JP2017166338A - 車両用駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】マニュアルトランスミッション及びマニュアル式のクラッチを有する車両用駆動装置において、車両の発進時において、クラッチの摩耗を抑制しつつ、運転者の意図に基づいた車両の発進ができ、マニュアルトランスミッションの変速時においてエンジントルクが低下しない車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置1は、車両100が発進状態であると判断され、変速が実行されていないと判断されている場合において、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも大きい場合に、エンジン2が出力するエンジントルクTeを要求エンジントルク演算部10aによって演算された要求エンジントルクTerよりも小さい発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2を制御する出力制限制御を実行する発進時エンジン制御部10fを有する。
【選択図】図1
【解決手段】車両用駆動装置1は、車両100が発進状態であると判断され、変速が実行されていないと判断されている場合において、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも大きい場合に、エンジン2が出力するエンジントルクTeを要求エンジントルク演算部10aによって演算された要求エンジントルクTerよりも小さい発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2を制御する出力制限制御を実行する発進時エンジン制御部10fを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両用駆動装置に関する。
従来から特許文献1に示されるように、エンジン回転速度が既定値よりも大きく、マニュアル式のクラッチが半クラッチである場合に、エンジンの出力を低下させることにより、クラッチの摩耗を抑制する技術が提案されている。特許文献1に示される技術では、エンジン回転速度と車速から、マニュアルトランスミッションの減速比を演算し、この減速比がマニュアルトランスミッションの各ギヤ段に応じた所定の範囲を逸脱している時に、マニュアルトランスミッションが半クラッチであると判定している。
特許文献1に示される技術では、エンジン回転速度と車速から、マニュアルトランスミッションの減速比を演算し、この減速比がマニュアルトランスミッションの各ギヤ段に応じた所定の範囲であるか否かに基づいて、クラッチが半クラッチであるか否かを判定している。このため、クラッチが半クラッチであることを精密に判定することが難しく、例えば、車両が下り坂を走行し、路面勾配によって車速が増速する場合には、半クラッチの誤判定が発生するおそれがあった。このため、クラッチが半クラッチであるにも関わらず、半クラッチで無いと誤判定されて、クラッチが摩耗する状況であっても、エンジンの出力が低下せず、クラッチの摩耗が進行するおそれがあった。
また、特許文献1に示される技術では、エンジン回転速度が既定値よりも大きいことによって、エンジンの出力を低下させて、クラッチの摩耗を抑制している。このため、運転者がエンジン回転速度を上昇させて車両を発進させようとすると、エンジンの出力が低下するので、運転者の意図に基づいた車両の発進ができないという問題があった。
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、マニュアルトランスミッション及びマニュアル式のクラッチを有する車両用駆動装置において、車両の発進時において、クラッチが摩耗する状況でクラッチの摩耗を抑制しつつ、運転者の意図に基づいた車両の発進ができる車両用駆動装置を提供する。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る車両用駆動装置は、エンジンから出力されたエンジントルクが入力される入力軸と、車両の駆動輪に回転連結された出力軸とを備え、前記入力軸の回転速度を前記出力軸の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有するマニュアルトランスミッションと、前記エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記エンジンと前記入力軸との間において伝達されるトルクであるクラッチトルクを可変とするマニュアル式のクラッチと、前記クラッチが伝達可能なトルクであるクラッチトルクを可変に操作するためのクラッチ操作部と、前記エンジンが出力する前記エンジントルクを可変に操作するためのエンジントルク操作部と、前記エンジントルク操作部の操作量を検出する操作量検出部と、前記操作量検出部によって検出された前記エンジントルク操作部の前記操作量に基づいて、要求エンジントルクを演算する要求エンジントルク演算部と、前記エンジンが出力する前記エンジントルクが前記要求エンジントルク演算部によって演算された前記要求エンジントルクとなるように、前記エンジンを制御する通常エンジン制御を実行するエンジン制御部と、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、前記入力軸の回転速度を検出する入力軸回転速度検出部と、前記エンジン回転速度検出部によって検出された前記エンジンの回転速度と、前記入力軸回転速度検出部によって検出された前記入力軸の回転速度の差回転速度であるクラッチ差回転速度を演算するクラッチ差回転速度演算部と、前記車両が発進状態であるか否かを判断する発進判断部と、前記発進判断部によって前記車両が発進状態であると判断されている場合において、前記クラッチ差回転速度演算部によって演算された前記クラッチ差回転速度が、第一規定回転速度よりも大きい場合に、前記通常エンジン制御に代えて、前記エンジンが出力する前記エンジントルクを前記要求エンジントルク演算部によって演算された前記要求エンジントルクよりも小さい発進時エンジントルクとなるように、前記エンジンを制御する出力制限制御を実行する発進時エンジン制御部と、を有する。
このように、発進時エンジン制御部は、発進判断部によって車両が発進状態であると判断され、クラッチ差回転速度演算部によって演算されたクラッチ差回転速度が、第一規定回転速度よりも大きい場合に、通常エンジン制御に代えて、エンジンが出力するエンジントルクを要求エンジントルク演算部によって演算された要求エンジントルクよりも小さい発進時エンジントルクとなるように、エンジンを制御する出力制限制御を実行する。これにより、車両の発進時において、クラッチ差回転速度が第一規定回転速度よりも大きく、クラッチが摩耗する状況で、出力制限制御が実行される。つまり、クラッチが摩耗する状況で、エンジンが出力するエンジントルクが要求エンジントルクよりも小さい発進時エンジントルクとなるように、エンジンが制御される。このため、車両の発進時において、クラッチが摩耗する状況で、クラッチの摩耗が抑制される。
また、発進時エンジン制御部は、クラッチ差回転速度が第一規定回転速度よりも大きい場合に、出力制限制御を実行する。これにより、運転者がエンジン回転速度を上昇させて車両を発進させようとした場合において、クラッチ差回転速度が第一規定回転速度以下であれば、エンジンの出力が低下しない。このため、運転者は、自身の意図に基づいて、車両を発進させることができる。
