JP2017155201A - 乾性潤滑被膜用塗料組成物、乾性潤滑被膜 - Google Patents

乾性潤滑被膜用塗料組成物、乾性潤滑被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】従来に比してより一層優れた低摩擦性、耐摩耗性を有する乾性潤滑被膜を形成するための乾性潤滑被膜用塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜を提供する。【解決手段】本発明に係る乾性潤滑被膜用塗料組成物は、低摩擦性に優れた乾性潤滑被膜を形成するために塗料組成物であって、固形成分として、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有し、バインダー樹脂に対する固体潤滑剤及び球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、球状樹脂微粒子に対する固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である。【選択図】なし

Description

本発明は、乾性潤滑被膜用塗料組成物に関し、より詳しくは、低摩擦性に優れた乾性潤滑被膜を形成することができる乾性潤滑被膜塗料組成物及びその乾性潤滑被膜に関する。
従来、OA機器、家電、自動車、産業機械等の初期なじみ対策、焼き付き性向上、オイルレス化等を目的として、固体潤滑剤を樹脂中に分散含有させた乾性潤滑被膜が使用されている。この乾性潤滑被膜は、固体潤滑剤とバインダー樹脂とを含む組成物を、金属部材の表面又はゴムや樹脂部材の表面に適切な膜厚で塗布し、乾燥又は加熱硬化させることにより被膜化して形成されるものである。
部材表面で硬化した乾性潤滑被膜は、樹脂の接着力により部材表面に定着され、その被膜に含まれる固体潤滑剤によって潤滑性や耐摩耗性を発揮する。なお、乾性潤滑被膜組成物に使用される固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト等が一般的である。また、バインダー樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が広く使用されている。このような乾性潤滑被膜に関しては、例えば特許文献1にあるように、現在に至るまで広く応用されている。
しかしながら、乾性潤滑被膜に求められる特性はより多様化しており、また、従来の乾性潤滑被膜では、低摺動性や耐摩耗性にやや問題があった。特に、近年では、低負荷荷重かつ面摺動における摺動形態領域での低摩擦性を要求されることが多く、より一層優れた低摩擦性、耐摩耗性を兼ね備えた乾性潤滑被膜が望まれている。
特開平7−97517号公報 特開平10−7520号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、従来に比してより一層優れた低摩擦性、耐摩耗性を有する乾性潤滑被膜を形成するための乾性潤滑被膜用塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、バインダー樹脂に、固体潤滑剤と球状樹脂微粒子とが分散して構成され、それらの構成成分の含有比率が特定の範囲である乾性潤滑被膜によれば、低い摩擦係数を実現し、摺動に際しての摩耗量も少ないものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、低摩擦性に優れた乾性潤滑被膜を形成するために塗料組成物であって、固形成分として、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有し、前記バインダー樹脂に対する前記固体潤滑剤及び前記球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、該球状樹脂微粒子に対する該固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である、乾性潤滑被膜用塗料組成物である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記球状樹脂微粒子は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の割合で含有される、乾性潤滑被膜用塗料組成物である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記固体潤滑剤は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の割合で含有される、乾性潤滑被膜用塗料組成物である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記バインダー樹脂は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して33質量部〜77質量部の割合で含有される、乾性潤滑被膜用塗料組成物である。
