JP2017179545A - アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス - Google Patents
アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス Download PDFInfo
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Abstract
Description
(1) Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.10〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金線材であって、
線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2以上であり、かつ変動係数が1.8以下であることを特徴とするアルミニウム合金線材。
(2) 前記断面に占める、2000μm2以上の面積を有する結晶粒の面積割合が50%以上である、上記(1)に記載のアルミニウム合金線材。
(3) 前記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が50%以上である、上記(2)に記載のアルミニウム合金線材。
(4) 前記断面に占める、前記{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が90%以上である、上記(2)または(3)に記載のアルミニウム合金線材。
(5) 導電率が45%IACS以上、引張強度が150MPa以上およびヤング率が70GPa以下である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(6) 前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%とB:0.001〜0.030質量%のうち両方かいずれか1つの元素を含有する、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(7) 前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%のうち、少なくとも1つの元素を含有する、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(8) 前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(9) Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Niの含有量の合計が0.10〜2.00質量%である、上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(10) 素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(11) 上記(10)に記載のアルミニウム合金線を複数本撚り合わせてなるアルミニウム合金撚線。
(12) 上記(10)に記載のアルミニウム合金線または上記(11)に記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
(13) 上記(12)に記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
なお、上記化学組成に含有範囲が挙げられている元素のうち、含有範囲の下限値が「0質量%」と記載されている元素はいずれも、必要に応じて任意に添加される選択添加元素を意味する。すなわち所定の添加元素が「0質量%」の場合、その添加元素が含まれないことを意味する。
(1)化学組成
<Mg:0.1〜1.0質量%>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はSiと一緒にβ”相(ベータダブルプライム相)などとして析出し引張強度を向上させる作用を持つ。また、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターを形成した場合は、引張強度および伸びを向上させる作用を有する元素である。しかしながら、Mg含有量が0.1質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Mg含有量が1.0質量%を超えると、結晶粒界にMg濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度および伸びが低下する。また、Mg元素の固溶量が多くなることによって0.2%耐力が高くなり、電線取り回し性が低下するとともに導電率も低下する。したがって、Mg含有量は0.1〜1.0質量%とする。なお、Mg含有量は、高強度を重視する場合には0.5〜1.0質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.1質量%以上0.5質量%未満とすることが好ましく、このような観点から総合的には0.3〜0.7質量%とすることが好ましい。
Si(ケイ素)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はMgと一緒にβ”相などとして析出し引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる作用を持つ。またSiは、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターや、Si−Siクラスターを形成した場合に引張強度および伸びを向上させる作用を有する元素である。Si含有量が0.1質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Si含有量が1.2質量%を超えると、結晶粒界にSi濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度および伸びが低下する。また、Si元素の固溶量が多くなることによって0.2%耐力が高くなり、電線取り回し性が低下するとともに導電率も低下する。したがって、Si含有量は0.1〜1.2質量%とする。なお、Si含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.2質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.1質量%以上0.5質量%未満とすることが好ましく、このような観点から総合的には0.3〜0.7質量%とすることが好ましい。
