本発明は、車体に対して一端側が支承された状態で設けられ回動することで開閉する開閉部を開いた状態で支持するための車両用開閉治具において、上下の支持体を有する支持体部とともに開状態の開閉部を支持する支持機構部の構造を工夫することにより、単純な開閉部の開閉方向の操作のみによって、治具による開閉部の支持状態とその解除状態との切換えを自動的に行う構成を実現したものである。これにより、本発明は、開閉部の開閉作業の単純化を図り、かかる開閉作業についてロボット等による自動化に適した構成を提供する。以下、本発明の実施の形態について説明する。
以下に説明する本発明の実施の形態では、車両用開閉治具の用途として、例えば車両としての自動車の車体を塗装する塗装工程において、開閉部としてのラゲージドアを開いた状態に保持する用途を例にとって説明する。ただし、本発明に係る開閉部としては、例えば、自動車のボンネット、バックドア、フロントドア、リアドア等、車両の車体に対して一端側が支承された状態で設けられ回動することで開閉する部分、つまり車両のボディ本体に開閉可能に装着されたいわゆる蓋物であれば、本発明に係る車両用開閉治具による支持対象とすることができる。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用開閉治具1は、車両としての自動車の車体2を塗装する塗装工程において、開閉部としてのラゲージドア3を開いた状態に保持する。すなわち、車体2の塗装工程においては、車体2の外観だけではなく、車体2に対して一端側が支承されたラゲージドア3により上側から覆われるラゲージルーム4を構成する部材やラゲージドア3の裏面等の内板にも塗装が施されるため、ラゲージドア3を開いた状態で支持するための車両用開閉治具1が用いられ、ラゲージドア3を開いた状態での作業が行われる。この塗装工程では、例えば車両後方側(図1において右側)に位置する塗装用のロボットアームに設けられた塗装ガン(図示略)により、塗装作業が行われる。
図1に示すように、車体2の後部においては、後部座席5の後方に、ラゲージルーム4が設けられている。ラゲージルーム4の開口部は、後側および上側を開放させる。ラゲージルーム4の開口部が、ラゲージドア3により開閉させられる。
ラゲージドア3は、車両の側面視で略「L」字状の外形をなすように構成されており、ドアの外面部を構成するアウタパネルと、ドアの内面部を構成するインナパネルとを有する。ラゲージドア3は、車体2の左右方向(車幅方向)の両側にそれぞれ設けられたドアヒンジ6により車体2に対して回動可能に連結されている。ラゲージドア3は、例えば自動車のリアバンパの上縁部から開くように設けられる。
ドアヒンジ6は、略フック形状の所定の湾曲形状を有するアーム状の部材である。ドアヒンジ6の一端側(略フック形状における先端側)の端部は、車体2に設けられたヒンジ軸6aにより回動可能に支持されている。ヒンジ軸6aは、例えば、自動車のリアウインドの下方の所定の位置に設けられ、車体2の左右方向を回動軸方向とする。ドアヒンジ6の他端側(略フック形状における基部側)の端部は、ラゲージドア3の所定の部位にボルト等により固定されている。
このような構成により、ラゲージドア3は、ラゲージルーム4の開口部を閉じた閉状態と、後端側を上昇させてラゲージルーム4の開口部を開放させた開状態(図1参照)との間で、ドアヒンジ6のヒンジ軸6aを回動中心として回動可能に設けられている。このように、ラゲージドア3は、その回動動作によってラゲージルーム4の開口部を開閉可能に設けられている。
そして、図1に示すように、車両用開閉治具1は、ラゲージドア3が開いた状態において、下端部を、車体2を構成する所定の部分に支持させるとともに、上端部をラゲージドア3の裏側における所定の部分に係止させた状態で、開いた状態のラゲージドア3を支持する。つまり、車両用開閉治具1は、ラゲージドア3とその下方に位置する車体2の支持部分との間に架設された態様で、ラゲージドア3が開いた状態を保持する。また、車両用開閉治具1は、車幅方向については車体2の中央部に取り付けられる。
本実施形態では、車両用開閉治具1は、ラゲージルーム4の開口部の下縁を形成する開口下縁部7を、車体2に対する支持部分とする。つまり、車両用開閉治具1は、その下端部を開口下縁部7に支持させるとともに、上端部をラゲージドア3の裏面側に係止させた状態で、車体2に取り付けられる。
図1に示すように、車両用開閉治具1により開状態のラゲージドア3が支持された状態で、ラゲージドア3の内板等に対して塗装ガンによる塗装作業が行われた後、図2に示すように、ラゲージドア3が略閉じた状態(わずかに開いた状態)とされる。かかる状態においては、車両用開閉治具1の略全体がラゲージルーム4内に収納された状態となる。ラゲージルーム4内に収納された車両用開閉治具1は、自動車の製造ラインにおける塗装工程の後の例えば組立工程等の所定の工程において、車体2から取り外される。
以下、本実施形態の車両用開閉治具1の構成について説明する。なお、以下の説明では、車両用開閉治具1が車体2に取り付けられた状態(以下「取付状態」という。)で車両および車体2の左右方向(車幅方向)、前後方向(図1において左右方向)、上下方向(図1において上下方向)に対応する方向を、それぞれ車両用開閉治具1における左右方向、前後方向、上下方向とする。
図1から図9に示すように、本実施形態の車両用開閉治具1は、上支持体11および下支持体12を有する支持体部10と、車体2に固定されて支持体部10を支持する支持基部30と、支持体部10の下支持体12と支持基部30との間に設けられた支持機構部40とを備える。
まず、支持体部10について説明する。支持体部10を構成する上支持体11および下支持体12は、いずれも全体として略棒状の部材であり、互いに回動可能に連結されている。上支持体11および下支持体12は、それぞれの一端部同士を、支持体間軸支部13により相対回動可能に連結させている。すなわち、ラゲージドア3を車体2に対して開いた状態で支持した状態(以下「ドア支持状態」という。)の車両用開閉治具1において、上支持体11の下端部と、下支持体12の上端部とが、支持体間軸支部13において互いに回動可能に連結されている。本実施形態では、上支持体11と下支持体12とは、略1:1の長さ比を有する。
上支持体11は、直線状の棒状の部分である上支持体本体部11aと、上支持体本体部11aの一端側(下支持体12に対する連結側と反対側)に設けられた上回動支持部11bと、上支持体本体部11aの他端側(下支持体12に対する連結側)に設けられた下回動支持部11cとを有する。
上支持体本体部11aは、円形状の断面形状を有する直線棒状の部分である。本実施形態では、上支持体本体部11aを構成する部材として管状の部材が用いられている。