(車両の説明)
図1に基づき、本発明の実施形態による車両用駆動装置1が搭載された車両100について説明する。図1において、太線は各装置間の機械的な接続を示し、破線による矢印は制御用の信号線を示している。図1に示すように、車両100には、エンジン2、クラッチ3、マニュアルトランスミッション4、デファレンシャル17が、この順番に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両100の駆動輪18R、18Lが接続されている。なお、駆動輪18R、18Lは、車両100の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。また、車両100は、制御部10、アクセルペダル51、アクセルストロークセンサ52、クラッチペダル53、クラッチストロークセンサ54、及びマスタシリンダ55を有している。
図1に基づき、本発明の実施形態による車両用駆動装置1が搭載された車両100について説明する。図1において、太線は各装置間の機械的な接続を示し、破線による矢印は制御用の信号線を示している。図1に示すように、車両100には、エンジン2、クラッチ3、マニュアルトランスミッション4、デファレンシャル17が、この順番に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両100の駆動輪18R、18Lが接続されている。なお、駆動輪18R、18Lは、車両100の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。また、車両100は、制御部10、アクセルペダル51、アクセルストロークセンサ52、クラッチペダル53、クラッチストロークセンサ54、及びマスタシリンダ55を有している。
アクセルペダル51(エンジントルク操作部)は、エンジン2が出力するエンジントルクTeを可変に操作するためのものである。アクセルストロークセンサ52(操作量検出部)は、アクセルペダル51のストローク(操作量)であるアクセルストロークStaを検出し、その検出信号を制御部10に出力する。
エンジン2は、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用し、エンジントルクTeを出力するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等である。エンジン2は、ピストン(不図示)により回転駆動されるクランクシャフト2aを有している。エンジン2には、エンジン2のシリンダ(不図示)に連通し、シリンダに供給される空気が流通する吸気マニホールド21が設けられている。また、吸気マニホールド21やエンジン2のシリンダヘッド2bには、燃料供給装置22が設けられている。燃料供給装置22は、ガソリンや軽油等の燃料を供給する装置である。
エンジン2がガソリンエンジンである場合には、吸気マニホールド21には、スロットル23が設けられている。スロットル23は、吸気マニホールド21の流路断面積を可変にすることより、シリンダに吸入される空気量(混合気量)を調整するものである。スロットル23は、バルブ23a、スロットルアクチュエータ23bを備えている。バルブ23aは、吸気マニホールド21の流路断面積を可変にするものであり、例えばバタフライバルブである。スロットルアクチュエータ23bは、制御部10からの指令によって、バルブ23aを駆動することにより、バルブ23aの開度(スロットル開度Pt)を調整するものである。エンジン2がガソリンエンジンである場合には、シリンダヘッド2bには、シリンダ(不図示)内の混合気を点火するための点火装置29が設けられている。
クランクシャフト2aに隣接する位置には、クランクシャフト2aの回転速度(エンジン2の回転速度)であるエンジン回転速度Neを検出して、その検出信号を制御部10に出力するエンジン回転速度センサ24(エンジン回転速度検出部)が設けられている。
クラッチペダル53(クラッチ操作部)は、クラッチ3を切断状態又は接続状態とし、クラッチ3が伝達可能なトルクであるクラッチトルクTcを可変に操作するためのものである。マスタシリンダ55は、クラッチペダル53のストロークに応じた作動圧を発生させる。クラッチストロークセンサ54(クラッチストローク検出部)は、クラッチペダル53のストロークであるクラッチストロークStcを検出し、その検出信号を制御部10に出力する。
クラッチ3は、エンジン2のクランクシャフト2aとマニュアルトランスミッション4の入力軸41との間に設けられている。クラッチ3は、運転者によるクラッチペダル53の操作により、クランクシャフト2aと入力軸41とを接続又は切断するマニュアル式のクラッチである。クラッチ3は、エンジン2のクランクシャフト2aとマニュアルトランスミッション4の入力軸41との間において伝達されるトルクであるクラッチトルクTcを可変とすることができる。クラッチ3は、フライホイール31、クラッチディスク32、クラッチカバー33、ダイヤフラムスプリング34、プレッシャプレート35、レリーズベアリング37、及びスレーブシリンダ38を有している。
フライホイール31は、円板状であり、クランクシャフト2aに連結されている。クラッチディスク32は、フライホイール31よりもマニュアルトランスミッション4側に配置され、フライホイール31と対向している。クラッチディスク32は、円板状であり、その外周部の両面に摩擦材32aが設けられている。クラッチディスク32は、入力軸41の先端に軸線方向移動可能且つ相対回転不能にスプライン嵌合している。このような構成によって、クラッチディスク32は、フライホイール31に接触し、又はフライホイール31から離間する。
クラッチカバー33は、扁平な円筒状の円筒部33aと、この円筒部33aのマニュアルトランスミッション4側の端部から入力軸41の回転中心方向に延出するリング状のリング部33bとから構成されている。円筒部33aは、フライホイール31に連結している。このため、クラッチカバー33は、フライホイール31と一体に回転する。プレッシャプレート35は、フライホイール31の反対側において、クラッチディスク32と対向して、クラッチカバー33に対して軸線方向移動可能且つ相対回転不能に設けられている。プレッシャプレート35は、中心に挿通穴35aが形成された円板状である。プレッシャプレート35の挿通穴35aには、入力軸41が挿通している。
ダイヤフラムスプリング34は、リング状の基部34aと、この基部34aの内周縁から、内側に向かって延出する複数の板バネ部34bとから構成されている。板バネ部34bは、内側方向に向かって基部34aから徐々に離れるように傾斜している。板バネ部34bの先端は、入力軸41の軸線方向に沿って弾性変形可能となっている。ダイヤフラムスプリング34は、板バネ部34bの先端が軸線方向に圧縮された状態で、プレッシャプレート35とクラッチカバー33のリング部33bとの間に設けられている。ダイヤフラムスプリング34の基部34aは、プレッシャプレート35と当接している。ダイヤフラムスプリング34の板バネ部34bの中間部分は、クラッチカバー33のリング部33bの内周縁に接続されている。ダイヤフラムスプリング34の中心には、入力軸41が挿通している。
