JP2017172014A - 黒色めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛めっき層に含まれるMgの量が少ない黒色めっき鋼板の提供。【解決手段】Alの含有量が0.1〜10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下であり、かつ、Znの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al含有Znめっき層を有し、前記溶融Al含有Znめっき層表面の明度は、L*値で60以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、黒色めっき鋼板に関する。
建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などの分野では、意匠性などの観点から黒色の外観を有する鋼板のニーズが高まっている。鋼板の表面を黒色化する方法としては、鋼板の表面に黒色塗料を塗布して黒色塗膜を形成する方法がある。しかしながら、上記の分野では、溶融Znめっきや溶融Al含有Znめっき、溶融Al、Mg含有Znめっきなどのめっきを施しためっき鋼板が使用されることが多く、これらのめっき鋼板の表面は金属光沢のある銀白色の色調を有している。したがって、黒色塗料の塗布により意匠性の高い黒色外観を得るためには、塗膜を厚くして下地色を隠蔽しなければならず、塗装コストが高くなってしまう。また、このように塗膜を厚くすると、スポット溶接などの抵抗溶接を行うことができなくなってしまうという問題もある。
黒色塗膜を形成せずに、めっき鋼板の金属光沢および銀白色の色調を遮蔽する方法としては、めっき層そのものを黒色化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板に高温の水蒸気を24時間以上吹き付けて、めっき層表層に薄い黒色皮膜を形成する方法が開示されている。特許文献1に記載の黒色めっき鋼板では、黒色化促進元素としてMgやCu、Biなどをめっき層に含有させている。しかしながら、黒色化促進元素の含有量が1%を超えると、Znの酸化が抑制されるため、黒色化の促進効果が却って減少すると説明されている。
さらに、厚い黒色皮膜を形成して加工後の黒色外観の保持性を高め、かつ短時間の黒色化処理で製造するため、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を原板として使用し、かつこのめっき鋼板を密閉容器中で水蒸気と接触させて、めっき層を黒色化する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開昭64−56881号公報 特開2013−241665号公報
特許文献2に記載の黒色めっき鋼板は、ZnMg相に含まれるMgがZnから酸素を奪って酸素欠乏型の酸化物を形成するため、めっき鋼板の深部まで黒色酸化物が分布する。そのため、特許文献2に記載の黒色めっき鋼板は、加工後の黒色外観の保持性に優れ、かつ短時間の黒色化処理で製造されうる。しかし、特許文献2に記載の方法では、めっき層中にある程度のMgが存在しないと、めっき層が十分に黒色化しないと考えられていた。
これに対し、黒色めっき鋼板の需要の増大に伴い、より広汎な組成を有するめっき層を黒色化することに対する要求が生じている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、めっき層に含まれるMgの量が少ないにもかかわらず、黒色化されためっき層を有する黒色めっき鋼板を提供することをその目的とする。
本発明者は、Alの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下である溶融Al含有Znめっき層を有するめっき鋼板を原板として使用し、かつこのめっき鋼板を密閉容器中で水蒸気と接触させることにより、上記課題を解決できることを見出し、もって本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の黒色めっき鋼板に関する。
[1]基材鋼板と、Alの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下であり、かつ、Znの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al含有Znめっき層を有し、前記溶融Al含有Znめっき層表面の明度は、L値で60以下である、黒色めっき鋼板。
[2]さらに無機系皮膜を有し、前記基材鋼板、前記溶融Al含有Znめっき層および前記無機系皮膜がこの順に積層されている、[1]に記載の黒色めっき鋼板。
[3]前記無機系皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物を含み、前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属である、[2]に記載の黒色めっき鋼板。
[4]さらに有機系樹脂皮膜を有し、前記基材鋼板、前記溶融Al含有Znめっき層および前記有機系樹脂皮膜がこの順に積層されている、[1]に記載の黒色めっき鋼板。
[5]前記有機系樹脂皮膜は、潤滑剤を含む、[4]に記載の黒色めっき鋼板。