(5)本発明の第5の発明は、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有し、前記バインダー樹脂に対する前記固体潤滑剤及び前記球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、該球状樹脂微粒子に対する該固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である、乾性潤滑被膜である。
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、表面粗さが0.9以上である、乾性潤滑被膜である。
本発明によれば、より一層優れた低摩擦性、耐摩耗性を有する乾性潤滑被膜を形成するための乾性潤滑被膜用塗料組成物、及びその乾性潤滑被膜を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
≪1.乾性潤滑被膜用塗料組成物≫
本実施の形態に係る乾性潤滑被膜用塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ともいう)は、低摩擦性に優れた乾性潤滑被膜を形成するための塗料組成物である。
具体的に、この塗料組成物は、固形分として、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂とを含有し、また、揮発成分であって、そのバインダー樹脂を溶解させるための有機溶剤を含有する。そして、この塗料組成物においては、バインダー樹脂に対する固体潤滑剤及び球状樹脂微粒子の含有比率((固体潤滑剤+球状樹脂微粒子)/バインダー樹脂)が0.3〜2.0の範囲であり、球状樹脂微粒子に対する固体潤滑剤の含有比率(固体潤滑剤/球状樹脂微粒子)が0.4〜3.5の範囲であることを特徴としている。
<1−1.構成成分について>
[(A)固体潤滑剤]
(A)固体潤滑剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、窒化ホウ素(BN)、メラミンシアヌレート(MCA)等が挙げられる。その中でも、ポリテトラフルオロエチレンを用いることが、より優れた低摩擦性を発揮し、また化学的安定性に優れるという点から、特に好ましい。これらの固体潤滑剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
固体潤滑剤の含有量としては、塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の範囲であることが好ましく、10質量部〜40質量部の範囲であることがより好ましく、15質量部〜35質量部であることが特に好ましい。固体潤滑剤の含有量が、固形分合計100質量部に対して6質量部未満であると、摩擦低減効果が十分に発揮されない可能性があり、一方で、47質量部を超えると、形成される被膜の摩耗量が多くなり、優れた耐摩耗性が発揮されない可能性がある。
[(B)球状樹脂微粒子]
(B)球状樹脂微粒子は、球状形状を有し、平均粒径が2μm〜30μmの樹脂の微粒子である。このように、球状樹脂微粒子を所定の割合で含有させることにより、形成される乾性潤滑被膜の表面粗さRaを大きくすることができ、摺動に際して相手材となる金属部品等の部品との接触面積を小さくして、低摩擦係数を実現することができる。
球状樹脂微粒子の平均粒径に関して、平均粒径が2μm未満であると、乾性潤滑被膜の表面粗さが有効に大きくならず、相手材との接触面積が大きくなって十分な摩擦低減効果が発揮されない可能性がある。一方で、平均粒径が30μmを超えると、被膜摩耗量が大きくなり、耐摩耗性が低下する。なお、平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分析計を用いて測定することができる。
具体的に、球状樹脂微粒子の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ナイロン12樹脂、ナイロン6樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。その中でも、アクリル樹脂、ナイロン12樹脂を用いることが、より優れた低摩擦性を発揮させることができるという点で、特に好ましい。これらの球状樹脂微粒子は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