レリーズベアリング37は、クラッチ3のハウジング(不図示)に取り付けられている。レリーズベアリング37の中心には入力軸41が挿通し、レリーズベアリング37は入力軸41に対して軸線方向移動可能となっている。レリーズベアリング37は、互いに対向し、相対回転可能な第一部材37aと第二部材37bとを備えている。第一部材37aは、ダイヤフラムスプリング34の板バネ部34bの先端と当接している。
スレーブシリンダ38は、スレーブシリンダ38内の作動圧により進退するプッシュロッド38aを備えている。プッシュロッド38aの先端は、レリーズベアリング37の第二部材37bと当接している。スレーブシリンダ38とマスタシリンダ55とは、作動圧配管58により接続されている。
クラッチペダル53が踏まれていない状態では、マスタシリンダ55及びスレーブシリンダ38のいずれにも作動圧は発生していない。この状態では、クラッチディスク32は、プレッシャプレート35を介してダイヤフラムスプリング34によって、フライホイール31側に付勢されて、フライホイール31に押し付けられている。このため、摩擦材32aとフライホイール31との摩擦力、及び摩擦材32aとプレッシャプレート35との摩擦力により、クランクシャフト2a、フライホイール31、クラッチディスク32、クラッチカバー33、プレッシャプレート35、及び入力軸41とが一体回転し、クラッチ3が接続状態となっている。
一方で、クラッチペダル53が踏まれ、マスタシリンダ55内に作動圧が発生すると、スレーブシリンダ38内に作動圧が発生する。すると、スレーブシリンダ38のプッシュロッド38aがレリーズベアリング37をダイヤフラムスプリング34側に押圧する。すると、板バネ部34bがリング部33bの内周縁との接続部分を支点として変形し、ダイヤフラムスプリング34の付勢力が小さくなる。この結果、ダイヤフラムスプリング34の基部34aがプレッシャプレート35を介してクラッチディスク32をフライホイール31側に付勢する付勢力が小さくなり、クラッチトルクTcが低下する。クラッチペダル53が完全に踏まれると(クラッチストロークStcが0)、クラッチトルクTcは0となり、クラッチ3が切断状態となる。
マニュアルトランスミッション4は、クラッチ3とデファレンシャル17との間に設けられている。マニュアルトランスミッション4は、入力軸41及び出力軸42を備えている。入力軸41は、クラッチディスク32と連結している。入力軸41は、クラッチ3の接続時において、エンジン2からのエンジントルクTeが入力される。出力軸42は、デファレンシャル17を介して駆動輪18R、18Lに回転連結されている。マニュアルトランスミッション4は、入力軸41の回転速度(以下、入力軸回転速度Niと略す)を出力軸42の回転速度(以下、出力軸回転速度Noとする)で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段が選択機構(不図示)によって選択的に切り替えられる有段変速機である。
マニュアルトランスミッション4は、運転者によってシフトレバー45に付与された操作力を、選択機構を作動させる力に変換するシフト操作機構47を備えている。マニュアルトランスミッション4には、変速時において、入力軸41に回転連結されたドリブンギヤ(不図示)を出力軸42に同期させ、又は入力軸41を出力軸42に回転連結されたドライブギヤ(不図示)に同期させる周知のシンクロナイザ機構(不図示)が設けられている。
入力軸41の近傍には、入力軸回転速度Niを検出し、その検出信号を制御部10に出力する入力軸回転速度センサ43(入力軸回転速度検出部)が設けられている。入力軸回転速度センサ43は、入力軸41と回転連結されているマニュアルトランスミッション4のギヤの回転を検出するセンサであっても差し支え無い。この実施形態では、制御部10は、入力軸回転速度センサ43からの検出信号に基づいて、入力軸回転速度Niを演算する。
出力軸42の近傍には、出力軸回転速度Noを検出し、その検出信号を制御部10に出力する出力軸回転速度センサ44(車速検出部)が設けられている。出力軸回転速度センサ44は、出力軸42と回転連結されているマニュアルトランスミッション4のギヤを検出するセンサであっても差し支え無い。
制御部10は、エンジン2を制御するものである。制御部10は、CPU、RAM、ROMや不揮発性メモリー等で構成された記憶部(いずれも不図示)を有している。CPUは、エンジン2を制御するプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものである。記憶部は上記プログラムや各種マップを記憶している。制御部10は、要求エンジントルク演算部10a、エンジン制御部10b、クラッチ差回転速度演算部10c、低減トルク演算部10d、発進時エンジントルク演算部10e、発進時エンジン制御部10f、半クラッチ判断部10g、発進判断部10h、及び変速判断部10iを有している。
要求エンジントルク演算部10aは、アクセルストロークセンサ52によって検出されたアクセルストロークStaに基づいて、アクセルストロークStaが大きくなるに従ってより大きな値の要求エンジントルクTerを演算する。エンジン2がガソリンエンジンである場合には、エンジン制御部10bは、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerとなるように、燃料供給装置22の燃料供給量を調整するとともに、スロットル23の開度(スロットル開度Pt)を調整し、点火装置29を制御する「通常エンジン制御」を実行する。エンジン2がディーゼルエンジンである場合には、エンジン制御部10bは、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerとなるように、燃料供給装置22の燃料供給量を調整する「通常エンジン制御」を実行する。なお、アクセルペダル51が踏まれていない場合には(アクセルストロークSta=0)、エンジン回転速度Neはアイドリング回転速度(例えば、700r.p.m.)に維持される。
制御部10は、出力軸回転速度センサ44によって検出された出力軸回転速度Noに基づいて、車両100の車速Vを演算する。クラッチ差回転速度演算部10cは、エンジン回転速度センサ24によって検出されたエンジン回転速度Neから入力軸回転速度センサ43によって検出された入力軸回転速度Niを減算して、クラッチ3の差回転速度(フライホイール31とクラッチディスク32の差回転速度)であるクラッチ差回転速度Ncを演算する。低減トルク演算部10d、発進時エンジントルク演算部10e、発進時エンジン制御部10f、半クラッチ判断部10g、発進判断部10h、及び変速判断部10iについては、後述する。
上記した、エンジン2、クラッチ3、マニュアルトランスミッション4、制御部10、燃料供給装置22、スロットル23、エンジン回転速度センサ24、点火装置29、入力軸回転速度センサ43、クラッチペダル53、クラッチストロークセンサ54、アクセルペダル51、アクセルストロークセンサ52、マスタシリンダ55、及び作動圧配管58を含めた構成が、本実施形態の車両用駆動装置1である。
(発進時エンジン制御の概要)
