JP2017148005A - ユーグレナ,バイオ燃料組成物及びワックスエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ユーグレナは、好気状態では余剰の光合成産物や外部の炭素源から得た炭素をβ-1,3-グルカンであるパラミロンとして貯蔵する。図1に示すように、低酸素状態では蓄積したパラミロンを出発物質として、ワックスエステルを発酵生産する。
一般的に、多くの微細藻類が細胞内に蓄積するオイルは、C16以上かつ多価不飽和脂肪酸を多く含むトリアシルグリセロールであり、酸化および劣化しやすい。
それに対し、ユーグレナワックスエステルは、主成分がミリスチン酸ミリスチル(C14:0-C14:0Alc)であり、他の生物由来のものと比較して短い脂肪酸、脂肪アルコールからできていると共に、不飽和結合を持たないため、他の微細藻類由来オイルに比べて酸化に強く、軽質なバイオディーゼルへと変換可能であるという利点がある。
このように、ワックスエステルが、炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とするため、炭素原子数が30以上である他の微細藻類由来のワックスエステルと比較して、酸化に強く、軽質で、凝固点も低く、寒冷地でもバイオ燃料として好適に使用可能なワックスエステルを得ることが可能となる。
また、このようなワックスエステルを含有するユーグレナを得ることができるので、ユーグレナを培養することにより、ワックスエステルの製造が可能となる。
また、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されているとよい。
このように、中・長鎖脂肪酸伸長酵素のうちの一つである3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されているため、ユーグレナのワックスエステルの合成において、より短鎖長のワックスエステルを得ることが可能となる。
また、炭素原子数が奇数の鎖長の脂肪酸及び脂肪アルコールのそれぞれの量が、炭素原子数が偶数の鎖長の脂肪酸及び脂肪アルコールのそれぞれの量よりも少なくてもよい。
また、前記課題は、本発明のワックスエステルの製造方法によれば、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されたKAT1ノックダウンユーグレナを、ユーグレナが増殖可能な増殖至適温度で培養する至適温度培養工程と、前記増殖至適温度よりも低い低温で、かつ酸素の供給のない条件下に、前記KAT1ノックダウンユーグレナを保持する低温低酸素処理工程と、前記KAT1ノックダウンユーグレナからワックスエステルを抽出する抽出工程と、を行うこと、により解決される。
このように、増殖至適温度よりも低い低温で、かつ酸素の供給のない条件下に、ユーグレナを保持する低温低酸素処理工程を行うことにより、ワックスエステルを構成する脂肪酸及び脂肪アルコールの鎖長が短縮化され、ワックスエステルの低分子化が達成できる。その結果、酸化,劣化し難く、寒冷地でもバイオ燃料として好適に利用できるワックスエステルを製造可能となる。
また、低温低酸素処理工程の前に至適温度培養工程を行っているため、至適温度培養工程で十分に藻体を増殖させてから、増殖が抑制される低温低酸素処理工程で、ワックスエステルの低分子化を促進することができる。従って、低温低酸素処理工程だけを行う場合よりも、短時間で、ワックスエステルの組成を改善できる。
このように構成しているため、炭素原子数の少ない炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物の量が、より多くなり、ワックスエステルの低分子化がより促進される。
また、前記抽出工程では、炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とする前記ワックスエステルを抽出してもよい。
文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同様の意味を有する。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。
RNAi(RNA interference)とは、二本鎖RNAにより配列特異的に遺伝子発現が抑制される現象をいう。
本発明のユーグレナは、炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とし、炭素原子数12の鎖長の脂肪酸を主成分とする脂肪酸と炭素原子数12の鎖長の脂肪アルコールを主成分とする脂肪アルコールがエステル結合してなるワックスエステルを含有する。本発明のユーグレナは、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されたものであってもよい。
ユーグレナとは、動物学や植物学の分類でユーグレナ属(Euglena)に分類される植物、その変種、その変異種のすべてを含む。
また、そのほか、ユーグレナ・グラシリス・クレブス,ユーグレナ・グラシリス・バルバチラス等の種や、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株を用いてもよい。また、その他のユーグレナ類、例えばAstaia longaを用いてもよい。