上回動支持部11bは、左右方向に貫通する上支持孔11dを有する部分である。上回動支持部11bは、例えば、上支持体本体部11aを構成する棒状部材の端部に、棒状の部材が略「U」字状に曲げられたU字状部材が溶接等によって固定されることにより構成される。ここで、U字状部材は、その開放側から上支持体本体部11aを構成する棒状部材の上側の端部を受け入れた状態で棒状部材の外周面に溶接等により固定されている。このような構成においては、上支持体本体部11aを構成する棒状部材の上側の端面とU字状部材の湾曲部分とにより上支持孔11dが形成される。
下回動支持部11cは、左右方向に貫通する下支持孔11eを有する部分である。下回動支持部11cは、例えば、上支持体本体部11aを構成する棒状部材の下側の端面に下支持孔11eとなる孔部を有するナット部材がネジ係合や溶接等により固定されることにより構成される(図7参照)。
下支持体12は、直線状の棒状の部分である下支持体本体部12aと、下支持体本体部12aの一端側(上支持体11に対する連結側)に設けられた上回動支持部12bと、下支持体本体部12aの他端側(上支持体11に対する連結側と反対側)に設けられた下回動支持部12cとを有する。
下支持体本体部12aは、円形状の断面形状を有する直線棒状の部分である。本実施形態では、下支持体本体部12aを構成する部材として管状の部材が用いられている。
上回動支持部12bは、上支持体11の下回動支持部11cを回動自在に軸支する部分である。上回動支持部12bは、左右方向に互いに対向し互いに平行な一対の支持壁部12dとこれらの一側同士を繋ぐ底面部12eとを有する。上回動支持部12bは、例えば、一対の支持壁部12dおよび底面部12eをなす略U字ブロック状の部材が下支持体本体部12aを構成する棒状部材に溶接等により固定されることにより構成される。
上回動支持部12bは、ドア支持状態の車両用開閉治具1における上下両側および後側を開放させる。上回動支持部12bにおいては、一対の支持壁部12d間に、上支持体11の下回動支持部11cが位置し、下回動支持部11cの下支持孔11eに、一対の支持壁部12d間に架設された支持体間支軸15が貫通している。このため、各支持壁部12dには、支持体間支軸15を支持する支持孔12fが設けられている(図7参照)。支持体間支軸15は、下回動支持部11cおよび支持壁部12dの少なくともいずれか一方に対して相対回転可能に設けられる。
このような構成により、上回動支持部12bにおいて上支持体11の下端部が支持されている。かかる上回動支持部12bにおける下回動支持部11cの支持部分が、支持体間軸支部13となる。
下回動支持部12cは、下支持体12を支持基部30に対して左右方向を回動軸方向として回動可能に支持する部分である。下回動支持部12cは、左右方向を中心軸方向とする筒状の外形を有する。
以上のように、支持体部10は、支持体間軸支部13により、支持体間支軸15の軸方向を回動軸方向として、上支持体11と下支持体12を互いに回動可能に軸支させている。つまり、支持体部10は、上支持体11および下支持体12により支持体間軸支部13を屈曲部として屈曲可能に構成されている。ただし、上支持体11と下支持体12との連結部分の構成は、本実施形態に限定されるものではない。かかる連結部分の構成としては、車両左右方向を回動軸方向として、上支持体11と下支持体12とを互いに回動可能ないし回動自在に連結させる構成であればよい。
支持体部10は、取付状態の車両用開閉治具1において、上支持体11の下支持体12に対する連結側と反対側の端部をラゲージドア3側に回動可能に支持させる。
上支持体11の下支持体12に対する連結側の端部は、上述のとおり支持体間軸支部13において軸支される下回動支持部11cであり、その反対側の端部は、ドア支持状態で上端部となる上回動支持部11bである。上回動支持部11bは、ラゲージドア3に対して固定されたドア側支持部20に回動自在に支持されている。
ドア側支持部20は、複数の棒状の部材が屈曲されたり接合されたりして構成され構造部であり、取付状態の車両用開閉治具1においてラゲージドア3側に突出する係止突起部21を有する(図1参照)。係止突起部21は、ラゲージドア3の裏面側に開口する所定の係止孔3aに差し込まれて係止される。係止突起部21は、係止孔3aに対して簡単な操作により係止させることができ、係止孔3aに係止された状態でラゲージドア3から容易に外れないように構成されている。
本実施形態では、係止突起部21が係止される係止孔3aは、ラゲージドア3の裏面側の後端寄りの部分に設けられている。また、係止突起部21は、ラゲージドア3の左右中間部において略左右対称の位置に設けられた2箇所の係止孔3aに係止されるように2箇所に設けられている。
このように、ドア側支持部20は、係止突起部21をラゲージドア3の裏面側の係止孔3aに差し込んだ状態でラゲージドア3の裏面側に着脱可能に固定される。なお、係止突起部21が差し込まれるラゲージドア3の裏面側の係止孔3aは、例えば加工用の基準孔等の既存の孔であったり、車両用開閉治具1の取付専用の孔であったりする。
このようにラゲージドア3に対して着脱可能に固定されるドア側支持部20は、左右方向を延設方向(軸方向)とする支持棒部23を有する(図1参照)。ドア側支持部20は、その支持棒部23を上支持体11の上回動支持部11bの上支持孔11dに貫通させた状態で、上支持体11を回動自在に支持する。以上のように、支持体部10は、ラゲージドア3に対してドア側支持部20を介して左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。
なお、上支持体11の上端部をラゲージドア3に固定させるための構成は、本実施形態に限定されるものではない。ドア側支持部20の構成としては、上支持体11の上端部をラゲージドア3に対して着脱可能に固定させることができ、ラゲージドア3の開閉動作にともなって車両用開閉治具1が動作するように上支持体11のラゲージドア3に対する固定状態を維持することができる構成のものであればよい。また、ドア側支持部20等を介することなく、上支持体11の上端部を直接的にラゲージドア3に回動可能に支持する構成が採用されてもよい。
また、ドア側支持部20には、車両用開閉治具1の取付状態でラゲージドア3を開閉させる際における把持部分を構成する把持アーム24が設けられている。把持アーム24は、一体の棒状の部材が屈曲形成された態様の部材であり、屈曲棒状のアーム部24aと、アーム部24aの一端側に設けられた把持部24bとを有する。アーム部24aは、ドア支持状態の車両用開閉治具1において後側を凸とするように屈曲している。把持部24bは、側面視において矩形枠状に形成されている。
把持アーム24においては、アーム部24aの把持部24b側と反対側の端部が、ドア側支持部20に設けられた軸支部25において左右方向を回動軸方向として回動自在に支持されている。把持アーム24は、ドア支持状態の車両用開閉治具1において上支持体11の後側に位置し、軸支部25によって回動自在に支持され、把持部24b側を下側として自重により垂れ下がった状態で設けられている。