球状樹脂微粒子の含有量としては、塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の範囲であることが好ましく、10質量部〜40質量部の範囲であることがより好ましく、15質量部〜35質量部であることが特に好ましい。固体潤滑剤の場合と同様に、球状樹脂微粒子の含有量が、固形分合計100質量部に対して6質量部未満であると、摩擦低減効果が十分に発揮されない可能性があり、一方で、47質量部を超えると、形成される被膜の摩耗量が多くなり、優れた耐摩耗性が発揮されない可能性がある。
なお、このような球状樹脂微粒子に関しては、現在に至るまでスリップ材として、特に化粧品に配合する技術(例えば特許文献2参照)が見出されているものの、乾性潤滑被膜の含有成分として応用する技術は見出されていない。
[(C)バインダー樹脂]
(C)バインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。その中でも、ポリアミドイミド樹脂を含むバインダー樹脂であることが、耐摩耗性が良好であり、また種々の金属基材に対して高い密着性を有するという点で、特に好ましい。これらのバインダー樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
バインダー樹脂の含有量としては、塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して33質量部〜77質量部の範囲であることが好ましく、40質量部〜60質量部の範囲であることがより好ましく、50質量部程度であることが特に好ましい。バインダー樹脂の含有量が、固形分合計100質量部に対して33質量部未満であると、形成される被膜の摩耗量が多くなり、優れた耐摩耗性が発揮されない可能性があり、一方で、77質量部を超えると、相対的に固体潤滑剤や球状樹脂微粒子の含有量が少なくなり、摩擦低減効果が十分に発揮されない可能性がある。
[(D)有機溶剤]
(D)有機溶剤は、上述したバインダー樹脂を溶解させるためのものである。有機溶剤としては、使用するバインダー樹脂に対する溶解力、乾燥性等を考慮して選定することが好ましい。具体的には、例えば、ポリアミドイミド樹脂をバインダー樹脂として使用する場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン等の有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
[(E)その他の添加剤]
また、本実施の形態に係る塗料組成物は、必要に応じて、種々の添加剤成分を含有させることができる。具体的に、その添加剤としては特に限定されないが、例えば、沈降防止剤、湿潤分散剤、消泡剤、表面調整剤等の塗料添加剤を使用することができる。
<1−2.含有比率について>
本実施の形態に係る塗料組成物においては、(C)バインダー樹脂に対する、(A)固体潤滑剤及び(B)球状樹脂微粒子の含有比率(([A]+[B])/[C])が0.3〜2.0の範囲である。
ここで、[A]、[B]、及び[C]との記載は、それぞれ、(A)固体潤滑剤、(B)球状樹脂微粒子、及び(C)バインダー樹脂の固形分中の含有量(質量部)を表す。以下も同様である)。
上述した好ましい含有量の範囲において、([A]+[B])/[C]で表される構成成分の含有比率が0.3〜2.0の範囲であることにより、優れた摩擦低減効果を発揮するとともに、被膜摩耗量を抑えて耐摩耗性の高い乾性潤滑被膜を形成することができる。([A]+[B])/[C]で表される構成成分の含有比率が0.3未満であると、摩擦低減効果が現れにくくなる。一方で、2.0を超えると、低摩擦係数は発揮されるものの、被膜摩耗量が多くなる。
なお、([A]+[B])/[C]で表される構成成分の含有比率としては、0.5〜1.5の範囲であることがより好ましく、1.0程度であることが特に好ましい。
また、本実施の形態に係る塗料組成物においては、(B)球状樹脂微粒子に対する、(A)固体潤滑剤の含有比率([A]/[B])が0.4〜3.5の範囲である。
