JP2017161442A - クロマトグラフ質量分析データ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料に含まれる夾雑物が多い場合でも、SIM測定、MRM測定で得られたデータに基づいて定量する化合物の定性確認を精度よく行う。
【解決手段】試料に対しGC-MS測定系1によりSIM測定を実行するとともに、同試料に対しGCxGC-MS測定系2でスキャン測定を行う。マスクロマトグラム作成部35はSIM測定で得られたデータに基づき、目的化合物に対応するm/zにおけるマスクロマトグラムを作成し、2次元クロマトグラム作成部37はスキャン測定で得られたデータに基づきTICによる2次元クロマトグラムを作成する。クロマトグラム時間軸調整部40は、n-アルカンの保持指標を利用して、マスクロマトグラムの時間軸と2次元クロマトグラムの1次カラムの保持時間軸(横軸)とを合わせるように時間軸を調整し、クロマトグラム表示処理部41は同じ時間軸に沿って両クロマトグラムを縦に並べて表示する。これにより、定量に用いたマスクロマトグラム上のピークが単一化合物由来か否か確認することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)などのクロマトグラフ質量分析装置により収集されたデータを処理するクロマトグラフ質量分析データ処理装置に関し、さらに詳しくは、クロマトグラフ質量分析装置を用いて試料中の化合物を定量する定量分析の際に好適なクロマトグラフ質量分析データ処理装置に関する。なお、本明細書において「質量分析装置」とは、三連四重極型質量分析装置などのMS/MS分析が可能な質量分析装置を含むものとする。
近年、試料に含まれる特定の化合物を定量するために、ガスクロマトグラフ(GC)と四重極型質量分析装置とを組み合わせたガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)における選択イオンモニタリング(SIM)測定や、ガスクロマトグラフ(GC)と三連四重極型質量分析装置或いはQ−TOF型質量分析装置とを組み合わせたガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS/MS)における多重反応モニタリング(MRM)測定が頻用されている。特に、MRM測定は、イオン選択性が高く検出感度も高い(fgオーダーである)ため、夾雑物が多い試料中の目的化合物の定量や、多数の化合物が含まれる試料における多成分一斉分析などに広く使用されている。
ガスクロマトグラフ質量分析装置においてSIM測定やMRM測定を行う際には、通常、分析者が、測定対象である化合物毎に、該化合物の保持時間に基づく測定時間範囲と該化合物由来のイオンの質量電荷比又はMRMトランジション(プリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組み合わせ)とを事前に測定パラメータとして装置に設定する。すると、測定パラメータとして設定されている測定時間範囲に、該測定時間範囲に対応して設定されている質量電荷比又はMRMトランジションをターゲットとする測定が実行され、該当イオンのイオン強度が検出される。
即ち、SIM測定やMRM測定の際には、基本的に測定対象である目的化合物は既知である。しかしながら、場合によっては、分析者が予期しない夾雑物が、目的化合物と同じ測定時間範囲、同じ質量電荷比に検出されることもある。そのため、SIM測定やMRM測定でターゲットとしている質量電荷比において検出されている化合物が真に目的化合物であるか否かを確認することが必要である。こうした目的のために、特許文献1に記載の装置では、SIM測定やMRM測定と所定質量電荷比範囲に亘るスキャン測定とを短い時間で交互に実施するスキャン/SIM同時測定、スキャン/MRM同時測定が行えるようになっている。
スキャン/SIM同時測定或いはスキャン/MRM同時測定では、SIM測定やMRM測定と実質的にほぼ同時に、スキャン測定によって所定の質量電荷比範囲に亘るマススペクトルを得ることができる。そのため、該マススペクトル上のピークパターンに基づくライブラリ検索を行うことによって、その保持時間付近に現れる化合物を同定することができる。これにより、SIM測定やMRM測定でターゲットとしている質量電荷比が真に目的化合物にのみ由来するものであるか否かを確認する、つまりは目的化合物の定性確認を行うことができる。
ところが、スキャン測定では一つの種類のイオンを検出する時間が短いため、その検出感度はあまり高くない。特に、MRM測定に比べるとスキャン測定の検出感度はかなり劣る。そのため、試料中の目的化合物の濃度が低い場合や夾雑物が多い場合には、マススペクトルにおいて夾雑物由来のピークや他のノイズピークの影響が相対的に大きくなり、ライブラリ検索を行っても化合物を精度良く同定するのは困難である。上述したように、MRM測定は夾雑物が多い場合に使用されることが多いため、夾雑物の存在によって定性性能が低下する、スキャン/MRM同時測定におけるスキャン測定では、測定対象である目的化合物の定性確認を確実に行うには不十分である。