次に、支持基部30について説明する。支持基部30は、上記のとおり車体2に固定される部分であり、車両用開閉治具1において車体2に対する固定支持部分を構成する。支持基部30は、下支持体12の上支持体11に対する連結側と反対側の端部を回動可能に支持する。
下支持体12の上支持体11に対する連結側の端部は、上述のとおり支持体間軸支部13において軸支される上回動支持部12bであり、その反対側の端部は、ドア支持状態で下端部となる下回動支持部12cである。下回動支持部12cは、車体2に固定された支持基部30に回動自在に支持されている。
支持基部30は、その本体部分を構成する部分として、板面を前後方向に対して略垂直とする板状の部分であるベース板部31と、ベース板部31の上側に設けられた係止板部32と、ベース板部31の下側に設けられた当接板部33とを有する。本実施形態において、支持基部30は、溶接等により固定された複数のL字状の鋼板等の組み合せにより一体的に構成されている。
ベース板部31は、前後方向に略垂直な板面である前面31aおよび後面31bを有する。ベース板部31は、上部を幅広の部分として下部を幅狭の部分としている。
係止板部32は、ベース板部31の上端から後方に向けてベース板部31に対して直角状に折れ曲がった面部である上面部32aと、上面部32aの後端部から下方に向けて上面部32aに対して直角状に折れ曲がった面部である係止面部32bとを有する。係止面部32bは、ベース板部31の後方において、ベース板部31に対して略平行でありかつ上下方向の寸法が短い面部として設けられている。このように、上面部32aおよび係止面部32bを有する係止板部32は、支持基部30の上部においてベース板部31とともにフック状の部分を構成する。
当接板部33は、ベース板部31に対して左右方向の寸法を長くした略「L」字状の断面形状を有する部分である。当接板部33は、ベース板部31と平行に略連続する面部である鉛直面部33aと、鉛直面部33aの下端部から前方に向けて鉛直面部33aに対して直角状に折れ曲がった面部である下端面部33bとを有する。
以上のような構成を備えた支持基部30は、開口下縁部7の左右中央部に設けられた開口部7aに係合した状態で、車体2に支持固定される(図1参照)。開口部7aとしては、ラゲージドア3側に設けられたストライカ等とともにラゲージドア3を閉状態でロックさせるロック機構を設けるための開口部が用いられる。開口部7aは、車体2の上面視および後面視それぞれにおいて横長の略矩形状の開口形状を有する。開口下縁部7は、左右方向に延設された中空状の部分であり、開口下縁部7の上面部に、開口部7aが形成されている。
支持基部30は、係止板部32の係止面部32bを開口部7aに対して上側から差し入れた状態で開口下縁部7の前上側の角部に被さるとともに、開口下縁部7の前面部7bの前側にベース板部31を沿わせた状態で、開口下縁部7に係合する。また、支持基部30は、当接板部33の鉛直面部33aの後面33cを、開口下縁部7の前面部7bの前側に接触させた状態で、開口下縁部7に支持される。
支持基部30は、その上部においてフック状の部分を構成するベース板部31および係止板部32とともに、開口下縁部7に係合固定されるための部分として、係止爪部34を有する。係止爪部34は、支持部34aと係止突部34bとを有し、これらの部分により略「L」字状の形状をなす板状の部分である。
係止爪部34は、ベース板部31の左側において、係止突部34b側を後側として係止突部34bの突側を上側に向けて設けられている。係止爪部34は、係止突部34bが設けられた部分をベース板部31から後方に突出させている。係止爪部34は、側面視において、係止面部32bを下向きに屈曲させた係止板部32に対向するように、係止面部32bの前下方の位置にて係止突部34bを上方に突出させている(図9参照)。
係止爪部34は、支持基部30の本体部分に対し、左右方向を回動軸方向とする軸支部35により回動可能に支持された支持板部36を介して揺動可能に設けられている。軸支部35は、ナット部材35aと、支持板部36の上端部を貫通するとともにナット部材35aに螺挿されるネジ部材35bとにより構成されている。軸支部35は、ナット部材35aをベース板部31の前面31aに溶接等によって固定させることによりベース板部31に支持されている。支持板部36の左側の板面36aに、係止爪部34の支持部34aが溶接等により固定されている。
係止爪部34は、係止突部34b側の部分を、開口下縁部7の前面部7bに設けられた係止孔7cに係入させる(図1参照)。つまり、支持基部30は、係止板部32の係止面部32bを開口部7aに上側から差し入れて開口下縁部7の前上側の角部に被さるとともに、係止爪部34を係止孔7cに係入させることで、開口下縁部7の前面部7bを上下から挟持した状態で、開口下縁部7に係合支持される。
また、係止爪部34からは、直線棒状の回動レバー37が前方に向けて突設されている。回動レバー37は、係止爪部34を軸支部35回りに回動させ、開口下縁部7に対する支持基部30の係合およびその解除を行うための操作部である。回動レバー37は、係止爪部34および支持板部36に対して溶接等により固定されており、係止爪部34および支持板部36とともに、軸支部35に支持された一体的な回動体を構成する。
支持基部30の開口下縁部7に対する固定に際しては、支持基部30が係止面部32bを開口部7aに対して上側から差し込んで開口下縁部7の前上側の角部に被さった状態で、回動レバー37が下方に向けて操作される。これにより、左側面視(図9参照)において、軸支部35に支持された一体的な回動体は左回りに回動し、係止爪部34の係止突部34bは上方に移動し、支持基部30による開口下縁部7の前面部7bの挟持状態、つまり支持基部30の係合固定状態が得られる。
一方、支持基部30の開口下縁部7に対する固定の解除に際しては、回動レバー37が上方に向けて操作される。これにより、左側面視(図9参照)において、軸支部35に支持された一体的な回動体は右回りに回動し、係止爪部34の係止突部34bは下方に移動し、支持基部30による開口下縁部7の前面部7bの挟持状態、つまり支持基部30の係合固定状態が解除される。この係合固定状態が解除された状態においては、支持基部30を開口下縁部7から取り外すことができる。このように、支持基部30は、車体2の開口下縁部7に対して着脱可能に固定されている。
以上のように車体2に対して着脱可能に固定される支持基部30においては、前上側の角部分、つまりベース板部31と係止板部32とがなす角部分に、下支持体12の下回動支持部12cを回動可能に支持する支持体軸支部38が設けられている。支持体軸支部38は、支持体間軸支部13と同様、車両左右方向を回動軸方向とする。