Fe(鉄)は、主にAl−Fe系の金属間化合物を形成することによって結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度を向上させる元素である。Feは、Al中に655℃で0.05質量%しか固溶できず、室温では更に少ないため、Al中に固溶できない残りのFeは、Al−Fe、Al−Fe−Si、Al−Fe−Si−Mgなどの金属間化合物として晶出または析出する。これらのようにFeとAlとで主に構成される金属間化合物を本明細書ではFe系化合物と呼ぶ。この金属間化合物は、結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度を向上させる。また、Feは、Al中に固溶したFeによっても引張強度を向上させる作用を有する。Fe含有量が0.10質量%未満だと、これらの作用効果が不十分であり、また、Fe含有量が1.40質量%超えだと、晶出物または析出物の粗大化により伸線加工性が低下すると共に、0.2%耐力が上昇し電線取り回し性が低下すると共に、伸びが低下する。したがって、Fe含有量は0.10〜1.40質量%とし、好ましくは0.15〜0.70質量%、更に好ましくは0.15〜0.45質量%とする。
Ti(チタン)は、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生して工業的に望ましくない。Ti含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、Ti含有量が0.100質量%超えだと導電率が低下する傾向があるからである。したがって、Ti含有量は0.001〜0.100質量%とし、好ましくは0.005〜0.050質量%、より好ましくは0.005〜0.030質量%とする。
B(ホウ素)は、Tiと同様、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生しやすくなるため工業的に望ましくない。B含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、B含有量が0.030質量%超えだと導電率が低下する傾向がある。したがって、B含有量は0.001〜0.030質量%とし、好ましくは0.001〜0.020質量%、より好ましくは0.001〜0.010質量%とする。
Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)およびNi(ニッケル)は、いずれも結晶粒を微細化する作用と異常な粗大成長粒の生成を抑制する元素であり、さらに、Cu、AgおよびAuは、粒界に析出することで粒界強度を高める作用も有する元素であって、これらの元素の少なくとも1種を0.01質量%以上含有していれば、上述した作用効果が得られ、引張強度および伸びを向上させることができる。一方、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量のいずれかが、それぞれ上記の上限値を超えると、該元素を含有する化合物が粗大になり、伸線加工性を劣化させるため、断線が生じやすく、また、導電率が低下する傾向がある。したがって、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量の範囲は、それぞれ上記に規定した範囲とした。なお、これらの元素群の中で、特にNiを含有するのが好ましい。Niを含有すると、結晶粒微細化効果と異常粒成長抑制効果が顕著になり引張強度と伸びが向上し、また、導電率の低下と伸線加工中の断線をより抑制しやすくなる。かかる効果をバランスよく満足させる観点から、Ni含有量は0.05〜0.30質量%とするのが更に好ましい。
上述した成分以外の残部は、Al(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を加味して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)などが挙げられる。
本発明に係るアルミニウム合金線材は、結晶粒が粗大でかつ均一な組織を有することを特徴としている。
通常、結晶粒は、焼鈍中に粒成長するため、結晶粒粗大組織(結晶粒が大きい組織)を得るためには焼鈍条件を調整するのが一般的である。しかし、本発明者らは、伸線工程における加工率を検討することで、結晶粒粗大均一組織(結晶粒が大きくかつ均一な組織)を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、本発明者らは、伸線加工、中間焼鈍および溶体化工程についても、さらなる検討を重ねた結果、これらの工程を調整して結晶方位を制御することにより、低ヤング率を維持したまま、更なる高強度化を達成し得ることを見出した。
溶解工程では、上述したアルミニウム合金組成になるように各成分の分量を調整した材料を用意し、それを溶解する。
次いで、鋳造工程では冷却速度を大きくし、Fe系化合物の晶出を適度に減少、微細化する。好ましくは鋳造時における溶湯温度から400℃までの平均冷却速度が20〜50℃/sで、鋳造輪とベルトを組み合わせたプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いれば、例えば直径5〜15mmの棒材を得ることができる。また、水中紡糸法を用いれば、30℃/s以上の平均冷却速度で、直径1〜13mmの棒材を得ることができる。鋳造及び熱間加工(圧延)は、ビレット鋳造及び押出法などにより行ってもよい。また、上記鋳造後や熱間加工後に400℃以上の再熱処理を施しても良い。
次いで、表面の皮むきを実施して、例えば直径5〜12.5mmφの適宜の太さの棒材とし、これを冷間で伸線加工する。表面の皮むきは、行うことによって表面の清浄化がなされるが、行わなくてもよい。また、伸線加工では、最終中間熱処理前後の伸線加工率を決定する目的で、必要に応じて中間熱処理を追加しても良い。また、伸線加工は、1回であってもよいし、目的とする線径が得られるまで複数回繰り返しても良い。最終中間熱処理に至るまでの伸線加工において、加工率は、40〜99.99%であることが好ましく、95〜99.99%であることがより好ましい。ここで、「加工率」は、{(伸線加工前の線材の長手方向に垂直な断面積)−(伸線加工後(伸線加工が複数回ある場合には最後の伸線加工後)の線材の長手方向に垂直な断面積)}×100/(伸線加工前の線材の長手方向に垂直な断面積)で表される。最終中間熱処理に至るまでの伸線加工における加工率を40%以上とすることにより、得られる線材の長手方向に垂直な断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合を50%以上とすることができ、また、最終中間熱処理に至るまでの伸線加工における加工率を95%以上とすることにより、上記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合を90%以上にすることができる。