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用してもよく、また、すでに単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
ユーグレナは、図1に示すように、低酸素状態では蓄積したパラミロンを出発物質として、ワックスエステルを発酵生産する。
微生物は嫌気状態に曝されると、解糖系から生じる還元力を消費するため発酵を行う。
低酸素状態のユーグレナにおいては、ワックスエステル発酵が還元力を消費する役割を担っている。
図1に示すように、低酸素状態に曝露されたユーグレナは、パラミロンを分解し、グルコース単位に分解する。その後、解糖を経て生産したピルビン酸はミトコンドリアでアセチルCoAに変換された後ATPを消費しない図2のde novo脂肪酸合成系を経て、アシルCoAを合成する。アシルCoAはミクロソームに輸送されワックスエステルへと合成されると考えられている。
他の生物の発酵形式として代表的なものにはエタノール発酵や乳酸発酵があるが、これらの発酵産物は水溶性であるため細胞内の代謝に干渉するとともに、細胞外へ放出される。
一方、ワックスエステルは不溶性であり、細胞への毒性が低いと考えられ、細胞内に蓄積される。また、低酸素条件下で蓄積したワックスエステルは好気条件になると分解されてエネルギー産生に用いられる。よって、ワックスエステル発酵は他生物の発酵に比べて炭素源のロスが少ない低酸素条件下でのエネルギー獲得系であるといえる(北岡正三郎
(1989): ユーグレナ 生理と生化学 学会出版センター)。
ユーグレナミトコンドリアでは低酸素下で機能する脂肪酸合成系が存在する。本合成系は3-ケトアシルCoAチオラーゼ(EgKAT)によるアセチルCoA2分子の縮合から開始するため、ATPの消費を伴わずにアシル鎖伸長反応を進行する。
ユーグレナのワックスエステル発酵における脂肪酸合成はミトコンドリアの脂肪酸β酸化系の逆反応と考えられている(Inui H et. al.,(1984) : European journal of biochemistry, 142 (1),121.126.)。図2に示すように、この反応はエノイルCoAレダクターゼ、エノイルCoAヒドラターゼ、ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)という4つの酵素から成り立っている。
さらに、Thiolase Iには、様々な基質特異性を持つアイソザイムが細胞内に複数存在している。ユーグレナが持つKATに関しては、β酸化の複合体酵素の研究にてKAT活性の存在が報告されている(Uwa Winkler et. al., (2003): Plant Physiology, 131, 753-762.)。しかし、ワックスエステル合成経路で機能するKATアイソザイムに関する報告はこれまでなかった。KATはアシルCoAの伸長反応を触媒するため、ワックスエステル鎖長制御を行う上で重要な因子だと考えられる。そこで本発明者らは、ワックスエステル合成系で機能するKATアイソザイムを探索するとともに、各KATアイソザイムの役割を明らかにするために研究を進めた。RNAiを用いたノックダウンによりワックスエステル生産量や組成の制御を行い、ユーグレナが生産するワックスエステルを改変することを目指した。
本発明のワックスエステルの製造方法は、本発明のユーグレナを培養し、培養したユーグレナからワックスエステルを抽出することにより、ワックスエステルを製造する方法である。
本発明のワックスエステルの製造方法では、まず、ユーグレナを、ユーグレナが増殖可能な増殖至適温度で培養する至適温度培養工程を行う。ユーグレナとして、3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されたKAT1ノックダウンユーグレナを用いてもよい。
この工程では、ユーグレナの増殖至適温度である25〜28℃の範囲内の温度で培養を行う。また、この時、培地に添加するビタミンB12を、通常よりも制限してもよい。ビタミンB12の量は、ユーグレナの細胞分裂を阻害する程度の少ない量とするとよい。
培地中には、酸素を含む気体、例えば、空気の通気を行う。
この工程では、ユーグレナの増殖至適温度よりも低い温度,例えば、0〜25℃,好ましくは、15〜20℃,更に好ましくは、17℃程度の温度とする。
また、培地中に酸素を含む気体の通気をしていたものを、停止させ、ユーグレナを沈降させることにより、培地を低酸素又は酸素欠乏状態とする。
回収したワックスエステルは、バイオ燃料として用いることのできるバイオ燃料組成物である。ワックスエステルエステルは、単独でバイオ燃料として用いてもよいし、他の燃料に混合して用いてもよい。
各実験において、試薬は特に記載の無い限り、市販の特級試薬を用い、その他の材料及び装置は、文中に記載した。
((方法))
本実験では、培養時ではなく細胞を低酸素に曝露する際の温度を、ユーグレナの培養至適温度である27℃と、ユーグレナが増殖しない低温である16℃として低酸素処理を行い、ワックスエステル合成におよぼす影響について調べた。
・材料及び試薬
本実験では、葉緑体を有するEuglena gracilis Z株(以下ユーグレナ野生株)をstreptomycin処理で人工的に葉緑体を永久欠損させた変異体Euglena gracilis SM-ZK株(以下ユーグレナ葉緑体欠損株)(Oda Y. et. al., (1982) : J Gen Microbiol, 128, 853-858.)を使用した。