[6]前記有機系樹脂皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物を含み、前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属である、[4]または[5]に記載の黒色めっき鋼板。
[7]前記有機系樹脂皮膜は、ラミネート層または塗布層である、[4]〜[6]のいずれかに記載の黒色めっき鋼板。
[8]前記有機系樹脂皮膜は、クリア塗膜である、[4]〜[7]のいずれかに記載の黒色めっき鋼板。
[9]加工品である、[1]〜[8]のいずれかに記載の黒色めっき鋼板。
本発明によれば、めっき層に含まれるMgの量が少ないにもかかわらず、黒色化されためっき層を有する黒色めっき鋼板を提供することができる。
図1は、水蒸気処理後の溶融Al含有Znめっき鋼板のめっき層の断面を示す光学顕微鏡像である。
1.黒色めっき鋼板
本発明の黒色めっき鋼板は、基材鋼板と、溶融Al含有Znめっき層(以下「めっき層」ともいう)とを有する。本発明の黒色めっき鋼板は、さらに、無機系皮膜または有機系樹脂皮膜を有していてもよい。上記無機系皮膜または有機系樹脂皮膜は、上記基材鋼板、上記溶融Al含有Znめっき層および上記無機系皮膜または有機系樹脂皮膜がこの順に積層されるように形成される。本発明の黒色めっき鋼板は、上記無機系皮膜および上記有機系樹脂皮膜のいずれかのみを有していてもよく、これらの双方を有していてもよい。上記無機系皮膜および上記有機系樹脂皮膜の双方を有するとき、これらの皮膜の積層の順番は限定されず、上記無機系皮膜が上記溶融Al含有Znめっき層により近い位置になるように積層されてもよいし、上記有機系樹脂皮膜が上記溶融Al含有Znめっき層により近い位置になるように積層されてもよい。
なお、本発明の黒色めっき鋼板は、水蒸気処理の程度などの黒色化処理条件を調節することによって、完全な黒色のみならず、より明度が高い黒灰色とすることもできる。本発明において、黒色を呈するめっきおよび黒灰色を呈するめっきをあわせて「黒色めっき」といい、そのような黒色めっきを有する鋼板を「黒色めっき鋼板」という。
本発明の黒色めっき鋼板は、1)めっき層中にZnの黒色酸化物が分布していること、および2)めっき層表面の明度がL値で60以下(好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下)であることを一つの特徴とする。めっき層表面の明度(L値)は、分光型色差計を用いて、JIS K 5600に準拠した分光反射測定法で測定される。
本発明の黒色めっき鋼板は、板状の鋼板が黒色化されたものであってもよいし、加工された鋼板が黒色化された加工品や、黒色化された板状の鋼板を加工して得られる加工品であってもよい。
[基材鋼板]
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などからなる鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などからなる深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを含有する高強度鋼板を用いてもよい。
[溶融Al含有Znめっき層]
上記めっき層は、0.1質量%以上10.0質量%以下のAlを含む溶融Al含有Znめっき層である。Alは、Zn系めっき鋼板の合金層の成長を抑制し加工時のめっき密着性を向上させる元素であるが、本発明においては、後述するように黒色化のために必須の元素である。Al含有量を上記範囲の下限値より多くすることで、十分な合金層の成長抑制効果を付与することができる。一方、Alの量を上記範囲の上限値より少なくすることで、めっき鋼板製造の際にめっき浴表面に発生する酸化物(ドロス)の量を減らし、美麗なめっき鋼板を得やすくすることができる。また、Al自体は黒色化しにくいため、Alの量が上記範囲の上限値よりも多くなると、めっき表面のAl量が多くなり、黒色化しない部分が増加するため、黒色めっき鋼板が得られにくい。
上記組成の溶融Al含有Znめっき層は、Mgを含有してもよい。溶融Al含有Znめっき層がMgを含有するときの、Mgの含有量は、0.0質量%以上0.1質量%以下である。上記組成の溶融Al含有Znめっき層は、Mgの含有量が0.1質量%以下であっても、水蒸気処理によって十分に黒色化する。Mgの含有量は、0.01質量%以下であることが好ましく、Mgを含有しないことがより好ましい。
上記組成の溶融Al含有Znめっき層を有するめっき鋼板を黒色化して得られる、本発明の黒色めっき鋼板は、めっき層が含有するMgの量が少ないか、またはMgを全く含有しないため、Mgをより多く含有する黒色めっき鋼板よりも軟質の黒色めっき層を有する。そのため、黒色めっき鋼板の加工などによりめっき層が引っ張り応力を受けた場合でもめっき層にクラックが発生しにくいことから、加工部での白錆が発生しにくい。
また、上記本発明の黒色めっき鋼板は、めっき層が含有するMgの量が少ないか、またはMgを全く含有しないため、Mgをより多く含有する黒色めっき鋼板よりも安価に製造することができる。