特開2013−205323号公報 特開2013−68444号公報
上述したように、GC−MSにおけるSIM測定やMRM測定は定量性に優れるものの、他の化合物由来のピークが重畳している等の定性情報は得られないため、別の方法によって、測定したイオンが真に目的化合物のみに由来するものであるか否かを確認する必要がある。スキャン/SIM同時測定やスキャン/MRM同時測定ではスキャン測定によって定性情報を得ることが可能であるものの、夾雑物が多い等の状況ではその定性性能は不十分である。
なお、ここまではGC/MS分析について説明したが、GC/MS分析のみならずLC/MS分析においても事情は全く同じである。
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、GC−MSやLC−MSなどのクロマトグラフ質量分析装置におけるSIM測定やMRM測定を用いた定量分析の際に、試料に含まれる夾雑物が多い場合、測定対象である化合物の数が多い場合、或いは目的化合物の濃度が低い場合であっても、目的化合物の定性確認を正確に行うことができるクロマトグラフ質量分析データ処理装置を提供することである。
試料に含まれる化合物が多い場合や保持時間が近い複数の化合物が存在する場合に化合物を高い分離能で以て分離する手法として、包括的2次元GC(「GC×GC」とも呼ばれる)が知られている(特許文献2参照)。
包括的2次元GCは、試料中の複数の化合物を1次元目のカラム(以下「1次カラム」という)でまず分離し、その溶出成分をモジュレータに導入する。モジュレータは導入された成分を一定時間間隔(通常、数秒〜十数秒程度。この時間を通常「モジュレーション時間」という)毎に捕集した後にごく狭い時間バンド幅で離脱させ、2次元目のカラム(以下「2次カラム」という)に導入する、という操作を繰り返す。一般に、1次カラムでは、通常のGCと同程度の又はやや緩慢な溶出が行えるような分離条件で以て成分分離が行われる。これに対し、2次カラムとしては1次カラムとは異なる極性で且つ短く内径が小さいカラムが使用され、モジュレーション時間内に溶出が終了するような条件で以て成分分離が実施される。これにより、包括的2次元GCでは、1次カラムで分離されずにピークが重なった複数の化合物を2次カラムで分離することができ、通常のGCに比べて分離性能が大幅に向上する。
こうしたことから、通常のGCではピークが重なってしまうような複雑な試料や夾雑物が多い試料でも、包括的2次元GCによれば目的化合物を他の化合物と分離することで確実な定性が行える。そこで、本願発明者は、GC−MSにおけるSIM測定やMRM測定を用いた定量分析において、目的化合物の定性確認のために包括的2次元GCを利用することに想到した。ただし、その場合、次のような問題がある。
GC−MSにおけるSIM測定やMRM測定による定量分析では、目的化合物由来の質量電荷比又はMRMトランジションにおけるマスクロマトグラムが作成され、そのマスクロマトグラム上のピーク面積に基づいて定量値が算出される。一方、包括的2次元GCや包括的2次元LCでは、通常、横軸に1次カラムの保持時間、縦軸に2次カラムの保持時間をとり、信号強度を等高線やカラースケールで示した2次元クロマトグラムが作成される。1次カラムで十分に分離されなかった複数の化合物は、2次カラムの保持軸上つまり縦軸上で異なる位置に現れるから、横軸上の或る保持時間において縦軸上に複数のブロブ(2次元的なピーク)が存在するか否かを確認することで、1次カラムでは分離されない化合物が実は真に一つの化合物であるのか或いは複数の化合物であるのかを判別することができる。したがって、上記マスクロマトグラムの時間軸と2次元クロマトグラムの1次カラムの時間軸(横軸)とが一致していれば、マスクロマトグラム上で観測されるピークが一つの化合物由来であるか複数の化合物が重なったものであるのか否かを2次元クロマトグラムから判断することができる。
しかしながら、多くの場合、GC−MSで使用されるカラムと包括的2次元GCの1次カラムとは同種の又は類似したカラムであるものの、通常、GC−MSと包括的2次元GCとでは同一化合物の保持時間は同一にはならない。その理由は、昇温時間などの分離条件を合わせることが難しいためである。具体的には、包括的2次元GC分析では、1次カラムにおけるピーク幅を広げ、データサンプリング点数を十分に確保するために、通常のGC/MS(又はGC/MS/MS)分析における昇温速度(例えば10℃/min)と比べて昇温速度をかなり緩慢(例えば3℃/min)にするのが一般的である。そのため、包括的2次元GC分析における保持時間はGC/MS(又はGC/MS/MS)分析における保持時間よりもかなり遅くなる。その結果、GC−MSによるマスクロマトグラムの時間軸と包括的2次元GCによる2次元クロマトグラムの1次カラムの時間軸とは一致しない。