従属栄養培地として表1のKoren-Hutner培地(KH培地)を用いた。
ユーグレナの培養液とルゴール液を1:1の割合で混合することで細胞を固定し、この細胞液を適宜希釈して使用した。生存率測定はPropidium iodide(PI, Life TechnologiesTM)による死細胞染色を蛍光観察することにより行った。
細胞数計測では、ユーグレナ培養液を100μl採取し、0.5μlのPIを添加して約15分間静置した。その後、プレパラートを作製してHSオールインワン蛍光顕微鏡BZ-9000(KEYENCE)で観察した。撮影した写真をもとに、(全細胞数−PI染色細胞数)/全細胞数で生存率を算出した。
本実験で原料ユーグレナ細胞として用いたユーグレナ葉緑体欠損株は、静置すると培養容器の底へ沈む性質があった。静置して沈降した条件では、通気が悪く、さらに溶存酸素は自らの呼吸によって消費されることから、細胞は低酸素状態にあると考えられる。そこで、本実験では、低酸素状態とは、ユーグレナ細胞を静置した状態と規定した。
遠心分離(17400×g,1分)により、約0.5×106cellsのユーグレナを回収し、蒸留水で洗浄した後、上清を完全に除去した。パラミロン抽出はYokotaらの方法(Yokota A et. al., (1982) : Arch. Biochem. Biophys. 213 (2), 530-537.)に従って行った。定量はフェノール硫酸法(Hodge J. E., Hofreiter, B. T. (1962) In Method in Carbohydrate Chemistry, 1, 380-394.)により行い、既知濃度のグルコース水溶液をスタンダードとして用いた。
1.5 mlエッペンドルフチューブにユーグレナ培養液1.5 mlを移し、24h静置して低酸素処理を行った。その後遠心分離(17400×g,1分,4℃)し上清を除去した後、蒸留水で洗浄し、完全に上清を除去した。ワックスエステル抽出及び定量は、Inuiらの方法(Inui, H et.al.,(1982))に従って行った。ガスクロマトグラフィーはGC-2014を用い、2.5% Thermon-3000カラムで、235℃の恒温分析により測定した。スタンダードには、既知濃度のC14:0-C14:0Alcを用いた。
粗抽出ワックスエステルをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲルカラムは脱脂綿で先細部を密栓したパスツールピペット(直径5mm)にシリカゲル60(230-400mesh、Merck)を充填することにより作製した。溶媒はヘキサン、溶出は1%ジエチルエーテルを含むヘキサンで行った。
・ワックスエステルのケン化
ワックスエステルのケン化はInuiらの方法(Inui H et al. (1983))に従って行い、脂肪酸画分(FA)と脂肪アルコール画分(FAlc)を獲得した。
ワックスエステルのケン化により獲得した脂肪酸に対して、トリメチルシリルジアゾメタンによるメチル化処理を行い、脂肪酸メチルエステルを獲得した。まず、トルエン、ヘキサン、メタノールを1:1:1で混合し、混合液200μlで脂肪酸サンプルを溶解させた。トリメチルシリルジアゾメタンを10μl添加して数分放置した。反応後、飽和食塩水を200μl加えて混合後遠心し、有機相(上層)と水相(下層)を分離させた。有機相を回収・乾固し、脂肪酸メチルエステル画分(FAME)とした。
ガスクロマトグラフィーはGC-2014を用い、2.5%Thermon-3000カラムで、155℃の恒温分析により脂肪酸メチルエステル、脂肪アルコールを測定した。保持時間のスタンダードとしてC12-Alc、C14-Alc、C12-FAME、C14-FAMEを用いた。
モデル燃料を用いて示差走査熱量測定(DSC6100、Seiko Instruments Inc.)により熱分析を行った。
示差走査熱量計(DSC)とは、一定の熱を与えながら、基準物質と試料の温度を測定して、試料の熱物性を温度差として捉え、試料の状態変化による吸熱反応や発熱反応を測定する装置である。
目的ワックスエステルの脂肪酸・脂肪アルコール組成をもとに市販の脂肪酸メチルエステルと脂肪アルコールを混合後湯煎により融解し、DSCサンプルとした。
-150℃から80℃までを5℃/分で加熱し、続けて-150℃まで冷却する2ステップのプログラムで凝固点、融点の測定を行った(Dunn RO, (1999) : Thermal analysis of alternative diesel fuels from vegetable oils., J AM oil Chem Soc, 76, 109-115.)。
・培養温度が低酸素状態のパラミロン分解におよぼす影響
対数増殖期後期まで27℃振盪培養したユーグレナ細胞を27℃(対比例1)、16℃(実施例1)の温度条件で低酸素処理し、処理前(0時間)および24時間後の細胞の貯蔵パラミロン量を、((方法))の「・パラミロンの抽出・定量」に示した方法で測定した。結果を、図3に示す。
図3の結果より、16℃での低酸素処理(実施例1)により、27℃(対比例1)と比べてパラミロン分解量は減少した。
27℃で3日間振盪培養したユーグレナ細胞を27℃(対比例1)、16℃(実施例1)の温度条件で低酸素処理した。
24時間後に細胞ワックスエステルを抽出し、((方法))の「・ワックスエステル抽出分析法」に示した方法で測定した。ワックスエステルの総量を図4、鎖長ごとのワックスエステル量を図5に示した。ここでのワックスエステル総量とは、炭素鎖長20から32の各鎖長ワックスエステル量の合計とする。