なお、本願明細書において、めっき層中の各成分の含有量の値は、めっき層に含まれる各金属成分の質量をめっき層に含まれる全金属の質量で除したものを百分率で表したものである。すなわち、酸化物に含まれる酸素および水の質量は、めっき層中の成分として含まれない。したがって、水蒸気処理の際に金属成分の溶出が起こらない場合、水蒸気処理の前後においてめっき層中の各成分の含有量の値は変化しない。
溶融Al含有Znめっき層は、基材鋼板とめっき層との密着性を向上させるために、基材鋼板とめっき層との界面におけるAl−Fe合金層の成長を抑制できるSiを0.005質量%〜2.0質量%の範囲でめっき層に含有してもよい。Siの濃度が2.0質量%を超えると、黒色化を阻害するSi系酸化物がめっき層表面に生成してしまうおそれがある。また、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物をめっき層に含有してもよい。これらの化合物の含有量は、Tiが0.001質量%〜0.1質量%の範囲内となるように、Bが0.0005質量%〜0.045質量%の範囲内となるように設定することが好ましい。TiまたはBを過剰量含有すると、めっき層に析出物を成長させるおそれがある。なお、めっき層中へのTi、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物の含有は、水蒸気処理による黒色化にほとんど影響を与えない。
めっき層の厚みは、特に限定されないが、3〜100μmの範囲内が好ましい。めっき層の厚みが3μm未満の場合、取り扱い時に基材鋼板に到達するキズが入りやすくなるため、黒色外観の保持性および耐食性が低下するおそれがある。一方、めっき層の厚みが100μm超の場合、圧縮を受けた際のめっき層と基材鋼板の延性が異なるため、加工部においてめっき層と基材鋼板とが剥離してしまうおそれがある。
[黒色酸化物]
本発明の黒色めっき鋼板は、めっき層中に分布しているZnの黒色酸化物を含有する(図1参照)。ここで、めっき層中とは、めっき層表面とめっき層内部の両方を含む。なお、本願明細書では、酸化物と水和酸化物とを総称して酸化物と称する。
図1は、本発明の黒色めっき鋼板のめっき層の断面を示す光学顕微鏡像である。図1に示されるように、本発明の黒色めっき鋼板では、Znの黒色酸化物がめっき層内に分布している。Znの黒色酸化物が生成する機構は、以下のように考えられる。
上述の溶融Al含有Znめっき鋼板を密閉容器中で水蒸気に接触させると、まずめっき層表面の酸化皮膜がHOと反応して水和酸化物に変化するとともに、この酸化物層を通過したHOがめっき層中の金属と反応する。このとき、Alを固溶したZnは優先的に酸化されやすい。時間の経過とともに、Znの酸化はめっき層の深さ方向に進行する。水蒸気雰囲気で酸素ポテンシャルが低下しているため、Zn酸化物の近傍に存在する、酸素との反応性の高いAlは、Zn酸化物から酸素を奪ってAl酸化物となる。このため、Zn酸化物は、非化学量論組成で酸素欠乏型の酸化物(例えば、ZnO1−x)に変化するものと考えられる。このように酸素欠乏型の酸化物が生成すると、その欠陥準位に光がトラップされるため、酸化物が黒色外観を呈することになる。一方、Zn相に含まれるZnは、酸化反応の進行が遅く、その大部分が金属のまま残存する。結果として、本発明により得られる黒色めっき鋼板のめっき層は、Znの黒色酸化物が分布する金属組織となる。
また、めっき層中のAlはめっき層内部への酸化を促進させる効果がある。Alは、ZnおよびMgと比較してHOとの反応性が高い。したがって、Alは、高温の水蒸気と接触すると、速やかに酸化物となる。Alが速やかに酸化した後は、より内部に位置するZn相の酸化がめっき層の深さ方向に進行する。このようにAlは、めっき層内部のZnの酸化を促進するための「パス」となる。結果として、めっき層中にAlが存在する場合は、より短時間でめっき層内部にZnの黒色酸化物が形成される。
特許文献1に記載の黒色めっき鋼板では、ZnO1−xの針状結晶の生成により、めっき層表面のみを黒色化している。これに対し、本発明の黒色めっき鋼板では、前述の反応機構を考えると、めっき層表面においては層状の黒色酸化物皮膜が形成され、めっき層内部にはZnの黒色酸化物が分布している。したがって、本発明の黒色めっき鋼板では、加工によりめっき層に傷がついても、黒色外観が保持されることになる。めっき層内部の酸化物が黒色を呈することは、めっき層の断面を光学顕微鏡で観察したり(図1参照)、飽和HgCl溶液を用いてめっき層中の金属ZnおよびAl(および、めっき層がMgを含有するときのMg)をアマルガム化して除去し、酸化物のみを回収したりすることにより確認できる。なお、めっき層中の黒色酸化物は、その内部まで黒色化していてもよいし、その表面だけが黒色化していてもよい。
[無機系皮膜および有機系樹脂皮膜]
本発明の黒色めっき鋼板には、無機系皮膜または有機系樹脂皮膜が積層されていてもよい。無機系皮膜および有機系樹脂皮膜は、黒色めっき鋼板の耐食性や耐パウダリング性などを向上させる。Mgが少ない黒色めっき鋼板は、耐食性が十分に高まりにくく、特に厳しい加工の場合めっきの剥離やパウダリングが生じるケースがある。しかし、本発明の黒色めっき鋼板は、それ自体での耐食性が十分に高まらなくても、これらの皮膜を形成することで、実用に耐えうる耐食性や耐パウダリング性が達成されることを本発明者らは見いだした。
(無機系皮膜)