上述した好ましい含有量の範囲において、[A]/[B]で表される構成成分の含有比率が0.4〜3.5の範囲であることにより、優れた摩擦低減効果を発揮するとともに、被膜摩耗量を抑えて耐摩耗性の高い乾性潤滑被膜を形成することができる。[A]/[B]で表される構成成分の含有比率が0.4未満であると、乾性潤滑被膜に含まれる球状樹脂微粒子の摺動による脱落が顕著となり、被膜摩耗量が多くなる。一方で、含有比率が3.5を超えると、乾性潤滑被膜の表面粗さRaが小さくなり、その結果、摺動に際して相手材となる部品との接触面積が大きくなって、摩擦低減効果が現れにくくなる。
なお、[A]/[B]で表される構成成分の含有比率としては、0.7〜2.5の範囲であることがより好ましく、1.0程度であることが特に好ましい。
≪2.乾性潤滑被膜用塗料組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る塗料組成物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
具体的には、固形成分であるバインダー樹脂、固体潤滑剤、球状樹脂微粒子と、揮発成分である有機溶剤とを、所定の割合となるように配合させ混練することによって製造することができる。このとき、有機溶剤により均一溶解させたバインダー樹脂中に、固体潤滑剤と球状樹脂微粒子とが均一に分散した状態とすることが重要となる。
例えば、この塗料組成物の製造方法としては、先ず、固形分合計100質量部のうち、好ましくは、バインダー樹脂が33質量部〜77質量部、固体潤滑剤が6質量部〜47質量部、球状樹脂微粒子が6質量部〜47質量部の割合となるように秤量する。また、揮発成分である有機溶剤を、バインダー樹脂の種類や含有量に応じて、例えば固形分合計100質量部に対して55質量部〜900質量部の割合となるように秤量する。
次に、撹拌容器内に有機溶剤を投入し、その後、バインダー樹脂、固体潤滑剤及び球状樹脂微粒子を投入して、これらの材料が均一に溶解するまで、ディゾルバー型撹拌機等の回転型撹拌機により撹拌する。その後、サンドミル型、三本ロール型等の分散機を用いて、バインダー樹脂中に固体潤滑剤と球状樹脂微粒子とを均一に分散させる分散処理を実施する。なお、分散後に有機溶剤を添加することで希釈して塗料組成物としてもよい。
≪3.塗料組成物による乾性潤滑被膜の形成≫
上述したように、本実施の形態に係る塗料組成物は、乾性潤滑被膜を形成するためのものであり、この塗料組成物を塗布対象となる被塗物に塗布して、その後、硬化処理を施すことによって、乾性潤滑被膜を形成することができる。
<3−1.乾性潤滑被膜の形成方法>
(被塗物)
被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属部材、ゴム部材、樹脂部材等が挙げられ、これらの部材の表面に塗料組成物を塗布して被膜を形成することができる。また、その被塗物となる部材の種類に応じて、上述したバインダー樹脂を選定することによって、いずれの被塗物に対しても高い密着性を有する被膜を形成することができ、摩擦係数を効果的に低減させることが可能な被膜となる。
(塗布方法)
被塗物に対して塗料組成物を塗布する方法としては、特に限定され、一般的な塗料と同様に、例えば、エアースプレー塗布、浸漬(ディッピング)塗布、刷毛塗り、吹付けによるタンブリング、スクリーン印刷等の手法により行うことができる。これらの塗布方法の選択は、被塗物の形状や処理数量に応じて決定することができる。
なお、塗料組成物を被塗物に塗布するに先立ち、その被塗物に対する脱脂処理や、被膜の密着性を高めるための表面処理、あるいは洗浄処理等を行うことができる。
(乾性潤滑被膜の膜厚)
形成する乾性潤滑被膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、被塗物の用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、5μm〜50μm程度とすることが好ましく、10μm〜15μm程度とすることがより好ましい。
塗料組成物を被塗物に塗布するにあたっては、加熱等の手段により塗膜(乾性潤滑被膜組成物)を硬化させることによって得られる乾燥被膜が、所望とする膜厚(乾燥膜厚)となるように塗布量を決定して塗布することが好ましい。
(硬化処理)
塗料組成物を被塗物に塗布して形成した塗膜の硬化処理は、通常の塗膜の焼付手法により行うことができる。具体的には、例えば、その塗膜に対して、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等を行うことによって焼成することで、塗膜を硬化させることができる。このように、塗膜を硬化させて得られる被膜が、乾性潤滑被膜となる。