粗抽出ワックスエステルを((方法))の「・ワックスエステルの精製」「・ワックスエステルのケン化」に示した方法で精製、ケン化し、脂肪アルコールと脂肪酸を獲得した。脂肪酸は((方法))の「・脂肪酸のメチル化」に示した方法でメチル化した。脂肪酸メチルエステル、脂肪アルコールを((方法))の「・脂肪アルコール、メチル化脂肪酸の分析」に示した方法で測定した。脂肪酸組成の測定結果を図6に、脂肪アルコール組成の測定結果を図7に示す。
図7より、16℃での低酸素処理(実施例1)により、脂肪アルコール組成は、27℃低酸素処理(対比例1)と比べC12、C13の割合が増加し、C14より長鎖脂肪アルコールの占める割合は減少した。
図4の脂肪酸組成、図5の脂肪アルコール組成をもとに脂肪酸メチルエステルと脂肪アルコールを混合し、27℃処理区モデル燃料(対比例1)と低温処理区モデル燃料(実施例1)を作製した。
((方法))の「・示差走査熱量計(DSC)によるモデル燃料作製の熱特性解析」の方法により、モデル燃料の凝固点を測定した。測定結果を、図8に示す。
27℃処理モデル燃料(対比例1)の凝固点は20℃、低温処理モデル燃料(実施例1)の凝固点は15.7℃であり、低温処理を行うことで約4℃凝固点が低下した。
実験1にて、ユーグレナを低温(16℃)に曝して低酸素処理すると、低分子化したワックスエステルが得られた。そこで、本実験では、低温処理とEgKAT1ノックダウンの組み合わせがワックスエステル発酵に及ぼす影響を解析した。
ユーグレナ細胞が低酸素状態に陥ると、図1に示すように、細胞内に貯蔵されていたパラミロンがグルコース単位に分解され、解糖系を経てピルビン酸となり、ミトコンドリアに輸送された後、ピルビン酸:NADP+酸化還元酵素の作用によってアセチルCoAに酸化的脱炭酸される。その後、ミトコンドリアに局在するde novo脂肪酸合成系でアシルCoAへと変換され、ミクロソームでワックスエステルへと合成される。ユーグレナの細胞内には、細胞内局在の異なる3種の脂肪酸合成系が存在する。一つは細胞質に存在する動物型脂肪酸合成系(FAS I)、もう一つは葉緑体に存在する植物型のACP依存型脂肪酸合成系(FAS II)、そして上に述べたミトコンドリア局在アセチルCoA依存型脂肪酸合成系である。
しかしミトコンドリアに存在する脂肪酸合成系は、図2に示すように、アセチルCoAの二分子縮合から始まる脂肪酸β酸化の逆行で脂肪酸が合成され、この反応ではATPを消費しないため、低酸素状態でも脂肪酸を合成とエネルギー獲得を両立することができる。一般的な生物でのβ酸化の逆行反応において、エノイルCoAの還元によるアシルCoA合成を触媒するエノイルCoAレダクターゼは、C4基質であるクロトニルCoAに作用しない。そのため、この系でのde novo脂肪酸合成はできず、中鎖脂肪酸の伸長反応系として機能している。
一般的な生物は基質特異性の異なるKATアイソザイムを複数持っている。ユーグレナワックスエステル合成系においても基質特異性の異なる複数のKATアイソザイムが機能していると考えられる。本発明者らは、これらのKATアイソザイムを制御することはワックスエステル組成の改変につながると考えた。
本実験では、ワックスエステル生産において機能するEgKATアイソザイムを特定し、それらの発現制御がワックスエステル生産に及ぼす影響を明らかにするために、RNAiによるEgKAT遺伝子のノックダウンを行った。
・半定量RT-PCR
好気状態で3日間培養したユーグレナからtotal RNAを抽出し、逆転写によりcDNAを獲得した。半定量RT-PCRによって各遺伝子の発現量を調べた。
以下、半定量RT-PCRについて説明する。
-ユーグレナ細胞からのtotal RNAの抽出
RNAの抽出にはISOGEN II(NIPPON GENE)を用いた。試薬は、原則としてRNase freeのものを用い、水はDEPC処理したものを使用した。
500μlのユーグレナ培養液から遠心によりユーグレナ細胞ペレットを回収し、500μlのISOGEN IIを加えて完全に懸濁した。200μlのDEPC水を加え、15秒間激しく攪拌し、室温で15分静置した。遠心分離(17400×g、15℃、15分)を行った後、沈殿付近を取らないように上清画分から500μl回収した。これに2.5μlのp-ブロモアニソールを加え、15秒間激しく撹拌し、室温で5分静置した。遠心分離(17400×g、15℃、10分)を行った後、沈殿付近を取らないように上清画分から300μl回収した。回収した液量と同量のイソプロパノールを添加し、転倒混和後、室温で10分静置した。遠心分離(17400×g、15℃、10分)後、上清を捨て、沈殿に対して500μlの75%エタノールを加え、遠心分離した(7700×g,15℃,3 分)。75%エタノールで再度沈殿を洗浄し、遠心分離した(7700×g,15℃,3分)。上清を完全に取り除き、12μlのDEPC水で溶解した。RNA濃度は分光光度計によって、A260値を測定することで求めた。
total RNAを鋳型として、PrimeScriptR RT reagent Kit with gDNA Eraser(Perfect Real Time)により逆転写反応を行った。
表2の反応液(1)を42℃で2分インキュベートし、氷上で急冷した。
合成したcDNAを鋳型として、表4〜表6の条件で半定量PCRを行った。また、反応後の確認は1%ゲルを用いたアガロースゲル電気泳動により行った。
