JP2017179545A - アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス - Google Patents

アルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス Download PDF

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【課題】極細線(例えば、素線径が0.5mm以下)として使用した場合であっても、低ヤング率を維持しつつ、高い導電率と高い引張強度を実現できるアルミニウム合金線材の提供。【解決手段】Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.10〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm2以上であり、かつ変動係数が1.8以下であるアルミニウム合金線材。【選択図】図1

Description

本発明は、電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネスに関する。
従来、自動車、電車、航空機等の移動体の電気配線体、または産業用ロボットの電気配線体として、銅又は銅合金の導体を含む電線に、銅又は銅合金(例えば、黄銅)製の端子(コネクタ)を装着した、いわゆるワイヤーハーネスと呼ばれる部材が用いられてきた。昨今では、自動車の高性能化や高機能化が急速に進められており、これに伴い、車載される各種の電気機器、制御機器などの配設数が増加するとともに、これら機器に使用される電気配線体の配設数も増加する傾向にある。また、その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上させるため、移動体の軽量化が強く望まれている。
こうした移動体の軽量化を達成するための手段の一つとして、例えば電気配線体の導体を、従来から用いられている銅又は銅合金に代えて、より軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金にする検討が進められている。アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、アルミニウムの導体線材に、銅の導体線材と同じ電流を流すためには、アルミニウムの導体線材の断面積を、銅の導体線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウムの導体線材を用いたとしても、アルミニウムの導体線材の質量は、純銅の導体線材の質量の半分程度であることから、アルミニウムの導体線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。なお、上記の「%IACS」とは、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
しかし、送電線用アルミニウム合金線材(JIS規格によるA1060やA1070)を代表とする純アルミニウム線材は、一般に引張強度、耐衝撃性、屈曲疲労特性などが劣ることで知られている。そのため、例えば線径0.5mm以下の極細線が必要な部位に純アルミニウム線材を用いる場合、車体への取付け作業時に作業者や産業機器などによって不意に負荷される荷重や、電線と端子の接続部における圧着部での引っ張りや、ドア部などの屈曲部で負荷される屈曲疲労などに耐えることができない。また、種々の添加元素を加えて合金化した線材を使用すれば、引張強度、屈曲疲労特性を高めることは可能であるものの、アルミニウム中への添加元素の固溶現象により導電率の低下を招くとともに、硬質化によってワイヤーハーネス取付け時に取り回し性が低下し生産性が低下するといった問題があった。そのため、導電率を低下させない範囲内で添加元素を限定ないし選択し、さらに高い引張強度および取り回し性を両立させる必要があった。このような高強度化により、耐衝撃性や屈曲疲労特性の改善も求められていた。
高導電率および高強度が得られる材料として、例えばMgとSiを含有する6000系アルミニウム合金線材が知られており、添加元素の調整や、溶体化処理後に時効処理を施すことにより高導電率および高強度化が実現されている。さらに、耐衝撃性の向上に寄与する引張強度と伸び性を改善するためには、結晶粒径の微細化が図られる場合がある。しかしながら、6000系アルミニウム合金線材を用いて高強度化を図る場合には、ヤング率が上昇し、変形に大きな力が必要となり、車体への取付け作業効率が低下する傾向がある。
一方、極細線用途の6000系アルミニウム合金線開発例としては、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、本発明者らが研究開発した結果をもとに特許出願したものであり、線材外周部と内部での平均結晶粒径の大きさを規定したものであり、従来品と同等以上の伸び性および導電率を維持しつつ、適切な耐力と高い耐屈曲疲労特性を両立したものである。
特許第5607853号明細書 特許第5155464号明細書
ワイヤーハーネスを取り付ける場合、剛性(ヤング率)が小さい方が作業者の負荷が小さくなり、取り付け作業が効率化する。また、駆動部系に配線されたアルミニウム合金線でも同様の考え方から低ヤング率化が求められている。しかしながら、特許文献1では、塑性変形を前提として、各特性のバランスが図られており、特にヤング率に関する検討は記載されていない。そのため、低ヤング率で、導電性および引張強度の高いアルミニウム合金線材の実現にあたっては、合金組成と組織の再検討が必要であった。