こうした課題を解決するために、本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置は、
a)目的試料に対しクロマトグラフ質量分析装置で選択イオンモニタリング(SIM)測定又は多重反応モニタリング(MRM)測定を行うことにより得られたデータに基づいて、特定の化合物に対応する質量電荷比又はMRMトランジションにおけるマスクロマトグラムを作成するマスクロマトグラム作成部と、
b)目的試料に対し包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でスキャン測定を行うことにより得られたデータに基づいて、1次元目のカラムにおける保持時間と2次元目のカラムにおける保持時間とを直交する二軸とした2次元クロマトグラムを作成する2次元クロマトグラム作成部と、
c)前記マスクロマトグラムの時間軸上と前記2次元クロマトグラムの1次元目のカラムの保持時間軸上とで同一化合物の出現時間が一致するように、その一方又は両方の時間軸を調整する時間軸調整部と、
d)前記時間軸調整部により時間軸が調整されたマスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとを、表示部の画面上に時間軸を合わせて並べて表示するクロマトグラム表示処理部と、
を備えることを特徴としている。
ここで、クロマトグラフ質量分析装置はガスクロマトグラフ質量分析装置又は液体クロマトグラフ質量分析装置であり、質量分析装置はMS/MS分析が可能な質量分析装置を含む。また、包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置は、包括的2次元ガスクロマトグラフ質量分析装置又は包括的2次元液体クロマトグラフ質量分析装置である。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置において、時間軸調整部は、基準化合物を前記クロマトグラフ質量分析装置及び前記包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でそれぞれ測定した結果を利用して、前記マスクロマトグラムと前記2次元クロマトグラムとの一方又は両方の時間軸を調整する構成とすることができる。
クロマトグラフ質量分析装置がガスクロマトグラフ質量分析装置、包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置が包括的2次元ガスクロマトグラフ質量分析装置である場合に、基準化合物としては保持指標(Retention Index)が知られているn−アルカンを用いるとよい。
クロマトグラム表示処理部は、時間軸調整部により時間軸が調整されたマスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとを、表示部の画面上に横軸つまりは時間軸を合わせて縦方向に並べて描出する。このような表示においては、同じ横軸上でマスクロマトグラムにおけるピークと2次元クロマトグラムにおけるブロブとの対応付けが可能となる。したがって、分析者はこの表示画面を見て、マスクロマトグラム上で観測される目的化合物由来のピークと同じ横軸上の位置に、2次元クロマトグラム上でブロブが幾つ存在するのかを確認することによって、目的化合物由来のピークが真に目的化合物のみに由来するものか否か(他の夾雑物が重なっているか)を簡便に且つ視覚的に判定することができる。
また本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置における第1の態様は、
e)化合物情報に対応付けてマススペクトル情報が格納されているスペクトルライブラリと、
f)前記表示部の画面上に表示された2次元クロマトグラム上で分析者が任意のブロブを選択指示するための選択指示部と、
g)前記選択指示部により指示されたブロブが存在する時間位置に得られたスペクトルデータを取得し、該データに基づいて作成されたマススペクトルを前記スペクトルライブラリに格納されているマススペクトルと照合することにより、前記ブロブに対応する化合物情報を求めるライブラリ検索部と、
をさらに備える構成とするとよい。