無機系皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物(以下「バルブメタル化合物」ともいう)を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。バルブメタルとは、その酸化物が高い絶縁抵抗を示す金属をいう。バルブメタルとしては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属が挙げられる。バルブメタル化合物としては公知のものを用いてよい。
また、バルブメタルの可溶性フッ化物を無機系皮膜に含ませることで、自己修復作用を付与することができる。バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出しているめっき鋼板の表面に難溶性の酸化物または水酸化物となって再析出し、皮膜欠陥部を埋める。無機系皮膜にバルブメタルの可溶性フッ化物を含ませるには、無機系塗料にバルブメタルの可溶性フッ化物を含有させてもよいし、バルブメタル化合物とは別に(NH)Fなどの可溶性フッ化物を含有させてもよい。
無機系皮膜は、さらに可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性のリン酸塩は、無機系皮膜から皮膜欠陥部に溶出し、めっき鋼板の金属と反応して不溶性リン酸塩となることで、バルブメタルの可溶性フッ化物による自己修復作用を補完する。また、難溶性のリン酸塩は、無機系皮膜中に分散して皮膜強度を向上させる。可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mnが含まれる。難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩に含まれる金属の例には、Al、Ti、Zr、Hf、Znが含まれる。
(有機系樹脂皮膜)
有機系樹脂皮膜を構成する有機樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの樹脂の組み合わせ、あるいはこれらの樹脂の共重合体または変性物などである。これらの柔軟性のある有機樹脂を用いることで、黒色めっき鋼板を成形加工する際にクラックの発生を抑制することができ、耐食性を向上させることができる。また、有機系樹脂皮膜にバルブメタル化合物を含ませる場合に、バルブメタル化合物を有機系樹脂皮膜(有機樹脂マトリックス)中に分散させることができる(後述)。
有機系樹脂皮膜は、潤滑剤を含むものが好ましい。潤滑剤を含ませることで、プレス加工などの加工の際、金型とめっき鋼板表面の摩擦を軽減でき、めっき鋼板表面のカジリを抑制することができる(耐カジリ性の向上)。潤滑剤の種類は、特に限定されず、公知のものから選択すればよい。潤滑剤の例には、フッ素系やポリエチレン系、スチレン系などの有機ワックス、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤が含まれる。
有機系樹脂皮膜は、無機系皮膜と同様に、前述のバルブメタル化合物を含むものが好ましい。バルブメタル化合物を含ませることで、環境負荷を小さくしつつ、優れたバリア作用を付与することができる。
また、有機系樹脂皮膜は、無機系皮膜と同様に、さらに可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性のリン酸塩は、有機系樹脂皮膜から皮膜欠陥部に溶出し、めっき鋼板の金属と反応して不溶性リン酸塩となることで、バルブメタルの可溶性フッ化物による自己修復作用を補完する。また、難溶性のリン酸塩は、有機系樹脂皮膜中に分散して皮膜強度を向上させる。
有機系樹脂皮膜がバルブメタル化合物やリン酸塩を含む場合、通常は、めっき鋼板と有機系樹脂皮膜との間に界面反応層が形成される。界面反応層は、有機系塗料に含まれるフッ化物またはリン酸塩とめっき鋼板に含まれる金属またはバルブメタルとの反応生成物であるフッ化亜鉛、リン酸亜鉛、バルブメタルのフッ化物、リン酸塩などからなる緻密層である。界面反応層は、優れた環境遮蔽能を有し、雰囲気中の腐食性成分がめっき鋼板に到達することを妨げる。一方、有機系樹脂皮膜では、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのフッ化物、リン酸塩などの粒子が有機樹脂マトリックス中に分散している。バルブメタルの酸化物などの粒子は、有機樹脂マトリックス中に三次元的に分散しているため、有機樹脂マトリックスを浸透してきた水分などの腐食性成分を捕捉することができる。その結果、有機系樹脂皮膜は、界面反応層に到達する腐食性成分を大幅に減少することができる。これら有機系樹脂皮膜および界面反応層により、優れた防食効果が発揮される。
たとえば、有機系樹脂皮膜は、柔軟性に優れるウレタン系樹脂を含むウレタン系樹脂皮膜である。ウレタン系樹脂皮膜を構成するウレタン系樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させることで得られるが、ウレタン系樹脂皮膜を形成した後に、黒色の色調を付与するために水蒸気処理を行う場合、ポリオールは、エーテル系ポリオール(エーテル結合を含むポリオール)およびエステル系ポリオール(エステル結合を含むポリオール)を所定の割合で組み合わせて使用することが好ましい。