以下に、図2に示すタイムチャートを用いて「発進時エンジン制御」の概要について説明する。本実施形態では、車両100の発進状態において、クラッチ3が半クラッチとなってから(図2のT1)、クラッチ3が半クラッチである時間が規定半クラッチ時間を越え(図2のT2)、クラッチ差回転速度Neが第一規定回転速度N1よりも大きい場合には、発進時エンジン制御部10fは、「出力制限制御」が実行する。ここで、クラッチ3が半クラッチであるとは、クラッチ3が伝達可能なトルクであるクラッチトルクTcが、0よりも大きく、且つ、最大クラッチトルクTmax(図5示)よりも小さい状態をいう。なお、が最大クラッチトルクTmaxとは、クラッチ3が伝達可能な最大のトルクである。
以下に、図2に示すタイムチャートを用いて「発進時エンジン制御」の概要について説明する。本実施形態では、車両100の発進状態において、クラッチ3が半クラッチとなってから(図2のT1)、クラッチ3が半クラッチである時間が規定半クラッチ時間を越え(図2のT2)、クラッチ差回転速度Neが第一規定回転速度N1よりも大きい場合には、発進時エンジン制御部10fは、「出力制限制御」が実行する。ここで、クラッチ3が半クラッチであるとは、クラッチ3が伝達可能なトルクであるクラッチトルクTcが、0よりも大きく、且つ、最大クラッチトルクTmax(図5示)よりも小さい状態をいう。なお、が最大クラッチトルクTmaxとは、クラッチ3が伝達可能な最大のトルクである。
「出力制限制御」が実行されると、図2のP1に示すように、エンジン2が出力するエンジントルクTeが、発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2が制御される。これにより、「出力制限制御」が実行されていない場合、つまり、「通常エンジン制御」が実行されている場合と比較して、低減トルクTr(図2示)分低下する。この結果、エンジン回転速度Neと入力軸回転速度Niとの差回転速度であるクラッチ差回転速度Ncが、「通常エンジン制御」が実行されている場合と比較して、小さくなる。そして、クラッチ3に入力されるエネルギーが減少し、クラッチ3の発熱が抑制されるとともに、クラッチ3の摩耗が抑制される。なお、クラッチ3に入力されるエネルギーの減少分は、図2の斜線で示す面積である。
以下に、「出力制限制御」について説明する。低減トルク演算部10dは、「出力制限制御」の実行中において、図3に示す「低減トルクマップ」を参照して、クラッチ差回転速度Ncに対応する低減トルクTrを演算する。そして、発進時エンジントルク演算部10eは、要求エンジントルク演算部10aによって演算された要求エンジントルクTerから低減トルク演算部10dによって演算された低減トルクTrを差し引いて、発進時エンジントルクTes(図2示)を演算する。そして、発進時エンジン制御部10fは、「通常エンジン制御」に代えて、エンジン2が出力するエンジントルクTeが、発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2を制御する「出力制限制御」を実行する。
「低減トルクマップ」は、クラッチ差回転速度Ncが大きくなるに従って、低減トルクTrが大きくなるように設定されている。図3に示すように、「低減トルクマップ」は、クラッチ差回転速度Ncが小さい領域では、クラッチ差回転速度Ncが大きい領域と比べて、クラッチ差回転速度Ncの変化量に対する低減トルクTrの変化量が小さくなるように設定されている。このため、クラッチ差回転速度Ncが小さい領域では、クラッチ差回転速度Ncと低減トルクTrとの関係が比例である場合と比較して、低減トルクTrの値が小さく演算される。これにより、クラッチ差回転速度Ncが小さくなり、クラッチ3が係合される前に、エンジン2が出力するエンジントルクTeの低下量が小さくなる。このため、クラッチ3が係合される際において、「出力制限制御」の実行に伴う車両100の減速が抑制され、車両100の運転者が違和感を覚えにくい。
また、図3に示すように、「低減トルクマップ」は、クラッチ差回転速度Ncが大きい領域では、クラッチ差回転速度Ncが小さい領域と比べて、クラッチ差回転速度Ncの変化量に対する低減トルクTrの変化量が大きくなっている。このため、クラッチ差回転速度Ncが大きい領域では、クラッチ差回転速度Ncと低減トルクTrとの関係が比例である場合と比較して、低減トルクTrの値が大きく演算される。これにより、クラッチ差回転速度Ncが大きい場合には、大きな値の低減トルクTrが設定されて(図2のP2)、エンジントルクTeが大きく低下される(図2のP1)。このため、クラッチ差回転速度Ncが大きく、クラッチ3の摩耗が促進される状況において、エンジン2が出力するエンジントルクTeが大きく低下され、クラッチ3の摩耗が抑制される。
「出力軸制限制御」が実行され、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2(図2示)以下となると(図2のT3)、「出力軸制限制御」が終了して、「通常エンジン制御」が実行される。その後、クラッチ差回転速度Ncが0となり(図2のT4)、クラッチ3が完全に係合される。
(発進時エンジン制御)
以下に、図4を用いて、上述した「発進時エンジン制御」のフローチャートを説明する。
車両100のイグニッションがONにされると、プログラムはステップS9に進む。
ステップS9において、制御部10は、「出力制限制御」が実行中であると判断した場合には(ステップS9:YES)、プログラムをステップS10に進める。一方で、制御部10は、「通常エンジン制御」が実行中であると判断した場合には(ステップS9:NO)、プログラムをステップS11に進める。
以下に、図4を用いて、上述した「発進時エンジン制御」のフローチャートを説明する。
車両100のイグニッションがONにされると、プログラムはステップS9に進む。
ステップS9において、制御部10は、「出力制限制御」が実行中であると判断した場合には(ステップS9:YES)、プログラムをステップS10に進める。一方で、制御部10は、「通常エンジン制御」が実行中であると判断した場合には(ステップS9:NO)、プログラムをステップS11に進める。
ステップS10において、制御部10は、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2よりも速いと判断した場合には(ステップS10:YES)、プログラムをステップS21に進める。一方で、制御部10は、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2よりも遅いと判断した場合には(ステップS10:NO)、プログラムをステップS22に進める。第二規定回転速度N2は、「出力制限制御」の実行を終了させるべきか否かを判断するための閾値である。つまり、「出力制限制御」が実行されている場合において、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2よりも遅い場合には、プログラムがステップS22に進み、「出力制限制御」が終了し、「通常エンジン制御」が実行される。第二規定回転速度N2は、第一規定回転速度N1より小さい値に設定された回転速度であり、クラッチ3が係合しようとしている際のクラッチ差回転速度Ncであり、数10r.p.m.である。このように、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2よりも遅く、クラッチ3が係合しようとしている場合には、プログラムがステップS22に進んで、「出力制限制御」が終了されるので、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下されない。このため、クラッチ3の係合時(半クラッチが終了する時)に、「出力制限制御」が実行されることに起因して、運転者が車両100の減速感を覚えることを防止することができる。