例えば、マスクロマトグラム上で観測される目的化合物由来のピークと同じ横軸上の位置に、2次元クロマトグラム上でブロブが一つのみ観測される場合、分析者はこのブロブを選択指示部により選択指示する。すると、ライブラリ検索部は、包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でスキャン測定を行うことにより得られたデータの中から、指示されたブロブが存在する時間位置に得られたスペクトルデータを抽出し、該データに基づいて作成されたマススペクトルをスペクトルライブラリに格納されているマススペクトルと照合することで、該ブロブに対応する化合物名称などの化合物情報を求める。そして、その化合物情報を表示部の画面上に表示する。分析者はこの結果から、マスクロマトグラム上のピークの面積等から求めた定量結果が確かに目的化合物の結果であるか否かを確認することができる。
また本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置における第2の態様は、
h)前記包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でスキャン測定を行うことにより得られたデータの中から、前記表示部の画面上に表示されているマスクロマトグラムと同じ質量電荷比又はMRMトランジションのデータを取得し、該データに基づいて2次元マスクロマトグラムを作成する2次元マスクロマトグラム作成部をさらに備え、
前記クロマトグラム表示処理部は、前記2次元マスクロマトグラム作成部で作成された2次元マスクロマトグラムを、前記2次元クロマトグラムに代えて又は該2次元クロマトグラム及び前記マスクロマトグラムとともに表示部の画面上に表示する構成とするとよい。
この構成によれば、マスクロマトグラム上で観測される目的化合物由来のピークと同じ横軸上の位置に、2次元マスクロマトグラム上でブロブが一つしか存在しなければ、該ピークは真に目的化合物のみに由来するものであると、より確実に判断することができる。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置によれば、SIM測定やMRM測定により得られたデータに基づいて定量した化合物の定性確認を、同じ試料を包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置で測定した結果を利用して高い精度で以て行うことができる。包括的2次元クロマトグラフは高い分離性能を有するため、試料に含まれる夾雑物が多い場合、試料中の多数の化合物についての多成分一斉分析を行う場合、さらには、試料中の目的化合物の濃度が低い場合であっても、定量した目的化合物由来のピークに他の化合物の重なりがないか否かを精度良く判定することができ、それによって誤った定量を防止することができる。
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置を備えたGC−MSシステムの一実施例の概略構成図。 本実施例のGC−MSシステムにおける特徴的なデータ処理動作を示すフローチャート。 本実施例のGC−MSシステムにおけるクロマトグラム表示の一例を示す図。 本実施例のGC−MSシステムにおけるクロマトグラム表示の他の例を示す図。
以下、本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置を用いたGC−MSシステムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるGC−MSシステムの概略構成図である。
本実施例のGC−MSシステムは、試料に対し測定を実行するために、GC−MS測定系1とGC×GC−MS測定系2という二つの測定系を有する。
GC−MS測定系1は、カラム112、及び該カラム112に試料ガスを導入する試料気化室などを含む試料導入部111から成るGC部11と、四重極型質量分析装置などである質量分析装置(MS部)12と、を備える。MS部12は、三連四重極型質量分析装置や該質量分析装置の後段の四重極マスフィルタを飛行時間型質量分析器に置き換えたQ−TOF型質量分析装置などのMS/MS分析が可能な質量分析装置でもよい。
GC×GC−MS測定系2は、1次カラム212、該1次カラム212に試料ガスを導入する試料気化室などを含む試料導入部211、1次カラム212から溶出する成分(化合物)を一定時間(モジュレーション時間)間隔で捕集し時間的に圧縮して送り出すモジュレータ213、及び、1次カラム212とは異なる分離特性を有する高速分離可能な2次カラム214、を含むGC×GC部21と、四重極型質量分析装置などである質量分析装置(MS部)22と、を備える。このMS部22もMS/MS分析が可能な質量分析装置を用いることができる。
二つの測定系1、2でそれぞれ得られた測定データはいずれも制御・処理部3に入力され、制御・処理部3において後述するようなデータ処理が実行される。