次に、伸線加工により冷間伸線した被加工材に最終中間熱処理を施す。本実施形態の最終中間熱処理は、被加工材の柔軟性を取り戻し、伸線加工性を高めるために行うだけでなく、溶体化時に粒界をピニングする役割のあるFe、Mn、Niなどの化合物を生成する役割がある。最終中間熱処理は、熱処理温度250〜450℃、保持時間2〜5時間で行うことが好ましい。最終中間熱処理を行う方法としては、例えばバッチ焼鈍などが挙げられる。なお、最終中間熱処理前後の伸線加工率を決定する目的で[4]伸線加工にて中間熱処理を追加する場合は、中間熱処理は、熱処理温度を250〜450℃とし、保持時間は上記最終中間熱処理との合計で2〜5時間となるように調整することが好ましい。
上記最終中間熱処理の後、さらに冷間で伸線加工を施す。最終伸線加工において、加工率は、3〜60%であることが好ましく、3〜30%であることがより好ましい。最終伸線加工における加工率を60%以下とすることにより、得られる線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値を2000μm2以上とすることができ、また、最終伸線加工における加工率を30%以下とすることにより、上記断面において、2000μm2以上の面積を有する結晶粒が占める面積割合を50%以上とすることができる。
図2に示す関係からもわかるように、最終伸線加工において、加工率を60%以下とすることにより、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2以上であり、かつ、変動係数が1.8以下の線材を効率よく作製することができる。
なお、図2に示すEBSD像における結晶粒の色の違いは、配向している結晶方位の違いを表している。すなわち、EBSD像において、同じ色合いの粒子が多いほど、同じ結晶方位配向している結晶粒が多いことを意味している。
更に最終伸線加工により冷間伸線した被加工材に溶体化熱処理を施す。本実施形態の溶体化熱処理は、ランダムに含有されているMgとSiの化合物をアルミニウム母相中に溶け込ませるために行う熱処理である。溶体化熱処理は、具体的には、500〜580℃の範囲内の所定温度で加熱し、所定時間保持し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却する熱処理である。溶体化熱処理の加熱時の所定温度が580℃よりも高いと、結晶粒が粗大化して異常成長粒が生成し、上記所定温度が500℃よりも低いと、Mg2Siを十分に固溶させることができない。したがって、溶体化熱処理における加熱時の所定温度は500〜580℃の範囲とし、MgおよびSiの含有量によっても変化するが、好ましくは500〜540℃、より好ましくは500〜520℃の範囲とする。また、溶体化熱処理における上記所定温度で保持する時間は、10秒以上、30分以下にすることが好ましく、より好ましくは10〜30分とすることがより好ましい。
次いで、Mg、Si化合物または、溶質原子クラスターを生成させるために時効熱処理を施す。時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度で加熱する。時効熱処理における上記所定温度は、20℃未満であると、溶質原子クラスターの生成が遅く、必要な引張強度と伸びを得るために時間が掛かるため量産的に不利である。また、上記所定温度が250℃よりも高いと、強度に最も寄与するMg2Si針状析出物(β”相)の他に、粗大なMg2Si析出物が生成して強度が低下する。そのため、上記所定温度は、より伸びの向上に効果のある溶質原子クラスターを生成させる場合には、20〜70℃とすることが好ましく、また、β”相も同時に析出させ、引張強度と伸びのバランスを取る場合には、100〜150℃とすることが好ましい。
上述のような製造方法によって製造された本実施形態のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2以上であり、かつ変動係数が1.8以下である点に特徴がある。なお、本明細書において、2つの並んだ結晶粒の角度差が15°以上の場合に、その結晶界面を粒界とし、この粒界で囲まれた部分を「結晶粒」と定義する。また、線材の長手方向は、線径に垂直な軸線方向であり、線材を製造する際の伸線方向に対応する。
導電率は、ジュール熱による発熱を防ぐため、45%IACS以上であることが好ましく、より好ましくは50%IACS以上である。導電率は高いほど、細径化に好適である。
必須の含有成分であるMg、Si、Fe及びAlと、選択的に添加する成分であるTi、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiのうちの少なくとも1成分とを、表1に示す化学組成(質量%)になる合金素材を用意した。
次に、この伸線加工を施した加工材に、表2に示す条件で最終中間熱処理を施し、さらにφ0.3mmの線径まで表2に示す加工率が得られるように最終伸線加工を行った。
次に、この最終伸線加工を施した加工材に、表2に示す条件で溶体化熱処理を施した。
最終中間熱処理と溶体化熱処理においてバッチ式熱処理では、線材に熱電対を巻きつけて線材温度を測定した。連続通電熱処理では、線材の温度が最も高くなる部分での測定が設備上困難であるため、ファイバ型放射温度計(ジャパンセンサ社製)で線材の温度が最も高くなる部分よりも手前の位置にて温度を測定し、ジュール熱と放熱を考慮して最高到達温度を算出した。高周波加熱および連続走間熱処理では、熱処理区間出口付近の線材温度を測定した。
さらに、溶体化熱処理を施した加工材に、表2に示す条件で時効熱処理を施し、アルミニウム合金線(線径300μm)を製造した。
上記実施例および比較例に係るアルミニウム合金線について、下記に示す測定および評価を行った。各評価条件は下記の通りである。結果を表3に示す。
結晶粒の観察および結晶方位の解析は、ショットキー電解放出形走査電子顕微鏡(JSM−7001F、日本電子株式会社(JEOL)製)を用い、電子線後方散乱回折法(EBSD)により行った。測定用試料としては、直径300μmの線材を準備し、樹脂埋後にCP(クロスセクションポリッシャ)加工して、線材の長手方向に垂直な断面を切り出し、観察面を得た。測定時のスキャンステップは、2μmとした。また、この測定は、1つの合金線につき、10の観察面で行った。なお、10の観察面の切り出し方法は、図3に示すように、まず任意な部分N1の断面を切り出し、次に500mm離れた部分N2の断面を切り出し、次にN2の断面から見て、N1の断面とは反対方向に500mm離れた部分N3の断面を切り出す。同様の手法でN10まで断面を切り出し、10本の測定用試料を準備し、それぞれ上述のように樹脂埋後にCP加工して、10の観察面を得た。