ポリオールとしてエステル系ポリオールのみを使用してウレタン系樹脂皮膜を形成した場合、ウレタン系樹脂中のエステル結合が水蒸気によって加水分解されてしまうため、耐食性を十分に向上させることができない。一方、ポリオールとしてエーテル系ポリオールのみを使用してウレタン系樹脂皮膜を形成した場合、めっき鋼板との密着性が十分ではなく、耐食性を十分に向上させることができない。これに対し、本発明者らは、エーテル系ポリオールおよびエステル系ポリオールを所定の割合で組み合わせて使用することで、両者の長所を活かし、かつ短所を補い合わせて、めっき鋼板の耐食性を顕著に向上させうることを見出した。これによれば、ウレタン系樹脂皮膜を形成した後に、黒色の色調を付与するために水蒸気処理を行っても(後述)、ウレタン系樹脂皮膜による耐食性の向上効果を維持することができる。すなわち、黒色の色調を有し、かつ耐食性に優れた黒色めっき鋼板を製造することができる。
エーテル系ポリオールの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。エーテル系ポリオールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のような直鎖状ポリアルキレンポリオールなどが含まれる。
エステル系ポリオールの種類も、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。たとえば、エステル系ポリオールとしては、二塩基酸および低分子ポリオールを反応させて得られる、分子鎖中にヒドロキシ基を有する線状ポリエステルを使用できる。二塩基酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、または前記各酸のエステル類が含まれる。
エーテル系ポリオールおよびエステル系ポリオールからなるポリオール中におけるエーテル系ポリオールの割合は、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。エーテル系ポリオールの割合が5質量%未満である場合、エステル系ポリオールの比率が過剰に増加するため、ウレタン系樹脂皮膜が加水分解されやすくなり、耐食性を十分に向上させることができないおそれがある。一方、エーテル系ポリオールの割合が30質量%超である場合、エーテル系ポリオールの比率が過剰に増加するため、めっき鋼板との密着性が低下し、耐食性を十分に向上させることができないおそれがある。
ポリイソシアネートの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。たとえば、ポリイソシアネートとして、芳香族環を有するポリイソシアネート化合物を使用することができる。芳香族環を有するポリイソシアネート化合物の例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、o−、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、芳香族環が水素添加された2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルー4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼンなどが含まれる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記のウレタン系樹脂皮膜は、多価フェノールをさらに含んでいることが好ましい。ウレタン系樹脂皮膜が多価フェノールを含む場合、めっき鋼板とウレタン系樹脂皮膜との界面に、これらを強固に密着させる多価フェノールの濃化層が形成される。したがって、ウレタン系樹脂皮膜に多価フェノールを配合することで、ウレタン系樹脂皮膜の耐食性をさらに向上させることができる。
多価フェノールの種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択すればよい。多価フェノールの例には、タンニン酸、没食子酸、ハイドロキノン、カテコール、フロログルシノールが含まれる。また、ウレタン系樹脂皮膜中の多価フェノールの配合量は、0.2〜30質量%の範囲内が好ましい。多価フェノールの配合量が0.2質量%未満である場合、多価フェノールの効果を十分に発揮させることができない。一方、多価フェノールの配合量が30質量%超である場合、塗料の安定性が低下するおそれがある。
有機系樹脂皮膜は、ラミネート層であってもよいし、塗布層であってもよい。また、有機系樹脂皮膜は、黒色めっき鋼板の黒色外観を生かす観点からは、クリア塗膜であることが好ましい。
本発明の黒色めっき鋼板では、黒色の色調を付与する黒色酸化物が、めっき層の表面だけでなく内部にも存在しており、さらにめっき層に層状で存在しているのではなく、めっき層中に分散している。したがって、本発明の黒色めっき鋼板は、めっき層の表面が削れても黒色の外観を維持することができ、黒色外観の保持性に優れており、また、黒色化によってめっき層の密着性が低下することはなく、加工性に優れている。
本発明の黒色めっき鋼板の製造方法は特に限定されないが、本発明の黒色めっき鋼板は例えば以下の方法により製造されうる。
2.黒色めっき鋼板の製造方法