ステップS11において、発進判断部10hは、車速Vが第一規定速度V1よりも速いと判断した場合には(ステップS11:YES)、プログラムをステップS12に進める。一方で、発進判断部10hは、車速Vが第一規定速度V1以下であると判断した場合には(ステップS11:NO)、プログラムをステップS22に進める。なお、第一規定速度V1は、0km/h以上の速度に設定され、車両100が停車状態であるか否かを判断する速度である。本実施形態では、第一規定速度V1は、0km/hである。
ステップS12において、発進判断部10hは、後述の半クラッチ判断部10gがクラッチ3が半クラッチであると判断した場合には(ステップS12:YES)、プログラムをステップS13に進める。一方で、発進判断部10hは、後述の半クラッチ判断部10gがクラッチ3が半クラッチでないと判断した場合には(ステップS12:NO)、プログラムをステップS22に進める。半クラッチ判断部10gは、図5に示すように、クラッチストロークセンサ54によって検出されたクラッチストロークStcが、第一ストロークSt1以上であり、第二ストロークSt2以下である場合に、クラッチ3が半クラッチであると判断する。第一ストロークSt1とは、0よりも大きい値に設定されたストロークであり、具体的には、タッチ点Sttよりも微少な所定値だけ小さいストロークである。タッチ点Sttとは、クラッチストロークStcがタッチ点Sttよりも小さい領域から増大した場合に、クラッチトルクTcが0から増大を開始する点である。第二ストロークSt2は、クラッチペダル53の最大ストロークよりも小さい値に設定されたストロークであり、具体的には、完全係合点Steよりも微少な所定値だけ大きいストロークである。勿論、第二ストロークSt2は、第一ストロークSt1よりも大きい。完全係合点Peとは、クラッチストロークStcが完全係合点Peよりも小さい領域から増大した場合に、クラッチトルクTcが最大クラッチトルクTcmaxに達するストロークである。なお、最大クラッチトルクTcmaxは、クラッチ3が発生させることができる最大のクラッチトルクTcである。
上述したように、本実施形態では、クラッチストロークStcが、第一ストロークSt1以上であり、第二ストロークSt2以下である場合に、クラッチ3が半クラッチであると判断している。このため、クラッチ3の摩耗等によりクラッチ3の特性に変化が生じて、実際のタッチ点Sttや完全係合点Steが変化した場合であっても、確実にクラッチ3が半クラッチであることを検出することができる。
このように、車速Vが第一規定速度V1よりも速く(ステップS11:YES)、クラッチ3が半クラッチである場合に(ステップS12:YES)、発進判断部10hは、車両100が発進状態であると判断して、プログラムをステップS13に進める。
ステップS13において、制御部10は、クラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも大きいと判断した場合には(ステップS13:YES)、プログラムをステップS14に進める。一方で、制御部10は、クラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1以下であると判断した場合には(ステップS13:NO)、プログラムをステップS22に進める。第一規定回転速度N1は、「出力制限制御」を実行すべきか否かを判断するための閾値である。つまり、クラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1以下である場合には、クラッチ3が殆ど摩耗しないと判断されて、プログラムがステップS22に進み、「通常エンジン制御」が実行される。このため、クラッチ3が殆ど摩耗しない状態で、「出力制限制御」が実行され、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下することに起因して運転者が違和感を覚えることが防止される。
ステップS14において、変速判断部10iは、ステップS12において最初にクラッチ3が半クラッチとなったと判断されてからの継続時間が、規定半クラッチ時間(例えば5〜10秒)よりも長いと判断した場合には(ステップS14:YES)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていないと判断し、プログラムをステップS15に進める。一方で、変速判断部10iは、ステップS12において最初にクラッチ3が半クラッチとなったと判断されてからの継続時間が、規定半クラッチ時間以下であると判断した場合には(ステップS14:NO)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていると判断し、プログラムをステップS22に進める。発進時のほうが変速時よりもクラッチ3が半クラッチにされる時間が長い。上記した規定半クラッチ時間は、車両100の状態が、変速時であるか否かを判断するための閾値である。つまり、最初にクラッチ3が半クラッチとなったと判断されてからの継続時間が、規定半クラッチ時間以下である場合には、マニュアルトランスミッション4において、変速が実行されていると判断される。このステップS14の処理によって、マニュアルトランスミッション4の変速が実行されている場合には、プログラムがステップS22に進み、「通常エンジン制御」が実行される。
ステップS15において、変速判断部10iは、車速Vが第二規定速度V2(例えば7〜10km)よりも遅いと判断した場合には(ステップS15:YES)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていないと判断し、プログラムをステップS21に進める。一方で、制御部10は、車速Vが第二規定速度V2以上であると判断した場合には(ステップS15:NO)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていると判断し、プログラムをステップS22に進める。なお、第二規定速度V2は、車両100が発進中であるか変速中であるかのいずれかを判断するための閾値である。つまり、車速Vが第二規定速度V2よりも遅い場合には、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されておらず、車両100が発進中であると判断される。一方で、車速Vが第二規定速度V2以上である場合には、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていると判断される。本実施形態では、第二規定速度V2は、クラッチ3が完全に係合している状態で、エンジン2がアイドリング回転速度で回転している状態の車両100の車速Vである。このステップS15の処理によって、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されている場合には、プログラムがステップS22に進み、「通常エンジン制御」が実行される。