この制御・処理部3は、機能ブロックとして、測定パラメータ設定部31と、分析制御部32と、GC−MS測定系1から時間経過に従い順次出力されたデータを収集して記憶するGC−MS測定データ記憶部33と、GC×GC−MS測定系2から時間経過に従い順次出力されたデータを収集して記憶するGC×GC−MS測定データ記憶部34と、GC−MS測定データ記憶部33に格納されているデータに基づいてマスクロマトグラムを作成するマスクロマトグラム作成部35と、該マスクロマトグラムにおいてピークを検出するピーク検出部36と、GC×GC−MS測定データ記憶部34に格納されているデータに基づいて2次元クロマトグラム(トータルイオンクロマトグラム)を作成する2次元クロマトグラム作成部37と、該2次元クロマトグラムにおいてブロブを検出するブロブ検出部38と、ピーク検出部36で検出されたピークの面積等に基づいて定量演算を行う定量演算部39と、マスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとの時間軸を調整するクロマトグラム時間軸調整部40と、時間軸が調整されたマスクロマトグラム及び2次元クロマトグラムを表示部6の画面上に表示するクロマトグラム表示処理部41と、表示された2次元クロマトグラム上で任意のブロブの指定を受け付ける特定部位指定処理部42と、化合物情報に対応してマススペクトル情報が収録されているスペクトルライブラリ44と、スペクトルライブラリ44を用いた検索を行うことにより化合物を同定するライブラリ検索部43と、特定の質量電荷比における2次元マスクロマトグラムを作成する2次元マスクロマトグラム作成部45と、を備える。この制御・処理部3にはユーザインターフェイスとして、分析者が操作する入力部5と、分析者に分析結果等を提示する表示部6と、が接続されている。
なお、制御・処理部3は、通常、パーソナルコンピュータ(又はより高性能なワークステーション)をハードウエア資源とし、該コンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理用ソフトウエアを該コンピュータで実行することにより、その各機能ブロックが具現化される構成である。
本実施例のGC−MSシステムにおいて、試料に含まれる(含まれると推定される)既知の化合物の定量を行う場合の特徴的な作業及び処理動作を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
測定パラメータ設定部31は、GC−MS測定系1での測定パラメータを入力するための設定画面を表示部6の画面上に表示し、分析者はこれを見ながら入力部5より、測定対象化合物の測定時間範囲と該測定時間範囲におけるSIM測定のターゲットである質量電荷比、GC部11での分離条件などの測定パラメータを入力する。また、測定パラメータ設定部31は、GC×GC−MS測定系2での測定パラメータを入力するための設定画面を表示部6の画面上に表示し、分析者はこれを見ながら入力部5より、スキャン測定の質量電荷比範囲、GC×GC部21での分離条件などの測定パラメータを入力し、そのうえで測定開始を指示する。
この指示を受けて分析制御部32は、GC−MS測定系1の各部を動作させ、試料に対する測定を実行する(ステップS1)。即ち、GC部11において、試料導入部111は略一定流量で送給されるキャリアガス中に試料を導入する。該試料に含まれる各種化合物はカラム112を通過する間に時間的に分離されMS部12に導入される。MS部12では、設定されている測定時間範囲に所定の質量電荷比を有するイオンのみを選択的に検出する。MS部12による検出信号は、図示しないA/D変換器により所定のサンプリング周期でデジタルデータに変換されて制御・処理部3に入力され、GC/MS測定データ記憶部33に順次格納される。
一方、分析制御部32は、GC×GC−MS測定系2の各部を動作させ、GC−MS測定系1による測定対象と同じ試料に対する測定を実行する(ステップS2)。即ち、GC×GC部21において、試料導入部211は略一定流量で送給されるキャリアガス中に試料を導入する。該試料に含まれる各種化合物は1次カラム212を通過する間に時間的に或る程度分離される。モジュレータ213はモジュレーション時間の間、1次カラム212から溶出してくる化合物を全て捕集し、時間圧縮してきわめて狭いバンド幅で2次カラム214に送り込む、という操作を繰り返す。モジュレーション時間毎に送り込まれた複数の化合物は2次カラム214を通過する際に高い分解能で以て時間方向に分離されて溶出し、溶出した順にMS部22に導入される。MS部22は2次カラム214から一つの化合物が溶出している時間幅よりも短いインターバル間隔でスキャン測定を行い、全ての化合物を漏れなく検出する。MS部22による検出信号は、図示しないA/D変換器により所定のサンプリング周期でデジタルデータに変換されて制御・処理部3に入力され、GC×GC−MS測定データ記憶部34に順次格納される。なお、この測定はGC−MS測定系1による測定と並行して行うことができるが、必ずしも並行して行わなくてもよい。