支持体軸支部38は、下支持体12の下端部に設けられた筒状の下回動支持部12cを介装させる一対の支持筒部38aを有する。支持筒部38aは、下回動支持部12cと略同径の筒状の部分であり、支持基部30の前上側の角部分に沿うL字状の支持プレート38bを介して溶接等により支持基部30の本体部分に固定されている。支持体軸支部38は、下回動支持部12cおよびその両側の支持筒部38aを貫通する支軸部38cにより、下回動支持部12cを回動可能に支持する。
このように、車両用開閉治具1を構成する支持体部10の下端部は、車体2の開口下縁部7に固定された支持基部30において、支持体軸支部38によって回動可能に支持される。つまり、支持体部10は、支持基部30を介して車体2に対して回動可能に支持されている。支持体軸支部38は、支持基部30における位置を固定とする。このため、支持体軸支部38による支持体部10の下端部の支持位置は、ラゲージドア3の開閉動作およびこれにともなう車両用開閉治具1の動作にかかわらず、車体2に対して固定の位置となる。
なお、下支持体12の下端部を回動可能に支持するための構成は、本実施形態に限定されるものではない。かかる構成については、下支持体12の下端部を、所定の位置で、支持体間軸支部13と同じ回動軸方向で回動可能に支持する構成であればよい。また、本実施形態では、車体2に支持基部30を固定するための開口部として、ラゲージドア3のロック機構を設けるための開口部7aが用いられているが、これに限定されるものではない。支持基部30固定用の開口部は、他の既存の開口部や、支持基部30の取付専用の開口部であってもよい。
以上のように、車両用開閉治具1は、その取付状態において、ドア側支持部20によって上端部をラゲージドア3に固定させるとともに、支持基部30によって下端部を車体2の開口下縁部7に固定させる。
そして、ラゲージドア3が開いた状態となるドア支持状態では、支持体部10は、車両側面視で、上支持体11と下支持体12により鈍角をなすように車両前方側へとわずかに屈曲して起立した状態となる(図1参照)。つまり、ドア支持状態では、支持体部10は、下支持体12が支持体軸支部38からやや車両前方に向けて上方に延びるとともに、上支持体11が支持体間軸支部13からやや車両後方に向けて上方に延びた態様となる。
一方、車両用開閉治具1の略全体がラゲージルーム4内に収納されラゲージドア3が略閉じた状態では、支持体部10は、車両側面視で、上支持体11と下支持体12とがほぼ重なるようにして車両前方側へと屈曲して折り畳まれた状態となる(図2参照)。かかる状態では、上支持体11および下支持体12は、それぞれの支持体間軸支部13と反対側の支持部から車両前下方側に延びた態様となる。
また、ラゲージドア3が略閉じた状態では、把持アーム24は、把持部24bを下側に向けたまま、ラゲージドア3と開口下縁部7との間の隙間から外部に露出した状態となる。この把持アーム24のアーム部24aが開口下縁部7に当接することにより、ラゲージドア3がわずかに開いた状態で支持される。以下、車両用開閉治具1について、ラゲージドア3が略閉じた状態でラゲージルーム4内に収納されて折り畳まれた状態を「折畳み状態」という。
続いて、支持機構部40について説明する。支持機構部40は、揺動保持体としての保持プレート41と、係止保持部としての保持棒42とを有する。支持機構部40は、保持プレート41および保持棒42により、支持基部30に対する下支持体12の回動を規制することで、支持体部10とともにラゲージドア3を開いた状態で支持する。
本実施形態では、支持機構部40は、上支持体11および下支持体12の互いの回動連結位置が支持基部30に対する下支持体12の回動支持位置よりも車両の前方側に位置する支持体部10の屈曲状態で、支持体部10とともにラゲージドア3を支持する。すなわち、支持体部10および支持機構部40によるドア支持状態の車両用開閉治具1において、支持体部10は、上支持体11および下支持体12の回動連結位置である支持体間軸支部13の支持体間支軸15の位置を、車両の前後方向について、下支持体12の回動支持位置である支持体軸支部38よりも前方に位置させた状態で屈曲している。
保持プレート41は、支持基部30に対する下支持体12の回動支持位置である支持体軸支部38よりもラゲージドア3の支承側、つまり車両の前方側(図9において左側)の位置にて下支持体12に回動自在に吊下げ支持されている。保持プレート41は、板状の部分であるプレート本体部43を揺動基部として有するとともに、プレート本体部43に一体的に設けられた構成として、係止突部45、ガイド板部46、およびストッパ板部47を有する。
プレート本体部43は、相対的に幅狭で長手状の部分である幅狭部43aと、幅狭部43aの長手方向の一端側に設けられた相対的に幅広の幅広部43bとを有し、これらの部分により一体の略細長「L」字状の外形をなす板状の部分として構成されている。プレート本体部43において、幅狭部43aは、その長手方向の一端側(幅広部43b側)から他端側にかけて徐々に幅狭となっており、略細長三角形状を有する。
保持プレート41は、プレート本体部43を、下支持体12に設けられたプレート軸支部50に支承させることで、下支持体12に対して回動自在(揺動自在)に支持されている。つまり、保持プレート41は、プレート軸支部50を介して、下支持体12に回動自在に支持されている。プレート軸支部50には、プレート本体部43の幅狭部43aの幅狭の先端部が軸支された状態で支持される。保持プレート41は、プレート本体部43の板面を左右方向に対して垂直とする向き、かつプレート本体部43の幅広部43bの突出側を前側とする向きで支持される。保持プレート41においては、プレート本体部43の左側の板面が、係止突部45、ガイド板部46、およびストッパ板部47が設けられる支持板面43cとなる。
プレート軸支部50は、下支持体12の下支持体本体部12aの支持基部側(支持体軸支部38側)寄りの位置において、ドア支持状態で前側となる側に設けられている。プレート軸支部50は、車両左右方向を回動軸方向とする。プレート軸支部50は、下支持体12の下支持体本体部12aに対して矩形板状の支持板部51を介して設けられた互いに平行な一対の支持片部52を有する。支持片部52は、支持板部51から突設された矩形板状の部分であり、一対の支持片部52は、左右方向に互いに対向している。
プレート軸支部50は、図8に示すように、一対の支持片部52間に、プレート本体部43の幅狭部43aの先端部43dを位置させ、一対の支持片部52間に架設されたプレート支持軸53により、プレート本体部43を回動自在に支持する。プレート支持軸53は、ボルトおよびナット等からなり、一対の支持片部52およびプレート本体部43の先端部43dを貫通し、プレート本体部43を軸支する。このため、プレート本体部43の先端部43dには、プレート支持軸53を貫通させる貫通孔43eが穿設されている。プレート支持軸53は、プレート本体部43および支持片部52の少なくともいずれか一方に対して相対回転可能に設けられる。