逆転写により獲得したcDNAを用い、両端にT7配列を付加したEgKAT cDNA部分断片をPCRにより増幅、精製した。精製後のcDNA断片500ngもしくは1μgをT7転写反応に用いた。T7転写反応以降はMEGAscript(登録商標)RNAi Kit(Applied Biosystems)を用いて各EgKATに対応するdsRNAを作製した。
dsRNA用プライマーを、表8に示す。
PBS(+)で二度洗浄した10×106cells/mlのユーグレナ細胞400μl、15μg分の二本鎖RNAをキュベットに入れ、軽くピペッティングした。PBS(+)の組成は、表9の通りである。
なお、同じ反応系に対して電圧と電気容量の組合せを、1回目0.5kV,120μF,2回目1.2kV,50μFに変えて2回の電気パルスを与えた。
・RNAiによるEgKAT mRNA発現抑制効果の確認
((方法))の「-二本鎖RNA(以下dsRNA)の作製」「-エレクトロポレーション法を用いたRNAi」により、EgKAT RNAiを行った細胞およびコントロール細胞を対数増殖期後期まで振盪培養した。((方法))の「-ユーグレナ細胞からのtotal RNAの抽出」により、培養後の細胞からtotal RNAを抽出し、「-逆転写反応」により逆転写を行った後、半定量RT-PCRによってEgKAT mRNA発現量を調べた。
結果を、図9に示す。図9のように、EgKATノックダウン細胞が得られていた。
RNAiを行った細胞の好気状態における増殖曲線を測定した。測定結果を、図10のグラフに示す。
図10の結果より、好気状態の生育において、コントロール細胞とEgKATノックダウン細胞の間に差は認められなかった。このことから、好気状態において、EgKATのノックダウンはユーグレナの生育に影響を及ぼさないことが明らかになった。
EgKAT RNAiを行った細胞およびコントロール細胞を3日間振盪培養した後、低酸素処理し、0時間および48時間後に細胞内パラミロン量を実験1((方法))の「・パラミロンの抽出・定量」に示した方法で測定した。結果を、図11のグラフに示す。
図11の結果より、低酸素培養0時間および48時間後のパラミロン量はコントロール細胞とノックダウン細胞の間で大きな差はなかった。
EgKAT1 RNAiを行った細胞およびコントロール細胞を好気状態で4日間生育させた細胞を27℃または16℃で低酸素処理し、24時間後の細胞内に存在するワックスエステルを実験1と同様の方法で抽出し、分析した。
図12に、27℃・コントロール細胞(対比例2)および16℃・EgKAT1ノックダウン細胞(実施例2)のワックスエステル総量、図13に炭素鎖長別のワックスエステル量を示す。
図13に示すように、ワックスエステル組成ピークは27℃・コントロール細胞(対比例2)ではC28であることに対して、組み合わせた16℃・EgKAT1ノックダウン細胞(実施例2)において、C24、C25の割合が高くなり、C21〜C25の絶対量も27℃・コントロール細胞(対比例2)と比べて高くなった。
粗抽出ワックスエステルを実験1の((方法))「ワックスエステルの精製」「ワックスエステルのケン化」に示した方法で精製、ケン化し、脂肪アルコールと脂肪酸を獲得した。脂肪酸は実験1の((方法))「脂肪酸のメチル化」に示した方法でメチル化した。脂肪酸メチルエステル、脂肪アルコールを実験1の((方法))「脂肪アルコール、メチル化脂肪酸の分析」に示した方法で精製し、脂肪酸組成は図14、脂肪アルコール組成は図15に示す。
図15より、脂肪アルコールについても、16℃・EgKAT1 RNAi(実施例2)によりC11、C12の割合が増加した。
図14の27℃・Control(対比例2)、16℃・EgKAT1 RNAi(実施例2)の脂肪酸組成、図15の脂肪アルコール組成をもとに脂肪酸メチルエステルと脂肪アルコールを混合し、27℃・Controlモデル燃料(対比例2)と16℃・EgKAT1 RNAiモデル燃料(実施例2)を作製した。実験1の((方法))の「・DSCによるモデル燃料の熱特性解析」の方法により、モデル燃料の凝固点・融点を測定した。
結果を図16に示す。図16に示すように、コントロールモデル燃料(対比例2)の凝固点は20℃、低温処理モデル燃料(実施例2)の凝固点は7.2℃であり、低温処理を行うことで約13℃凝固点が低下した。
ユーグレナのKATに関し、ワックスエステル合成経路で機能するKATアイソザイムは知られていない。本発明者らは、ワックスエステル合成系で機能するKATアイソザイムを探索するとともに、各KATアイソザイムの役割を明らかにするために研究を進めた。さらにRNAiを用いたノックダウンによりワックスエステル生産量や組成の制御を行い、ユーグレナが生産するワックスエステルを改変することを目指した。
その結果、ユーグレナESTデータベース上(TBestDB)で6種のEgKATアイソザイム(EgKAT1〜6)の存在を見出した。表11,表12のように、EgKAT1およびEgKAT2のノックダウンにより、ワックスエステル総量はほとんど変化しなかったが、ワックスエステルが低分子化した。
また、EgKAT1、EgKAT2のノックダウンを比較すると、EgKAT1をノックダウンした際、C12、C13の割合がより増加した。このことからEgKAT1がより中鎖側、EgKAT2が長鎖側のアシルCoA合成に寄与していると考えられた。