得られたデータの解析には、解析用ソフトウェア(EDAX/TSL社(現 AMETEK社)製、商品名「Orientation Imaging Microscopy v5」)を用いた。また、結晶粒界定義は角度差が15°以上ある結晶同士の界面とし、全ての結晶粒面積を算出後、線材の長手方向に垂直な断面に占める、面積2000μm2以上を有する結晶粒の面積割合、標準偏差(a)、平均結晶粒径(b)および変動係数(a/b)のそれぞれを求め、それぞれの平均値(N=10)を算出した。
また、上記の画像解析により、線材の長手方向に垂直な断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合[({111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積)×100/(線材の長手方向に垂直な断面の面積)]を求め、その平均値(N=10)を算出した。また、{100}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合および{101}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合についても、{111}結晶方位の場合と同様の手法でそれぞれ平均値(各N=10)を算出した。
長さ300mmの試験片(各線材につき3本ずつ)を20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕中で、四端子法により、比抵抗を測定し、平均導電率(N=3)を算出した。なお、端子間距離は200mmとした。本実施例では、導電率は45%IACS以上を合格レベルとした。
JIS Z 2241:2011に準じて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、引張強度を算出し(MPa)、それらの平均値(N=3)を求めた。本実施例では、150MPa以上を合格レベルとした。
上記引張強度測定と同様の装置を用いて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、弾性変形域でのS−Sカーブ曲線の接線をヤング率(GPa)として算出し、その平均値(N=3)を求めた。本実施例では、ヤング率は70GPa以下を合格レベルとした。
JIS Z2241:2011に準じて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、伸びを算出し(%)、それらの平均値(N=3)を求めた。伸びは大きいほど好ましく、5%以上がより望ましい。
また、比較例2および3のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2未満であり、本発明の適正範囲外であるため、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、ヤング率が高いことが確認された。さらに、比較例2のアルミニウム合金線材は、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、導電率も劣っていることが確認された。
また、比較例4および5のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、変動係数が1.8を超えており、本発明の適正範囲外であるため、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、引張強度が劣っていることが確認された。
Claims (13)
- Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.10〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金線材であって、
線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2以上であり、かつ変動係数が1.8以下であることを特徴とするアルミニウム合金線材。 - 前記断面に占める、2000μm2以上の面積を有する結晶粒の面積割合が50%以上である請求項1に記載のアルミニウム合金線材。
- 前記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が50%以上である、請求項2に記載のアルミニウム合金線材。
- 前記断面に占める、前記{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が90%以上である、請求項2または3に記載のアルミニウム合金線材。
- 導電率が45%IACS以上、引張強度が150MPa以上およびヤング率が70GPa以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- 前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%とB:0.001〜0.030質量%のうち両方かいずれか1つの元素を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- 前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%のうち、少なくとも1つの元素を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- 前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Niの含有量の合計が0.10〜2.00質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- 素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
- 請求項10に記載のアルミニウム合金線を複数本撚り合わせてなるアルミニウム合金撚線。
- 請求項10に記載のアルミニウム合金線または請求項11に記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
- 請求項12に記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
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