このような構成により、プレート軸支部50は、プレート支持軸53の軸方向を回動軸方向として、保持プレート41を下支持体12に対して回動自在に支持する。したがって、保持プレート41は、他の部材の接触等の外部からの作用を受けていない状態においては、下支持体12の支持体軸支部38による回動にともなって、下支持体12に対して相対的に回動し、自重により垂下した状態を保持する。なお、保持プレート41の下支持体12に対する支持部分の構成は、本実施形態に限定されるものではない。かかる支持部分の構成としては、左右方向を回動軸方向として、保持プレート41を下支持体12に対して回動自在に支持させる構成であればよい。
図10に示すように、係止突部45は、保持棒42に対する係止部となる保持棒係止部44を構成する部分であり、保持プレート41において、プレート本体部43の支持板面43cに突設されている。また、係止突部45は、プレート本体部43の幅狭部43aの下部に設けられている。係止突部45は、プレート本体部43の支持板面43cの板面視(左側面視)で略三角形状をなすように支持板面43cから垂直状に突出している。
係止突部45は、側面視で三角形状の各辺をなす板状の部分として、後側板部45a、前側板部45b、および下側板部45cを有する。これらの板部は、支持板面43cからの突出寸法を共通とする。後側板部45aは、側面視でプレート本体部43の後側の辺に沿うように設けられている。前側板部45bは、後側板部45aの前側において後側板部45aの上端に繋がり、側面視において後側板部45aとともに鋭角状の角部分を形成する。下側板部45cは、後側板部45aと前側板部45bの下端同士を繋ぐ部分である。
また、係止突部45は、前側板部45bの下側への延設部分である突片板部45dを有する。突片板部45dは、前側板部45bと一体的な平板部分を形成する部分であり、かかる平板部分に対して下側板部45cが略垂直状に繋がっている。突片板部45dと下側板部45cとにより形成される角部分が、保持棒係止部44となる。つまり、保持棒係止部44は、側面視で後側板部45aとともに三角形状をなす前側板部45bと下側板部45cとにより形成される内角部分に対する下側の外角部分となる。
保持棒42は、支持基部30から車両の前方側に突設され、保持プレート41に設けられた保持棒係止部44に係止されることで、保持プレート41に下支持体12を支持させ、ラゲージドア3が開いた状態を保持する。保持棒42は、支持ステー48を介して、支持基部30を構成するベース板部31に設けられている。
支持ステー48は、略「L」字状をなす屈曲板状の部材により構成されており、ベース板部31の前面31aに沿う固定板部48aと、固定板部48aに対する略直角状の屈曲部分であってベース板部31の前面31aから前方に突出する支持板部48bとを有する。支持板部48bは、その板面を左右方向に対して垂直とする。支持ステー48を構成する屈曲板状の部材は、固定板部48aとなる板状の部分の屈曲側と反対側の板面を前面31aに接触させた状態で溶接等によりベース板部31に固定される。支持ステー48に対し、支持板部48bの左側の板面48cに、保持棒42が溶接等により固設されている。
保持棒42は、L字状に屈曲した棒状の部材により構成されており、L字状をなす一方の辺部を支持ステー48に固定される固定棒部42aとし、他方の辺部を保持棒係止部44に係合する係止棒部42bとする。保持棒42は、固定棒部42aの軸方向を略前後方向(わずかに前上がりの傾斜方向)に沿わせ、係止棒部42bの軸方向を左右方向に沿わせるとともに、係止棒部42bを右に向けて設けられている。
保持棒42は、係止棒部42b上に係止突部45を載せた状態で保持棒係止部44に係合し、保持プレート41を支持する。保持棒42は、保持棒係止部44としての下側板部45cと突片板部45dとによる角部分に、係止棒部42bを左側から差し入れた態様で、保持プレート41を支持した状態となる(図5参照)。
このように保持プレート41を支持する保持棒42は、保持プレート41の各部に対して、左右方向(係止棒部42bの軸方向)について、次のような位置関係で設けられている。すなわち、保持棒42は、保持プレート41のプレート本体部43に対しては、係止棒部42bを干渉させないように、係止棒部42bの先端を、支持板面43cよりも左側に位置させる。また、保持棒42は、保持プレート41の係止突部45に対しては、係止棒部42bを接触させるように、係止棒部42bの先端を、係止突部45の左側の端面45eよりも右側に位置させる。
このように、保持棒42は、保持プレート41の回動軸方向を軸方向とする棒状の係止本体部として、係止棒部42bを含む。すなわち、保持棒42は、保持プレート41を支持するプレート軸支部50の回動軸方向である左右方向を軸方向(長手方向)とする棒状の部分である係止棒部42bを、保持棒係止部44に対する係止部分として有する。
そして、保持棒42は、保持棒係止部44に対して係止棒部42bの外周面42cを当接させることで、保持棒係止部44に係止される。詳細には、図10に示すように、保持棒42は、係止棒部42bの外周面42cを、保持棒係止部44を構成する下側板部45cの下面45fおよび突片板部45dの後面45gに当接させた状態で、保持棒係止部44に係止される。
このように保持棒42の係止棒部42bが保持棒係止部44に係止されることで、保持棒42により保持プレート41が支持された状態となる。かかる状態は、車両用開閉治具1のドア支持状態に対応する。ドア支持状態において、支持体軸支部38から前上方に延びた下支持体12が、保持棒42に支持された保持プレート41により支持された状態となる。つまり、ドア支持状態において、下支持体12は、車体2に固定された支持基部30からの延出部分である保持棒42に、保持プレート41を介して支持された状態となる。したがって、ドア支持状態において、保持プレート41は、下支持体12と保持棒42との間に挟まれた態様で、屈曲起立状態の支持体部10を支持する。
また、ドア支持状態においては、ラゲージドア3からの荷重を受ける支持体部10の支持体間軸支部13による折畳み方向の回動動作が、支持機構部40により規制される。ここで、支持体部10について支持体間軸支部13による折畳み方向とは、ドア支持状態において支持機構部40により規制される上支持体11および下支持体12の回動方向であり、ドア支持状態から上支持体11と下支持体12が互いになす角度を小さくするように閉じる方向である。
なお、保持プレート41を介して支持体部10を支持するための構成は、係止本体部としての係止棒部42bを有する保持棒42に限定されない。すなわち、保持プレート41を介して支持体部10を支持するための構成は、支持基部30に設けられ、保持棒係止部44に係止されることで、保持プレート41に下支持体12を支持させ、ラゲージドア3の開状態を保持するものであれば、その構成は限定されるものではない。