より具体的に、塗膜硬化のための焼成条件としては、特に限定されるものではなく、使用した塗料組成物中のバインダー樹脂等の組成に応じて決定することができる。例えば、バインダー樹脂としてポリアミドイミド樹脂を使用した場合、その硬化温度としては、100℃〜300℃の範囲とすることが好ましく、150℃〜280℃の範囲とすることがより好ましく、これらの硬化温度の範囲で適宜設定して焼成することができる。また、焼成処理時間(硬化時間)としては、特に限定されないが、例えば、10分間〜60分間の範囲で適宜設定することができ、30分間〜60分間程度とすることがより好ましい。
<3−2.乾性潤滑被膜>
上述のようにして乾性潤滑被膜用塗料組成物を、金属部材等の被塗物の表面に塗布し硬化することによって、乾性潤滑被膜を形成することができる。具体的に、本実施の形態に係る塗料組成物により形成される乾性潤滑被膜は、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有する被膜であって、バインダー樹脂に対する固体潤滑剤及び球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、球状樹脂微粒子に対する固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である。
このような乾性潤滑被膜によれば、摩擦係数が低くものとなり優れた低摩擦性を発揮し、また、金属部品等の相手材との摺動によっても摩耗量が少なく長期間に亘って安定的に被膜状態を維持し、優れた耐摩耗性を有するものとなる。
また、この乾性潤滑被膜は、特に限定されないが、表面粗さ(Ra)が0.9以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.3以上であることが特に好ましい。乾性潤滑被膜の表面粗さが大きいほど、その被膜と摺動する相手材との接触面積が小さくなり、摩擦低減効果がより効果的に発揮されるようになる。表面粗さの上限値としては、特に限定されないが、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。表面粗さが大きすぎると、摺動により球状樹脂微粒子が脱落しやすくなり、被膜の摩耗量が多くなる可能性がある。なお、乾性潤滑被膜の表面粗さ(Ra)は、表面粗さ計を用いて測定することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
≪実施例、比較例≫
乾性潤滑被膜用塗料組成物を製造し、得られた塗料組成物を被塗物(鋼板)に塗布して硬化させることで乾性潤滑被膜を形成し、その乾性潤滑被膜について摩擦摩耗試験を実施した。摩擦摩耗試験の確認項目は、その乾性潤滑被膜の摩擦係数と摩耗量とした。
[乾性潤滑被膜用塗料組成物の製造]
バインダー樹脂としてのポリアミドイミド樹脂と、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、球状樹脂微粒子としてのアクリル樹脂及びナイロン12樹脂を、下記表1及び表2に示す質量部の割合で秤量した。また、これらの固形成分の合計量と同量の有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドンとキシレン)を用意して、固形成分と混合させ溶解させた。さらに、添加剤として、フッ素系界面活性剤、シリコーン系消泡剤、シリコーン系表面調整剤を加えて、各成分を十分に撹拌分散させた。
撹拌分散に際しては、ビーズミルを用いて混練して行った。ビーズミルによる撹拌分散条件としては、分散メディアとしてφ1.5ジルコニアビーズを用いて、ベッセル容量1.4Lに対して80%充填させ、流量0.4mL/minにて1パスの分散処理を行った。これにより、乾性潤滑被膜用塗料組成物を製造した。
[乾性潤滑被膜の形成]
次に、SPCC−SB鋼鈑(縦100mm、横50mm、厚さ1mm、#240研磨品)を被塗物として用い、その鋼板の表面に、得られた塗料組成物をエアースプレー塗布の手法で均一塗布した。続いて、塗膜を形成した鋼板を熱風循環炉に装入し、焼成温度230℃、焼成時間40分の条件で塗膜を熱硬化させることによって、乾性潤滑被膜を形成させた。乾性潤滑被膜の膜厚は10μmであった。
なお、得られた乾性潤滑被膜の表面粗さRaを、表面粗さ計(テーラーホブソン社製,フォームタリサーフS4F)を用いて測定した。表3に測定結果を併せて示す。
≪評価試験、評価結果≫
[摩擦摩耗試験]
形成させた乾性潤滑被膜について、摩擦摩耗試験機(フリクションプレーヤー)(株式会社レスカ製,フリクションプレーヤーFRP−2100)を使用して摩擦係数を測定した。フリクションプレーヤー試験の設定条件としては、相手材をSUJ−2 10mmφボールとし、荷重200g、摺速度0.1m/s(回転円径:φ20mm、回転数95.5rpm)、測定時間30分として行った。