本発明の黒色めっき鋼板の製造方法は、1)溶融Al含有Znめっき鋼板を準備する第1のステップと、2)溶融Al含有Znめっき鋼板を密閉容器中で水蒸気に接触させる第2のステップとを有する。さらに、任意のステップとして、第2のステップの前または後に3)溶融Al含有Znめっき鋼板の表面に無機系皮膜または有機系樹脂皮膜を形成するステップを有していてもよい。
[第1のステップ]
第1のステップでは、前述の溶融Al含有Znめっき鋼板を準備する。
溶融Al含有Znめっき鋼板は、たとえば、Alの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下であり、残部が実質的にZnの合金めっき浴を用いた溶融めっき法で製造されうる。このようにすることで、Alの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下であり、残部がZnからなるめっき層を形成することができる。また、合金めっき浴は、Si、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物、B含有化合物を含有していてもよい。
[第2のステップ]
第2のステップでは、第1のステップで準備しためっき鋼板を密閉容器中で水蒸気に接触させて、めっき層を黒色化する。この工程により、めっき層表面の明度(L値)を60以下(好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下)にまで低下させることができる。めっき層表面の明度(L値)は、分光型色差計を用いて測定される。
第2のステップにおいて、水蒸気処理を行う際に雰囲気中に酸素が存在すると、めっき層を十分に黒色化することができない。これは、酸素を多く含む雰囲気で水蒸気処理をした場合、黒色を呈するZnの酸素欠乏型の酸化物の形成よりも、表層における灰色を呈する塩基性炭酸亜鉛アルミニウムの形成が優先されるためと推察される。したがって、第2のステップでは、雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を下げて水蒸気処理を行う必要がある。具体的には、水蒸気処理中の酸素濃度は、13%以下であることが好ましい。雰囲気中の酸素濃度を下げる方法は、特に限定されない。たとえば、水蒸気の濃度(相対湿度)を上げてもよいし、容器内の空気を不活性ガスで置換してもよいし、容器内の空気を真空ポンプなどで除去してもよい。いずれの場合であっても、水蒸気処理は密閉容器内で行うことが必要である。
特許文献1に記載の黒色めっき鋼板の製造方法では、めっき鋼板の表面に高温の水蒸気を吹きつけていることから、酸素濃度を調整できない開放系で水蒸気処理を行っていると考えられる。しかしながら、第1のステップで準備した溶融Al含有Znめっき鋼板に対して酸素濃度を調整できない開放系で水蒸気処理を行っても、めっき層を十分に黒色化することはできない。
(処理温度)
水蒸気処理の温度は、50℃以上かつ350℃以下の範囲内が好ましい。水蒸気処理の温度が50℃未満の場合、黒色化速度が遅く、生産性が低下してしまう。また、密閉容器の中で水を100℃以上に加熱すると、容器内の圧力が1気圧以上となり、雰囲気中の酸素濃度を容易に下げることができるため、水蒸気処理の温度は100℃以上であることがより好ましい。一方、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、黒色化速度が非常に速くなり、制御することが困難となる。また、処理装置が大型になってしまうだけでなく、昇温および降温に要する時間を含む合計処理時間も長くなってしまい、実用的でない。したがって、雰囲気中の酸素の除去および黒色化速度の制御の観点から、水蒸気処理の温度は、105℃以上かつ200℃以下の範囲内が特に好ましい。
水蒸気処理の温度を100℃未満に下げたい場合、容器内の圧力を大気圧以上として酸素の混入を抑制するため、不活性ガスを容器内に入れてもよい。不活性ガスの種類は、黒色化反応に無関係なものであれば特に限定されない。不活性ガスの例には、Ar、N、He、Ne、Kr、Xeなどが含まれる。これらの中では、安価に入手可能なAr、N、Heが好ましい。また、真空ポンプなどで容器内の空気を除去してから水蒸気処理を行ってもよい。
(相対湿度)
水蒸気処理中の水蒸気の相対湿度は、30%以上かつ100%以下の範囲内が好ましく、30%以上かつ100%未満の範囲内がより好ましい。水蒸気の相対湿度が30%未満の場合、黒色化速度が遅く、生産性が低下してしまう。また、水蒸気の相対湿度が100%の場合、めっき鋼板の表面に結露水が付着して外観不良が生じやすくなるおそれがある。
水蒸気処理の処理時間は、水蒸気処理の条件(温度や相対湿度、圧力など)やめっき層中のAlおよびMgの量、必要とする明度などに応じて適宜設定されうる。
(事前加熱)
また、水蒸気処理を行う前にめっき鋼板を加熱してもよい。このときのめっき鋼板の加熱温度は、150〜350℃の範囲内が好ましい。事前加熱の処理時間は、処理温度やめっき層中のAlの量などに応じて適宜設定すればよい。通常は、250℃で2時間程度加熱すればよい。
水蒸気処理は、コイル状に巻かれためっき鋼板、成形加工前の平板状のめっき鋼板、成形加工や溶接などを行った後のめっき鋼板のいずれに対して行ってもよい。
[任意のステップ]
第2のステップの前または後に任意に行われる任意のステップでは、溶融Al含有Znめっき鋼板の表面に無機系皮膜または有機系樹脂皮膜を形成する。