測定が終了し、測定データ記憶部33、34にそれぞれ測定データが格納されている状態で目的化合物の定量解析の実行が指示されると、マスクロマトグラム作成部35はGC−MS測定データ記憶部33に格納されているデータに基づいて、目的化合物由来の特定の質量電荷比(m/z=M1)におけるマスクロマトグラムを作成する(ステップS3)。ピーク検出部36はマスクロマトグラム上で該目的化合物の保持時間付近のピークを検出し、ピーク面積を計算して該ピーク面積に基づいて定量値を算出する(ステップS4)。
一方、2次元クロマトグラム作成部37はGC×GC−MS測定データ記憶部34に格納されているデータに基づいて、横軸が1次カラム212の保持時間、縦軸が2次カラム214の保持時間であって、信号強度がカラースケールやグレイスケールで示された2次元クロマトグラムを作成する(ステップS5)。ここで作成される2次元クロマトグラムは従来の包括的2次元GCで得られる2次元クロマトグラムと変わらない。
通常、GC−MS測定系1のGC部11における昇温速度などの分離条件は該GC部11での成分分離が最適になるように決められ、GC×GC−MS測定系2のGC×GC部21における昇温速度などの分離条件は1次カラム212、2次カラム214の二つを通した成分分離が最適になるように決められる。そのため、上述したように、それらの分離条件、特に昇温速度は互いに異なり、これが同一化合物についての保持時間の相違をもたらす。そこでクロマトグラム時間軸調整部40は、上記マスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとの間で、同一化合物の保持時間の相違を補正して時間軸を合わせるような処理を実行する(ステップS6)。
具体的には以下のようにしてマスクロマトグラム及び2次元クロマトグラムの時間軸を調整する。GC部11におけるカラム112とGC×GC部21における1次カラム212が同じ種類又は類似した種類のものであれば、保持指標を利用して時間軸を合わせることができる。そこでここでは、GC分析において時間軸の調整にしばしば利用されるn−アルカンの保持指標を利用する。即ち、上述した、同じ試料に対するGC−MS測定系1とGC×GC−MS測定系2によるそれぞれの測定の際に、n−アルカンも併せて測定しておく。そして、その測定結果から測定系1、2における保持時間をそれぞれ求め、n−アルカンの既知の保持指標を利用して、マスクロマトグラムの横軸(時間軸)を保持指標ベースに変換するとともに、2次元クロマトグラムの横軸(1次カラムの保持時間軸)も保持指標ベースに変換する。つまり、マスクロマトグラム、2次クロマトグラム共に、世横軸は同一の保持指標ベース、言い換えれば保持指標で規格化された時間軸になり、両者の対応付けが可能となる。
なお、マスクロマトグラムではn−アルカン由来のピークの重心位置を該化合物の保持時間とすればよい。また、2次元クロマトグラムでは、n−アルカン由来のブロブの重心位置を該化合物の保持時間と考え、ブロブの保持時間=ブロブの1次カラムの保持時間+ブロブの2次カラムの保持時間とみなして、横軸上の保持時間を求めればよい。
こうしてマスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとで横軸が揃うから、クロマトグラム表示処理部41は、横軸を共通としてマスクロマトグラムと2次元クロマトグラムを縦に並べた画像を作成し、これを表示部6の画面上に表示する(ステップS7)。
図3は、GC×GC−MS測定系2においてm/z=40〜510のスキャン測定を行って得られた2次元クロマトグラムと、GC−MS測定系1においてm/z=65をターゲットとするSIM測定で得られたマスクロマトグラムとを並べて表示した一例である。両クロマトグラムの横軸は保持指標で規格化されている。
下のマスクロマトグラムのピークは定量に利用され、該ピークと同じ横軸上の位置で、上の2次元クロマトグラム上で観測されるブロブは該ピークに含まれる化合物の定性情報を示している。したがって、横軸上の或る位置で縦方向に複数のブロブが観測される場合には、同じ時間にその複数のブロブにそれぞれ対応する複数の化合物が混じっていることを意味している。これによって、マスクロマトグラム上で定量分析に用いたピークが単一の化合物に由来するものであるのか、或いは、複数の化合物に由来する、つまりは別の化合物や夾雑物が重なっているのか、を判定することができる。
ただし、マスクロマトグラム上で定量分析に用いたピークが単一の化合物に由来するものであることが確認できたとしても、必ずしもその化合物が目的化合物であるとは限らない。そこで、本GC−MSシステムでは以下のような手順によって、任意の化合物を同定することができる。