本発明の目的は、極細線(例えば、素線径が0.5mm以下)として使用した場合であっても、低ヤング率を維持しつつ、高い導電率と高い引張強度を実現することができるアルミニウム合金線材、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネスを提供することにある。
一般的に6000系アルミニウム合金においては特許文献2に記載されるように、結晶粒径の粗大化により引張強度が低下するなど機械的特性に悪影響を及ぼすことが知られている。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討の結果、結晶粒を粗大化することによってヤング率を低下でき、さらに結晶粒の大きさを均一化することにより引張強度の低下を抑制できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1) Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.10〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金線材であって、
線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm以上であり、かつ変動係数が1.8以下であることを特徴とするアルミニウム合金線材。
(2) 前記断面に占める、2000μm以上の面積を有する結晶粒の面積割合が50%以上である、上記(1)に記載のアルミニウム合金線材。
(3) 前記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が50%以上である、上記(2)に記載のアルミニウム合金線材。
(4) 前記断面に占める、前記{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が90%以上である、上記(2)または(3)に記載のアルミニウム合金線材。
(5) 導電率が45%IACS以上、引張強度が150MPa以上およびヤング率が70GPa以下である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(6) 前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%とB:0.001〜0.030質量%のうち両方かいずれか1つの元素を含有する、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(7) 前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%のうち、少なくとも1つの元素を含有する、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(8) 前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(9) Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Niの含有量の合計が0.10〜2.00質量%である、上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(10) 素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(11) 上記(10)に記載のアルミニウム合金線を複数本撚り合わせてなるアルミニウム合金撚線。
(12) 上記(10)に記載のアルミニウム合金線または上記(11)に記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
(13) 上記(12)に記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
なお、上記化学組成に含有範囲が挙げられている元素のうち、含有範囲の下限値が「0質量%」と記載されている元素はいずれも、必要に応じて任意に添加される選択添加元素を意味する。すなわち所定の添加元素が「0質量%」の場合、その添加元素が含まれないことを意味する。
本発明のアルミニウム合金線材は、高導電率、高強度かつ低ヤング率化を実現したことで、細径線でもワイヤーハーネス取り付け時に振動や屈曲疲労による断線が発生しにくく、柔軟で取り扱いが容易である。よって、ドア屈曲部とエンジン部のように異なる歪みが加えられる場所にも搭載可能であり、特性の異なる複数本の線材を準備する必要が無く、1種類の線材で上記特性を兼ね備えることができ、バッテリーケーブル、ハーネスあるいはモータ用導線、産業用ロボットの配線体として有用である。
図1は、本発明のアルミニウム線材を作製する際の、好ましい製造方法の一態様を示す製造工程フローチャートである。 図2は、最終伸線加工における加工率と結晶組織との関係の一例を示す図である。 図3は、実施例において、断面観察を行った際の、測定用試料の観察面の切り出し方法を示した模式図である。
以下に、本発明の化学組成等の限定理由を示す。
(1)化学組成
<Mg:0.1〜1.0質量%>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はSiと一緒にβ”相(ベータダブルプライム相)などとして析出し引張強度を向上させる作用を持つ。また、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターを形成した場合は、引張強度および伸びを向上させる作用を有する元素である。しかしながら、Mg含有量が0.1質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Mg含有量が1.0質量%を超えると、結晶粒界にMg濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度および伸びが低下する。また、Mg元素の固溶量が多くなることによって0.2%耐力が高くなり、電線取り回し性が低下するとともに導電率も低下する。したがって、Mg含有量は0.1〜1.0質量%とする。なお、Mg含有量は、高強度を重視する場合には0.5〜1.0質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.1質量%以上0.5質量%未満とすることが好ましく、このような観点から総合的には0.3〜0.7質量%とすることが好ましい。