また、保持棒42は、保持プレート41を支持するプレート軸支部50に対して、次のような位置関係を有する。すなわち、図9に示すように、車両用開閉治具1の側面視において、支持体部10の支持基部30に対する回動支持部である支持体軸支部38の回動中心O1を中心とする円周について、保持プレート41の回動支点となるプレート軸支部50の回動中心O2を通る円周S1の内側に、保持棒42が存在する。ここで、支持体軸支部38の回動中心O1は、支軸部38cの中心軸の位置に対応し、プレート軸支部50の回動中心O2は、プレート支持軸53の中心軸の位置に対応する。
言い換えると、車両用開閉治具1の側面視において、回動中心O1を中心とする円周のうち、円周S1の半径をL1、保持棒42の最外位置P1を通る円周S2の半径をL2とした場合、L1>L2の関係が満たされる。このように、保持プレート41の回動支点(回動中心O2)の位置は、支持体軸支部38の回動中心O1を中心とした回転半径について、保持棒42よりも外側に存在する。
また、図9に示すように、ドア支持状態の車両用開閉治具1において、プレート軸支部50の回動中心O2は、保持棒42の係止棒部42bよりも支持体軸支部38の回動中心O1寄りの位置にある。つまり、ドア支持状態において、プレート軸支部50の回動中心O2は、係止棒部42bよりも後方に位置する。したがって、前後方向について、保持棒42の前端位置とその後方に位置するプレート軸支部50の回動中心O2の位置との間には、寸法X1の位置の差が存在する。寸法X1は、例えば30〜40mm程度である。
このような保持プレート41の回動支点と保持棒42との前後の位置関係は、折畳み状態からドア支持状態となる車両用開閉治具1の動作の過程において、保持プレート41が自重により保持棒42に対する係合位置(開き保持位置)に移動することを意図したものである。
次に、保持プレート41が有するガイド板部46およびストッパ板部47について説明する。なお、以下の説明においては、保持プレート41の長手方向について、プレート本体部43の回動支持側、つまり幅狭部43aの先端側(図10における上側)を上側とし、その反対側、つまり幅広部43b側(図10における下側)を下側とする。
まず、ガイド板部46について説明する。ガイド板部46は、保持棒42の保持プレート41に対する相対的な移動に関し、保持棒42が保持棒係止部44に対して係止されるに際して係止棒部42bの保持棒係止部44に対する係止位置への移動をガイドするガイド部として作用する。
保持棒42は、車体2に固定された支持基部30に固設されており、車体2に対して固定の位置にある。これに対し、保持プレート41は、ラゲージドア3の開閉動作において下支持体12の回動によるプレート軸支部50の移動にともなって、下支持体12に対して相対回動しながら移動する。このように移動する保持プレート41に対する保持棒42の相対的な移動について、ガイド板部46は、保持棒42を保持棒係止部44へと案内する。
ガイド板部46は、プレート本体部43の支持板面43cに対して垂直状に突設された矩形板状の突片部分である。ガイド板部46は、保持棒42の係止棒部42bの接触を受ける部分であり、支持板面43cからの突出寸法を係止突部45と略同じとする。
ガイド板部46は、係止突部45の下方の位置に設けられている。ガイド板部46は、前側を上側、後側を下側とする向きに傾斜した状態で設けられている。ガイド板部46は、後側の板面を、保持棒42の係止棒部42bに当接するガイド面46aとする。
ガイド板部46は、係止突部45に対して、保持棒42の係止棒部42bとの関係において、次のような位置関係で設けられている。図10に示すように、車両用開閉治具1の側面視において、保持プレート41の回動支点となるプレート軸支部50の回動中心O2を中心とする円周に関し、係止突部45の後側板部45aと下側板部45cとがなす角部分の頂点T1を通る円周C1の半径と、ガイド板部46の上側の頂点T2を通る円周C2の半径との差ΔYは、保持棒42の係止棒部42bの外径よりもわずかに小さい寸法に設定されている。つまり、ガイド板部46は、係止突部45との関係において、差ΔYとして規定される隙間が保持棒42の係止棒部42bの外径よりもわずかに小さい寸法となる位置に設けられている。具体的には、差ΔYは、例えば、係止棒部42bの外径よりも2mm程度小さい寸法に設定されている。
このような係止突部45とガイド板部46との間の隙間寸法は、折畳み状態からドア支持状態となる車両用開閉治具1の動作の過程において、後側に回動する保持プレート41に対して係止棒部42bをガイド板部46のガイド面46aに確実に当接させてガイド板部46によるガイド作用を確実に得るためである。例えば、係止突部45とガイド板部46との間の隙間寸法が係止棒部42bの外径よりも大きい場合、後側に回動移動する保持プレート41に対する保持棒42の相対的な移動において、係止棒部42bが保持棒係止部44に係合せずに係止突部45を通過してしまうことがあり得る。そこで、上記の差ΔYが係止棒部42bの外径よりも小さい寸法に設定されることで、係止棒部42bが開き保持位置、つまり保持棒係止部44に対する係合位置を通過することが確実に防止される。なお、車両用開閉治具1の側面視における頂点T1と頂点T2との間の距離は、係止棒部42bの保持プレート41に対する相対的な移動経路を確保するため、係止棒部42bの外径よりも大きい。
次に、ストッパ板部47について説明する。ストッパ板部47は、保持棒42の保持プレート41に対する相対的な移動に関し、係止棒部42bが保持棒係止部44に対する係止位置から外れた後に、係止棒部42bが保持プレート41の範囲外に移動することを規制するストッパ部として作用する。
ストッパ板部47は、ガイド板部46と同様、プレート本体部43の支持板面43cに対して垂直状に突設された矩形板状の突片部分である。ストッパ板部47は、保持棒42の係止棒部42bの接触を受ける部分であり、支持板面43cからの突出寸法を係止突部45と略同じとする。
ストッパ板部47は、係止突部45の突片板部45dの前方の位置に設けられている。ストッパ板部47は、突片板部45dに対向するように、板面を略上下方向に沿わせるように設けられている。詳細には、ストッパ板部47は、左側面視で、プレート本体部43の幅広部43bの上部において、幅狭部43aの前側の辺の傾斜に沿うように設けられている。ストッパ板部47は、後側の板面を、保持棒42の係止棒部42bに当接するストッパ面47aとする。
以上のような構成を備えた支持機構部40は、ラゲージドア3の開閉動作にともなう保持棒42の保持プレート41に対する相対的な移動により、ラゲージドア3の開閉動作毎に、保持棒42の保持棒係止部44に対する係止と該係止の解除とを交互に行うように構成されている。