即ち、上述のようにして表示部6の画面上に表示されている2次元クロマトグラム上で、分析者は着目するブロブを入力部5により指示する。例えばマウス等のポインティングデバイスでブロブをクリック操作すればよい(ステップS8)。特定部位指定処理部42はこの指示を受けて、指示されたブロブの保持時間を認識し、GC×GC−MS測定データ記憶部34からその保持時間に得られたマススペクトルデータを読み出しマススペクトルを作成する(ステップS9)。ライブラリ検索部43はそのマススペクトルのピークパターンをスペクトルライブラリ44に収録されているマススペクトルのピークパターンと照合し、類似性の高いマススペクトルを持つ化合物を探索する(ステップS10)。そして、何らかの化合物が同定できたならば、その同定結果を表示部6の画面上、例えば指示されたブロブに近い位置に同定された化合物名称を表示する(ステップS11)。
これによって、分析者は定量演算に用いられたピークに対応する化合物が確かに目的化合物であるか否かを確認することができる。また、定量演算に用いられたピークに目的化合物以外の化合物が混じっている可能性がある場合に、その混じっている化合物が何であるのかも確認することができる。
また、図3に例示したような表示では、定量演算に用いられたピークに目的化合物以外の化合物が混じっている可能性を確認することはできるものの、2次元クロマトグラムはトータルイオンクロマトグラムであるため、質量電荷比が同じであるために互いに区別できない化合物であるか、或いは質量電荷比が異なるために区別が可能である化合物であるのかは確認できない。そこで本実施例のGC−MSシステムでは、以下のような手順によって、より的確な定性確認が可能である。
分析者が入力部5から2次元マスクロマトグラム作成の指示を行うと(ステップS12)、この指示を受けて2次元マスクロマトグラム作成部45は、そのときに表示されているマスクロマトグラムの質量電荷比(m/z=M1)に対応したデータをGC×GC−MS測定データ記憶部34から抽出する。そして、上記ステップS6における時間軸調整がなされた2次元マスクロマトグラムを作成する(ステップS13)。この2次元マスクロマトグラムは、横軸及び縦軸は、表示部6の画面上に表示されているトータルイオンクロマトグラムである2次元クロマトグラムと同じであり、信号強度が特定の質量電荷比(m/z=M1)における信号強度である点が相違する。クロマトグラム表示処理部41は、そのときに表示されている2次元クロマトグラムに代えて上記2次元マスクロマトグラムを表示する(ステップS14)。或いは、マスクロマトグラム、2次元クロマトグラムに加えてさらに上記2次元マスクロマトグラムを表示するようにしてもよい。
図4は、図3における2次元クロマトグラムに代えて、m/z=65の2次元マスクロマトグラムを表示した例である。
2次元マスクロマトグラムはSIM測定によるマスクロマトグラムをさらに縦方向に成分展開したグラフになっている。この2次元マスクロマトグラムから、マスクロマトグラム上におけるピークAは二つの化合物が混じったものであり、ピークCは三つの化合物が混じったものであって、それらは純粋な単一化合物由来のピークでないことが分かる。一方、ピークBは一つの化合物に由来するものであるから、このピークBを利用した定量は信頼性が高いことが分かる。
もちろん、2次元クロマトグラム上でなく、この2次元マスクロマトグラム上で任意のブロブを指定して、該ブロブに対応したマススペクトルを利用したライブラリ検索を行い、化合物同定を行えるようにしてもよい。
以上のようにして、本実施例のGC−MSシステムでは、目的化合物の定量に利用したマスクロマトグラム上のピークが単一化合物由来のものであるか否かを分析者が簡便に且つ高い精度で確認することができる。それによって、夾雑物等が重なっているピークを使用した誤った定量を回避することができる。
上記実施例では、GC−MS測定系1におけるMS部22でSIM測定を実施していたが、該MS部22がMS/MS分析が可能な質量分析装置である場合には、定量性を高めるためにSIM測定でなくMRM測定を実施するほうが好ましい。その場合には、特定の質量電荷比におけるマスクロマトグラムの代わりに、特定のMRMトランジションにおけるマスクロマトグラムを作成して表示すればよい。
また、上記実施例は本発明をGC−MS/MSシステムに適用したものであるが、本発明をLC−MSシステムに適用可能であることは明らかである。その場合には、n−アルカンではなく別の基準化合物を測定し、その基準化合物の保持時間を基準として時間軸調整を行えばよい。
さらにまた、上記実施例や変形例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
1…GC−MS測定系
11…GC部
111…試料導入部
112…カラム