<Si:0.1〜1.2質量%>
Si(ケイ素)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はMgと一緒にβ”相などとして析出し引張強度、耐屈曲疲労特性を向上させる作用を持つ。またSiは、溶質原子クラスターとしてMg−Siクラスターや、Si−Siクラスターを形成した場合に引張強度および伸びを向上させる作用を有する元素である。Si含有量が0.1質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Si含有量が1.2質量%を超えると、結晶粒界にSi濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度および伸びが低下する。また、Si元素の固溶量が多くなることによって0.2%耐力が高くなり、電線取り回し性が低下するとともに導電率も低下する。したがって、Si含有量は0.1〜1.2質量%とする。なお、Si含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.2質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.1質量%以上0.5質量%未満とすることが好ましく、このような観点から総合的には0.3〜0.7質量%とすることが好ましい。
<Fe:0.10〜1.40質量%>
Fe(鉄)は、主にAl−Fe系の金属間化合物を形成することによって結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度を向上させる元素である。Feは、Al中に655℃で0.05質量%しか固溶できず、室温では更に少ないため、Al中に固溶できない残りのFeは、Al−Fe、Al−Fe−Si、Al−Fe−Si−Mgなどの金属間化合物として晶出または析出する。これらのようにFeとAlとで主に構成される金属間化合物を本明細書ではFe系化合物と呼ぶ。この金属間化合物は、結晶粒の微細化に寄与すると共に、引張強度を向上させる。また、Feは、Al中に固溶したFeによっても引張強度を向上させる作用を有する。Fe含有量が0.10質量%未満だと、これらの作用効果が不十分であり、また、Fe含有量が1.40質量%超えだと、晶出物または析出物の粗大化により伸線加工性が低下すると共に、0.2%耐力が上昇し電線取り回し性が低下すると共に、伸びが低下する。したがって、Fe含有量は0.10〜1.40質量%とし、好ましくは0.15〜0.70質量%、更に好ましくは0.15〜0.45質量%とする。
本発明のアルミニウム合金線材は、上述の通り、Mg、SiおよびFeを必須の含有成分とするが、必要に応じて、さらに、TiとBのうち両方かいずれか1つの元素、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiのうち、少なくとも1つの元素を含有成分とすることができる。
<Ti:0.001〜0.100質量%>
Ti(チタン)は、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生して工業的に望ましくない。Ti含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、Ti含有量が0.100質量%超えだと導電率が低下する傾向があるからである。したがって、Ti含有量は0.001〜0.100質量%とし、好ましくは0.005〜0.050質量%、より好ましくは0.005〜0.030質量%とする。
<B:0.001〜0.030質量%>
B(ホウ素)は、Tiと同様、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生しやすくなるため工業的に望ましくない。B含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、B含有量が0.030質量%超えだと導電率が低下する傾向がある。したがって、B含有量は0.001〜0.030質量%とし、好ましくは0.001〜0.020質量%、より好ましくは0.001〜0.010質量%とする。
<Cu:0.01〜1.00質量%>、<Ag:0.01〜0.50質量%>、<Au:0.01〜0.50質量%>、<Mn:0.01〜1.00質量%>、<Cr:0.01〜1.00質量%>、<Zr:0.01〜0.50質量%>および<Ni:0.01〜0.50質量%>のうち、少なくとも1つの元素を含有させること
Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)およびNi(ニッケル)は、いずれも結晶粒を微細化する作用と異常な粗大成長粒の生成を抑制する元素であり、さらに、Cu、AgおよびAuは、粒界に析出することで粒界強度を高める作用も有する元素であって、これらの元素の少なくとも1種を0.01質量%以上含有していれば、上述した作用効果が得られ、引張強度および伸びを向上させることができる。一方、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量のいずれかが、それぞれ上記の上限値を超えると、該元素を含有する化合物が粗大になり、伸線加工性を劣化させるため、断線が生じやすく、また、導電率が低下する傾向がある。したがって、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量の範囲は、それぞれ上記に規定した範囲とした。なお、これらの元素群の中で、特にNiを含有するのが好ましい。Niを含有すると、結晶粒微細化効果と異常粒成長抑制効果が顕著になり引張強度と伸びが向上し、また、導電率の低下と伸線加工中の断線をより抑制しやすくなる。かかる効果をバランスよく満足させる観点から、Ni含有量は0.05〜0.30質量%とするのが更に好ましい。