摩擦摩耗試験により得られた、実施例、比較例のそれぞれの乾性潤滑被膜の平均摩擦係数と、試験後の乾性潤滑被膜の摺動痕を表面粗さ計により摩耗量として計測した。
[評価結果]
下記表1及び表2に、実施例、比較例にて製造した塗料組成物の固形分組成(乾性潤滑被膜の組成)と、それぞれの評価結果をまとめて示す。
Figure 2017155201
Figure 2017155201
表1及び表2に示す結果から、固体潤滑剤と、球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂とを含有し、それらの構成成分を特定の比率で含有させてなる乾性潤滑被膜では、摩擦係数が低く、また被膜摩耗深さも小さくなり、低摩擦性に優れ、耐摩耗性を有するものとなることが分かる。
具体的には、実施例1〜実施例3、及び、比較例4、比較例5について対比検討すると、固体潤滑剤と球状樹脂微粒子との比率を1.0で一定とし、バインダー樹脂の含有割合を変化させると、(固体潤滑剤+球状樹脂微粒子)/バインダー樹脂で表される比率が、実施例1〜3では0.3〜2.0の範囲となり、比較例4、5ではそれぞれ0.2、2.5となった。その結果、実施例1〜実施例3の乾性潤滑被膜では、摩耗係数が低く、また摩耗量が少なく耐摩耗性に優れていたのに対して、比較例4の乾性潤滑被膜では、摩耗量は少なかったものの摩擦係数が0.32と大きくなり摩擦性の劣るものであり、比較例5の乾性潤滑被膜では、比較的低い摩擦係数となったものの摩耗深さが5.2μmにもおよび耐摩耗性の劣るものであった。
また、実施例1、実施例4、実施例5、及び、比較例1〜比較例3について対比検討すると、バインダー樹脂の含有比率((固体潤滑剤+球状樹脂微粒子)/バインダー樹脂)を1.0で一定とし、固体潤滑剤と球状樹脂微粒子との含有比率を変化させると、固体潤滑剤/球状樹脂微粒子で表される比率が、実施例1、4、5では0.4〜2.3の範囲となり、比較例1〜3ではそれぞれ0、4.0、0.3となった。その結果、実施例1、4、5の乾性潤滑被膜では、摩耗係数が低く、また摩耗量が少なく耐摩耗性に優れていたのに対して、比較例1、3の乾性潤滑被膜では、球状樹脂微粒子の摺動による脱落が顕著で摩耗量が多くなって耐摩耗性の劣るものとなり、比較例2の乾性潤滑被膜では、その被膜の表面粗さが小さく相手材との接触面積が大きくなって摩擦係数が高まり摩擦性の劣るものであった。
さらに、実施例1と実施例6の結果から、球状樹脂微粒子の平均粒径が小粒径のものでも大粒径のものでも、同等に優れた低摩擦性と耐摩耗性を奏することを分かった。

Claims (6)

  1. 低摩擦性に優れた乾性潤滑被膜を形成するために塗料組成物であって、
    固形成分として、固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有し、
    前記バインダー樹脂に対する前記固体潤滑剤及び前記球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、該球状樹脂微粒子に対する該固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である
    乾性潤滑被膜用塗料組成物。
  2. 前記球状樹脂微粒子は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の割合で含有される
    請求項1に記載の乾性潤滑被膜用塗料組成物。
  3. 前記固体潤滑剤は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して6質量部〜47質量部の割合で含有される
    請求項1又は2に記載の乾性潤滑被膜用塗料組成物。
  4. 前記バインダー樹脂は、当該塗料組成物に含まれる固形分合計100質量部に対して33質量部〜77質量部の割合で含有される
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乾性潤滑被膜用塗料組成物。
  5. 固体潤滑剤と、平均粒径が2μm〜30μmの球状樹脂微粒子と、バインダー樹脂と、を含有し、
    前記バインダー樹脂に対する前記固体潤滑剤及び前記球状樹脂微粒子の含有比率が0.3〜2.0の範囲であり、該球状樹脂微粒子に対する該固体潤滑剤の含有比率が0.4〜3.5の範囲である
    乾性潤滑被膜。
  6. 表面粗さが0.9以上である
    請求項5に記載の乾性潤滑被膜。
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