無機系皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、バルブメタル化合物などを含む無機系塗料を、水蒸気に接触させる前または接触させた後の溶融Al含有Znめっき鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などが含まれる。無機系塗料がバルブメタル化合物を含有する場合は、無機系塗料中においてバルブメタル化合物が安定して存在できるように、キレート作用のある有機酸を無機系塗料が含有してもよい。有機酸の例には、タンニン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸および酢酸が含まれる。
有機系樹脂皮膜も、公知の方法で形成されうる。たとえば、有機系樹脂皮膜が塗布層である場合は、有機樹脂やバルブメタル化合物などを含む有機系塗料を、水蒸気に接触させる前または接触させた後の溶融Al含有Znめっき鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などが含まれる。有機系塗料がバルブメタル化合物を含有する場合は、有機系塗料中においてバルブメタル化合物が安定して存在できるように、キレート作用のある有機酸を有機系塗料が含有してもよい。有機樹脂やバルブメタル化合物、フッ化物、リン酸塩などを含む有機系塗料をめっき鋼板の表面に塗布した場合、フッ素イオンやリン酸イオンなどの無機陰イオンとめっき鋼板に含まれる金属またはバルブメタルとの反応生成物からなる皮膜(界面反応層)がめっき鋼板の表面に優先的にかつ緻密に形成され、その上にバルブメタルの酸化物、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのフッ化物、リン酸塩などの粒子が分散した有機系樹脂皮膜が形成される。一方、有機系樹脂皮膜がラミネート層である場合は、めっき鋼板の表面にバルブメタル化合物などを含む有機樹脂フィルムを積層すればよい。
溶融Al含有Znめっき鋼板を水蒸気に接触させる前に、溶融Al含有Znめっき鋼板の表面に有機系樹脂皮膜を形成する場合、有機系樹脂皮膜は、前述のウレタン系樹脂皮膜であることが好ましい。ポリオールとして、エーテル系ポリオールおよびエステル系ポリオールを所定の割合で組み合わせて使用したウレタン系樹脂皮膜は、水蒸気処理を行っても耐食性の向上効果を維持することができる。したがって、任意のステップの後に第2のステップを行っても、黒色の色調を有し、かつ耐食性に優れた黒色めっき鋼板を製造することができる。
以上の手順により、めっき層を黒色化して、黒色外観の保持性および加工性に優れる黒色めっき鋼板を製造することができる。
本発明の製造方法は、より短時間でめっき層内部にZnの黒色酸化物を形成してめっき層を黒色化することができる。
また、本発明の製造方法は、水蒸気を用いて黒色化するため、環境に負荷をかけずに黒色めっき鋼板を製造することができる。
以下、実施例を参照して本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例1]
板厚1.2mmのSPCCを基材として、めっき層の厚みが3〜100μmの溶融Al含有Znめっき鋼板を作製した。このとき、めっき浴の組成(Zn、AlおよびMgの濃度)を変化させて、めっき層の組成およびめっき層の厚みがそれぞれ異なる12種類のめっき鋼板を作製した。作製した12種類のめっき鋼板のめっき浴の組成とめっき層の厚みを表1に示す。なお、めっき浴の組成とめっき層の組成は同一である。
作製しためっき鋼板No.1〜12を高温高圧湿熱処理装置(株式会社日阪製作所)内に置き、表2に示す条件でめっき層を水蒸気に接触させて、実施例1〜13とした。
また、実施例14は、めっき鋼板No.1に、クリアのウレタン樹脂(株式会社ADEKA製、HUX−522)を、膜厚が1.5μmとなるように塗装した後に、めっき鋼板を水蒸気に接触させたものである。
また、実施例15は、めっき鋼板を100mmφの円状に打ち抜き、加工油を塗布し、ダイス径50mm、ダイス肩R4mm、高さ25mmの円筒絞り加工を実施した後に、めっき鋼板を水蒸気に接触させたものである。
また、実施例16は、実施例15と同様の円筒絞り加工をしためっき鋼板No.1に、実施例14と同様にクリアのウレタン樹脂を塗装して、その後に、めっき鋼板を水蒸気に接触させたものである。
また、実施例17は、実施例14と同様のクリアのウレタン樹脂を塗装しためっき鋼板No.1に、実施例15と同様の円筒絞り加工をして、その後に、めっき鋼板を水蒸気に接触させたものである。
図1は、水蒸気処理後の実施例12のめっき鋼板のめっき層の断面を示す光学顕微鏡像である。この写真から、めっき層内にZnの黒色酸化物が分布していることがわかる。その他の実施例のめっき鋼板(実施例1〜11、13〜17)のめっき層においても、めっき層内にZnの黒色酸化物が分布していることが観察された。
水蒸気処理後の各めっき鋼板(実施例1〜17)について、めっき層表面の明度(L値)を分光型色差計(有限会社東京電色製、TC−1800)を用いて、JIS K 5600に準拠した分光反射測定法で測定した。測定条件を以下に示す。
光学条件:d/8°法(ダブルビーム光学系)
視野:2度視野
測定方法:反射光測定
標準光:C