また、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiは、これらの元素の含有量の合計で2.00質量%よりも多く含有すると、導電率と伸びが低下し、伸線加工性が劣化し、さらには、0.2%耐力上昇による電線取り回し性が低下する傾向がある。従って、これらの元素の含有量の合計は、2.00質量%以下とするのが好ましい。本発明のアルミニウム合金線材では、Feは必須元素なので、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量の合計は、0.10〜2.00質量%とするのが好ましい。ただし、これらの元素を単独で添加する場合は、含有量が多いほど該元素を含有する化合物が粗大になる傾向にあり、伸線加工性を劣化させ、断線が生じやすくなることから、それぞれの元素において上記に規定した含有範囲とした。
なお、高導電率を保ちつつ、耐力値を適度に低下させるには、Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiの含有量の合計は、0.10〜0.80質量%が特に好ましく、0.15〜0.60質量%が更に好ましい。一方で、導電率はやや低下するが更に引張強度および伸びを高めるとともに、引張強度に対する耐力値を適度に低下させるためには、前記含有量の合計は、0.80質量%超え、2.00質量%以下とすることが特に好ましく、1.00〜2.00質量%とすることが更に好ましい。
<残部:Alおよび不可避不純物>
上述した成分以外の残部は、Al(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を加味して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)などが挙げられる。
このようなアルミニウム合金線材は、合金組成や製造プロセスを組み合わせて制御することにより実現できる。以下、本発明のアルミニウム合金線材の好適な製造方法について説明する。
(2)本発明の一実施例によるアルミニウム合金線材の製造方法
本発明に係るアルミニウム合金線材は、結晶粒が粗大でかつ均一な組織を有することを特徴としている。
通常、結晶粒は、焼鈍中に粒成長するため、結晶粒粗大組織(結晶粒が大きい組織)を得るためには焼鈍条件を調整するのが一般的である。しかし、本発明者らは、伸線工程における加工率を検討することで、結晶粒粗大均一組織(結晶粒が大きくかつ均一な組織)を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、本発明者らは、伸線加工、中間焼鈍および溶体化工程についても、さらなる検討を重ねた結果、これらの工程を調整して結晶方位を制御することにより、低ヤング率を維持したまま、更なる高強度化を達成し得ることを見出した。
このような本発明の一実施例によるアルミニウム合金線材は、[1]溶解、[2]鋳造、[3]熱間加工(溝ロール加工など)、[4]伸線加工、[5]最終中間熱処理、[6]最終伸線加工、[7]溶体化熱処理、[8]時効熱処理の各工程を順次行うことを含む製造方法によって製造することができる。なお、最終中間熱処理前後の伸線加工率を決定する目的で、[4]伸線加工にて中間熱処理を追加しても良い。また、溶体化熱処理前後、または時効熱処理の後に、撚り線とする工程(撚り線加工)や電線に樹脂被覆を行う工程を設けてもよい。以下、[1]〜[8]の工程について説明する。
まず、図1に、アルミニウム合金線材の製造工程フローチャートの一例を示す。図1において破線で示されている工程は、任意の工程であり、図1の記載に限定されず、発明の効果を妨げない範囲で、要否や順序、回数等を適宜変更することができる。
[1]溶解
溶解工程では、上述したアルミニウム合金組成になるように各成分の分量を調整した材料を用意し、それを溶解する。
[2]鋳造および[3]熱間加工(溝ロール加工など)
次いで、鋳造工程では冷却速度を大きくし、Fe系化合物の晶出を適度に減少、微細化する。好ましくは鋳造時における溶湯温度から400℃までの平均冷却速度が20〜50℃/sで、鋳造輪とベルトを組み合わせたプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いれば、例えば直径5〜15mmの棒材を得ることができる。また、水中紡糸法を用いれば、30℃/s以上の平均冷却速度で、直径1〜13mmの棒材を得ることができる。鋳造及び熱間加工(圧延)は、ビレット鋳造及び押出法などにより行ってもよい。また、上記鋳造後や熱間加工後に400℃以上の再熱処理を施しても良い。
[4]伸線加工