12…MS部
2…GC×GC−MS測定系
21…GC×GC部
211…試料導入部
212…1次カラム
213…モジュレータ
214…2次カラム
22…MS部
3…制御・処理部
31…測定パラメータ設定部
32…分析制御部
33…GC−MS測定データ記憶部
34…GC×GC−MS測定データ記憶部
35…マスクロマトグラム作成部
36…ピーク検出部
37…2次元クロマトグラム作成部
38…ブロブ検出部
39…定量演算部
40…クロマトグラム時間軸調整部
41…クロマトグラム表示処理部
42…特定部位指定処理部
43…ライブラリ検索部
44…スペクトルライブラリ
45…2次元マスクロマトグラム作成部
5…入力部
6…表示部

Claims (5)

  1. a)目的試料に対しクロマトグラフ質量分析装置で選択イオンモニタリング(SIM)測定又は多重反応モニタリング(MRM)測定を行うことにより得られたデータに基づいて、特定の化合物に対応する質量電荷比におけるマスクロマトグラムを作成するマスクロマトグラム作成部と、
    b)目的試料に対し包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でスキャン測定を行うことにより得られたデータに基づいて、1次元目のカラムにおける保持時間と2次元目のカラムにおける保持時間とを直交する二軸とした2次元クロマトグラムを作成する2次元クロマトグラム作成部と、
    c)前記マスクロマトグラムの時間軸上と前記2次元クロマトグラムの1次元目のカラムの保持時間軸上とで同一化合物の出現時間が一致するように、その一方又は両方の時間軸を調整する時間軸調整部と、
    d)前記時間軸調整部により時間軸が調整されたマスクロマトグラムと2次元クロマトグラムとを、表示部の画面上に時間軸を合わせて並べて表示するクロマトグラム表示処理部と、
    を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  2. 請求項1に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    前記時間軸調整部は、基準化合物を前記クロマトグラフ質量分析装置及び前記包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でそれぞれ測定した結果を利用して、前記マスクロマトグラムと前記2次元クロマトグラムとの一方又は両方の時間軸を調整することを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  3. 請求項2に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    前記クロマトグラフ質量分析装置はガスクロマトグラフ質量分析装置、前記包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置は包括的2次元ガスクロマトグラフ質量分析装置であり、前記基準化合物はn−アルカンであることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    e)化合物情報に対応付けてマススペクトル情報が格納されているスペクトルライブラリと、
    f)前記表示部の画面上に表示された2次元クロマトグラム上で分析者が任意のブロブを選択指示するための選択指示部と、
    g)前記選択指示部により指示されたブロブが存在する時間位置に得られたスペクトルデータを取得し、該データに基づいて作成されたマススペクトルを前記スペクトルライブラリに格納されているマススペクトルと照合することにより、前記ブロブに対応する化合物情報を求めるライブラリ検索部と、
    をさらに備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロマトグラフ質量分析データ処理装置であって、
    h)前記包括的2次元クロマトグラフ質量分析装置でスキャン測定を行うことにより得られたデータの中から、前記表示部の画面上に表示されているマスクロマトグラムと同じ質量電荷比又はMRMトランジションのデータを取得し、該データに基づいて2次元マスクロマトグラムを作成する2次元マスクロマトグラム作成部をさらに備え、
    前記クロマトグラム表示処理部は、前記2次元マスクロマトグラム作成部で作成された2次元マスクロマトグラムを、前記2次元クロマトグラムに代えて又は該2次元クロマトグラム及び前記マスクロマトグラムとともに表示部の画面上に表示することを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。
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