表色系:CIELAB
測定波長:380〜780nm
測定波長間隔:5nm
分光器:回折格子 1200/mm
照明:ハロゲンランプ(電圧12V、電力50W、定格寿命2000時間)
測定面積:7.25mmφ
検出素子:光電子増倍管(浜松ホトニクス株式会社製、R928)
反射率:0−150%
測定温度:23℃
標準板:白色
水蒸気処理後の各めっき鋼板(実施例1〜17)について、L値が50以下の場合は「○」、50超かつ60以下の場合は「△」、60超の場合は「×」と評価した。また、L値が60以下の場合に、めっき鋼板が十分に黒色化したと評価した。
水蒸気処理後の各めっき鋼板のめっき層表面の明度を表2に示す。
表2に示されるように、本発明の黒色めっき鋼板は、良好な黒色度を有していることがわかる。
上述したクリアのウレタン樹脂を塗装した後に水蒸気処理を行った実施例14の黒色めっき鋼板に、上述した実施例15と同様の円筒絞り加工を行い、この円筒絞り加工品の表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
また、上述した円筒絞り加工を行った後に水蒸気処理を行った実施例15の黒色めっき鋼板の表面に、上述した実施例14と同様のクリアのウレタン樹脂を塗装し、その後塗装された表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
また、上述した円筒絞り加工を行った後にクリアのウレタン樹脂を塗装して、水蒸気処理を行った実施例16の黒色めっき鋼板の表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
また、上述したクリアのウレタン樹脂を塗装した上で円筒絞り加工を行った後に水蒸気処理を行った実施例17の黒色めっき鋼板の表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
また、実施例1の黒色めっき鋼板の表面に、上述した実施例14と同様のクリアのウレタン樹脂を塗装し、その後上述した実施例15と同様の円筒絞り加工を行い、この円筒絞り加工品の表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
また、実施例1の黒色めっき鋼板に、上述した実施例15と同様の円筒絞り加工を行い、その後上述した実施例14と同様のクリアのウレタン樹脂を塗装してから表面をガーゼでぬぐったところ、黒色皮膜の剥離はほとんど認められなかった。
以上のことから、本発明の黒色めっき鋼板の表面にクリア塗装を設けることで、黒色皮膜の剥離を抑制できることがわかる。
本発明の黒色めっき鋼板は、意匠性および加工性に優れているため、例えば建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などに使用されるめっき鋼板として有用である。

Claims (9)

  1. 基材鋼板と、
    Alの含有量が0.1質量%以上10.0質量%以下であり、Mgの含有量が0.1質量%以下であり、かつ、Znの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al含有Znめっき層とを有し、
    前記溶融Al含有Znめっき層表面の明度は、L値で60以下である、
    黒色めっき鋼板。
  2. さらに無機系皮膜を有し、
    前記基材鋼板、前記溶融Al含有Znめっき層および前記無機系皮膜がこの順に積層されている、請求項1に記載の黒色めっき鋼板。
  3. 前記無機系皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物を含み、
    前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属である、
    請求項2に記載の黒色めっき鋼板。
  4. さらに有機系樹脂皮膜を有し、
    前記基材鋼板、前記溶融Al含有Znめっき層および前記有機系樹脂皮膜がこの順に積層されている、請求項1に記載の黒色めっき鋼板。
  5. 前記有機系樹脂皮膜は、潤滑剤を含む、請求項4に記載の黒色めっき鋼板。
  6. 前記有機系樹脂皮膜は、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物を含み、
    前記バルブメタルは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、SiおよびAlからなる群から選ばれる1種類または2種類以上の金属である、
    請求項4または5に記載の黒色めっき鋼板。
  7. 前記有機系樹脂皮膜は、ラミネート層または塗布層である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の黒色めっき鋼板。
  8. 前記有機系樹脂皮膜は、クリア塗膜である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の黒色めっき鋼板。
  9. 加工品である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の黒色めっき鋼板。
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