本実施形態の車両用開閉治具1の動作について、図11、図12および図13を用いて説明する。図11、図12および図13は、車両用開閉治具1の動作説明図である。
車両用開閉治具1の動作の説明においては、車両用開閉治具1が折畳み状態からドア支持状態となるまでの動作を、かかる動作が略閉じた状態のラゲージドア3を開く動作をともなうことから「開き動作」とする。また、車両用開閉治具1がドア支持状態から折畳み状態となるまでの動作を、かかる動作が開いた状態のラゲージドア3を閉じる動作をともなうことから「閉じ動作」とする。また、開き動作および閉じ動作において、ラゲージドア3の上下動作(開閉動作)は、作業者あるいはロボットによる把持アーム24の操作によって行われる。
まず、車両用開閉治具1の開き動作について説明する。開き動作を行う前の折畳み状態の車両用開閉治具1においては、図11(a)に示すように、支持体部10は前側に折り畳まれ、保持プレート41は保持棒42に対して前方に離れた位置に存在する。
車両用開閉治具1の開き動作においては、略閉じた状態のラゲージドア3(図2参照)を開く方向に回動させる(上昇させる)ことで、ドア側支持部20とともに上支持体11の上支持体本体部11aが引き上げられる(図11(a)、矢印A1参照)。これにより、折畳み状態の車両用開閉治具1が、図11(b)に示すように開いていく。
車両用開閉治具1が折畳み状態から開く過程において、下支持体12が立ち上がる方向(図11(a)において右回転方向)に回動することにともない、プレート軸支部50が後上方に移動し、これとともに保持プレート41も後上方に移動する。そして、下支持体12の回動の過程における所定のタイミングで、図12(a)に示すように、保持プレート41が保持棒42の係止棒部42bに衝突する(矢印B1参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p1)で示している。詳細には、保持プレート41の係止突部45の後側板部45aの後面45hに、保持棒42の係止棒部42bが衝突する。これにより、保持プレート41の後方への移動が、係止突部45の後面45hに当接している保持棒42により規制された状態となる。
係止棒部42bが係止突部45に衝突した後、ラゲージドア3の開き動作により継続して上昇する保持プレート41は、所定の期間、後方への移動が規制された状態、つまり係止突部45の後面45hに係止棒部42bを当接させた状態を維持する。かかる期間において、図12(a)に示すように、後面45hに当接した状態の係止棒部42bは、後面45hに沿って、上昇する保持プレート41に対して相対的に下方に移動する(矢印B2参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p2)で示している。なお、図12の各図においては、車両用開閉治具1の動作において車体2に対して移動する保持プレート41に対する係止棒部42bの相対的な移動が表されている。
すなわち、保持プレート41は、図13(a)に示すように係止突部45の後面45hの上部に係止棒部42bを当接させてから、係止棒部42bの当接状態を維持したまま上昇し、図13(b)に示すように係止突部45の後面45hの下部に係止棒部42bを当接させた状態となる。
そして、ラゲージドア3が所定の開き位置に達すると、保持プレート41の上昇により係止棒部42bが係止突部45の後面45hを過ぎ、保持プレート41の後方への移動の規制が解除される。これにより、図12(a)に示すように、保持プレート41は、後側に回動し、ガイド板部46のガイド面46aで係止棒部42bに衝突し、再度後方への移動(回動)が規制された状態となる(矢印B3参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p3)で示している。
すなわち、保持プレート41は、図13(b)に示すように係止突部45の後面45hの下部に係止棒部42bを当接させた状態からさらに上昇し、係止突部45による後方への回動の規制が解除されることで後方に回動し、図13(c)に示すようにガイド板部46に係止棒部42bを当接させた状態となる。保持プレート41がガイド板部46に係止棒部42bを当接させることによる保持プレート41の一時的な停止位置を「仮止め位置」とする。
保持プレート41が仮止め位置に達した後、ラゲージドア3を少し閉じる方向に回動させる(下降させる)ことで、図12(b)に示すように、保持プレート41の後方への回動にともなって係止棒部42bがガイド板部46に接触した状態から保持棒係止部44に対する係止位置(開き保持位置)へと相対的に移動する(矢印B4参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p4)で示している。
すなわち、保持プレート41は、図13(c)に示すようにガイド板部46に係止棒部42bを当接させた状態から下降し、ガイド板部46による後方への回動の規制が解除されることで後方に回動し、図13(d)に示すように保持棒係止部44に係止棒部42bを係止させた状態となる。
このように、ガイド板部46は、車両用開閉治具1の開き動作において、係止棒部42bの当接を受けることで保持プレート41の回動を仮止め位置にて一旦規制し、保持棒42の保持プレート41に対する相対的な移動に関し、係止棒部42bを保持棒係止部44による係止位置へと導く。保持棒係止部44に係止棒部42bが係止された状態が、図1および図11(b)に示す車両用開閉治具1のドア支持状態となる。以上が車両用開閉治具1の開き動作である。車両用開閉治具1によりラゲージドア3が開いた状態で、ラゲージドア3の内板等に対する塗装作業が行われる。
次に、車両用開閉治具1の閉じ動作について説明する。車両用開閉治具1の閉じ動作においては、ドア支持状態の車両用開閉治具1に対し、ラゲージドア3を再度開く方向に回動させることで、保持プレート41が引き上げられ、係止棒部42bの保持棒係止部44に対する係止状態、つまり開き保持状態が解除される。
すなわち、図11(c)に示すように、保持プレート41が上昇することにより、係止棒部42bの保持プレート41に対する相対的な移動に関し、係止棒部42bは、保持棒係止部44に対する係止位置から外れ、突片板部45dを乗り越える。これにより、図12(c)に示すように、保持プレート41は、後方に回動し、ストッパ板部47のストッパ面47aで係止棒部42bに衝突し、一時的に後方への移動(回動)が規制された状態となる(矢印B5参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p5)で示している。
すなわち、保持プレート41は、図13(d)に示すように保持棒係止部44に係止棒部42bを係止させた状態(開き保持位置にある状態)から、上昇することで係止棒部42bを保持棒係止部44から外し、図13(e)に示すようにストッパ板部47に係止棒部42bを当接させた状態となる。