EgKAT3ノックダウン細胞を低酸素培養したとき、表10及び表11のように、生存率とワックスエステル総量が減少したが、表12のように、ワックスエステル組成はほとんど変化しなかった。このことから、表13に示すように、EgKAT3が短鎖のアシル-CoA合成に関与し、アシルCoA伸長反応における律速段階であると推測された。
脂質代謝酵素の代謝制御によるワックスエステル組成の改変というアプローチから、実験2ではEgKAT1の発現抑制がワックスエステルの低分子化に有効であることを明らかとした。ここで、実験1の培養条件によるワックスエステル組成改変のアプローチにおいて、同様にワックスエステル低分子化に有効な因子であった低温でのワックスエステル生産と、EgKAT1ノックダウンを組み合わせることにより、ワックスエステル組成がどのように変化するかを調べた。
その結果、ワックスエステル組成のピークは27℃・コントロール(対比例2)のC28からC24(実施例2)までシフトしており、2つの異なる低分子化のアプローチを組み合わせることによってワックスエステルのさらなる低分子化に成功した。
以上の結果より、低酸素状態のユーグレナ細胞においてワックスエステル生産量および組成に影響を与える因子を見出した。さらに、複数のアプローチによって見出したこれらの因子を組み合わせることにより、低温特性が大幅に向上したワックスエステル由来燃料を生産することに成功した。
つまり、低酸素状態のユーグレナ細胞において、EgKAT1及び/又はEgKAT2をノックダウンしたユーグレナ細胞を増殖至適条件で培養し、定常期に達した後、低酸素処理を27℃(対比例2)よりも低く、ユーグレナ細胞の増殖至適温度より低い16℃で低酸素処理を行うことにより(実施例2)、低温特性が大幅に向上したワックスエステル由来燃料を生産することができた。
ビタミンB12を添加しない培地やビタミンB12を通常量より減らした培地でユーグレナを生育させると、細胞が肥大化することが知られている。その理由として、補酵素型ビタミンB12を要求するメチオニンシンターゼが葉酸代謝経路において重要な役割を果たしており、葉酸が関与する核酸合成が低下するため、細胞分裂が阻害されることが一因であると考えられている。
また、ビタミンB12はメチルマロニルCoAムターゼの補酵素としても機能している。メチルマロニルCoAムターゼはスクシニルCoAとメチルマロニルCoAの相互変換反応を触媒する酵素である。この酵素は、従来プロピオン酸を炭素源として細胞が生育する際に、プロピオン酸をプロピオニルCoAに変換後、コハク酸まで代謝する経路内で機能することが知られてきた。
また、代謝予測からこの経路の逆向き反応、つまりコハク酸からプロピオニルCoAを生成する経路に寄与することも示唆されているが、実験的な証明はされてこなかった。プロピオニルCoAはワックスエステルの奇数鎖アシル基原料として重要な化合物であるため、ビタミンB12の細胞内量はワックスエステル代謝に大きく影響するのではないかと考えた。
本実験では、培地中のB12量を制限することがユーグレナのワックスエステル発酵に与える影響を解析した。
材料および実験方法に関して、以下に記載のない部分は、実験1及び2と同様の方法で行った。
・ユーグレナの培養方法
従属栄養培地として、表1のKoren-Hutner培地(KH培地)を用いた。ビタミンB12制限KH培地(B12-limited培地)は従来のKH培地中に含まれるB12を1/10量に調製した。500ml容坂口フラスコに、pHを5.0に調整した150mlのKH培地を分注し、121℃、15分のオートクレーブにより滅菌した。この培地に、4〜5日間程度の培養で定常期に達したユーグレナ(通常KH培地:15〜20×106cells/ml、B12-limited培地:6〜8×106cells/ml)を1ml接種し、24時間の連続光照射条件下、27℃で振盪培養した。
・ビタミンB12制限による生育への影響
KH培地(コントロール)またはB12-limited培地で振盪培養を行い、培養日数ごとに細胞を回収して細胞数を実験1((方法))の「・細胞数の測定および生存率測定」に示した方法で測定した。
測定結果を、図17に示す。図17の結果より、ビタミンB12制限培地での生育により、定常期での細胞数はコントロールの約50%となった。
また、細胞体積を測定したところ、ビタミンB12制限培養4日目の細胞の細胞体積はコントロールの同日の細胞と比較して約2倍に増加していた。
好気状態で対数増殖期後期まで生育させたユーグレナ細胞を、27℃、16℃で低酸素処理し、0時間または24時間後に細胞の貯蔵パラミロン量を実験1((方法))の「・パラミロンの抽出・定量」に示した方法で測定した。
測定結果を、図18に示す。図18の結果より、ビタミンB12制限は好気状態での細胞内パラミロン蓄積量を増加させた(コントロール細胞の約5倍)。また、このときコントロール細胞との体積差は2倍程度であったことから、細胞体積の差以上にビタミンB12制限細胞は多量のパラミロンを細胞内に蓄積していることが明らかとなった。27℃低酸素処理を行うと、パラミロンは両細胞内でともに分解されていた。
好気状態で4日間生育させたユーグレナ細胞(コントロール、ビタミンB12制限細胞)を27℃で低酸素処理し、24時間後に細胞を回収後、ワックスエステルを抽出し、測定した。
ワックスエステルの総量を、図19に、鎖長ごとのワックスエステル量を、図20に示す。
図19のように、ビタミンB12制限により細胞あたりのワックスエステル総量は増加した(通常KH培地の約1.4倍)。この増加は、細胞体積の増加によるものである。また、図20のように、ビタミンB12制限により、奇数鎖ワックスエステル量(C27、C29)が減少し、奇数鎖ワックスエステルの占める割合は約5.5%となった。