次いで、表面の皮むきを実施して、例えば直径5〜12.5mmφの適宜の太さの棒材とし、これを冷間で伸線加工する。表面の皮むきは、行うことによって表面の清浄化がなされるが、行わなくてもよい。また、伸線加工では、最終中間熱処理前後の伸線加工率を決定する目的で、必要に応じて中間熱処理を追加しても良い。また、伸線加工は、1回であってもよいし、目的とする線径が得られるまで複数回繰り返しても良い。最終中間熱処理に至るまでの伸線加工において、加工率は、40〜99.99%であることが好ましく、95〜99.99%であることがより好ましい。ここで、「加工率」は、{(伸線加工前の線材の長手方向に垂直な断面積)−(伸線加工後(伸線加工が複数回ある場合には最後の伸線加工後)の線材の長手方向に垂直な断面積)}×100/(伸線加工前の線材の長手方向に垂直な断面積)で表される。最終中間熱処理に至るまでの伸線加工における加工率を40%以上とすることにより、得られる線材の長手方向に垂直な断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合を50%以上とすることができ、また、最終中間熱処理に至るまでの伸線加工における加工率を95%以上とすることにより、上記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合を90%以上にすることができる。
[5]最終中間熱処理
次に、伸線加工により冷間伸線した被加工材に最終中間熱処理を施す。本実施形態の最終中間熱処理は、被加工材の柔軟性を取り戻し、伸線加工性を高めるために行うだけでなく、溶体化時に粒界をピニングする役割のあるFe、Mn、Niなどの化合物を生成する役割がある。最終中間熱処理は、熱処理温度250〜450℃、保持時間2〜5時間で行うことが好ましい。最終中間熱処理を行う方法としては、例えばバッチ焼鈍などが挙げられる。なお、最終中間熱処理前後の伸線加工率を決定する目的で[4]伸線加工にて中間熱処理を追加する場合は、中間熱処理は、熱処理温度を250〜450℃とし、保持時間は上記最終中間熱処理との合計で2〜5時間となるように調整することが好ましい。
[6]最終伸線加工
上記最終中間熱処理の後、さらに冷間で伸線加工を施す。最終伸線加工において、加工率は、3〜60%であることが好ましく、3〜30%であることがより好ましい。最終伸線加工における加工率を60%以下とすることにより、得られる線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値を2000μm以上とすることができ、また、最終伸線加工における加工率を30%以下とすることにより、上記断面において、2000μm以上の面積を有する結晶粒が占める面積割合を50%以上とすることができる。
図2は、最終伸線加工における加工率と結晶組織との関係の一例を示す図である。図2において、EBSD像は、後述するEBSD法によって各加工率に対応する線材の長手方向に垂直な断面を組織解析することにより、撮影された画像である。また、図2において、結晶粒分布図は、撮影された画像に基づいて、結晶粒の面積を計測し、グラフ化したものであり、結晶粒の面積の最大値および変動係数は、上記の解析により算出した値である。
図2に示す関係からもわかるように、最終伸線加工において、加工率を60%以下とすることにより、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm以上であり、かつ、変動係数が1.8以下の線材を効率よく作製することができる。
なお、図2に示すEBSD像における結晶粒の色の違いは、配向している結晶方位の違いを表している。すなわち、EBSD像において、同じ色合いの粒子が多いほど、同じ結晶方位配向している結晶粒が多いことを意味している。
[7]溶体化熱処理
更に最終伸線加工により冷間伸線した被加工材に溶体化熱処理を施す。本実施形態の溶体化熱処理は、ランダムに含有されているMgとSiの化合物をアルミニウム母相中に溶け込ませるために行う熱処理である。溶体化熱処理は、具体的には、500〜580℃の範囲内の所定温度で加熱し、所定時間保持し、その後、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で冷却する熱処理である。溶体化熱処理の加熱時の所定温度が580℃よりも高いと、結晶粒が粗大化して異常成長粒が生成し、上記所定温度が500℃よりも低いと、MgSiを十分に固溶させることができない。したがって、溶体化熱処理における加熱時の所定温度は500〜580℃の範囲とし、MgおよびSiの含有量によっても変化するが、好ましくは500〜540℃、より好ましくは500〜520℃の範囲とする。また、溶体化熱処理における上記所定温度で保持する時間は、10秒以上、30分以下にすることが好ましく、より好ましくは10〜30分とすることがより好ましい。
溶体化熱処理を行う方法としては、例えば、バッチ焼鈍、ソルトバス(塩浴)でも、高周波加熱、通電加熱(通電焼鈍)、走間加熱(走間焼鈍)などの連続熱処理でもよい。
線材温度及び熱処理時間の一方又は両方の数値が上記で規定される条件より小さい場合は、溶体化が不完全になり後工程の時効熱処理時に生成する溶質原子クラスターやβ”相やMgSi析出物が少なくなり、引張強度、耐衝撃性、耐屈曲疲労特性、導電率の向上幅が小さくなる。線材温度及び熱処理時間の一方又は両方の数値が上記で規定される条件より高い場合は、結晶粒が粗大化すると共に、アルミニウム合金線材中の化合物相の部分溶融(共晶融解)が起こり、引張強度、伸びが低下し、導体の取り扱い時に断線が起こりやすくなる。
[8]時効熱処理
次いで、Mg、Si化合物または、溶質原子クラスターを生成させるために時効熱処理を施す。時効熱処理は、20〜250℃の範囲内の所定温度で加熱する。時効熱処理における上記所定温度は、20℃未満であると、溶質原子クラスターの生成が遅く、必要な引張強度と伸びを得るために時間が掛かるため量産的に不利である。また、上記所定温度が250℃よりも高いと、強度に最も寄与するMgSi針状析出物(β”相)の他に、粗大なMgSi析出物が生成して強度が低下する。そのため、上記所定温度は、より伸びの向上に効果のある溶質原子クラスターを生成させる場合には、20〜70℃とすることが好ましく、また、β”相も同時に析出させ、引張強度と伸びのバランスを取る場合には、100〜150℃とすることが好ましい。
