため、30日後にも製品の外観不良を発生させることなく操業を行うことができた。
一方、No.11,12は、印加電位が0.0Vより卑な電位かつ−0.85Vより貴な電位という条件から外れていたため、No.11では操業中にコンダクタロールに腐食が生じ、No.12では操業中にコンダクタロール表面に亜鉛が析出し、ともに製品に外観不良が発生した。
ハステロイC製のコンダクタロールを使用した場合において、めっきセルのコンダクタロール近傍のめっき液を8時間に1回採取し、ライン外にてめっき浴中成分を化学分析し、必要に応じて成分調整(液のダンプアウト、新液の追加)を行うことでめっき浴組成を一定の値に管理して操業を行った。めっき浴中のZn含有量はZnSO・7HO換算で350g/L、NaSOは100g/L、めっき浴温度は60℃に保ち、浴中のpHおよびFe3+含有量(単位はppm)は下表2に示す各条件になるように管理を行った。また、同じ浴中におけるハステロイ製コンダクタロールの浸漬電位をビーカーにて測定した結果についても示す。
腐食の発生していないコンダクタロールをセットして運転を開始し、ロール腐食による外観不良の発生度合を確認することによって合否の判定を行った。定修までの30日間の操業の間に、製品への外観不良が発生してロールの交換を余儀なくされた場合を×、30日後に腐食によるロールのわずかな変色が生じていたものの製品への外観不良発生が無かったものを○、30日後にもロールの変色が生じていなかったものを◎とし、◎および○を合格とした。
Figure 2017145505
めっき浴中の成分の変化に伴い、コンダクタロールの浸漬電位が変化しており、浸漬時の電位が不動態化域よりも卑な領域にある際にはコンダクタロールの腐食が発生せず、外観不良を発生させずに操業が可能であることが明らかである。また、積極的に浴組成の制御を行わない場合にも、実操業時に変化しうる浴組成の範囲内におけるコンダクタロールの分極挙動(特に、単純浸漬時の電位が、不動態化域にあるかどうか)を評価したうえでコンダクタロール部材を選択することにより、各設備の操業状況に適したコンダクタロールの選定が可能となる。
なお、上記例では、浴組成の目標値を一定に定めて制御を行うことによってコンダクタロールの腐食を抑制する手段としたが、逆にコンダクタロールの浸漬電位の目標範囲域を定め、これを基準に操業管理を行うこともまた有効である。具体的には、コンダクタロールの浸漬電位を常時モニタリングし、浸漬電位が不動態化電位域に近づいた場合には液組成の調製を行う等の方法を取ることができる。
1・・・コンダクタロール
2・・・鋼板
3・・・亜鉛めっき浴
4・・・不溶性アノード
5・・・コンダクタロール用不溶性アノード
6・・・バックアップロール

Claims (4)

  1. コンダクタロールに接触した鋼板を硫酸酸性の亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板に対向した陽極との間に通電して鋼板表面に亜鉛めっきを形成する電気亜鉛めっき鋼板連続製造設備において、電気亜鉛めっき処理中における前記コンダクタロールの表面電位を、活性態領域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、活性態領域が存在する場合には、活性態領域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位とし、前記鋼板の表面に亜鉛めっきを施すことを特徴とする、電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記コンダクタロール表面に対向する位置に、鋼板に対向した陽極とは別に、コンダクタロールの表面電位を制御するためのコンダクタロール用不溶性陽極を設け、外部からの電位制御によってコンダクタロール表面電位を制御することを特徴とする、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記コンダクタロールの電気亜鉛めっき処理中における表面電位が、
    活性態領域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位に、
    活性態領域が存在する場合には、活性態領域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位になるように
    めっき液組成を制御することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記コンダクタロールの電気亜鉛めっき処理中における表面電位が、
    活性態領域が存在しない場合には不動態域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位に、
    活性態領域が存在する場合には、活性態領域より卑な電位かつ亜鉛析出領域より貴な電位になるように
    コンダクタロールの部材を選定することを特徴とする、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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