「・ビタミンB12制限によるワックスエステル発酵への影響」で得た粗抽出ワックスエステルを精製、ケン化し、脂肪アルコールと脂肪酸を獲得した。さらに脂肪酸はメチル化し、脂肪酸メチルエステルとした。得られた脂肪アルコールと脂肪酸メチルエステルをGCにより分析した。
結果を、図21,図22に示す。図21,図22に示すように、ビタミンB12制限により奇数鎖脂肪酸・脂肪アルコールの割合が大きく減少した(全体の約5.5%)。
本実験では、培地中のビタミンB12量を通常KH培地の1/10に制限した際、低酸素状態のワックスエステル発酵におよぼす影響を調査した。
本実験では、ビタミンB12制限は好気状態の生育に影響を与えていた。定常期の細胞数が減少し(通常KH培地の約50%)、細胞内パラミロン量が増加した。ビタミンB12制限細胞を低酸素処理すると、通常KH培地での低酸素処理と比べて、ワックスエステル総量は増加し(通常KH培地の約1.4倍)、奇数鎖脂肪酸・脂肪アルコールの割合が大きく減少していた(全体の約5.5%)。
本実験を行ったことにより、実際にビタミンB12制限により、奇数鎖脂肪酸・脂肪アルコールの割合が減少することが明らかになった。ビタミンB12はワックスエステル発酵において奇数鎖脂肪酸を合成に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。培地成分を制限することによってワックスエステル組成を改変することは、コストを抑えて目的用途にあったバイオ燃料を作り出すという観点から、非常に有効であることが分かった。
本実験では、低温条件(16℃)によるワックスエステルの低分子化、ビタミンB12欠乏による奇数鎖脂肪酸・脂肪アルコールの割合減少、EgKAT1のノックダウンによるワックスエステルの低分子化をそれぞれ組み合わせた場合のワックスエステル組成変化について検討した。
((方法))
材料および実験方法は、実験1〜3と同様の方法を用いて行った。
((結果))
・RNAiによるEgKAT1 mRNA発現抑制効果の確認
EgKAT1のノックダウンを行った細胞およびコントロール細胞を、好気状態で4日間生育させ、同様に半定量RT-PCRによってEgKAT mRNA発現量を調べた。結果を、図23に示す。図23に示すように、EgKAT1 mRNAの発現が抑制されていることが確認された。
4日間27℃でKH培地で振盪培養した細胞を27℃(対比例3)、16℃(実施例3)で24時間低酸素処理し、細胞内ワックスエステルを解析した。同様の試験を、EgKAT1ノックダウン細胞についても行った(対比例4,実施例4)。また、同様の試験を、KH培地の代わりにB12-limited培地を用いて行った(対比例5,実施例5)。
結果を、図24に示す。図24の結果より、低温(16℃)下で低酸素処理を行った際のワックスエステル量は、他の条件(EgKAT1ノックダウン、B12制限)との組み合わせの場合も含め(実施例3〜5)、減少していた。EgKAT1ノックダウンはワックスエステル量には大きな影響は及ぼさなかった。
ビタミンB12の制限では、細胞体積の変化(B12制限で約2倍に増加)とほぼ同等で、106細胞あたり約2倍量となった。
図25に、各因子の組み合わせによる各炭素鎖長別ワックスエステル量のグラフを示す。
図25Aのように、コントロール細胞を用いた27℃低酸素処理時(対比例6)において、C28であったワックスエステル組成ピークが、図25AのEgKAT1のノックダウン細胞を用いた27℃低酸素処理時(実施例6)ではC26がワックスエステル組成ピークとなり、更に、EgKAT1のノックダウン細胞を用いた16℃低酸素処理時(実施例8)では、C24がワックスエステル組成ピークとなっていた。
このように、低温処理とEgKAT1のノックダウンとの組合せ(実施例8)により、ワックスエステル組成ピークが、C28から、C24にシフトした。
また、図25Cにおいて、C28が大部分を占めていたコントロール細胞を用いた27℃・ビタミンB12制限(対比例7)と比べて、図25Dのコントロール細胞を用いた16℃・ビタミンB12制限(実施例10)では、C24・C26のワックスエステル量が増加していた(全体の約66%)。ビタミンB12制限と16℃低温処理の組合せ(実施例10)により、ワックスエステル組成ピークはC26となった。
さらに、ビタミンB12制限と16℃低温処理にEgKAT1のノックダウンを組合せると(実施例11)、図25Dに示すように、C24がワックスエステル組成ピークとなった。
4日間27℃で振盪培養した細胞を、27℃、16℃で24時間低酸素処理し、細胞内ワックスエステルを実験1に示す方法により抽出し、精製とケン化を行った。脂肪酸はメチル化を行い、実験1に示す方法により脂肪酸、脂肪アルコールを解析した。
図26に脂肪酸組成の解析結果、図27に脂肪アルコール組成の解析結果を示す。
脂肪アルコールについても同様に、図27Aで、27℃コントロール(対比例6)の脂肪アルコール組成のピークがC14であったのに対し、低温処理とEgKAT1ノックダウンの組合せにより(実施例8)、図27Bのように、C12が脂肪アルコール組成のピークとなった。