さらに、時効熱処理における加熱・保持時間は、温度によって最適な時間が変化する。低温では長時間、高温では短時間の加熱が引張強度、伸びを向上させる上で好ましい。長時間の加熱では、例えば10日間以内であり、短時間での加熱では、好ましくは15時間以下、更に好ましくは8時間以下である。なお、時効熱処理における冷却は、特性のバラつきを防止するために、可能な限り冷却速度を速くすることが好ましい。もちろん、製造工程上、速く冷却できない場合であっても、溶質原子クラスターの生成が十分なされる時効条件であれば、適宜設定することができる。
本実施形態のアルミニウム合金線材は、素線径を、特に制限はなく用途に応じて適宜定めることができるが、細物線の場合は0.1〜0.5mmφ、中細物線の場合は0.8〜1.5mmφとすることが好ましい。本実施形態のアルミニウム合金線材は、アルミニウム合金線として、単線で細くして使用できることが利点の一つであるが、複数本束ねて撚り合わせて得られるアルミニウム合金撚線として使用することもでき、本発明の製造方法を構成する上記[1]〜[8]の工程のうち、[1]〜[6]の各工程を順次行ったアルミニウム合金線材を複数本に束ねて撚り合わせた後に、[7]溶体化熱処理および[8]時効熱処理の工程を行ってもよい。
また、本実施形態では、さらに追加の工程として、鋳造工程後や、熱間加工後に、従来法で行われているような均質化熱処理を行なうことも可能である。均質化熱処理は、添加元素を均一に分散させることができるため、その後の溶体加熱処理にて溶質原子クラスターやβ”析出相を均一に生成しやすくなり、引張強度および伸びの向上と、引張強度に対する適度な低耐力値がより安定して得られる。均質化熱処理は、加熱温度を450℃〜600℃にて行なうことが好ましく、より好ましくは500〜600℃である。また、均質化加熱処理における冷却は、0.1〜10℃/分の平均冷却速度で徐冷することが、均一な化合物が得られやすくなる点で好ましい。
(3)本発明のアルミニウム合金線材の組織的な特徴
上述のような製造方法によって製造された本実施形態のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm以上であり、かつ変動係数が1.8以下である点に特徴がある。なお、本明細書において、2つの並んだ結晶粒の角度差が15°以上の場合に、その結晶界面を粒界とし、この粒界で囲まれた部分を「結晶粒」と定義する。また、線材の長手方向は、線径に垂直な軸線方向であり、線材を製造する際の伸線方向に対応する。
上記断面において、結晶粒の面積の最大値を2000μm以上とすることにより、ヤング率を低く維持することができる。結晶粒の面積の最大値は、好ましくは2000〜30000μmであり、より好ましくは2000〜8000μmである。
また、変動係数は、結晶粒径の依存が小さい状態で結晶粒の均一度を比較できる指標である。したがって、変動係数を、1.8以下とすることで、粒径の均一化を図り、これにより伸びの低下および引張強度の低下を抑制しつつ、低ヤング率を実現できる。変動係数は、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.0以下である。なお、変動係数は、線材の結晶粒分布から求められる標準偏差(a)を、平均結晶粒径(b)で割ることで(a/b)算出できる。
また、上記断面に占める、2000μm以上の面積を有する結晶粒の面積割合が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、ヤング率を低く維持することができる。
また、上記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が50%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、上記面積割合は、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒が集積している度合を表している。上記範囲とすることにより、引張強度を高く維持できる。
なお、本発明において、上記のような結晶粒の面積や粒径、結晶方位に関する測定は、EBSD法を用いて画像解析によって行う。EBSDとは、Electron BackScatter Diffraction(電子後方散乱回折)の略で、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折(菊池パターン)を利用した結晶方位解析技術のことである。本発明においては、試料である線材の長手方向に垂直な面(線径に平行な面)において、2μmのステップでスキャンし、解析用ソフトウェア(EDAX/TSL社(現 AMETEK社)製、商品名「Orientation Imaging Microscopy v5」)を用い、線材の長手方向に垂直な断面における結晶粒の面積および結晶方位を解析する。なお、EBSD測定にあたっては、鮮明な菊池線回折像を得るために、測定面に付着した異物を取り除くと同時に、鏡面仕上げをする必要がある。鏡面仕上げの方法としては、例えばCP(クロスセクションポリッシャ)加工にて断面の研磨加工を施す方法が挙げられる。
(4)本発明のアルミニウム合金線材の特性
導電率は、ジュール熱による発熱を防ぐため、45%IACS以上であることが好ましく、より好ましくは50%IACS以上である。導電率は高いほど、細径化に好適である。
ヤング率は、70GPa以下であることが好ましく、より好ましくは68Pa以下である。ヤング率は、低いほど柔軟性が高く、取り回し性に優れるため、作業者の負荷が小さくなり、取り付け作業が効率化する。
