JP2017155333A - 大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(1)本発明者らは、島状マルテンサイトになりやすいCの濃化領域に着目した。溶接入熱量が400kJ/cmを超える大入熱溶接を施したとき、母材のミクロ組織中のCの濃化領域が粗大であると、溶接で高温に加熱されても粗大なCの濃化領域が残存しやすくなる。その結果、溶接の冷却過程でCの濃化領域の残存部が粗大な島状マルテンサイトへと発達しやすくなり、靭性の低下を招く。そこで、母材のミクロ組織に島状マルテンサイトになりやすいCの濃化領域を微細分散させることにより、溶接で高温に加熱されたときに粗大なCの濃化領域がほぼ消失し、溶接の冷却過程で粗大な島状マルテンサイトが生成しにくくなり、大入熱溶接熱影響部靭性が向上すると考えた。
(2)本発明者らが鋭意検討した結果、母材のミクロ組織中に、Cが0.2〜1.0質量%の濃化領域を有し、前記濃化領域は、平均円相当径で1.0〜5.0μmであり面積分率で5〜15%含むことにより、大入熱溶接熱影響部で生成する島状マルテンサイトの面積分率を減少させ、微細化することができる。その結果、溶接入熱量が400kJ/cmを超えるような大入熱溶接熱影響部の靭性確保を実現することができる。
(3)SiおよびPの含有量を低減した成分組成を有する鋼を、熱間圧延を施した後、冷却速度と冷却停止温度を適正化した冷却処理を施し、さらには、冷却停止後の昇温速度と再加熱温度を適正化した再加熱処理を実施することにより、ミクロ組織中にCの濃化領域を微細分散させた組織とすることができ、母材の特性として650MPa以上の降伏強度と85%以下の低降伏比を安定して達成できる。
[1]成分組成が、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.08%、Mn:1.4〜3.0%、P:0.015%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005〜0.1%、Ti:0.004〜0.03%、N:0.0015〜0.0065%を含有し、下記(1)式で定義されるCeqが0.50〜0.70%であり、Ti/Nが2.0超え〜4.2未満を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、Cが0.2〜1.0質量%の濃化領域を有し、前記濃化領域は、平均円相当径で1.0〜5.0μmであり面積分率で5〜15%含むことを特徴とする降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
ただし、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは各元素の含有量(質量%)で、含有しない場合は0とする。
[2]さらに質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.2%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.005%以下およびB:0.005%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板。
[3][1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を、1000〜1250℃に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上、圧延終了温度が表面温度で900℃以下Ar3変態点以上とする熱間圧延を行い、次いで、Ar3変態点以上の温度域から5〜100℃/sの平均冷却速度で、Ar3−300〜Ar3−150℃の冷却停止温度まで冷却を行った後、冷却停止温度+100℃〜Ac1変態点未満の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、0.5〜3min保持し、空冷することを特徴とする降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
[4]さらに、400℃以上Ac1変態点未満で焼き戻すことを特徴とする[3]に記載の降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
以下、各成分について説明する。なお、成分の含有量を表す「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素であり、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える含有は、特に大入熱溶接熱影響部の靭性を顕著に劣化させる。また、耐溶接割れ性を劣化させるとともに、母材の低温靭性を劣化させるため、0.03〜0.10%の範囲に限定する。好ましくは、0.05〜0.08%である。
Siには脱酸材としての作用や、母材強度を高める効果もあるので、0.01%以上とする。また、Siは島状マルテンサイトの生成を促進する元素である。そのためSiを0.08%以下とすることで生成する島状マルテンサイトの生成を抑え、島状マルテンサイトのサイズを減ずることができる。好ましくは0.03〜0.07%である。さらに好ましくは0.03〜0.05%である。
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有している。本発明では、大入熱溶接熱影響部のミクロ組織中の島状マルテンサイトを低減し、微細化することで靭性を確保するとともに、母材の降伏強さが650MPa以上を確保するためには、1.4%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて含有すると、母材の靭性および溶接熱影響部靭性が著しく劣化するため、1.4〜3.0%の範囲に限定する。好ましくは、1.5〜2.8%である。
Pは、HAZ組織において島状マルテンサイトに濃化し、また、Pはパーライト変態を抑制することで島状マルテンサイトの生成、粗大化を助長するため、HAZ靭性を低下させる。したがって、HAZ靭性向上にはPの低減が望ましい。よって0.015%以下とする。
Sは母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。0.0050%を超えて含有すると、この傾向が顕著となるため、上限とした。
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスに於いて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与するが、0.1%を超える含有は、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して、靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定した。なお、このような効果は0.005%以上の含有で認められる。好ましくは、0.01〜0.07%である。
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、大入熱溶接熱影響部でのオーステナイト粒の粗大化を抑制して溶接熱影響部の高靭化に寄与する重要な元素である。このような効果を確保するためには、0.004%以上の含有が必要である。一方、0.03%を超えるとTiN粒子が粗大化して、期待するオーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和するため、0.004〜0.03%の範囲に限定する。好ましくは、0.006〜0.025%である。
NはTiNを確保する上で必要な元素であり、0.0015%未満では十分なTiN量が確保できない。一方、0.0065%を超えて含有すると、固溶N量の増加により、母材および溶接部靭性が著しく低下するため、0.0065%以下に限定する。好ましくは、0.0030〜0.0060%である。
本発明では、(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.50〜0.70%となるように、上述した成分組成の範囲内で含有量を調整する。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
ただし、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)で、含有しない場合は0とする。