ビタミンB12欠乏コントロール細胞(対比例7)ではC14が脂肪酸組成のピークであったが、ビタミンB12欠乏とEgKAT1のノックダウンを組合せたところ(実施例9)、図26Cのように、C12が脂肪酸組成のピークとなった。ビタミンB12欠乏とEgKAT1のノックダウンに低温処理を加える(実施例11)と、図26Dのように、C12の割合がさらに増加した。脂肪アルコールの組成も脂肪酸と似た傾向を示した。
1:低温条件(16℃)での低酸素処理によるワックスエステルの低分子化
2:EgKAT1のノックダウン細胞低酸素処理によるワックスエステルの低分子化
3:ビタミンB12制限細胞の低酸素処理による奇数鎖脂肪酸・脂肪アルコール減少
である。
これらの3つの因子について、組合せ実験を行った際、それぞれの特徴を併せ持ったワックスエステルが生産されると推測した。そこで、本実験では、各因子を組み合わせ、ワックスエステル組成におよぼす影響を解析した。
ワックスエステルの低分子化を引き起こす2つの因子(低温条件、EgKAT1ノックダウン)を組合せた際(実施例8〜実施例10)、ワックスエステル組成ピークはそれぞれの因子を単独で行った場合(実施例6,実施例7,対比例7)のC26から、C24へとシフトし、ワックスエステルの更なる低分子化が起きた。このことから、低温条件、EgKAT1のノックダウンによるワックスエステル低分子化は異なるメカニズムによって起こっており、組合せることで相加効果がうまれることがわかった。
ビタミンB12制限とEgKAT1のノックダウンを組合せた際(実施例9)、ビタミンB12制限のみ(対比例7)でのワックスエステル組成ピークであるC28から、C26にピークがシフトした。さらに、上記3種の因子を組み合わせた際(実施例11)、ワックスエステル組成ピークはC24となった。
低酸素処理にビタミンB12制限を組み合わせることにより(対比例7,実施例9〜実施例11)、偶数鎖の脂肪酸・アルコールを選択的に得ることができた。さらに、低分子化を引き起こす因子を組合せることで(実施例8〜実施例11)、C12とC14の割合が変化したワックスエステルの獲得が可能であると分かった。また、培地成分を制限することはコスト削減に有用であり、ワックスエステルを低コストで改変する手段になると期待される。
合成したcDNAを鋳型として、表4〜表6の条件で半定量PCRを行った。半定量用PCRプライマーとして、表6に示すプライマー(上の行から順に配列番号1〜12)を用いた。また、反応後の確認は1%ゲルを用いたアガロースゲル電気泳動により行った。
逆転写により獲得したcDNAを用い、両端にT7配列を付加したEgKAT cDNA部分断片をPCRにより増幅、精製した。精製後のcDNA断片500ngもしくは1μgをT7転写反応に用いた。T7転写反応以降はMEGAscript(登録商標)RNAi Kit(Applied Biosystems)を用いて各EgKATに対応するdsRNAを作製した。
dsRNA用プライマー(上の行から順に配列番号15〜26)を、表8に示す。
Claims (9)
- ワックスエステルを含有するユーグレナであって、
前記ワックスエステルは、炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とすることを特徴とするユーグレナ。 - 前記ワックスエステルは、炭素原子数12の鎖長の脂肪酸を主成分とする脂肪酸と炭素原子数12の鎖長の脂肪アルコールを主成分とする脂肪アルコールがエステル結合してなることを特徴とする請求項1記載のユーグレナ。
- 3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されていることを特徴とする請求項1又は2記載のユーグレナ。
- 炭素原子数が奇数の鎖長の脂肪酸及び脂肪アルコールのそれぞれの量が、炭素原子数が偶数の鎖長の脂肪酸及び脂肪アルコールのそれぞれの量よりも少ないことを特徴とする請求項2記載のユーグレナ。
- 炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とするワックスエステルを含むバイオ燃料組成物。
- ユーグレナを、該ユーグレナが増殖可能な増殖至適温度で培養する至適温度培養工程と、
前記増殖至適温度よりも低い低温で、かつ酸素の供給のない条件下に、前記ユーグレナを保持する低温低酸素処理工程と、
前記ユーグレナからワックスエステルを抽出する抽出工程と、を行うことを特徴とするワックスエステルの製造方法。 - 3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)1遺伝子の発現が抑制されたKAT1ノックダウンユーグレナを、ユーグレナが増殖可能な増殖至適温度で培養する至適温度培養工程と、
前記増殖至適温度よりも低い低温で、かつ酸素の供給のない条件下に、前記KAT1ノックダウンユーグレナを保持する低温低酸素処理工程と、
前記KAT1ノックダウンユーグレナからワックスエステルを抽出する抽出工程と、を行うことを特徴とするワックスエステルの製造方法。 - 前記至適温度培養工程では、ビタミンB12の量を、ユーグレナの細胞分裂を阻害する程度の少量となるように制限したビタミンB12制限培地で、前記ユーグレナの培養を行うことを特徴とする請求項6又は7記載のワックスエステルの製造方法。
- 前記抽出工程では、炭素原子数24〜26のうちいずれかの鎖長のワックスエステル化合物を主成分とする前記ワックスエステルを抽出することを特徴とする請求項6乃至8いずれか記載のワックスエステルの製造方法。
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