また、従来同様、断面積が小さい細径線に適用しても断線することなく使用可能とするために、高い引張強度が求められていることから、引張強度は、150MPa以上であることが好ましく、200MPa以上がより好ましい。
なお、上記各特性の測定方法については、後述する実施例にて説明する。
本発明のアルミニウム合金線材は、アルミニウム合金線として、または複数本のアルミニウム合金線を撚り合わせてなるアルミニウム合金撚線として使用することができるとともに、さらに、アルミニウム合金線またはアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線として使用することもでき、加えて、被覆電線と、この被覆電線の、被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス(組電線)として使用することもまた可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜7および比較例1〜5)
必須の含有成分であるMg、Si、Fe及びAlと、選択的に添加する成分であるTi、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、ZrおよびNiのうちの少なくとも1成分とを、表1に示す化学組成(質量%)になる合金素材を用意した。
Figure 2017179545
この合金素材を、プロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で、表2に示す条件で連続的に鋳造しながら圧延を行い、φ9.5mmの棒材とした。次いで、これを表2に示す加工率が得られるように伸線加工した。
次に、この伸線加工を施した加工材に、表2に示す条件で最終中間熱処理を施し、さらにφ0.3mmの線径まで表2に示す加工率が得られるように最終伸線加工を行った。
次に、この最終伸線加工を施した加工材に、表2に示す条件で溶体化熱処理を施した。
最終中間熱処理と溶体化熱処理においてバッチ式熱処理では、線材に熱電対を巻きつけて線材温度を測定した。連続通電熱処理では、線材の温度が最も高くなる部分での測定が設備上困難であるため、ファイバ型放射温度計(ジャパンセンサ社製)で線材の温度が最も高くなる部分よりも手前の位置にて温度を測定し、ジュール熱と放熱を考慮して最高到達温度を算出した。高周波加熱および連続走間熱処理では、熱処理区間出口付近の線材温度を測定した。
さらに、溶体化熱処理を施した加工材に、表2に示す条件で時効熱処理を施し、アルミニウム合金線(線径300μm)を製造した。
Figure 2017179545
(評価)
上記実施例および比較例に係るアルミニウム合金線について、下記に示す測定および評価を行った。各評価条件は下記の通りである。結果を表3に示す。
[結晶粒の観察および結晶方位の解析]
結晶粒の観察および結晶方位の解析は、ショットキー電解放出形走査電子顕微鏡(JSM−7001F、日本電子株式会社(JEOL)製)を用い、電子線後方散乱回折法(EBSD)により行った。測定用試料としては、直径300μmの線材を準備し、樹脂埋後にCP(クロスセクションポリッシャ)加工して、線材の長手方向に垂直な断面を切り出し、観察面を得た。測定時のスキャンステップは、2μmとした。また、この測定は、1つの合金線につき、10の観察面で行った。なお、10の観察面の切り出し方法は、図3に示すように、まず任意な部分N1の断面を切り出し、次に500mm離れた部分N2の断面を切り出し、次にN2の断面から見て、N1の断面とは反対方向に500mm離れた部分N3の断面を切り出す。同様の手法でN10まで断面を切り出し、10本の測定用試料を準備し、それぞれ上述のように樹脂埋後にCP加工して、10の観察面を得た。
得られたデータの解析には、解析用ソフトウェア(EDAX/TSL社(現 AMETEK社)製、商品名「Orientation Imaging Microscopy v5」)を用いた。また、結晶粒界定義は角度差が15°以上ある結晶同士の界面とし、全ての結晶粒面積を算出後、線材の長手方向に垂直な断面に占める、面積2000μm以上を有する結晶粒の面積割合、標準偏差(a)、平均結晶粒径(b)および変動係数(a/b)のそれぞれを求め、それぞれの平均値(N=10)を算出した。
また、上記の画像解析により、線材の長手方向に垂直な断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合[({111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積)×100/(線材の長手方向に垂直な断面の面積)]を求め、その平均値(N=10)を算出した。また、{100}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合および{101}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合についても、{111}結晶方位の場合と同様の手法でそれぞれ平均値(各N=10)を算出した。
[導電率(EC)]
長さ300mmの試験片(各線材につき3本ずつ)を20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕中で、四端子法により、比抵抗を測定し、平均導電率(N=3)を算出した。なお、端子間距離は200mmとした。本実施例では、導電率は45%IACS以上を合格レベルとした。
[引張強度]
JIS Z 2241:2011に準じて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、引張強度を算出し(MPa)、それらの平均値(N=3)を求めた。本実施例では、150MPa以上を合格レベルとした。
[ヤング率]