「通常エンジン制御」が実行されていた場合には、ステップS21において、発進時エンジン制御部10fは、「通常エンジン制御」を停止して、「通常エンジン制御」に代えて、「出力制限制御」の実行を開始する。一方で、「出力制限制御」が実行されていた場合には、ステップS21において、発進時エンジン制御部10fは、「出力制限制御」の実行を継続する。ステップS21が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS9に戻す。
「通常エンジン制御」が実行されていた場合には、ステップS22において、エンジン制御部10bは、「通常エンジン制御」の実行を継続する。一方で、「出力制限制御」が実行されていた場合には、ステップS22において、エンジン制御部10bは、「出力制限制御」を停止して、「通常エンジン制御」の実行を開始する。ステップS22が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS9に戻す。
(本実施形態の効果)
上記の説明から明らかなように、発進時エンジン制御部10fは、発進判断部10hによって車両100が発進状態であると判断され(図4のステップS11、S12の両方がYESと判断)、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも大きい場合に(図4のステップS13でYESと判断)、「通常エンジン制御」に代えて、「出力制限制御」を実行する(図4のステップS21)。これにより、車両100の発進時において、クラッチ差回転速度Ncが第一規定回転速度N1よりも大きく、クラッチ3が摩耗する状況で、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerよりも小さい発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2が制御される「出力制限制御」が実行される。このため、車両100の発進時において、クラッチ3が摩耗する状況で、クラッチ3の摩耗が抑制される。
上記の説明から明らかなように、発進時エンジン制御部10fは、発進判断部10hによって車両100が発進状態であると判断され(図4のステップS11、S12の両方がYESと判断)、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも大きい場合に(図4のステップS13でYESと判断)、「通常エンジン制御」に代えて、「出力制限制御」を実行する(図4のステップS21)。これにより、車両100の発進時において、クラッチ差回転速度Ncが第一規定回転速度N1よりも大きく、クラッチ3が摩耗する状況で、エンジン2が出力するエンジントルクTeが要求エンジントルクTerよりも小さい発進時エンジントルクTesとなるように、エンジン2が制御される「出力制限制御」が実行される。このため、車両100の発進時において、クラッチ3が摩耗する状況で、クラッチ3の摩耗が抑制される。
また、発進時エンジン制御部10fは、クラッチ差回転速度Ncが第一規定回転速度N1よりも大きい場合に、「出力制限制御」を実行する。これにより、運転者がエンジン回転速度Neを上昇させて車両100を発進させようとした場合において、クラッチ差回転速度Ncが第一規定回転速度N1以下であれば、「通常エンジン制御」が実行されて、エンジン2の出力が低下しない。このため、運転者は、自身の意図に基づいて、車両100を発進させることができる。
低減トルク演算部10dは、クラッチ差回転速度Ncと、要求エンジントルクTerから差し引くトルクである低減トルクTrとの関係を表し、クラッチ差回転速度Ncが大きくなるに従って低減トルクTrが大きくなるように設定された「低減トルクマップ」を参照して、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncに対応する低減トルクTrを演算する。そして、発進時エンジントルク演算部10eは、要求エンジントルク演算部10aによって演算された要求エンジントルクTerから低減トルク演算部10dによって演算された低減トルクTrを差し引いて、発進時エンジントルクTesを演算する。これにより、クラッチ差回転速度Ncが大きくなるに従って、より大きな値の低減トルクTrが演算され、より小さい値の発進時エンジントルクTesが演算される。このため、クラッチ差回転速度Ncが大きく、クラッチ3が摩耗し易い場合に、エンジン2が出力するエンジントルクTeが、より小さな値の発進時エンジントルクTesとなるようにエンジン2が制御される、この結果、クラッチ3が摩耗し易い状況において、クラッチ3の摩耗が確実に抑制される。一方で、クラッチ差回転速度Ncが小さくなるに従って、より小さな値の低減トルクTrが演算され、要求エンジントルクTerからのトルクの低減量が小さい発進時エンジントルクTesが演算される。これにより、クラッチ差回転速度Ncが小さく、クラッチ3が摩耗し難い場合に、エンジン2が出力するエンジントルクTeが、要求エンジントルクTerからのトルクの低減量が小さい発進時エンジントルクTesとなるようにエンジン2が制御される。この結果、クラッチ3が摩耗し難い状況において、エンジン2が出力するエンジントルクTeの要求エンジントルクTerからの低減量が小さくなり、車両100の発進時において、運転者が違和感を覚え難い。
図3に示すように、「低減トルクマップ」は、クラッチ差回転速度Ncが小さい領域が、クラッチ差回転速度Ncが大きい領域と比べて、クラッチ差回転速度Ncの変化量に対する低減トルクTrの変化量が小さくなるように設定されている。これにより、クラッチ差回転速度Ncが小さい領域では、低減トルクTrの値が、クラッチ差回転速度Ncと低減トルクTrとの関係が比例である場合と比較して、小さく演算される。このため、クラッチ差回転速度Ncが小さくなり、クラッチ3が係合される前に、エンジン2が出力するエンジントルクTeの低下量が小さくなる。この結果、クラッチ3が係合される際において、「出力制限制御」の実行に伴う車両100の減速が抑制され、車両100の運転者が違和感を覚え難い。
また、クラッチ差回転速度Ncが大きい領域では、クラッチ差回転速度Ncと低減トルクTrとの関係が比例である場合と比較して、低減トルクTrの値が大きく演算される。これにより、クラッチ差回転速度Ncが大きい場合には、大きな値の低減トルクTrが設定されて(図2のP2)、エンジントルクTeが大きく低下される(図2のP1)。このため、クラッチ差回転速度Ncが大きく、クラッチ3の摩耗が促進される状況において、エンジン2が出力するエンジントルクTeが大きく低下され、クラッチ3の摩耗が抑制される。
半クラッチ判断部10gは、クラッチストロークセンサ54(クラッチストローク検出部)によって検出されたクラッチストロークStcが、0よりも大きい値に設定された第一ストロークSt1(図5示)よりも大きく、且つ、クラッチストロークStcの最大値よりも小さい値に設定された第二ストロークSt2(図5示)よりも小さい場合に、クラッチ3が半クラッチであると判断する。これにより、クラッチ3が半クラッチであることが確実に判断される。また、発進判断部10hは、半クラッチ判断部10gが、クラッチ3が半クラッチであると判断している場合に、車両100が発進状態であると判断する。これにより、運転者が車両100を発進させる際に、クラッチ3を半クラッチにすると、半クラッチ判断部10gは、クラッチ3が半クラッチであると判断し、発進判断部10hは、車両100が発進状態であると判断する。このため、運転者の車両100の発進意思が確実に検出され、クラッチ3が摩耗し易い車両の発進時に、確実に「出力制限制御」が実行される。