このように、ストッパ板部47は、車両用開閉治具1の閉じ動作において、係止棒部42bの保持プレート41に対する相対的な移動に関し、係止棒部42bが係止位置から外れた後に、係止棒部42bが保持プレート41の範囲外、つまりプレート本体部43から外れた位置に移動することを規制する。
そして、ストッパ板部47に係止棒部42bが当接した状態から、ラゲージドア3を閉じることで、図12(d)に示すように、保持プレート41の下方への移動にともなって係止棒部42bが係止突部45の前側板部45bに沿って相対的に上方に移動する(矢印B6参照)。ここでの係止棒部42bを42b(p6)で示している。
すなわち、保持プレート41は、図13(e)に示すようにストッパ板部47に係止棒部42bを当接させた状態から下降し、図13(f)に示すように係止突部45の前側板部45bの前側に係止棒部42bを位置させた状態となる。
図13(f)に示すように係止突部45の前側板部45bの前側に係止棒部42bが位置する状態から、さらにラゲージドア3を閉じることで、図11(d)および図13(g)に示すように、支持体部10は支持体間軸支部13により折畳み方向に回動動作し、保持プレート41は保持棒42に対して前方に離れた位置に移動する。そして、最終的に、ラゲージドア3は、図2に示すような略閉じた状態となるとともに、車両用開閉治具1は、図11(a)に示すような折畳み状態となる。
以上のように、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、把持アーム24の操作によるラゲージドア3の上下動作だけで、車両用開閉治具1の自動的な動作により、ラゲージドア3の開き動作→開き保持→閉じ動作が繰り返される。すなわち、車両用開閉治具1においては、下支持体12に揺動自在に取り付けられた保持プレート41が、ラゲージドア3の開閉に合わせて保持棒42に沿って移動することにより、ラゲージドア3の開き位置を保持する。そして、1回のラゲージドア3の上下動作によって開き動作・開き保持が行われ、次のラゲージドア3の上下動作によって開き保持の解除・閉じ動作が行われる。なお、保持プレート41におけるプレート本体部43や係止突部45等の形状・寸法、ガイド板部46やストッパ板部47の配置等は、上述したような車両用開閉治具1の動作が得られるように、保持プレート41の重心位置等との関係に基づいて設定される。
以上のような構成を備えた本実施形態の車両用開閉治具1によれば、車体2に対するラゲージドア3の開閉にともなう操作を簡単なものとすることができ、ラゲージドア3の開閉作業の自動化を容易に実現することができる。
すなわち、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、車両用開閉治具1によるドア支持状態とその解除状態との切換えを、ラゲージドア3の開閉方向の動作のみにより行うことができるので、ラゲージドア3の開閉にともなう車両用開閉治具1の操作が不要であり、ラゲージドア3の開閉にともなう操作の単純化を図ることが可能となる。したがって、自動車の製造工程においてラゲージドア3の開閉作業を、ロボット等による機械的な作業として容易に自動化することが可能となる。
具体的には、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、ラゲージドア3の開閉作業を、上述したような塗装工程で用いられる塗装ガンが設けられた塗装用のロボットアームにより行うことが可能となる。つまり、ラゲージドア3を開閉させる一方向の操作によってラゲージドア3の開状態の保持を含む開閉動作を行うことができるので、専用のロボットを導入することなく、例えば塗装用のロボットアーム等の既存の設備を用いてラゲージドア3の開閉作業を行うことができる。したがって、塗装工程においてラゲージドア3の開閉作業を行うことが可能となるので、ラゲージドア3の開閉作業の自動化を容易に実現することができる。特に、ラゲージドア3の内板等の塗装を行う際、ラゲージドア3を開いて塗装後に閉めるという動作は、従来は人でしかできなかったことであるが、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、ロボットにより上記の動作を行うことが可能となるので、無人でのロボット塗装が可能となる。
また、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、ラゲージドア3の開閉作業が作業者(人)により行われる場合であっても、片手による簡単な操作によってラゲージドア3の開閉が可能となる。このため、生産性を向上することができる。
また、本実施形態の車両用開閉治具1は、保持プレート41に作用してラゲージドア3の開状態を保持する係止保持部として、棒状の係止棒部42bを有する。かかる構成によれば、係止保持部を容易に設けることができ、支持機構部40の構造を簡単にすることができる。
また、本実施形態の車両用開閉治具1は、保持プレート41においてガイド板部46を有することで、開き動作において、保持プレート41を仮止め位置に停止させた後、係止棒部42bを保持棒係止部44へと導く。このような構成によれば、支持体部10の開閉にともなう支持機構部40の動作を安定させることができ、ラゲージドア3の開閉動作に連動した支持機構部40によるドア支持状態を確実に得ることが可能となる。これにより、車両用開閉治具1の構成について、ラゲージドア3の開閉作業の自動化に適した構成を実現することができる。
また、本実施形態の車両用開閉治具1は、保持プレート41においてストッパ板部47を有することで、係止棒部42bが係止位置から外れた後に、保持プレート41が係止棒部42bをプレート本体部43の範囲外に移動させることを規制する。このような構成によれば、閉じ動作において、保持プレート41の回動動作を安定させることができ、ラゲージドア3の開閉動作に連動した支持機構部40によるドア支持状態の解除状態を確実に得ることが可能となる。これにより、車両用開閉治具1の構成について、ラゲージドア3の開閉作業の自動化により適した構成を実現することができる。
また、本実施形態の車両用開閉治具1によれば、構造がシンプルであることから、コンパクトな構成を容易に実現することができるので、車体2の前側のエンジンルーム等に対して比較的狭いスペースであるラゲージルーム4内にも容易に車両用開閉治具1を収めることが可能となる。したがって、本実施形態に係る車両用開閉治具1は、ラゲージドア3用の治具として好適に用いることができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る車両用開閉治具は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。