上記引張強度測定と同様の装置を用いて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、弾性変形域でのS−Sカーブ曲線の接線をヤング率(GPa)として算出し、その平均値(N=3)を求めた。本実施例では、ヤング率は70GPa以下を合格レベルとした。
[伸び]
JIS Z2241:2011に準じて、試験片(各線材につき3本ずつ)について引張試験を行い、伸びを算出し(%)、それらの平均値(N=3)を求めた。伸びは大きいほど好ましく、5%以上がより望ましい。
Figure 2017179545
表3の結果より、各々のアルミニウム合金線材において、結晶粒の面積の最大値および変動係数等に関する種々条件と、評価された特性の相関関係が読み取れる。次のことが明らかである。すなわち、実施例1〜7のアルミニウム合金線材は、所定の合金組成を有し、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm以上、かつ変動係数が1.8以下となるように制御されているため、いずれも、高い導電率、高強度かつ低ヤング率を示すことが確認された。
これに対し、比較例1のアルミニウム合金線材は、特に、必須成分であるMgおよびSiを含んでおらず、合金組成が本発明の適正範囲外であるため、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、引張強度が著しく劣っていることが確認された。
また、比較例2および3のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm未満であり、本発明の適正範囲外であるため、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、ヤング率が高いことが確認された。さらに、比較例2のアルミニウム合金線材は、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、導電率も劣っていることが確認された。
また、比較例4および5のアルミニウム合金線材は、線材の長手方向に垂直な断面において、変動係数が1.8を超えており、本発明の適正範囲外であるため、本発明に係る実施例1〜7のアルミニウム合金線材に比べて、引張強度が劣っていることが確認された。

Claims (13)

  1. Mg:0.1〜1.0質量%、Si:0.1〜1.2質量%、Fe:0.10〜1.40質量%、Ti:0〜0.100質量%、B:0〜0.030質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Zr:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金線材であって、
    線材の長手方向に垂直な断面において、結晶粒の面積の最大値が2000μm以上であり、かつ変動係数が1.8以下であることを特徴とするアルミニウム合金線材。
  2. 前記断面に占める、2000μm以上の面積を有する結晶粒の面積割合が50%以上である請求項1に記載のアルミニウム合金線材。
  3. 前記断面に占める、{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が50%以上である、請求項2に記載のアルミニウム合金線材。
  4. 前記断面に占める、前記{111}結晶方位からのずれ角度が20°以内に配向する結晶粒の面積割合が90%以上である、請求項2または3に記載のアルミニウム合金線材。
  5. 導電率が45%IACS以上、引張強度が150MPa以上およびヤング率が70GPa以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  6. 前記化学組成が、Ti:0.001〜0.100質量%とB:0.001〜0.030質量%のうち両方かいずれか1つの元素を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  7. 前記化学組成が、Cu:0.01〜1.00質量%、Ag:0.01〜0.50質量%、Au:0.01〜0.50質量%、Mn:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜1.00質量%、Zr:0.01〜0.50質量%およびNi:0.01〜0.50質量%のうち、少なくとも1つの元素を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  8. 前記化学組成が、Ni:0.01〜0.50質量%を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  9. Fe、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Zr、Niの含有量の合計が0.10〜2.00質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  10. 素線径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  11. 請求項10に記載のアルミニウム合金線を複数本撚り合わせてなるアルミニウム合金撚線。
  12. 請求項10に記載のアルミニウム合金線または請求項11に記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
  13. 請求項12に記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
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