発進判断部10hは、出力軸回転速度センサ44(車速検出部)によって検出された車速Vが、0以上の速度に設定された第一規定速度V1よりも速い場合に限り、車両100が発進状態であると判断する。これにより、車両100が停止している状態で、運転者が車両100を発進させようとして、アクセルペダル51を踏み込んだ場合に、「出力制限制御」が実行されず、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下しない。このため、運転者は、自身の意図に沿ったエンジントルクTeで、車両100を発進させることができ、運転者が違和感を覚えない。また、車両100が停車している路面が上り坂である場合に、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下しないので、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下することに起因する車両100のずり下がりが防止される。
また、発進時エンジン制御部10fは、変速判断部10iにおいてマニュアルトランスミッション4において変速が実行されていないと判断されている場合に限り(図4のステップS14、S15の両方がYESと判定と判断)、「出力制限制御」を実行する。これにより、マニュアルトランスミッション4において変速が実行され、車両100の速度が変化し難く、車両100の発進時と比較して、クラッチ3が摩耗し難い状況で、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下されない。このため、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下することに起因する車両100の減速が防止され、運転者が車両100の減速感を覚えない。
車両100の発進時のほうが変速時よりもクラッチ3が半クラッチにされる時間が長い。そこで、変速判断部10iは、半クラッチ判断部10gによってクラッチ3が半クラッチであると判断されている時間が、規定半クラッチ時間以下である場合に(図4のステップS14でNOと判断)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていると判断する。これにより、クラッチ3が半クラッチである場合に、車両100が発進中あるか、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されているかが確実に判断される。このため、マニュアルトランスミッション4において変速中において、「出力制限制御」の実行が確実に防止される。この結果、「出力制限制御」の実行によって、エンジン2が出力するエンジントルクTeの低下に起因する車両100の減速が防止され、運転者が車両100の減速感を覚えない。
車両100の車速Vが所定速度以上である場合には、車両100の発進は完了している。そこで、変速判断部10iは、出力軸回転速度センサ44(車速検出部)によって検出された車速Vが、第二規定速度V2以上である場合に(図4のステップS15でNOと判断)、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されていると判断する。これにより、クラッチ3が半クラッチである場合に、車両100が発進中あるか、マニュアルトランスミッション4において変速が実行されているかが確実に判断される。このため、マニュアルトランスミッション4において変速中において、「出力制限制御」の実行が確実に防止される。この結果、「出力制限制御」の実行によって、エンジン2が出力するエンジントルクTeの低下に起因する車両100の減速が防止され、運転者が車両100の減速感を覚えない。
「出力制限制御」が実行されている場合において、クラッチ差回転速度演算部10cによって演算されたクラッチ差回転速度Ncが、第一規定回転速度N1よりも小さい値に設定された第二規定回転速度N2よりも小さくなった場合に(図4のステップS10でNOと判断)、発進時エンジン制御部10fは、「出力制限制御」を停止し、エンジン制御部10bは、「通常エンジン制御」を実行する(図4のステップS22)。これにより、クラッチ差回転速度Ncが第二規定回転速度N2よりも遅く、クラッチ3が係合しようとしている場合に、「出力制限制御」が終了される。このため、エンジン2が出力するエンジントルクTeが低下されない。この結果、クラッチ3の係合時(半クラッチが終了する時)に、「出力制限制御」が実行されることに起因して、運転者が車両100の減速感を覚えることを防止することができる。
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、クラッチストロークセンサ54は、クラッチペダル53のストロークをクラッチストロークStcとして検出している。しかし、クラッチストロークセンサ54は、クラッチ3のストロークをクラッチストロークStcとして検出するセンサであっても差し支え無い。この実施形態の場合には、クラッチストロークセンサ54は、クラッチディスク32、プレッシャプレート35、レリーズベアリング37、及びスレーブシリンダ38のいずれかストロークを検出する。
以上説明した実施形態では、クラッチストロークセンサ54は、クラッチペダル53のストロークをクラッチストロークStcとして検出している。しかし、クラッチストロークセンサ54は、クラッチ3のストロークをクラッチストロークStcとして検出するセンサであっても差し支え無い。この実施形態の場合には、クラッチストロークセンサ54は、クラッチディスク32、プレッシャプレート35、レリーズベアリング37、及びスレーブシリンダ38のいずれかストロークを検出する。
以上説明した実施形態では、車両100の車速Vを検出するセンサは、出力軸回転速度Noを検出する出力軸回転速度センサ44である。そして、制御部10は、出力軸回転速度センサ44によって検出された出力軸回転速度Noに基づいて、車両100の車速Vを演算している。しかし、車両100の車速Vを検出するセンサは、車両100の車輪の回転速度を検出する車輪速センサであっても差し支え無い。この実施形態では、制御部10は、車輪速センサからの検出結果に基づいて、車両100の車速Vを演算する。
上記説明した実施形態では、エンジントルクを可変に操作するためのエンジントルク操作部は、アクセルペダル51である。しかし、エンジントルク操作部は、アクセルグリップであっても差し支え無い。
上記説明した実施形態では、クラッチトルクTcを可変に操作するクラッチ操作部は、クラッチペダル53である。しかし、クラッチ操作部は、クラッチレバー等であっても差し支え無い。
上記説明した実施形態では、クラッチトルクTcを可変に操作するクラッチ操作部は、クラッチペダル53である。しかし、クラッチ操作部は、クラッチレバー等であっても差し支え無い。