CuおよびNiは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、大入熱溶接熱影響部靭性への影響も小さいため、高強度化のために有用な元素であり、必要に応じ選択して含有できる。含有する場合は、Cuは0.1%以上含有することが好ましい。しかしながら、Cu量が1.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状を劣化させるため、0.1〜1.0%とする。なお、好ましくは、0.2〜0.7%である。
Cr、Mo、Nb、Vは、いずれも鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて適宜含有できる。
Ca、REMおよびMgは、いずれも靭性向上に寄与する元素であり、所望する特性に応じて選択して含有できる。
Bは、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する。また、大入熱溶接時には、溶接熱影響部において脆弱な上部ベイナイト相を抑制し、下部ベイナイト相の生成を促進するとともに、固溶窒素を窒化物として固着することにより、靭性向上に有用な元素である。一方、0.005%を超える含有は焼入れ性を著しく増加させ、母材の靭性、延性の劣化をもたらす。このため、含有する場合は0.005%以下とする。なお、好ましくは、0.0003〜0.0020%である。
本発明では、ミクロ組織が、Cが0.2〜1.0質量%の濃化領域を有し、前記濃化領域は、平均円相当径で1.0〜5.0μmであり面積分率で5〜15%含むことを特徴とする。
次に、製造方法について説明する。なお、温度は特に限定されない限り、板厚1/2位置の温度とする。また、板厚中央の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度から、伝熱計算により求める。また、圧延後の冷却条件における温度条件は、板厚中央の温度とし、冷却速度も板厚中央の温度に基づいて算出された平均冷却速度を意味する。
上述した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等、定法で溶製し、得られた鋼素材を1000℃〜1250℃に加熱する。加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延での変形抵抗が高くなり、1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなることから、圧延パス数が増加し、圧延能率の低下を招くとともに、鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合がある。一方、再加熱温度が1250℃を超えると、加熱時のスケールによって表面疵が生じやすく、圧延後の手入れ負荷が増大する。このため、鋼素材の再加熱温度は1000〜1250℃の範囲とする。
次に、ミクロ組織を微細化するため、鋼板表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上の熱間圧延を行う。950℃以下の温度域での累積圧下率が30%未満では、ミクロ組織が粗大化し、所望の組織微細化が図れず所望の高靭性を確保できない。このため、熱間圧延における鋼板表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率は30%以上に限定した。なお、板厚が80mmを超える極厚鋼板の場合には、ザク圧着のために1パスあたりの圧下率が15%以上となる圧延パスを少なくとも1パス以上確保することが望ましい。
圧延終了温度が鋼板表面温度で900℃を超えると、ミクロ組織が粗大化し所望の母材靭性を確保できないうえ、焼入性が増加しすぎて、所望のミクロ組織を確保できなくなる。一方、圧延終了温度が鋼板表面温度でAr3変態点未満では、圧延中あるいは圧延直後にフェライト相が生成し粗大化して、母材の靱性が低下する。このため、圧延終了温度は鋼板表面温度で900℃以下Ar3変態点以上に限定した。
圧延終了後、得られた厚鋼板は、Ar3変態点以上の温度域から5〜100℃/sの平均冷却速度で、Ar3−350〜Ar3−150℃の冷却停止温度まで冷却する。圧延終了後の冷却速度が5℃/s未満では、加速冷却後のミクロ組織がフェライト主体組織となり、また、島状マルテンサイトの生成も阻害されるので、650MPa以上の降伏強さを確保できなくなる。一方、冷却速度が100℃/sを超えると、鋼板内の各位置における温度制御が困難となり、板幅方向や圧延方向に材質ばらつきが出やすくなり、その結果、引張特性などの材質上のばらつきが生じる。
加速冷却終了後の厚鋼板は、冷却停止温度+100℃〜Ac1変態点未満の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、0.5〜3min保持し、空冷する。ベイナイト主体組織中に未変態γが微細に分散したミクロ組織の状態から再加熱を行うため、得られる母材のCの濃化領域を微細分散させることができる。
Ar3=868−396C+25Si−68Mn−21Cu−36Ni−25Cr−30Mo・・・(2)
ただし、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Moは各合金元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。
Ac1=751−27C+18Si−12Mn−23Cu−23Ni+24Cr+23Mo−40V−6Ti+233Nb−169Al−895B・・・(3)
ただし、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、Nb、Al、Bは、各合金元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合は0とする。
Claims (4)
- 成分組成が、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.08%、Mn:1.4〜3.0%、P:0.015%以下、S:0.0050%以下、Al:0.005〜0.1%、Ti:0.004〜0.03%、N:0.0015〜0.0065%を含有し、下記(1)式で定義されるCeqが0.50〜0.70%であり、Ti/Nが2.0超え〜4.2未満を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、Cが0.2〜1.0質量%の濃化領域を有し、前記濃化領域は、平均円相当径で1.0〜5.0μmであり面積分率で5〜15%含むことを特徴とする降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
ただし、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、Vは各元素の含有量(質量%)で、含有しない場合は0とする。 - さらに質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:1.5%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.2%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.02%以下、Mg:0.005%以下およびB:0.005%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板。
- 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、1000〜1250℃に加熱し、表面温度で950℃以下の温度域での累積圧下率が30%以上、圧延終了温度が表面温度で900℃以下Ar3変態点以上とする熱間圧延を行い、次いで、Ar3変態点以上の温度域から5〜100℃/sの平均冷却速度で、Ar3−300〜Ar3−150℃の冷却停止温度まで冷却を行った後、冷却停止温度+100℃〜Ac1変態点未満の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、0.5〜3min保持し、空冷することを特徴とする降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
- さらに、400℃以上Ac1変態点未満で焼き戻すことを特徴とする請求項3に記載の降伏強さが650MPa以上、降伏比が85%以下である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板の製造方法。
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