1…車両用駆動装置、2…エンジン、3…クラッチ、4…マニュアルトランスミッション、10…制御部、10a…要求エンジントルク演算部、10b…エンジン制御部、10c…クラッチ差回転速度演算部、10d…低減トルク演算部、10e…発進時エンジントルク演算部、10f…発進時エンジン制御部、10h…発進判断部、10i…変速判断部、24…エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出部)、41…入力軸、43…入力軸回転速度センサ(入力軸回転速度検出部)、44…出力軸回転速度センサ(車速検出部)、42…出力軸、51…アクセルペダル(エンジントルク操作部)、52…アクセルストロークセンサ(操作量検出部)、53…クラッチペダル(クラッチ操作部)、54…クラッチストロークセンサ(クラッチストローク検出部)、18R、18L…駆動輪、100…車両
Claims (9)
- エンジンから出力されたエンジントルクが入力される入力軸と、車両の駆動輪に回転連結された出力軸とを備え、前記入力軸の回転速度を前記出力軸の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を有するマニュアルトランスミッションと、
前記エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記エンジンと前記入力軸との間において伝達されるトルクであるクラッチトルクを可変とするマニュアル式のクラッチと、
前記クラッチが伝達可能なトルクであるクラッチトルクを可変に操作するためのクラッチ操作部と、
前記エンジンが出力する前記エンジントルクを可変に操作するためのエンジントルク操作部と、
前記エンジントルク操作部の操作量を検出する操作量検出部と、
前記操作量検出部によって検出された前記エンジントルク操作部の前記操作量に基づいて、要求エンジントルクを演算する要求エンジントルク演算部と、
前記エンジンが出力する前記エンジントルクが前記要求エンジントルク演算部によって演算された前記要求エンジントルクとなるように、前記エンジンを制御する通常エンジン制御を実行するエンジン制御部と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、
前記入力軸の回転速度を検出する入力軸回転速度検出部と、
前記エンジン回転速度検出部によって検出された前記エンジンの回転速度と、前記入力軸回転速度検出部によって検出された前記入力軸の回転速度の差回転速度であるクラッチ差回転速度を演算するクラッチ差回転速度演算部と、
前記車両が発進状態であるか否かを判断する発進判断部と、
前記発進判断部によって前記車両が発進状態であると判断されている場合において、前記クラッチ差回転速度演算部によって演算された前記クラッチ差回転速度が、第一規定回転速度よりも大きい場合に、前記通常エンジン制御に代えて、前記エンジンが出力する前記エンジントルクを前記要求エンジントルク演算部によって演算された前記要求エンジントルクよりも小さい発進時エンジントルクとなるように、前記エンジンを制御する出力制限制御を実行する発進時エンジン制御部と、を有する車両用駆動装置。 - 前記クラッチ差回転速度と、前記要求エンジントルクから差し引くトルクである低減トルクとの関係を表し、前記クラッチ差回転速度が大きくなるに従って前記低減トルクが大きくなるように設定された低減トルクマップを参照して、前記クラッチ差回転速度演算部によって演算された前記クラッチ差回転速度に対応する前記低減トルクを演算する低減トルク演算部と、
前記要求エンジントルク演算部によって演算された前記要求エンジントルクから前記低減トルク演算部によって演算された前記低減トルクを差し引いて、発進時エンジントルクを演算する発進時エンジントルク演算部と、を有する請求項1に記載の車両用駆動装置。 - 前記低減トルクマップは、前記クラッチ差回転速度が小さい領域では、前記クラッチ差回転速度が大きい領域と比較して、前記クラッチ差回転速度の変化量に対する前記低減トルクの変化量が小さくなるように設定されている請求項2に記載の車両用駆動装置。
- 前記クラッチ操作部によって操作された前記クラッチのストローク、又は前記クラッチ操作部のストロークであるクラッチストロークを検出するクラッチストローク検出部と、
前記クラッチストローク検出部によって検出された前記クラッチストロークが、0よりも大きい値に設定された第一ストロークよりも大きく、且つ、前記第一ストロークよりも大きく前記クラッチストロークの最大値よりも小さい値に設定された第二ストロークよりも小さい場合に、前記クラッチが半クラッチであると判断する半クラッチ判断部と、を有し、
前記発進判断部は、前記半クラッチ判断部が前記クラッチが前記半クラッチであると判断している場合に、前記車両が発進状態であると判断する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。 - 前記車両の車速を検出する車速検出部を有し、
前記発進判断部は、前記車速検出部によって検出された前記車速が、0以上の速度に設定された第一規定速度よりも速い場合に限り、前記車両が発進状態であると判断する請求項4に記載の車両用駆動装置。 - 前記マニュアルトランスミッションにおいて変速が実行されているか否かを判断する変速判断部を有し、
前記発進時エンジン制御部は、前記変速判断部によって前記マニュアルトランスミッションにおいて変速が実行されていないと判断されている場合に限り、前記通常エンジン制御に代えて、前記出力制限制御を実行する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。 - 前記クラッチ操作部によって操作された前記クラッチのストローク、又は前記クラッチ操作部のストロークであるクラッチストロークを検出するクラッチストローク検出部と、
前記クラッチストローク検出部によって検出された前記クラッチストロークが、0よりも大きい値に設定された第一ストロークよりも大きく、且つ、前記クラッチストロークの最大値よりも小さい値に設定された第二ストロークよりも小さい場合に、前記クラッチが半クラッチであると判断する半クラッチ判断部と、を有し、
前記変速判断部は、前記半クラッチ判断部によって前記クラッチが前記半クラッチであると判断されている時間が、規定半クラッチ時間以下である場合に、前記マニュアルトランスミッションにおいて変速が実行されていると判断する請求項6に記載の車両用駆動装置。 - 前記車両の車速を検出する車速検出部を有し、
前記変速判断部は、前記車速検出部によって検出された前記車速が、第二規定速度以上である場合に、前記マニュアルトランスミッションにおいて変速が実行されていると判断する請求項6又は請求項7に記載の車両用駆動装置。 - 前記クラッチ差回転速度演算部によって演算された前記クラッチ差回転速度が、前記第一規定回転速度よりも小さい値に設定された第二規定回転速度よりも小さくなった場合に、
前記発進時エンジン制御部は、前記出力制限制御を停止し、
前記エンジン制御部は、前記通常エンジン制御を実行する請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
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2016
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